(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】トルクリミッタ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/139 20060101AFI20250212BHJP
F16F 15/134 20060101ALI20250212BHJP
F16H 35/10 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
F16F15/139 D
F16F15/134 B
F16F15/134 D
F16H35/10 H
(21)【出願番号】P 2021126816
(22)【出願日】2021-08-02
【審査請求日】2024-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】上原 宏
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-076226(JP,A)
【文献】特開2011-117595(JP,A)
【文献】特開2005-127507(JP,A)
【文献】特開2010-065750(JP,A)
【文献】国際公開第2020/084154(WO,A2)
【文献】特開2010-286043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/139
F16F 15/134
F16H 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の第1摩擦材、及び前記第1摩擦材に対して軸方向の第2側に配置される環状の第2摩擦材、を有する摩擦機構と、
前記第1摩擦材と接触する第1接触面、及び前記第1接触面上において周方向に互いに間隔をあけて配置された径方向に延びる複数の第1排水溝、を有し、前記第1摩擦材に対して前記軸方向の第1側に配置される環状のプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートに対して前記軸方向の第1側に配置される第1サイドプレートと、
前記プレッシャプレートと前記第1サイドプレートとの間に配置され、前記プレッシャプレートを前記軸方向の第2側に付勢する付勢部材と、
前記第2摩擦材と接触する第2接触面、を有し、前記第2摩擦材に対して前記軸方向の第2側に配置され、前記第1サイドプレートと一体的に回転するように前記第1サイドプレートに取り付けられる第2サイドプレートと、
を備える、トルクリミッタ。
【請求項2】
前記第1排水溝は、径方向の外側に位置する第1外側端部と、径方向の内側に位置する第1内側端部と、を有し、
前記第1外側端部は、前記第1摩擦材の外周端に対して径方向外側に位置し、
前記第1内側端部は、前記第1摩擦材の内周端に対して径方向内側に位置する、
請求項1に記載のトルクリミッタ。
【請求項3】
前記プレッシャプレートの外周端は、前記第1摩擦材の外周端に対して径方向外側に配置され、
前記プレッシャプレートの内周端は、前記第1摩擦材の内周端に対して径方向内側に配置され、
前記第1外側端部は、前記プレッシャプレートの外周端に対して径方向内側に配置され、
前記第1内側端部は、前記プレッシャプレートの内周端に対して径方向外側に配置される、
請求項2に記載のトルクリミッタ。
【請求項4】
前記第1排水溝は、前記プレッシャプレートの内周端から外周端まで延びる、
請求項1又は2に記載のトルクリミッタ。
【請求項5】
前記第2サイドプレートは、前記第2接触面上において周方向に互いに間隔をあけて配置された径方向に延びる複数の第2排水溝を有する、
請求項1から4のいずれかに記載のトルクリミッタ。
【請求項6】
前記第2排水溝は、径方向の外側に位置する第2外側端部と、径方向の内側に位置する第2内側端部と、を有し、
前記第2外側端部は、前記第2摩擦材の外周端に対して径方向外側に位置し、
前記第2内側端部は、前記第2摩擦材の内周端に対して径方向内側に位置する、
請求項5に記載のトルクリミッタ。
【請求項7】
前記第2サイドプレートの外周端は、前記第2摩擦材の外周端に対して径方向外側に配置され、
前記第2サイドプレートの内周端は、前記第2摩擦材の内周端に対して径方向内側に配置され、
