(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】宇宙ステーション
(51)【国際特許分類】
B64G 1/60 20060101AFI20250212BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250212BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20250212BHJP
B64G 1/66 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
B64G1/60
H02J7/00 B
H02J7/02 J
B64G1/66 B
(21)【出願番号】P 2024129728
(22)【出願日】2024-08-06
【審査請求日】2024-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524128279
【氏名又は名称】高藤総合研究所合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高藤 恭胤
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-078799(JP,A)
【文献】特開平03-038500(JP,A)
【文献】特開2017-011966(JP,A)
【文献】特開2013-031281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/60
H02J 7/00
H02J 7/02
B64G 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理区と、前記管理区の周囲に配置された居住区と、前記管理区と前記居住区とを接続する接続部と、前記居住区に所定の重力を発生するために前記居住区を前記管理区の周囲に回転させる駆動部と、を有する宇宙ステーションであって、
前記駆動部のモータの回転に基づいて電力を生成する電力生成部を有
し、
前記電力生成部は、
前記駆動部のモータの回転に基づいて回転し、交流電力を出力する発電機と、
前記発電機が出力した交流電力を所定の電圧に変換し、蓄電池を充電するコントロールユニットと、
を有する、
宇宙ステーション。
【請求項2】
前記蓄電池は、前記蓄電池の充電状態を監視する充電監視センサを有し、
前記電力生成部は、前記充電監視センサの出力情報に基づいて、前記蓄電池が満充電状態でないことを検知すると生成した電力を前記蓄電池に充電し、前記蓄電池が満充電状態であることを検知すると生成した電力を前記蓄電池に充電しない、
請求項
1に記載の宇宙ステーション。
【請求項3】
前記蓄電池は、
第1蓄電池と、
第2蓄電池と、
装置内の電子回路に電力を供給する蓄電池として前記第1蓄電池もしくは前記第2蓄電池を選択する第1切替器と、
前記電力生成部による充電対象の蓄電池として前記第1蓄電池もしくは前記第2蓄電池を選択する第2切替器と、
を有する請求項
1または
2に記載の宇宙ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、宇宙ステーションに関する。
【背景技術】
【0002】
長期の滞在を目的とする宇宙ステーションでは、居住区に重力を発生する必要がある。居住区を所定の速度で回転させることで、居住区に重力を発生させる技術が知られている。例えば、駆動部を搭載した管理区の周りに居住区を配置し、駆動部の動力により居住区を管理区の周囲に回転させる。
【0003】
駆動部の動力源としては、核燃料などの地球から運搬したエネルギー源や、太陽光パネルで発電したエネルギーが使用される。宇宙ステーションでの生活を快適にするために、宇宙ステーション内の移動手段としてのエネルギー、空調のためのエネルギー、照明などの生活に必要なエネルギー、娯楽のためのエネルギーなどと、エネルギーの需要増加が予想される。
【0004】
地球から宇宙ステーションまでの距離が遠くなるほど、地球からの資源の輸送が少なく、自立した生活ができることが望ましい。太陽から離れた宇宙空間では、太陽光パネルを使用してエネルギーを生成することは困難となる。そのため、宇宙ステーションのエネルギー効率は高いほど好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情の下になされたもので、宇宙ステーションのエネルギー効率を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、実施形態に係る宇宙ステーションは、管理区と、前記管理区の周囲に配置された居住区と、前記管理区と前記居住区とを接続する接続部と、前記居住区に所定の重力を発生するために前記居住区を前記管理区の周囲に回転させる駆動部と、を有する宇宙ステーションである。実施形態に係る宇宙ステーションは、駆動部のモータの回転に基づいて電力を生成する電力生成部を有する。電力生成部は、駆動部のモータの回転に基づいて回転し、交流電力を出力する発電機と、発電機が出力した交流電力を所定の電圧に変換し、蓄電池を充電するコントロールユニットと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1に係る宇宙ステーションの側面図である。
