(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20250212BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20250212BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20250212BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/52 E
C09J7/38
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2020141022
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019202485
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中浦 宏
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄大
(72)【発明者】
【氏名】武田 公平
(72)【発明者】
【氏名】毎川 英利
(72)【発明者】
【氏名】植野 大樹
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-185591(JP,A)
【文献】特開2012-222002(JP,A)
【文献】特開2012-79936(JP,A)
【文献】特開2009-164556(JP,A)
【文献】特開2019-16633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/52
C09J 7/38
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープであって、
-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下であ
り、
-10℃における破断伸度が450%以上600%以下である、
ダイシングテープ。
【請求項2】
-10℃における損失係数が0.07以上0.18以下である、
請求項1に記載のダイシングテープ。
【請求項3】
前記基材層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体、プロピレン/1-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、又は、α-オレフィン系熱可塑性エラストマーを含む、
請求項1または2に記載のダイシングテープ。
【請求項4】
基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、
前記ダイシングテープの粘着剤層上に積層されたダイボンド層と、を備え、
前記ダイシングテープの-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下であ
り、-10℃における破断伸度が450%以上600%以下である、
ダイシングダイボンドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造において、ダイボンディング用の半導体チップを得るために、ダイシングテープやダイシングダイボンドフィルムを用いることが知られている。
前記ダイシングテープは基材層上に粘着剤層が積層されて構成されており、前記ダイシングダイボンドフィルムは、前記ダイシングテープの粘着剤層上にダイボンド層が剥離可能に積層されて構成されている。
【0003】
そして、前記ダイシングダイボンドフィルムを用いてダイボンディング用の半導体チップ(ダイ)を得る方法として、半導体ウェハを割断処理によってチップ(ダイ)へ加工すべく半導体ウェハに溝を形成するハーフカット工程と、ハーフカット工程後の半導体ウェハを研削して厚さを薄くするバックグラインド工程と、バックグラインド工程後の半導体ウェハの一面(例えば、回路面とは反対側の面)をダイボンド層に貼付して、ダイシングテープに半導体ウェハを固定するマウント工程と、ハーフカット加工された半導体チップ同士の間隔を広げるエキスパンド工程と、半導体チップ同士の間隔を維持するカーフ維持工程と、ダイボンド層と粘着剤層との間を剥離してダイボンド層が貼付された状態で半導体チップを取り出すピックアップ工程と、ダイボンド層が貼付された状態の半導体チップを被着体(例えば、実装基板等)に接着させるダイボンド工程と、を有する方法を採用することが知られている。
なお、前記カーフ維持工程においては、ダイシングテープに熱風(例えば、100~130℃)を当ててダイシングテープを熱収縮させた後冷却固化させて、割断された隣り合う半導体チップ間の距離(カーフ)を維持している。
また、前記エキスパンド工程では、前記ダイボンド層は、個片化された複数の半導体チップのサイズに相当する大きさに割断される。
【0004】
前記のようなダイシングダイボンドフィルムを用いてダイボンディング用の半導体チップを得る方法において、特許文献1には、特定物性を有するダイシングテープ(-10℃における初期弾性率が200MPa以上380MPa以下、及び、-10℃におけるTanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)が0.080以上0.3以下のダイシングテープ)を用い、かつ、前記エキスパンド工程を-15~5℃の低温条件で行うことにより、前記エキスパンド工程において、前記半導体ウェハから複数の半導体チップへの割断性(例えば、割断のし易さや均一割断性など)を向上できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体チップは、用途に応じて要求される大きさが異なる。
そして、要求される半導体チップの大きさが小さくなるほど、同じ大きさの半導体ウェハをエキスパンドして複数の半導体チップに個片化する場合、半導体ウェハに形成される溝(割断ライン)の数は多くなり、割断ラインの数が多くなるほど、エキスパンド工程において半導体チップ同士の間隔を十分に広げるために、ダイシングテープまたはダイシングダイボンドフィルムをより引き延ばす必要がある。
そのため、ダイシングテープまたはダイシングダイボンドフィルムが有する物性によっては、ダイシングテープまたはダイシングダイボンドフィルムをより引き延ばす必要がある場合でも十分に引き延ばせなくなり、その結果、エキスパンド工程において半導体チップ同士の間隔を十分に広げられなくなることがある。すなわち、半導体ウェハから複数の半導体チップへの良好な割断を行えないことがある。
また、カーフ維持工程において、カーフを十分に維持することができないことがある。
しかしながら、エキスパンド工程においてダイシングテープまたはダイシングダイボンドフィルムをより引き延ばす必要がある場合、すなわち、割断ライン数が比較的多い場合であっても、割断半導体ウェハから複数の半導体チップへの良好な割断を行うことについては、十分な検討がなされていない。
また、カーフ維持工程において、カーフを十分に維持することについても、十分な検討がなされていない。
【0007】
そこで、本発明は、割断ライン数が比較的多い場合であっても、半導体ウェハから複数の半導体チップへの良好な割断を行うことができ、かつ、カーフを十分に維持することができるダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討したところ、-10℃における引張貯蔵弾性率が所定範囲内であるダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムを用いることにより、割断ライン数が比較的多い場合であっても、半導体ウェハから複数の半導体チップへの良好な割断を行うことができ、かつ、カーフを十分に維持することができることを見出して、本発明を想到するに至った。
【0009】
即ち、本発明に係るダイシングテープは、
基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープであって、
-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下である。
【0010】
斯かる構成によれば、前記ダイシングテープの-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下であるので、前記ダイシングテープは、適度な弾性を有するものとなる。
