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特許7632921生産管理システム、生産管理方法、および、そのプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】生産管理システム、生産管理方法、および、そのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20250212BHJP
【FI】
G06Q50/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024006055
(22)【出願日】2024-01-18
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】福士 徹
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/022045(WO,A1)
【文献】特開2019-074817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/00
G06Q 10/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場の映像より作業者によって得られた成果物置くための所定領域を抽出する抽出手段と、
前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時刻および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時刻を解析ログとして記録する判定手段と、
前記人の手の形を検出した時刻から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時刻までの時間経過が所定値より大きい場合、成果物の実出来高を加算する管理手段と、
を備える、生産管理システム。
【請求項2】
前記管理手段は、前記人の手の形を検出できなくなった時刻から次に前記人の手の形を検出した時刻までの経過時間を、前記成果物を作成した時間であるサイクルタイムとして記録する、
請求項1に記載の生産管理システム。
【請求項3】
前記管理手段は、前記成果物の1個当たりの期待作成時間であるタクトタイムと前記サイクルタイムとを比較し、前記タクトタイムより前記サイクルタイムが長い場合、作業の遅延ありと判定する、
請求項2に記載の生産管理システム。
【請求項4】
前記管理手段は、前記成果物の所定個数のサイクルタイムの平均値または移動平均値を前記サイクルタイムとする、
請求項3に記載の生産管理システム。
【請求項5】
前記管理手段は、前記成果物の単位時間当たりの期待出来高数と前記単位時間当たりの前記実出来高との比較により作業の遅れの有無を判定する、
請求項1に記載の生産管理システム。
【請求項6】
前記抽出手段は、映像中の座標位置により指定された領域を前記所定領域として抽出する、
請求項1に記載の生産管理システム。
【請求項7】
前記所定領域を含む作業現場の撮影を行う撮影装置を備え、
前記抽出手段は、前記撮影装置からの映像より前記所定領域を抽出する
請求項1から6のいずれか1項に記載の生産管理システム。
【請求項8】
前記撮影装置は、前記所定領域を含む複数の作業現場の撮影を行うために前記作業現場ごとに設けられ、
前記抽出手段、前記判定手段、前記管理手段は、それぞれ、前記撮影装置ごとに得られる映像に対する処理を行う、
請求項7に記載の生産管理システム。
【請求項9】
作業現場の映像より作業者によって得られた成果物置くための所定領域を抽出し、
前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時刻および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時刻を解析ログとして記録し、
前記人の手の形を検出した時刻から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時刻までの時間経過が所定値より大きい場合、成果物の実出来高を加算する、
ことをコンピュータが実行することにより行う生産管理方法。
【請求項10】
作業現場の映像より作業者によって得られた成果物置くための所定領域を抽出し、
前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時刻および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時刻を解析ログとして記録し、
前記人の手の形を検出した時刻から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時刻までの時間経過が所定値より大きい場合、成果物の実出来高を加算する、
ことをコンピュータに実行させる生産管理のためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産管理システム、生産管理方法、および、そのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の国内製造現場では働き手不足や、少量多品種生産のニーズもあり、従来の業務をより少人数で効率的に運用することが求められる。従来、汎用的に実施されている人手で行われる作業把握・改善は、生産管理者が生産現場に赴きストップウォッチで動作計測するといった手法である。人手でデータ採取・分析・改善検討を実施するため運用コストが高く、特に必要だと判断される場面で局所的に運用されるのみで、恒常的に実施可能なものでは無かった。
