(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】格子ミラーを有する回折ディスプレイ要素
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20250212BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20250212BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20250212BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B5/00 Z
G02B27/01
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2020540487
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 FI2019050065
(87)【国際公開番号】W WO2019155117
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-11-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-12
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520184365
【氏名又は名称】ディスペリックス オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルッコネン、ユーソ
(72)【発明者】
【氏名】マイエヘーネン、ペトリ
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】本田 博幸
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/118930(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/039278(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0219841(US,A1)
【文献】国際公開第2017/123793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 5/00
G02B27/02
G02B27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折ディスプレイ要素であって、前記回折ディスプレイ要素は、
導波路本体(50)と、
光を前記導波路本体内に回折し結合するための入力結合領域(52)と、
光を前記導波路本体から回折し結合するための出力結合領域(56)と、を備え、前記光は、前記入力結合領域から前記出力結合領域まで主要なルートに沿って伝搬するように構成され、前記主要なルートは、前記主要なルートに沿って外れていない光が、前記導波路本体の中において、前記入力結合領域から前記出力結合領域まで、及び、さらに前記導波路本体から出て辿るルートであり、
前記要素は、少なくとも1つの格子ミラー(53A-D)をさらに備え、前記少なくとも1つの格子ミラー(53A-D)の少なくとも50%は、前記入力結合領域及び出力結合領域によって横方向に広がるゾーンの外側に位置しており、前記ゾーンは、前記主要なルートを含み、前記少なくとも1つの格子ミラーは、前記主要なルートから外れた光を前記主要なルートに戻して回折し反射させるように構成されており、前記主要なルートから外れた光は、前記主要なルートから離れた1つ又は複数の回折次数の回折に
起因しており、前記少なくとも1つの格子ミラーがなければ失われることとなる光であり、又は、
前記主要なルートから外れた光は、前記主要なルートと相互作用することなく、前記主要なルート上の格子領域にわたり光線が進むことに
起因しており、前記少なくとも1つの格子ミラーがなければ失われ
ることなる光であり、
前記格子ミラー(53A)は、前記主要なルートから見て前記入力結合領域(52)の後方に位置し、前記主要なルートから離れた前記入力結合領域における回折により外れた光を捕らえるようになっており、その光を前記主要なルートに向けて反射して戻すようになっている、又は、
前記出力結合領域(560D)は、組み合わせた出力結合及び射出瞳拡大格子を備え、前記出力結合領域の少なくとも2つの側に格子ミラー(531D、532D、533D、534D)が提供される、又は、
前記要素は、前記主要なルート上の射出瞳拡大領域(54)をさらに備え、前記主要なルートから見て前記射出瞳拡大領域の後方に位置する2つの格子ミラー(53C、53D)が、前記射出瞳拡大領域の2つの異なる側に存在
し、