そのため、半導体ウェハに貼付し、前記ダイシングテープをエキスパンドして前記半導体ウェハから複数の半導体チップへの割断を行う場合に、前記ダイシングテープをより引き延ばすことができる。
これにより、割断ライン数が比較的多い場合であっても、半導体ウェハから複数の半導体チップへの良好な割断を行うことができる。
また、カーフを十分に維持することができる。
【0011】
前記ダイシングテープにおいては、
-10℃における損失係数が0.07以上0.18以下であることが好ましい。
【0012】
斯かる構成によれば、-10℃における損失係数が0.07以上0.18以下であるので、前記ダイシングテープは、適度な弾性に加えて、適度な硬さを有するものとなる。
そのため、半導体ウェハに貼付し、前記ダイシングテープをエキスパンドして前記半導体ウェハから複数の半導体チップへの割断を行う場合に、前記ダイシングテープをより引き延ばせることに加えて、前記ダイシングテープを引き延ばしたときの破断を比較的抑制することができる。
これにより、割断ライン数が比較的多い場合であっても、半導体ウェハから複数の半導体チップへの良好な割断を行うことができ、かつ、カーフを十分に維持することができることに加えて、割断時における前記ダイシングテープの破断を比較的抑制することができる。
【0013】
前記ダイシングテープにおいては、
-10℃における破断伸度が450%以上600%以下であることが好ましい。
【0014】
斯かる構成によれば、-10℃における破断伸度が450%以上600%以下であるので、前記ダイシングテープは、適度な弾性に加えて、適度な硬さを有するものとなる。
そのため、半導体ウェハに貼付し、前記ダイシングテープをエキスパンドして前記半導体ウェハから複数の半導体チップへの割断を行う場合に、前記ダイシングテープをより引き延ばせることに加えて、前記ダイシングテープを引き延ばしたときの破断を比較的抑制することができる。
これにより、割断ライン数が比較的多い場合であっても、半導体ウェハから複数の半導体チップへの良好な割断を行うことができ、かつ、カーフを十分に維持することができることに加えて、割断時における前記ダイシングテープの破断を比較的抑制することができる。
【0015】
本発明に係るダイシングダイボンドフィルムは、
基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、
前記ダイシングテープの粘着剤層上に積層されたダイボンド層と、を備え、
-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下である。
【0016】
斯かる構成によれば、半導体ウェハに貼付して、前記ダイシングテープをエキスパンドして前記半導体ウェハから複数の半導体チップへの割断を行う場合に、前記ダイシングテープをより引き延ばすことができる。
これにより、割断ライン数が比較的多い場合であっても、半導体ウェハから複数の半導体チップへの良好な割断を行うことができる。
また、カーフを十分に維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、割断ライン数が比較的多い場合であっても、半導体ウェハから複数の半導体チップへの良好な割断を行うことができ、かつ、カーフを十分に維持することができるダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るダイシングテープの構成を示す断面図。
【
図2】本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンドフィルムの構成を示す断面図。
【
図3A】半導体集積回路の製造方法におけるハーフカット加工の様子を模式的に示す断面図。
【
図3B】半導体集積回路の製造方法におけるハーフカット加工の様子を模式的に示す断面図。
【
図3C】半導体集積回路の製造方法におけるバックグラインド加工の様子を模式的に示す断面図。
【
図3D】半導体集積回路の製造方法におけるバックグラインド加工の様子を模式的に示す断面図。
【
図4A】半導体集積回路の製造方法におけるマウント工程の様子を模式的に示す断面図。
【
図4B】半導体集積回路の製造方法におけるマウント工程の様子を模式的に示す断面図。
【
図5A】半導体集積回路の製造方法における低温でのエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
【
図5B】半導体集積回路の製造方法における低温でのエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
【
図5C】半導体集積回路の製造方法における低温でのエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
【
図6A】半導体集積回路の製造方法における常温でのエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
【
図6B】半導体集積回路の製造方法における常温でのエキスパンド工程の様子を模式的に示す断面図。
【
図7】半導体集積回路の製造方法におけるカーフ維持工程の様子を模式的に示す断面図。
【
図8】半導体集積回路の製造方法におけるピックアップ工程の様子を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0020】
[ダイシングテープ]
図1に示したように、本実施形態に係るダイシングテープ10は、基材層1上に粘着剤層2が積層されたダイシングテープであって、-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下である。
【0021】
なお、後述する実施例の項で説明するように、ダイシングテープ10の-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下であることにより、特に、半導体ウェハ(例えば、直径200mm(8インチ)以上の半導体ウェハ)を、NANDメモリコントローラに使用されるような、面積が10mm2以下の極小の半導体チップ(例えば、表面が略矩形状であり、長さ4mm×幅2mmの半導体チップ(面積8mm2))に良好に割断することができる。
【0022】
その理由について、本発明者らは以下のように推察している。
半導体チップは、用途に応じて要求される大きさが異なる。NANDメモリコントローラに使用されるような半導体チップは、上記したように、面積が10mm2以下の極小サイズであるのに対し、NAND型フラッシュメモリに使用される半導体チップは、一般に、面積が40mm2以上のもの(例えば、表面が略矩形状であり、長さ12mm×幅4mmのもの(面積48mm2)や、長さ10mm×幅5mmのもの(面積50mm2))が多い。
ここで、同じ大きさの半導体ウェハを半導体チップへと割断する場合、割断後の半導体チップの大きさが小さいほど、ハーフカット工程において、半導体ウェハに形成する溝(割断ライン)の間隔は狭くなることから、半導体ウェハに形成する溝の数は多くなる。
そして、溝の間隔が狭い半導体ウェハを複数の半導体チップに割断する際に、隣り合う半導体チップ間の間隔を十分に空けるためには、エキスパンド工程(例えば、室温(23±2℃)におけるエキスパンド)においてダイシングテープを十分に引き延ばす必要がある。
半導体ウェハをNAND型フラッシュメモリに使用される半導体チップのような比較的面積が大きいものに割断する場合には、半導体ウェハに形成される溝の数は比較的少ないことから、例えば、特許文献1に記載されたような、-10℃における初期弾性率が200MPa以上380MPa以下であるダイシングテープを用いても、隣り合う半導体チップ間の間隔を十分に空けることができる。
しかしながら、半導体ウェハをNANDメモリコントローラに使用されるような比較的面積が小さい極小チップに割断する場合には、半導体ウェハに形成される溝の数が比較的多くなることから、エキスパンド工程(例えば、室温におけるエキスパンド)において、-10℃における初期弾性率が200MPa以上380MPa以下であるダイシングテープを用いると、隣り合う極小チップ間の間隔が十分に空くように、ダイシングテープを十分に引き延ばすことができないことがある。特に、ダイシングテープが、例えば、室温におけるエキスパンド時により破れ難くするために、-10℃における初期弾性率を上記数値範囲における上限値近傍の値とした場合には、ダイシングテープは比較的硬くなって、十分に引き延ばすことができなくなる。また、ダイシングテープを用いて半導体ウェハを複数の半導体チップに個片化する場合、割断性を重視する観点から、ダイシングテープに応力が加わり易くするために、ダイシングテープの-10℃における初期弾性率には比較的高い値(例えば、特許文献1に記載された数値範囲の上限値近傍の値)が選ばれることが多いが、このような場合にも、上記のごとくダイシングテープは比較的硬くなって、十分に引き延ばすことができなくなる。