前記第2外側端部は、前記第2サイドプレートの外周端に対して径方向内側に配置され、
前記第2内側端部は、前記第2サイドプレートの内周端に対して径方向外側に配置される、
請求項6に記載のトルクリミッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクリミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジン及び電動機を備えたハイブリッド車両では、エンジン始動時等において出力側から過大なトルクがエンジン側に伝達するのを防止するために、特許文献1に示されるようなトルクリミッタが用いられている。
【0003】
特許文献1のトルクリミッタは、カバープレート、プレッシャプレート、及び摩擦ディスクを有している。摩擦ディスクに摩擦材が固定され、プレッシャプレートはコーンスプリングによってその摩擦材を押圧するように付勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように構成されたトルクリミッタでは、プレッシャプレートと摩擦材とが密着しているため、摩擦材の内周面上に水が溜まることがある。このように摩擦材の内周面上に水が溜まると、この水が摩擦材の表面に染み込み、摩擦材の特性が不安定になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、摩擦材の内周面上に水が溜まりにくくすることによって、摩擦材の摩擦特性を安定させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面に係るトルクリミッタは、摩擦機構、プレッシャプレート、第1サイドプレート、付勢部材、及び第2サイドプレートを備えている。摩擦機構は、第1摩擦材及び第2摩擦材を有する。第1摩擦材は、環状である。第2摩擦材は、第1摩擦材に対して軸方向の第2側に配置される。第2摩擦材は環状である。プレッシャプレートは環状である。プレッシャプレートは、第1接触面及び複数の第1排水溝を有する。第1接触面は、第1摩擦材と接触する面である。各第1排水溝は、第1接触面上において周方向に互いに間隔をあけて配置される。第1排水溝は、径方向に延びている。プレッシャプレートは、第1摩擦材に対して軸方向の第1側に配置されている。第1サイドプレートは、プレッシャプレートに対して軸方向の第1側に配置されている。付勢部材は、プレッシャプレートと第1サイドプレートとの間に配置されている。付勢部材は、プレッシャプレートを軸方向の第2側に付勢する。第2サイドプレートは、第2摩擦材と接触する第2接触面を有する。第2サイドプレートは、第2摩擦材に対して軸方向の第2側に配置される。第2サイドプレートは、第1サイドプレートと一体的に回転するように第1サイドプレートに取り付けられる。
【0008】
この構成によれば、第1摩擦材の内周面上に溜まった水は、第1排水溝を介して外部へと排出することができる。このため、第1摩擦材の内周面上に水が溜まりにくくなり、第1摩擦材の摩擦特性を安定させることができる。
【0009】
好ましくは、第1排水溝は、径方向の外側に位置する第1外側端部と、径方向の内側に位置する第1内側端部と、を有する。第1外側端部は、第1摩擦材の外周端に対して径方向外側に位置する。第1内側端部は、第1摩擦材の内周端に対して径方向内側に位置する。
【0010】
プレッシャプレートの外周端は、第1摩擦材の外周端に対して径方向外側に配置されていてもよい。そして、プレッシャプレートの内周端は、第1摩擦材の内周端に対して径方向内側に配置されていてもよい。第1外側端部は、プレッシャプレートの外周端に対して径方向内側に配置されていてもよい。第1内側端部は、プレッシャプレートの内周端に対して径方向外側に配置されていてもよい。
【0011】
第1排水溝は、プレッシャプレートの内周端から外周端まで延びていてもよい。
【0012】
好ましくは、第2サイドプレートは、複数の第2排水溝を有する。各第2排水溝は、第2接触面上において周方向に互いに間隔をあけて配置されている。第2排水溝は、径方向に延びる。この構成によれば、第2摩擦材の内周面上に溜まった水は、第2排水溝を介して外部へと排出することができる。このため、第2摩擦材の内周面上に水が溜まりにくくなり、第2摩擦材の摩擦特性を安定させることができる。
