(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20250212BHJP
G05G 5/00 20060101ALI20250212BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20250212BHJP
【FI】
E02F9/20 K
G05G5/00 D
G05G5/03 A
(21)【出願番号】P 2021073117
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】小野 純弥
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】峰松 俊介
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-152617(JP,A)
【文献】特開2019-167686(JP,A)
【文献】特開2001-073411(JP,A)
【文献】実開昭64-017837(JP,U)
【文献】特開2005-227828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0032480(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
G05G 5/00
G05G 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータに供給する圧油の流量と方向を制御する方向切換弁を操作する操作装置を備えた建設機械であって、
前記操作装置は、
揺動操作される操作レバーと
前記方向切換弁にパイロット圧を出力するパイロット弁と、
前記操作レバーの操作に前記パイロット弁の出力を連動させる連動機構と、
を備え、
前記連動機構は、
前記パイロット弁の前記パイロット圧の出力を制御する制御部に接続され、前記操作レバーを揺動自在に支持するレバー支持部と、
前記操作レバーの揺動に抗する反力を前記レバー支持部に付与する反力付与手段と、
前記反力付与手段により
付与される反力の
増加を規制する規制部と、
を備え、前記規制部により反力
の増加が規制された状態で前記操作レバーの操作を前記制御部に伝達
し、前記規制部により反力の増加が規制されていない状態で前記操作レバーの操作を前記制御部に伝達不能であることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記反力付与手段は、前記操作レバーの操作量に応じて圧縮される第1状態と、前記操作レバーが所定の操作量を超えて操作され
たときに前記規制部により圧縮が規制される第2状態と
、に変形可能な弾性部材を有
することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記連動機構は、前記操作レバーの基端部と前記反力付与手段とをリンク構造を介して連結する連結部を備えることを特徴とする請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記規制部が、前記操作レバーの揺動方向の一方に対応する第1規制部と、前記操作レバーの揺動方向の他方に対応する第2規制部を有することを特徴とす
る請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
記反力付与手段における前記弾性部材は圧縮バネであり、
記連動機構は、
端が前記連結部に接続された支柱と、
部に前記支柱を摺動可能に保持するとともに、一端に前記圧縮バネの端部が当接するフランジが設けられた一対の筒状部材と、を備え、
記第1規制部が前記一対の筒状部材の一方であり、前記第2規制部が前記一対の筒状部材の他方であり、前記一対の筒状部材は、前記操作レバーが操作されない状態において、前記圧縮バネの付勢力により互いに離間していることを特徴とする請求項4に記載の建設機械。
【請求項6】
記パイロット弁は、
記パイロット圧を出力する出力ポートと、
圧ポンプから圧送される圧油が入力される入力ポートと、
記入力ポートから入力された圧油をタンクへ排出する排出ポートと、
記出力ポート、前記入力ポートおよび前記排出ポートに連通するスプール摺動孔と、
記スプール摺動孔を摺動変位するスプールと、
記操作レバーの操作量に応じて傾動するとともに前記スプールを摺動変位させる傾動部と、
備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機を有する建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、掘削作業車等の建設機械には、フロント作業機や排土装置等の作業機を駆動するための油圧アクチュエータとしての油圧シリンダが装備されている。例えば、建設機械が備える排土装置としては、本機をなす走行装置に対して上下方向に揺動可能に設けられた昇降アームと、昇降アームの先端に取り付けられた排土用のブレード(排土板)と、昇降アームを上下方向に揺動させることによりブレードを上下方向に移動させるブレード昇降シリンダと、ブレードを前後方向に回動(アングル回動)させるアングルシリンダと、ブレードを上下方向に回動(チルト回動)させるチルトシリンダとを備えた構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1には、減圧弁型のパイロット弁と、ブレード昇降シリンダを操作するブレード操作レバーを備えた操作装置と、ブレード昇降シリンダと油圧ポンプとの間の油路に設けられたブレード制御弁(方向切換弁)によりブレードの昇降を制御する構成が開示されている。このような構成においては、オペレータが操作装置のブレード操作レバーを傾動させ、油圧パイロット弁からブレード制御弁にパイロット圧を供給することにより、ブレード昇降シリンダの伸縮動作が行われる。
【0004】