これに対し、本実施形態に係るダイシングテープ10は、-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下であり、適度な弾性を有するものであることから、NANDメモリコントローラに使用される半導体チップのような極小チップに割断する場合でも、十分に引き延ばすことができるものであると考えられる。
そのため、エキスパンド工程において隣り合う極小チップ間の間隔を十分に空けることができると考えられる。
【0023】
なお、基材層1を構成する材料、基材層1の層構成、及び、基材層1の厚さを適宜設定することにより、-10℃における引張貯蔵弾性率を50MPa以上250MPa以下とすることができる。
【0024】
本実施形態に係るダイシングテープ10は、-10℃における損失係数が0.07以上0.18以下であることが好ましい。
これにより、ダイシングテープ10は、適度な弾性に加えて、適度な硬さを有するものとなる。
そのため、半導体ウェハに貼付し、ダイシングテープ10をエキスパンドして半導体ウェハから複数の半導体チップ(特に、NANDメモリコントローラに使用されるような極小チップ)への割断を行う場合に、ダイシングテープ10をより引き延ばせることに加えて、ダイシングテープ10を引き延ばしたときの破断を比較的抑制することができる。
【0025】
-10℃における引張貯蔵弾性率、及び、-10℃における損失係数は、以下のようにして求めることができる。
詳しくは、長さ40mm(測定長さ)、幅10mmのダイシングテープを試験片とし、固体粘弾性測定装置(例えば、型式RSAIII、レオメトリックサイエンティフィック株式会社製)を用いて、周波数1Hz、ひずみ量0.1%、昇温速度10℃/min、チャック間距離22.5mmの条件において、-50~100℃の温度範囲で前記試験片の引張貯蔵弾性率、及び、損失弾性率を測定する。その際、-10℃での値を読み取ることにより、-10℃における引張貯蔵弾性率、及び、-10℃における損失弾性率を求めることができ、-10℃における損失係数は、-10℃における引張貯蔵弾性率の値を-10℃における損失弾性率の値で除することにより求めることができる。
なお、前記測定は、前記試験片をMD方向(樹脂流れ方向)に引っ張ることにより行う。
【0026】
本実施形態に係るダイシングテープ10は、-10℃における破断伸度が450%以上600%以下であることが好ましい。
これにより、ダイシングテープ10は、適度な弾性に加えて、適度な硬さを有するものとなる。
そのため、半導体ウェハに貼付し、ダイシングテープ10をエキスパンドして半導体ウェハから複数の半導体チップ(特に、NANDメモリコントローラに使用されるような極小チップ)への割断を行う場合に、ダイシングテープ10をより引き延ばせることに加えて、ダイシングテープ10を引き延ばしたときの破断を比較的抑制することができる。
【0027】
-10℃における破断伸度は、以下のようにして求めることができる。
詳しくは、長さ120mm(測定長さ。L0)、幅10mmのダイシングテープを試験片とし、引張試験機(オートグラフAG-IS、島津製作所製)を用いて、温度-10℃、チャック間距離50mm、及び、引張速度100mm/minの条件にて、上記試験片を長さ方向に引っ張り、上記試験片が破断するときの長さ(L1)を測定する。
そして、下記式に基づいて、-10℃における破断伸度Eを算出する。
破断伸度E=(L1-L0)/L0×100
【0028】
基材層1は、粘着剤層2を支持する。基材層1は、樹脂を含む。基材層1に含まれる樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニルスルフィド、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、及び、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0029】
ポリオレフィンとしては、例えば、α-オレフィンのホモポリマー、2種以上のα-オレフィンの共重合体、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0030】
α-オレフィンのホモポリマーとしては、炭素数2以上12以下のα-オレフィンのホモポリマーであることが好ましい。このようなホモポリマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0031】
2種以上のα-オレフィンの共重合体としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/1-ブテン共重合体、エチレン/炭素数5以上12以下のα-オレフィン共重合体、プロピレン/エチレン共重合体、プロピレン/1-ブテン共重合体、プロピレン/炭素数5以上12以下のα-オレフィン共重合体等が挙げられる。
【0032】
1種または2種以上のα-オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0033】
ポリオレフィンは、α-オレフィン系熱可塑性エラストマーと呼ばれるものであってもよい。α-オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレン・エチレン共重合体とプロピレンホモポリマーとを組み合わせたもの、または、プロピレン・エチレン・炭素数4以上のα-オレフィン三元共重合体が挙げられる。
α-オレフィン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、プロピレン系エラストマー樹脂であるビスタマックス3980(エクソンモービルケミカル社製)が挙げられる。
【0034】
基材層1は、前記した樹脂を1種含むものであってもよいし、前記した樹脂を2種以上含むものであってもよい。
なお、粘着剤層2が後述する紫外線硬化粘着剤を含む場合、基材層1は、紫外線透過性を有するように構成されることが好ましい。
【0035】
基材層1は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。基材層1は、無延伸成形により得られてもよいし、延伸成形により得られてもよいが、延伸成形により得られることが好ましい。基材層1が積層構造である場合、基材層1は、エラストマーを含む層(以下、エラストマー層という)と非エラストマーを含む層(以下、非エラストマー層という)とを有することが好ましい。
基材層1をエラストマー層と非エラストマー層とを有するものとすることにより、エラストマー層を、引張応力を緩和する応力緩和層として機能させることができる。すなわち、基材層1に生じる引張応力を比較的小さくすることができるので、基材層1を適度な硬さを有しつつ、比較的伸び易いものとすることができる。
これにより、半導体ウェハから複数の半導体チップへの割断性を向上させることができる。
また、割断工程におけるエキスパンド時に、基材層1が破れて破損することを抑制することができる。
なお、本明細書においては、エラストマー層とは、非エラストマー層に比べて室温での引張貯蔵弾性率が低い低弾性率層を意味する。エラストマー層としては、室温での引張貯蔵弾性率が10MPa以上100MPa以下のものが挙げられ、非エラストマー層としては、室温での引張貯蔵弾性率が200MPa以上500MPa以下のものが挙げられる。
【0036】
エラストマー層は、1種のエラストマーを含むものであってもよいし、2種以上のエラストマーを含むものであってもよいが、α-オレフィン系熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
非エラストマー層は、1種の非エラストマーを含むものであってもよいし、2種以上の非エラストマーを含むものであってもよいが、後述するメタロセンPPを含むことが好ましい。
基材層1がエラストマー層と非エラストマー層とを有する場合、基材層1は、エラストマー層を中心層とし、該中心層の互いに対向する両面に非エラストマー層を有する三層構造(非エラストマー層/エラストマー層/非エラストマー層)に形成されることが好ましい(
