(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250212BHJP
【FI】
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2021569859
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2021026406
(87)【国際公開番号】W WO2023286189
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2021-11-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【氏名又は名称】梶井 良訓
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100207192
【氏名又は名称】佐々木 健一
(72)【発明者】
【氏名】森藤 力
(72)【発明者】
【氏名】戸林 俊介
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-142078(JP,A)
【文献】特開2020-014321(JP,A)
【文献】特開2017-169336(JP,A)
【文献】特開2007-252099(JP,A)
【文献】特開2008-228517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42~ 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力変換ユニットがバンクに分けて構成されていて、バンク単位で電力変換ユニットの稼働状態が制御される電力変換装置であって、
第1電力変換ユニットと、
第2電力変換ユニットと、
第3電力変換ユニットと、
外部装置から第1の使用設定信号と第2の使用設定信号を夫々受ける端子を含むA1接続ポートと、前記第2の使用設定信号を出力する端子を含むA2接続ポートと、前記第1電力変換ユニットとの通信に利用するA通信ポートと、安全制御部接続ポートとを備える第1中継ユニットと、
前記A2接続ポートに接続されるB1接続ポートと、前記B1接続ポートを介して受けた前記第2の使用設定信号を出力する端子を含むB2接続ポートと、前記第2電力変換ユニットとの通信に利用するB通信ポートとを備える第2中継ユニットと、
前記B2接続ポートに接続されるC1接続ポートと、前記C1接続ポートを介して受けた前記第2の使用設定信号を出力可能な端子を含むC2接続ポートと、前記第3電力変換ユニットとの通信に利用するC通信ポートとを備える第3中継ユニットと、
前記第1中継ユニットの前記安全制御部接続ポートに接続され、前記第1中継ユニットの上流に配置され、機能安全制御のための制御指令を含む指令信号を前記第1中継ユニットに送ることで、少なくとも前記第1電力変換ユニットの機能安全制御と、前記第2電力変換ユニットの機能安全制御と、前記第3電力変換ユニットの機能安全制御とを実施して、前記第1中継ユニットを介して少なくとも前記第1電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第2電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第3電力変換ユニットの機能安全制御の状態とを監視する安全制御部と、
を備え、
前記安全制御部と、前記第1中継ユニットと、前記第2中継ユニットと、前記第3中継ユニットは、前記安全制御部、前記第1中継ユニット、前記第2中継ユニット、前記第3中継ユニットの接続順に従い互いに電気的に接続され、
前記安全制御部と、前記第1中継ユニットと、前記第2中継ユニットと、前記第3中継ユニットの接続順の中で前記安全制御部側を上流側とし、前記第3中継ユニット側を下流側とし、
前記第1電力変換ユニットは、前記A通信ポートに接続され、
前記第2電力変換ユニットは、前記B通信ポートに接続され、
前記第3電力変換ユニットは、前記C通信ポートに接続され、
前記第1中継ユニットは、
前記安全制御部からの前記指令信号を所定時間遅らせた遅延制御指令信号を生成し、前記遅延制御指令信号を前記A2接続ポートから前記第2中継ユニットに送り、前記第1の使用設定信号に係る第1条件が満たされた場合に前記遅延制御指令信号を前記A通信ポートから前記第1電力変換ユニットに送り、
前記第2中継ユニットは、
前記第1中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記B2接続ポートから前記第3中継ユニットに送り、前記第2の使用設定信号の論理値と、前記第2中継ユニットの前記接続順により定まる論理値とが第2条件を満たす場合に前記第1中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記B通信ポートから前記第2電力変換ユニットに送り、
前記第3中継ユニットは、
前記第2の使用設定信号の論理値と、前記第3中継ユニットの前記接続順により定まる論理値とが第3条件を満す場合に前記第2中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記C通信ポートから前記第3電力変換ユニットに送る、
電力変換装置。
【請求項2】
前記第2中継ユニットと前記第3中継ユニットは、互いに共通する構成を有する中継ユニットとして構成されていて、
前記中継ユニットは、
自中継ユニットからその上流側に第1信号を出力する第1電圧設定回路と、該自中継ユニットからその下流側に第2信号を出力する第2電圧設定回路とを夫々含み、
前記中継ユニットは、自中継ユニットの下流側の中継ユニットが出力する第1信号の論理値と、該自中継ユニットの上流側の中継ユニットが出力する第2信号の論理値とに基づいて、適用されたバンクを識別する
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第2中継ユニットは、
前記第2の使用設定信号に応じて、前記第1中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記第2中継ユニットに係る前記第2電力変換ユニットに対する信号として取得して、前記第2電力変換ユニットに夫々供給する
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記中継ユニットは、前記中継ユニットが下流側から前記第1信号を受けるか否かにより、前記中継ユニットの下流側に他の中継ユニットが接続されているか否かを示す第3信号を生成し、
前記中継ユニットが下流側から受ける前記第1信号の論理の値と、前記中継ユニットが下流側から前記第1信号を受けないことによって前記中継ユニットにおいて生成される前記第3信号の論理の値は、互いに相補の関係にある
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1中継ユニットが第1論理の値Hの第2信号を下流側に出力し、
前記第2中継ユニットが第2論理の値Lの第2信号を下流側に出力し、
前記第2中継ユニットと前記第3中継ユニットは、
上流側から第2信号を夫々受けて、その第2信号の論理値から上流側の中継ユニットが前記第1中継ユニットであるか前記第2中継ユニットであるかを識別し、前記識別の結果を利用して自中継ユニットの前記接続順を識別して、
前記第2中継ユニットと前記第3中継ユニットは、
第1論理の値Hの第1信号を夫々の上流側に出力し、
自中継ユニットの下流側から供給される第1信号を受ける端子の論理値を用いて、自中継ユニットの下流側に他の中継ユニットの接続があるか否かを識別する、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1中継ユニットは、
前記第1電力変換ユニットの機能安全制御の状態を示す応答信号と、前記第2中継ユニットから送られて来る前記第2電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第3電力変換ユニットの機能安全制御の状態を示す応答信号とを受け、
少なくとも前記第1電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第2電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第3電力変換ユニットの機能安全制御の状態を示す応答信号を、前記安全制御部に送り、
前記第2中継ユニットは、