油圧シリンダへの油圧の流量と方向を制御する方向切換弁にパイロット圧を供給するパイロット式の操作装置に組み込まれているパイロット弁は、略円筒の孔部にスプールを内挿し、押圧ロッドを介してスプールを変位させることによりパイロット圧を出力ポートより出力するスプール式のパイロット弁である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、油圧シリンダへの油圧の流量と方向を制御する方向切換弁にパイロット圧を供給するパイロット式の操作装置では、オペレータが誤って操作レバーに触れた場合の作業機の誤作動を防ぐために、操作レバーの操作領域において、不感帯領域が設けられている。なお、不感帯領域とは、操作レバーの操作領域のうち、オペレータが操作レバーを操作しても、その操作レバーに対応する油圧アクチュエータが作動しない領域である。操作装置に、スプールの外周側にパイロット圧設定用の圧縮バネと、押圧ロッドとスプールを初期位置に復帰させる戻しバネとが設けられたスプール式のパイロット弁を採用した場合は、不感帯領域は、パイロット弁内のバネの反発力と操作レバーを介して押圧ロッドに与えられる押圧力との関係によってスプールが動き始めるまでの範囲の影響を受ける。この場合、不感帯領域の範囲はパイロット弁内のバネの製造バラツキ等の影響を受けるため、操作装置の不感帯領域にはパイロット弁の個体差により差が生じている。
【0007】
特許文献1に開示されているパイロット式の操作装置では、パイロット弁内のバネにより実質的に不感帯領域が決まるため、不感帯領域と、油圧アクチュエータが作動する作動領域とで、オペレータが操作レバーを傾動させるときに該操作レバーに与える力(操作トルク)に差がない。このため、オペレータは、操作レバーの操作が不感帯領域を超えて作動領域に到達したタイミングを認識することができず、油圧アクチュエータが作動し始めるタイミングを認識することも困難である。
【0008】
また、排土装置を備えた建設機械を用いて行う作業として、敷均し作業がある。この敷均し作業は、排土装置のブレードにより土砂を平らにならす作業であり、オペレータは、敷均しの目標とする高さに応じて、ブレードの高さを調整している。このときオペレータは、ブレードを小刻みに上下動させるために、操作レバーを少ない操作量で繰り返し前後に傾動させる寸動操作を行っている。特許文献1に開示されているパイロット式の操作装置では、オペレータは寸動操作時の操作レバーの各操作が、不感帯領域を超えた作動領域での操作であったか否かを認識できない。このため、寸動操作が行いにくいという問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、作業機を作動させるための油圧アクチュエータに対応する操作装置の構成において、操作レバーの操作が、不感帯領域を超えた作動領域での操作であることをオペレータに認識させることができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る建設機械は、油圧アクチュエータに供給する圧油の流量と方向を制御する方向切換弁を操作する操作装置を備えた建設機械であって、前記操作装置は、揺動操作される操作レバーと前記方向切換弁にパイロット圧を出力するパイロット弁と、前記操作レバーの操作に前記パイロット弁の出力を連動させる連動機構と、を備え、前記連動機構は、前記パイロット弁の前記パイロット圧の出力を制御する制御部に接続され、前記操作レバーを揺動自在に支持するレバー支持部と、前記操作レバーの揺動に抗する反力を前記レバー支持部に付与する反力付与手段と、前記反力付与手段による反力の付与を規制する規制部と、を備え、前記規制部により反力が規制された状態で前記操作レバーの操作量を前記パイロット弁に伝達することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の態様に係る建設機械は、操作装置の前記反力付与手段が、前記操作レバーの操作量に応じて圧縮される第1状態と前記操作レバーが所定の操作量を超えて操作された第2状態とに変形可能な弾性部材を有し、前記弾性部材が第1状態のときに前記レバー支持部へ反力を付与し、前記弾性部材が第2状態のときに前記レバー支持部への反力の付与が前記規制部により規制されることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の他の態様に係る建設機械は、操作装置の前記連動機構において、前記連動機構は、前記操作レバーの基端部と前記反力付与手段とをリンク構造を介して連結する連結部を備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の他の態様に係る建設機械は、操作装置の前記規制部が、前記操作レバーの揺動方向の一方に対応する第1規制部と、前記操作レバーの揺動方向の他方に対応する第2規制部を有することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の他の態様に係る建設機械は、操作装置の前記反力付与手段における前記弾性部材は圧縮バネであり、前記連動機構は、一端が前記連結部に接続された支柱と、内部に前記支柱を摺動可能に保持するとともに、一端に前記圧縮バネの端部が当接するフランジが設けられた一対の筒状部材と、を備え、前記第1規制部が前記一対の筒状部材の一方であり、前記第2規制部が前記一対の筒状部材の他方であり、前記一対の筒状部材は、前記操作レバーが操作されない状態において、前記圧縮バネの付勢力により互いに離間していることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の他の態様に係る建設機械は、操作装置の前記パイロット弁は、前記パイロット圧を出力する出力ポートと、油圧ポンプから圧送される圧油が入力される入力ポートと、前記入力ポートから入力された圧油をタンクへ排出する排出ポートと、前記出力ポート、前記入力ポートおよび前記排出ポートに連通するスプール摺動孔と、前記スプール摺動孔を摺動変位するスプールと、前記操作レバーの操作量に応じて傾動するとともに前記スプールを摺動変位させる傾動部と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作業機を作動させるための油圧アクチュエータに対応する操作装置の構成において、操作レバーの操作が、不感帯領域を超えた作動領域での操作であることをオペレータに認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る建設機械の左後側からの斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る下部走行体の構成を説明する平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る操作装置の運転部における設置態様を説明する拡大斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る操作装置によりブレードシリンダの油圧回路である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