前記入力結合領域(52)は、前記導波路(50)の表面上に配置される入力結合格子を備え、前記格子ミラー(53A-D)は、前記入力結合格子と前記導波路の同じ前記表面上に位置する、又は、
出力結合領域(56)は、前記導波路の表面上に配置される出力結合格子を備え、前記格子ミラーは、前記出力結合格子と前記導波路の同じ前記表面上に位置する、
回折ディスプレイ要素。
【請求項2】
前記入力結合領域(52)は、入力結合周期を有する格子を備え、前記出力結合領域(56)は、出力結合周期を有する格子を備え、前記格子ミラーは、前記入力結合周期又は出力結合周期の半分に達する格子ミラー周期を有する格子を備える、
請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記格子ミラー(53A-D)は、前記反射のために1次反射回折次数を用いるように構成される、
請求項1又は2に記載の要素。
【請求項4】
前記格子ミラー(53A-D)は、迷光の伝搬方向に対して反対の伝搬方向に光を反射するように構成される、
請求項1から3までのいずれかに記載の要素。
【請求項5】
前記格子ミラー(53A)は、前記入力結合領域(52)から前記入力結合領域を過ぎて前記格子ミラーまで回折される光の少なくとも一部を、前記主要なルートまで、前記主要なルート上の射出瞳拡大格子の方に向けるように構成される、
請求項1から4までのいずれかに記載の要素。
【請求項6】
前記格子ミラー(53D)は、前記主要なルートから見て前記出力結合領域の後方に位置する、
請求項1から5までのいずれかに記載の要素。
【請求項7】
前記出力結合領域(560D)は、組み合わせた出力結合及び射出瞳拡大格子を備え、前記出力結合領域の4つの側にミラー格子(531D、532D、533D、534D)が提供される、
請求項1から6までのいずれかに記載の要素。
【請求項8】
迷光は、
前記主要なルートに直接向けられた光とは反対の回折次数に前記入力結合領域から逃れる光(28)、
前記出力結合領域から出力結合されずに、前記出力結合領域から逃れる光(43)、
その最初の伝搬方向の方に射出瞳拡大領域から逃れる光(36)、
前記出力結合領域とは反対方向に射出瞳拡大領域から逃れる光(38)、
のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1から7までのいずれかに記載の要素。
【請求項9】
前記格子ミラー(53A-D)全体は、前記入力結合領域(52)及び前記出力結合領域(56)によって、及び、射出瞳拡大領域によって横方向に広がるゾーン(62)の外側に位置する、
請求項1から
8までのいずれかに記載の要素。
【請求項10】
前記要素は、複数の前記格子ミラー(53A-D)を備える、
請求項1から
9までのいずれかに記載の要素。
【請求項11】
請求項1から
10までのいずれかに記載の回折ディスプレイ要素及びイメージを前記入力結合領域に示すためのイメージ・プロジェクタを備えるパーソナル・ディスプレイ・デバイス。
【請求項12】
前記パーソナル・ディスプレイ・デバイスは、ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)又はヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)である、請求項
11に記載のパーソナル・ディスプレイ・デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回折ディスプレイ技術に関する。特に、本発明は、入力結合格子、出力結合格子、及びオプションで射出瞳拡大(EPE)格子を備える導光体ベースの回折ディスプレイ要素に関する。この種のディスプレイ要素は、パーソナル・ディスプレイ、例えば、ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)、例えば、ニアアイ・ディスプレイ(NED)及びヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)において使用可能である。
【背景技術】
【0002】
HMD及びHUDは、導波路技術を用いて実施可能である。光は、導波路に結合することができ、導波路内で向けなおすことができ、又は、回折格子を用いて導波路から出力結合することができる。1つの従来のディスプレイ設計では、光はプロジェクタから入力結合格子まで向けられ、入力結合格子は入射光を導波路内に回折させ、導波路では、光は全反射を介して出力結合格子の方に伝搬する。出力結合格子は、導波路から光を回折させ、入力結合格子に最初に表示されたイメージを複製する。EPE格子は、入力結合格子と出力結合格子との間で用いられ、ディスプレイの可視領域を横方向に拡大する。
【0003】
導波路ベースのディスプレイの1つの問題は、導波路要素、すなわちその上に配置される導波路本体及び格子の全効率が、典型的には、約0.1から5%と非常に低いということである。これは、格子の比較的低い結合効率及び光が要素内を進む間に生ずる他の損失のためである。