【0013】
好ましくは、第2排水溝は、径方向の外側に位置する第2外側端部と、径方向の内側に位置する第2内側端部と、を有する。第2外側端部は、第2摩擦材の外周端に対して径方向外側に位置する。第2内側端部は、第2摩擦材の内周端に対して径方向内側に位置する。
【0014】
好ましくは、第2サイドプレートの外周端は、第2摩擦材の外周端に対して径方向外側に配置される。第2サイドプレートの内周端は、第2摩擦材の内周端に対して径方向内側に配置される。第2外側端部は、第2サイドプレートの外周端に対して径方向内側に配置される。第2内側端部は、第2サイドプレートの内周端に対して径方向外側に配置される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、摩擦材の内周面上に水が溜まりにくくなり、摩擦材の摩擦特性を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
[全体構成]
図1は、本実施形態に係るトルクリミッタを有するダンパ装置100の断面図である。また、
図2はダンパ装置100の正面図であり、一部の部材を取り外して、又は部材の一部を削除して示している。
図1において、ダンパ装置100の右側にエンジンが配置され、左側に電動機や変速装置等を含む駆動ユニットが配置される。
【0018】
なお、以下の説明において、軸方向とは、トルクリミッタの回転軸Oが延びる方向である。また、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。また、本実施形態において、軸方向の第1側とは、
図1の左側であり、軸方向の第2側とは
図1の右側である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、ダンパ装置100は、図示しないフライホイールと駆動ユニットの入力軸との間に設けられている。そして、ダンパ装置100は、エンジンと駆動ユニットとの間で伝達されるトルクを制限するとともに、回転変動を減衰するように構成されている。ダンパ装置100は、ダンパユニット2と、トルクリミッタ10と、を有している。
【0020】
[ダンパユニット2]
ダンパユニット2は、トルクリミッタ10の回転軸Oを中心に回転可能に配置されている。すなわち、ダンパユニット2の回転軸は、トルクリミッタ10の回転軸と同軸上にある。ダンパユニット2は、第1入力プレート21、第2入力プレート22、ハブフランジ23、及び複数の弾性部材24を有している。ダンパユニット2は、回転変動を減衰するように構成されている。
【0021】
<第1及び第2入力プレート>
第1入力プレート21及び第2入力プレート22は、ともに中心孔を有する環状の部材である。第2入力プレート22は、第1入力プレート21に対して、軸方向の第2側に配置されている。第2入力プレート22は、第1入力プレート21よりも大きい外径を有している。第2入力プレート22の外周端部は、後述する一対の摩擦材41,42によって挟まれている。
【0022】
第1入力プレート21と第2入力プレート22とは、軸方向において互いに間隔をあけて配置されている。第1入力プレート21と第2入力プレート22とは、複数のストップピン26によって、互いに固定されている。したがって、第1入力プレート21と第2入力プレート22とは、互いに一体的に回転する。また、第1入力プレート21と第2入力プレート22とは、軸方向に相対的に移動不能である。
【0023】
第1入力プレート21は、複数の第1窓部211と、複数の第2窓部212とを有している。なお、本実施形態では、第1入力プレート21は、一対の第1窓部211と、一対の第2窓部212とを有している。
【0024】
第2入力プレート22は、複数の第3窓部221と、複数の4窓部222とを有している。なお、本実施形態では第2入力プレート22は、一対の第3窓部221と、一対の第4窓部222とを有している。第3窓部221は、上記第1窓部211と同様の構成であり、第4窓部222は、上記第2窓部212と同様の構成である。
【0025】
第3窓部221は、軸方向視において、第1窓部211と重複する位置に配置されている。また、第4窓部222は、軸方向視において、第2窓部212と重複する位置に配置されている。