る操作装置の構成を説明する図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る操作装置の動作を説明する図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る操作装置のリンク構造と反力付与手段および規制部を説明する側面概要図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る操作装置のリンク構造と反力付与手段および規制部を説明する側面概要図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る操作装置のリンク構造と反力付与手段および規制部を説明する側面概要図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る操作装置のリンク構造と反力付与手段および規制部を説明する側面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、作業機を有する建設機械において、作業機を作動させるための油圧アクチュエータに対応する操作装置の構成を工夫することにより、操作レバーの操作が油圧アクチュエータを作動させる作動領域での操作であることをオペレータに認識させようとするものである。以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態では、本発明に係る建設機械として、旋回作業車である掘削作業機を例にとって説明する。ただし、本発明に係る建設機械は、掘削作業機に限らず、例えば、クレーン作業機やホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用可能である。
【0020】
まず、本実施形態に係る掘削作業機1の全体構成について、
図1および
図3を用いて説明する。
図1および
図2に示すように、掘削作業機1は、自走可能な走行車体に取り付けられた作業機としての掘削装置3および排土装置4とを有する。
【0021】
掘削作業機1は、左右一対のクローラ式の走行部5,5と、左右の走行部5,5間に介設された基台としての機体フレーム6と、機体フレーム6上に設けられた旋回フレーム7とを有する。
【0022】
なお、この掘削作業機1では、機体フレーム6およびその左右両側に支持された走行部5,5を含む構成を下部走行体20Aとし、下部走行体20Aに対して旋回可能に搭載された旋回フレーム7および旋回フレーム7上に設けられた運転部50を含む構成を上部旋回体20Bとしている。機体フレーム6の上面には平面視円形の旋回ベアリング8(
図3参照)が配設され、この旋回ベアリング8上に旋回フレーム7の底面が接続されている。このような旋回ベアリング8を介した、機体フレーム6と旋回フレーム7の連結により、上部旋回体20Bは、下部走行体20Aに対して旋回する。なお、旋回ベアリング8の円の中心が下部走行体20Aに対する上部旋回体20Bの旋回中心となる。
【0023】
走行部5は、機体フレーム6に支持された複数のスプロケット等の回転体に履帯を巻回した構成を有する。走行部5は、その後端部に、回転体として、駆動輪である駆動スプロケット5aを有する。
【0024】
機体フレーム6の前側には、排土装置4が取り付けられている。排土装置4は、支持フレーム40と、支持フレーム40に支持された排土板であるブレード41とを備える。これらの構成を含む排土装置4は、全体として略左右対称に構成されている。
【0025】
支持フレーム40は、下部走行体20Aに対して上下回動可能に支持され、左右の走行部5,5間において前後方向に延伸した左右のアーム43と、左右のアーム43の間に架設された支持筒部42とを含む。左右のアーム43は、その基端部を機体フレーム6の前部に設けられた支持ブラケット6b(
図3参照)に対して左右方向を回動軸方向として支持されることより、機体フレーム6に対して上下回動可能に取り付けられている。
【0026】
支持フレーム40の左右のアーム43の間の左右中央部には、ブレードシリンダ44が配設されている。ブレードシリンダ44は、シリンダの伸縮方向(長手方向)を前後方向に沿わせ、機体フレーム6と支持筒部42との間に架設された状態で設けられている。ブレードシリンダ44の前端部は、支持筒部42に支持されている。ブレードシリンダ44の後端部は、機体フレーム6の前部に設けられた支持ブラケット6aに対して左右方向を回動軸方向として上下回動可能に支持されている。
【0027】
従って、左右一対のアーム43は、機体フレーム6と支持フレーム40との間において左右中央部に設けられたブレードシリンダ44の伸縮によって上下回動する。つまり、ブレードシリンダ44が作動することにより、支持フレーム40を介してブレード41が昇降する。
【0028】
旋回フレーム7は、機体フレーム6に対して、上下方向の軸線回りに左右いずれの方向にも旋回可能に設けられている。また、旋回フレーム7は、左右の走行部5,5の左右幅内、つまり左側の走行部5の左外側縁端と右側の走行部5の右側縁端との間の幅内で旋回可能に構成されている。これにより、掘削作業機1による小旋回作業が可能となっている。
【0029】
掘削装置3は、上部旋回体20Bの前側に設けられたフロント作業機である。旋回フレーム7の前端の左右中央部には、掘削装置3を支持する支持ブラケット7aが前方に向けて突設されている。支持ブラケット7aに、掘削装置3の基端部をなすブーム支持ブラケット31を、上下方向を回動軸方向として回動可能に支持させている。
【0030】
掘削装置3は、その基部側の部分を構成するブーム32と、ブーム32の先端側に連結されたアーム33と、アーム33の先端部に取り付けられたバケット34とを有する。掘削装置3は、その基端部の右側に配置されたスイングシリンダ(図示せず)により、旋回フレーム7に対して左右にスイングするように設けられている。
【0031】
掘削装置3は、ブーム32を回動させるブームシリンダ35と、アーム33を回動させるアームシリンダ36と、バケット34を回動させるバケットシリンダ37とを有する。なお、掘削装置3において、バケット34は、作業用アタッチメントとして着脱可能に装着されており、作業内容に応じてバケット34に替えて挟み機(フォーク)や破砕機(ブレーカ)等の他のアタッチメントが装着される。
【0032】
上部旋回体20Bの後端部には、掘削装置3に対してつり合いを取るためのカウンタウエイト9が設けられている。カウンタウエイト9の構成は、掘削装置3のアーム13の先端に装着されるアタッチメントの重量に応じて変更される。