【
図2】実施形態1に係る宇宙ステーションの平面図である。
【
図3】実施形態1に係る宇宙ステーションの電力生成部の構成図である。
【
図4】実施形態2に係る宇宙ステーションの蓄電池の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る宇宙ステーション1の側面図である。
図2は、本実施形態に係る宇宙ステーション1の平面図である。宇宙ステーション1は、管理区10と、管理区10の周囲に接続部30を介して配置された居住区20有している。管理区10には、居住区20に所定の重力を発生するために居住区20を管理区10の周囲に回転させる駆動部40、電力生成部60(
図1および2では、図示略)、制御装置80(
図1および2では、図示略)などが備えられている。
【0010】
駆動部40は、居住区20に所定の重力を発生するために居住区20を管理区10の周囲に回転させるための動力部である。駆動部40は、モータなどで構成されている。駆動部40は、燃料庫95に格納されている核燃料などの地球から運搬したエネルギー源もしくは蓄電池70に蓄電された電気エネルギーで動作する。
【0011】
管理区10は、中央部11と回転部12からなる。回転部12は、中央部11の周りを周回可能に取り付けられている。管理区10と居住区20間は、接続部30を通って移動可能である。回転部12、接続部30および居住区20は、駆動部40に駆動されて中央部11の周りを周回する。
【0012】
図3は、電力生成部60の構成図である。電力生成部60は、駆動部40のモータの回転に基づいて電力を生成し、蓄電池70を充電する。電力生成部60は、発電機61とコントロールユニット62を有する。
【0013】
発電機61は、駆動部40のモータの回転に基づいて回転し、交流電力を出力する。発電機61は、モータで構成される。発電機61を構成するモータの回転軸は、例えば、歯車やベルト等により駆動部40のモータの回転軸と接続されている。発電機61の回転軸は、駆動部40のモータの回転軸の回転に基づいて回転し、発電機61は、例えば、100Vとか200Vの交流電圧を出力する。発電機61が出力する交流電圧の周波数は、発電機61の極数と駆動部40のモータの回転数と歯車のギア比などによって決まる。発電機61が出力する交流電圧の周波数を限定する必要がない場合、発電機61の回転軸と駆動部40のモータの回転軸とが共通の1本の回転軸で形成されていてもよい。
【0014】
コントロールユニット62は、発電機61が出力した交流電力を所定の電圧に変換し、蓄電池70を充電する。コントロールユニット62は、整流部621と電流駆動部623を有する。
【0015】
整流部621は、発電機61が出力した交流電圧を直流電圧に変換する。整流部621は、例えば、コンデンサ、ダイオードなどで構成される。整流部621は、整流した直流電圧を電流駆動部623に供給する。電流駆動部623は、例えば、DC/DCコンバータで構成される。電流駆動部623は、入力された直流電圧を蓄電池70の充電に適した電圧に変換する。電流駆動部623は、蓄電池70の充電に適した電流を供給する定電流源であってもよい。
【0016】
蓄電池70は、駆動部40のモータや装置内の電子回路に電力を供給する。蓄電池70は、例えば、リチウムイオンバッテリーなどで構成される。蓄電池70は、充電状態を監視する充電監視センサ71を有している。充電監視センサ71は、電圧測定器等で構成することができる。充電監視センサ71は、蓄電池70が満充電状態にあるか否かの情報(例えば、蓄電池70の出力電圧情報)を制御装置80に通知する。
【0017】
ソーラーパネル90は、宇宙ステーション1の周囲に配置される。ソーラーパネル90は、太陽光に対するソーラーパネル90の受光面の角度を発電量が最大になるように制御される。ソーラーパネル90で生成された電力は、蓄電池70に充電される。
【0018】
