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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】描画評価用マスクブランクス
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20250212BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20250212BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G03F1/24
C23C14/06 E
C23C14/14 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021014419
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117747
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000101710
【氏名又は名称】アルバック成膜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寿弘
(72)【発明者】
【氏名】細谷 守男
(72)【発明者】
【氏名】金井 修一郎
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-244452(JP,A)
【文献】特開2018-205350(JP,A)
【文献】特開2009-054899(JP,A)
【文献】特開2011-151202(JP,A)
【文献】特開2008-083652(JP,A)
【文献】特表2009-508167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/24
C23C 14/06
C23C 14/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を評価する描画評価用マスクブランクスであって、
基板と、
前記基板に積層された偽反射層と、
前記偽反射層に積層されたハードマスク層と、
を有し、
前記偽反射層がEUVに対する多層反射膜と同等の材質からなる単層膜であり、
前記ハードマスク層がEUVに対する吸収体層に対するマスクとなる層と同等の層であり、
前記偽反射層の膜厚が、10nm~100nmであり、
前記ハードマスク層と前記偽反射層とは、前記ハードマスク層をマスクとした前記偽反射層のパターニングにおいてパターン寸法の評価可能な膜厚比に設定される、
ことを特徴とする描画評価用マスクブランクス。
【請求項2】
前記ハードマスク層に積層されたレジスト層を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の描画評価用マスクブランクス。
【請求項3】
前記偽反射層がモリブデンとシリコンとを含有し、酸素、カーボン以外の不純物濃度が20ppm以下である、
ことを特徴とする請求項1記載の描画評価用マスクブランクス。
【請求項4】
前記ハードマスク層がクロムを含有し、膜厚が1nm~20nmである、
ことを特徴とする請求項1記載の描画評価用マスクブランクス。
【請求項5】
前記偽反射層に積層された吸収体層を有し、
前記吸収体層に前記ハードマスク層が積層される、
ことを特徴とする請求項記載の描画評価用マスクブランクス。
【請求項6】
前記偽反射層に積層された保護層を有し、
前記保護層に前記吸収体層が積層される、
ことを特徴とする請求項記載の描画評価用マスクブランクス。
【請求項7】
前記保護層に積層されたバッファ層を有し、
前記バッファ層に前記吸収体層が積層される、
ことを特徴とする請求項記載の描画評価用マスクブランクス。
【請求項8】
前記基板が石英基板である、または、前記基板がゼロ膨張基板である、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか記載の描画評価用マスクブランクス。
【請求項9】
請求項2,5から7のいずれか記載の描画評価用マスクブランクスを用いて、
電子ビーム描画装置で描画・現像してレジストパターン形成をおこなうか、もしくは、前記ハードマスク層をエッチングしてパターン形成をおこない、前記レジスト層を除去した後、CD-SEMでパターン寸法を測定することで描画特性を評価する、
ことを特徴とする描画評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は描画評価用マスクブランクスに関し、特にEUVリソグラフィに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の製造において、デバイスの微細化に伴い、極紫外(EUV:ExtremeUltra Violet)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。なお、ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2~100nm程度の光のことである。
【0003】
この、EUVリソグラフィにおいて用いられるマスクとして、反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、該多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。露光機(描画機あるいはパターン転写装置)に搭載された反射型マスクに入射した光は、吸収体膜のある部分では吸収され、吸収体膜のない部分では多層反射膜により反射された光像が反射光学系を通して半導体基板上に転写される。
【0004】
多層反射膜としては、例えば13~14nmのEUV光を反射するものとして、数nmの厚さのMoとSiを交互に40乃至60周期程度積層させたものなどが知られている。そして、反射率を高めるためには、屈折率の大きなMo膜を最上層とする方が望ましいが、Moは大気に触れると酸化されやすく、その結果、反射率が低下してしまう。そこで、酸化防止のための保護膜として、例えばSi膜を最上層に設けることが行われている。
【0005】
また、Mo膜とSi膜が交互に積層された多層反射膜と、吸収体パターンとの間に、吸収体パターン形成時の多層反射膜に対するエッチングダメージを防止するために、ルテニウム(Ru)からなるバッファ層が形成された反射型マスクが知られている。
【0006】
EUVリソグラフィで用いられるマスクブランクスは、実際のEUVリソグラフィとは異なり、描画機の描画特性、つまり、パターン形成における描画機の性能を維持するためにも用いられる。
【0007】
つまり、EUVリソグラフィで用いられるマスクブランクスは、パターン形成におけるレジストとの密着性やEB(電子ビーム)露光であれば、電子線に対する振る舞いを検証する必要がある。特に、マスクブランクスからマスクを形成する描画機特性の検証は、描画機のメンテナンス後や、所定枚数のEUVリソグラフィ処理終了後におこなうことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2013-532381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、EUVリソグラフィで用いられるマスクブランクスは、上述したように、極めて多数のMo膜とSi膜が交互に積層された積層体である多層反射膜を有しているため、製造工程が複雑であり、また、製造コストが非常にかかる。しかも、このような多数層の形成において、膜厚均一性と膜特性の均一性が全面で担保された状態を、多数層の積層時のそれぞれで維持することが必要であるため、その製造には手間がかかり、実際のEUVリソグラフィではない描画機特性の検証に用いるとコストが増大するため、代替手段がほしいという要求があった。つまり、実際のEUVリソグラフィに用いるマスクブランクスではなく、描画機特性の検証用マスクブランクス、すなわち、描画評価用マスクブランクスを用いたいという要求があった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.描画機の特性評価可能な描画評価用マスクブランクスを提供すること。
2.描画評価用マスクブランクスを単純な構造で、簡単に製造可能として、安価に提供可能とすること。
3.描画特性の評価を確実におこなうこと。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対するEB描画性能を評価する描画評価用マスクブランクスであって、
基板と、
前記基板に積層された偽反射層と、
前記偽反射層に積層されたハードマスク層と、
を有し、
前記偽反射層がEUVに対する多層反射膜と同等の材質からなる単層膜であり、
前記ハードマスク層がEUVに対する吸収体層に対するマスクとなる層と同等の層であり、