図1参照)。なお、
図1では、一方の非エラストマー層を第1樹脂層1aとして示し、エラストマー層を第2樹脂層1bとして示し、他方の非エラストマー層を第3樹脂層3cとして示している。
【0037】
また、前記したように、カーフ維持工程においては、室温(例えば23℃)でエキスパンド状態を維持した前記ダイシングダイボンドフィルムに熱風(例えば、100~130℃)を当てて前記ダイシングダイボンドフィルムを熱収縮させた後、冷却固化させるため、基材層1の最外層は、ダイシングテープに当てられる熱風の温度に近い融点を有する樹脂を含んでいることが好ましい。これにより、熱風を当てることにより溶融した最外層をより迅速に固化させることができる。
その結果、カーフ維持工程において、カーフをより十分に維持することができる。
【0038】
基材層1がエラストマー層と非エラストマー層との積層構造であり、エラストマー層がα-オレフィン系熱可塑性エラストマーを含み、かつ、非エラストマー層が後述するメタロセンPPなどのポリオレフィンを含む場合、エラストマー層は、該エラストマー層を形成するエラストマーの総質量に対して、α-オレフィン系熱可塑性エラストマーを50質量%以上100質量%以下含んでいることが好ましく、70質量%以上100質量%以下含んでいることがより好ましく、80質量%以上100質量%以下含んでいることがさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下含んでいることが特に好ましく、95質量%以上100質量%以下含んでいることが最適である。α-オレフィン系熱可塑性エラストマーが前記範囲で含まれていることにより、エラストマー層と非エラストマー層との親和性が高くなるため、基材層1を比較的容易に押出成形することができる。また、エラストマー層を応力緩和層として作用させることができるので、ダイシングテープに貼付した半導体ウェハを効率良く割断することができる。
【0039】
基材層1がエラストマー層と非エラストマー層との積層構造である場合、基材層1は、エラストマーと非エラストマーとを共押出して、エラストマー層と非エラストマー層との積層構造とする共押出成形により得られることが好ましい。共押出成形としては、フィルムやシート等の製造において一般に行われる任意の適切な共押出成形を採用することができる。共押出成形の中でも、基材層1を効率良く安価に得ることができる点から、インフレーション法や共押出Tダイ法を採用することが好ましい。
【0040】
積層構造をなす基材層1を共押出成形にて得る場合、前記エラストマー層及び前記非エラストマー層は加熱されて溶融された状態で接するため、前記エラストマー及び前記非エラストマーの融点差は小さい方が好ましい。融点差が小さいことにより、低融点となる前記エラストマーまたは前記非エラストマーのいずれかに過度の熱がかかることが抑制されることから、低融点となる前記エラストマーまたは前記非エラストマーのいずれかが熱劣化することによって副生成物が生成されることを抑制できる。また、低融点となる前記エラストマーまたは前記非エラストマーのいずれかの粘度が過度に低下することにより前記エラストマー層と前記非エラストマー層との間に積層不良が生じることも抑制できる。前記エラストマー及び前記非エラストマーの融点差は、0℃以上70℃以下であることが好ましく、0℃以上55℃以下であることがより好ましい。
前記エラストマー及び前記非エラストマーの融点は、示差走査熱量(DSC)分析により測定することができる。例えば、示差走査熱量計装置(TAインスツルメンツ社製、型式DSC Q2000)を用い、窒素ガス気流下、昇温速度5℃/minにて200℃まで昇温し、吸熱ピークのピーク温度を求めることにより測定することができる。
【0041】
基材層1の厚さは、55μm以上195μm以下であることが好ましく、55μm以上190μm以下であることがより好ましく、55μm以上170μm以下であることがさらに好ましく、60μm以上160μm以下であることが最適である。基材層1の厚さを前記の範囲とすることにより、ダイシングテープを効率良く製造することができ、かつ、ダイシングテープに貼付した半導体ウェハを効率良く割断することができる。
基材層1の厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5点の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0042】
エラストマー層と非エラストマー層とを積層させた基材層1において、エラストマー層の厚さに対する非エラストマー層の厚さの比は、1/25以上1/3以下であることが好ましく、1/25以上1/3.5以下であることがより好ましく、1/25以上1/4であることがさらに好ましく、1/22以上1/4以下であることが特に好ましく、1/20以上1/4以下であることが最適である。エラストマー層の厚さに対する非エラストマー層の厚さの比を前記範囲とすることにより、ダイシングテープに貼付した半導体ウェハをより効率良く割断することができる。
【0043】
エラストマー層は、単層(1層)構造であってもよいし、積層構造であってもよい。エラストマー層は、1層~5層構造であることが好ましく、1層~3層構造であることがより好ましく、1層~2層構造であることがさらに好ましく、1層構造であることが最適である。エラストマー層が積層構造である場合、全ての層が同じエラストマーを含んでいてもよいし、少なくも2層が異なるエラストマーを含んでいてもよい。
【0044】
非エラストマー層は、単層(1層)構造であってもよいし、積層構造であってもよい。非エラストマー層は、1層~5層構造であることが好ましく、1層~3層構造であることがより好ましく、1層~2層構造であることがさらに好ましく、1層構造であることが最適である。非エラストマー層が積層構造である場合、全ての層が同じ非エラストマーを含んでいてもよいし、少なくとも2層が異なる非エラストマーを含んでいてもよい。
【0045】
非エラストマー層は、非エラストマーとして、メタロセン触媒による重合品であるポリプロピレン樹脂(以下、メタロセンPPという)を含むことが好ましい。メタロセンPPとしては、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/α-オレフィン共重合体が挙げられる。非エラストマー層がメタロセンPPを含むことにより、ダイシングテープを効率良く製造することができ、かつ、ダイシングテープに貼付した半導体ウェハを効率良く割断することができる。
なお、市販のメタロセンPPとしては、ウィンテックWFX4M(日本ポリプロ社製)が挙げられる。
【0046】
ここで、メタロセン触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆる、メタロセン化合物)と、メタロセン化合物と反応して該メタロセン化合物を安定なイオン状態に活性化し得る助触媒とからなる触媒であり、必要により、有機アルミニウム化合物を含む。メタロセン化合物は、プロピレンの立体規則性重合を可能とする架橋型のメタロセン化合物である。
【0047】
前記メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/α-オレフィン共重合体の中でも、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/α-オレフィンランダム共重合体が好ましく、前記メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/α-オレフィンランダム共重合体の中でも、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/炭素数2のα-オレフィンランダム共重合体、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/炭素数4のα-オレフィンランダム共重合体、及び、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/炭素数5のα-オレフィンランダム共重合体の中から選ばれるものが好ましく、これらの中でも、メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/エチレンランダム共重合体が最適である。
【0048】
