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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
E06B5/16
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021064997
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022160326
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2023-12-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 販売日 令和3年1月6日 販売した場所 株式会社奥田工務店 京都府京都市下京区納屋町415番 販売日 令和3年1月6日 販売した場所 株式会社錢高組 大阪府大阪市西区阿波座1丁目7番3 販売日 令和3年1月27日、令和3年3月24日 販売した場所 内野建設株式会社 東京都墨田区亀沢1-21 販売日 令和3年1月28日、令和3年2月9日、令和3年2月17日 販売した場所 高松建設株式会社 千葉県千葉市中央区新千葉2-1-1 販売日 令和3年2月1日、令和3年2月10日、令和3年2月25日、令和3年3月11日 販売した場所 株式会社中山組 東京都新宿区高田馬場1丁目16-35 販売日 令和3年2月15日 販売した場所 株式会社雛屋建設社 岐阜県岐阜市金宝町2丁目1番3 販売日 令和3年2月17日 販売した場所 株式会社三煌産業 京都府亀岡市ひえ田野町佐伯下峠20 販売日 令和3年2月19日 販売した場所 高松建設株式会社 東京都江戸川区中葛西3-20-3 販売日 令和3年3月1日 販売した場所 高松テクノサービス株式会社 東京都世田谷区太子堂4-22-15 販売日 令和3年3月2日 販売した場所 株式会社篠崎工務店 東京都目黒区三田1-5-2 販売日 令和3年3月4日 販売した場所 株式会社クラスト 埼玉県さいたま市北区宮原町1丁目183番 販売日 令和3年3月5日 販売した場所 株式会社林建設 兵庫県尼崎市南塚口町5丁目16-1 販売日 令和3年3月11日 販売した場所 株式会社IXSIM Communicati 東京都中野区東中野3-14-15 販売日 令和3年3月26日 販売した場所 株式会社創美建築企画 京都府京都市中京区小川通三条下る猩々町140番
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 耕佑
(72)【発明者】
【氏名】村井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】村山 徳和
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-024621(JP,A)
【文献】特開2020-176386(JP,A)
【文献】特開2016-023448(JP,A)
【文献】特開2018-188955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体の見込み方向において一方の縁部側となる部分に第1障子を備えるとともに、前記枠体の他方の縁部側となる部分に第2障子を備え、前記第1障子は、面材の四周にそれぞれ框を装着することによって構成され、かつ框を介して前記枠体に固定される建具であって、
前記第1障子は、前記面材としてスペーサ部材を介してガラスを接合した複層ガラスを備えたものであり、
前記複層ガラスは、縦框に設けたガラス収容溝に縁部が収容された状態で前記縦框に装着されており、
前記枠体を構成する縦枠には、前記第1障子の縦框に対向する部分に長手に沿って縦枠レール部が設けられ、
前記第1障子の縦框において前記縦枠に対向する見込み面には、前記縦枠レール部を挟んで両側となる部分にそれぞれ長手に沿ってガイド壁部が設けられ、
前記第1障子は、前記ガイド壁部と前記縦枠との間に固定部材を設けることによって前記枠体に固定され、
前記縦框において前記ガイド壁部の相互間となる部分には、前記ガラス収容溝に連通する空気導入孔が設けられ、
前記ガイド壁部の相互間と前記縦枠との間に構成された前記空気導入孔に対応する位置の空間に熱膨張性部材が配設され、
前記枠体を構成する上枠には、前記第1障子の上框に対向する部分に長手に沿って上枠レール部が設けられ、
前記第1障子の上框には、前記上枠レール部に対向するように長手に沿ってガイド壁部が設けられ、前記ガイド壁部には、上方に向けて延在するように長手に沿って一連となる連結片及び屈曲片が設けられ、
