(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
B64U 50/37 20230101AFI20250212BHJP
B64U 50/34 20230101ALI20250212BHJP
B64U 50/19 20230101ALI20250212BHJP
B64U 10/17 20230101ALI20250212BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20250212BHJP
B63H 20/00 20060101ALI20250212BHJP
B63H 21/17 20060101ALI20250212BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250212BHJP
B60L 58/21 20190101ALI20250212BHJP
B63G 8/08 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B64U50/37
B64U50/34
B64U50/19
B64U10/17
B64U10/13
B63H20/00 600
B63H21/17
B60L50/60
B60L58/21
B63G8/08 A
(21)【出願番号】P 2024083789
(22)【出願日】2024-05-23
【審査請求日】2024-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524128279
【氏名又は名称】高藤総合研究所合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高藤 恭胤
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-233378(JP,A)
【文献】特開2020-196440(JP,A)
【文献】特開2008-136341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64U 50/37
B64U 50/34
B64U 50/19
B64U 10/17
B64U 10/13
B63H 20/00
B63H 21/17
B60L 50/60
B60L 58/21
B63G 8/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動することで本体の位置を移動させる回転体と、
前記回転体を回転駆動する第1のモータと、
前記第1のモータに電力を供給する電源と、
回転軸が前記第1のモータの回転軸
と接続され、前記第1モータの回転軸の回転にともなって電力を生成し、前記電源に電力を供給する第2のモータと、
前記第1のモータ、および、前記電源を制御する制御部と、
を有し、
前記電源は、
第1蓄電池と、
第2蓄電池と、
前記第1のモータの電力源として使用する蓄電池を前記第1蓄電池もしくは前記第2蓄電池に切り替える第1切替器と、
前記第2のモータの出力を動力源として動作し、前記第1蓄電池および前記第2蓄電池を充電するバッテリーチャージャーと、
前記バッテリーチャージャーの出力を前記第1蓄電池もしくは前記第2蓄電池に接続する第2切替器、
を有し、
前記制御部は、前記第1切替器と前記第2切替器を制御する、
移動体。
【請求項2】
回転駆動することで本体の位置を移動させる回転体と、
前記回転体を回転駆動する第1のモータと、
前記第1のモータに電力を供給する電源と、
回転軸が前記第1のモータの回転軸
と接続され、前記第1モータの回転軸の回転にともなって電力を生成し、前記電源に電力を供給する第2のモータと、
を有し、
前記電源は、
第1蓄電池と、
前記第2のモータの出力を動力源として動作し、前記第1蓄電池を充電するバッテリーチャージャーと、
を有する移動体。
【請求項3】
前記回転体がプロペラであり、
前記本体が空中を飛行するドローンもしくはヘリコプター、水上を移動するモーターボート、水中を移動する潜水艦の何れかである、
請求項1または2に記載の移動体。
【請求項4】
前記回転体がタイヤであり、
前記本体が地上を走行する電動キックスケータもしくは電動自転車である、
