(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】脈動防止具および脈動防止具を備えた液体用の容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/32 20060101AFI20250212BHJP
B65D 47/08 20060101ALI20250212BHJP
B65D 47/12 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B65D47/32 200
B65D47/08 100
B65D47/12 200
(21)【出願番号】P 2022194098
(22)【出願日】2022-12-05
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】522473139
【氏名又は名称】田口 章二
(73)【特許権者】
【識別番号】522473140
【氏名又は名称】江頭 香南子
(74)【代理人】
【識別番号】100172225
【氏名又は名称】高松 宏行
(72)【発明者】
【氏名】田口 章二
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3188291(JP,U)
【文献】特開2004-189335(JP,A)
【文献】特開平11-091817(JP,A)
【文献】特開2002-037308(JP,A)
【文献】特開2004-018008(JP,A)
【文献】特開2008-162629(JP,A)
【文献】特開2015-030482(JP,A)
【文献】特開平01-294451(JP,A)
【文献】実開昭49-009666(JP,U)
【文献】特開平10-218256(JP,A)
【文献】特開2015-129005(JP,A)
【文献】特開2013-047116(JP,A)
【文献】特開平09-175567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体部に着脱自在であって、前記容器本体部に形成された口部を通じて吐出される液体の脈動を防止する脈動防止具であって、
前記口部と連通する開口を有し、前記口部の外周面に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが形成された基部と、
前記基部の前記開口を覆う蓋部と、
一端が前記口部の内方において開口し、他端が前記容器本体部の内部において前記容器本体部の底部側に開口したエア流路を有するエア導入管と、
前記基部に設けられ、前記エア導入管を保持するエア導入管保持部と、を備え、
前記基部は、円筒状の外壁と、前記外壁よりも所定間隔を空けて内方に位置する円筒状の内壁と、前記外壁の上部と前記内壁の上部とを連結し前記基部の上面を構成する上面部と、前記上面部から上方に起立して形成された前記雄ねじに螺合しない非螺合領域としての円筒状の立ち上がり口部と、を含んで構成され、
前記外壁
の内周面には、前記口部の前記雄ねじと螺合する雌ねじが形成され
、
前記エア導入管保持部は、両端が開口した筒部を有し、
前記筒部の上端は前記立ち上がり口部内に位置し、
前記筒部の下端は前記口部内に位置する、脈動防止具。
【請求項2】
前記蓋部は連結部を介して前記基部と連結しており、
前記連結部を基点として、前記基部に対して前記開口を開放する位置と閉塞する位置との間で回動自在である、請求項1に記載の脈動防止具。
【請求項3】
前記非螺合領域に前記エア導入管保持部が設けられている、請求項1または2に記載の脈動防止具。
【請求項4】
請求項1に記載の前記容器本体部と、前記脈動防止具と、を備えた液体用の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用の容器に装着され該容器から吐出される液体の脈動を防止する脈動防止具およびこの脈動防止具を備えた液体用の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、一般に用いられるペットボトル(350ml~2L)から水などの液体をコップへ注ぐときに、口部の口径などに起因して、吐出される液体に脈動が発生する場合がある。脈動が発生すると、液体が飛散して周囲を汚すおそれがある。そこで従来、液体の飛散の要因となる脈動を防止するための発明が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、容器が備える取出し部の内部に、先端が取出し部を過ぎた所要位置に開口したエア導入管(脈動防止具としての外部空気導入路)を有するとともに、エア導入管の末端が容器の底部に向けて開口した発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来技術では、エア導入管の取り付け方法に起因して次のような課題があった。すなわち、特許文献1の