【0026】
<ハブフランジ23>
ハブフランジ23は、第1及び第2入力プレート21,22からのトルクを出力側の装置に伝達するように構成されている。ハブフランジ23は、ハブ27、及びフランジプレート28(出力プレートの一例)を有している。ハブ27とフランジプレート28とは、
図2に示すように、複数の歯と、この歯が噛み合う複数の凹部と、によって一体化されている。
【0027】
ハブ27は筒状の部材であり、第1入力プレート21及び第2入力プレート22の中心孔内に配置されている。ハブ27の内周部には、軸方向に延びるスプライン孔が形成されている。このスプライン孔に出力側の部材がスプライン係合可能である。
【0028】
フランジプレート28は、軸方向において、第1入力プレート21と第2入力プレート22との間に配置されている。フランジプレート28は、複数の第1収容孔281と、複数の第2収容孔282と、複数のストッパ孔283とを有している。なお、本実施形態では、フランジプレート28は、一対の第1収容孔281と、一対の第2収容孔282と、4つのストッパ孔283とを有している。
【0029】
第1収容孔281は、軸方向視において、第1窓部211及び第3窓部221と重複する位置に配置されている。第2収容孔282は、軸方向視において、第2窓部212及び第4窓部222と重複する位置に配置されている。
【0030】
第2収容孔282は、第1収容孔281よりも径方向内側に配置されている。第2収容孔282は円弧状に形成されている。周方向において、第2収容孔282の長さは、第2窓部212及び第4窓部222の長さより長い。
【0031】
ストッパ孔283は、円弧状に延びる長孔である。ストッパ孔283にはストップピン26が軸方向に貫通している。このため、第1及び第2入力プレート21,22とフランジプレート28とは、ストップピン26がストッパ孔283内において移動可能な範囲で相対回転可能である。言い換えれば、ストップピン26とストッパ孔283とによってストッパ機構が構成されている。第1及び第2入力プレート21,22とハブフランジ23とは、ストップピン26がストッパ孔283の周方向の端面に当接することによって、互いの相対回転が禁止される。
【0032】
<弾性部材>
弾性部材24は、第1及び第2入力プレート21,22とフランジプレート28とを回転方向に弾性的に連結するように構成されている。弾性部材24は、例えば、コイルスプリングである。
【0033】
弾性部材24は、フランジプレート28の第1収容孔281に収容されている。また、弾性部材24は、第1入力プレート21の第1窓部211に収容されるとともに、第2入力プレート22の第3窓部221にも収容されている。なお、弾性部材24は、第1窓部211及び第3窓部221の支持部によって軸方向及び径方向に支持されている。
【0034】
弾性部材24は、スプリングシート30を介して、第1収容孔281、第1窓部211、及び第3窓部221それぞれの周方向両端面に支持されている。スプリングシート30は、フランジプレート28の第1収容孔281の周方向の両端部に配置されている。スプリングシート30は、弾性部材24の端面を支持する。また、スプリングシート30は、径方向の外側から弾性部材24の端部を支持する。
【0035】
<樹脂部材>
樹脂部材31は、フランジプレート28の第2収容孔282に収容されている。また、樹脂部材31は、第1入力プレート21及び第2入力プレート22の各窓部212,222の支持部によって、支持されている。
【0036】
なお、樹脂部材31は、第1及び第2入力プレート21,22の各窓部212,222に対して、周方向に隙間なく配置されている。一方、樹脂部材31は、フランジプレート28の第2収容孔282の周方向の長さよりも短い。
【0037】
[トルクリミッタ10]
トルクリミッタ10は、ダンパユニット2に対して径方向外側に配置されている。トルクリミッタ10は、フライホイールとダンパユニット2との間で伝達されるトルクを制限するように構成されている。
【0038】
トルクリミッタ10は、摩擦機構4、プレッシャプレート5、第1サイドプレート6、第2サイドプレート7、及びコーンスプリング8(付勢部材の一例)を有している。