請求項1または2に記載の移動体。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1切替器が選択している前記第1蓄電池もしくは前記第2蓄電池の残容量が所定の閾値以下になった場合、切替前までに前記第1切替器が選択していない前記第1蓄電池もしくは前記第2蓄電池を選択するように前記第1切替器を制御する、
請求項1に記載の移動体。
【請求項6】
前記第1蓄電池への充電電流をモニタする第1電流モニタと、
前記第1蓄電池から出力される電流を計測する第2電流モニタと、
前記第2蓄電池への充電電流をモニタする第3電流モニタと、
前記第2蓄電池から出力される電流を計測する第4電流モニタと、
を備え、
前記制御部は、前記第1蓄電池への前記充電電流と前記第1蓄電池から出力される電流に基づいて前記第1蓄電池の残容量を推定し、前記第2蓄電池への前記充電電流と前記第2蓄電池から出力される電流に基づいて前記第2蓄電池の残容量を推定する、
請求項1に記載の移動体。
【請求項7】
前記第1蓄電池の出力電圧をモニタする第1電圧モニタと、
前記第2蓄電池の出力電圧をモニタする第2電圧モニタと、
を備え、
前記制御部は、前記第1蓄電池の出力電圧に基づいて前記第1蓄電池の残容量を推定し、前記第2蓄電池の出力電圧に基づいて前記第2蓄電池の残容量を推定する、
請求項1に記載の移動体。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1切替器が選択していない前記第1蓄電池もしくは前記第2蓄電池に、前記バッテリーチャージャーの出力を接続するように前記第2切替器を制御する、
請求項1に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの分野においてドローンが利用されている。例えば、ドローンにカメラを搭載して遠隔操作することで、大型の有人ヘリコプターで飛行できない場所の撮影を行っている。また、ドローンを利用した宅配サービスの実証試験も進められている。
【0003】
ドローンは、搭載している蓄電池によりプロペラを駆動して飛行する。ドローンの飛行時間を長くするためには、蓄電池の容量を大きくする必要がある。しかし、蓄電池は、容量を大きくするほど重量が重くなる。重い蓄電池を搭載して飛行するためには、大きなプロペラと大きなモータが必要となり、ドローンの製造コストが高くなるという問題がある。ドローンの飛行時間を長くすることは、大きな課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、電動キックスケータ、電動自転車、モーターボート、潜水艦などの移動体も、蓄電池に充電された電力で動作する。このように、蓄電池の電力で動作する移動体の動作時間を長くすることは、同様に大きな課題である。
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、蓄電池の電力で動作する移動体の動作時間を長くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、実施形態に係る移動体は、回転駆動することで本体の位置を移動させる回転体と、回転体を回転駆動する第1のモータと、第1のモータに電力を供給する電源と、回転軸が第1のモータの回転軸と接続され、第1モータの回転軸の回転にともなって電力を生成し、電源に電力を供給する第2のモータと、第1のモータ、および、電源を制御する制御部と、を有する。電源は、第1蓄電池と、第2蓄電池と、第1のモータの電力源として使用する蓄電池を第1蓄電池もしくは第2蓄電池に切り替える第1切替器と、第2のモータの出力を動力源として動作し、第1蓄電池および第2蓄電池を充電するバッテリーチャージャーと、バッテリーチャージャーの出力を第1蓄電池もしくは第2蓄電池に接続する第2切替器を有する。制御部は、第1切替器と第2切替器を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】実施形態1に係るドローンのブロック図である。
【
図6】実施形態1に係る接続部について説明するための図である。
【
図7】実施形態1に係る電源の切替制御処理について説明するためのフローチャートである。
【
図8】実施形態1に係る電源の充電制御処理について説明するためのフローチャートである。
【
図10】実施形態3に係る移動体のバッテリーの残容量とバッテリーの出力電圧との関係を示すグラフである。
【
図11】実施形態4に係る移動体について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