前記メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/α-オレフィンランダム共重合体としては、前記エラストマー層との共押出成膜性、及び、ダイシングテープに貼付した半導体ウェハの割断性の観点から、融点が80℃以上140℃以下、特に、100℃以上130℃以下のものが好ましい。
前記メタロセン触媒の重合品であるプロピレン/α-オレフィンランダム共重合体の融点は、前記した方法によって測定することができる。
【0049】
ここで、前記エラストマー層が基材層1の最外層に配されていると、基材層1をロール体とした場合に、最外層に配された前記エラストマー層同士がブロッキングし易くなる(くっつき易くなる)。そのため、基材層1をロール体から巻き戻し難くなる。これに対し、前記した積層構造の基材層1の好ましい態様では、非エラストマー層/エラストマー層/非エラストマー層、すなわち、最外層に非エラストマー層が配されているので、このような態様の基材層1は、耐ブロッキング性に優れたものとなる。これにより、ブロッキングによってダイシングテープ10を用いた半導体装置の製造が遅延することを抑制できる。
【0050】
前記非エラストマー層は、100℃以上130℃以下の融点を有し、かつ、分子量分散度(質量平均分子量/数平均分子量)が5以下である樹脂を含むことが好ましい。このような樹脂としては、メタロセンPPが挙げられる。
前記非エラストマー層が前記のごとき樹脂を含むことにより、カーフ維持工程において、非エラストマー層をより迅速に冷却固化することができる。そのため、ダイシングテープを熱収縮させた後に、基材層1が縮むことをより十分に抑制することができる。
これにより、カーフ維持工程において、カーフをより十分に維持することができる。
【0051】
粘着剤層2は、粘着剤を含有する。粘着剤層2は、半導体チップに個片化するための半導体ウェハを粘着することにより保持する。
【0052】
前記粘着剤としては、ダイシングテープ10の使用過程において外部からの作用により粘着力を低減可能なもの(以下、粘着低減型粘着剤という)が挙げられる。
【0053】
粘着剤として粘着低減型粘着剤を用いる場合、ダイシングテープ10の使用過程において、粘着剤層2が比較的高い粘着力を示す状態(以下、高粘着状態という)と、比較的低い粘着力を示す状態(以下、低粘着状態という)とを使い分けることができる。例えば、ダイシングテープ10に貼付された半導体ウェハが割断に供されるときには、半導体ウェハの割断により個片化された複数の半導体チップが、粘着剤層2から浮き上がったり剥離したりすることを抑制するために、高粘着状態を利用する。これに対し、半導体ウェハの割断後に、個片化された複数の半導体チップをピックアップするためには、粘着剤層2から複数の半導体チップをピックアップし易くするために、低粘着状態を利用する。
【0054】
前記粘着低減型粘着剤としては、例えば、ダイシングテープ10の使用過程において放射線照射によって硬化させることが可能な粘着剤(以下、放射線硬化粘着剤という)が挙げられる。
【0055】
前記放射線硬化粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線の照射によって硬化するタイプの粘着剤が挙げられる。これらの中でも、紫外線照射により硬化する粘着剤(紫外線硬化粘着剤)を用いることが好ましい。
【0056】
前記放射線硬化粘着剤としては、例えば、アクリル系ポリマーなどのベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性モノマー成分や放射線重合性オリゴマー成分とを含む、添加型の放射線硬化粘着剤が挙げられる。
【0057】
前記アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含むものが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。
【0058】
粘着剤層2は、外部架橋剤を含んでいてもよい。外部架橋剤としては、ベースポリマーであるアクリル系ポリマーと反応して架橋構造を形成できるものであれば、どのようなものでも用いることができる。このような外部架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物、アジリジン化合物、及び、メラミン系架橋剤等が挙げられる。
【0059】
前記放射線重合性モノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記放射線重合性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系などの種々のオリゴマーが挙げられる。前記放射線硬化粘着剤中の放射線重合性モノマー成分や放射線重合性オリゴマー成分の含有割合は、粘着剤層2の粘着性を適切に低下させる範囲で選ばれる。
【0060】
前記放射線硬化粘着剤は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、及び、アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0061】
粘着剤層2は、前記各成分に加えて、架橋促進剤、粘着付与剤、老化防止剤、顔料、又は、染料などの着色剤等を含んでいてもよい。
【0062】
粘着剤層2の厚さは、1μm以上50μm以下であることが好ましく、2μm以上30μm以下であることがより好ましく、5μm以上25μm以下であることがさらに好ましい。
【0063】
[ダイシングダイボンドフィルム]
次に、
図2を参照しながら、ダイシングダイボンドフィルム20について説明する。なお、ダイシングダイボンドフィルム20の説明において、ダイシングテープ10と重複する部分においては、その説明は繰り返さない。
【0064】
図2に示したように、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20は、基材層1上に粘着剤層2が積層されたダイシングテープ10と、ダイシングテープ10の粘着剤層2上に積層されたダイボンド層3と、を備える。
ダイシングダイボンドフィルム20では、ダイボンド層3上に半導体ウェハが貼付される。
ダイシングダイボンドフィルム20を用いた半導体ウェハの割断においては、半導体ウェハと共にダイボンド層3も割断される。ダイボンド層3は、個片化された複数の半導体チップのサイズに相当する大きさに割断される。これにより、ダイボンド層3付の半導体チップを得ることができる。
ダイシングダイボンドフィルム20のダイシングテープ10は、前記したように、-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下である。
【0065】
ダイシングダイボンドフィルム20のダイシングテープ10は、-10℃における損失係数が0.07以上0.18以下であることが好ましい。
また、ダイシングダイボンドフィルム20のダイシングテープ10は、-10℃における破断伸度が450%以上600%以下であることが好ましい。
【0066】
ダイボンド層3は、熱硬化性を有することが好ましい。ダイボンド層3に熱硬化性樹脂及び熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂の少なくとも一方を含ませることにより、ダイボンド層3に熱硬化性を付与することができる。
【0067】
ダイボンド層3が熱硬化性樹脂を含む場合、このような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及び、熱硬化性ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0068】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、及び、グリシジルアミン型のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0069】
エポキシ樹脂の硬化剤としてのフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、及び、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンが挙げられる。
【0070】