【0039】
<摩擦機構>
摩擦機構4は、第1摩擦材41及び第2摩擦材42を有している。第1摩擦材41及び第2摩擦材42は、環状である。本実施形態において、第1摩擦材41と第2摩擦材42とは、同じ形状である。第2摩擦材42は、第1摩擦材41に対して、軸方向の第2側に配置されている。
【0040】
軸方向において、第1摩擦材41と第2摩擦材42との間には、第2入力プレート22の外周端部が配置されている。第2入力プレート22の外周端部は、第1摩擦材41と第2摩擦材42とによって挟まれている。第1摩擦材41と第2摩擦材42は、第2入力プレート22の外周端部と接触している。
【0041】
第1摩擦材41及び第2摩擦材42は、第2入力プレート22に対して相対回転可能である。このため、所定値以上のトルクがトルクリミッタ10に入力されると、第1摩擦材41及び第2摩擦材42は、第2入力プレート22と摺動し、トルクリミッタ10は、第2入力プレート22に対して相対回転する。なお、所定値未満のトルクがトルクリミッタ10に入力されると、第1摩擦材41及び第2摩擦材42は、第2入力プレート22と摩擦係合して一体的に回転する。
【0042】
<プレッシャプレート>
プレッシャプレート5は、環状である。プレッシャプレート5は、第1摩擦材41に対して、軸方向の第1側に配置されている。
【0043】
図3に示すように、プレッシャプレート5は、第1接触面51、及び複数の第1排水溝52を有している。第1接触面51は、周方向に延びる環状である。第1接触面51は、第1摩擦材41と接触する面である。軸方向視において、第1接触面51は、第1摩擦材41と重複している。なお、第1摩擦材41は、プレッシャプレート5の第1接触面51に接触した状態で、プレッシャプレート5に固定されている。すなわち、第1摩擦材41は、プレッシャプレート5に対して相対回転不能である。第1摩擦材41は、プレッシャプレート5と一体的に回転する。
【0044】
各第1排水溝52は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。第1排水溝52は、第1接触面51上に形成されている。第1排水溝52は、径方向に延びている。第1排水溝52の長さは、第1摩擦材41の内周端411から外周端412までの長さよりも長い。
【0045】
図4は、
図3のIV-IV線断面図である。
図4に示すように、第1排水溝52は、第1外側端部521と、第1内側端部522を有している。第1外側端部521は、第1排水溝52の両端部のうち、径方向の外側に位置する端部である。第1内側端部522は、第1排水溝52の両端部のうち、径方向の内側に位置する端部である。
【0046】
第1外側端部521は、第1摩擦材41の外周端412に対して径方向外側に配置されている。すなわち、軸方向視において、第1外側端部521は、第1摩擦材41と重複していない。このため、第1外側端部521は、軸方向に開口している。具体的には、第1外側端部521は、軸方向の第2側に開口している。
【0047】
第1内側端部522は、第1摩擦材41の内周端411に対して径方向内側に配置されている。すなわち、軸方向視において、第1内側端部522は、第1摩擦材41と重複していない。このため、第1内側端部522は、軸方向に開口している。具体的には、第1内側端部522は、軸方向の第2側に開口している。
【0048】
なお、第1排水溝52のうち、第1外側端部521と第1内側端部522との間にある第1中央部523は、軸方向視において、第1摩擦材41と重複している。すなわち、第1排水溝52の第1中央部523は、第1摩擦材41によって塞がれている。
【0049】
このように構成されているため、第1摩擦材41の内周面上に溜まった水は、第1排水溝52の第1内側端部522から第1排水溝52内へ侵入する。そして、第1排水溝52内に侵入した水は、第1外側端部521から外部へと排出される。このため、第1摩擦材41の内周面上に水が溜まることが抑制される。なお、第1摩擦材41のプレッシャプレート5を向く面上において、内周端411から外周端412まで延びる排水溝は形成されていないが、そのような排水溝が第1摩擦材41に形成されていてもよい。
【0050】