本実施形態では、移動体がドローンである場合を例にして説明する。以下、実施形態に係る移動体(ドローン)について、図を参照して説明する。説明にあたっては、相互に直行するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を適宜用いる。
【0010】
図1は、実施形態に係るドローン1の外観図である。ドローン1は、ドローン本体10と複数のプロペラ20を有する。
図1では、プロペラ20が4個ある場合を記載しているが、プロペラ20の数は制限されない。ドローン本体10には、電源、制御部等が搭載される。
【0011】
図2は、実施形態に係るドローン1のブロック図である。ドローン1は、電源30、駆動部40、プロペラ20、帰還部50、接続部60、制御部70を有する。
【0012】
図3は、電源30の構成図である。電源30は、第1バッテリー311(第1蓄電池)、第2バッテリー312(第2蓄電池)、第1切替器321、第2切替器322、バッテリーチャージャー34、コンバータ35を有する。第1バッテリー311の入力側には、第1バッテリー311に充電される充電電流を計測する第1電流モニタ361が設けられている。第1バッテリー311の出力側には、第1バッテリー311から出力される電流を計測する第2電流モニタ362が設けられている。第2バッテリー312の入力側には、第2バッテリー312に充電される充電電流を計測する第3電流モニタ363が設けられている。第2バッテリー312の出力側には、第2バッテリー312から出力される電流を計測する第4電流モニタ364が設けられている。
【0013】
第1切替器321の出力は、端子P1を介して駆動部40の入力部に接続される。端子P1は、正極と負極の2端子で構成される。コンバータ35の入力は、端子P2を介して帰還部50の出力部(
図5に示す第2のモータの端子53aと端子53b)に接続される。バッテリーチャージャー34は、端子P3を介して商用電力に接続される。
【0014】
第1バッテリー311および第2バッテリー312は、例えば、リチウムイオンバッテリーで構成される。第1バッテリー311および第2バッテリー312の出力電圧は、駆動部40を構成する第1のモータを駆動するのに適した電圧であり、例えば、直流電圧24Vである。
【0015】
第1切替器321は、駆動部40の電力源として使用するバッテリーを切り替えるための回路である。第1切替器321は、制御部70による制御に基づいて、第1バッテリー311もしくは第2バッテリー312を駆動部40の電力源として選択する。第2切替器322は、バッテリーチャージャー34で充電するバッテリーを選択するための回路である。第2切替器322は、制御部70による制御に基づいて、バッテリーチャージャー34の出力を第1バッテリー311もしくは第2バッテリー312に接続する。第1切替器321および第2切替器322は、FET(Field Effect Transistor)、リレー等で構成することができる。
【0016】
コンバータ35は、帰還部50が出力する電力をバッテリーチャージャー34の入力に適した電圧(電流)に変換する。帰還部50の出力電圧がバッテリーチャージャー34の入力に適した電圧である場合、コンバータ35を省略することもできる。
【0017】
バッテリーチャージャー34は、コンバータ35を介して帰還部50の出力を動力源として動作し、第1バッテリー311および第2バッテリー312に適した充電電圧および充電電流で、第1バッテリー311および第2バッテリー312を充電する。例えば、バッテリーチャージャー34は、第1バッテリー311および第2バッテリー312を一定の充電電流で充電する。バッテリーチャージャー34の許容入力電圧は、例えば、100V乃至220Vである。バッテリーチャージャー34は、端子P3を介して100Vの商用電力を入力することができる。バッテリーチャージャー34は、制御部70による制御に基づいて、動力源を帰還部50の出力から商用電源に切り替えて動作することもできる。
【0018】
図2に戻り、駆動部40は、第1のモータ41で構成される。ここでは、第1のモータ41として直流モータを用いる場合について説明する。第1のモータ41として交流モータを用いる場合は、電源30と第1のモータ41との間に、DC/ACコンバータを設ける。