前記第1障子は、前記上框の屈曲片と前記上枠との間に固定部材を設けることによって前記枠体に固定され、
前記連結片及び前記上枠レール部の間に構成される空間に熱膨張性部材が配設されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記縦框には、前記ガイド壁部の一方の延在端部に見込み方向に屈曲した屈曲部が設けられ、
前記屈曲部を前記縦枠の見込み面に当接させた状態で互いの間に前記固定部材が設けられ、
前記ガイド壁部の他方は、延在縁部が前記縦枠の見込み面に当接されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体に2つの障子を備えた建具に関するもので、特に少なくとも一方の障子が框を介して枠体に固定された建具に関する。
【背景技術】
【0002】
枠体に内障子及び外障子を備える建具には、例えば内障子の框と枠体の枠との間に固定ピースを配置し、固定ピースを介して框と枠とを固定することで内障子をFIX窓として構成するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-24621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の建具では、火災等によって高温に晒されると、アルミニウム合金等の金属によって成形された枠や框に熱伸び等の熱変形が生じる。上述のように、障子の框と枠体の枠との間が固定されている建具にあっても、枠や框が熱変形すると互いの間に隙間が生じ、室内外に発炎経路が構成される懸念があるため、さらなる防火性の向上が要望されている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、防火性の向上を図ることのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠体の見込み方向において一方の縁部側となる部分に第1障子を備えるとともに、前記枠体の他方の縁部側となる部分に第2障子を備え、前記第1障子は、面材の四周にそれぞれ框を装着することによって構成され、かつ框を介して前記枠体に固定される建具であって、前記第1障子は、前記面材としてスペーサ部材を介してガラスを接合した複層ガラスを備えたものであり、前記複層ガラスは、縦框に設けたガラス収容溝に縁部が収容された状態で前記縦框に装着されており、前記枠体を構成する縦枠には、前記第1障子の縦框に対向する部分に長手に沿って縦枠レール部が設けられ、前記第1障子の縦框において前記縦枠に対向する見込み面には、前記縦枠レール部を挟んで両側となる部分にそれぞれ長手に沿ってガイド壁部が設けられ、前記第1障子は、前記ガイド壁部と前記縦枠との間に固定部材を設けることによって前記枠体に固定され、前記縦框において前記ガイド壁部の相互間となる部分には、前記ガラス収容溝に連通する空気導入孔が設けられ、前記ガイド壁部の相互間と前記縦枠との間に構成された前記空気導入孔に対応する位置の空間に熱膨張性部材が配設され、前記枠体を構成する上枠には、前記第1障子の上框に対向する部分に長手に沿って上枠レール部が設けられ、前記第1障子の上框には、前記上枠レール部に対向するように長手に沿ってガイド壁部が設けられ、前記ガイド壁部には、上方に向けて延在するように長手に沿って一連となる連結片及び屈曲片が設けられ、前記第1障子は、前記上框の屈曲片と前記上枠との間に固定部材を設けることによって前記枠体に固定され、前記連結片及び前記上枠レール部の間に構成される空間に熱膨張性部材が配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、建具が高温に晒された場合に、縦枠と縦框との間に構成される空間の内部において熱膨張性部材が膨張することで、両者の隙間が塞がれることになり、室内外に発炎経路が生じる懸念がない。さらに、互いの間が縦框のガイド壁部によって連結されているため、仮に熱膨張性部材が膨張した後に縦枠や縦框に熱変形が生じた場合にも、互いの間に隙間が生じる事態を招来するおそれがなく、防火性の点で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た図である。
図2図1に示した建具の縦断面図である。
図3図1に示した建具の横断面図である。
図4図1に示した建具の枠体及び第1障子を示す分解斜視図である。
図5図1に示した建具に適用する第1障子の上框を示すもので、(a)は端面図、(a)は室内側から見た図、(c)は平面図である。
図6図1に示した建具に適用する第1障子の縦框を示すもので、(a)は端面図、(a)はガラス収容溝側から見た図、(c)は室内側から見た図である。
