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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】溶接部品
(51)【国際特許分類】
   B23K 33/00 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
B23K33/00 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020211228
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022097956
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】牧野 芳昭
(72)【発明者】
【氏名】青野 裕介
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-208651(JP,A)
【文献】特開2006-111187(JP,A)
【文献】特開2012-155919(JP,A)
【文献】特開2014-010995(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0368524(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接合部とこの第1の接合部に隣接している第1の凹部とが設けられている第1の部材と、
第2の接合部とこの第2の接合部に隣接している第2の凹部とが設けられており、前記第2の接合部が前記第1の接合部に溶接によって接合されている第2の部材と、
前記溶接によって形成され、前記第1の凹部と前記第2の凹部との内部に収まっているビード部と、
を有し、
前記ビード部の少なくとも一部が、前記第1の凹部と前記第2の凹部との内部に収まっており、
前記第1の部材の、少なくとも一部は平板状に形成されており、
前記第1の接合部と前記第1の凹部とは、前記第1の部材の平板状の部位に形成されており、
前記第2の部材の、少なくとも一部は、前記第1の部材の平板状の部位と等しい厚さで平板状に形成されており、
前記第2の接合部と前記第2の凹部とは、前記第2の部材の平板状の部位に形成されており、
前記第1の部材の平板状の部位と前記第2の部材の平板状の部位とは、これらの厚さ方向でお互いの位置が一致しており、
前記第1の部材は、第1の部材本体部と第1の端子部とを備えて構成されており、前記第1の部材の平板状の部位は、前記第1の部材本体部の少なくとも一部で構成されており、
前記第1の端子部は、前記第1の部材の平板状の部位から、前記第1の部材の平板状の部位の展開方向のうちの所定の一方向に突出していて、
前記第1の凹部及び前記第2の凹部にはそれぞれ、前記ビード部の幅方向に対して直交している平面及び前記ビード部の高さ方向に対して直交している平面が形成され、
前記ビード部の幅方向は、前記第1の接合部及び前記第2の接合部に対して直交している方向であり、
前記ビード部の高さ方向は、前記第1の部材の平板状の部位及び前記第2の部材の平板状の部位の厚さ方向である、溶接部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部品に関する。
【背景技術】
【0002】
板材同士を溶接すると、接合部にビードによる凸形状ができる。すなわち、溶接された箇所に盛り上がったビード部(溶接部)が形成される。ビード部が形成された溶接部品に金型を用いてインサート成形をする場合、金型によって溶接部品を保持する必要がある。
【0003】
金型によって溶接部品を保持するときには、ビード部を避ける必要がある。すなわち、金型に、凹部で形成されたビード部回避部を設ける必要がある。ここで、従来の技術に関連する文献として特許文献1を掲げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-330004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、溶接で形成されたビード部の形状は一定ではない。すなわち、ビード部の形状(凸高さ等)を統一させることは困難であり、ビード部の形状はある程度ばらついてしまう。したがって、溶接部品にインサート成形をするために使用する金型に設ける必要のあるビード部回避部の適切な大きさを事前に判断することは難しい。そこで、ビード部回避部の大きさを大きめにしておく等の対策で対応することになる。
【0006】
ビード部回避部の大きさむやみに大きくしてしまうと、金型の強度の低下を招いてしまう。溶接部品が小型化されると、溶接部品の溶接接合される箇所、溶接部品の金型で保持される箇所、金型の強度の関係から、溶接部品のインサート成形が困難となってしまう。