前記第2電力変換ユニットの機能安全制御の状態を示す応答信号と、前記第3中継ユニットから送られて来る前記第3電力変換ユニットの機能安全制御の状態を示す応答信号とを受け、
少なくとも前記第2電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第3電力変換ユニットの機能安全制御の状態とを示す応答信号を、前記第1中継ユニットに送り、
前記第3中継ユニットは、
前記第3電力変換ユニットの機能安全制御の状態を示す応答信号を受け、
少なくとも前記第3電力変換ユニットの機能安全制御の状態を示す応答信号を、前記第2中継ユニットに送る
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記安全制御部からの前記指令信号及び前記遅延制御指令信号は、冗長化されていて、
前記第1中継ユニットと前記第2中継ユニットは、前記冗長化されている前記遅延制御指令信号を前記下流側に夫々中継する、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1中継ユニットは、前記第1条件が満たされる場合に、前記冗長化されている前記遅延制御指令信号を、前記第1電力変換ユニットに出力し、
前記第2中継ユニットは、前記第2条件が満たされる場合に、前記冗長化されている前記遅延制御指令信号を、前記第2電力変換ユニットに出力する、
請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
複数の電力変換ユニットがバンクに分けて構成されていて、バンク単位で電力変換ユニットの稼働状態が制御される電力変換装置であって、
第1電力変換ユニットと、
第2電力変換ユニットと、
第3電力変換ユニットと、
第4電力変換ユニットと、
外部装置から第1の使用設定信号と第2の使用設定信号を夫々受ける端子を含むA1接続ポートと、前記第2の使用設定信号を出力する端子を含むA2接続ポートと、前記第1電力変換ユニットとの通信に利用するA通信ポートと、安全制御部接続ポートとを備える第1中継ユニットと、
前記A2接続ポートに接続されるB1接続ポートと、前記B1接続ポートを介して受けた前記第2の使用設定信号を出力する端子を含むB2接続ポートと、前記第2電力変換ユニットとの通信に利用するB通信ポートとを備える第2中継ユニットと、
前記B2接続ポートに接続されるC1接続ポートと、前記C1接続ポートを介して受けた前記第2の使用設定信号を出力可能な端子を含むC2接続ポートと、前記第3電力変換ユニットとの通信に利用するC通信ポートとを備える第3中継ユニットと、
前記C2接続ポートに接続されるD1接続ポートと、前記D1接続ポートを介して受けた前記第2の使用設定信号を出力可能な端子を含むD2接続ポートと、前記第4電力変換ユニットとの通信に利用するD通信ポートとを備える第4中継ユニットと、
前記第1中継ユニットの前記安全制御部接続ポートに接続され、前記第1中継ユニットの上流に配置され、機能安全制御のための制御指令を含む指令信号を前記第1中継ユニットに送ることで、少なくとも前記第1電力変換ユニットの機能安全制御と、前記第2電力変換ユニットの機能安全制御と、前記第3電力変換ユニットの機能安全制御と、前記第4電力変換ユニットの機能安全制御とを実施して、前記第1中継ユニットを介して少なくとも前記第1電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第2電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第3電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第4電力変換ユニットの機能安全制御の状態とを監視する安全制御部と、
を備え、
前記安全制御部と、前記第1中継ユニットと、前記第2中継ユニットと、前記第3中継ユニットと、前記第4中継ユニットは、前記安全制御部、前記第1中継ユニット、前記第2中継ユニット、前記第3中継ユニット、前記第4中継ユニットの接続順に従い互いに電気的に接続され、
前記安全制御部と、前記第1中継ユニットと、前記第2中継ユニットと、前記第3中継ユニットと、前記第4中継ユニットの接続順の中で前記安全制御部側を上流側とし、前記第4中継ユニット側を下流側とし、
前記第1電力変換ユニットは、前記A通信ポートに接続され、
前記第2電力変換ユニットは、前記B通信ポートに接続され、
前記第3電力変換ユニットは、前記C通信ポートに接続され、
前記第4電力変換ユニットは、前記D通信ポートに接続され、
前記第1中継ユニットは、
前記安全制御部からの前記指令信号を所定時間遅らせた遅延制御指令信号を生成し、前記遅延制御指令信号を前記A2接続ポートから前記第2中継ユニットに送り、前記第1の使用設定信号に係る第1条件が満たされた場合に前記遅延制御指令信号を前記A通信ポートから前記第1電力変換ユニットに送り、
前記第2中継ユニットは、
前記第1中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記B2接続ポートから前記第3中継ユニットに送り、前記第2の使用設定信号の論理値と、前記第2中継ユニットの前記接続順により定まる論理値とが第2条件を満たす場合に前記第1中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記B通信ポートから前記第2電力変換ユニットに送り、
前記第3中継ユニットは、
前記第2中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記C2接続ポートから前記第4中継ユニットに送り、前記第2の使用設定信号の論理値と、前記第3中継ユニットの前記接続順により定まる論理値とが第3条件を満す場合に前記第2中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記C通信ポートから前記第3電力変換ユニットに送る、
前記第4中継ユニットは、
前記第2の使用設定信号の論理値と、前記第4中継ユニットの前記接続順により定まる論理値とが第4条件を満す場合に前記第3中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記D通信ポートから前記第4電力変換ユニットに送る、
電力変換装置。
【請求項10】
前記第1中継ユニットが第1論理の値Hの第2信号を下流側に出力し、
前記第2中継ユニットが第2論理の値Lの第2信号を下流側に出力し、
前記第2中継ユニットと前記第3中継ユニットは、
自中継ユニットの上流側から第2信号を夫々受けて、その第2信号の論理値から自中継ユニットの上流側の中継ユニットが前記第1中継ユニットであるか前記第2中継ユニットであるかを識別し、前記識別の結果を利用して自中継ユニットの前記接続順を識別して、
前記第2中継ユニットと前記第3中継ユニットは、
第1論理の値Hの第1信号を夫々の上流側に出力し、
前記自中継ユニットの下流側から供給される第1信号を受ける端子の論理値を用いて、前記自中継ユニットの下流側に他の中継ユニットの接続があるか否かを識別し、
前記第2中継ユニットは、
前記第2の使用設定信号に含まれる第1使用設定信号と第2使用設定信号と第3使用設定信号のうちの何れかを選択可能に構成された選択器であって、前記第2中継ユニットが前記第3中継ユニットから受けた前記第1信号の論理値と前記第2中継ユニットが前記第1中継ユニットから受けた前記第2信号の論理値とに基づいて前記第1使用設定信号を選択する選択器と、
前記接続順により前記第2電力変換ユニットからの応答信号の取得を制限する入力ゲート回路と
前記接続順により前記遅延制御指令信号の前記第2電力変換ユニットへの出力を制限する出力ゲート回路と、
前記入力ゲート回路によって制限されずに取得した前記第2中継ユニットに係る前記第2電力変換ユニットの応答信号と、前記第2中継ユニットよりも下流側からの応答信号とを合成した信号を出力する合成ゲート回路と、
を備える請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第2中継ユニットと前記第3中継ユニットと前記第4中継ユニットは、
前記第2の使用設定信号と前記接続順とに基づいて、前記接続順の自中継ユニットに対応する自電力変換ユニットからの応答信号を取得して、前記接続順とは異なる電力変換ユニットからの応答信号の取得を制限する入力ゲート回路と
前記第2の使用設定信号と前記接続順とに基づいて、前記遅延制御指令信号の前記接続順に対応する該自電力変換ユニットへの出力を制限する出力ゲート回路と、
前記入力ゲート回路によって制限されずに取得した該自中継ユニットに係る該自電力変換ユニットの応答信号と、該自