図4は、駆動部40を構成する第1のモータ41の斜視図である。第1のモータ41は、プロペラ20を駆動する。第1のモータ41は、複数のプロペラ20それぞれに対して設けられる。ここでは、ドローン1が4個のプロペラ20を搭載しているので、駆動部40は、4個の第1のモータ41を備える。第1のモータ41は、X軸方向を軸方向とする回転軸42を有する。回転軸42には、3極タイプの回転子が固定され、回転子には巻き線が巻かれる。回転子に巻かれた巻き線の一端は端子43aに、他端は端子43bに接続される。端子43aと端子43bは、電源30の端子P1に接続される。第1のモータ41は、回転子を覆うように配置された固定子(磁石)を備えている。回転子は、回転軸42を軸として固定子が形成する磁界の中を回転する。
【0019】
図2に戻り、帰還部50は、第2のモータ51で構成される。
図5は、帰還部50を構成する第2のモータ51の斜視図である。第2のモータ51は、第1のモータ41に対応して設けられる。ここでは、駆動部40が4個の第1のモータ41を備えているので、帰還部50は、4個の第2のモータ51を備える。第2のモータ51は、第1のモータ41の回転軸42の回転に連動して回転する、X軸方向を軸方向とする回転軸52を有する。回転軸52には、3極タイプの回転子が固定され、回転子には巻き線が巻かれている。回転子に巻かれた巻き線の一端は端子53aに、他端は端子53bに接続される。第2のモータ51は、回転子を覆うように配置された固定子(磁石)を備えている。回転子は、回転軸52を軸として固定子が形成する磁界の中を回転する。第2のモータ51は、固定子の形成する磁界の中を回転子が回転することで、回転子に巻かれた巻き線に交流電流を発生する。端子53aと端子53bは、電源30の端子P2に接続される。
【0020】
図2に戻り、接続部60は、第1のモータ41の回転軸42の回転を第2のモータ51の回転軸52に伝える。
図6は、接続部60について説明するための図である。接続部60は、例えば、第1の歯車61と第2の歯車62とからなる。第1の歯車61は、第1のモータ41の回転軸42に嵌合して設けられる。第2の歯車62は、第2のモータ51の回転軸52に嵌合して設けられる。第1の歯車61と第2の歯車62は嵌合して配置され、第2の歯車62は、第1の歯車61の回転に連動して回転する。第1の歯車61の歯数と第2の歯車62の歯数の比をNとする。
【0021】
図2に戻り、制御部70は、通信部、CPU、RAM、ROM等で構成される。ROMには、ドローン1の制御用プログラムが記憶されている。制御部70は、通信部で受信した制御情報に基づいて、駆動部40を制御してプロペラ20を駆動することで、ドローン1の飛行を制御する。詳細には、制御部70は、電源30と駆動部40との間に電子スイッチや抵抗を介在させ、駆動部40を構成する第1のモータ41に供給する電流を制御することで、複数の第1のモータ41それぞれの回転速度や回転のオン・オフを制御する。制御部70による電源30の制御については後述する。
【0022】
次に、ドローン1の動作について説明する。制御部70は、通信部で受信した制御情報に基づいて、駆動部40を制御してプロペラ20を駆動する。ドローン1は、プロペラ20の回転に基づいて飛行する。
【0023】
図4に示す駆動部40を構成する第1のモータ41の回転軸42は、電源30から電力を供給されて回転する。詳細には、第1のモータ41の回転軸42は、フレミングの法則に基づき、第1のモータ41を構成する回転子に巻かれた電流の流れる巻き線が第1のモータ41を構成する固定子(永久磁石)が形成する磁場から受ける力によって回転する。
【0024】
第2のモータ51の回転軸52は、第1のモータ41の回転軸42の回転速度と、接続部60の第1の歯車61の歯数と第2の歯車62の歯数の比Nに応じた回転速度で回転する。第2のモータ51を構成する固定子(永久磁石)が形成する磁場の中を回転軸52に固定された回転子に巻かれた巻き線が回転することで、フレミングの法則に基づいて、第2のモータ51の回転子に巻かれた巻き線に、回転軸52の回転速度に比例した電流が発生する。第2のモータ51は、発生した電流により電源30を充電する。制御部70による電源30の制御については後述する。
【0025】
次に、
図7に示すフローチャートを参照しながら、制御部70による第1切替器321および第2切替器322の切替制御処理について説明する。ここでは、第1切替器321が第1バッテリー311を選択し、第2切替器322が第2バッテリー312を選択している状態から説明する。
【0026】
制御部70は、第1バッテリー311および第2バッテリー312の入出力電流を計測する(ステップS11)。