【0033】
旋回フレーム7上には、オペレータが走行部5、掘削装置3および排土装置4を運転・操作する運転部50が設けられている。運転部50は、平面状の床部58を有し、該床部58は、旋回フレーム7上において前半部の左側の部分に設けられている。運転部50の右側には、タンク部59が設けられている。運転部50に対しては、床部58の左側が、オペレータの乗降口となっている。また、旋回フレーム7上の後部には、エンジン等を含む原動機部11が設けられている。
【0034】
旋回フレーム7上において、運転部50の上方を覆うキャノピ51が設けられている。キャノピ51は、旋回フレーム7上の後端部となる原動機部11の上側に立設された左右一対の支柱52,52と、左右の支柱52,52により支持されたルーフ部53とを有する。
【0035】
運転部50においては、床部58の後側に、運転席支持台55が設けられており、運転席支持台55上に運転席56が設けられている。また、運転部50の右側に設けられたタンク部59には、作動油を収容する作動油タンクが設けられている。作動油タンク内の作動油は、掘削作業機1が備える油圧アクチュエータである各油圧シリンダ等に供給される。
【0036】
運転席56の周囲には、走行部5、掘削装置3および排土装置4を操作するための操作レバー101や、スイッチ等の各種操作部を有する操作パネル部等が設けられている。運転席56の前方には、左右一対の走行レバー57,57が、床部58から上方へ向けて延出した状態で設けられている。各走行レバー57,57の前後方向への傾倒操作により、走行部5の走行操作が行われる。床部58上における走行レバー57,57の左右両側には、作業用の複数の操作ペダルが配設されている。
【0037】
運転席56の右側(タンク部59側)には、排土装置4を操作する操作装置100が設けられている。操作装置100は、ブレード41を上下動させるためにオペレータが前後方向に揺動操作する操作レバー101と、弁本体部121にスプール式弁部が収容されたパイロット弁120と、操作レバー101の操作量にパイロット弁120の作動を連動させる連動機構を備える。
図4においては、操作装置100の取付状態の説明の便宜上、操作装置100から操作レバー101および連動機構の主要な構成を取り払ったパイロット弁120を示している。操作装置100は、パイロット弁120に設けた取付部131を介して、タンク部59側の壁部に設けた支持部105にボルト149によりねじ締結される。また、パイロット弁120の各ポート(D,N,U)は、油圧ホース106に接続される。
【0038】
以上のような構成を備えた掘削作業機1においては、運転席56に着座したオペレータにより走行レバー57,57や作業操作レバー等が適宜操作されることで、所望の作業が行われる。具体的には、例えば、走行レバー57,57の操作により、走行部5の前後直進走行や左右旋回走行が行われる。また、作業操作レバーの操作により、掘削装置3による掘削作業、あるいは排土装置4による排土作業や整地作業が行われる。
【0039】
本実施形態に係る排土装置4の操作装置100について、
図5から
図11を用いてさらに説明する。
図5においては、排土装置4のブレード41を昇降させる油圧アクチュエータであるブレードシリンダ44の油圧回路110の概要を示している。
【0040】
ブレードシリンダ44を駆動する油圧回路110は、第1油圧ポンプ111と、第2油圧ポンプ112と、方向切換弁113と、パイロット弁120と、を有する。なお、
図5においては、複動式のブレードシリンダ44に供給される作動油の経路を実線で示し、方向切換弁113に供給されるパイロット油の経路を破線で示している。
【0041】
第1油圧ポンプ111は、エンジン115を動力源として駆動し、ブレードシリンダ44に供給する圧力のかかった作動油(圧油)を吐出する。第1油圧ポンプ111とブレードシリンダ44との間には方向切換弁113が介挿され、第1油圧ポンプ111が吐出した圧油の流れる方向および流量が、方向切換弁113により切り換えられる。方向切換弁113は、第1油圧ポンプ111の駆動によって作動油タンク114からブレードシリンダ44に供給される圧油の量を制御することから、コントロールバルブとも呼称される。
【0042】
第2油圧ポンプ112は、第1油圧ポンプ111と同様にエンジン115を動力源として駆動し、方向切換弁113へ入力される指令としてのパイロット油を吐出する。第2油圧ポンプ112から吐出されたパイロット油は、パイロット弁120に供給される。パイロット油の供給を受けたパイロット弁120は、操作レバー101の操作方向および操作量に応じて、方向切換弁113に対してパイロット圧を指令として出力する。
【0043】
方向切換弁113は、センターバイパス形の4方3位置方向切換弁であり、パイロット圧が入力される2つのパイロットポートC1,C2と、スプール(図示せず)を摺動させることにより接続状態が切り換えられる4つの接続ポートA,B,P,Rとを有する。2つのパイロットポートC1,C2はそれぞれ、操作装置100の操作レバー101の操作方向に対応している。方向切換弁113の2つのパイロットポートC1,C2のいずれにもパイロット圧が付与されない場合、スプリング(図示せず)の付勢力により方向切換弁113は中立位置に保持される。方向切換弁113が中立位置にある場合、接続ポートA,Bは閉じられ、第1油圧ポンプ111から吐出された圧油は、接続ポートPから接続ポートRへ流れるセンターバイパス流路を通って、作動油タンク114に排出される。このとき、圧油はブレードシリンダ44に供給されない。
【0044】
方向切換弁113の2つのパイロットポートC1,C2の一方にパイロット圧が付与された場合、内部のスプールが移動し接続ポートA,B,P,Rの接続状態が切り換わる。例えば、接続ポートPと接続ポートAが接続され、接続ポートBと接続ポートRとが接続されると、第1油圧ポンプ111から吐出された圧油は、方向切換弁113の接続ポートPから接続ポートAを経てブレードシリンダ44のシリンダケースの一方のシリンダ室に供給される。これにより、シリンダケース内のピストンが移動する。このとき他方のシリンダ室から流出した圧油は、方向切換弁113の接続ポートBから接続ポートRを経て作動油タンク114に回収される。このように、方向切換弁113に所定のパイロット圧が入力されると、方向切換弁113のスプールは、操作レバー101で指示された方向及び量だけ変位し、ブレードシリンダ44に圧油を供給する。これにより、ブレード41を、オペレータの操作レバー101による指示に基づいて上下動させることができる。