【0007】
つまり、小型の溶接部品にインサート成形をするとなると、金型の強度、寸法の制約等によって、ビード部を避けることが困難となり製品設計への制約が多くなってしまう。そして、溶接部品の大型化等の対策が必要になり、溶接部品、この溶接部品を用いたインサート成形品、金型のコストが上昇してしまう。
【0008】
本発明は、インサート成形をするときに使用される金型等の制約を減らし、製品設計の自由度を増やすことができる溶接部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係る溶接部品は、第1の接合部とこの第1の接合に隣接している第1の凹部とが設けられている第1の部材と、第2の接合部とこの第2の接合部に隣接している第2の凹部とが設けられており、前記第2の接合部が前記第1の接合部に溶接によって接合されている第2の部材と、前記溶接によって形成され、前記第1の凹部と前記第2の凹部との内部に収まっているビード部とを有する溶接部品である。
【0010】
また、本発明の態様に係る溶接部品では、前記ビード部の少なくとも一部が、前記第1の凹部と前記第2の凹部との内部に収まっている。
【0011】
また、本発明の態様に係る溶接部品では、前記第1の部材の、少なくとも一部は平板状に形成されており、前記第1の接合部と前記第1の凹部とは、前記第1の部材の平板状の部位に形成されており、前記第2の部材の、少なくとも一部は、前記第1の部材の平板状の部位と等しい厚さで平板状に形成されており、前記第2の接合部と前記第2の凹部とは、前記第2の部材の平板状の部位に形成されており、前記第1の部材の平板状の部位と前記第2の部材の平板状の部位とは、これらの厚さ方向でお互いの位置が一致している。
【0012】
また、本発明の態様に係る溶接部品では、前記第1の部材は、第1の部材本体部と第1の端子部とを備えて構成されており、前記第1の部材の平板状の部位は、第1の部材本体部の少なくとも一部で構成されており、前記第1の端子部は、第1の部材の平板状の部位から、第1の部材の平板状の部位の展開方向のうちの所定の一方向に突出している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インサート成形をするときに使用される金型等の制約を減らし、製品設計の自由度を増やすことができる溶接部品を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る溶接部品が使用されているインサート成形品の一部を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る溶接部品の一部を示す斜視図である。
図3図2におけるIII部の拡大図である。
図4図3に対応する図であって、変形例に係る溶接部品の一部を示す斜視図である。
図5】(a)は図3および図4におけるVA矢視図であり、(b)は図4におけるVB-VB断面を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る溶接部品と金型とを示す図である。
図7】比較例に係る溶接部品と金型とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態に係る溶接部品(部材の溶接構造)1は、図1から図6で示すように、金属製の第1の部材(第1の母材;たとえばバスバー)3と、金属製の第2の部材(第2の母材;たとえばシャント)5とを備えて構成されている。
【0016】
第1の部材3には、第1の接合部7とこの第1の接合部7に隣接している第1の凹部9とが設けられている。第2の部材5には、第2の接合部11とこの第2の接合部11に隣接している第2の凹部13とが設けられている。
【0017】
第2の部材5の第2の接合部11は、第1の凹部9と第2の凹部13とがお互いにつながるようにして、第1の接合部7に溶接(たとえば、突合せ溶接)によって接合されている。これにより、第1の部材3と第2の部材5とがお互いに溶接接続されて一体化している。
【0018】
第1の接合部7と第2の接合部11とをお互いに溶接接合したことで、溶接部品1にはビード部(溶接ビード;溶接肉盛り部)15が形成されている。ビード部15は、第1の凹部9と第2の凹部13との内部に収まっている。
【0019】
第1の部材と第2の部材とには、たとえば金型17(図6を参照)を用いたインサート成形によって樹脂部19(図1を参照)が一体的に設けられている。溶接部品1に樹脂部19が設けられていることでインサート成形品が形成されている。インサート成形品として、たとえば、オス端子もしくはメス端子等の端子を掲げることができる。