中継ユニットよりも下流側
の中継ユニットによって中継された電力変換ユニットからの応答信号とを合成した信号を出力する合成ゲート回路と、
を夫々備える請求項9に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記第1電力変換ユニットと前記第2電力変換ユニットと前記第3電力変換ユニットにおける電力変換量を調整して、各電力変換ユニットの容量冗長制御を実施する非安全制御部と
を備える請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記第1電力変換ユニットと前記第2電力変換ユニットと前記第3電力変換ユニットとのなかから活性化させる電力変換ユニットを選択するための
前記第1の使用設定信号と前記第2の使用設定信号を出力する
非安全制御部
を備え、
前記非安全制御部は、
電力変換ユニットの待機冗長制御を実施する
前記外部装置である
請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置には、スイッチング素子を夫々有する複数の電力変換ユニット(主回路)を冗長化して構成することで可用性を高めているものがある。機能安全制御は、システムの稼働中に生じうるリスクを低減するものである。例えば、電力変換装置に機能安全制御を適用することで、生じたリスクに応じて電力変換装置からの電力の出力を止めて、不安定な状態で稼働することを制限できる。電力変換装置の構成とその規模は、ユーザの要求仕様により決定されるため、電力変換装置として様々な構成と規模に対応できることが要求される。その構成が複雑になるほど、また規模が大きくなるほど、複数の電力変換ユニットの機能安全制御のための構成が複雑になり、機能安全制御の状態を示す情報を収集することが困難な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、冗長化された複数の電力変換ユニットの機能安全制御の状態を示す情報を、簡易な構成で収集できる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の一態様の電力変換装置は、複数の電力変換ユニットがバンクに分けて構成されていて、バンク単位で電力変換ユニットの稼働状態が制御される。電力変換装置は、第1電力変換ユニットと、第2電力変換ユニットと、第3電力変換ユニットと、第1中継ユニットと、第2中継ユニットと、第3中継ユニットと、安全制御部とを備える。
前記第1中継ユニットは、外部装置から第1の使用設定信号と第2の使用設定信号を夫々受ける端子を含むA1接続ポートと、前記第2の使用設定信号を出力する端子を含むA2接続ポートと、前記第1電力変換ユニットとの通信に利用するA通信ポートと、安全制御部接続ポートとを備える。前記第2中継ユニットは、前記A2接続ポートに接続されるB1接続ポートと、前記B1接続ポートを介して受けた前記第2の使用設定信号を出力する端子を含むB2接続ポートと、前記第2電力変換ユニットとの通信に利用するB通信ポートとを備える。
前記第3中継ユニットは、前記B2接続ポートに接続されるC1接続ポートと、前記C1接続ポートを介して受けた前記第2の使用設定信号を出力可能な端子を含むC2接続ポートと、前記第3電力変換ユニットとの通信に利用するC通信ポートとを備える。安全制御部は、前記第1中継ユニットの前記安全制御部接続ポートに接続され、前記第1中継ユニットの上流に配置され、機能安全制御のための制御指令を含む指令信号を前記第1中継ユニットに送ることで、少なくとも前記第1電力変換ユニットの機能安全制御と、前記第2電力変換ユニットの機能安全制御と、前記第3電力変換ユニットの機能安全制御とを実施して、前記第1中継ユニットを介して少なくとも前記第1電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第2電力変換ユニットの機能安全制御の状態と、前記第3電力変換ユニットの機能安全制御の状態とを監視する。前記安全制御部と、前記第1中継ユニットと、前記第2中継ユニットと、前記第3中継ユニットは、前記安全制御部、前記第1中継ユニット、前記第2中継ユニット、前記第3中継ユニットの接続順に従い互いに電気的に接続される。前記安全制御部と、前記第1中継ユニットと、前記第2中継ユニットと、前記第3中継ユニットの接続順の中で前記安全制御部側を上流側とし、前記第3中継ユニット側を下流側とする。前記第1電力変換ユニットは、前記A通信ポートに接続される。前記第2電力変換ユニットは、前記B通信ポートに接続される。前記第3電力変換ユニットは、前記C通信ポートに接続される。前記第1中継ユニットは、前記安全制御部からの前記指令信号を所定時間遅らせた遅延制御指令信号を生成し、前記遅延制御指令信号を前記A2接続ポートから前記第2中継ユニットに送り、前記第1の使用設定信号に係る第1条件が満たされた場合に前記遅延制御指令信号を前記A通信ポートから前記第1電力変換ユニットに送る。前記第2中継ユニットは、前記第1中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記B2接続ポートから前記第3中継ユニットに送り、前記第2の使用設定信号の論理値と、前記第2中継ユニットの前記接続順により定まる論理値とが第2条件を満たす場合に前記第1中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記B通信ポートから前記第2電力変換ユニットに送る。前記第3中継ユニットは、前記第2の使用設定信号の論理値と、前記第3中継ユニットの前記接続順により定まる論理値とが第3条件を満す場合に前記第2中継ユニットからの前記遅延制御指令信号を前記C通信ポートから前記第3電力変換ユニットに送る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1B】実施形態の電力変換装置の安全制御に係る概略構成図。
【
図2A】実施形態の第1例の電力変換ユニットの構成図。
【
図2B】実施形態の第2例の電力変換ユニットの構成図。
【
図3A】実施形態の電力変換装置における中継ユニット群の構成図。
【
図3B】実施形態の電力変換装置における中継ユニット群の構成図。
【
図5】実施形態のバンク選択について説明するための図。
【
図6】実施形態のバンク選択について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電力変換装置を、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それらの構成の重複する説明は省略する場合がある。なお、電気的に接続されることを、単に「接続される」ということがある。なお、安全制御ユニットは、監視対象である電力変換ユニットの機能安全制御の状態(安全制御状態と呼ぶ。)を監視する。安全制御ユニット側を上流側と呼び、安全制御ユニットから離れる方を下流側と呼ぶ。
【0008】
なお、実施形態において例示する電力変換装置1は、可用性に対する要求が比較的高いシステムに適用できるように主回路が冗長化されている。その冗長化の一例として、待機冗長と、容量冗長との何れか又は両方を適用する事例について説明する。待機冗長とは、複数のバンクを含む構成の電力変換装置1において、現用系にしていた特定のバンクの電力変換ユニット10が故障したときに、待機系にしていたバンクの電力変換ユニット10を現用系に切り替えて、電力変換装置1の運転を継続する方法である。ここでは、1つのバンクを待機系にした構成を例示する。容量冗長とは、交流電力の必要容量に対して供給可能容量に余裕を持たせて構成し、故障部分を切り離しても残した構成で運転を継続して必要な容量を確保する運転の継続する方法である。
【0009】
(第1の実施形態)
図1Aは、実施形態の電力変換装置1の概略構成図である。
図1Bは、実施形態の電力変換装置1の安全制御に係る概略構成図である。
【0010】
図1Aに示す電力変換装置1は、例えば、電力変換ユニット11から14と、中継ユニット群20と、非安全制御ユニット30(非安全制御部)と、安全制御ユニット40(安全制御部)とを備える。
【0011】