図7】建具の変形例を示す要部横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1図3は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10と、枠体10の室内側となる部分に配設した内障子(第1障子)20と、枠体10の室外側となる部分に配設した外障子(第2障子)30とを備えるものである。枠体10は、左右の縦枠11,12の上下両端部の間にそれぞれ上枠13及び下枠14を設けることによって四角形状に構成したものである。内障子20は、四角形状を成す面材21の左右両縁部に縦框22,23を設けるとともに、面材21の上下両縁部において縦框22,23の相互間となる部分に上框24及び下框25を装着することによって構成したものである。外障子30も同様に、四角形状を成す面材31の左右両縁部に縦框32,33を設けるとともに、面材31の上下両縁部において縦框32,33の相互間となる部分に上框34及び下框35を装着することによって構成したものである。枠体10を構成する縦枠11,12、上枠13、下枠14及び障子20,30を構成する縦框22,23,32,33、上框24,34、下框25,35は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。
【0011】
内障子20の面材21及び外障子30の面材31としては、それぞれスペーサ部材21a,31aを介して室外側の網入りガラス21b,31bと室内側のフロートガラス21c,31cとを互いに対向した状態に接合した複層ガラスを適用している。内障子20には、外障子30の面材31に比べて縦横の寸法が大きな面材21が配設してある。本実施の形態では、図1に示すように、室内側から見て枠体10の右側に内障子20がFIX窓として構成してある。外障子30は、枠体10に対して上枠13及び下枠14の長手に沿って移動可能に配設してあり、室内側から見て枠体10の左側に配置した場合に、内障子20とともに枠体10の開口を閉じることが可能である。外障子30が閉じた状態においては、室内側から見て外障子30の右側に配置される縦框33と、内障子20の左側に配置される縦框22とが見込み方向に沿って互いに並設された状態となっている。これら縦框22,33の間には、それぞれ煙返し22a,33aが設けてあるとともに、クレセント22b及びクレセント受け33bが設けてある。
【0012】
外障子30の縦框33に設けた煙返し33aは、室内に向けて突出した後、戸先側に向けてほぼ直角に屈曲したものである。内障子20の縦框22に設けた煙返し22aは、室外に臨む見付け面から室外に向けて突出した後、戸先側に向けてほぼ直角に屈曲したものである。これらの煙返し22a,33aは、外障子30を閉じた場合に縦框22,33との間に相手側の煙返し22a,33aが挿入された状態となり、見込み方向に沿った互いの離隔する方向への移動を制限するように機能する。なお、この状態においても、内障子20に対して外障子30を開く方向へ移動させることは可能である。
【0013】
クレセント22b及びクレセント受け33bは、外障子30が閉じた状態においてクレセント22bを施錠操作すると、互いに係合することにより、外障子30の縦框33と内障子20の縦框22との間を施錠して外障子30の開く方向への移動を阻止することが可能である。なお、以下においては外障子30の構成要素と内障子20の構成要素とを区別するため、外障子30の構成要素に「外方」という用語を付与し、内障子20の構成要素に「内方」という用語を付与する場合がある。また便宜上、図1に従って室内側から見た状態で外障子30の構成要素及び内障子20の構成要素の左右を特定することとする。
【0014】
本実施の形態の枠体10は、引き違い窓と共用することができるように構成したものである。枠体10の上枠13には、内方上框24及び外方上框34に対応する部分にそれぞれ上枠レール部13a,13bが設けてあり、下枠14には、内方下框25及び外方下框35に対応する部分にそれぞれ下枠レール部14a,14bが設けてある。上枠レール部13a,13b及び下枠レール部14a,14bは、それぞれ見付け方向に延在した平板状を成すもので、上枠13及び下枠14の長手に沿ってほぼ全長となる部分に形成してある。本実施の形態では、室内側の上枠レール部13aと室外側の上枠レール部13bとが互いにほぼ等しい高さ位置に設けてある。これに対して下枠14においては、室内側の下枠レール部14aが、室外側の下枠レール部14bよりも高い位置となるように構成してある。
【0015】