図3に示すように、第1バッテリー311の入力側には、第1バッテリー311に充電される充電電流を計測する第1電流モニタ361が設けられている。第1バッテリー311の出力側には、第1バッテリー311から出力される電流を計測する第2電流モニタ362が設けられている。制御部70は、第1電流モニタ361と第2電流モニタ362の計測値に基づいて、第1バッテリー311の残容量を算出する(ステップS12)。
【0027】
また、第2バッテリー312の入力側には、第2バッテリー312に充電される充電電流を計測する第3電流モニタ363が設けられている。第2バッテリー312の出力側には、第2バッテリー312から出力される電流を計測する第4電流モニタ364が設けられている。制御部70は、第3電流モニタ363と第4電流モニタ364の計測値に基づいて、第2バッテリー312の残容量を算出する(ステップS12)。
【0028】
次に、制御部70は、第1切替器321が選択している側のバッテリーの残容量が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS13)。ここでは、第1切替器321が第1バッテリー311を選択しているので、制御部70は、第1バッテリー311の残容量が閾値以上であるか否かを判断する。閾値は、例えば、バッテリーが満充電状態の場合を100%とした場合、40%とか20%等の値である。第1バッテリー311の残容量が閾値以上である場合(ステップS13:Yes)、制御部70は、第1切替器321および第2切替器322の接続状態を維持する。
【0029】
一方、バッテリーの残容量が閾値未満である場合(ステップS13:No)、制御部70は、第1切替器321と第2切替器322の切替制御を行う(ステップS14)。具体的には、第1切替器321が第1バッテリー311と駆動部40を接続している状態にあるので(第1切替器321が第1バッテリー311を選択している状態であるので)、制御部70は、第2バッテリー312が駆動部40に接続されるように第1切替器321を制御する。また、第2切替器322がバッテリーチャージャー34と第2バッテリー312を接続している状態にあるので(第2切替器322が第2バッテリー312を選択している状態であるので)、制御部70は、バッテリーチャージャー34と第1バッテリー311が接続されるように第2切替器322を制御する。
【0030】
第1切替器321が第2バッテリー312を選択し、第2切替器322が第1バッテリー311を選択している場合は、制御部70は、上記の説明において、第1バッテリー311と第2バッテリー312を読み替えた制御を行う。
【0031】
次に、
図8に示すフローチャートを参照しながら、制御部70によるバッテリーチャージャー34からバッテリーへの充電制御処理について説明する。ここでは、バッテリーチャージャー34が帰還部50の出力に基づいて動作しており、第1切替器321が第1バッテリー311を選択し、第2切替器322が第2バッテリー312を選択している状態から説明する。
【0032】
制御部70は、第1バッテリー311と第2バッテリー312の両方のバッテリーの残容量が閾値未満であるか否かを判断する(ステップS31)。制御部70は、第1電流モニタ361、第2電流モニタ362、第3電流モニタ363、第4電流モニタ364で計測したそれぞれの充放電電流の履歴に基づいて、第1バッテリー311と第2バッテリー312の残容量が閾値未満であるか否かを判断する。
【0033】
第1バッテリー311と第2バッテリー312の両方のバッテリーの残容量が閾値未満である場合(ステップS31:Yes)、電源30が保有するエネルギーが不足している状態であることを意味するので、ドローン1は飛行を継続することができなくなる。この場合、電源30に外部からエネルギーを補充する必要がある。したがって、ドローン1が飛行中である場合、制御部70は、ドローン1を充電可能な基地に移動するように制御する(ステップS32)。なお、ステップS31における閾値とステップS13における閾値とは異なる値であってもよい。例えば、ステップS31における閾値は、ドローン1が基地に帰還可能な電力を考慮して、ドローン1と基地との距離に応じて設定してもよい。
【0034】
基地に帰還すると、ドローン1の電源30に商用電源が接続される。そして、制御部70は、バッテリーチャージャー34の入力を帰還部50から商用電源に切り替える制御を行う(ステップS33)。この切替制御は、人がスイッチ等を操作することで行ってもよい。