前記偽反射層の膜厚が、10nm~100nmであり、
前記ハードマスク層と前記偽反射層とは、前記ハードマスク層をマスクとした前記偽反射層のパターニングにおいてパターン寸法の評価可能な膜厚比に設定される、
ことにより上記課題を解決した。
発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記ハードマスク層に積層されたレジスト層を有する、
ことができる。
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記偽反射層がモリブデンとシリコンとを含有し、酸素、カーボン以外の不純物濃度が20ppm以下である、
ことができる。
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記ハードマスク層がクロムを含有し、膜厚が1nm~20nmである、
ことができる。
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記偽反射層に積層された吸収体層を有し、
前記吸収体層に前記ハードマスク層が積層される、
ことができる。
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記偽反射層に積層された保護層を有し、
前記保護層に前記吸収体層が積層される、
ことができる。
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記保護層に積層されたバッファ層を有し、
前記バッファ層に前記吸収体層が積層される、
ことができる。
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記基板が石英基板である、または、前記基板がゼロ膨張基板である、
ことができる。
本発明の描画評価方法は、
上記のいずれか記載の描画評価用マスクブランクスを用いて、
電子ビーム描画装置で描画・現像してレジストパターン形成をおこなうか、もしくは、前記ハードマスク層をエッチングしてパターン形成をおこない、前記レジスト層を除去した後、CD-SEMでパターン寸法を測定することで描画特性を評価する、
ことができる。
【0012】
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対するEB描画性能を評価する描画評価用マスクブランクスであって、
基板と、
前記基板に積層された偽反射層と、
前記偽反射層に積層されたハードマスク層と、
を有し、
前記偽反射層がEUVに対する多層反射膜と同等の材質からなる単層膜であり、
前記ハードマスク層がEUVに対する吸収体層に対するマスクとなる層と同等の層である。
これにより、構造が複雑で極めて厳しい製造条件が必要なEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、描画特性として、マスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、形成するレジスト層とハードマスク層との密着性を評価することができる。
また、描画特性として、EB露光をおこなう場合における入射電子線に対する後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
さらに、描画評価用マスクブランクスでは、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成することがない。このため、本発明の描画評価用マスクブランクスでは、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0013】
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記ハードマスク層に積層されたレジスト層を有する。
これにより、構造が複雑で極めて厳しい製造条件が必要なEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、描画特性として、マスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、形成するレジスト層とハードマスク層との密着性を評価することができる。
また、描画特性として、EB露光をおこなう場合における入射電子線に対する、後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
さらに、描画評価用マスクブランクスでは、多層反射膜に替えて単層の偽反射層を有するため、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成する必要がない。このため、本発明の描画評価用マスクブランクスでは、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0014】
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記偽反射層がモリブデンとシリコンとを含有する。
これにより、構造が複雑で極めて厳しい製造条件が必要なEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、描画特性として、マスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、吸収体層等に影響する多層反射膜と同等の組成を有する偽反射層を形成することで、多層反射膜に積層された各層においてそれぞれの密着性を評価することができる。
また、多層反射膜に積層された各層の描画特性として、EB露光をおこなう場合における入射電子線に対するそれぞれの層の後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
さらに、描画評価用マスクブランクスでは、多層反射膜と同等の組成を有する単層の偽反射層を有するため、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成する必要がない。このため、本発明の描画評価用マスクブランクスでは、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0015】
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記ハードマスク層がクロムを含有する。
これにより、構造が複雑で極めて厳しい製造条件が必要なEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、描画特性として、マスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、形成するハードマスク層におけるパターン形成特性としての密着性やエッチング特性を評価することができる。
また、多層反射膜に積層された各層をパターンニングする際におけるハードマスク層のエッチング特性や、描画特性としてEB露光をおこなう場合における入射電子線に対する各層の後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
さらに、描画評価用マスクブランクスでは、多層反射膜に替えて単層の偽反射層を有しており、他の層のパターン形成に関するハードマスク層はEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等の特性を有することができる。
さらに、描画評価用マスクブランクスでは、多層反射膜に替えて単層の偽反射層を有するため、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成する必要がない。このため、本発明の描画評価用マスクブランクスでは、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0016】
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記偽反射層に積層された吸収体層を有し、
前記吸収体層に前記ハードマスク層が積層される。
これにより、構造が複雑で極めて厳しい製造条件が必要なEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、描画特性として、マスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、マスクとしてもっとも重要な吸収体層におけるパターン形成における特性を評価することができる。
また、描画特性として、EB露光をおこなう場合における入射電子線に対する後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