電力変換ユニット11から14は、例えば、図示されない1又は複数のスイッチング素子を夫々備え、そのスイッチングによって電力を変換する。スイッチング素子の種類は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、IEGT(Injection Enhanced Gate Transistor)、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)などであってよい。電力変換ユニット11は、第1電力変換ユニットの一例である。電力変換ユニット12から14は、1つ以上の第2電力変換ユニットの一例である。以下、複数の電力変換ユニットの一例である電力変換ユニット11から14までを区別することなく纏めて示すときに、単に電力変換ユニット10と呼ぶことがある。電力変換ユニット10は、制御により交流電力を生成するインバータとして機能して、その出力に接続されたモーターMの巻線に電流を流す。
【0012】
各電力変換ユニット10は、複数のバンクに分かれて構成されている。例えば、電力変換装置1は、バンク単位で各電力変換ユニット10の稼働状態を制御する。例えば、電力変換装置1は、冗長制御の切り替えを、バンク単位で切り替える。電力変換装置1におけるバンク数は、例えば、1つから4つまでの何れかを選択できる。例えば、バンク数は、電力変換装置1の要求仕様によって決定される。以下の説明では、実施形態における最大のバンク構成のバンク数を4つにした場合を例示して説明する。
【0013】
中継ユニット群20は、バンク構成に応じて互いに分割されて構成されていて、例えば中継ユニット21から24までを含む。例えば、中継ユニット21は、電力変換ユニット11とともに第1バンクに対応づけられている。中継ユニット22は、電力変換ユニット12とともに第2バンクに対応づけられている。中継ユニット23は、電力変換ユニット13とともに第3バンクに対応づけられている。中継ユニット24は、電力変換ユニット14とともに第4バンクに対応づけられている。
【0014】
中継ユニット21は、第1中継ユニットの一例である。また、中継ユニット22から24は、3つの第2中継ユニットに相当し、1つ以上の第2中継ユニットの一例である。このように中継ユニット群20の下流側には、夫々電力変換ユニット10が設けられている。中継ユニット群20の上流側には、非安全制御ユニット30と安全制御ユニット40が設けられている。少なくとも、安全制御ユニット40は、中継ユニット群20よりも上流側に配置されている。中継ユニット群20は、非安全制御ユニット30と安全制御ユニット40からの各電力変換ユニット10に対する制御を中継する。中継ユニット群20は、各電力変換ユニット10の状態を、非安全制御ユニット30と安全制御ユニット40に対して中継する。
【0015】
非安全制御ユニット30は、例えば、各電力変換ユニット10の容量冗長制御と、各電力変換ユニットの待機冗長制御を実施する。容量冗長制御の場合、非安全制御ユニット30は、電力変換ユニット11と、電力変換ユニット12から14とにおける電力変換量を調整した冗長運転を実施する。待機冗長制御の場合、非安全制御ユニット30は、稼働させる電力変換ユニット10に対応する使用設定信号A-Dを出力することで、電力変換ユニット11と、電力変換ユニット12から14とのなかから活性化させる電力変換ユニットを選択する。これにより選択された電力変換ユニット10が現用系として電力変換を行い、選択されなかった電力変換ユニット10が電力変換を行わない待機系になる。
【0016】
安全制御ユニット40は、各電力変換ユニット10の機能安全制御を実施して、各電力変換ユニット10の稼働中に生じうるリスクを低減させる。安全制御ユニット40は、運転指令CMDを生成して、運転指令CMDによって各電力変換ユニット10の出力状態を制御する。安全制御ユニット40は、各電力変換ユニット10からの応答信号ANSを受けて、運転指令CMDに対する機能安全制御の稼働状態を監視する。
【0017】
このように構成された電力変換装置1において、各電力変換ユニット10は、非安全制御ユニット30と、安全制御ユニット40とからの制御によって、稼働状態が決定される。各電力変換ユニット10が夫々備えるスイッチング素子のスイッチング制御は、非安全制御ユニット30からの制御によって決定される。これのほか、各電力変換ユニット10は、安全制御ユニット40からの制御によって出力が制限されることがある。電力変換装置1は、冗長化された複数の電力変換ユニット10を組み合わせて機能させることによって所望の電力量の電力を変換して、モーターMを駆動させる。
【0018】
以下、電力変換装置1内の各部のより詳しい説明を順に示す。
図2Aと
図2Bを参照して、実施形態の電力変換ユニット10について説明する。
図2Aは、実施形態の電力変換ユニット10Aの構成図である。電力変換ユニット10Aは、3相交流電力を生成する3レベル型インバータの一例である。
図2Bは、実施形態の電力変換ユニット10Bの構成図である。電力変換ユニット10Bは、3相交流電力を生成する5レベル型インバータの一例である。電力変換ユニット10Aと電力変換ユニット10Bは、電力変換ユニット10の一例である。以下、電力変換ユニット10Aと電力変換ユニット10Bの夫々について順に説明する。
【0019】
図2Aに示す電力変換ユニット10Aは、主回路部111Aと、主回路制御部112と、安全停止回路113とをそれぞれ備える。上記のほかに、例えば主回路部111Aと、安全停止回路113との間、安全停止回路113と中継ユニット群20との間を互いに電気的に絶縁させるインタフェース部が適宜設けられている。以下の説明では、説明を簡単にするため、上記のインタフェース部の説明を省略する。
【0020】
主回路部111Aは、3相交流の各相について、1又は複数のスイッチング素子を夫々備えたNPC(Neutral-Point-Crumped)型のレグを、相毎に1つずつ備える。主回路部111Aは、後述するゲートパルス(gate)によって、1又は複数のスイッチング素子のスイッチングが制御される。後述する安全停止回路113によってその駆動が制限されていない場合に、ゲートパルス(gate)の供給を受け、安全停止回路113によってその駆動が制限されている場合には、ゲートパルス(gate)の供給が中断する。
図2Aに示す主回路部111Aの構成は、3レベル型の一例であり、これに制限されず、3レベル型のほかの構成であってもよく、例えば、2レベル型であってもよい。
【0021】
主回路制御部112は、非安全制御ユニット30からの制御と、図示されない各種センサーの検出結果又は制御状態の推定結果とに基づいて、1又は複数のスイッチング素子をスイッチングさせるためのゲートパルス(s_gate)を生成する。非安全制御ユニット30からの制御指令には、例えば位置制御、速度制御、トルク制御などの基準値を示す制御指令が含まれる。なお、非安全制御ユニット30から主回路制御部112に対する制御指令は、中継ユニット群20を介さずに直接的に主回路制御部112に供給されてよい。
【0022】
安全停止回路113は、主回路制御部112の出力に接続され、主回路制御部112からゲートパルス(s_gate)の供給を受ける。安全停止回路113は、所定の条件が満たされた場合に、そのゲートパルス(s_gate)に対応するゲートパルス(gate)を主回路部111Aに供給することで、主回路部111Aを活性化させて電力変換を行わせる。なお、安全停止回路113は、所定の条件が満たされない場合には、そのゲートパルスの主回路部111Aに対する供給を制限する。
【0023】
安全停止回路113は、後述する中継ユニット21から24の何れかに接続されるように形成されている。例えば、電力変換ユニット11の安全停止回路113は、中継ユニット21を経て安全制御ユニット40からの制御を受ける。例えば、安全停止回路113は、中継ユニット21を経て運転指令CMDを受けて、これに応答して安全制御ユニット40に、応答信号ANSを送信する。
図2Aにおいて、運転指令CMDと応答信号ANSを、CMD10とANS10と記す。
【0024】
上記は、
図2Aに示す電力変換ユニット10Aに関する説明である。これに対し、
図2Bに示す電力変換ユニット10Bは、電力変換ユニット10Aの主回路部111Aに代えて主回路部111Bを備える。相違点を中心に説明する。
【0025】
主回路部111Bは、3相交流の各相について、1又は複数のスイッチング素子を夫々備えたNPC(Neutral-Point-Crumped)型のレグを、相毎に2つずつ備える。
図2Bに示す主回路部111Bの構成は、5レベル型の一例であり、これに制限されない。
【0026】
上記の各相における第1のレグの出力は、モーターMの巻線に接続され、第2のレグの出力は、交流系の中性点に接続される。例えば、U相はレグUとレグXを含み、V相はレグVとレグYを含み、W相はレグWとレグZを含む。レグUとレグVとレグWの各出力がモーターMのUVW相の各巻線に接続され、レグXとレグYとレグZ各出力が交流系の中性点に夫々接続される。