【0035】
一方、第1バッテリー311と第2バッテリー312のいずれかのバッテリーの残容量が閾値以上である場合(ステップS31:No)、ドローン1は飛行を継続することができる。制御部70は、第1切替器321が選択していない側のバッテリー(ここでは、第2バッテリー312)の残容量が閾値未満か否かを判断する(ステップS34)。バッテリーの残容量が閾値以上である場合(ステップS34:No)、制御部70は、第2切替器322もしくはバッテリーチャージャー34を制御して、第2バッテリー312への充電を停止する(ステップS35)。この閾値は、バッテリーの残容量が満充電状態に対して所定の残容量(例えば、80%とか90%)になるように設定する。この制御により、バッテリーへの過充電を防止することができ、バッテリーの破損による事故を低減することができる。
【0036】
充電を再開する条件として、閾値にヒステリシスを持たせてもよい。例えば、充電を停止するための閾値が満充電状態の90%に相当する残容量である場合、充電を再開するための閾値を満充電状態の80%に相当する残容量とする。
【0037】
一方、バッテリーの残容量が閾値未満である場合(ステップS34:Yes)、制御部70は、第1切替器321が選択していない側のバッテリーを充電する(ステップS36)。制御部70は、ステップS31乃至ステップS36までの処理を継続して行う。
【0038】
以上に説明したように、実施形態に係るドローン1は、帰還部50を設けることで、第1のモータ41で消失する熱エネルギーを有効利用する。電源30から駆動部40の第1のモータ41に供給されたエネルギーは、プロペラ20の駆動に使用される。しかし、第1のモータ41に供給されたエネルギーの一部は、第1のモータ41で熱エネルギーとして消失する。実施形態に係るドローン1は、第1のモータ41の回転エネルギーの一部を第2のモータ51を介して電源30に帰還することにより、第1のモータ41で消失する熱エネルギーを有効利用することで、ドローン1の飛行時間を長くすることができる。
【0039】
また、実施形態に係るドローン1の電源30は、第1バッテリー311と第2バッテリー312を切り替えて使用する。この構成を有することにより、ドローン1に搭載したバッテリーを使用しながら、バッテリーの充電をすることができる。
【0040】
第2のモータ51の回転速度が急激に変化すると、第2のモータ51は大きな電力(電圧、電流)を出力する可能性がある。回路構成にもよるが、蓄電池を放電しながら充電すると、充電と放電とを分離する回路を構成するダイオードなどの半導体に過電流や過電圧が印加されることがある。ダイオードなどの半導体素子は、絶対定格を超える電圧や電流が印加されると、ショートモードで破損する場合が多い。蓄電池を構成するダイオードなどがショートモードで破損すると、蓄電池の発煙発火事故の要因となる恐れがある。実施形態に係るドローン1の電源30は、バッテリーチャージャー34を介してバッテリーを充電することで、第2のモータ51が出力する大きな電力(電圧、電流)がバッテリーに印加されることを防止している。また、実施形態に係るドローン1の電源30は、第1切替器321と第2切替器322を用いることで、放電するバッテリーと充電するバッテリーとを物理的に分離している。これにより、バッテリーの発煙発火事故を防止することができる。
【0041】
なお、以上の説明では、本発明を移動体の一例としてドローンに適用した場合について説明したが、ヘリコプターやプロペラ飛行機にも適用できる。ヘリコプターやプロペラ飛行機のように大型機の場合、第1のモータ41を交流電源で動作させることが多い。この場合、駆動部40にDC/ACコンバータを設ける。
【0042】
また、上記の説明では、駆動部40の第1のモータ41が電源30の電気エネルギーを動力源として回転する場合について説明した。しかし、第1のモータ41は、他のエネルギーを動力源としてもよい。例えば、ヘリコプターやプロペラ飛行機の場合、第1のモータ41は航空用ジェット燃料を動力源とするモータであってもよい。
【0043】
また、上記の説明では、
図8のステップS31の説明において、制御部70が第1バッテリー311と第2バッテリー312の両方のバッテリーの残容量が閾値未満であるか否かを判断する場合について説明した。しかし、ステップS31の処理において、制御部70が第1バッテリー311と第2バッテリー312の両方のバッテリーの残容量の合計値と所定の閾値とを比較するようにしてもよい。