さらに、描画評価用マスクブランクスでは、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成することがない。このため、本発明の描画評価用マスクブランクスでは、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0017】
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記偽反射層に積層された保護層を有し、
前記保護層に前記吸収体層が積層される。
これにより、構造が複雑で極めて厳しい製造条件が必要なEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、描画特性として、マスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、マスクとして重要な要素である保護層におけるパターン形成における特性を評価することができる。
また、描画特性として、EB露光をおこなう場合における入射電子線に対する振る舞い後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
さらに、描画評価用マスクブランクスでは、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成することがない。このため、本発明の描画評価用マスクブランクスでは、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0018】
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記保護層に積層されたバッファ層を有し、
前記バッファ層に前記吸収体層が積層される。
これにより、構造が複雑で極めて厳しい製造条件が必要なEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、描画特性として、マスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、マスクとして重要なバッファ層におけるパターン形成における特性を評価することができる。
また、描画特性として、EB露光をおこなう場合における入射電子線に対する後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
さらに、描画評価用マスクブランクスでは、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成することがない。このため、本発明の描画評価用マスクブランクスでは、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0019】
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記基板が石英基板である。
これにより、極めて厳しい条件が必要なEUVリソグラフィで用いられるゼロ膨張基板を用いる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を安価な石英基板を用いて同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、描画特性として、マスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、マスク基板として加工法の蓄積があり、波長の異なる光に対応するマスクブランクスでよく用いられる石英基板を用いてパターン形成における特性を評価することができる。
また、描画特性として、EB露光をおこなう場合における入射電子線に対する 後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
さらに、描画評価用マスクブランクスでは、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を石英基板に形成することがない。このため、本発明の描画評価用マスクブランクスでは、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、加工難易度が高く製造工程数が多いゼロ膨張基板を用いることなく、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0020】
本発明の描画評価用マスクブランクスは、
前記基板がゼロ膨張基板である。
これにより、構造が複雑で極めて厳しい製造条件が必要なEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、熱特性がEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同じゼロ膨張基板を用い、描画特性としてマスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、マスクの各層におけるパターン形成における特性を評価することができる。
また、描画特性として、EB露光をおこなう場合における入射電子線に対する後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
さらに、描画評価用マスクブランクスでは、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成することがない。このため、本発明の描画評価用マスクブランクスでは、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0021】
本発明の描画評価方法は、
上記のいずれか記載の描画評価用マスクブランクスを用いて、
電子ビーム描画装置(EB描画機)で描画・現像してレジストパターン形成をおこなうか、もしくは、前記ハードマスク層をエッチングしてパターン形成をおこない、前記レジスト層を除去した後、CD-SEM(測長SEM:Critical Dimension-Scanning Electron Microscope)でパターン寸法を測定することで描画特性を評価する。
これにより、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成することがなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減した描画評価用マスクブランクスを用いて、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる描画評価用マスクブランクスを提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る描画評価用マスクブランクスの第1実施形態を示す断面図である。
図2】本発明に係る描画評価用マスクブランクスの第1実施形態を用いた描画評価工程を示す断面図である。
図3】本発明に係る描画評価用マスクブランクスの第2実施形態を示す断面図である。
図4】本発明に係る描画評価用マスクブランクスの第2実施形態を用いた描画評価工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る描画評価用マスクブランクスの第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における描画評価用マスクブランクスを示す断面図であり、図において、符号10は、描画評価用マスクブランクスである。
【0025】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10は、描画性能を評価するための偽マスクブランクスとされる。つまり、マスクブランクスにおけるパターンニング、すなわち、マスクブランクスからマスクを製造する際におこなわれる描画工程をおこなう際に、その描画性能を評価する。
【0026】
特に、本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10は、波長が0.2~100nm程度、好ましくは、13.5nm程度の極紫外光(EUV)を露光光とするリソグラフィにおいてその評価に用いられる。
【0027】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10は、EUV反射型マスクブランクスに対して用いられる。つまり、本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10は、実際にはマスクとして用いられるものではなく、特に、上述した露光光に対して、反射性能を有している必要がない。
【0028】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10は、図1に示すように、基板11と、基板11上に形成された偽反射層12と、偽反射層12上に形成された保護層13と、保護層13上に形成されたバッファ層14と、バッファ層14上に形成された吸収体層15と、吸収体層15上に形成されたハードマスク層16と、ハードマスク層16上に形成されたレジスト層17と、を有する。