制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)、主記憶部、補助記憶部、及びインタフェース部を有するコンピュータである。CPUは、補助記憶部に記憶されているプログラムに従って、各種の処理を実行する。主記憶部は、RAM(Random Access Memory)等を有している。主記憶部は、CPUの作業領域として用いられる。補助記憶部は、ROM(Read Only Memory)、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部は、CPUが実行するプログラム、及び各種パラメータなどを記憶している。制御装置80は、電力生成部60およびソーラーパネル90による蓄電池70への充電を制御する。
【0019】
次に、宇宙ステーション1の動作について説明する。駆動部40のモータにより、居住区20は管理区10の周りを周回すると、居住区20が回転する遠心力により居住区20に重力が発生する。
【0020】
駆動部40のモータの回転軸の回転に伴って電力生成部60の発電機61の回転軸が回転し、発電機61は交流電力を出力する。コントロールユニット62は、発電機61が出力した交流電力を蓄電池70の充電に適した電圧と電流に変換し、蓄電池70を充電する。
【0021】
蓄電池が満充電状態のとき、蓄電池の出力電圧は高くなる傾向がある。蓄電池の出力電圧は、残容量に応じて徐々に低下していく。そして、蓄電池の残容量がなくなると、蓄電池の出力電圧は急激に低下する傾向がある。この蓄電池の電圧特性に着目して蓄電池70の残容量を推定するができる。蓄電池70は、出力電圧を監視する充電監視センサ71を有している。充電監視センサ71は、蓄電池70の出力電圧の値を制御装置80に通知する。
【0022】
制御装置80は、充電監視センサ71の出力情報に基づいて、蓄電池70の出力電圧が所定の閾値電圧以上であるか否かを判断する。閾値電圧は、蓄電池70が満充電状態であるときに対して所定の残容量(例えば、残容量が90%とか95%)である場合の出力電圧の値に設定する。制御装置80は、蓄電池70の出力電圧が閾値電圧未満である場合、電力生成部60を制御して蓄電池70を充電する。一方、制御装置80は、蓄電池70の出力電圧が閾値電圧以上である場合、蓄電池70を充電しないように電力生成部60を制御する。
【0023】
制御装置80は、充電監視センサ71の出力情報に基づいて、ソーラーパネル90から蓄電池70への充電制御も行う。
【0024】
実施形態に係る宇宙ステーション1は、駆動部40のモータの回転に基づいて回転し交流電力を出力する発電機61と、発電機61が出力した交流電力を所定の電圧に変換するコントロールユニット62とを有する電力生成部60を備える。そして、実施形態に係る宇宙ステーション1は、電力生成部60が出力する電力を蓄電池70に蓄電し、その電力を駆動部40や装置内の電子回路で使用する。駆動部40のモータに供給されたエネルギーは、モータを回転するエネルギーとして使用される。しかし、モータに供給されたエネルギーの一部は、モータで熱エネルギーとして消失する。実施形態に係る宇宙ステーション1は、電力生成部60を設けることで、駆動部40のモータで消失する熱エネルギーを有効利用する。これにより、実施形態に係る宇宙ステーション1は、エネルギー効率を改善することがでる。
【0025】
また、実施形態に係る宇宙ステーション1の蓄電池70は、蓄電池70の充電状態を監視する充電監視センサ71を有する。充電監視センサ71が、蓄電池70が満充電状態でないことを検知すると、電力生成部60は生成した電力を蓄電池70に充電する。一方、充電監視センサ71が、蓄電池70が満充電状態であることを検知すると、電力生成部60は生成した電力を蓄電池70に充電しない。このように、蓄電池70が飽和状態でない場合、電力生成部60が駆動部40のモータの運動エネルギー(回転エネルギー)を電気エネルギーに変換して蓄電池70を充電することで、宇宙ステーション1のエネルギー効率が改善される。また、蓄電池70が飽和状態である場合、電力生成部60が蓄電池70を充電しないことで、蓄電池70の発煙発火事故を防止することができる。
【0026】
なお、上記の説明では、コントロールユニット62を整流部621と電流駆動部623で構成する場合について説明したが、コントロールユニット62の構成をこれに限定する必要はない。例えば、コントロールユニット62をAC/DCコンバータで構成してもよい。
【0027】
また、
図3を用いた上記の説明では、蓄電池70の電力を駆動部40のモータの動力源として使用する場合について説明した。他の実施形態として、蓄電池70の電力を駆動部40の動力源として使用しないで、蓄電池70の電力を宇宙ステーション1内の照明等に限定して使用するようにしてもよい。
【0028】
(実施形態2)