【0004】
したがって、導波路ディスプレイを改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、導波路ディスプレイの効率を増加させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
目的は、独立請求項において述べられることによって達成される。
【0007】
本発明は、入力結合格子から出力結合格子の方にルートから外れた光がこのルートに戻されるように、少なくとも1つの格子ベースのミラーを導波路要素に提供するというアイディアに基づく。すなわち、さもなければ失われた光は、光の「通常の」ルートを定義する格子の1つに反射されて戻り、さらに出力結合格子の方に反射される。
【0008】
一態様によれば、回折ディスプレイ要素が提供され、回折ディスプレイ要素は、導波路本体と、光を導波路本体内に回折し結合するための入力結合領域と、光を導波路本体から回折し結合するための出力結合領域と、を備え、前記光は、前記入力結合領域から出力結合領域まで主要なルートに沿って伝搬するように構成される。本発明によれば、要素は、前記主要なルートから外れた光を前記主要なルートに戻して回折し反射させるための少なくとも1つの格子ミラーを前記主要なルートの外側にさらに備える。
【0009】
主要なルートから外れることは、例えば、主要なルートから離れた1つ又は複数の回折次数の回折により、又は、それと相互作用することなく、主要なルート上の格子領域にわたり光線が進むことにより発生しうる。
【0010】
他の態様によれば、例えば、この種類の回折ディスプレイ要素及びイメージを入力結合領域に向けるためのイメージ・プロジェクタを備えるパーソナル・イメージ・ディスプレイ・デバイスが提供され、入力結合領域では、それは、回折され、全反射を介して進むための導光体に結合される。イメージは、要素の出力結合領域によって、最初のイメージを見るユーザの目の方に出力結合される。デバイスは、ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)、例えば、ニアアイ・ディスプレイ(NED)又はヘッド・アップ・ディスプレイ(HUD)とすることができる。
【0011】
本発明は、重要な利点を提供する。第1に、本発明は、一般的に、導波路要素の効率を増加させる。なぜなら、ミラー格子は、さもなければ無駄になる光を捕えることができ、したがって、より多くの光が入力結合器から出力結合器まで導かれるからである。これは、ディスプレイの輝度が増加する、又は、プロジェクタの出力を減少できるという利点を有する。
【0012】
本発明の実施例は、さらなる利点を有する。例えば、格子ミラーが入力結合又は出力結合格子に関連して用いられるとき、以下で詳述するように、イメージの均一性を増加することができる。
【0013】
また、本発明によって、入力結合格子のサイズを減少することができ、これは、ディスプレイの形状因子及びサイズ要件にプラスの影響を与える。
【0014】
導波路の端は、最初の虚像と整合しない鏡像を生成するため、(例えば、反射材料でコーティングすることによって)ミラーとして用いることができないことに留意されたい。しかしながら、この格子ベースのミラーは、イメージのトポロジを維持し、それゆえそれを強化する。
【0015】
従属請求項は、本発明の選択された実施例に向けられる。
【0016】
いくつかの実施例では、入力結合領域は、入力結合周期を有する格子を備え、格子ミラーは、入力結合周期の半分に達する格子ミラー周期を有する。これは、典型的には入力結合格子の格子線に平行な格子線を有する入力結合格子ミラー又は垂直EPE格子ミラーのために特に有益である。
【0017】
いくつかの実施例では、出力結合領域は、出力結合周期を有する格子を備え、格子ミラーは、出力結合周期の半分に達する格子ミラー周期を有する格子を備える。これは、典型的には入力結合格子の格子線に垂直な格子線を有する出力結合格子ミラー又は水平EPE格子ミラーのために特に有益である。
【0018】
いくつかの実施例では、格子ミラーは、前記反射のために1次反射回折次数を用いるように構成される。特に、1次のプラスの次数が使用可能である。
【0019】
いくつかの実施例では、格子ミラーは、迷光の伝搬方向に対して反対の伝搬方向に実質的に光を反射するように構成される。しかしながら、後述するように、斜めの反射もまた使用可能である。
【0020】
いくつかの実施例では、格子ミラーは、入力結合領域に関連付けられ、すなわち、主要なルートから見ると、入力結合領域の後方に位置する。1つの実例では、格子ミラーは、入力結合領域から入力結合領域を過ぎて格子ミラーまで回折される光の少なくとも一部を、主要なルートまで向けるように構成される。これを用いて、ディスプレイの強度均一性を増加させることができる。他の実例では、入力結合領域は、偏光に高感度であり、要素は、反射光の偏光状態を変化させるための手段を備え、入力結合領域を通過する反射光の出力結合を防止する。これは、効率をさらに増加させる。