図1の開示例では、エア導入管を取り出し部の内部に直接設けているため、他の容器に対して簡単に再利用できないという課題があった。また、特許文献1の
図8の開示例では、取り出し部の一部に対して掛け止め可能な部材(掛け止め部)にエア導入管を取り付けるが、該部材を掛け止めたまま口部にキャップを装着できないという課題があった。このように、従来技術においては、利便性の観点から更なる改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明は、利便性に優れた脈動防止具および脈動防止具を備えた容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の脈動防止具は、容器本体部に着脱自在であって、前記容器本体部に形成された口部を通じて吐出される液体の脈動を防止する脈動防止具であって、前記口部と連通する開口を有し、前記口部の外周面に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが形成された基部と、前記基部の前記開口を覆う蓋部と、一端が前記口部の内方において開口し、他端が前記容器本体部の内部において前記容器本体部の底部側に開口したエア流路を有するエア導入管と、前記基部に設けられ、前記エア導入管を保持するエア導入管保持部と、を備え、前記基部は、円筒状の外壁と、前記外壁よりも所定間隔を空けて内方に位置する円筒状の内壁と、前記外壁の上部と前記内壁の上部とを連結し前記基部の上面を構成する上面部と、前記上面部から上方に起立して形成された前記雄ねじに螺合しない非螺合領域としての円筒状の立ち上がり口部と、を含んで構成され、前記外壁の内周面には、前記口部の前記雄ねじと螺合する雌ねじが形成され、前記エア導入管保持部は、両端が開口した筒部を有し、前記筒部の上端は前記立ち上がり口部内に位置し、前記筒部の下端は前記口部内に位置する。
【0008】
本発明の液体用の容器は、請求項1に記載の前記容器本体部と、前記脈動防止具と、を備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、利便性に優れた脈動防止具および脈動防止具を備えた容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1における脈動防止具の斜視図
【
図2】本発明の実施の形態1における脈動防止具の構造を示す断面図
【
図3】本発明の実施の形態1における脈動防止具の構造を示す断面図
【
図4】(a)本発明の実施の形態1における脈動防止具の構造説明図(b)(c)本発明の実施の形態1における脈動防止具の構造を示す断面図
【
図5】(a)(b)本発明の実施の形態1における脈動防止具を装着した容器から液体を吐出させてコップに注水する使用例を示した図
【
図6】本発明の実施の形態2における脈動防止具の構造を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
図1,2,3及び4を参照して、本発明の実施の形態1における脈動防止具について説明する。
図1,2及び3において、脈動防止具1は容器本体部2(
図3)に着脱自在であって、容器本体部2に形成された口部3を通じて吐出される液体4(
図5)の脈動を防止する機能を有する。これに加え、脈動防止具1は容器本体部2の口部3に着脱自在なキャップとしての機能も有する。ここでいう液体4とは例えば、水、清涼飲料水、醤油、液状の化学調味料、等々を指す。
【0012】
図3は、脈動防止具1を容器本体部2に装着した状態を示す。本実施の形態1における容器本体部2は、一般に市販されている飲料用のペットボトル容器を例示する。この容器本体部2は、底部6a(
図5)を有し液体4の貯留空間5が内部に形成された胴体部6と、胴体部6の上部と連続して形成され上方に向かって先細り状に形成されたテーパ部7と、前記テーパ部7の上部と連続して形成され上方に沿って起立した円筒状の口部3と、を含んで構成される。
【0013】
口部3を平面視した状態において、口部3の中央には、上下方向に貫通した液体4の注ぎ口としての開口3aが形成されている。容器本体部2に貯留された液体4は、容器本体部2を傾けることで開口3aを通じて吐出される(