【0029】
基板11は、石英基板(ガラス基板)とされる。
ガラス基板としては、EUV照射に対して耐性の優れた材料が用いられ、例えば、石英ガラス基板を用いることができる。基板11の大きさは特に制限されず、当該リソグラフィを用いて露光する基板(半導体基板、例えばLCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのFPD用基板等)に応じて適宜選定される。
【0030】
本実施形態では、基板11として、一辺100mm程度から、一辺2000mm以上の矩形基板を適用可能であり、さらに、厚み1mm程度の基板を用いることができる。基板11は、EUVマスクブランクスと同等の表面状態、例えば、0.15nm rms以下、好ましくは0.1nm rms以下の平滑な表面と、100nm以下、好ましくは70nm以下の平坦度を有していることができる。
【0031】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10において、基板11として石英ガラスを採用した場合には、より波長の長い露光光で使用されているマスクブランクスと同等の特性を有するものとすることができる。これにより、基板調達コスト、および基板の前工程等における表面処理等の作業手順などを、従来と同等の条件にすることができ、基板の扱いを容易化することができる。
【0032】
なお、本実施形態に係る基板11は、反射型マスクブランクスの評価に適応可能なものなので、透明性は重視されない。また、本実施形態に係る基板11は、EUVを用いた反射型マスクブランクスと同様に、ゼロ膨張ガラス(ゼロ膨張基板)としてもよい。
ここで、ゼロ膨張ガラスとは、EUV照射によって、温度が上昇した場合でも、リソグラフィにおける熱膨張の影響が大きくないものを選択する。
【0033】
具体的には、基板11は、露光時の温度において、低熱膨張係数(0±1.0×10-7/℃であることが好ましく、より好ましくは0±0.3×10-7/℃、さらに好ましくは0±0.2×10-7/℃、さらに好ましくは0±0.1×10-7/℃、特に好ましくは0±0.05×10-7/℃)を有することができる。また、平滑性、平坦性、およびマスクブランクまたはマスクパターン形成後のEUVマスクの洗浄等に用いる洗浄液への耐性に優れたものが好ましい。
【0034】
基板11としては、具体的には低熱膨張係数を有するガラス、例えばSiO-TiO系ガラス等を用いることができるが、これに限定されず、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、石英ガラス、シリコン、金属などの基板を用いることもできる。また基板上に応力補正膜のような膜を成膜してもよい。金属基板の例としては、インバー合金(Fe-Ni系合金)などが挙げられる。
【0035】
基板11は、高い平滑性と平坦度を備えた基板が好ましい。特に、0.2nmRms以下の平滑な表面(10μm角エリアでの平滑性)と、100nm以下の平坦度(142mm角エリアでの平坦度)を有することが好ましい。また、基板11は、その上に形成される膜の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0036】
なお、平滑性を示す単位Rmsは、二乗平均平方根粗さであり、原子間力顕微鏡で測定することができる。また平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小自乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
【0037】
偽反射層12は、描画評価用マスクブランクス10として、EUV用マスクブランクスの多層反射膜と同じ元素を含む単層膜とされる。EUV用マスクブランクスの多層反射膜は、EUV光に対する一種のブラッグ反射ミラーである。
【0038】
つまり、偽反射層12は、多層反射膜と同じMo/Si、Ru/Si、Mo/Be、Rh/Si、Pt/Si、Mo化合物/Si化合物、Si/Mo/Ru、Si/Mo/Ru/Mo、Si/Ru/Mo/Ruなどの元素の組み合わせからなる単層膜も用いることができる。偽反射層12は、モリブデンとシリコンを含む単層膜であることができる。
これは、多層反射膜と同じ元素を含む膜とすることで、描画性能評価におけるEB露光時の電子ビームの後方散乱量と範囲が多層反射膜と同等となり、近接効果補正の修正を最小限にするという条件をみたすことができるためである。
【0039】
ここで、偽反射層12は、多層反射膜と同じ元素を含む単層膜であることが好ましいため、例えば、Mo/Siとされた場合、モリブデンとシリコン以外の不純物が含有されないことが好ましい。具体的には、モリブデンとシリコン以外の不純物濃度が、20ppm(酸素、カーボン以外)以下とされることが好ましい。
【0040】
偽反射層12の膜厚としては、10nm~100nm、より好ましくは、25nm~40nmとすることができる。これは、ハードマスク層16の膜厚が薄いためにハードマスク層16自体のCD-SEMによるパターン寸法の評価精度が低く、パターニングしたハードマスク層16で偽反射層12をエッチングしてパターン寸法を評価することがあるため、ハードマスク層16と偽反射層12とのエッチング選択比で規定される膜厚比を一定に保つという条件を満たすためである。したがって、上記の範囲よりも膜厚が小さい場合には、評価精度が低下するという不具合があるため好ましくなく、上記の範囲よりも膜厚が大きい場合には、エンドポイント前にハードマスク層16が消失し、パターン形状の劣化が発生するという不具合があるため好ましくない。
【0041】
単層である偽反射層12は、DCスパッタ、RFスパッタ法以外に、イオンビームスパッタ等のスパッタ法で基板11上に形成することができる。
【0042】
単層である偽反射層12としては、厚さ方向に組成が傾斜していることもできる。例えば、偽反射層12における最上面、つまり、基板11から最も離間する向きにSi濃度が上昇するように傾斜していてもよい。この場合、後述するように、保護層13やバッファ層14を設けないことができる。
【0043】
反射型マスクブランクスにおける保護膜は、多層反射膜表面およびその近傍が、保管時に自然酸化されたり洗浄時に酸化されたりするのを防止するため、多層反射膜上に保護膜を設けることができる。
【0044】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10における保護層13は、反射型マスクブランクスにおける保護膜と同等のものとされる。保護層13は、例えば、ルテニウム(Ru)、又は、ルテニウム(Ru)と、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、ランタン(La)から選ばれる少なくとも1種とを含有するルテニウム化合物からなることや、Si、Ru、Rh、C、SiC、あるいはこれら元素の混合物、あるいはこれら元素に窒素やボロンなどを添加したものなどを用いることができる。
【0045】
保護層13としてRuを用いた場合、後述するバッファ膜の機能を兼ねることができるため、バッファ層14を設けないこともできる。この場合、Ru膜は、2nm~3nm、2.5nm程度とすることができる。
また保護層13としてSiを用いた場合は、偽反射層12の最上面をSiとすることによって、偽反射層12の最上面を保護層13として機能させることができる。その場合、Siの保護層13を設けないこともできる。なお、偽反射層12の最上面におけるSi膜が保護膜としての役割も果たすためには、Siの膜厚が、4.5nmより厚い5~15nmであることが好ましい。
【0046】
また、保護層13としてSi膜を成膜した後、該Si膜上に保護層13とバッファ層14とを兼ねるRu膜を成膜してもよい。
なお、保護層13やバッファ層14などの膜は、必ずしも1層である必要はなく、2層以上であってもよい。さらに、保護層13やバッファ層14などの膜は、膜厚方向の濃度傾斜があってもよい。また、保護層13やバッファ層14などの膜は、上記以外の不純物を含むこともできる。
【0047】
なお、保護膜では、多層反射膜上に設けた場合、保護膜表面におけるEUV光の反射率の最大値が次の範囲を満たす必要がある。すなわち、保護膜表面におけるEUV光の反射率の最大値が60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましい。したがって、保護層13もこの条件を満たすことが好ましい。
【0048】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10におけるバッファ層14は、反射型マスクブランクスにおけるバッファ膜と同等のものとされる。
バッファ層14は、吸収体層15とエッチング特性が異なるものとされる。バッファ層14は、反射型マスクブランクスにおけるバッファ膜と同等のものとされる。バッファ膜は、吸収体膜のパターン形成時、及びパターン修正時のエッチングによる多層反射膜のダメージを防止可能なものとされる。