【0003】
上記に対して、例えば、特許文献1は、作業領域を撮像した映像から手を検出し、手の検出の結果に基づいて、作業工程における作業の停止の判定をすることにより、作業工程の改善支援を行う技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-072116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業工程の改善の最終的な目標は、作業により期待する出来高が得られるかの生産管理である。特許文献1に記載された作業工程の改善支援を行う技術は、作業により期待する出来高が得られるための間接的な支援になるものの、直接、出来高を管理できるものではない。
【0006】
本開示の目的は、上述の課題を解決する生産管理システム、生産管理方法、および、そのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る生産管理システムは、作業現場の映像より作業者による成果物となる商品を置くための所定領域を抽出する抽出手段と、前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時間および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間を解析ログとして記録する判定手段と、前記人の手の形を検出した時間から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間までの時間経過が所定値より大きい場合、商品の実出来高を加算する管理手段と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る生産管理方法は、作業現場の映像より作業者による成果物となる商品を置くための所定領域を抽出し、前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時間および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間を解析ログとして記録し、前記人の手の形を検出した時間から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間までの時間経過が所定値より大きい場合、商品の実出来高を加算する、ことをコンピュータが実行することにより行う。
【0009】
本開示の一態様に係る生産管理のためのプログラムは、作業現場の映像より作業者による成果物となる商品を置くための所定領域を抽出し、前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時間および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間を解析ログとして記録し、前記人の手の形を検出した時間から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間までの時間経過が所定値より大きい場合、商品の実出来高を加算する、ことをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
上記一態様によれば、作業により期待する出来高に基づく生産管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示における生産管理システムの機能ブロックを示した図である。
図2】作業台とその上の配置領域に対する撮影装置の撮影方向について説明する図である。
図3】制御部の抽出部および取得部による映像解析の処理フローを示す図である。
図4】制御部の判定部による処理フローを示す図である。
図5】作業台を複数ベルトコンベアに接続する様に配置し、作成した成果物をベルトコンベアに置いて配送する例を示す図である。
図6】本開示の一実施形態による生産管理システムの構成例を示す図である。
図7】生産管理システムにおけるハードウェアの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において同一または相当する構成には同一の符号を付し、共通する説明は省略する。図1は、本開示における生産管理システムの機能ブロックを示した図である。生産管理システム(1)は、制御部(2)と記録部(3)を備える。制御部(2)は、生産管理を行うための機能として抽出部(21)、取得部(22)、判定部(23)を備える。また、記録部(3)は、生産管理を行う際に必要なる情報や処理で得られる情報として、解析ログ(31)および管理パラメータ(32)を記録する。
【0013】
制御部(2)の抽出部(21)は、作業者の人手による作業現場の映像より作業者による成果物となる商品を置くための配置領域(5)を抽出する。取得部(22)は、配置領域(5)の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、人の手の形を検出した時間および検出後に人の手の形を検出できなくなった時間を解析ログとして記録する。判定部(23)は、人の手の形を検出した時間から人の手の検出後に人の手の形を検出できなくなった時間までの時間経過が所定値より大きい場合、商品の実出来高を加算する。また、判定部(23)は、商品の1個当たりの期待作成時間であるタクトタイムと、作業者により実際に作成される商品1個の作成時間であるサイクルタイムとを比較し、作業者による作業の遅れの有無等の作業工程分析も行う。
【0014】