図5)。口部3の外周面には雄ねじ3bが形成されている。
【0014】
図2及び3を参照して脈動防止具1の詳細な構造を説明する。脈動防止具1は口部3の開口3aと連通する開口9aを有する基部(キャップ本体)9を備える。基部9は円筒状の外壁10と、外壁10よりも所定間隔を空けて内方に位置する円筒状の内壁11と、外壁10の上部と内壁11の上部とを連結し基部9の上面を構成する上面部12と、を含んで構成される。
【0015】
外壁10の内周面には、口部3の雄ねじ3bと螺合する雌ねじ10aが形成されている。雄ねじ3bに雌ねじ10aを螺合させることにより、脈動防止具1は口部3に装着される。この状態において、内壁11は口部3の内周面に接触する位置、もしくは内周面よりも僅かに離れた位置にある。すなわち、口部3の一部は外壁10と内壁11によって挟まれた状態となる。
【0016】
図1において、基部9の外縁の所定位置には、基部9と蓋部13とを部分的に連結する可撓性の薄肉状の連結部14が設けられている。
図2において、蓋部13は円状の上面部15と、上面部15の外周縁から起立して設けられた円筒状の側面部16と、を含んで構成される。
【0017】
蓋部13は上述のとおり、連結部14を介して基部9と連結しており、この連結部14を基点として基部9に対して開口9aを開放する位置と閉塞する位置との間で回動自在である(
図3に示す矢印a)。
図2に示すように、側面部16の下端を基部9の上面に接触させることで、蓋部13は基部9の開口9aを覆う。これにより、容器本体部2は密閉された状態となる。
【0018】
基部9はさらに、上面部12から上方に起立して形成された円筒状の立ち上がり口部17を有する。立ち上がり口部17は基部9の開口9aに連通する開口17aを有する。
図2に示すように、蓋部13によって基部9の開口9aを上方から閉塞した状態において、立ち上がり口部17は蓋部13内に収容される。脈動防止具1はキャップ(蓋)としての機能を有しており、容器本体部2と脈動防止具1とで流体用の容器100を構成する。
【0019】
図2~5に示すように、基部9を構成する立ち上がり口部17の内周面において、連結部14に最も近い位置には、ブラケット18を介してエア導入管保持部19が設けられている。エア導入管保持部19はエア導入管20を保持する。すなわち、基部9は雄ねじ3bに螺合しない非螺合領域である立ち上がり口部17の内周面を有し、この立ち上がり口部17の内周面(非螺合領域)にエア導入管保持部19が設けられている。
【0020】
エア導入管保持部19は、両端が開口し上下方向に伸びる筒部19aと、筒部19aの下端と連通し容器本体部2の底部6a側に向かって末広がり状の末広がり部19bと、を有する。筒部19aの上端は立ち上がり口部17内に位置するとともに、末広がり部19bの下端は口部3の内部に位置する。
【0021】
エア導入管20は両端が開口しており、長手方向に伸びた可撓性の部材から成る。エア導入管20の内部空間を形成するエア流路20aにはエアが流入する。エア導入管20は一部の所定範囲または全範囲が蛇腹構造を有し、例えば任意の位置(
図4に示す符号P)で屈曲させると、その屈曲状態を維持することが可能となっている。ここでいう蛇腹とは、谷部と、該谷部よりも径方向の外側に突出した山部とを、エア導入管20の長手方向に沿って交互に連続配置させた構造を指す。エア導入管20は市販のストローで代用してもよい。
【0022】
すなわち、エア導入管20は、一端が口部3の内方において開口し、他端が容器本体部2の内部において容器本体部2の底部6a側に開口したエア流路20aを有する。
【0023】
図4(b),(c)に示すように、エア導入管20の径は、エア導入管保持部19の筒部19aの径よりも大きい。末広がり部19bの下端の径は、エア導入管20の径よりも大きい。また、末広がり部19bは上方に向かうにつれ径が徐々に小さくなり、上端側はエア導入管20の径よりも小さい。したがって、エア導入管保持部19の下端からエア導入管20を挿入すると、エア導入管20は上方に進むにつれ内方に押し潰される。
【0024】
より詳細には、
図4(b)のA-A断面に示すように、末広がり部19bの下端の入口の位置では、エア導入管20は押し潰されずに断面が正円を維持するが、末広がり部19b内を上方に進行するにつれ内方に押し潰されて断面が楕円状になる。
図4(c)のB-B断面に示すように、エア導入管20は筒部19a内を上方に進行する際も内方に押し潰され、断面が楕円状になる。このように、エア導入管20の外周面をエア導入管保持部19の内周面に押し当てることで、エア導入管保持部19はエア導入管20を保持する。