【0027】
上記のように、電力変換ユニット10Aと電力変換ユニット10Bは、主回路の構成が異なるが、機能安全制御については、同様の制御を適用することができる。
【0028】
なお、各電力変換ユニット10の出力同士がモーターMの特定の巻線の一端にともに接続される場合には、各電力変換ユニット10の出力とモーターMの特定の巻線のその一端との間にリアクトルを設けて、過大な電流が過渡的に発生することを抑制するとよい。上記の説明は、主たる接続を示したものであり、上記のように、夫々の接続にリアクトルが含まれていてもよい。
図1A、
図2A、
図2Bなどに上記のリアクトルの表記を省略する。なお、上記のようにリアクトルを必要としない部分には、上記の図のようにリアクトルを省略できる。リアクトルを設ける場合には、上記の過電流保護などを目的とした一般的な構成を適用してよい。
【0029】
各電力変換ユニット10は、中継ユニット群20を介して、安全制御ユニット40から夫々「出力停止」の運転指令CMDを受けると、安全停止回路113によって交流電力の出力が停止するように制御される。これによって、各電力変換ユニット10は交流電力の供給を停止する。これに応じてモーターMの巻線に対する交流電力の供給が停止する。
【0030】
次に、
図1Aと
図1Bとを参照して、中継ユニット群20について説明する。
中継ユニット21は、電力変換ユニット11からの応答信号ANSと、中継ユニット21よりも下流側からの応答信号ANSとを上流側に送る第1論理処理部210を含む。中継ユニット22は、電力変換ユニット12からの応答信号ANSと、中継ユニット22よりも下流側からの応答信号ANSとを上流側に送る第2論理処理部220を含む。中継ユニット23は、電力変換ユニット13からの応答信号ANSと、中継ユニット23よりも下流側からの応答信号ANSとを上流側に送る第2論理処理部230を含む。中継ユニット24は、電力変換ユニット14からの応答信号ANSと、中継ユニット24よりも下流側からの応答信号ANSとを上流側に送る第2論理処理部240を含む。なお、中継ユニット24の下流側には、同様の中継ユニットを設けないため、第2論理処理部240に下流側からの応答信号ANSは供給されない。
【0031】
このように、中継ユニット21から24は、各電力変換ユニット10に夫々対応づけられていて、各電力変換ユニット10からの応答信号ANSと、その中継ユニットよりも下流側からの応答信号ANSとを上流側に送るように構成されている。
【0032】
非安全制御ユニット30は、電力変換装置1の中で稼働させる各電力変換ユニット10を指定するための使用設定信号A-Dを生成して、中継ユニット21から24に供給する。使用設定信号A-Dは、稼働させる電力変換ユニット10を指示するための情報を含む。
【0033】
安全制御ユニット40は、中継ユニット21の上流側に配置され、中継ユニット21に接続されている。換言すれば安全制御ユニット40は、中継ユニット21から24の上流側に配置されている。安全制御ユニット40と、中継ユニット21と、中継ユニット22から24とは、安全制御ユニット40を上流側として規定されていて、かつ、その記載の順に基づいた接続順が規定されている。安全制御ユニット40と、中継ユニット21と、中継ユニット22から24とは、上記の接続順に従い互いに電気的に接続されている。
【0034】
安全制御ユニット40は、少なくとも各電力変換ユニット10の機能安全制御の状態を監視する。安全制御ユニット40は、各電力変換ユニット10に運転指令CMDを送り、各電力変換ユニット10を制御してよい。
【0035】
例えば、安全制御ユニット40は、安全停止制御回路41と、故障診断部42とを備える。安全停止制御回路41は、各電力変換ユニット10に運転指令CMDを送り、各電力変換ユニット10における安全停止制御の状態を纏めて制御する。安全停止制御回路41が出力する運転指令CMDは、例えば、各電力変換ユニット10の機能安全制御を有効にして、それらを稼働させるための信号である。安全停止制御回路41と、これを有効にする場合に、例えば運転指令CMDとしてHレベルの信号を出力する。
【0036】
各電力変換ユニット10は、この運転指令CMDに対する安全制御信号CMD10に応答して、応答信号ANS10を出力する。中継ユニット21から24は、この応答信号ANS10を中継して、安全制御ユニット40に対し通知する。安全制御ユニット40は、この応答信号ANS10に対応する応答信号ANSを、各電力変換ユニット10の安全制御状態を示す信号として受信する。なお、後述する安全制御信号CMD11から安全制御信号CMD14は、安全制御信号CMD10の一例である。後述する応答信号ANS11から応答信号ANS14は、応答信号ANS10の一例である。
【0037】
安全制御ユニット40が送出した運転指令CMDの論理と、上記の応答信号ANSの論理とが対応している場合に、故障診断部42は、電力変換装置1における機能安全制御が有効に機能していると判定する。この詳細について後述する。
【0038】
次に、電力変換装置1に含まれる中継ユニットの種類について説明する。
冗長構成化されている電力変換装置1は、バンク数によらず2種類の中継ユニットを含めて形成される。そのため3バンク以上の構成の場合、電力変換装置1は、同種の中継ユニットを複数用いることになる。本実施形態に適用する同種の複数の中継ユニットは、ユーザによるスイッチ操作、ソフトウェアを用いたフラグの設定などによることなく、その同種の複数の中継ユニットの中の何れであるかの識別をハードウェア的な方法で識別する。
【0039】
中継ユニットの識別について説明する。
上記のように3バンク以上の構成では、共通のハードウェアで構成された同種の中継ユニットが複数用いられる。この場合、各中継ユニットを識別することが必要になる。本実施形態の電力変換装置1は、例えば下記するように、共通のハードウェアで構成された中継ユニットを、その実装位置に基づいて識別する。以下、バンク数ごとの構成例について説明する。
【0040】
2バンク構成の場合:
2バンク構成の場合には、1つの型式Aの中継ユニット(「ユニットA」と呼ぶ。)と、1つの型式Bの中継ユニット(「ユニットB」と呼ぶ。)が含まれる。なお、この2バンク構成の場合には、各中継ユニットは1つずつであり、同種の中継ユニットは存在しない。
【0041】
この構成の接続形態を模式化して、次の式(1)に示す。第1項が、第1バンク(A-bankという。)であり、第2項が、第2バンク(B-bankという。)である。「+」の記号は、接続されていることを示す。以下、同様。
【0042】
(ユニットA)+(ユニットB) (1)
【0043】
上記の式(1)の関係から読み取れるA-bankとB-bankの夫々について、これに対する型式の割り付けと、夫々の接続状態の特徴とを、次の式(2)に整理する。
【0044】
A-bank:ユニットA
B-bank:ユニットAに接続されているユニットB (2)
【0045】
3バンク構成の場合:
3バンク構成の場合には、1つのユニットAと、2つのユニットBが含まれる。この構成の接続形態を模式化して、次の式(3)に示す。第3項が、第3バンク(C-bankという。)である。
【0046】
(ユニットA)+第1の(ユニットB)+第2の(ユニットB) (3)
【0047】
上記の式(3)の関係から読み取れるA-bankからC-bankの夫々について、これに対する型式の割り付けと、夫々の接続状態の特徴とを、次の式(4)に整理する。
【0048】
A-bank:ユニットA
B-bank:ユニットAと第2のユニットBとに接続されている第1のユニットB
C-bank:第1のユニットBに接続されている第2のユニットB (4)
【0049】
4バンク構成の場合には、1つのユニットAと、3つのユニットBが含まれる。この構成の接続形態を模式化して、次の式(5)に示す。第4項が、第4バンク(D-bankという。)である。
【0050】
(ユニットA)+第1の(ユニットB)+第2の(ユニットB)+第3の(ユニットB) (5)
【0051】
A-bank:ユニットA
B-bank:ユニットAと第2のユニットBとに接続されている第1のユニットB
C-bank:第1のユニットBと第3のユニットBとに接続されている第2のユニットB
D-bank:第2のユニットBに接続されている第3のユニットB (6)
【0052】
上記の通り、同種の複数の中継ユニットを備える構成であっても、各中継ユニット間の相互の接続関係の情報に基づいた識別により、夫々割り当てられたバンクを識別できる。
【0053】
次に、
図3Aと
図3Bを参照して、電力変換装置1における中継ユニット群20の構成について説明する。