【0021】
いくつかの実施例では、格子ミラーは、出力結合領域に関連付けられ、すなわち、主要なルートから見ると、出力結合領域の後方に位置する。これは、ディスプレイの全体の効率を増加させ、イメージの均一性もまた増加させる。
【0022】
いくつかの実施例では、要素は、主要なルートの一部を形成する射出瞳拡大(EPE)領域をさらに備える。EPE領域に関連付けられた、すなわち(主要なルートから見ると)EPE領域の後方に位置する2つの格子ミラーが、横方向にその異なる側に存在する。これはまた、ディスプレイの全体の効率を改善し、このことは、EPEが用いられるとき、ディスプレイの射出瞳を増加させながら、さもなければ大きな損失を与えるので、特に重要である。
【0023】
典型的な実施例では、格子ミラーの少なくとも大部分、典型的には格子ミラー全体は、入力結合領域及び出力結合領域によって、及びオプションで射出瞳拡大領域によって横方向に広がるゾーンの外側に位置する。本願明細書において、このゾーンは、光が、入力結合器から出力結合器まで、及び、さらに導波路から出て進むことを意図する主要なルートを含む「主要な伝搬ゾーン」と呼ばれる。
【0024】
いくつかの実施例では、主要な反射方向の格子ミラーの寸法は、反射される伝搬光のホップ長より大きい。これは、最大効率を確実にする。
【0025】
単一の導波路上の格子ミラーの数は、例えば、1、2、3又は4とすることができる。上述した4つの典型的な位置は、以下に詳細に示される。
【0026】
次に、本発明の実施例及びその利点は、添付の図面を参照してさらに詳細に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2A】入力結合格子に関連付けられた格子ミラーの詳細な平面図を示す。
【
図2B】入力結合格子に関連付けられた格子ミラーの詳細な平面図を示す。
【
図3】EPE格子に関連付けられた格子ミラーの詳細な平面図を示す。
【
図4A】出力結合格子に関連付けられた格子ミラーの詳細な平面図を示す。
【
図4B】
図4Aの構成において行われている反射事象のk空間表現を示す。
【
図5A】導波路ミラーを異なる位置に備える導波路要素の導波路の全体図を示す。
【
図5B】導波路ミラーを異なる位置に備える導波路要素の導波路の全体図を示す。
【
図5C】導波路ミラーを異なる位置に備える導波路要素の導波路の全体図を示す。
【
図5D】導波路ミラーを異なる位置に備える導波路要素の導波路の全体図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、回折導光体のための従来の格子構成を示す。導光体面は、入力結合格子11、射出瞳拡大(EPE)格子12及び出力結合格子13を含む。上述したように、このような回折導光体の全効率は、典型的には比較的低い。すべての格子は、なんらかの光損失を生ずる。入力結合器は、+/-1の回折次数によって、光線15及び14を生成する。光線14のエネルギーは失われる。EPE格子は、光線15の入射エネルギーの一部を出力結合器の方に向け、残りは光線16を介して失われる。出力結合器は、EPEから来る光線を部分的に出力結合するが、光線17は、出力結合器の後、導光体の内側に残る。一般的に望ましくない損失を生ずる光線14、16、17は、本願明細書において集合的に、「迷光」又は「迷光線」と呼ばれる。
【0029】
本発明の実施例によって迷光線14、16及び17を出力結合器上に向けなおすことによって、導光体の全効率は増加する。上述したように、これは、ミラーとして作用する格子を用いて有利に実行され、それにより、光をその最初の伝搬方向に実質的に戻して反射することができる。
【0030】
要約すると、例えば、迷光は、前記主要なルートに直接向けられた光とは反対の回折次数に入力結合領域から逃れる光、出力結合領域から出力結合されずに、出力結合領域から逃れる光、その最初の伝搬方向の方に射出瞳拡大領域から逃れる光、又は、出力結合領域とは反対方向に射出瞳拡大領域から逃れる光を含んでもよい。本発明の実施例は、これらのケースのすべての利点を提供する。
【0031】
1つの実例では、格子ミラーは、要素の入力結合格子の周期の正確に半分である周期を有する線形(1次元)格子である。これらの2つの格子間の格子線方向は、典型的には、格子ミラーの使用の位置に応じて、同一であるか又は90度傾いている。EPEによって、光の伝搬方向の90度の変化が生ずる直角配置が本願明細書において示されているが、本発明が他の任意の配置でも使用可能であることに留意されたい。
【0032】