左右の縦枠11,12には、見込み方向に沿って延在する平板状の縦枠基部11a,12aにおいて互いに対向する内周側の見込み面に縦枠レール部11b,12bが設けてある。室内側から見て右側に位置する縦枠12には、縦枠基部12aにおいて内方縦框23に対応する部分にのみ縦枠レール部12bが設けてある。室内側から見て左側に位置する縦枠11には、縦枠基部11aにおいて外方縦框32に対応する部分にのみ縦枠レール部11bが設けてある。これらの縦枠レール部11b,12bは、それぞれ見付け方向に延在した平板状を成すもので、縦枠11,12の長手に沿ってほぼ全長となる部分に形成してある。
【0016】
外障子30は、外方上框34及び戸先となる左側の外方縦框32にそれぞれ2つのガイド壁部34a,32aを有するとともに、外方下框35に戸車36を備えている。外方上框34のガイド壁部34aは、角筒状を成す外方上框基部34bの室外側に位置する縁部及び室内側に位置する縁部からそれぞれ上方に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。ガイド壁部34aの上縁部には、それぞれシール部材37が配設してある。外方縦框32のガイド壁部32aは、異形筒状を成す外方縦框基部32bの左側端部において室外側に位置する縁部及び室内側に位置する部分からそれぞれ左側に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。ガイド壁部32aの相互間には、縦枠レール部11bに係合することにより、枠体10に対して外障子30を室内側に引き寄せるように機能する引き寄せ部材38が配設してある。戸車36は、図には明示していないが、見込み方向に沿って延在する車軸を介して外方下框35の内部に回転可能に配設したもので、下方周面が外部に露出した状態で外方下框35の長手方向に沿った複数箇所に設けてある。
【0017】
図2及び図3からも明らかなように、外障子30の左右の外方縦框32,33、外方上框34、外方下框35には、いずれも内周側となる部分にガラス収容溝31dが一体に成形してあり、それぞれのガラス収容溝31dの内部に面材31の縁部が収容してある。
【0018】
上記のように構成した外障子30は、外方上框34の2つのガイド壁部34aの間に上枠レール部13bを配置し、かつ戸車36を下枠レール部14bの上縁部に転動可能に載置させることにより、上枠13及び下枠14の延在方向に沿って移動することが可能である。外障子30を閉じた状態においては、左側の外方縦框32に設けた2つのガイド壁部32aの間に左側の縦枠11に設けた縦枠レール部11bが進入し、左側の外方縦框32が室内側に引き寄せられる。さらに、この状態からクレセント22bを操作してクレセント受け33bに係合させると、右側の外方縦框33が後述する内障子20の左側に位置する内方縦框22に引き寄せられる。
【0019】
この状態においては、下枠14に設けたシール部材14cが外方下框35の室内に臨む見付け面に当接するとともに、左側の縦枠11に設けたシール部材11cが外方縦框32の室内側に位置するガイド壁部32aに当接することになり、互いの間の水密性が確保される。また、外方上框34と上枠13との間においては、外方上框34の2つのガイド壁部34aに設けたシール部材37が上枠レール部13bの両側面に当接し、互いの間の水密性が確保される。さらに、右側の外方縦框33に対しては、左側の内方縦框22に設けたシール部材22cが当接し、互いの間の水密性が確保された状態となる。
【0020】
内障子20は、内方下框25、内方上框24及び戸先となる右側の内方縦框23にそれぞれ2つのガイド壁部25a,24a,23aを有している。内方下框25のガイド壁部25aは、角筒状を成す内方下框基部25bの下端部において室外側に位置する縁部及び室内側に位置する部分からそれぞれ下方に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。
【0021】
内方上框24のガイド壁部24aは、見込み方向に沿った平板状を成す内方上框基部24bの上端部において室外側に位置する縁部及び室内側に位置する部分からそれぞれ上方に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。ガイド壁部24aの上縁部には、互いに対向する上縁部にそれぞれシール部材26が配設してある。図からも明らかなように、室外側に設けたガイド壁部24aには、連結片24cが設けてある。連結片24cは、ガイド壁部24aの上縁から上方に向けて延在したもので、上縁部に屈曲部24dを有している。屈曲部24dは、室外に向けて見込み方向に延在したもので、上枠レール部13a,13bの相互間に配設することのできる寸法に形成してある。本実施の形態では、図4図5に示すように、内方上框24において左側の内方縦框22に対応する部分に逃げ用スペース24Xが確保してあり、逃げ用スペース24Xよりも右側となる部分にのみ連結片24cが設けてある。また、連結片24cには、左側に位置する部分に非固定用スペース24Yが確保してあり、非固定用スペース24Yよりも右側となる部分にのみ屈曲部24dが設けてある。さらに、内方上框24において右側の内方縦框23に対応する部分には、戸先側逃げ用スペース24Zが確保してあり、戸先側逃げ用スペース24Zよりも左側となる部分にのみ連結片24c及び屈曲部24dが設けてある。