ダイボンド層3が、熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含む場合、このような熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂が挙げられる。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂におけるアクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を含むものが挙げられる。
熱硬化性官能基を有する熱硬化性樹脂においては、熱硬化性官能基の種類に応じて、硬化剤が選ばれる。
【0071】
ダイボンド層3は、樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めたりする観点から、熱硬化触媒を含有していてもよい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、およびトリハロゲンボラン系化合物が挙げられる
【0072】
ダイボンド層3は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂はバインダとして機能する。熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド6やポリアミド6,6等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみが用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、イオン性不純物が少なく、かつ、耐熱性が高いために、ダイボンド層による接続信頼性が確保し易くなるという観点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0073】
上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマー単位を質量割合で最も多いモノマー単位として含むポリマーであることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、及び、(メタ)アクリル酸アリールエステル等が挙げられる。上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の成分に由来するモノマー単位を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリルニトリル等の官能基含有モノマーや、各種の多官能性モノマー等が挙げられる。ダイボンド層において高い凝集力を実現するという観点から、上記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル(特に、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)と、カルボキシ基含有モノマーと、窒素原子含有モノマーと、多官能性モノマー(特に、ポリグリシジル系多官能モノマー)との共重合体であることが好ましく、アクリル酸エチルと、アクリル酸ブチルと、アクリル酸と、アクリロニトリルと、ポリグリシジル(メタ)アクリレートとの共重合体であることがより好ましい。
【0074】
ダイボンド層3は、必要に応じて、1種又は2種以上の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。
【0075】
ダイボンド層3の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上200μm以下である。斯かる厚さは、3μm以上150μm以下であってもよく、5μm以上100μm以下であってもよい。
【0076】
本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20は、例えば、半導体集積回路を製造するための補助用具として使用される。以下、ダイシングダイボンドフィルム20の使用の具体例について説明する。
以下では、基材層1が一層であるダイシングダイボンドフィルム20を用いた例について説明する。
【0077】
半導体集積回路を製造する方法は、半導体ウェハを割断処理によってチップ(ダイ)へ加工すべく半導体ウェハに溝を形成するハーフカット工程と、ハーフカット工程後の半導体ウェハを研削して厚さを薄くするバックグラインド工程と、バックグラインド工程後の半導体ウェハの一面(例えば、回路面とは反対側の面)をダイボンド層3に貼付して、ダイシングテープ10に半導体ウェハを固定するマウント工程と、ハーフカット加工された半導体チップ同士の間隔を広げるエキスパンド工程と、半導体チップ同士の間隔を維持するカーフ維持工程と、ダイボンド層3と粘着剤層2との間を剥離してダイボンド層3が貼付された状態で半導体チップ(ダイ)を取り出すピックアップ工程と、ダイボンド層3が貼付された状態の半導体チップ(ダイ)を被着体に接着させるダイボンド工程と、を有する。これらの工程を実施するときに、本実施形態のダイシングテープ(ダイシングダイボンドフィルム)が製造補助用具として使用される。
【0078】
ハーフカット工程では、
図3A及び
図3Bに示すように、半導体集積回路を小片(ダイ)に割断するためのハーフカット加工を施す。詳しくは、半導体ウェハWの回路面とは反対側の面に、ウェハ加工用テープTを貼り付ける(
図3A参照)。また、ウェハ加工用テープTにダイシングリングRを取り付ける(
図3A参照)。ウェハ加工用テープTを貼付した状態で、分割用の溝を形成する(
図3B参照)。バックグラインド工程では、
図3C及び
図3Dに示すように、半導体ウェハを研削して厚さを薄くする。詳しくは、溝を形成した面にバックグラインドテープGを貼付する一方で、始めに貼り付けたウェハ加工用テープTを剥離する(
図3C参照)。バックグラインドテープGを貼付した状態で、半導体ウェハWが所定の厚さになるまで研削加工を施す(
図3D参照)。
【0079】
マウント工程では、
図4A~
図4Bに示すように、ダイシングテープ10の粘着剤層2にダイシングリングRを取り付けた後、露出したダイボンド層3の面に、ハーフカット加工された半導体ウェハWを貼付する(
図4A参照)。その後、半導体ウェハWからバックグラインドテープGを剥離する(
図4B参照)。
【0080】
エキスパンド工程では、
図5A~
図5Cに示すように、ダイシングリングRをエキスパンド装置の保持具Hに固定する。エキスパンド装置が備える突き上げ部材Uを用いて、ダイシングダイボンドフィルム20を下側から突き上げることによって、ダイシングダイボンドフィルム20を面方向に広げるように引き伸ばす(
図5B参照)。これにより、特定の温度条件において、ハーフカット加工された半導体ウェハWを割断する。上記温度条件は、例えば-20~5℃であり、好ましくは-15~0℃、より好ましくは-10~-5℃である。突き上げ部材Uを下降させることによって、エキスパンド状態を解除する(
図5C参照)。
さらに、エキスパンド工程では、
図6A~
図6Bに示すように、より高い温度条件下(例えば、室温(23℃))において、面積を広げるようにダイシングテープ10を引き延ばす。これにより、割断された隣り合う半導体チップをフィルム面の面方向に引き離して、さらに間隔を広げる。
ここで、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20では、ダイシングテープ10の-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下であるので、特に、半導体ウェハ(例えば、直径200mm(8インチ)の半導体ウェハ)を、NANDメモリコントローラに使用されるような、面積が10mm
2以下の極小の半導体チップ(例えば、表面が略矩形状であり、長さ4mm×幅2mmの半導体チップ)により十分に割断することができる。
また、ダイシングテープ10の-10℃における損失係数を0.07以上0.18以下とすれば、特に、上記のごとき極小の半導体チップにより十分に割断することができることに加えて、ダイシングテープ10を引き延ばして上記のごとき極小の半導体チップに破断する際に、ダイシングテープ10が破断することを比較的抑制することができる。
さらに、ダイシングテープ10の-10℃における破断伸度を450%以上600%以下とすれば、特に、上記のごとき極小の半導体チップにより十分に割断することができることに加えて、ダイシングテープ10を引き延ばして上記のごとき極小の半導体チップに破断する際に、ダイシングテープ10が破断することを比較的抑制することができる。