【0044】
また、上記の説明では、第1切替器321および第2切替器322の切替が行われるまでに、使用されていない側のバッテリーに所定量の充電がなされることを前提としている。この前提がない場合、第1切替器321が残容量の多いほうのバッテリーを選択するようにしてもよい。
【0045】
また、上記の説明では、バッテリーチャージャー34の許容入力電圧は、例えば、100V乃至220Vである場合について説明したが、これに限定する必要はない。例えば、コンバータ35をAC/DCコンバータで構成した場合、バッテリーチャージャー34の入力は直流電圧であってもよい。
【0046】
なお、ドローン1は、電源30が第1バッテリー311もしくは第2バッテリー312の何れか1個しか実装していない状態でも動作可能である。バッテリーが1個の場合、例えば、他方のバッテリーの残容量がないものとして動作する。
【0047】
(実施液体2)
上記の説明では、電源30が第1バッテリー311と第2バッテリー312の2個のバッテリーを有する場合について説明した。実施形態2では、電源30が有するバッテリーが1個の場合について説明する。
【0048】
図9は、実施形態2に係る電源30の構成図である。
図3に示す実施形態1に係る電源30と比較すると、第1切替器321、第2切替器322、第1電流モニタ361、第2電流モニタ362、第3電流モニタ363、第4電流モニタ364を省略することができる。この場合、バッテリーの切替制御を行う必要がないので、制御部70の処理負荷を軽減することができるが、実施形態1に係る移動体と比較すると、電源30の電力で動作する移動体の動作時間は短くなる。
【0049】
なお、実施形態2では、バッテリーが2個の場合について説明したが、バッテリーの数を3個とか4個としてもよい。バッテリーの数が多いほど蓄電容量が多くなり、移動体の動作時間を長くすることができる。また、バッテリーの出力に、キャパシターを追加してもよい。
【0050】
(実施形態3)
実施形態1の説明では、バッテリーへの入出力電流に基づいてバッテリーの残容量を算出する技術について説明した。実施形態3では、バッテリーの残容量を推定する他の技術について説明する。
【0051】
図10は、バッテリーの残容量とバッテリーの出力電圧との関係を示すグラフである。バッテリーが満充電状態のとき、バッテリーの出力電圧は高くなる傾向がある。バッテリーの出力電圧は、残容量に応じて徐々に低下していく。そして、バッテリーの残容量がなくなると、出力電圧は急激に低下する傾向がある。このバッテリーの電圧特性に着目してバッテリーの残容量を推定するができる。
【0052】
実施形態3に係るドローン1の電源30は、第1バッテリー311の出力電圧をモニタする第1電圧モニタと、第2バッテリー312の出力電圧をモニタする第2電圧モニタとを備える。制御部70は、第1バッテリー311の出力電圧に基づいて第1バッテリー311の残容量を推定し、第2バッテリー312の出力電圧に基づいて第2バッテリー312の残容量を推定する。制御部70は、バッテリーの出力電圧が
図10に示す所定の閾値電圧2になった場合、第1切替器321および第2切替器322の切替制御を行う。閾値電圧2は、例えば、バッテリーの残容量が所定の残容量(例えば、40%とか20%等)である場合の電圧の値に設定する。
【0053】
また、制御部70は、
図8に示すステップS34の処理において、バッテリーの出力電圧が
図10に示す閾値電圧1以上であるか否かを判断する。閾値電圧1は、バッテリーの残容量が満充電状態に対して所定の残容量(例えば、80%とか90%)である場合の電圧の値に設定する。
【0054】
実施形態1の構成では、バッテリーの状態を監視するために4個の電流モニタを要した。そして、制御部70がバッテリーの残容量の計算を常に行う必要があったので、制御部70の処理負荷が重かった。実施形態3の構成では、バッテリーの状態を監視するために2個の電圧モニタがあればよい。バッテリーの残容量が閾値以下になったことをトリガーとして第1切替器321と第2切替器322の切替処理を行うようにすれば、制御部70の処理負荷を軽減することができる。
【0055】
(実施形態4)
上記の説明では、第1の歯車61と第2の歯車62とからなる接続部60を介して、第1のモータ41が第2のモータ51の回転軸52を回転する場合について説明した。しかし、接続部60を省略することもできる。例えば、