図3Aと
図3Bが、実施形態の電力変換装置1における中継ユニット群の構成図である。
図3Aと
図3Bに、電力変換装置1における中継ユニット群を2つに分けて示す。
図3Aの下端と
図3Bの上端が連結されている。
【0054】
まず、電力変換装置1における各中継ユニットの接続関係を整理する。
図3Aに示すように中継ユニット21は、外部への接続用コネクタとしてCNA1-9を備える。
【0055】
CNA1は、例えば、端子a-dを備える。CNA1は、非安全制御ユニット30に接続される。CNA1の端子a-dには、非安全制御ユニット30から使用設定信号A-Dが夫々供給される。
【0056】
CNA2は、端子b-hと端子kと、図示しない電源端子対とを備える。CNA2の端子b-dは、中継ユニット21内でCNA1の端子b-dに夫々接続されている。CNA2の端子e-fは、中継ユニット21の合成ゲート回路214の入力に夫々接続されている。CNA2の端子gは、中継ユニット21内でCNA3の入力端子に第1遅延回路(DLY)を経て接続されている。CNA2の端子hは、中継ユニット21内でCNA4の入力端子に第2遅延回路(DLY)を経て接続されている。CNA1の端子kは、中継ユニット21内で正の電源電圧にプルアップされていて、Hレベルに設定されている。図示しない電源端子対には、中継ユニット21内から所定の直流電圧がその端子間に供給される。CNA2は、中継ユニット22のCNB1に接続される。
【0057】
CNA3の出力端子とCNA4の出力端子は、合成ゲート回路214の出力に夫々接続されている。CNA3とCNA4は、安全制御ユニット40に夫々接続される。
【0058】
CNA5-8は、電力変換ユニット11に夫々接続される。CNA5、7は、電力変換ユニット11に対して、安全制御信号CMD11を送出する。CNA5、7は、例えば電気―光変換器を含む。CNA6、8は、電力変換ユニット11から安全制御信号CMD11に対する応答信号ANS11を受信する。CNA5、7は、例えば光-電気変換器を含む。CNA5-8は、光信号伝送用のコネクタであってよい。
【0059】
中継ユニット22は、外部への接続用コネクタとしてCNB1-2、5-8を備える。
CNB1は、端子b-hと、端子k-lと、図示しない電源端子対とを備える。CNB1は、中継ユニット21のCNA2に接続される。CNB1の端子b-kは、CNA2の端子b-kに夫々接続される。CNB1の端子b-dには、中継ユニット21を経て非安全制御ユニット30から使用設定信号B-Dが供給される。CNB1の端子e-fは、中継ユニット22の合成ゲート回路224の出力に夫々接続されている。CNB1の端子g-hは、中継ユニット22内でCNB2の端子g-hに接続されている。CNB1の端子kは、中継ユニット22の選択器221の入力に接続されている。CNB1の端子lは、中継ユニット21のCNA2の端子lに接続されていて、中継ユニット22内で正の電源電圧が供給され、Hレベルに設定されている。このCNB1の端子lに正の電源電圧を供給する回路(225)は、中継ユニット22からその上流側の中継ユニット21にHレベルの第1信号を出力する第1電圧設定回路(第1電圧設定回路225という。)の一例である。
【0060】
CNB2は、端子b-hと、端子k-lと、図示しない電源端子対とを備える。CNB2の端子b-dは、中継ユニット22内でCNB1の端子b-dに夫々接続されている。CNB2の端子e-fは、中継ユニット22の合成ゲート回路224の入力に夫々接続されている。CNB2の端子g-hは、中継ユニット21内でCNB1の端子g-hに接続されている。CNB2の端子kは、中継ユニット22内で正電源に接続され、Hレベルに設定されている。CNB2は、中継ユニット23のCNC1に接続される。CNB2の端子lは、CNB2の端子lが開放されているときに、中継ユニット22内でプルダウン抵抗があることによってLレベルになる。このCNB2の端子lは、中継ユニット23が接続されていることにより、Hレベルに設定される。このCNB2の端子kにLレベルの電圧を供給する回路(226)は、中継ユニット22からその下流側の中継ユニット23にLレベルの第2信号を出力する第2電圧設定回路(第2電圧設定回路226という。)の一例である。
【0061】
CNB5-8は、電力変換ユニット12に夫々接続される。CNB5、7は、電力変換ユニット12に対して、安全制御信号CMD12を送出するためのコネクタを含む。CNB6、8は、電力変換ユニット12から安全制御信号CMD12に対する応答信号ANS12を受信するためのコネクタを含む。CNB5-8は、光信号用のコネクタであってよい。
【0062】
中継ユニット23は、外部への接続用コネクタとしてCNC1-2、5-8を備える。
【0063】
中継ユニット24は、外部への接続用コネクタとしてCND1-2、5-8を備える。
【0064】
中継ユニット23と中継ユニット24は、中継ユニット22と同じ構成を有しており、各中継ユニット内の各部の接続関係が中継ユニット22と同じである。例えば、中継ユニット23における安全制御信号とその安全制御信号に対する応答信号は、安全制御信号CMD13と応答信号ANS13になる。中継ユニット24における安全制御信号とその安全制御信号に対する応答信号は、安全制御信号CMD14と応答信号ANS14になる。
【0065】
中継ユニット23と中継ユニット24の他の中継ユニットに対する接続関係は下記のとおりである。中継ユニット23のCNC1は、中継ユニット22のCNB2に接続されている。中継ユニット24のCND1は、中継ユニット22のCNC2に接続されている。なお、中継ユニット24のCND2は、未接続であってよい。中継ユニット24のCND2の端子lは、中継ユニット24の外部に接続されるものがなく開放されているため、中継ユニット24内のプルダウン抵抗によってLレベルになる。
【0066】
中継ユニット23と中継ユニット24と、それに対する電力変換ユニットとの接続関係は下記のとおりである。中継ユニット23のCNC5-8は、電力変換ユニット13に夫々接続される。中継ユニット24のCND5-8は、電力変換ユニット14に夫々接続される。
【0067】
次に、各中継ユニットの内部の構成について説明する。
【0068】
A-bankに適用される中継ユニット21は、例えば、入力ゲート回路212と、出力ゲート回路213と、合成ゲート回路214とを備える。入力ゲート回路212と、出力ゲート回路213と、合成ゲート回路214は、前述の第1論理処理部210の一部であってよい。
【0069】
入力ゲート回路212は、使用設定信号Aに基づいて、電力変換ユニット11の応答信号ANSの取得を制限する。例えば、入力ゲート回路212は、使用設定信号AがLレベルである場合に、電力変換ユニット11の応答信号ANSの取得を制限し、Hレベルである場合に、電力変換ユニット11の応答信号ANSを取得して、これを出力する。
【0070】
出力ゲート回路213は、使用設定信号Aに基づいて、安全制御ユニット40からの指令信号CMDの電力変換ユニット11への出力を制限する。例えば、出力ゲート回路213は、使用設定信号AがLレベルである場合に、安全制御ユニット40からの指令信号CMDの電力変換ユニット11への出力を制限し、Hレベルである場合に、安全制御ユニット40からの指令信号CMDを電力変換ユニット11に出力する。例えば、上記の指令信号CMDには、停止制御信号ST01_CMDと、ST02_CMDとが含まれていてよい。停止制御信号ST01_CMDと、ST02_CMDとは、冗長化された指令信号CMDの一例である。停止制御信号ST01_CMDと、ST02_CMDは、安全制御信号として、夫々CNB5とCNB7から、電力変換ユニット12に対して送出される。
【0071】
合成ゲート回路214は、入力ゲート回路212によって制限されずに取得した電力変換ユニット11の応答信号ANS11に対応する応答信号ANS11aと、電力変換ユニット11よりも下流側からの応答信号ANS11bとを合成して、その結果の信号を出力する。
【0072】
例えば、応答信号ANS11と、応答信号ANS11aと、応答信号ANS11bの論理は、Hレベルが出力許可状態を示し、Lレベルが出力停止状態を示す。安全制御ユニット40が出力停止を示す運転指令CMDを出力すると、その運転指令CMDを受けた各電力変換ユニット10は、それぞれ運転指令CMDに応じて出力を停止するとともに、それぞれ出力停止状態を示す応答信号(例えば応答信号ANS11)を出力する。この状態であれば、Hレベルの応答信号が存在することはない。ただし、この状態でありながら、Hレベルの応答信号が存在していたら、何らかの異常が生じている可能性がある。合成ゲート回路214は、正論理のオア回路で構成することで、Hレベルの応答信号の存在を上流側に転送することができる。この応答信号の転送の仕組みは、後述する中継ユニット22から中継ユニット24についても同様である。