【0049】
バッファ層14は、該吸収体膜とエッチング特性が異なるクロム(Cr)を含有するクロム系膜とすることができる。クロム系とされるバッファ膜は、高い平滑性が得られ、その上に形成される吸収体膜表面も高い平滑性が得られるので、パターンぼけを減少するものである。
【0050】
バッファ膜の材質としては、吸収膜のエッチングプロセスによる影響を受けにくい、つまり、このエッチング速度が吸収膜よりも遅く、しかも、このエッチングプロセスによるダメージを受けにくい物質が選択される。
バッファ層14は、DCスパッタ、RFスパッタ法以外に、イオンビームスパッタ等のスパッタ法で保護層13上に形成することができる。
【0051】
バッファ膜の材質としては、たとえばCr、Al、Ru、Ta及びこれらの窒化物、ならびにSiO、Si、Alやこれらの混合物が例示される。これらの中でも、Ru、CrNおよびSiOが好ましく、CrNおよびRuがより好ましく、保護膜とバッファ膜の機能を兼ね備えるため、特にRuが好ましい。
バッファ膜の膜厚は、1~60nm、特に1~10nmが好ましく、さらには1~5nmであることが好ましい。
【0052】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10における吸収体層15は、反射型マスクブランクスにおける吸収体膜と同等のものとされる。
吸収体層15は、露光光である例えばEUV光を吸収する機能を有するもので、タンタル(Ta)単体又はTaを主成分とする材料を好ましく用いることができる。Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。
Taを主成分とする材料としては、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくとも何れかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料、等を用いることができる。
【0053】
TaにBやSi、Ge等を加えることにより、アモルファス状の材料が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。また、TaにNやOを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができるという効果が得られる。
この中でも特に好ましい材料として、例えば、TaとBを含む材料(組成比Ta/Bが8.5/1.5~7.5/2.5の範囲である)、TaとBとNを含む材料(Nが5~30at%であり、残りの成分を100とした時、Bが10~30at%)が挙げられる。これらの材料の場合、容易に微結晶或いはアモルファス構造を得ることができ、良好な平滑性と平坦性が得られる。
【0054】
このようなTa単体又はTaを主成分とする吸収体膜は、マグネトロンスパッタリングなどのスパッタ法で形成するのが好ましい。例えば、TaBN膜の場合、タンタルとホウ素を含むターゲットを用い、窒素を添加したアルゴンガスを用いたスパッタリング法で成膜することができる。スパッタ法で形成した場合には、スパッタターゲットに投入するパワーや投入ガス圧力を変化させることにより内部応力を制御できる。また、室温程度の低温での形成が可能であるので、多層反射膜等への熱の影響を少なくすることができる。
【0055】
吸収体層15に対しては、Taを主成分とする材料以外で、例えば、WN、TiN、Ti等の材料が挙げられる。
なお、吸収体層15は、複数層の積層構造としてもよい。
吸収体層15の膜厚は、露光光である例えばEUV光が十分に吸収できる厚みであればよいが、30~100nm程度にできる。
【0056】
反射型マスクブランクスにおける吸収体膜に特に要求される特性は、多層反射膜との関係で(該多層反射膜上に保護膜が形成されている場合は該保護膜との関係で)、EUV反射光の光学コントラストが十分高くなることである。上記の特性を達成するには、吸収体膜表面におけるEUV光の反射率をきわめて低くすることが好ましい。しかし、吸収体膜の膜厚を薄くすることが求められている。
【0057】
これにより、吸収体膜表面におけるEUV光の反射率を低くすることのみで、EUV反射光の光学コントラストを十分高くすることは現実的ではない。そこで、多層反射膜からの反射光との関係で位相シフトの原理を利用して、EUV反射光の光学コントラストを十分高くすることが好ましい。
【0058】
多層反射膜からの反射光との関係で位相シフトの原理を利用するためには、吸収体膜からのEUV反射光の位相が、多層反射膜からのEUV反射光の位相と175~185度異なることが好ましい。
また、EUV反射光の光学コントラストを十分高めるためには、吸収体膜からのEUV反射光と多層反射膜からのEUV反射光との位相差が、175~185度であることが好ましく、177~183度であることがさらに好ましい。
【0059】
吸収体膜は、EUV光の吸収係数が高い材料で構成される。EUV光の吸収係数が高い材料としては、タンタル(Ta)を主成分とする材料を用いることが好ましい。ここで、タンタル(Ta)を主成分とする材料とは、当該材料中、Taを40at%(原子組成比%)以上含有する材料であればよい。吸収体膜は、好ましくは50at%以上、より好ましくは55at%以上、のタンタル(Ta)を含有することが好ましい。
【0060】
吸収体膜に用いるTaを主成分とする材料は、Ta以外にハフニウム(Hf)、珪素(Si)、ジルコニウム(Zr)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、水素(H)および窒素(N)からなる群より選ばれる少なくとも1成分を含有する。Ta以外の上記の元素を含有する材料の具体例としては、例えば、TaN、TaNH、TaHf、TaHfN、TaBSi、TaBSiN、TaB、TaBN、TaSi、TaSiN、TaGe、TaGeN、TaZr、TaZrNなどが挙げられる。
【0061】
吸収体膜中には、酸素(O)を含まないことが好ましい。吸収体膜中のOの含有率が25at%未満であることが好ましい。吸収体膜中の酸素の含有率は、15at%以下であることが好ましく、10at%以下であることがより好ましく、5at%以下であることがさらに好ましい。
吸収体膜の厚さは、露光光である例えばEUV光が十分に吸収できる厚みであればよく、1nm~100nm程度、または、1nm~60nmであることが好ましい。吸収体膜の厚さは、より好ましく3nm~56nmである。
【0062】
ハードマスク層16は、レジスト層17とともに、吸収体層15他のパターニングにおけるマスクとして作用する。
具体的には、ハードマスク層16は、レジスト層17をマスクとしてパターニングされハードマスクパターン16pが形成される。ハードマスクパターン16pは、吸収体層15他のパターニングにおけるマスクとして作用する。
【0063】
このため、ハードマスク層16は、吸収体層15他のパターニングにおけるマスクとして作用可能な材質から形成される。ハードマスク層16は、吸収体層15のエッチングにおけるエッチャントに対して、耐性を有する材質からなる。
具体的には、ハードマスク層16は、クロム(Cr)を含有する。また、ハードマスク層16は、クロム以外の組成として、酸素、炭素等の含有率が10atm%以下、より好ましくは、酸素、炭素等の含有率が5atm%以下に設定される。
【0064】
この場合、ハードマスク層16の厚さは、1~20nmという厚みであればよく、1~10nm程度、または、3~5nmであることが好ましい。
ハードマスク層16は、DCスパッタ、RFスパッタ法以外に、イオンビームスパッタ等のスパッタ法で吸収体層15上に形成することができる。
【0065】
また、ハードマスク層16は、クロム(Cr)に変えて、Tiを含有するものとしてもよい。
この場合、不純物としての酸素、炭素等の含有率が10atm%以下、より好ましくは、酸素、炭素等の含有率が5atm%以下に設定される。
【0066】
この場合、ハードマスク層16の厚さは、1~20nmという厚みであればよく、1~10nm程度、または、3~5nmであることが好ましい。
ハードマスク層16は、DCスパッタ、RFスパッタ法以外に、イオンビームスパッタ等のスパッタ法で吸収体層15上に形成することができる。
【0067】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10においては、偽反射層12と保護層13との間に、熱拡散抑制膜に対応する膜を設けることもできる。
熱拡散抑制膜は、反射型マスクブランクスにおいて、屈折率(n)が0.90よりも大きく、且つ、消衰係数(k)が-0.020よりも小さい材料からなることができる。
【0068】