プレッシャプレート5の内周端53から外周端54までの長さは、第1摩擦材41の内周端411から外周端412までの長さよりも長い。プレッシャプレート5の外周端54は、第1摩擦材41の外周端412に対して径方向外側に配置されている。また、プレッシャプレート5の内周端53は、第1摩擦材41の内周端411に対して径方向内側に配置されている。
【0051】
第1排水溝52の長さは、プレッシャプレート5の内周端53から外周端54までの長さよりも短い。第1排水溝52の第1外側端部521は、プレッシャプレート5の外周端54に対して径方向内側に配置されている。第1排水溝52の第1内側端部522は、プレッシャプレート5の内周端53に対して径方向外側に配置されている。
【0052】
図1に示すように、プレッシャプレート5は、その内周面が第1入力プレート21の外周面と対向しないように配置されている。このため、プレッシャプレート5と第1入力プレート21とは互いに干渉しない。
【0053】
プレッシャプレート5の外径は、第2サイドプレート7の外径よりも小さい。プレッシャプレート5の内径は、第2サイドプレート7の内径よりも大きい。また、プレッシャプレート5の内径は、第1サイドプレート6の内径よりも小さい。プレッシャプレート5の板厚は、第2サイドプレート7の板厚よりも薄い。
【0054】
プレッシャプレート5の内径は、第1入力プレート21の外径と同じである。また、プレッシャプレート5の板厚は、第1入力プレート21の板厚と同じである。このため、1枚のプレートから、プレッシャプレート5と第1入力プレート21とを取り出すことができる。また、径方向において、プレッシャプレート5と第1入力プレート21との間に隙間が無く不要な部分ができないため、低コスト化することができる。
【0055】
径方向視において、プレッシャプレート5とフランジプレート28とは少なくとも一部が重複している。プレッシャプレート5の内周面は、フランジプレート28の外周面と対向している。そして、プレッシャプレート5の内径は、フランジプレート28の外径よりも大きい。このため、径方向において、プレッシャプレート5の内周面とフランジプレート28の外周面との間には隙間が形成されている。
【0056】
<第2サイドプレート>
第2サイドプレート7は、環状である。第2サイドプレート7は、第2摩擦材42に対して、軸方向の第2側に配置されている。第2サイドプレート7は、外周部71と内周部72とを有する。第2サイドプレート7は、内周部72において、コーンスプリング8による付勢力を受けている。
【0057】
図5に示すように、第2サイドプレート7は、第2接触面73、及び複数の第2排水溝74を有している。第2接触面73は、周方向に延びる環状である。第2接触面73は、第2摩擦材42と接触する面である。軸方向視において、第2接触面73は、第2摩擦材42と重複している。
【0058】
第2摩擦材42は、第2サイドプレート7の第2接触面73に接触した状態で、第2サイドプレート7に固定されている。詳細には、第2摩擦材42は、第2サイドプレート7の内周部72に固定されている。このため、第2摩擦材42は、第2サイドプレート7に対して相対回転不能である。第2摩擦材42は、第2サイドプレート7と一体的に回転する。
【0059】
各第2排水溝74は、周方向において互いに間隔をあけて配置されている。第2排水溝74は、第2接触面73上に形成されている。第2排水溝74は、径方向に延びている。第2排水溝74の長さは、第2摩擦材42の内周端421から外周端422までの長さよりも長い。
【0060】
図6は、
図5のVI-VI線断面図である。
図6に示すように、第2排水溝74は、第2外側端部741と、第2内側端部742を有している。第2外側端部741は、第2排水溝74の両端部のうち、径方向の外側に位置する端部である。第2内側端部742は、第2排水溝74の両端部のうち、径方向の内側に位置する端部である。
【0061】
第2外側端部741は、第2摩擦材42の外周端422に対して径方向外側に配置されている。すなわち、軸方向視において、第2外側端部741は、第2摩擦材42と重複していない。このため、第2外側端部741は、軸方向に開口している。詳細には、第2外側端部741は、軸方向の第1側に開口している。
【0062】