記録部(3)の解析ログ(31)は、制御部(2)での処理の結果得られるデータを保持する。管理パラメータ(32)は、抽出部(21)における処理のためのデータ、取得部(22)によるデータ収集のためのパラメータや、判定部(23)による作業分析のためのパラメータを記録する。
【0015】
また、生産管理システム(1)は、作業者の人手による作業現場を撮影する撮影装置(4)を備える。生産管理システム(1)と撮影装置(4)とは、LAN(Local Area Network)等のネットワーク(6)を介して接続される。
【0016】
撮影装置(4)は、管理・作業分析対象となる作業者の人手による作業状況や、作業により得られる商品を撮影する。本開示では、作業者の作業台に部品Aと梱包箱Bがあり、作業者が手作業で部品Aを梱包箱Bで梱包し、商品Cを作る作業を例とする。また、作業者が作業時間1時間で商品を30個作成することを目的とする作業現場を想定して説明する。図1において、符号51は、商品Cを作成する作業台とし、作業台の上で作業者の生産活動の成果物である商品Cが完成した際、机の所定領域に配置するものとする。ここで、作業台の成果物を配置する所定の領域を配置領域(5)とする。
【0017】
図2は、作業台とその上の配置領域(5)に対する撮影装置(4)の撮影方向について説明する図である。図2において、作業者が作業台(51)の一端で梱包作業を行い、もう一端で成果物となる商品を配置領域(5)に置くような梱包作業を行っているとする。この場合、配置領域(5)に成果物を置く作業を視覚的に判別するためには撮影方向Bより撮影方向Aがより判別し易い。なぜならば撮影方向Bに比べ撮影方向A、作業者が作業を行う中で成果物領域に手を入れているか入れていないかを映像から判断することがより容易となり、さらに、作業台(51)および作業者を含む撮影が容易となるからである。そこで、撮影装置(4)による画角を例えば、配置領域(5)を含む作業台(51)および作業者が共に撮影できる範囲とする。これにより、通常の作業者における撮影装置(4)での作業監視も行えるようになる。
【0018】
次に、生産管理システム(1)の動作について説明する。ここでは、撮影装置(4)が作業台(51)および作業者が入る範囲の画角で作業現場を撮影し、ネットワーク(6)を介して生産管理システム(1)にリアルタイムで送信するものとする。映像を受信した生産管理システム(1)は、受信した映像に対する映像解析と、解析結果に基づく生産管理を行う。以下、生産管理システム(1)による映像解析と生産管理の仕組みについて説明する。
【0019】
図3は、制御部(2)の抽出部(21)および取得部(22)による映像解析の処理フローを示す図である。映像解析を開始する前の設定として、映像中の配置領域(5)を設定する(S11)。例えば、固定設置された撮影装置(4)の解像度がFHD(Full High Definition)の1920×1080ピクセルの映像が入力される場合、(x,y)=(0,0)から(1920,1080)の座標内で任意の座標“(x1,y1)-(x2,y2)”にて配置領域(5)の領域を設定し、その領域内で手の形の検出を行うことを可能にする。この設定領域は、記録部(3)の管理パラメータ(32)の一部として記録される。
【0020】
生産管理システム(1)は、撮影装置(4)から作業台(51)や作業者を含む範囲の画角で撮影された映像を受信する(S12)。ここで、映像は、連続する複数の画像より構成される。抽出部(21)による映像処理では、実際には、映像を構成する画像の処理となるが、ここでは、映像処理と呼ぶ。
【0021】
抽出部(21)は、受信した映像に対して、管理パラメータ(32)に含まれる設定領域だけを抽出する。そして、取得部(22)は、抽出された映像において、人の手の形が在るかの検出処理をする(S13)。このように、撮影装置(4)では、作業台(51)や作業者全体を撮影し保存するという従来の監視カメラ用途と併用可能にする。また、取得部(22)は、人の手の形を検出した時間を解析ログ(31)として出力する(S13、S14)。ここで、取得部(22)が出力する時間は、手の形を検出した時間Tn(in)から、手の形の検出後に手の形の検出がされなくなった時間Tn(out)とする。すなわち、作業者が完成した商品を配置領域(5)に納め始めた時間および納め終わった時間を記録する。ここで、Tn(in)、Tn(out)の添え字nは、生産管理システム(1)における処理開始からの手の形を検出した時間および手の形を検出できなくなった時間の番号を示す正の整数とする。なお、人の手の形の検出は、画像マッチングやAIによる人の手の形の学習結果を利用することで行う。抽出部(21)は、手の形の検出を継続すべきか判断し(S15)、継続が必要な場合(S15:Yes)、処理をS12に移す。なお、抽出部(21)は、継続が必要か否かの判断を、例えば、後述する、商品の作成数が期待出来高の数に達したか否かで判断する。
【0022】
次に生産管理の仕組みについて説明する。図4は、制御部(2)の判定部(23)による処理フローを示す図である。判定部(23)は、随時、記録部(3)の解析ログ(31)に含まれるTn(in)、Tn(out)を確認する(S21)。
【0023】
判定部(23)は、新たなTn(in)、Tn(out)を確認すると、手を検出した時間Tn(in)から手を検出しなくなった時間Tn(out)より、その経過時間Tn=Tn(out)-Tn(in)を求める。さらに、判定部(23)は、経過時間Tnが、生産管理システム(1)のユーザにより設定可能な生産管理パラメータである所定値Tdelta[sec]との比較を行う(S22).