ここで、ルテニウム又はルテニウム化合物からなる保護膜と多層反射膜との間に熱拡散抑制膜を設ける。これにより、保護膜成膜時やその後の加熱処理(多層反射膜の応力低減のための加熱処理や、レジスト膜のプリベーク処理、露光、洗浄等)による保護膜と多層反射膜最上層のSi膜との拡散層の形成を好適に抑制することができる。従って、拡散層による反射率の低下が発生しない。また、上記保護膜と多層反射膜との間に上記熱拡散抑制膜を設けることで、より高反射率が得られ、光学特性(反射率)を向上できる。
【0069】
熱拡散抑制膜は、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、ランタン(La)から選ばれる少なくとも1種からなる金属、又は、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、ランタン(La)から選ばれる少なくとも1種と、酸素(O)、ホウ素(B)、窒素(N)、炭素(C)、珪素(Si)から選ばれる少なくとも1種とを含有する化合物からなることができる。
【0070】
あるいは、熱拡散抑制膜が、炭素(C)、又は、炭素(C)と、酸素(O)、ホウ素(B)、窒素(N)、珪素(Si)から選ばれる少なくとも1種とを含有する化合物からなることができる。
熱拡散抑制膜は、酸素(O)、ホウ素(B)、窒素(N)、珪素(Si)から選ばれる少なくとも1種を含有する化合物からなることもできる。
【0071】
熱拡散抑制膜の膜厚は、0.5~2.5nmであることができる。
熱拡散抑制膜は、DCスパッタ、RFスパッタ法以外に、イオンビームスパッタ等のスパッタ法で吸収体層15上に形成することができる。
【0072】
レジスト層17は、電子線用レジストとすることができる。具体的には、レジスト層17は、ポリスチレン樹脂誘導体とすることができる。電子線用レジストとされたレジスト層17は、塗布形成される。レジスト層17にはベーキングを施すこともできる。
この場合、レジスト層17の厚さは、1~20nmという厚みであればよく、1~10nm程度、または、3~10nmであることが好ましい。
あるいは、レジスト層17とハードマスク層16との合計で40nm~100nmとすることができる。
【0073】
次に、本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10による評価工程を説明する。
図2は、本実施形態における描画評価用マスクブランクスを用いた描画評価方法を示す断面図である。
【0074】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10の各層の材料及び形成方法については上述したとおりである。
そして、図2に模式的に示すように、この描画評価用マスクブランクス10の吸収体層15に所定の転写パターンを形成する。まず、吸収体層15上に形成されたレジスト層17に、電子線描画機を用いて描画し、これを現像して、所定のレジストパターン17pを形成する。
【0075】
形成されたレジストパターン17pをマスクとして、ハードマスク層16をドライエッチングして、所定の転写パターンを有するハードマスクパターン16pを形成する。ハードマスク層16がCrを主成分とする材料からなる場合、塩素系ガス又はフッ素系ガスを用いたドライエッチングを用いることができる。Cr系材料からなるハードマスク層16の場合は、塩素と酸素を含む混合ガスでのドライエッチングを用いることができる。
【0076】
形成されたレジストパターン17pおよびハードマスクパターン16pをマスクとして、吸収体層15をドライエッチングして、所定の転写パターンを有する吸収体層パターン15pを形成する。吸収体層15がTaを主成分とする材料からなる場合、塩素系ガス又はフッ素系ガスを用いたドライエッチングを用いることができる。
【0077】
形成されたレジストパターン17pおよびハードマスクパターン16pをマスクとして、バッファ層14をドライエッチングして、所定の転写パターンを有するバッファ層パターン14pを形成する。バッファ層14がTaを主成分とする材料からなる場合、塩素系ガス又はフッ素系ガスを用いたドライエッチングを用いることができる。
【0078】
なお、熱濃硫酸等を用いて、吸収体層パターン15p上に残ったレジストパターン17pを除去して、偽マスク10pを作製する。
【0079】
ここで、描画評価として、吸収体層パターン15pが設計通りに形成されているかどうかの検査をCD-SEMでおこなう。ここで、EUVの回折光によるパターン寸法評価は、吸収体層と積層反射層との反射率差が大きいことで可能となる。このため、偽反射層の評価では従来のCD-SEM評価をおこなう。
【0080】
また、描画評価として、ハードマスクパターン16pが設計通りに形成されているかどうかの検査をCD-SEMでおこなう。
【0081】
さらに、レジスト層17とハードマスク層16との密着性に対する評価をおこなう。この場合、描画、現像後のレジストをSEM観察し、パターン消失や倒れがないか評価するという手法を用いることができる。
【0082】
また、EB露光をおこなう場合における電子線に対するレジスト層17の振る舞いの評価をおこなう。この場合、通常の積層反射膜で使用するEB露光の近接効果補正を用いて描画、現像後を行い、ハードマスクパターン16pのパターン寸法を測定し、設計値との差異を比較するという手法を用いることができる。
【0083】
また、EB露光をおこなう場合における電子線に対するハードマスク層16の振る舞いの評価をおこなう。この場合、通常の積層反射膜で使用するEB露光の近接効果補正を用いて描画、現像、ハードマスクをエッチング処理した後、形成されたハードマスクパターン16p寸法を測定し、設計値との差異を比較する。
【0084】
形成されたハードマスクパターン16pをマスクとして、バッファ層14をドライエッチングして、所定の転写パターンを有するバッファ層パターン14pを形成する。バッファ層14がRuを主成分とする材料からなる場合、塩素系ガス又はフッ素系ガスを用いたドライエッチングを用いることができる。
【0085】
なお、バッファ層パターン14pを形成しないこともできる。バッファ層14を除去しなくても必要な反射率が得られる反射型マスクの製造における描画評価をおこなう場合には、バッファ層14を吸収体層15と同様のパターン状に加工せず、保護層を備えた偽反射層12上に残すこともできる。
なお、ハードマスクパターン16pを除去してもよい。Cr系材料からなるハードマスク層16の場合は、塩素と酸素を含む混合ガスでのドライエッチングを用いることができる。
【0086】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10においては、多層反射膜を形成することがないため、構造が複雑で極めて厳しい製造条件が必要なEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、描画特性として、マスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、形成するレジスト層17とハードマスク層16との密着性を評価することができる。
【0087】
また、描画特性として、EB露光をおこなう場合における入射電子線に対する後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
【0088】
さらに、本実施形態における描画評価用マスクブランクス10では、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成することがない。このため、本実施形態の描画評価用マスクブランクス10では、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0089】
本実施形態においては、描画評価をおこなうことが可能であれば、上記の構成に限定されない。例えば、反射型マスクブランクスにおける層構成において、偽反射層12が多層反射膜と同じ元素で形成される単層膜とされて、かつ、描画評価に必要な層構成であれば、他の膜構成も可能である。
また、レジスト層17を形成しないこともできる。
【0090】
以下、本発明に係る描画評価用マスクブランクスの第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図3は、本実施形態における描画評価用マスクブランクスを示す断面図である。図において、符号10は描画評価用マスクブランクスである。
【0091】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10は、描画性能を評価するための偽マスクブランクスとされる。つまり、マスクブランクスにおけるパターンニング、すなわち、マスクブランクスからマスクを製造する際におこなわれる描画工程をおこなう際に、その描画性能を評価する。
【0092】
特に、本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10は、波長が0.2~100nm程度、好ましくは、13.5nm程度の極紫外光(EUV)を露光光とするリソグラフィにおいてその評価に用いられる。