【0073】
次に、
図4を参照して、実施形態の中継ユニット22の構成について説明する。
図4は、実施形態の中継ユニット22の構成図である。
【0074】
B-bankに適用される中継ユニット22は、選択器221と、入力ゲート回路222と、出力ゲート回路223と、合成ゲート回路224とを備える。中継ユニット22は、上記のほか、さらに中継ユニット22からその上流側に第1信号を出力するための第1電圧設定回路225と、中継ユニット22からその下流側に第2信号を出力するための第2電圧設定回路226とを備える。例えば、選択器221と、入力ゲート回路222と、出力ゲート回路223と、合成ゲート回路224は、第2論理処理部220の一部であってよい。
【0075】
選択器221は、W信号(第2信号)の論理値とZ信号(第1信号)の論理値に基づいて使用設定信号B-D(第1使用設定信号から第3使用設定信号)のうちの何れかを選択して、使用設定信号SOUTを生成する。
【0076】
例えば、選択器221を下記のように構成してもよい。
選択器221は、セレクタ221aと221bと、オアゲート回路221cとを備える。
【0077】
セレクタ221aの第1入力(H)と第2入力(L)には、B-bank(Bバンク)の使用設定信号BとC-bank(Cバンク)の使用設定信号Cとが夫々供給される。その制御端子には、上位の中継ユニット21が出力する第2信号(W)が供給される。セレクタ221aは、上記の第2信号(W)がHレベル(ハイレベル)の場合、B-bankの使用設定信号Bを出力し、上記の第2信号(W)がLレベル(ローレベル)の場合、C-bankの使用設定信号Cを出力する。このセレクタ221aは、上記のように第2信号(W)の論理値に基づいて使用設定信号B(第1使用設定信号)と使用設定信号C(第2使用設定信号)とのうちの何れかを選択するように構成されている。
【0078】
セレクタ221bの第1入力(H)と第2入力(L)には、セレクタ221aの出力信号とD-bankの使用設定信号Dとが夫々供給される。その制御端子には、オアゲート回路221cの出力が接続されている。
【0079】
オアゲート回路221cの第1入力には、上位の中継ユニット21が出力する第2信号(W)が供給される。オアゲート回路221cの第2入力には、下流側の中継ユニット23が出力する第1信号(Z)の論理値と中継ユニット22において生成する第3信号の論理値の何れかの論理値の信号(Zs)が供給される。つまり、セレクタ221bの制御端子には、下流側の中継ユニット23が出力する第1信号(Z)の論理値と中継ユニット22において生成する第3信号の論理値の何れかの論理値の信号(Zs)と、上位の中継ユニット21が出力する第2信号(W)との論理和が供給されるように構成されている。
【0080】
なお、中継ユニット22には下流側の中継ユニット23が接続されているため、セレクタ221bの制御端子には、上記の前者にあたる中継ユニット23が出力する第1信号(Z)の論理値に応じたHレベルが供給される。セレクタ221bは、第1信号(Z)がHレベルの場合、セレクタ221aの出力信号を出力し、第2信号がLレベルの場合、D-bankの使用設定信号Dを出力する。このセレクタ221bは、上記のように第1信号(Z)の論理値と第3信号の論理値とのうちの何れかと、第2信号(W)の論理値とに基づいた論理和の演算結果に基づいて、セレクタ221aによる選択結果と使用設定信号D(第3使用設定信号)とのうちの何れかを選択する。
【0081】
このように、選択器221は、第1信号(Z)の論理値と第2信号(W)の論理値に基づいて使用設定信号Bから使用設定信号Dのうちから何れかを選択するように形成されている。
【0082】
入力ゲート回路222は、選択器221による選択の結果を示す使用設定信号SOUTに基づいて、電力変換ユニット12の応答信号ANS12に対応する応答信号ANS12aの取得を制限する。例えば、入力ゲート回路222は、使用設定信号SOUTがLレベルである場合に、電力変換ユニット12の応答信号ANS12aの取得を制限し、Hレベルである場合に、電力変換ユニット12の応答信号ANS12aを取得して、これを出力する。
【0083】
出力ゲート回路223は、選択器221による選択の結果を示す使用設定信号SOUTに基づいて、安全制御ユニット40からの指令信号CMDの電力変換ユニット12への中継を制限する。例えば、出力ゲート回路223は、使用設定信号SOUTがLレベルである場合に、安全制御ユニット40からの指令信号CMDの電力変換ユニット12への出力を制限し、Hレベルである場合に、安全制御ユニット40からの指令信号CMDを電力変換ユニット12に出力する。上記の指令信号CMDには、停止制御信号ST01_CMDと、ST02_CMDとが含まれていてよい。
【0084】
合成ゲート回路224は、入力ゲート回路222によって制限されずに取得した電力変換ユニット12(自第2中継ユニットに係る自電力変換ユニット)の応答信号ANS12aと、電力変換ユニット12よりも下流側からの応答信号ANS12bとを合成して、その結果の信号を出力する。
【0085】
図3Bに示すように、C-bankに適用される中継ユニット23は、選択器231と、入力ゲート回路232と、出力ゲート回路233と、合成ゲート回路234とを備える。
【0086】
D-bankに適用される中継ユニット24は、選択器241と、入力ゲート回路242と、出力ゲート回路243と、合成ゲート回路244とを備える。
【0087】
なお、中継ユニット23と中継ユニット24は、前述の中継ユニット22と同じユニットである。中継ユニット23と中継ユニット24は、前述の中継ユニット22とは異なる配置順になっていることにより、選択器231と選択器241のバンク選択に係る動作が、選択器221とは異なる。
【0088】
図5と
図6を参照して、中継ユニット22から24によるバンク選択について説明する。
図5と
図6は、実施形態のバンク選択について説明するための図である。
図5に示す真理値表は、中継ユニット22から24の設定信号と、選択器221、231、241の夫々の出力信号との関係を示す。
【0089】
表中の設定信号を示す「W」、「X」、「Y」、「Z」と、出力信号「SOUT」は、
図4中に示した信号に対応する。その信号の状態をHレベルとLレベルの2値で示す。
【0090】
「X」及び「Y」は、夫々がHレベルとLレベルに固定されている。これらは、隣接バンクの中継ユニットにおけるバンク選択の判断に寄与する信号であり、自身(中継ユニット22)におけるバンク選択の判断には寄与しない。そこで、自身(中継ユニット22)のなかでは、上記の「W」及び「Z」を、選択器221、231、241の入力信号に用いる。この真理値表では、その上から順に、B-bankからD-bankに対応する条件を示している。
【0091】
出力信号「SOUT」は、選択器221、231、241の出力信号である。B-bankからD-bankに夫々一致する場合にHレベルが選択される。
【0092】
前述の
図5に示した真理値表から、選択器221、231、241の入力信号に用いる範囲を抽出して、改めて
図6に整理する。
【0093】
例えば、中継ユニット21(第1中継ユニット)が出力する信号(Y)の論理値、換言すれば第2信号に係るB-bankの信号Wの論理値は、第1論理の値(例えばHレベルに対応する「1」)である。これに対して、中継ユニット22から24(第2中継ユニット)が出力する信号(Y)の論理値、換言すれば第2信号に係るB-bankの信号Wの論理値は、第2論理の値(例えばLレベルに対応する「0」)である。
【0094】
例えば、最も下流に位置するD-bankに配置される中継ユニット24は、中継ユニット24において第2論理の値の「0」の第3信号を生成する。中継ユニット24は、第3信号の論理値として第2論理の値の「0」を利用する。
【0095】
これに対し、中継ユニット22から24(第2中継ユニット)のなかで最も下流側に配置される中継ユニット24を除く中継ユニット22と23は、上記の中継ユニット24とは異なる。中継ユニット23は、下流側の中継ユニット24が出力する論理値の「1」の第1信号(Z)を利用する。中継ユニット22は、下流側の中継ユニット23が出力する論理値の「1」の第1信号(Z)を利用する。なお、第1信号(Z)の論理値と中継ユニット22から24において生成する第3信号の論理値は、互いに相補の関係になっている。