【0081】
カーフ維持工程では、
図7に示すように、ダイシングテープ10に熱風(例えば、100~130℃)を当ててダイシングテープ10を熱収縮させた後冷却固化させて、割断された隣り合う半導体チップ間の距離(カーフ)を維持する。
ここで、本実施形態に係るダイシングダイボンドフィルム20では、ダイシングテープ10の-10℃における引張貯蔵弾性率が50MPa以上250MPa以下であるので、極小の半導体チップへの割断後に、カーフを十分に維持することができる。
【0082】
ピックアップ工程では、
図8に示すように、ダイボンド層3が貼付された状態の半導体チップをダイシングテープ10の粘着剤層2から剥離する。詳しくは、ピン部材Pを上昇させて、ピックアップ対象の半導体チップを、ダイシングテープ10を介して突き上げる。突き上げられた半導体チップを吸着治具Jによって保持する。
【0083】
ダイボンド工程では、ダイボンド層3が貼付された状態の半導体チップを被着体に接着させる。
なお、上記の半導体集積回路の製造においては、ダイシングダイボンドフィルム20を補助具として用いる例について説明したが、ダイシングテープ10を補助具として用いた場合にも、上記と同様にして半導体集積回路を製造することができる。
【0084】
なお、本発明に係るダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムは、前記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係るダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムは、前記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係るダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0085】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0086】
[実施例1]
<基材層の成形>
2種3層押出Tダイ成形機を用いて、A層/B層/C層の3層構造(B層を中心層とし、B層の両面に外層たるA層及びC層が積層された3層構造)を有する基材層を成形した。A層及びC層の樹脂にはメタロセンPP(商品名:ウィンテックWFX4M、日本ポリプロ社製)を用い、B層の樹脂にはEVA(商品名:エバフレックスEV250、三井・デュポンポリケミカル社製)を用いた。
前記押出成形は、ダイス温度190℃で行った。すなわち、A層、B層、及び、C層は190℃で押出成形された。押出成形により得られた基材層の厚さは100μmであった。なお、A層、B層、及びC層の厚さの比(層厚比)は、A層:B層:C層=1:10:1であった。
成形された基材層を十分に固化させた後に、固化後の基材層をロール状に巻き取ってロール体とした。
<ダイシングテープの作製>
ロール状の基材層から基材層の一方の表面に、アプリケータを用いて厚さ10μmとなるように粘着剤組成物を塗布した。粘着剤組成物塗布後の基材層を110℃で3分加熱乾燥し、粘着剤層を形成することにより、ダイシングテープを得た。
前記粘着剤組成物は、以下のようにして調製した。
まず、INA(イソノニルアクリレート)173質量部、HEA(ヒドロキシエチルアクリレート)54.5質量部、AIBN(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)0.46質量部、酢酸エチル372質量部を混合して第1樹脂組成物を得た。
次に、丸底セパラブルフラスコ(容量1L)、温度計、窒素導入管、及び、撹拌翼が装備された重合用実験装置の前記丸底セパラブルフラスコ内に前記第1樹脂組成物を加え、前記第1樹脂組成物を撹拌しながら、前記第1樹脂組成物の液温を常温(23℃)として、前記丸底セパラブルフラスコ内を6時間窒素置換した。
引き続き前記丸底セパラブルフラスコ内に窒素を流入させた状態で、前記第1樹脂組成物を撹拌しながら、前記第1樹脂組成物の液温を62℃で3時間保持した後さらに75℃で2時間保持して、前記INA、前記HEA、及び、前記AIBNを重合させて、第2樹脂組成物を得た。その後、前記丸底セパラブルフラスコ内への窒素の流入を停止した。
液温が常温となるまで前記第2樹脂組成物を冷却した後、前記第2樹脂組成物に、重合性炭素-炭素二重結合を有する化合物として、2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI(登録商標)」)52.5質量部、及び、ジラウリン酸ジブチルスズIV(和光純薬工業社製)0.26質量部を加えて得た第3樹脂組成物を、大気雰囲気下にて、液温50℃で24時間撹拌した。
次に、前記第3樹脂組成物において、ポリマー固形分100質量部に対してコロネートL(イソシアネート化合物)及びOmnirad127(光重合開始剤)をそれぞれ0.75質量部及び2質量部加えた後、酢酸エチルを用いて、固形分濃度が20質量%となるように前記第3樹脂組成物を希釈して、粘着剤組成物を調製した。
<ダイシングダイボンドフィルムの作製>
アクリル樹脂(ナガセケムテックス社製、商品名「SG-P3」、ガラス転移温度12℃)100質量部、エポキシ樹脂(三菱化学社製、商品名「JER1001」)46質量部、フェノール樹脂(明和化成社製、商品名「MEH-7851ss」)51質量部、球状シリカ(アドマテックス社製、商品名「SO-25R」)191質量部、及び、硬化触媒(四国化成工業社製、商品名「キュアゾールPHZ」)0.6質量部を、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度20質量%のダイボンド組成物を得た。
次に、剥離ライナーたるPET系セパレータ(厚さ50μm)のシリコーン処理を施した面上に、アプリケータを用いて厚さ10μmとなるように前記ダイボンド組成物を塗布し、130℃で2分間乾燥して前記ダイボンド組成物から脱溶媒し、前記剥離ライナー上にダイボンド層が積層されたダイボンドシートを得た。
次に、前記ダイシングテープの前記粘着剤層上に、前記ダイボンドシートにおける前記剥離シートが積層されていない側を貼り合せた後、前記剥離ライナーを前記ダイボンド層から剥離して、ダイボンド層を備えるダイシングダイボンドフィルムを得た。
【0087】
上のようにして得たダイシングテープについて、以下のようにして、-10℃における引張貯蔵弾性率及び-10℃における損失弾性率を測定し、-10℃における損失係数を算出した。
また、以下のようにして、試験片が破断するときの長さを測定することにより、-10℃における破断伸度を算出した。
さらに、エキスパンド時のダイシングダイボンドフィルムを用いた極小チップへの割断性、及び、カーフ維持性について評価した。
【0088】
(引張貯蔵弾性率及び損失係数)
実施例1に係るダイシングテープから、長さ40mm(測定長さ)×幅10mmの試験片を切り出し、固体粘弾性測定装置(型式RSAIII、レオメトリックサイエンティフィック株式会社製)を用いて、周波数1Hz、ひずみ量0.1%、昇温速度10℃/min、チャック間距離22.5mmの条件において、-50~100℃の温度範囲で前記試験片の引張貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した。
その際、-10℃での値を読み取ることにより、-10℃における引張貯蔵弾性率、及び、-10℃における損失弾性率を求めた。
また、-10℃における引張貯蔵弾性率の値を-10℃における損失係数の値で除することにより、-10℃における損失係数を算出した。
【0089】
(破断伸度)
実施例1に係るダイシングテープから、長さ120mm(測定長さ。L0)×幅10mmの試験片を切り出し、引張試験機(オートグラフAG-IS、島津製作所製)を用いて、測定温度(-10℃)、チャック間距離50mm、及び、引張速度100mm/minの条件にて、前記試験片を長さ方向引っ張り、前記試験片が破断するときの長さ(L1)を測定した。
そして、下記式に基づいて、-10℃における破断伸度Eを算出した。
破断伸度E=(L1-L0)/L0×100
【0090】
(極小チップへの割断性)
実施例1に係るダイシングダイボンドフィルムに、ベアウェハ(直径300mm)及びダイシングリングを貼付した。次に、ダイセパレータDDS2300(ディスコ社製)を用いて、半導体ウェハ及びダイボンド層の割断を行い、極小チップへの割断性について評価した。ベアウェハは、長さ2mm×幅2mm×厚さ0.030mmの大きさのベアチップ(極小チップ)に割断した。