【0024】
判定部(23)は、経過時間Tn >Tdeltaであった場合、作業者により商品Cの生産が完了して配置領域(5)に成果物である商品Cを置いたと判定し、その作業者の出来高N=+1とインクリメントすることで出来高計測を行い、解析ログ(31)に出力にする(S23)。なお、出来高Nは、生産管理システム(1)による処理開始時に初期化(N=0)される。このように所定値Tdeltaを設けるのは、瞬間的に配置領域(5)に作業者の手が入った場合等のためによる誤検出を除外することを目的としている。図4のS22、S23の処理により、取得部(22)は、作業者が商品Cを作成し、その成果物である商品Cを配置領域(5)に配置していく度に映像解析で手を自動検出する。さらに、判定部(23)が解析ログ(31)に刻々と記録される時刻データを処理し、解析ログ(31)にその作業者の出来高を追記していく。なお、判定部(23)は、経過時間Tn >Tdeltaでない、すなわち誤検出と判断した場合、Tn(in)、Tn(out)を削除する、あるいは、誤検出データとして識別が可能にすることが好ましい。より好ましくは、判定部(23)は、経過時間Tn >Tdeltaであった場合に、出来高値のNを用いて、Tn(in)、Tn(out)の添え字nの値を出来高Nの値として、別途、保存することが好ましい。このようにすることで、後述する作業者による1つの商品を作成する時間であるサイクルタイム (CT)を容易に求めることができるからである。なお、以下のS25、S26の処理において、判定部(23)は、前述の経過時間Tn >Tdeltaであった場合に別途保存したTn(in)、Tn(out)を用いて処理を行うものとして説明する。
【0025】
判定部(23)は、出来高Nが1より大きいか(N>1)を判定する(S24)。出来高Nが1より大きくない場合(S24:No)、判定部(23)は処理をS21に戻す。一方、出来高Nが1より大きい場合(S24:Yes)、判定部(23)は、作業者による(N-1)個目の商品の作成完了時を(N)個目の商品の作成開始とし、(N)個目の商品の作成開始から(N)個目の商品の作成完までのサイクルタイム (CT)を求める。また、判定部(23)は、求めたサイクルタイム (CT)を解析ログ(31)に保存する(S25)。
【0026】
生産管理システム(1)においてユーザが設定可能な管理パラメータ(32)として生産時間Hと期待出来高Mが設定されているものとする。そして、生産管理システム(1)は、解析ログ(31)と併せて、生産時間Hと期待出来高Mを用いることでより高度な生産管理を行う仕組みを提供する。今回の例では生産時間H=:1[h]、と期待出来高M=30[個]する。この場合、作業者は1時間の中で30個の商品Cを作業で作成する出来高期待となるので、2分/個(=60分/30個)での作業が期待されていることになる。この時間を、以下、タクトタイム(TT)と呼ぶ。なお、以下の例では、期待出来高Mに達することで、作業者による作業は終了するものとする。
【0027】
上記の場合、誤判定を除き、手を検出した時間はT1,T2…Tn(n:1~30)まで繰り返されることが期待となる。そこで、判定部(23)は、n個目の商品完了で配置領域(5)にて手が検出された時間であるTn(in)と(n-1)個目の商品完了で配置領域(5)にて手が検出された後に手が検出されなくなった時間であるTn-1(out)を用いて、n個目の商品におけるサイクルタイムCTn= Tn(in)-Tn-1(out) (ここで添え字n>1)を計算することで、2個目以降の商品Cをそれぞれ作成した時間であるサイクルタイム (CT)を求め、解析ログ(31)に保存する(S25)。
【0028】
判定部(23)は、タクトタイム(TT)-サイクルタイムCTn(添え字n>1) の比較結果を商品の実出来高番号となる“n”と共に解析ログ(31)に保存する。また、ここで、判定部(23)は、TT-CTn<0か判断する(S26)。TT-CTn<0の場合(S26:Yes)、判定部(23)は、実際の製造時間が計画している時間に対して遅れが発生していると判断し(S27)、その旨を記録する。このように、実際の製造時間が計画している時間に対して遅れが発生しているという情報を記録することで、n個目の商品cの作業者による作成作業過程に何らかの問題があると判断できる。さらに、監視映像において、n個目の商品cの作成作業時間である時間Tn-1(out)から時間Tn(in)の作業映像を容易に特定でき、撮影装置(4)で作業台(51)や作業者を撮影した映像による作業者の作業分析を容易にすることができるようになる。
【0029】
一方、TT-CTn<0でない場合(S26:No)、判定部(23)は、作業による出来高Nが期待出来高Mに達するか判断する(S28)。出来高Nが期待出来高Mとならない場合(S28:No)、作業者の作業が続くことから、判定部(23)はS21に処理を移す。一方、出来高Nが期待出来高Mとなる場合(S28:Yes)、作業者による作業が完了することから、生産管理システム(1)は生産管理処理を終了する。