【0022】
内方縦框23のガイド壁部23aは、図6に示すように、見込み方向に沿った平板状を成す内方縦框基部23bの右側端部において室外側に位置する縁部及び室内側に位置する部分からそれぞれ右側に向けて互いにほぼ平行となるように延在したものである。室外側に設けたガイド壁部23aは、平板状を成すもので、見付け方向に沿った寸法が右側の縦枠12に設けた縦枠レール部12bよりも大きく設定してある。室内側に設けたガイド壁部23aは、室外側のガイド壁部23aとほぼ同一の寸法を有した平板状を成すもので、延在縁部に屈曲部23cを有している。屈曲部23cは、室内に向けてほぼ直角に屈曲したものである。なお、右側の内方縦框23には、室内側のガイド壁部23aよりもさらに室内側となる部分にシール用当接壁部23dが設けてある。
【0023】
図からも明らかなように、内障子20には、左側の内方縦框22の内周側となる部分にのみガラス収容溝21dが一体に成形してある。右側の内方縦框23、内方上框24、内方下框25には、いずれも室内側にのみガラス支持片21eが設けてある一方、室外側には押縁装着部21fが設けてある。つまり、内障子20においては、室外側から左側の内方縦框22に設けたガラス収容溝21dに面材21の縁部を収容させた後、右側の内方縦框23、内方上框24、内方下框25のガラス支持片21eに面材21を当接させ、さらにそれぞれの押縁装着部21fに押縁21gを装着することによって面材21が支持してある。戸先となる右側の内方縦框23には、ガラス収容溝21dの内部を外気と等圧にするための空気導入孔23eが設けてある。内方縦框23の空気導入孔23eは、図6に示すように、上下に沿った長孔状となるもので、内方縦框23の上端部及び下端部に形成してある。
【0024】
上記のように構成した内障子20を枠体10に固定するには、まず面材21を取り外した状態で枠体10の内部に内障子20を配置し、予め下枠14に取り付けた連結ブラケット40の上面に載置した状態とする。すなわち、内方上框24の2つのガイド壁部24aの間に上枠レール部13aを配置するとともに、内方縦框23の2つのガイド壁部23aの間に縦枠レール部12bを配置し、その後、下枠14を連結ブラケット40に載置させれば、内障子20が枠体10の内部に配置されることになる。このとき、内方縦框23については、2つのガイド壁部23aの延在縁部がそれぞれ縦枠12の内周側となる見込み面に当接した状態に配置しておく。連結ブラケット40としては、例えば、上下に沿って延在するブラケット基部40aの上下両端部にそれぞれ直角方向に屈曲した取付板部40bを有したものを適用し、予め一方の取付板部40bを介して下枠14に取り付け、もう一方の取付板部40bが下枠レール部14aよりも上方に突出した状態としておけば良い。
【0025】
この状態から下枠14を介して連結ブラケット40にネジ部材S1を螺合すれば、連結ブラケット40を介して内方下框25を下枠14に固定することができる。また、縦枠12を介して内方縦框23の屈曲部23cにネジ部材(固定部材)S2を螺合すれば、内方縦框23を縦枠12に固定することができ、内方上框24の屈曲部24dを介して上枠13にネジ部材S3を螺合すれば、内方上框24を上枠13に固定することができる。内方下框25、内方縦框23、内方上框24をそれぞれ枠体10に固定した後においては、上述した方法によって面材21を支持させれば良い。内障子20に設けた逃げ用スペース24Xには、上枠13に設けた風止め板41が配置される。
【0026】
上記のようにして枠体10に固定した内障子20においては、下枠14に設けたシール部材14dが内方下框25の室内側に設けたガイド壁部25aに当接するとともに、右側の縦枠12に設けたシール部材12cが内方縦框23のシール用当接壁部23dに当接することになり、互いの間の水密性が確保される。また、内方上框24と上枠13との間においては、内方上框24の2つのガイド壁部24aに設けたシール部材26が上枠レール部13aの両側面に当接し、互いの間の水密性が確保される。さらに、上述したように、左側の内方縦框22に設けたシール部材22cが外障子30の右側に位置する外方縦框33に当接し、互いの間の水密性が確保された状態となる。
【0027】