【0045】
操作装置100の構成についてさらに説明する。
図6は操作装置100の構成を説明する図であり、(a)は操作装置100を運転席56側から見た背面図、(b)はその左側面図、(c)は(a)におけるA-A矢視断面図を示している。また、
図7は操作装置100の操作レバー101の操作とパイロット弁120の作動状態との関係を示すものであり、(a)から(d)は上段に操作装置100の左側面図、下段に
図6(a)におけるA-A矢視断面図を示している。また、
図7(a)は操作レバー101がブレード41を下げる方向に傾動された状態、(b)は操作レバー101が操作されない中立位置にある状態、(c)は不感帯領域内で操作レバー101が傾動された状態、(d)は操作レバー101がブレード41を上げる方向に傾動された状態、をそれぞれ示している。さらに、
図8から
図11は、操作装置100のリンク構造と反力付与手段および規制部150を説明する側面概要図であり、操作装置100のリンク構造と反力付与手段および規制部150の構成を拡大して示している。
図8は操作レバー101が中立位置にある状態、
図9は不感帯領域で操作レバー101が傾動された状態、
図10は操作レバー101がブレード41を上げる方向に傾動された状態、
図11は操作レバー101がブレード41を下げる方向に傾動された状態、をそれぞれ示している。
【0046】
この操作装置100は、操作レバー101と、弁本体部121に操作レバー101の前後の操作に対応する前後一対のスプール式弁部が収容されたパイロット弁120と、操作レバー101の操作とパイロット弁120の出力を連動させる連動機構とを備える。
【0047】
操作レバー101は、後述する連動機構を介して、パイロット弁120に対して、前後方向に揺動自在に接続されている。
【0048】
パイロット弁120の弁本体部121内には、方向切換弁113にパイロット圧を出力する出力ポートUと、第2油圧ポンプ112から圧送されるパイロット油が入力される入力ポートNと、入力ポートNから入力されたパイロット油を作動油タンク114へ排出する排出ポートDと、入力ポートN、出力ポートUおよび排出ポートDとに連通する略円筒形のスプール摺動孔124が2本形成されている。2本のスプール摺動孔124は、互いに平行かつ前後方向(
図6(b)、(c)における左右方向)に対称的に設けられており、互いの間に形成された油路により互いに連通している。各スプール摺動孔124には、入力ポートNと出力ポートU、入力ポートNと排出ポートDとを連通遮断するスプール125が摺動自在に設けられ、該スプール125の上方には押圧ロッド126が設けられている。
【0049】
また、スプール摺動孔124には、圧力設定用バネ127および復帰用バネ128が設けられている。圧力設定用バネ127は、パイロット圧を決定するためのものであり、押圧ロッド126の下方に配置され、下端部はスプール125の中途に設けられたバネ座に係止されている。復帰用バネ128は、押圧ロッド126およびスプール125を初期位置に復帰させるものであり、圧力設定用バネ127の外周側に設けられ、押圧ロッド126を軸方向上向きに付勢している。
【0050】
弁本体部121の上方には、弁本体部121から前後に突出した板状の取付部131と、上方に突出し操作レバー101の操作量に応じて傾動する板状の傾動部135が設けられている。また、弁本体部121の上方には、スプール摺動孔124に設けられた復帰用バネ128により上向きに付勢された押圧ロッド126が突出している。
【0051】
傾動部135は、2本のスプール摺動孔124の間に設けられた支軸部に、左右方向を軸方向とする枢軸132を介して揺動可能に支持されている。また、傾動部135の天面には、操作レバー101を支持するレバー支持部141の固定部142がねじ締結により固定されている。また、傾動部135の下面は、ボール136を介して弁本体部121側の押圧ロッド126の上端に接続されている。操作レバー101の操作量に応じて、傾動部135が傾動することにより、押圧ロッド126が押圧され、さらにスプール125が摺動変位することにより出力ポートにパイロット圧力が作用する。傾動部135と取付部131との間の外側は、カバー部材としてのレバーブーツ137により被覆されている。パイロット弁120において、レバーブーツ137により被覆され、レバー支持部141の固定部142が固定された傾動部135から、該傾動部135の傾動方向および傾斜角度に応じて摺動するスプール125までの部材は、パイロット弁120のパイロット圧の出力を制御する制御部130を構成する。
【0052】
連動機構は、操作レバー101を揺動自在に支持するレバー支持部141と、操作レバー101の揺動に抗する反力をレバー支持部141に付与する反力付与手段と、圧縮バネ159による反力の操作レバー101への付与を規制する規制部150と、を備える。規制部150により反力が規制された状態で操作レバー101の操作を制御部130に伝達することで、操作レバー101の操作に対してパイロット弁120の出力を連動させる。さらに、連動機構は、規制部150を保持するホルダ160を備える。
【0053】
レバー支持部141は、金属板から形成され、パイロット弁120における取付部131より上部に設けられた傾動部135の天面にボルト149により固定される固定部142と、固定部142から下向きに垂直に屈曲し、その板面が左右方向を向く支持部143とを含む。支持部143には軸144が突設されており、該軸144により操作レバー101の基端部102が回動可能に軸支される。操作レバー101の基端部102にはアーム146の一端が溶着され、アーム146の他端は棒状の接合部材147の一端にピン148により枢着されている。なお、アーム146と接合部材147とは、そのリンク構造により操作レバー101の操作量をパイロット弁120に伝達するものであり、本発明に係る連結部を構成する。
【0054】
反力付与手段は、操作レバー101の操作量に応じて圧縮される第1状態と、操作レバー101が所定の操作量を超えて操作された第2状態とに変形可能な圧縮バネ159である。圧縮バネ159は、金属線がコイル状に巻回された弾性部材であり、その上下端は、後述する一対の円筒体152,153のフランジ154,155に当接している。
【0055】