【0025】
実施の形態1における脈動防止具1は以上のように構成される。次に
図5を参照して、脈動防止具1の使用例を説明する。
図5(a),(b)は、脈動防止具1を装着した容器本体部2に貯留した液体4を、他の容器であるコップ21に注いでいる状態を示す。
【0026】
図5(a),(b)に示すように、図示しない使用者が容器本体部2を傾け、コップ21に液体4を注ぐ際、液体4の排出に伴う容器本体部2内の空圧変化に対応してエア導入管20の上端(紙面右側)からエア(外気)が導入される。導入されたエアは、エア導入管20の下端を通じて容器本体部2内へ排出される。これにより、容器本体部2内の圧力は一定にコントロールされ、液体4の脈動を抑制しながらコップ21へ液体4を注ぐことができる。
【0027】
エア導入管20に相当する部材を用いて脈動を防止する従来技術としては、特許文献1として開示した特開2004-238002号公報の他に、特開2002-302122号公報、特開2010-137914号公報、実用新案登録第3188291号が挙げられる。
【0028】
容器本体部2を傾けてコップ21に液体4を注ぐ際、使用者は通常であれば蓋部13が注水の妨げにならないよう連結部14側を上方に向ける。その際、
図5(a),(b)に示すように、エア導入管20は連結部14側(開口9aの上方側。
図5の紙面上側。)に位置するため、注水の妨げにならない。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態1における脈動防止具1は、容器本体部2に着脱自在であって、容器本体部2に形成された口部3を通じて吐出される液体4の脈動を防止する。この脈動防止具1は、口部3と連通する開口9aを有し、口部3の外周面に形成された雄ねじ3bに螺合する雌ねじ10aが形成された基部9と、基部9の開口9aを覆う蓋部13と、一端が口部3の内方において開口し、他端が容器本体部2の内部において容器本体部2の底部6a側に開口したエア流路20aを有するエア導入管20と、基部9に設けられ、エア導入管20を保持するエア導入管保持部19と、を備えている。
【0030】
上記構成により、脈動防止具1は容器本体部2から容易に着脱できるため、異なる容器(容器本体部2)の間で簡単に利用(使い回し)することができる。但し、利用できる容器(容器本体部2)は、本実施の形態1のように雄ねじが形成され、該雄ねじに雌ねじ10aを螺合させることができるものに限られる。また、脈動防止具1は蓋部13を有するため、それ自体がキャップ(蓋)としての機能も有する。すなわち、本実施の形態1における脈動防止具1は、利便性(使い回し可能、キャップとして利用可能)に優れたものとなっている。
【0031】
(実施の形態2)
次に
図6を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1で説明した構成要素と同じものについては、同一の符号を付す。実施の形態1と2との間では、基部と蓋部の構造が相違する。
【0032】
実施の形態2における脈動防止具1Aが備える基部9Aの上面を構成する上面部12上には、外周に雄ねじ22aが形成された第2立ち上がり口部22が、立ち上がり口部17を外方から囲むように形成されている。
【0033】
実施の形態2では、円状の上面部15Aと、上面部15Aの外周縁から起立して設けられた円筒状の側面部16Aと、を含む蓋部13Aを用いる。実施の形態1とは異なり、蓋部13Aは基部9Aと分離可能である。側面部16Aの内周面には雌ねじ16Aaが形成されており、雄ねじ22aに対して雌ねじ16Aaを螺合させることで、蓋部13Aを基部9Aに対して固定する。これにより、容器本体部2内は密閉された状態となる。
【0034】
本発明は実施の形態1,2に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で設計変更が可能である。また、容器本体部2の素材はプラスチック樹脂に限定されず、硝子、スチール、アルミニウム等でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
利便性に優れた脈動防止具および脈動防止具を備えた容器を提供することができる。
【符号の説明】
【0036】
1,1A 脈動防止具
2 容器本体部
3 口部
3b 雄ねじ
6a 底部
9,9A 基部
9a 開口
10a 雌ねじ
13 蓋部
19 エア導入管保持部
20 エア導入管
20a エア流路