【0030】
なお、判定部(23)は、S26において、それぞれ1つの商品を作成する時間をサイクルタイムとして、タクトタイムと比較している。これに限定するものではなく、判定部(23)は、商品の所定個数のサイクルタイムの平均値をサイクルタイムとし、タクトタイムと比較するようにしてもよい。商品1つ1つの作成時間は、作成時間のばらつきが生じ得るが、平均を取ることで、ばらつきを抑えた作業評価が可能となる。また、平均を取る際の所定個数を生産時間H中の期待出来高Mに一致させることで、生産時間H全体に対する遅れの有無を確認することもできるようになる。また、S26に示す処理で、サイクルタイムCTnは、移動平均を用いてもよい。この場合もばらつきを抑えた作業評価が可能となる。
【0031】
また、判定部(23)は、作業遅れの判断指標として、商品の単位時間当たりの期待出来高数と、同じ単位時間当たりの作用者による実際の出来高数である実出来高との比較により作業の遅れの有無を判定するようにしてもよい。
【0032】
計画している製造時間超過分については残業等で対応することになり、製造現場では製造コストが上がる分純粋なロスとなる。本開示の生産管理システム(1)を用いることで撮影装置(4)をセンサとして活用し、シンプルな方法で出来高と生産進捗遅れを自動的に測定・可視化する生産管理の仕組みが提供可能となる。これによって幅広い人手作業現場に対して早期な是正、対策を可能になり生産現場の生産性向上に活用できる。
【0033】
以下、本開示の応用例として、複数の作業者の各作業者が作業後にその製品をベルトコンベに商品を置く場合の生産管理の例を説明する。図5は、作業台を複数ベルトコンベアに接続する様に配置し、作成した成果物をベルトコンベアに置いて配送する例を示す図である。作業者が作業エリアでの作業後に商品をベルトコンベア置く際、そのベルトコンベア上に手が滞在するタイミングを検出することで、同様の方法により複数作業者の出来高管理、進捗管理を行うことが可能となる。この場合、上述の処理は、作業者毎、すなわち、設置される撮影装置(4)毎に行う。
【0034】
以上の通り、本開示の生産管理システムでは、作業状況を監視する既存の撮影装置(4)を利用できることから、作業環境に応じたIoTセンサ選定や設置を必要となしない。また、特定の運用で作業する作業者動画を映像解析し、人作業のデータをリアルタイムに生成することで、シンプルな出来高把握、生産進捗 把握が可能になる。加えて、サイクルタイムとその日のタクトタイムを逐次比較することでリアルタイムでの作業進捗把握が可能となる。また、遅延している作業者に対して指導・是正のための情報を得やすくなる。
【0035】
また、本開示の生産管理システムを活用することで、作業者毎のサイクルタイムを定量的な実績として取得でき、作業者の実力把握ができる。サイクルタイムが短い作業者、長い作業者の作業時間がデータとして残るため、取りためた動画を漫然と見直すのではなく特定部分の映像比較することで作業者教育に活用できる。
【0036】
通常タクトタイム>サイクルタイムで推移していれば作業改善の優先度が下がり改善作業されない場合が多いが、導入コストが低いため幅広い工程でサイクルタイムの実績値を確認することで潜在的な改善余地を把握・対処することができる。
【0037】
生産現場の人手作業の出来高、進捗把握を、映像解析を用いることで汎用的に可能にする。生産管理者は自動的に出力された進捗情報確を確認することで、効率的かつ恒常的に複数の作業者の進捗把握が可能になる。これにより進捗の悪い作業者に必要な是正処置を行うことが可能となる。結果として、既定時間で作業完了せず残業対応、すなわち、生産に余分な時間・コストがかかる純粋な損失を減らし、生産性向上が可能となる。
【0038】
カメラで作業者の作業を撮影し映像解析を用いてカメラを人作業計測のためのセンサ化し、自動的に出来高管理、進捗状況を可視化するシステムを提供することで 多様な生産現場/方法に汎用的に活用できるだけでなく既設のカメラ設備を有効活用し生産性の向上に繋げることを可能とする。
【0039】
図6は、本開示の一実施形態による生産管理システム(1)の構成例を示す図である。生産管理システム(1)は、抽出部(21)(抽出手段)と、取得部(22)(取得手段)と、判定部(23)(判定手段)と、を備える。抽出部(21)は、作業現場の映像より作業者による成果物となる商品を置くための所定領域を抽出する。取得部(22)は、前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時間および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間を解析ログとして記録する。判定部(23)は、前記人の手の形を検出した時間から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間までの時間経過が所定値より大きい場合、商品の実出来高を加算する。