【0020】
ここで説明の便宜のために、空間における所定の一方向をX方向とし、X方向に対して直交する所定の一方向をY方向とし、X方向とY方向とに対して直交する方向をZ方向とする。
【0021】
第1の部材3の少なくとも一部は平板状に形成されている。すなわち、第1の部材3の少なくとも一部は、第1部材平板状部位21になっている。第1の部材3の第1の接合部7と第1の凹部9とは、第1部材平板状部位21に形成されている。第2の部材5の少なくとも一部も平板状に形成されている。すなわち、第2の部材5の少なくとも一部も、第2部材平板状部位23になっている。第2の接合部11と第2の凹部13とは、第2部材平板状部位23に形成されている。
【0022】
ここで、第1の凹部9と第2の凹部13とが設けられていないものとして、第1部材平板状部位21と第2部材平板状部位23とについてさらに説明する。第1部材平板状部位21の厚さ方向と第2部材平板状部位23の厚さ方向とは、お互いが一致しており、Y方向になっている。第1部材平板状部位21の厚さ寸法の値と第2部材平板状部位23の厚さ寸法の値とはお互いが一致している。さらに、Z方向で、第1部材平板状部位21の位置と第2部材平板状部位23の位置とは、たとえば、お互いが一致している。
【0023】
第1部材平板状部位21の厚さ方向と、第2部材平板状部位23の厚さ方向とがお互いが位置していることで、第1部材平板状部位21の展開方向と第2部材平板状部位23の展開方向とが、X方向およびZ方向になっている。
【0024】
図5で示すように、第1部材平板状部位21の厚さ方向の一方の面を第1部材第1平面25とする。第2部材平板状部位23の厚さ方向の一方の面を第2部材第1平面27とする。第1部材第1平面25と第2部材第1平面27とは、1つの平面上(1つの平面内)に存在している。第1部材平板状部位21の厚さ方向の他方の面を第1部材第2平面29とする。第2部材平板状部位23の厚さ方向の他方の面を第2部材第2平面31とする。第1部材第2平面29と第2部材第2平面31とは、他の1つの平面上(他1つの平面内)に存在している。
【0025】
次に、第1の凹部9と第2の凹部13とが設けられているものとして、第1の接合部7、第1の凹部9、第2の接合部11、第2の凹部13についてさらに説明する。第1の接合部7は、第1部材平板状部位21の端面(X方向に対して直交している平面)に形成されている。第1の凹部9は、第1部材平板状部位21の端部に設けられている。第2の接合部11は、第2部材平板状部位23の端面(X方向に対して直交している平面)に形成されている。第2の凹部13は、第2部材平板状部位23の端部に設けられている。
【0026】
溶接部品1では、第1の凹部9と第2の凹部13とがお互いにつながっている。お互いにつながっている第1の凹部9と第2の凹部13とが、第1の接合部7と第2の接合部11とがお互いにつながっている溶接箇所(ビード部15を含む)を囲んでいる。たとえば、Y方向で見て、第1の凹部9と第2の凹部13との内側に、上記溶接箇所が入っている。
【0027】
また、第1の凹部9と第2の凹部13とは、第1部材平板状部位21と第2部材平板状部位23との厚さ方向(Y方向)の両面もしくは一方の面に設けられている。なお、図1図5では、第1の凹部9と第2の凹部13とが、第1部材平板状部位21と第2部材平板状部位23との厚さ方向の両面に設けられている態様を表している。
【0028】
第1部材平板状部位21と第2部材平板状部位23の厚さ方向の両面に第1の凹部9と第2の凹部13とが設けられている態様を両面凹部形成態様とする。第1部材平板状部位21と第2部材平板状部位23の厚さ方向の片方の面にのみ第1の凹部9と第2の凹部13とが設けられている態様を片面凹部形成態様とする。
【0029】
両面凹部形成態様では、第1の凹部9と第2の凹部13とが、第1部材第1平面25および第2部材第1平面27から凹んでおり、第1部材第2平面29および第2部材第2平面31からも凹んでいる。溶接部品1の、第1の凹部9と第2の凹部13とが設けられている部位の厚さ寸法の値は、第1の凹部9と第2の凹部13とが設けられていない部位の厚さ寸法の値よりも小さくなっている。
【0030】
片面凹部形成態様では、第1の凹部9と第2の凹部13とが、第1部材第1平面25および第2部材第1平面27から凹んでいるが、第1部材第2平面29および第2部材第2平面31からは凹んでいない。
【0031】
第1の部材3は、第1の部材本体部33と第1の端子部35とを備えて構成されており、第1部材平板状部位21は、第1の部材本体部33の少なくとも一部で構成されている。第2の部材5も、第2の部材本体部37と第2の端子部39とを備えて構成されており、第2部材平板状部位23は、第2の部材本体部37の少なくとも一部で構成されている。