さらに、内障子20には、建具の防火性を向上させるため、内方上框24及び右側の内方縦框23に熱膨張性部材50A,50B,50Cが配設してある。熱膨張性部材50A,50B,50Cは、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材である。この種の熱膨張性部材50A,50B,50Cとしては、例えば熱膨張性を有した黒鉛含有の発泡材を適用することができる。本実施の形態では、幅方向の寸法に対して板厚の薄い断面形状を有した長尺状の熱膨張性部材50A,50B,50Cを適用している。内方上框24においては、図5に示すように、連結片24cにおいて上下に延在する部分の両端部において上枠レール部13aに対向する表面に熱膨張性部材50Aが配設してあるとともに、逃げ用スペース24X及び戸先側逃げ用スペース24Zに対応する部分においては2つのガイド壁部24aの互いに対向する内表面にそれぞれ熱膨張性部材50Bが配設してある。内方縦框23においては、図6に示すように、室外側のガイド壁部23aにおいて室内側となる表面の上下両端部に熱膨張性部材50Cが設けてある。図からも明らかなように、熱膨張性部材50Cは、上下に沿った寸法が空気導入孔23eよりも大きなもので、上下方向において空気導入孔23eの全長をすべて含む位置に配設してある。図には明示していないが、それぞれの熱膨張性部材50A,50B,50Cは、両面テープや接着剤によって接着してあり、内障子20から不用意に脱落することはない。
【0028】
上記のように構成した建具では、火災等の原因によって高温に晒された場合、外障子30と枠体10との間及び内障子20と枠体10との間に設けたシール部材11c,12c,14c,14d,22c,26,37が焼失することになるものの、内障子20と枠体10との間に介在した熱膨張性部材50A,50B,50Cが膨張することで内障子20と枠体10との間に隙間が生じる事態を防止することができる。しかも、内方上框24と上枠13との間においては、内方上框24と一体の長手に連続した連結片24cによって互いの間が連結され、内方縦框23と縦枠12との間においては、内方縦框23と一体の長手に連続したガイド壁部23aによって互いに連結されているため、仮に熱膨張性部材50A,50B,50Cが膨張した後に上枠13や内方上框24、または縦枠12や内方縦框23に熱変形が生じた場合にも、互いの間に発炎経路となるような隙間が生じるおそれはなく、防火性の点で有利となる。
【0029】
さらに、上述の建具では、内方上框24と上枠13との間に逃げ用スペース24X及び非固定用スペース24Yが確保してある。従って、日射等の影響によって内方縦框22に熱伸びが生じたり、経年変化によって上枠13の中間部が下方に向けて湾曲するように撓んだとしても、逃げ用スペース24X及び非固定用スペース24Yによってこれらの変形が吸収されることになる。従って、通常の使用時においては、内障子20の内方縦框22が面外方向に湾曲するような事態を招来する懸念がない。加えて、内方上框24の熱膨張性部材50A,50Bは、上述のように、これら逃げ用スペース24X、非固定用スペース24Y、戸先側逃げ用スペース24Zに対応する部分に配設してあるため、熱膨張した際にはこれら逃げ用スペース24X、非固定用スペース24Y、戸先側逃げ用スペース24Zにより生じる発炎経路を確実に塞ぐことが可能であり、火災が発生した際にも延焼を来す要因となるおそれがない。
【0030】
また、内方縦框23と縦枠12との間においては、2つのガイド壁部23aが縦枠12の見込み面に当接することで四周が囲まれた空間60が構成されることになる。従って、内方縦框23に配設した熱膨張性部材50Cは、この限られた空間60の内部において膨張することになり、内方縦框23と縦枠12との間に隙間が生じる事態をより確実に防止することができる。加えて、内方縦框23に設けた熱膨張性部材50Cは、空気導入孔23eを含む高さ位置に設けてある。従って、建具が高温に晒された場合には、空気導入孔23eを通じた内障子20のガラス収容溝21dと外気との連通状態が熱膨張する熱膨張性部材50Cによって遮断されることになる。すなわち、熱膨張性部材50Cが熱膨張した場合には、直接空気導入孔23eを塞がない状態であっても、内方縦框23と縦枠12の間に構成された空間60の両端部が熱膨張した熱膨張性部材50Cによって塞がれるため、ガラス収容溝21dと外気との連通状態が遮断されることになる。これにより、面材21として用いられたスペーサ部材21aが溶融することによってガラス収容溝21dに可燃性ガスが生じたとしても、これが外部に漏出することはなく、発炎の原因となるおそれもない。
【0031】