【0040】
図7は、生産管理システム(1)におけるハードウェアの構成の一例を示すブロック図である。ここで、生産管理システム(1)は、CPU(61)、RAM(Random Access Memory)(62)、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ(63)、記録装置(64)等により構成される。不揮発性メモリ(63)および記録装置(64)には、生産管理システム(1)の制御部(2)の機能を実現するプログラムが記録される。RAM(62)は、CPU(61)等が稼働中に用いるデータ等を一時的に記憶する作業領域等として利用される。また生産管理システム(1)は、キーボード、マウス、表示装置等の入出力装置を接続するための入出力ポート(65)を含んでもよい。また、これら装置は、バス等により接続される。なお、不揮発性メモリ(63)はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等で構成され、また、記録装置(64)はハードディスク、SSD等で構成され、生産管理システム(1)の機能を実現するためのコンピュータプログラムをそれら装置にて更新できるようにしてもよい。
【0041】
以上、実施形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。そして、各実施の形態は、適宜他の実施の形態と組み合わせることができる。
【0042】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限らない。
【0043】
(付記1)
作業現場の映像より作業者による成果物となる商品を置くための所定領域を抽出する抽出手段と、
前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時間および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間を解析ログとして記録する判定手段と、
前記人の手の形を検出した時間から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間までの時間経過が所定値より大きい場合、商品の実出来高を加算する管理手段と、
を備える、生産管理システム。
【0044】
(付記2)
前記管理手段は、前記人の手の形を検出できなくなった時間から次に前記人の手の形を検出した時間までの経過時間を、前記商品を作成した時間であるサイクルタイムとして記録する、
付記1に記載の生産管理システム。
【0045】
(付記3)
前記管理手段は、前記商品の1個当たりの期待作成時間であるタクトタイムと前記サイクルタイムとを比較し、前記タクトタイムより前記サイクルタイムが長い場合、作業の遅延ありと判定する、
付記1または2に記載の生産管理システム。
【0046】
(付記4)
前記管理手段は、前記商品の所定個数のサイクルタイムの平均値または移動平均値を前記サイクルタイムとする、
付記3に記載の生産管理システム。
【0047】
(付記5)
前記管理手段は、前記商品の単位時間当たりの期待出来高数と前記単位時間当たりの前記実出来高との比較により作業の遅れの有無を判定する、
付記1から4のいずれかに記載の生産管理システム。
【0048】
(付記6)
前記抽出手段は、映像中の座標位置により指定された領域を前記所定領域として抽出する、
付記1から5のいずれかに記載の生産管理システム。
【0049】
(付記7)
前記所定領域を含む作業現場の撮影を行う撮影装置を備え、
前記抽出手段は、前記撮影装置からの映像より前記所定領域を抽出する
付記1から6のいずれか1項に記載の生産管理システム。
【0050】
(付記8)
前記撮影装置は、前記所定領域を含む複数の作業現場の撮影を行うために前記作業現場ごとに設けられ、
前記抽出手段、前記判定手段、前記管理手段は、それぞれ、前記撮影装置ごとに得られる映像に対する処理を行う、
付記7に記載の生産管理システム。
【0051】
(付記11)
作業現場の映像より作業者による成果物となる商品を置くための所定領域を抽出し、
前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時間および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間を解析ログとして記録し、
前記人の手の形を検出した時間から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間までの時間経過が所定値より大きい場合、商品の実出来高を加算する、