【0032】
第1の端子部35は、第1部材平板状部位21から、第1部材平板状部位21の展開方向のうちの所定の一方向(Z方向)に所定の長さ突出している。また、第1の端子部35は、たとえば、第1の接合部7および第1の凹部9の近傍(溶接箇所の近傍)で、第1部材平板状部位21から突出している。
【0033】
第2の端子部39は、第2部材平板状部位23から、第2部材平板状部位23の展開方向のうちの所定の一方向(Z方向)に所定の長さ突出している。また、第2の端子部39は、たとえば、第2の接合部11および第2の凹部13の近傍(溶接箇所の近傍)で、第2部材平板状部位23から突出している。第1の端子部35と、第2の端子部39とは、お互いが平行になっている。
【0034】
溶接部品1について、図5等を参照しつつ、さらに詳しく説明する。第1の部材3の第1部材平板状部位21は、たとえば矩形な平板状に形成されている。第1の接合部7は第1部材平板状部位21の端面で形成されている。また、第1の接合部7を形成している端面は、X方向に対して直交しているとともにZ方向細長く延びている。第1の凹部9は、Z方向に細長い直方体状に形成されている。
【0035】
第1の凹部9が設けられていることで、第1部材平板状部位21の端部には、Z方向に細長い矩形状の2つの平面41、43が形成されている。なお、両面凹部形成態様では、第1の凹部9が、第1部材平板状部位21の厚さ方向の両側に設けられているので、図5(a)等で示すように、2つの平面41、43も、一対で設けられている。
【0036】
第1部材平板状部位21の第1部材第1平面25側に設けられている平面41Aは、第1の接合部7に隣接しているとともにY方向に対して直交している。また、第1部材平板状部位21の第1部材第1平面25側に設けられている平面43Aは、平面41と第1部材第1平面25との間にあり、平面41Aと第1部材第1平面25とに隣接しているとともに、X方向に対して直交している。
【0037】
第1部材平板状部位21の第1部材第2平面29側に設けられている平面41Bは、第1の接合部7に隣接しているとともにY方向に対して直交している。また、第1部材平板状部位21の第1部材第2平面29側に設けられている平面43Bは、平面41Bと第1部材第2平面29との間にあり、平面41Bと第1部材第2平面29とに隣接しているとともに、X方向に対して直交している。
【0038】
第2の部材5の第2部材平板状部位23も、たとえば矩形な平板状に形成されている。第2の接合部11は第2部材平板状部位23の端面で形成されている。また、第2の接合部11を形成している端面は、X方向に対して直交しているとともにZ方向細長く延びている。第2の凹部13は、Z方向に細長い直方体状に形成されている。
【0039】
第2の凹部13が設けられていることで、第2部材平板状部位23の端部には、Z方向に細長い矩形状の2つの平面45、47が形成されている。なお、両面凹部形成態様では、第2の凹部13も、第2部材平板状部位23の厚さ方向の両側に設けられているので、図5(a)等で示すように、2つの平面45、47も、一対で設けられている。
【0040】
第2部材平板状部位23の第2部材第1平面27側に設けられている平面45Aは、第2の接合部11に隣接しているとともにY方向に対して直交している。また、第2部材平板状部位23の第2部材第1平面27側に設けられている平面47Aは、平面45Aと第2部材第1平面27との間にあり、平面45Aと第2部材第1平面27とに隣接しているとともに、X方向に対して直交している。
【0041】
第2部材平板状部位23の第2部材第2平面31側に設けられている平面45Bは、第2の接合部11に隣接しているとともにY方向に対して直交している。また、第2部材平板状部位23の第2部材第2平面31側に設けられている平面47Bは、平面45Bと第2部材第2平面31との間にあり、平面45Bと第2部材第2平面31とに隣接しているとともに、X方向に対して直交している。
【0042】
溶接部品1では、第1の接合部7の全面と第2の接合部11の全面とがお互いに接している。また、平面41Aと平面45Aとが、1つの平面内に位置しており、平面41Bと平面45Bとが、1つの平面内に位置している。
【0043】
さらに、溶接部品1では、第1の部材3と第2の部材5とがお互いに接合されていることで、第1の凹部9と第2の凹部13とがお互いにつながり、両面凹部形成態様では、第1の凹部9と第2の凹部13とで一対の直方体状の空間49が形成されている。
【0044】