【0093】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10は、UEV反射型マスクブランクスに対して用いられる。つまり、本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10は、実際にはマスクとして用いられるものではなく、特に、上述した露光光に対して、反射性能を有している必要がない。
【0094】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10は、図1に示すように、基板11と、基板11上に形成された偽反射層12と、偽反射層12上に形成されたハードマスク層16と、ハードマスク層16上に形成されたレジスト層17と、を有する。
【0095】
基板11は、石英基板(ガラス基板)とされる。
ガラス基板としては、UEV照射に対して耐性の優れた材料が用いられ、例えば、石英ガラス基板を用いることができる。基板11の大きさは特に制限されず、当該リソグラフィを用いて露光する基板(半導体基板、例えばLCD(液晶ディスプレイ)、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイなどのFPD用基板等)に応じて適宜選定される。
【0096】
本実施形態では、基板11として、一辺100mm程度から、一辺2000mm以上の矩形基板を適用可能であり、さらに、厚み1mm程度の基板を用いることができる。基板11は、EUVマスクブランクスと同等の表面状態、例えば、0.15nm rms以下、好ましくは0.1nm rms以下の平滑な表面と、100nm以下、好ましくは70nm以下の平坦度を有していることができる。
【0097】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10において、基板11として石英ガラスを採用した場合には、より波長の長い露光光で使用されているマスクブランクスと同等の特性を有するものとすることができる。これにより、基板調達コスト、および基板の前工程等における表面処理等の作業手順などを、従来と同等の条件にすることができ、基板の扱いを容易化することができる。
【0098】
なお、本実施形態に係る基板11は、反射型マスクブランクスの評価に適応可能なものなので、透明性は重視されない。また、本実施形態に係る基板11は、UEVを用いた反射型マスクブランクスと同様に、ゼロ膨張ガラスとしてもよい。
ここで、ゼロ膨張ガラスとは、UEV照射によって、温度が上昇した場合でも、リソグラフィにおける熱膨張の影響が大きくないものを選択する。
【0099】
具体的には、基板11は、露光時の温度において、低熱膨張係数(0±1.0×10-7/℃であることが好ましく、より好ましくは0±0.3×10-7/℃、さらに好ましくは0±0.2×10-7/℃、さらに好ましくは0±0.1×10-7/℃、特に好ましくは0±0.05×10-7/℃)を有することができる。また、平滑性、平坦性、およびマスクブランクまたはマスクパターン形成後のEUVマスクの洗浄等に用いる洗浄液への耐性に優れたものが好ましい。
【0100】
基板11としては、具体的には低熱膨張係数を有するガラス、例えばSiO-TiO系ガラス等を用いることができるが、これに限定されず、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス、石英ガラス、シリコン、金属などの基板を用いることもできる。また基板上に応力補正膜のような膜を成膜してもよい。金属基板の例としては、インバー合金(Fe-Ni系合金)などが挙げられる。
【0101】
基板11は、高い平滑性と平坦度を備えた基板が好ましい。特に、0.2nmRms以下の平滑な表面(10μm角エリアでの平滑性)と、100nm以下の平坦度(142mm角エリアでの平坦度)を有することが好ましい。また、基板11は、その上に形成される膜の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0102】
なお、平滑性を示す単位Rmsは、二乗平均平方根粗さであり、原子間力顕微鏡で測定することができる。また平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小自乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
【0103】
偽反射層12は、描画評価用マスクブランクス10として、EUV用マスクブランクスの多層反射膜と同じ元素を含む単層膜とされる。EUV用マスクブランクスの多層反射膜は、EUV光に対する一種のブラッグ反射ミラーである。
【0104】
つまり、偽反射層12は、多層反射膜と同じMo/Si、Ru/Si、Mo/Be、Rh/Si、Pt/Si、Mo化合物/Si化合物、Si/Mo/Ru、Si/Mo/Ru/Mo、Si/Ru/Mo/Ruなどの元素の組み合わせからなる単層膜も用いることができる。偽反射層12は、モリブデンとシリコンを含む単層膜であることができる。
これは、多層反射膜と同じ元素を含む膜とすることで、描画性能評価におけるEB露光時の電子ビームの後方散乱量と範囲を多層反射膜と同等にすることで、近接効果補正の影響を最小限にするという条件をみたすことができるためである。
【0105】
ここで、偽反射層12は、多層反射膜と同じ元素を含む単層膜であることが好ましいため、例えば、Mo/Siとされた場合、モリブデンとシリコン以外の不純物が含有されないことが好ましい。具体的には、モリブデンとシリコン以外の不純物濃度が、20ppm(酸素、カーボン以外)以下とされることが好ましい。
【0106】
偽反射層12の膜厚としては、10nm~50nmより好ましくは、25nm~35nmとすることができる。これは、ハードマスク層16の膜厚が薄いためにハードマスク層16自体のCD-SEMによるパターン寸法の評価精度が低く、パターニングしたハードマスク層16で偽反射層12をエッチングしてパターン寸法を評価することがあるため、ハードマスク層16と偽反射層12とのエッチング選択比で規定される膜厚比を一定に保つという条件を満たすためである。したがって、上記の範囲よりも膜厚が小さい場合には、CD-SEMによる評価精度が低下するという不具合があるため好ましくなく、上記の範囲よりも膜厚が大きい場合には、エンドポイント前にハードマスク層16が消失し、パターン形状の劣化が発生するという不具合があるため好ましくない。
【0107】
単層である偽反射層12は、DCスパッタ、RFスパッタ法以外に、イオンビームスパッタ等のスパッタ法で基板11上に形成することができる。
【0108】
単層である偽反射層12としては、厚さ方向に組成が傾斜していることもできる。例えば、偽反射層12における最上面、つまり、基板11から最も離間する向きにSi濃度が上昇するように傾斜していてもよい。
【0109】
ハードマスク層16は、レジスト層17とともに、EUV反射型マスクブランクスにおける吸収体膜等のパターニングにおけるマスクとして作用する。
具体的には、ハードマスク層16は、レジスト層17をマスクとしてパターニングされハードマスクパターン16pが形成される。ハードマスクパターン16pは、吸収体膜等のパターニングにおけるマスクとして作用する。
【0110】
このため、ハードマスク層16は、EUV反射型マスクブランクスにおける吸収体膜等のパターニングにおけるマスクとして作用可能な材質から形成される。ハードマスク層16は、EUV反射型マスクブランクスにおける吸収体膜等のエッチングにおけるエッチャントに対して、耐性を有する材質からなる。
具体的には、ハードマスク層16は、クロム(Cr)を含有する。また、ハードマスク層16は、クロム以外の組成として、酸素、炭素等の含有率が10atm%以下、より好ましくは、酸素、窒素、炭素等の含有率が5atm%以下に設定される。
【0111】
この場合、ハードマスク層16の厚さは、1~20nmという厚みであればよく、1~10nm程度、または、3~5nmであることが好ましい。
ハードマスク層16は、DCスパッタ、RFスパッタ法以外に、イオンビームスパッタ等のスパッタ法で偽反射層12上に形成することができる。
【0112】
また、ハードマスク層16は、クロム(Cr)に変えて、Tiを含有するものとしてもよい。
この場合、不純物としての酸素、窒素、炭素等の含有率が10atm%以下、より好ましくは、酸素、窒素、炭素等の含有率が5atm%以下に設定される。
【0113】
この場合、ハードマスク層16の厚さは、1~20nmという厚みであればよく、1~10nm程度、または、3~5nmであることが好ましい。
ハードマスク層16は、DCスパッタ、RFスパッタ法以外に、イオンビームスパッタ等のスパッタ法で吸収体層15上に形成することができる。
【0114】