なお、上述した実施の形態では、室内側の内障子20を第1障子として枠体10に固定した建具を例示しているが、本発明は室外側の外障子30を第1障子として枠体10に固定した建具にも適用することが可能である。また、上枠13と第1障子の上框24との間及び下枠14と第1障子の下框25との間においても固定構造について具体的に記載しているが、これら上枠13と上框24との間及び下枠14と下框25との間の固定構造については実施の形態のものに限定されない。さらに、見込み方向に沿った屈曲部23cを有するガイド壁部23aを例示しているが、必ずしもガイド壁部23aが屈曲部23cを有している必要はない。例えば、ガイド壁部を介して見込み方向に沿ったネジ部材を縦枠に螺合することによって縦枠と縦框との間を連結するようにしても構わない。またさらに、上述した実施の形態では、縦框23にのみ熱膨張性部材50Cを設けるようにしているが、縦枠12にのみ熱膨張性部材50Cを設けても良いし、縦框23及び縦枠12の双方に熱膨張性部材50Cを設けても良い。さらに、上述した実施の形態では、ガイド壁部23aをそれぞれ縦枠12に当接させ、四周が囲まれた密閉状の空間60を構成するようにしているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、図7に示す変形例のように、内方縦框23において室外側に位置するガイド壁部23a′を室内側のガイド壁部23aよりも突出寸法を短く構成し、室外側の一部が開放するように空間60′を構成するようにしても同様の作用効果を奏することが可能である。なお、図7の変形例において実施の形態と同様の構成については同一の符号が付してある。
【0032】
以上のように、本発明に係る建具は、枠体の見込み方向において一方の縁部側となる部分に第1障子を備えるとともに、前記枠体の他方の縁部側となる部分に第2障子を備え、前記第1障子は、面材の四周にそれぞれ框を装着することによって構成され、かつ框を介して前記枠体に固定される建具であって、前記枠体を構成する縦枠には、前記第1障子の縦框に対向する部分に長手に沿って縦枠レール部が設けられ、前記第1障子の縦框において前記縦枠に対向する見込み面には、前記縦枠レール部を挟んで両側となる部分にそれぞれ長手に沿ってガイド壁部が設けられ、前記第1障子は、前記ガイド壁部と前記縦枠との間に固定部材を設けることによって固定され、前記ガイド壁部の相互間と前記縦枠との間に構成される空間に熱膨張性部材が配設されていることを特徴としている。
この発明によれば、建具が高温に晒された場合に、縦枠と縦框との間に構成される空間の内部において熱膨張性部材が膨張することで、両者の隙間が塞がれることになり、室内外に発炎経路が生じる懸念がない。さらに、互いの間が縦框のガイド壁部によって連結されているため、仮に熱膨張性部材が膨張した後に縦枠や縦框に熱変形が生じた場合にも、互いの間に隙間が生じる事態を招来するおそれがなく、防火性の点で有利となる。
【0033】
また本発明は、上述した建具において、前記第1障子は、前記面材として複層ガラスを備えたものであり、前記複層ガラスは、前記縦框に設けたガラス収容溝に縁部が収容された状態で前記縦框に装着されており、前記縦框において前記ガイド壁部の相互間となる部分には、前記ガラス収容溝に連通する空気導入孔が設けられ、前記熱膨張性部材は、前記空気導入孔に対応した位置に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、建具が高温に晒されることに起因して複層ガラスの間に介在するスペーサ部材等の樹脂介在物から可燃性ガスが発生したとしても、熱膨張性部材によって空気導入孔と外気との連通状態を遮断することができ、可燃性ガスが空気導入孔から外部に放出されるおそれがなくなるため、防火性の点で有利となる。
【0034】
また本発明は、上述した建具において、前記縦框には、前記ガイド壁部の一方の延在端部に見込み方向に屈曲した屈曲部が設けられ、前記屈曲部を前記縦枠の見込み面に当接させた状態で互いの間に前記固定部材が設けられ、前記ガイド壁部の他方は、延在縁部が前記縦枠の見込み面に当接されていることを特徴としている。
この発明によれば、固定片部が見込み方向に延在しているため、上枠に対して固定部材を設ける作業が煩雑化するおそれがない。
【符号の説明】
【0035】
10 枠体、12 縦枠、12b 縦枠レール部、20 内障子、21 面材、21a スペーサ部材、21d ガラス収容溝、23 内方縦框、23a,23a′ ガイド壁部、23c 屈曲部、23d シール用当接壁部、23e 空気導入孔、50C 熱膨張性部材、60,60′ 空間、S2 ネジ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7