連動機構は、上端が連結部を構成する接合部材147に連結される支柱151を備える。支柱151の両端にはネジ部が設けられており、支柱151の下端には、下側の円筒体153を支持するためのナット157が螺合され、支柱151の上端には、上側の円筒体152の上方向への抜けを防ぐためのナット156が螺合されるとともに接合部材147に連結される連結固定部165が設けられている。
【0056】
規制部150は、内部に支柱151を摺動可能に保持するとともに、それぞれの一端にフランジ154,155が設けられた円筒部材である上下一対の円筒体152,153を有する。一対の円筒体152,153の外周側には圧縮バネ159が配置されている。フランジ154,155が設けられていない端部同士を対向させて配置した一対の円筒体152,153の内部には、支柱151が円筒体152,153に対して相対摺動可能に挿通されている。下側のナット157と下側の円筒体153との間には支柱151を貫通して平座金158が介装されている。上下のナット156,157および平座金158はそれぞれ、後述するホルダ160に遊嵌されている。なお、フランジを有する円筒部材としては、例えば、鍔付きカラーを利用することができる。
【0057】
一対の円筒体152,153は、フランジ154,155に圧縮バネ159が当接することにより、互いに離間する方向に付勢され、操作レバー101が操作されていない状態では、互いに所定の長さの隙間Lを隔てて離間している(
図8参照)。これにより、圧縮バネ159の変位量(伸縮量)は一対の円筒体152,153の離間長さ(隙間Lの大きさ)に制限されることになる。上側の円筒体152とそのフランジ154は、第1規制部を構成し、下側の円筒体153とそのフランジ155は、第2規制部を構成する。
【0058】
ホルダ160は、一対の円筒体152,153内に挿通された支柱151の両端を保持することで、操作レバー101の操作をパイロット弁120の制御部130に伝達させる部材である。このホルダ160は、レバー支持部141の支持部143に突設された板状の第1ホルダ161と第2ホルダ162を含む。第1ホルダ161は、支持部143の下側端部を、支持部143から外向きに突出するように屈曲させて形成されている。第2ホルダ162は、金属板を側面視略L字状に屈曲させて形成され、一端が支持部143に溶着されている。このように、第1ホルダ161と第2ホルダ162は、レバー支持部141に対して固定されていることから、レバー支持部141が傾動したときには、第1ホルダ161と第2ホルダ162が一体的に回動する。
【0059】
第1ホルダ161には、支柱151の上側のナット156が移動可能に嵌り合う切欠き部163が設けられ、第2ホルダ162には、支柱151の下側のナット157の上に設けた平座金が移動可能に嵌り合う孔部164が設けられている。第1ホルダ161はレバー支持部141の固定部142に対して平行に配置され、第2ホルダ162の孔部164が設けられた板面は、フランジ154,155に対して平行に配置されている。第1ホルダ161および第2ホルダ162は、それぞれ一対の円筒体152,153のフランジ154,155に当接することにより、圧縮バネ159の最大伸長を規定する。支柱151を、一対の円筒体152,153と圧縮バネ159に挿通し、第1ホルダ161と第2ホルダ162との間に移動可能に設けることで、操作レバー101の操作方向と操作量に応じて、支柱151が支柱軸に沿って直線移動する。
【0060】
以上のような連動機構を備えた操作装置100においては、反力付与手段(圧縮バネ159)と規制部150の作用により、オペレータが操作する操作レバー101の操作領域に、排土装置4のブレード41を上下動させるブレードシリンダ44が作動しない、不感帯領域が設けられている。
【0061】
操作レバー101の位置が、オペレータが操作レバー101を操作しない
図7(b)に示す中立位置にあるときは、パイロット弁120のスプール125および押圧ロッド126は、復帰用バネ128により上方に付勢され、入力ポートNは排出ポートDと連通している。したがって、出力ポートUからはパイロット圧は出力されない。また、連動機構では、圧縮バネ159から受ける付勢力により、上側の円筒体152のフランジ154が第1ホルダ161に当接し、下側の円筒体153のフランジ155が第2ホルダ162に当接している。さらに、上下一対の円筒体152,153の間には所定の隙間Lが形成されている(
図8参照)。
【0062】
オペレータが操作レバー101を、運転席56の後方側となる
図7(c)に示す位置まで傾けると、操作レバー101の傾動とともに操作レバー101の基端部102が軸144まわりに回転し、基端部102に固定されているアーム146が操作レバー101の傾きと同じ角度だけ傾く。操作レバー101の傾動は、アーム146および接合部材147から成るリンク構造により支柱151の直線運動に変換され、支柱151は下方に移動する。このときの圧縮バネ159の状態は、上側の円筒体152と下側の円筒体153との間の隙間Lがなくなるまで、操作量に応じて圧縮される第1状態である。しかる後、上側の円筒体152と下側の円筒体153とは互いに接触する。これにより、上下の円筒体152,153の間には隙間がなく、上側の円筒体152のフランジ154と第1ホルダ161との間に隙間L´ができた状態となる(
図9参照)。このように、操作レバー101は圧縮バネ159の反力に抗しながら上下の円筒体152,153同士が当接するまで傾動するが、パイロット弁120の傾動部135には操作レバー101の操作量は伝達されない。このため、パイロット弁120は、ブレードシリンダ44を制御する方向切換弁113に対してパイロット圧を出力しない。したがって、オペレータによる
図7(b)に示す中立位置から
図7(c)に示す位置までの操作レバー101の操作は、不感帯領域での操作に該当する。
【0063】
不感帯領域における操作レバー101の操作において、オペレータがレバー支持部141を介して操作レバー101から受ける反力の大小は、圧縮バネ159のバネ定数により調整される。すなわち、圧縮バネ159をバネ定数が大きいバネにすれば、オペレータが操作レバー101に与える荷重も大きくなる。また、不感帯領域の操作レバー101のストロークは、一対の円筒体152,153の間の隙間Lの広狭により調整することができる。すなわち、一対の円筒体152,153の間の隙間Lを広くすれば、不感帯領域も広くなる。操作レバー101の回動範囲について、一対の円筒体152,153の間の隙間Lが存在する範囲がパイロット弁120の不感帯領域に対応するように、一対の円筒体152,153の間の隙間の大きさが設定される。
【0064】
オペレータが操作レバー101を