図2Aは、格子ミラー22Aを伴う入力結合格子21(「入力結合器」)を示す。入力結合器22Aの1次回折次数は、光線23、26を主要なルートの方に生成し、一方、マイナス1次の次数は、格子ミラー22Aの方に伝搬する光線24、28を生成する。格子ミラー22Aからの斜光線24の反射は、光線23に平行な光線25を生成し、したがって、入力結合器21を迂回し、主要な伝搬経路の方に進む。この構成を用いて、より詳しくは
図5Aに示されるように、例えば、特にイメージの角領域上の明るさを増加させることができる。この領域は、従来の構成では輝度が低い。
【0033】
小さい入射角を有する光線28は、光線29として入力結合器21の方に反射され、それによって、それらの一部は、入力結合器によって出力結合される。これは、一般的に望ましくないが、偏光に高感度な入力結合器21及び入射光の偏光状態を変化させる格子ミラー22を用いて、少なくとも部分的に防止可能である。代替的には、導波路の表面上の偏光変化要素が、入力結合器21と格子ミラー22Aとの間に存在してもよい。
【0034】
図2Bは、格子ミラーが入力結合器の周りに部分的に配置される代替実施例を示す。すなわち、ここでは、入力結合器21の外面の半分近くは、格子ミラー22Bによって囲まれる。これを用いて、迷光を「捕える」ことによってさらに効率を増加させることができる。
【0035】
格子ミラー22A、22Bは、2倍の長さ、すなわちGM_IC=2GICである点以外、入力結合器21の格子ベクトル(GIC)と同一の格子ベクトル(GM_IC)を有する。これは、入力結合器21及び格子ミラー22A、22Bの格子溝が平行であるが、格子ミラー22A、22Bの周期は入力結合器21の周期の半分だけであることを意味する。格子ミラー22A、22Bは、各光線が少なくとも一回格子ミラー22A、22Bと相互作用するように、光線伝搬の方向に長い必要がある。これらの有利な原則は、一般的に、他の実施例にもあてはまる。
【0036】
図3では、2つの格子ミラー32、33を用いて、EPE格子31の効率を強化する。入射光線34がEPE格子31と相互作用するとき、垂直及び水平の出力光線36、38が生成される。水平の出力光線35は、出力結合器の方に伝搬する。垂直の出力光線36は、垂直に配置された格子ミラー32に当たり、EPE格子の方に戻って反射される。垂直格子ミラー32は、格子ベクトルG
VM_EPE=-2G
ICを有する。EPE格子ベクトルの方向のため、入力結合器の方に伝搬する光線37は、部分的に光線38に分割され、光線38は、格子ベクトルG
HM_EPE=-2G
OCを有する水平格子ミラー33の方に上方に伝搬し、ここで、G
OCは出力結合格子の格子ベクトルである。反射光線39は、EPE格子と再び相互作用する。光線は、EPEの内部で回折し、分割する。回折光線の一部は出力結合器で終わり、ある部分は垂直格子ミラーで終わる。これは、格子ミラーが100%の効率を有する場合、光が実質的に出力結合器の方にのみ逃げ、光が失われないことを意味する。
【0037】
図4Aは、格子ミラー42を有する出力結合器41を示す。出力結合器を通って進んだ光線43は、格子ミラーで回折し、反射光線44を生成する。反射光線は、出力結合器41を通って進み、目の方に部分的に出力結合する。格子ミラー42は、格子ベクトルG
M_OC=2G
OCを有する。
【0038】
図4Bは、虚像の正規化された波数ベクトル成分がどのように出力結合器41の格子ベクトル及び格子ミラー42によって平面(k
x、k
y)でシフトされるかを示す。出力結合器41は、「屈折率ドーナツ」の内側の第1の位置45から中心の第2の位置46までイメージ・ボックスを移動し、一方、格子ミラー42は、第1の位置45から第3の位置47までイメージを移動し、依然として「ドーナツ」の内側で反対方向に伝搬する。光線が全反射を介して導光体内部で伝搬するとき、(k
x、k
y)の正規化された波数ベクトルは、1(空気の屈折率)より大きいが、導波路の屈折率(n
wg)より小さい長さを有する。(k
x、k
y)ベクトルがより長いほど、導波路表面の間で伝搬するとき、光線が行うジャンプはより長い。
【0039】
図4Bはまた、イメージ点48(黒点によってマークされる)の位置が格子反射の後、単位円に関してどのように変化するかについても示す。距離はより大きくなる。これは、格子反射の後、光線がより長いジャンプによって伝搬することを意味する。内側境界より外側境界により近い(k
x、k
y)点のために後退が起こる。したがって、下方及び上方に伝搬する光線の平均ジャンプ長がより等しくなるとき、格子ミラーを用いて、出力結合器におけるより均一な強度分布を得ることができる。これはまた、典型的には、入力結合器のサイズが、導光体内部の光線の最大ジャンプ長から定義されるので、入力結合器が1次元により小さくできることも意味する。入力結合器がより小さいほど、プロジェクタはより小さく、メガネ類の形状因子はより良好になる。出力結合器におけるより均一な強度分布はまた、視野及びアイボックスにおける白色の均一性がより良好になることを意味する。
【0040】
図5Aから