実施形態1では、蓄電池70が1個の蓄電池で構成されている場合について説明した。実施形態2では、蓄電池70が2個の蓄電池を備える場合について説明する。
【0029】
図4は、実施形態2に係る蓄電池70の構成図である。蓄電池70は、第1蓄電池72、第2蓄電池73、第1切替器74、第2切替器75、充電監視センサ71を有する。
【0030】
第1蓄電池72および第2蓄電池73は、例えば、リチウムイオンバッテリーで構成される。第1切替器74は、蓄電池70の出力として使用する蓄電池を切り替えるための回路である。第1切替器74は、制御装置80による制御に基づいて、第1蓄電池72もしくは第2蓄電池73を蓄電池70の出力として選択する。第2切替器75は、電力生成部60が充電する蓄電池を選択するための回路である。第2切替器75は、制御装置80による制御に基づいて、電力生成部60の出力を第1蓄電池72もしくは第2蓄電池73に接続する。第1切替器74および第2切替器75は、FET(Field Effect Transistor)、リレー等で構成することができる。
【0031】
制御装置80は、例えば、充電監視センサ71による第1蓄電池72および第2蓄電池73の出力電圧の情報に基づいて、第1蓄電池72および第2蓄電池73の充電状態を監視する。第1切替器74が第1蓄電池72を選択している場合、制御装置80は、第1蓄電池72の出力電圧が蓄電池の残量低下を示す所定の閾値以下になると、第2蓄電池73を選択するように第1切替器74を制御する。
【0032】
制御装置80は、第1切替器74が選択していない側の蓄電池が充電されるように第2切替器75を制御する。また、制御装置80は、充電対象の蓄電池の出力電圧が蓄電池の満充電に近い状態であることを示す所定の閾値以上になると、充電対象の蓄電池が充電されないように第2切替器75を制御する。この場合、電力生成部60は、第1蓄電池72と第2蓄電池73のいずれにも充電しない状態となる。もしくは、制御装置80は、第1蓄電池72と第2蓄電池73のいずれにも充電しないように電力生成部60を制御する。満充電状態に近い蓄電池の充電を行わない理由は、蓄電池の故障確率を低減するためである。
【0033】
実施形態2に係る宇宙ステーション1の電力生成部60は、第1蓄電池72と第2蓄電池73を切り替えて使用する。この構成を有することにより、宇宙ステーション1に搭載した一方の蓄電池を使用しながら、他方の蓄電池を充電することができる。
【0034】
駆動部40のモータの回転速度が急激に変化すると、発電機61が大きな電力(電圧、電流)を出力する可能性がある。回路構成にもよるが、蓄電池を放電しながら充電すると、充電と放電とを分離する回路を構成するダイオードなどの半導体に過電流や過電圧が印加されることがある。ダイオードなどの半導体素子は、絶対定格を超える電圧や電流が印加されると、ショートモードで破損する場合が多い。蓄電池を構成するダイオードなどがショートモードで破損すると、蓄電池の発煙発火事故の要因となる恐れがある。実施形態2に係る宇宙ステーション1の電力生成部60は、第1切替器74と第2切替器75を用いることで、放電する蓄電池と充電する蓄電池とを物理的に分離している。これにより、蓄電池の発煙発火事故を防止することができる。
【0035】
なお、実施形態2の説明では、第1蓄電池72と第2蓄電池73を蓄電池70の出力として第1切替器74を用いて選択する場合について説明した。他の実施形態として、第1切替器74を設けないで、第1蓄電池72と第2蓄電池73の出力をそのまま使用することもできる。この場合、第2切替器75は、第1蓄電池72と第2蓄電池73が満充電状態のときに、第1蓄電池72と第2蓄電池73が充電されないように、制御装置80により制御される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1…宇宙ステーション
10…管理区
11…中央部
12…回転部
20…居住区
30…接続部
40…駆動部
60…電力生成部
61…発電機
62…コントロールユニット
621…整流部
623…電流駆動部
70…蓄電池
71…充電監視センサ
72…第1蓄電池
73…第2蓄電池
74…第1切替器
75…第2切替器
80…制御装置
90…ソーラーパネル
95…燃料庫
【要約】
【課題】宇宙ステーションのエネルギー効率を高める。
【解決手段】実施形態に係る宇宙ステーションは、管理区と、前記管理区の周囲に配置された居住区と、前記管理区と前記居住区とを接続する接続部と、前記居住区に所定の重力を発生するために前記居住区を前記管理区の周囲に回転させる駆動部と、を有する宇宙ステーションである。実施形態に係る宇宙ステーションは、駆動部のモータの回転に基づいて電力を生成する電力生成部を有する。
【選択図】
図3