ビード部15は、蒲鉾状に形成されている。すなわち、ビード部15は、Z方向で見て、たとえば半楕円状に形成されており、各接合部7、11に沿ってZ方向に長く延びている。両面凹部形成態様では、ビード部15も一対で設けられている。第1部材第1平面25側および第2部材第1平面27側のビード部15Aは、各平面41A、45AのところからY方向に盛り上がっている。第1部材第2平面29側および第2部材第2平面31側のビード部15Bは、各平面41B、45BのところからY方向に盛り上がっている。
【0045】
ビード部15の幅寸法(X方向の寸法)W2の値は、空間49の幅寸法(X方向の寸法)W1の値以下の値になっている。ビード部15の高さ寸法(Y方向の寸法)H2の値は、空間49の高さ寸法(Y方向の寸法)H1の値以下の値になっている。
【0046】
なお、図5で示す破線は、溶接がされる前における各部材3、5の外面を示している。溶接がされたことによって、破線で示す部分では、第1の部材3、第2の部材5、ビード部15の境界がややあいまいになっている。
【0047】
図1等で示すように、第1の端子部35は、Z方向に対して細長い四角柱状に形成されている。第1の端子部35のY方向の寸法の値は、第1部材平板状部位21のY方向の寸法の値と等しくなっている。また、Y方向で第1の端子部35の位置と第1部材平板状部位21の位置とはお互いが一致している。なお、第1の端子部35のY方向の寸法の値が、第1部材平板状部位21のY方向の寸法の値よりも僅かに小さくなっていてもよい。この場合、Y方向で、第1部材平板状部位21の内側に第1の端子部35が位置している。
【0048】
第2の端子部39も、Z方向に対して細長い四角柱状に形成されている。第2の端子部39のY方向の寸法の値は、第2部材平板状部位23のY方向の寸法の値と等しくなっている。また、Y方向で第2の端子部39の位置と第2部材平板状部位23の位置とはお互いが一致している。なお、第2の端子部39のY方向の寸法の値が、第2部材平板状部位23のY方向の寸法の値よりも僅かに小さくなっていてもよい。この場合、Y方向で、第2部材平板状部位23の内側に第2の端子部39が位置している。
【0049】
第1の端子部35および第2の端子部39は、第1部材平板状部位21および第2部材平板状部位23から、たとえば、同じ側に同じ長さ突出している。Z方向で、第1の端子部35と第2の端子部39とは同じところに位置している。
【0050】
樹脂部19は、第1の端子部35および第2の端子部39のまわりに空洞が形成されるようにして、溶接部品1に一体的に設けられている。なお、ビード部15を除く空間49にも樹脂部19が設けられている。樹脂部19は、第1の部材3と第2の部材5とをお互いに溶接接続して溶接部品1を得た後、金型17を用いて溶接部品1に設けられる。
【0051】
なお、上記説明では、第1の部材3と第2の部材5とで溶接部品1が構成されているが、溶接部品1が3つ以上の部材を溶接接続することで形成されていてもよい。たとえば、図2で示すように、第2の部材5に第3の部材51が溶接接続されていてもよい。第2の部材5と第3の部材51との溶接接続は、第1の部材3と第2の部材5のとの溶接接続と同様にされている。
【0052】
溶接部品1は、第1の接合部7と第1の凹部9とが設けられている第1の部材3と、第2の接合部11と第2の凹部13とが設けられている第2の部材5と、溶接接合によって形成されたビード部15とを備えて構成されている。ビード部15は、第1の凹部9と第2の凹部13との内部に収まっている。
【0053】
ビード部15が、第1の凹部9と第2の凹部13との内部に収まっていることで、ビード部15の邪魔な突出(金型17にとって邪魔な突出)が無くなる。そして、溶接で形成されたビード部15の形状、大きさにばらつきが発生しても、これを無視することができる。これにより、溶接部品1にインサート成形をするときに使用される金型17等の制約を減らすことができ、製品設計の自由度を増やすことができる。すなわち、溶接部品1の金型17での保持等が容易になり、溶接部品1のインサート成形性が向上する。
【0054】
また、小型の溶接部品1にインサート成形をするときに使用する金型17の強度を確保し、寸法の制約を少なくしても、ビード部15を避けることが容易になり、端子等の製品設計への制約が少なくなる。
【0055】
また、溶接部品1を大型化等する対策が不要になり、溶接部品1、この溶接部品1を用いたインサート成形品、金型17のコストが上昇することを抑えることができる。金型17の耐久性を向上させ、金型17の構成を簡素化することもできる。
【0056】
比較例に係る溶接部品301は、図7で示すように、板材303、305同士を溶接することで、溶接された箇所に盛り上がったビード部(溶接部)307が形成される。ビード部307が形成された溶接部品301に金型309を用いてインサート成形をする場合、金型309によって溶接部品301を保持する必要がある。