第2内側端部742は、第2摩擦材42の内周端421に対して径方向内側に配置されている。すなわち、軸方向視において、第2内側端部742は、第2摩擦材42と重複していない。このため、第2内側端部742は、軸方向に開口している。詳細には、第2内側端部742は、軸方向の第1側に開口している。
【0063】
なお、第2排水溝74のうち、第2外側端部741と第2内側端部742との間にある第2中央部743は、軸方向視において、第2摩擦材42と重複している。すなわち、第2排水溝74の第2中央部743は、第2摩擦材42によって塞がれている。
【0064】
このように構成されているため、第2摩擦材42の内周面上に溜まった水は、第2排水溝74の第2内側端部742から第2排水溝74内へ侵入する。そして、第2排水溝74内に侵入した水は、第2外側端部741から外部へと排出される。このため、第2摩擦材42の内周面上に水が溜まることが抑制される。なお、第2摩擦材42の第2サイドプレート7を向く面上において、内周端421から外周端422まで延びる排水溝は形成されていないが、そのような排水溝が第2摩擦材42に形成されていてもよい。
【0065】
第2サイドプレート7の内周端75から外周端76までの長さは、第2摩擦材42の内周端421から外周端422までの長さよりも長い。第2サイドプレート7の外周端76は、第2摩擦材42の外周端422に対して径方向外側に配置されている。また、第2サイドプレート7の内周端75は、第2摩擦材42の内周端421に対して径方向内側に配置されている。
【0066】
第2排水溝74の長さは、第2サイドプレート7の内周端75から外周端76までの長さよりも短い。第2排水溝74の第2外側端部741は、第2サイドプレート7の外周端76に対して径方向内側に配置されている。第2排水溝74の第2内側端部742は、第2サイドプレート7の内周端75に対して径方向外側に配置されている。
【0067】
図1に示すように、第2サイドプレート7は、その内周面がフランジプレート28の外周面と対向しないように配置されている。このため、第2サイドプレート7とフランジプレート28とは互いに干渉しない。なお、内周面とは、径方向において内側を向く面であり、外周面とは、径方向において外側を向く面である。
【0068】
第2サイドプレート7の内径は、フランジプレート28の外径と同じである。また、第2サイドプレート7の板厚は、フランジプレート28の板厚と同じである。このため、1枚のプレートから、第2サイドプレート7とフランジプレート28とを取り出すことができる。また、径方向において、第2サイドプレート7とフランジプレート28との間に隙間が無く不要な部分ができないため、低コスト化することができる。
【0069】
<第1サイドプレート>
第1サイドプレート6は、プレッシャプレート5に対して、軸方向の第1側に配置されている。第1サイドプレート6は、リベット101などによって、第2サイドプレート7に固定されている。このため、第1サイドプレート6は、第2サイドプレート7と一体的に回転する。
【0070】
第1サイドプレート6は、環状である。第1サイドプレート6は、その内周面が第2入力プレート22の外周面と対向しないように配置されている。このため、第1サイドプレート6と第2入力プレート22とは、互いに干渉しない。
【0071】
第1サイドプレート6の外径は、第2サイドプレート7の外径と略同じである。第1サイドプレート6の内径は、第2サイドプレート7の内径よりも大きい。第1サイドプレート6の外周部61は、第2サイドプレート7の外周部71と接触している。一方、第1サイドプレート6の内周部62は、第2サイドプレート7と軸方向において間隔をあけて配置されている。第1サイドプレート6の板厚は、第2サイドプレート7の板厚よりも薄い。
【0072】
第1サイドプレート6の内径は、第2入力プレート22の外径と同じである。また、第1サイドプレート6の板厚は、第2入力プレート22の板厚と同じである。このため、1枚のプレートから、第1サイドプレート6と第2入力プレート22とを取り出すことができる。また、径方向において、第1サイドプレート6と第2入力プレート22との間に隙間が無く不要な部分ができないため、低コスト化することができる。
【0073】
<コーンスプリング>