【0091】
割断性は、詳細には以下のようにして評価した。
まず、クールエキスパンダーユニットにて、エキスパンド温度-15℃、エキスパンド速度100mm/秒、エキスパンド量14mmの条件でベアウェハ及びダイボンド層を割断し、ダイボンド層付き半導体チップを得た。
次に、室温、エキスパンド速度1mm/秒、エキスパンド量8mmの条件でエキスパンドを行った。そして、エキスパンド状態を維持したまま、ヒート温度250℃、ヒート距離18mm、ローテーションスピード5°/secの条件で、ベアウェハの外周縁との境界部分のダイシングダイボンドフィルムを熱収縮させた。
次に、顕微鏡観察によりダイボンド層付き半導体チップの割断部を観察し、割断率を算出した。そして、割断率が90%以上である場合を〇と評価し、割断率が90%未満の場合を×と評価した。
【0092】
(カーフ維持性の評価)
実施例1に係るダイシングダイボンドフィルムに、ベアウェハ(直径300mm。以下、円形ウェハともいう)及びダイシングリングを貼付した。次に、ダイセパレータDDS2300(ディスコ社製)を用いて、ベアウェハ及びダイボンド層の割断を行い、割断後のカーフ維持性について評価した。
ベアウェハは、長さ2mm×幅2mm×厚さ0.030mmの大きさのベアチップ(極小チップ)に割断した。
【0093】
カーフ維持性は、詳細には以下の様にして評価した。
まず、クールエキスパンダーユニットにて、エキスパンド温度-15℃、エキスパンド速度100mm/秒、エキスパンド量14mmの条件で、ベアウェハ及びダイボンド層を割断して、複数のダイボンド層付きベアチップを得た。
次に、室温、エキスパンド速度1mm/秒、エキスパンド量5mmの条件で常温エキスパンドを行った。そして、エキスパンド状態を維持したまま、ヒート温度250℃、ヒート距離18mm、ローテーションスピード5°/secの条件で、ベアウェハの外周縁との境界部分のダイシングダイボンドフィルムを熱収縮させた。
次に、デジタルマイクロスコープ(VHX-6000、キーエンス社製)を用いてカーフの測定を行った。詳しくは、ヒートエキスパンド終了後(熱収縮後)に、割断された部分における一のチップと他のチップとの間隔(以下、間隔長さともいう)を、デジタルマイクロスコープで観察して、間隔長さを測定した。間隔長さは、任意に選んだ5箇所において、MD方向及びTD方向のそれぞれについて測定した。カーフとしては、間隔長さの測定値のうちの最小値を採用した。
そして、カーフが30μm以上であれば、○(カーフが維持されている)と評価し、カーフが30μm未満であれば、×(カーフが維持されていない)と評価した。
なお、上記の任意に選んだ5箇所とは、円形ウェハの最外周部分であって、周方向に互いに約90°離れた4箇所、及び、前記円形ウェハの中央付近である。
【0094】
[実施例2]
基材層のB層に第1ポリマーブレンド(エバフレックスEV250とHDPE(高密度ポリエチレン)とのブレンド品。質量比は、EV250:HDPE=90:10。三井・デュポンポリケミカル社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムを得た。
また、実施例2に係るダイシングテープについて、実施例1と同様にして、-10℃における引張貯蔵弾性率及び-10℃における損失弾性率を測定し、-10℃における破断伸度及び-10℃における損失係数を算出した。
さらに、実施例1と同様にして、エキスパンド時のダイシングダイボンドフィルムを用いた極小チップへの割断性、及び、カーフ維持性について評価した。
【0095】
[実施例3]
基材層を単層構造とし、樹脂層を構成する樹脂にエバフレックスP1007(三井・デュポンポリケミカル社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係るダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムを得た。
また、実施例3に係るダイシングテープについて、実施例1と同様にして、-10℃における引張貯蔵弾性率及び-10℃における損失弾性率を測定し、-10℃における破断伸度及び-10℃における損失係数を算出した。
さらに、実施例1と同様にして、エキスパンド時のダイシングダイボンドフィルムを用いた極小チップへの割断性、及び、カーフ維持性について評価した。
【0096】
[比較例1]
基材層のB層に第2ポリマーブレンド(エバフレックスEV250とHDPE(高密度ポリエチレン)とのブレンド品。質量比は、EV250:HDPE=80:20。三井・デュポンポリケミカル社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係るダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムを得た。
また、比較例1に係るダイシングテープについて、実施例1と同様にして、-10℃における引張貯蔵弾性率及び-10℃における損失弾性率を測定し、-10℃における破断伸度及び-10℃における損失係数を算出した。
さらに、実施例1と同様にして、エキスパンド時のダイシングダイボンドフィルムを用いた極小チップへの割断性、及び、カーフ維持性について評価した。
【0097】
[比較例2]
基材層のB層にエバフレックスV523(三井・デュポンポリケミカル社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係るダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムを得た。
また、比較例2に係るダイシングテープについて、実施例1と同様にして、-10℃における引張貯蔵弾性率及び-10℃における損失弾性率を測定し、-10℃における破断伸度及び-10℃における損失係数を算出した。
さらに、実施例1と同様にして、エキスパンド時のダイシングダイボンドフィルムを用いた極小チップへの割断性、及び、カーフ維持性について評価した。
【0098】
各例に係るダイシングテープについて、-10℃における引張貯蔵弾性率及び-10℃における損失弾性率を測定した結果、並びに、-10℃における破断伸度及び-10℃における損失係数を算出した結果とともに、各例に係るダイシングダイボンドフィルムを用いた極小チップへの割断性、及び、カーフ維持性について評価した結果を、以下の表1に示した。
【0099】
【0100】
表1より、実施例1~3に係るダイシングテープは、いずれも、-10℃における引張貯蔵弾性率の値が50MPa以上250MPa以下の範囲に入っており、実施例1~3に係るダイシングダイボンドフィルムは、極小チップへの割断性の評価、及び、カーフ維持性の評価について優れるものであることが分かる。
また、表1より、実施例1~3に係るダイシングテープは、いずれも、-10℃における損失係数の値が0.07以上0.18以下の範囲に入っており、-10℃における破断伸度の値が450%以上600%以下の範囲に入っているものであった。
これに対し、比較例1及び2に係るダイシングテープは、いずれも、-10℃における引張貯蔵弾性率の値が50MPa以上250MPa以下の範囲を外れており、比較例1及び2に係るダイシングダイボンドフィルムは、極小チップへの割断性の評価、及び、カーフ維持性の評価について劣るものであることが分かる。
また、表1より、比較例1及び2に係るダイシングテープは、いずれも、-10℃における損失係数の値が0.07以上0.18以下の範囲を外れており、-10℃における破断伸度の値が450%以上600%以下の範囲を外れており、特に、比較例1に係るダイシングダイボンドフィルムを用いて極小チップへの割断性、及び、カーフ維持性を評価しているときに、ダイシングテープに実用上問題となる破損(破れ)が認められた。
なお、表1に掲載した極小チップへの割断性の評価、及び、カーフ維持性の評価は、ダイシングダイボンドフィルムに関するものであるが、ダイシングダイボンドフィルムに含まれるダイシングテープにおいても、表1に示したものと同様の結果が得られると予想される。
【符号の説明】
【0101】
1 基材層
2 粘着剤層
3 ダイボンド層
10 ダイシングテープ
20 ダイシングダイボンドフィルム
1a 第1樹脂層
1b 第2樹脂層
1c 第3樹脂層
G バックグラインドテープ
H 保持具
J 吸着治具
T ウェハ加工用テープ
U 突き上げ部材
W 半導体ウェハ