【0057】
金型309によって溶接部品301を保持するときには、ビード部307を避ける必要がある。すなわち、金型309に、凹部で形成されたビード部回避部311を設ける必要がある。
【0058】
ところで、溶接で形成されたビード部307の形状は一定ではない。ビード部307の形状、大きさはある程度ばらついてしまう。したがって、金型309に設ける必要のあるビード部回避部311の適切な大きさを事前に判断することは難しい。そこで、ビード部回避部311の大きさを大きめにしておく等の対策で対応することになる。
【0059】
ビード部回避部311の大きさむやみに大きくしてしまうと、金型309の強度の低下を招いてしまう。特に、溶接部品301が小型化されると、溶接部品301の溶接接合される箇所、溶接部品301の金型309で保持される箇所、金型309の強度の関係から、溶接部品301のインサート成形が困難となってしまう。
【0060】
溶接部品1では、第1部材平板状部位21と第2部材平板状部位23とが、これらの厚さ方向でお互いの位置が一致している。これにより、インサート成形をする金型17の、第1部材平板状部位21および第2部材平板状部位23を保持する部位を、お互いが平行な一対の平面状部位で形成すればよく、金型17の形状を簡素化することができる。
【0061】
なお、第1の部材3はたとえばバスバーであり、第2の部材5はたとえばシャントであり、第1部材平板状部位21の厚さ寸法、第2部材平板状部位23の厚さ寸法の精度(公差)の値は、±0.02mmになっている。したがって、金型17での各部材3、5の保持を、問題を発生させることなく容易にすることができる。
【0062】
また、溶接部品1では、第1の端子部35(第2の端子部39)が、第1部材平板状部位21(第2部材平板状部位23)から、第1部材平板状部位21(第2部材平板状部位23)の突出方向のうちの所定の一方向に突出している。これより、端子部35、39が平板状部位21、23をそのまままっすぐに伸ばした形態になっていることになる。端子部35、39がこのような単純な形態になっていることで、溶接部品1にインサート成形するときに使用される金型17の形状を一層簡素化することができる。
【0063】
また、溶接部品1では、ビード部15が各凹部9、13の内部に収まっているので、各部材3、5の溶接箇所の近傍を金型17で保持することができる。これにより、溶接箇所の近傍に、各端子部35、39が位置していても、インサート成形に用いる金型(樹脂成形金型)17の強度を確保することができる。
【0064】
すなわち、各端子部35、39にインサート成形による樹脂が直接設けられることはない。したがって、金型17が、各端子部35、39とこの各端子部35、39につながっている各部材3、5の部位(各部材3、5の溶接箇所の近傍の部位)を保持できる。これにより、金型17の剛性が高まっている。
【0065】
ところで、図4図5で示すように、ビード部15の少なくとも一部が、第1の凹部9と第2の凹部13との内部に収まっているようにしてもよい。たとえば、第1の部材3と第2の部材5の溶接箇所のうちの各端子部35、39側の部位のみ、ビード部15が各凹部9、13内に収まっていてもよい(図5(a)参照)。その他の溶接箇所では、凹部9、13が設けられておらず、ビード部15が突出していてもよい(図5(b)参照)。なお、溶接箇所の総てで、ビード部15が各凹部9、13内に収まっていてもよい(図2参照)。
【0066】
ビード部15の一部もしくは総てが、第1の凹部9と第2の凹部13との内部に収まっていることで、溶接部品1等の形態に適宜応じた金型17を用いてインサート成形をすることができる。
【0067】
たとえば、ビード部15の一部が第1の凹部9と第2の凹部13との内部に収まっている態様では、溶接部品1の強度の確保等をしつつ、金型17の制約を減らすことができる等の上述した効果を得ることができる。
【0068】
また、ビード部15の総てが第1の凹部9と第2の凹部13との内部に収まっている態様では、溶接部品1でのビード部15による余計な出っ張りを一切無くしつつ、金型17の制約を減らすことができる等の上述した効果を得ることができる。
【0069】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 溶接部品
3 第1の部材
5 第2の部材
7 第1の接合部
9 第1の凹部
11 第2の接合部
13 第2の凹部
15 ビード部
21 第1部材平板状部位(第1の部材の平板状の部位)
23 第2部材平板状部位(第2の部材の平板状の部位)
33 第1の部材本体部
35 第1の端子部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7