コーンスプリング8は、軸方向において、プレッシャプレート5と第1サイドプレート6との間に配置されている。コーンスプリング8は、プレッシャプレート5を軸方向の第2側に付勢している。すなわち、コーンスプリング8は、プレッシャプレート5を第2サイドプレート7に向かって付勢している。コーンスプリング8は、プレッシャプレート5を介して、第1摩擦材41を第2入力プレート22に向かって押圧している。
【0074】
コーンスプリング8の外周端部は、第1サイドプレート6の内周部62に当接している。コーンスプリング8の内周端部は、プレッシャプレート5に当接している。
【0075】
[動作]
エンジンからフライホイールに伝達されたトルクは、トルクリミッタ10を介してダンパユニット2に入力される。ダンパユニット2では、第1及び第2入力プレート21,22にトルクが入力され、このトルクは、弾性部材24及び樹脂部材31を介してハブフランジ23に伝達される。そして、ハブフランジ23から、出力側の電動機、発電機、変速機等に動力が伝達される。
【0076】
また、例えば、エンジン始動時においては、出力側の慣性量が大きいために、出力側からエンジンに過大なトルクが伝達される場合がある。このような場合は、トルクリミッタ10によってエンジン側に伝達されるトルクが所定値以下に制限される。
【0077】
[変形例]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0078】
(a)上記実施形態では、第1排水溝52の長さは、プレッシャプレート5の内周端53から外周端54までの長さよりも短くなっているが、第1排水溝52の構成はこれに限定されない。例えば、
図7及び
図8に示すように、第1排水溝52Aは、プレッシャプレート5Aの内周端53Aから外周端54Aまで延びていてもよい。すなわち、第1排水溝52Aの長さは、プレッシャプレート5Aの内周端53Aから外周端54Aまでの長さと同じとなっていてもよい。
【0079】
この場合、第1摩擦材41Aの面積を上記実施形態の第1摩擦材41よりも大きくすることができる。例えば、第1摩擦材41Aの外周端412Aの径方向位置を、プレッシャプレート5Aの外周端54Aと同じにすることができる。この場合、第1排水溝52Aの第1外側端部521Aは、径方向外側に開口する。
【0080】
(b)上記実施形態では、第1摩擦材41は、プレッシャプレート5に固定されていたが、トルクリミッタ10の構成は、これに限定されない。例えば、第1摩擦材41は、第2入力プレート22の外周端部に固定されていてもよい。すなわち、第1摩擦材41は、プレッシャプレート5の第1接触面51と摩擦係合していてもよい。
【0081】
(c)上記実施形態では、第2摩擦材42は、第2サイドプレート7に固定されていたが、トルクリミッタ10の構成は、これに限定されない。例えば、第2摩擦材42は、第2入力プレート22の外周端部に固定されていてもよい。すなわち、第2摩擦材42は、第2サイドプレート7の第2接触面73と摩擦係合していてもよい。
【0082】
(d)上記実施形態では、第2サイドプレート7が第2排水溝74を有していたが、第2サイドプレート7の構成はこれに限定されない。すなわち、第2サイドプレート7は第2排水溝74を有していなくてもよい。この場合、例えば、第2摩擦材42に排水溝を形成することが好ましい。詳細には、第2摩擦材42の第2サイドプレート7と接する面に排水溝を形成することが好ましい。
【0083】
(e)上記実施形態では、トルクリミッタ10は、ダンパ装置100の一部を構成しているが特にこれに限定されない。例えば、トルクリミッタ10は、ダンパユニットではない別の部材に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0084】
4 :摩擦機構
41 :第1摩擦材
411 :内周端
412 :外周端
42 :第2摩擦材
421 :内周端
422 :外周端
5 :プレッシャプレート
51 :第1接触面
52 :第1排水溝
521 :第1外側端部
522 :第1内側端部
53 :内周端
54 :外周端
6 :第1サイドプレート
7 :第2サイドプレート
73 :第2接触面
74 :第2排水溝
741 :第2外側端部
742 :第2内側端部
75 :内周端
76 :外周端
8 :コーンスプリング
10 :トルクリミッタ