図7(d)に示す位置までさらに後方に傾けると、支柱151の移動は第2ホルダ162により制限される。このとき、上下の円筒体152,153および圧縮バネ159の状態は、
図7(c)の状態と同様の状態に維持される。このときの圧縮バネ159の状態は、操作レバー101が所定の操作量、すなわち不感帯領域での操作量を超えて操作された第2状態である。このように、下側の円筒体153のフランジ155が第2ホルダ162当接し、圧縮バネ159の変位がフランジ154,155によって規制されることで、支柱151の移動が制限されている。
【0065】
また、バネの変位と荷重はフックの法則(F=kx;Fは荷重、kはバネ定数、xはバネの変位量)により比例関係にあり、圧縮バネ159の変位が規制されることで、圧縮バネ159にそれ以上の荷重がかからなくなる。そうすると、さらに操作レバー101にかけられた力はレバー支持部141に作用し、レバー支持部141が操作レバー101の傾動と共に後傾することになる(
図10参照)。同時に、パイロット弁120の傾動部135も枢軸132まわりに傾動し、ボール136を介して押圧ロッド126を押圧する(
図7(d)参照)。これにより、弁本体部121側のスプール125が移動する。
【0066】
操作レバー101を前後に揺動させるときに与えられた荷重が圧縮バネ159の反力を上回るまでは、その荷重は圧縮バネ159により受けられ、圧縮バネ159の反力を上回る荷重は、パイロット弁120内の復帰用バネ128に作用することになる。復帰用バネ128のバネの初期圧縮荷重は、圧縮バネ159のバネが圧縮された(反力が規制された)ときの荷重と同等、若しくは大きい。圧縮バネ159を圧縮したときと、復帰用バネ128を圧縮したときとでは、操作レバー101の操作量(レバーストローク)あたりの反力の増加量が異なる。したがって、オペレータは、不感帯領域を超えて作動領域まで操作レバー101を操作したことを、操作レバー101からの反力の変化により認識することができる。また、オペレータは、規制部150における上下の円筒体152,153の衝突感によっても、不感帯領域を超えた作動領域での操作を認識するこができる。
【0067】
押圧ロッド126に押圧力が与えられると、圧力設定用バネ127および復帰用バネ128が圧縮変形し、スプール125が押圧ロッド126により押されて摺動する。これにより、入力ポートNと出力ポートUが連通され、出力ポートUには、圧力設定用バネ127により設定されるパイロット圧が発生する。しかる後、パイロット圧が方向切換弁113の2つのパイロットポートC1,C2の一方に入力され、接続ポートAからブレードシリンダ44に油圧が供給される。そうすると、ブレードシリンダ44が収縮し、ブレード41が上方向に回動する。
【0068】
オペレータが
図7(d)に示す位置で操作レバー101から手を放すと、押圧ロッド126への押圧力が解除され、圧縮変形した復帰用バネ128の復元力により押圧ロッド126およびスプール125が初期位置に復帰する。この前後2本のスプール摺動孔124に設けられた復帰用バネ128のそれぞれから、対応する前後2本の押圧ロッド126のそれぞれが受ける付勢力が、操作レバー101が操作されていない状態において釣り合うことで、操作レバー101が中立位置に保持される。同時に、圧縮バネ159の圧縮も解除され、上下一対の円筒体152,153が圧縮バネ159により付勢される。
【0069】
オペレータが操作レバー101を、
図7(b)に示す中立位置から運転席56の前方側となる
図7(a)に示す前側に傾けると、まず、操作レバー101の傾動とともに操作レバー101の基端部102に固定されているアーム146が傾き、それにより接合部材147を介して支柱151が引き上げられる。これにより、支柱151は、下側のナット157が平座金を介して下側の円筒体153のフランジ155に当接し、上側の円筒体152のフランジ154が第1ホルダ161に当接することよりその動きを制限されるまで上方に移動する。このときの圧縮バネ159の状態は、第1状態である。しかる後、上側の円筒体152と下側の円筒体153とは互いに接触する。これにより、上下の円筒体152,153の間には隙間がなく、下側の円筒体153のフランジ155と第2ホルダ162との間に隙間L´ができた状態となる。続いて、支柱151の移動が第1ホルダ161により制限された状態で、操作レバー101をさらに傾動させると、それに伴いレバー支持部141が前傾する(
図11参照)。このときの圧縮バネ159の状態は、第2状態である。同時に、傾動部135も枢軸132まわりに傾動し、ボール136を介して前側の押圧ロッド126が押圧される(
図7(a)参照)。
【0070】
オペレータは、操作レバー101を圧縮バネ159の反力に抗しながら上側の円筒体152と下側の円筒体153が互いに当接するまで傾けた後に、さらに操作レバー101を傾ける。オペレータは、操作レバー101を運転席56の後方側に操作したときと同様に、操作レバー101の操作領域が不感帯領域から作動領域へと切り替わったことを、操作レバー101にかかる反力の変化により認識することができる。
【0071】
押圧ロッド126に押圧力が与えられると、圧力設定用バネ127および復帰用バネ128が圧縮変形し、スプール125が押圧ロッド126により押されてスプール摺動孔124内を摺動し、入力ポートNと出力ポートUが連通される。出力ポートUには、圧力設定用バネ127により設定されるパイロット圧が発生する。これにより、パイロット圧が方向切換弁113の2つのパイロットポートC1,C2の一方に入力され、接続ポートBからブレードシリンダ44に油圧が供給される。しかる後、ブレードシリンダ44の伸長に伴いブレード41が下方向に回動する。
【0072】
以上のように、本実施形態の操作装置100では、操作レバー101の操作にパイロット弁120の出力を連動させる連動機構において、反力付与手段(圧縮バネ159)および規制部150(フランジ154を有する円筒体152、フランジ155を有する円筒体153、フランジ155に当接可能に設けられたナット157)を備えている。また、連動機構は、操作レバー101の端部と支柱151とを、アーム146および接合部材147から成るリンク構造を介して連結する連結部を備えている。
【0073】