図11に示すように、第1のモータ41の回転軸42の+X側の端部と第2のモータ51の回転軸52の-X側の端部とを直接接続する。もしくは、第1のモータ41の回転軸42を長くし、回転軸42に第2のモータ51の回転子を固定するようにしてもよい。
【0056】
(実施形態5)
実施形態1乃至4の説明では、移動体がプロペラを用いて飛行するドローン、ヘリコプター、プロペラ飛行機などの飛行体である場合について説明した。実施形態5では、移動体がモーターボートや潜水艦などの水上もしくは水中を移動する移動体である場合について説明する。本発明をモーターボートや潜水艦などの水中もしくは水上を移動する移動体に使用した場合、「回転駆動することで本体の位置を移動させる回転体」は、スクリューとなる。モーターボートや潜水艦などのように大型機の場合、第1のモータ41を交流電源で動作させることが多い。この場合、駆動部40にDC/ACコンバータを設ける。
【0057】
帰還部50を設けることで、第1のモータ41で消失する熱エネルギーを有効利用することができる。具体的には、第1のモータ41の回転エネルギーの一部を第2のモータ51を介して電源30に帰還することで、モーターボートや潜水艦などの水中もしくは水上を移動する移動体の動作時間を長くすることができる。
【0058】
本発明を潜水艦に適用した場合、潜水艦を移動させる駆動部(モータ)で消失していた熱エネルギーを有効利用することができる。これにより、潜水艦の温度上昇を低減することができ、熱センサにより潜水艦の位置を特定されることを抑制することができる。
【0059】
また、実施形態5の説明では、駆動部40の第1のモータ41が電源30の電気エネルギーを動力源として回転する場合について説明した。しかし、第1のモータ41は、他のエネルギーを動力源としてもよい。例えば、モーターボートの場合、第1のモータ41はガソリンや軽油を動力源とするモータであってもよい。また、潜水艦の場合、第1のモータ41は核燃料を動力源とするモータであってもよい。
【0060】
(実施形態6)
実施形態1乃至4の説明では、移動体がプロペラを用いて飛行するドローン、ヘリコプター、プロペラ飛行機などの飛行体である場合について説明した。実施形態6では、移動体が電動キックスケータ、電動自転車等の地上を走行する移動体である場合について説明する。本発明を電動キックスケータや電動自転車などの地上を移動する移動体に使用した場合、「回転駆動することで本体の位置を移動させる回転体」は、車輪(タイヤ)である。その他の説明については、実施形態1乃至4の説明と同じである。
【0061】
帰還部50を設けることで、第1のモータ41で消失する熱エネルギーを有効利用することができる。具体的には、第1のモータ41の回転エネルギーの一部を第2のモータ51を介して電源30に帰還することで、電動キックスケータや電動自転車等の地上を走行する移動体の動作時間を長くすることができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…ドローン
10…ドローン本体
20…プロペラ
30…電源
311…第1バッテリー(第1蓄電池)
312…第2バッテリー(第2蓄電池)
321…第1切替器
322…第2切替器
34…バッテリーチャージャー
35…コンバータ
361…第1電流モニタ
362…第2電流モニタ
363…第3電流モニタ
364…第4電流モニタ
40…駆動部
41…第1のモータ
42…第1のモータの回転軸
50…帰還部
51…第2のモータ
52…第2のモータの回転軸
60…接続部
61…第1の歯車
62…第2の歯車
70…制御部
【要約】
【課題】蓄電池の電力で動作する移動体の動作時間を長くする。
【解決手段】実施形態に係る移動体は、回転駆動することで本体の位置を移動させる回転体と、回転体を回転駆動する第1のモータと、第1のモータに電力を供給する電源と、第1のモータの回転軸の回転に連動して回転する回転軸を有し、回転軸の回転にともなって電力を生成し、電源に電力を供給する第2のモータと、第1のモータ、および、電源を制御する制御部と、を有する。電源は、第1蓄電池と、第2蓄電池と、第1のモータの電力源として使用する蓄電池を第1蓄電池もしくは第2蓄電池に切り替える第1切替器と、第2のモータの出力を動力源として動作し、第1蓄電池および第2蓄電池を充電するバッテリーチャージャーと、バッテリーチャージャーの出力を第1蓄電池もしくは第2蓄電池に接続する第2切替器を有する。
【選択図】
図2