【0096】
図6に示すこの真理値表からわかるように、各バンクに割り当てられた中継ユニットは、自バンクに隣接する隣接バンクの中継ユニットからの信号を受けて、自中継ユニットの位置(自バンクの位置)を識別することができる。
【0097】
上記の通り、中継ユニット22から24は、下記する所定の場合に、各バンクの使用設定信号に応じて、自中継ユニットに係る自電力変換ユニットの応答信号ANSを該自中継ユニットより上流側に送る。中継ユニット22から24は、その所定の場合によらずに、該自電力変換ユニットよりも下流側からの応答信号ANSを該自電力変換ユニットより上流側に送る。なお、上記の所定の場合とは、例えば下流側の中継ユニット(第2中継ユニット)が出力する第1信号(Z)の論理値と自中継ユニットにおいて生成する第3信号の論理値の何れかの論理値と、上流側が出力する第2信号の論理値との夫々が、各中継ユニットの接続順によって決定される所定の値にある場合であってよい。
【0098】
また、中継ユニット22から24は、B-bank(Bバンク)からD-bank(Dバンク)の各バンクの使用設定信号B-Dに応じて、自中継ユニットより上流側からの指令信号CMDを電力変換ユニット12から14の中の上記の中継ユニットに係る自電力変換ユニットに対する信号として取得する。中継ユニット22から24は、この信号を自中継ユニットに対応する自電力変換ユニットに夫々供給する。
【0099】
各バンクの使用設定信号A-Dに着目すると、中継ユニット21は、各バンクの使用設定信号A-Dを中継ユニット21の外部装置である非安全制御ユニット30から受けて、使用設定信号B-Dをその下流側に中継する。中継ユニット22から24は、各バンクの使用設定信号B-Dを上流側から受けて下流側に中継する。なお、中継ユニット21は、各バンクの使用設定信号Aのみを、その内部で利用するように構成するとよい。これに対して中継ユニット22から24には、使用設定信号Aが供給されない。
【0100】
安全制御ユニット40からの指令信号CMDは、冗長化されている。
中継ユニット21から24(第1中継ユニットと第2中継ユニット)は、冗長化されている機能安全制御のための指令信号CMDを、夫々下流側に中継する。
【0101】
中継ユニット21から24は、接続順により定まる所定の条件が満たされる場合に、冗長化されている指令信号CMDを、夫々に対応づけられている電力変換ユニット11から14の何れかに中継する。例えば、上記の所定の条件が満たされることとは、使用設定信号によって該当するバンクが使用するバンクとして指定されていることである。
【0102】
例えば、使用設定信号は、中継ユニット22から24について、その上流側から1番目から3番目のバンクの中継ユニットを夫々選択するための使用設定信号B(第1使用設定信号)から使用設定信号D(第3使用設定信号)までを含む。
【0103】
図7は、実施形態の選択部の構成図である。
選択器221は、2入力ゲート回路の組み合わせ回路に展開することができる。このゲートの段数と回路規模であれば、1つのPLDなどの半導体装置に収めることができる。
図7に示す回路は、その一例であり、これに制限されない。
【0104】
次に、実施形態の機能安全制御について説明する。
機能安全制御の指令信号CMDは、活性化されているバンクの電力変換ユニットに供給される。例えば、非安全制御ユニット30は、機能安全制御とは独立に、活性化させる各バンクの使用設定信号A-Dを出力する。各バンクの中継ユニット(21から24)は、そのバンクに対応する使用設定信号A-Dによって活性化された状態を識別する。
【0105】
機能安全制御のために安全制御ユニット40が指令信号CMDを中継ユニット21に供給すると、中継ユニット21から24は順にこの指令信号CMDを中継する。活性化されているバンクの中継ユニット21から24は、それぞれの電力変換ユニット11から14に、指令信号CMDを中継する。指令信号CMDが供給された電力変換ユニット10は、電力を出力する。指令信号CMDが供給された電力変換ユニット10は、これに対する応答信号ANSを中継ユニットに返答する。
【0106】
なお、各中継ユニットは、活性化されている各バンクの電力変換ユニットからの応答信号ANSを収集して、これを論理合成して上流側に中継する。各中継ユニットによってそれぞれ収集されて中継された結果の応答信号ANSがLレベルであれば、機能安全制御が正常に機能している状態とする。応答信号ANSがHレベルであれば、機能安全制御が正常に機能していない状態が発生していると判断してよい。
【0107】
例えば各中継ユニットの中の何れかがHレベルの応答信号ANSを収集して、それを中継すると、安全制御ユニット40に供給される最終的な応答信号ANSがHレベルになる。安全制御ユニット40は、指令信号CMDによって出力停止を通知した状態で、収集された結果の応答信号ANSがHレベルであれば、指令信号CMDを供給した電力変換ユニットの中に、機能安全制御が正常に機能していない電力変換ユニットが含まれている状態にあると識別する。このような状態を検出した安全制御ユニット40は、非安全制御ユニット30と連携して稼働させている範囲を切り替えて、収集された結果の応答信号ANSがLレベルになる状態にする。これにより稼働対象から外された電力変換ユニットに障害が発生した可能性があることを識別する。
【0108】
機能安全制御が正常に機能しない状態は、適正な状態ではないが、これが要因になって重障害に波及する可能性は低い。そこで、上記のような手順で、機能安全制御が正常に機能しない電力変換ユニットを現用系から待機系に切り替えて、点検・保守の対象にする。このような処置を講じることで、システム全体を停止させることなく必要な稼働状態に回復させることができる。
【0109】
なお、稼働させるように選択されていないバンクの中継ユニット21から24は、それぞれに対応する電力変換ユニットには指令信号CMDを中継しない。指令信号CMDが供給されない電力変換ユニットでは、電力を出力しないように制御される。
【0110】
上記の動作の説明は、機能安全性を中心としたものであるが、これとは独立して障害回避などを目的とする現用系と待機系の切り替えを実施してもよい。
【0111】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、電力変換装置は、第1中継ユニットと、1つ以上の第2中継ユニットと、安全制御部と、を備える。前記第1中継ユニットは、第1電力変換ユニットに対応づけられた第1バンクにおいて、前記第1電力変換ユニットからの応答信号ANSと、自第1中継ユニットよりも下流側からの応答信号ANSとを上流側に送る。前記1つ以上の第2中継ユニットは、1つ以上の第2電力変換ユニットに夫々対応づけられた1つ以上の第2バンクにおいて、前記1つ以上の第2電力変換ユニットのなかの1つの第2電力変換ユニットからの応答信号ANSと、前記1つの第2中継ユニットよりも下流側からの応答信号ANSとを前記1つの第2中継ユニットよりも上流側に送る。前記安全制御部は、前記第1中継ユニットの上流側に配置され、前記第1中継ユニットに機能安全制御のための制御指令を送ることで前記第1電力変換ユニットと前記1つ以上の第2電力変換ユニットの機能安全制御を実施して、前記第1電力変換ユニットの機能安全制御の状態と前記1つ以上の第2電力変換ユニットの機能安全制御の状態とを監視する。これにより、冗長化された複数の電力変換ユニットの機能安全制御の状態を示す情報を、簡易な構成で収集することができる。
【0112】
上記の非安全制御ユニット30と安全制御ユニット40は、その少なくとも一部を、CPUなどのプロセッサがプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部で実現してもよく、全てをLSI等のハードウェア機能部で実現してもよい。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0114】
例えば、上記で例示した3レベル型(
図2A)の構成に代えて、5レベル型(
図2B)の構成を適用してもよい。
【符号の説明】
【0115】
1…電力変換装置、10、11、12、13、14…電力変換ユニット、20…中継ユニット群、21、22、23、24…中継ユニット、30…非安全制御ユニット(非安全制御部)、40…安全制御ユニット40(安全制御部)、221、231、241…選択器、212、222、232、242…入力ゲート回路、213、223、233、243…出力ゲート回路、214、224、234、244オアゲート回路(合成ゲート回路)