レジスト層17は、電子線用レジストとすることができる。具体的には、レジスト層17は、ポリスチレン樹脂誘導体とすることができる。電子線用レジストとされたレジスト層17は、塗布形成される。レジスト層17にはベーキングを施すこともできる。
この場合、レジスト層17の厚さは、20~60nmという厚みであればよく、または、40~50nmであることが好ましい。
【0115】
次に、本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10による評価工程を説明する。
図4は、本実施形態における描画評価用マスクブランクスを用いた描画評価工程を示す断面図である。
【0116】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10の各層の材料及び形成方法については上述したとおりである。
そして、図4に模式的に示すように、ハードマスク層16上に形成されたレジスト層17に、電子線描画機を用いて描画し、これを現像して、所定のレジストパターン17pを形成する。
【0117】
形成されたレジストパターン17pをマスクとして、ハードマスク層16をドライエッチングして、所定の転写パターンを有するハードマスクパターン16pを形成する。ハードマスク層16がCrを主成分とする材料からなる場合、塩素系ガス又はフッ素系ガスを用いたドライエッチングを用いることができる。Cr系材料からなるハードマスク層16の場合は、塩素と酸素を含む混合ガスでのドライエッチングを用いることができる。
ハードマスク層16のエッチングは、EUV反射型マスクブランクスにおけるパターン形成される吸収帯膜等のアッチングに対応しておこなうことができる。
【0118】
なお、熱濃硫酸等を用いて、ハードマスクパターン16p上に残ったレジストパターン17pを除去して、偽マスク10pを作製する。
【0119】
ここで、描画評価として、ハードマスクパターン16pが設計通りに形成されているかどうかの検査をおこなう。ハードマスクパターン16pの検査には、例えばCD-SEMを用いて、ハードマスクパターン16pの形状を検出し、その結果を評価する。
【0120】
また、レジスト層17とハードマスク層16との密着性に対する評価をおこなう。この場合、描画、現像後のレジストをSEM観察し、パターン消失や倒れがないか評価するという手法を用いることができる。
【0121】
また、EB露光をおこなう場合における電子線に対するレジスト層17の振る舞いの評価をおこなう。この場合、通常の積層反射膜で使用するEB露光の近接効果補正を用いて描画、現像後のレジストのパターン寸法を測定し、設計値との差異を比較するという手法を用いることができる。
【0122】
本実施形態に係る描画評価用マスクブランクス10においては、多層反射膜を形成することがなく描画評価として必要な最小構成を有しているため、構造が複雑で極めて厳しい製造条件が必要なEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスを用いることなく、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに対する描画性能を同等の精度・確度で評価することができる。具体的には、描画特性として、マスクブランクスからマスクとしてパターン形成をおこなう際に、形成するレジスト層17とハードマスク層16との密着性を評価することができる。
【0123】
また、描画特性として、EB露光をおこなう場合における入射電子線に対する、後方散乱した電子の広がりとその量が、実際のEUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスと同等であるか否かを評価することができる。
【0124】
さらに、本実施形態における描画評価用マスクブランクス10では、欠陥仕様を満たした状態では形成時の困難性が高い多層反射膜を形成することがない。このため、本実施形態の描画評価用マスクブランクス10では、EUVリソグラフィで用いられる反射型マスクブランクスに比べて、製造工程を簡略化し、容易に製造することができ、製造時間と製造コストを低減して、容易に描画特性の評価をおこなうことができる。
【0125】
本実施形態においては、描画評価をおこなうことが可能であれば、上記の構成に限定されない。例えば、反射型マスクブランクスにおける層構成において、偽反射層12が多層反射膜と同じ元素で形成される単層膜とされて、かつ、描画評価に必要な層構成であれば、他の膜構成も可能である。
【実施例
【0126】
以下、本発明にかかる実施例を説明する。
【0127】
本発明における具体例として、描画評価用マスクブランクスにおける描画特性の評価試験について説明する。
【0128】
<実験例1>
使用する基板は、石英ガラス基板(152mm角、厚さが6.3mm)である。この基板の熱膨張係数は0.2×10-7/℃、ヤング率は67GPaである。そして、このガラス基板は機械研磨により、0.2nmRms以下の平滑な表面と、100nm以下の平坦度に形成した。
【0129】
基板上に形成される偽反射層は、MoSi単層膜とした。即ち、偽反射層は、MoSiターゲットを使用し、DCマグネトロンスパッタリング法により基板上に形成した。MoSi膜を20nmに成膜し、最後に保護層としてRuターゲットを用いてRu膜を5nm成膜した。
【0130】
さらに、Ru膜上に、吸収体層として、TaとBとNを含む材料を30nmの厚さで形成した。ここで、Ta及びBを含むターゲットを用いて、アルゴン(Ar)に窒素(N)を10%添加して、DCマグネトロンスパッタリング法によって成膜した。なお、成膜したTaBN膜の組成比は、Taが0.8at%、Bが0.1at%、Nが0.1at%であった。
【0131】
さらに、吸収体層として、TaとBとOを含む材料を13nmの厚さで形成した。ここで、Ta及びBを含むターゲットを用いて、アルゴン(Ar)に窒素(O)を10%添加して、DCマグネトロンスパッタリング法によって成膜した。なお、成膜したTaBO膜の組成比は、Taが0.8at%、Bが0.1at%、Oが0.1at%であった。
【0132】
さらに、Taを含む膜上に、ハードマスク層としてCr単層膜を成膜し、その上に、レジスト層として、電子線描画用レジストを形成した。
【0133】
次に、この描画評価用マスクブランクスを用いて、反射型マスクブランクからEUV露光用反射型マスクを作製する際における描画性能を評価した。ここで、デザインルールが0.07μmの16Gbit-DRAM用のパターンを形成する条件と同等の条件で、描画性能を評価した。
【0134】
まず、描画評価用マスクブランクス上のレジスト層に、電子線描画と現像によりレジストパターンを形成した。
このレジストパターンをマスクとして、塩素ガスを用いてハードマスク層をドライエッチングし、ハードマスクパターンを形成した。
このレジストパターンおよびハードマスクパターンをマスクとして、塩素ガスを用いて吸収体層をドライエッチングし、吸収体層パターンを形成した。
さらに、塩素と酸素の混合ガスを用いて、吸収体層パターンのない部分に残存しているバッファ層を吸収体層パターンに従ってドライエッチングして除去し、保護層、偽反射層を露出させ、偽マスクを得た。
【0135】
ここで、偽マスクに対する描画評価として、ハードマスクパターンが設計通りに形成されているかどうかの検査をおこなう。ハードマスクパターンの検査には、例えばCD-SEMによって、ハードマスクパターンの形状を検出し、その結果を評価する。
【0136】
また、レジスト層とハードマスク層との密着性に対する評価をおこなう。この場合、描画、現像後のレジストをSEM観察し、パターン消失や倒れがないか評価するという手法を用いることができる。
【0137】
EB露光をおこなう場合における電子線に対するレジスト層の振る舞いの評価をおこなう。この場合、EB露光時の電子ビームの近接効果補正(後方散乱量と範囲)を多層反射膜露光時と同じとして現像後のパターン寸法を比較するという手法を用いることができる。
【0138】
EB露光をおこなう場合における電子線に対するハードマスク層の振る舞いの評価をおこなう。この場合、EB露光時の電子ビームの近接効果補正(後方散乱量と範囲)を多層反射膜露光時と同じとして現像、レジストリムーブ後のパターン寸法を設計値と比較するという手法を用いることができる。
ここでは、図3に示すように、描画評価試験における諸元を示す。
EB露光時の電子ビームの近接効果補正パラメータ(後方散乱量と範囲)を多層反射膜露光時と同じ設定として露光し、ハードマスクをエッチングして形成したパターン寸法をCD-SEMを用いて評価した。design CDを60nmとした場合の差異は-6nmであった。
【0139】
この結果から、本膜構成で形成した描画評価用マスクブランクスを描画検証用として使用可能であることがわかる。
【符号の説明】
【0140】
10…描画評価用マスクブランクス
11…基板
12…偽反射層
13…保護層
14…バッファ層
15…吸収体層
16…ハードマスク層
17…レジスト層
図1
図2
図3
図4