ことをコンピュータが実行することにより行う生産管理方法。
【0052】
(付記12)
前記人の手の形を検出できなくなった時間から次に前記人の手の形を検出した時間までの経過時間を、前記商品を作成した時間であるサイクルタイムとして記録する、
付記11に記載の生産管理方法。
【0053】
(付記13)
前記商品の1個当たりの期待作成時間であるタクトタイムと前記サイクルタイムとを比較し、前記タクトタイムより前記サイクルタイムが長い場合、作業の遅延ありと判定する、
付記11または12に記載の生産管理方法。
【0054】
(付記14)
前記商品の所定個数のサイクルタイムの平均値または移動平均値を前記サイクルタイムとする、
付記13に記載の生産管理方法。
【0055】
(付記15)
前記商品の単位時間当たりの期待出来高数と前記単位時間当たりの前記実出来高との比較により作業の遅れの有無を判定する、
付記11から14のいずれかに記載の生産管理方法。
【0056】
(付記16)
映像中の座標位置により指定された領域を前記所定領域として抽出する、
付記11から15のいずれかに記載の生産管理方法。
【0057】
(付記17)
前記所定領域を含む作業現場の撮影を行う前記撮影装置からの映像より前記所定領域を抽出する
付記11から16のいずれか1項に記載の生産管理方法。
【0058】
(付記18)
前記所定領域を含む複数の作業現場の撮影を行うために前記作業現場ごとに設けられた前記撮影装置からの映像に対して、それぞれ処理を行う、
付記17に記載の生産管理方法。
【0059】
(付記21)
作業現場の映像より作業者による成果物となる商品を置くための所定領域を抽出し、
前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時間および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間を解析ログとして記録し、
前記人の手の形を検出した時間から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間までの時間経過が所定値より大きい場合、商品の実出来高を加算する、
ことをコンピュータに実行させる生産管理のためのプログラム。
【0060】
(付記22)
前記人の手の形を検出できなくなった時間から次に前記人の手の形を検出した時間までの経過時間を、前記商品を作成した時間であるサイクルタイムとして記録する、
付記21に記載のプログラム。
【0061】
(付記23)
前記商品の1個当たりの期待作成時間であるタクトタイムと前記サイクルタイムとを比較し、前記タクトタイムより前記サイクルタイムが長い場合、作業の遅延ありと判定する、
付記21または22に記載のプログラム。
【0062】
(付記24)
前記商品の所定個数のサイクルタイムの平均値または移動平均値を前記サイクルタイムとする、
付記23に記載のプログラム。
【0063】
(付記25)
前記商品の単位時間当たりの期待出来高数と前記単位時間当たりの前記実出来高との比較により作業の遅れの有無を判定する、
付記21から24のいずれかに記載のプログラム。
【0064】
(付記26)
映像中の座標位置により指定された領域を前記所定領域として抽出する、
付記21から25のいずれかに記載のプログラム。
【0065】
(付記27)
前記所定領域を含む作業現場の撮影を行う前記撮影装置からの映像より前記所定領域を抽出する
付記21から26のいずれか1項に記載のプログラム。
【0066】
(付記28)
前記所定領域を含む複数の作業現場の撮影を行うために前記作業現場ごとに設けられた前記撮影装置からの映像に対して、それぞれ処理を行う、
付記27に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0067】
1 生産管理システム
2 制御部
3 記録部
4 撮影装置
5 配置領域
6 ネットワーク
21 抽出部
22 取得部
23 判定部
31 解析ログ
32 管理パラメータ
51 作業台
【要約】
【課題】作業により期待する出来高に基づく生産管理がしやすい生産管理システムを提供する。
【解決手段】生産管理システムは、抽出部と、取得部と、判定部と、を備える。抽出部は、作業現場の映像より作業者による成果物となる商品を置くための所定領域を抽出する。取得部は、前記所定領域の映像に人の手の形の映像があるかを検出し、前記人の手の形を検出した時間および検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間を解析ログとして記録する。判定部は、前記人の手の形を検出した時間から前記人の手の検出後に前記人の手の形を検出できなくなった時間までの時間経過が所定値より大きい場合、商品の実出来高を加算する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7