本実施形態の操作装置100では、反力付与手段および規制部150により、オペレータが操作レバー101を中立位置から僅かに操作したときには、パイロット弁120からはパイロット圧を出力しないように操作レバー101の操作領域に不感帯領域を設けている。反力付与手段は、反力発生源として圧縮バネ159を有する。規制部は、それぞれフランジを有する上下一対の円筒体152,153と、上下一対の円筒体152,153に摺動可能に挿通され支柱151の端部に設けられたナット157有する。規制部150は、操作レバー101の揺動方向の一方に対応する第1規制部と、操作レバーの揺動方向の他方に対応する第2規制部とを有する。第1規制部は、操作レバー101を後方向に揺動させたときに支柱151の移動に伴ってフランジ154がナット156に押されて下方に移動する上側の円筒体152である。また、第2規制部は、操作レバー101を前方向に揺動させたときに、支柱151の移動に伴ってフランジ155がナット157に押されて上方に移動する下側の円筒体153である。
【0074】
圧縮バネ159は、操作レバー101の操作量に応じて圧縮される第1状態と操作レバー101が所定の操作量を超えて操作された第2状態との2つの状態で変形可能である。第1状態はフランジ154,155を有する上下一対の円筒体152,153間に設けた隙間によって規定される圧縮バネ159が圧縮変形可能な状態である。また、第2状態は、上下一対の円筒体152,153を互いに当接させたときに圧縮バネ159がそれ以上の圧縮変形が不可能な状態である。
【0075】
操作レバー101が操作され、支柱151が移動し上下一対の円筒体152,153の間の隙間がなくなるまで圧縮バネ159を圧縮する第1状態のときには、レバー支持部141へ反力を付与する。したがって、第1状態のときには、レバー支持部141には操作レバー101の操作に対して圧縮バネ159の変位方向と反対の方向の反力が働くため、操作レバー101にかけられた荷重はレバー支持部141に作用しない。レバー支持部141が傾動しないため、パイロット弁120のスプール125を摺動変位させる傾動部135も傾動せず、パイロット弁120からブレードシリンダ44に油圧を供給する方向切換弁113を作動させるパイロット圧も出力されない。
【0076】
操作レバー101が所定の操作量を超えて操作され、上下一対の円筒体152,153の間の隙間がない状態では、圧縮バネ159をそれ以上圧縮変形させることができない第2状態となる。この第2状態のときは、上下一対の円筒体152,153のフランジの一方が、第1ホルダ161およびナット157、または、第2ホルダ162およびナット156に当接しており、第1ホルダ161および第2ホルダ162の間での支柱151の摺動が制限される。このように、レバー支持部141への反力の付与が第1規制部(フランジ154)および第2規制部(フランジ155)により規制されていることで、操作レバー101の操作荷重に対してレバー支持部141に作用する反力が増加せず、レバー支持部141は操作レバー101の傾動に同期して傾動する。レバー支持部141が傾動すると、パイロット弁120のスプール125を摺動変位させる傾動部135も傾動し、パイロット弁120からブレードシリンダ44に油圧を供給する方向切換弁113を作動させるパイロット圧が出力される。
【0077】
上述のように、本実施形態の操作装置100では、一対の円筒体152,153により、圧縮バネ159の変形範囲を規定することにより、操作レバー101の不感帯領域を一定にしている。すなわち、操作レバー101の操作範囲について、一対の円筒体152,153同士が接触するまでの範囲、つまり一対の円筒体152,153間の隙間が存在する範囲が、圧縮バネ159による弾性力が操作レバー101に作用する範囲となり、不感帯領域に対応する範囲となる。
【0078】
本実施形態の操作装置100では、パイロット弁120は、スプール摺動孔124内に配置された復帰用バネ128および圧力設定用バネ127が持つばね定数等の特性に応じて作動するのに対し、不感帯領域は、パイロット弁120の外部に設けられた圧縮バネ159の特性に応じて設定される。一対の円筒体152,153のフランジ154,155が圧縮バネ159の伸縮を所定の範囲に規制することで、圧縮バネ159のバネ性の個体差によるバラツキを吸収している。これにより、操作レバー101の不感帯領域を一定にすることができる。このような不感帯領域を設定することで、パイロット弁120の内部のバネの製造バラツキや経年変化に伴う個体差によって、パイロット弁120の動き出しのタイミングにバラツキが生じない。
【0079】
本実施形態の操作装置100では、反力付与手段および規制部150の構成を、操作レバー101とともにパイロット弁120の外部に固定部142を介してねじ締結により取り付けるように構成している。このため、建設機械の既存の操作装置の操作レバーを取り払い、レバー支持部141に支持され、リンク構造を介して反力付与手段に接続された操作レバー101を部品として汎用されているパイロット弁に取り付けるだけで、不感帯領域と作動領域とので操作性に差異を有する作業機の操作装置を安価に提供することが可能となる。
【0080】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る建設機械は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、本開示に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0081】
上述した実施形態では、反力付与手段を構成する弾性部材として金属線から成る圧縮バネ159を用いたが、弾性部材としては、所定の値以上のバネ定数を有するものであれば、例えば、円筒状のゴム等を用いてもよい。
【0082】
上述した実施形態では、主に排土装置4のブレード41を上下動させる操作装置100について説明したが、本発明における操作装置は、クレーン装置等の他の作業機の操作装置として適用することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 掘削作業機(建設機械)
4 排土装置
10 操作部
20A 下部走行体
20B 上部旋回体
30 支持フレーム
41 ブレード(排土板)
43 アーム
44 ブレードシリンダ
100 操作装置
101 操作レバー
102 基端部
110 油圧回路
113 方向切換弁
120 パイロット弁
124 スプール摺動孔
125 スプール
130 制御部
131 取付部
135 傾動部
141 レバー支持部
142 固定部
150 規制部
151 支柱
152 円筒体
153 円筒体
154 フランジ
155 フランジ
157 ナット
159 圧縮バネ(反力付与手段)
160 ホルダ
161 第1ホルダ部
162 第2ホルダ部