図5Dは、入力結合器52、EPE格子54及び出力結合器56を備える例示的な導波路50を用いて上述した実施例を詳細に示す。
図5Aでは、入力結合器52の後方に位置決めされる入力結合格子ミラー53Aが存在する。EPEが入力結合器から「間違った」方向に、また少なくともいくつかの斜角で出射する光線を捕えることができるように、ミラー53A及びEPE54は、入力結合器52に対して位置決めされる。これは、前方の角領域におけるイメージの均一性を増加させる。
図2A及び
図2Bを参照して上述したように、効率の改善はまた、直接水平光線の使用を捕えることによって、特に偏光を利用することによって達成可能である。
【0041】
図5Bは、EPE格子54にそれぞれ隣接する水平及び垂直ミラー格子53B、53Cを用いる利点を概略的に示す。図示のように、EPEを水平に通過する光の部分は、垂直に配置されたミラー格子53Cによって戻って反射される。反射光の大部分は、EPEによって、水平に配置されたミラー格子53Bの方向にさらに向けられ、さらに出力結合器56の方に戻って反射される。
【0042】
図5Cは、出力結合器56の後方のミラー格子53Bの利点を示す。
【0043】
図5Dは、二重周期の出力結合/瞳拡大格子560Dが、水平格子ミラー(533D、534D)及び垂直格子ミラー(531D、532D)によって囲まれる格子構成を示す。入力結合格子520Dは、通常の線形格子又は二重周期格子とすることができる。入力結合格子520Dは、
図5Dに示すように、組み合わせた出力結合/瞳拡大格子560Dの外側境界内に位置することができるか、又は、その側に位置することができる。
【0044】
すべての場合において、ミラー格子は、好ましくは、それが関連付けられた格子のそれぞれの寸法と少なくとも同一であるか又はそれより大きい幅を有する。ミラー格子の垂直な平面方向の寸法、すなわち、主伝搬方向の長さは、好ましくは、全反射を介して導波路内で伝搬する光線のホップ(ジャンプ)長より大きく、ホップ(ジャンプ)長は、基板の厚さ、用いられる波長及び格子によって決定される光線の伝搬角度に依存する。
【0045】
いくつかの実施例では、ミラー格子は、実質的に矩形形状を有する。典型的には、格子ミラーは、その格子ベクトルに平行な寸法(長さ)が格子線に沿った寸法(幅)より短い。
【0046】
最後に、
図6は、入力結合、出力結合及びEPE格子によって横方向に広がる主要な伝搬ゾーン62(すなわち、格子の周りに配置されたゴムバンドのような、最小の円周で格子を完全に囲むゾーン)を示す。したがって、主要なルートは、導波路の特性とともにこれらの格子によって完全に区画され、それによって、光線の主要な伝搬経路は、このゾーンの内側に残る。ミラー格子は、このゾーンの外側に位置する。しかしながら、例えば、
図2Bの構成においてありうるように、ミラー格子のいくつかの部分が主要な伝搬ゾーン62の内側にあることは除外されない。しかしながら、典型的には、各ミラー格子の少なくとも50%、例えば少なくとも75%は、このゾーン62の外側にある。
【0047】
大きな射出瞳が必要とされないいくつかの用途では、EPE格子は省略可能である。
【0048】
EPE格子の代わりに、又は、EPE格子に加えて、要素は、導波路内部の光照射野を修正するように構成された1つ又は複数の中間格子を備えてもよい。1つ又は複数の追加の格子ミラーは、この種の追加格子に関連付けられてもよい。
【0049】
製造の単純化に関して有益な典型的な実施例では、格子ミラーは、それが関連付けられた格子と導波路の同じ表面上に位置するが、格子ミラーはまた、他の表面上に位置することもできる。ミラー格子が両方の表面上に存在することもまた除外されない。
【0050】
また、本発明がさまざまな他のディスプレイ形状及び構成に適用できる点に留意されたい。例えば、視野(FOV)又は全波長範囲は、FOV又は波長が異なるルートに沿って少なくとも部分的に伝搬するような適切な格子配置によって分割可能である。これらの場合、本願明細書において述べられるミラー格子及び原則は、すべてのこれらの格子及びルートのために別々に使用可能である。
【0051】
多層導波路の場合、例えば、各層が異なる波長帯域を扱う場合、本発明の実施例は、各層に別々に適用可能である。
【0052】
本発明の実施例は、広帯域照明及び(狭いマルチバンドを含む)狭帯域照明及びプロジェクタにおいて使用可能である。
【0053】
導波路は、平面透明材料、典型的には、プラスチック又はガラスの平面部品とすることができ、2つの平行な主面を有することができる。すべての格子52、53A-D、54、56は、例えば、表面レリーフ格子(SRG)として、又は、追加の材料を回折特徴として表面に提供することによって、又は、他の回折光学素子(DOE)として製造可能である。1つ実例では、格子は、少なくとも1つの酸化物又は窒化物材料、例えば、TiO2、Si3N4及びHfO2からなる線形特徴をガラス導波路上に備える。