(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/49 20060101AFI20250212BHJP
A61F 13/496 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A61F13/49 315Z
A61F13/49 319
A61F13/496
A61F13/49 312
(21)【出願番号】P 2021133036
(22)【出願日】2021-08-17
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】南岡 政宏
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-118554(JP,A)
【文献】特開2018-108338(JP,A)
【文献】特開2010-284228(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0120240(US,A1)
【文献】特表2000-513642(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112566595(CN,A)
【文献】特開2020-025788(JP,A)
【文献】特開2012-070868(JP,A)
【文献】特開2019-208621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体とを備え、
着用者の腹側に配される腹側部と、着用者の背側に配される背側部と、該腹側部及び該背側部の間に位置する股下部とを有し、一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されているパンツ型吸収性物品であって、
着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向と直交する横方向を有し、
前記外装体における前記横方向の長さが最も短い最幅狭部が、該外装体の前記縦方向の全長を二等分し前記横方向に延びる縦方向中央線よりも前記腹側部側に、位置しており、
前記外装体は、少なくとも前記股下部に、前記縦方向に伸縮する縦方向伸縮シートが配された縦方向伸縮領域を有しており、
前記縦方向伸縮シートは、前記縦方向中央線よりも前記腹側部側の部分が、該縦方向中央線よりも前記背側部側の部分に比して前記縦方向の長さが長く、
前記縦方向伸縮シートの前記縦方向の中央位置と前記吸収性本体の前記縦方向の中央位置とが一致している、パンツ型吸収性物品。
【請求項2】
前記縦方向伸縮シートは、前記吸収性本体と前記縦方向の長さが同じである、請求項1に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
前記縦方向伸縮シートの前記横方向の長さが、前記吸収性本体の前記横方向の長さ以上である、請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
前記腹側部と前記背側部とが筒状に連結された胴周り部を有し、
前記縦方向において、前記縦方向伸縮シートの前記腹側部側の端部は、該腹側部の前記胴周り部まで達しており、前記縦方向伸縮シートの前記背側部側の端部は、該背側部の前記胴周り部まで達していない、請求項1~3のいずれか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
前記腹側部と前記背側部とが筒状に連結された胴周り部を有し、
前記胴周り部は、前記横方向に伸縮する横方向伸縮シートを有しており、
前記横方向伸縮シートは、前記横方向に延びるように配された弾性フィラメントが2枚の不織布の間に接合されている伸縮シートから構成されており、
前記縦方向伸縮シートは、前記縦方向に延びるように配された弾性フィラメントが2枚の不織布の間に接合されている伸縮シートから構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
前記腹側部と前記背側部とが筒状に連結された胴周り部を有し、
前記胴周り部は、前記横方向に伸縮する横方向伸縮シートを有しており、
前記横方向伸縮シートと前記縦方向伸縮シートとは、同種の伸縮シートである、請求項1~5のいずれか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
前記腹側部と前記背側部とが筒状に連結された胴周り部を有し、
前記胴周り部は、前記横方向に伸縮する横方向伸縮シートを有しており、
前記横方向伸縮シートと前記縦方向伸縮シートとは、伸長率が異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項8】
前記外装体は、前記ウエスト開口部の周縁部に、前記横方向に沿ってウエスト弾性部材が配されており、
前記外装体は、前記ウエスト弾性部材以外には、糸状又は帯状の弾性部材を有していない、請求項1~7のいずれか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項9】
前記腹側部と前記背側部とが筒状に連結された胴周り部を有し、
前記胴周り部は、前記横方向に伸縮する横方向伸縮シートを有しており、
前記横方向伸縮シートは、前記縦方向中央線よりも前記背側部側の方が前記腹側部側よりも、前記縦方向の長さが長い、請求項1~8のいずれか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【請求項10】
前記縦方向伸縮シートは、前記吸収性本体と前記縦方向の長さが同じであり、前記縦方向中央線よりも前記腹側部側の前記縦方向の長さが、該縦方向中央線よりも前記背側部側の前記縦方向の長さの1.2倍以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載のパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用者の腹側に配される腹側部と、着用者の背側に配される背側部と、該腹側部及び該背側部の間に位置する股下部とを有し、一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されているパンツ型吸収性物品が知られている(特許文献1及び2参照)。このようなパンツ型吸収性物品では、該吸収性物品の着用者の動作時、例えば、該着用者の着席時や歩行時等に臀部の皮膚が延びることを考慮して、外装体における背側部の縦方向の長さを腹側部の縦方向の長さよりも長くするために、外装体における幅方向の長さが最も狭い最幅狭部を腹側部寄りに配することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-118554号公報
【文献】特開2016―67511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品を着用したときに、着用者の脚は、該吸収性物品における最幅狭部に対応する部分に収まるので、最幅狭部が腹側部寄りに配されている場合、吸収性物品を自然に着用したときに、ウエスト開口部の周縁の位置が、腹側部の方が背側部よりも低くなってしまう場合がある。これに対し、最幅狭部を背側部寄りに配されている場合、外装体における、着用者の臀部を覆う部分の面積が相対的に少なくなり、フィット性が悪化してしまう。
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体とを備え、
着用者の腹側に配される腹側部と、着用者の背側に配される背側部と、該腹側部及び該背側部の間に位置する股下部とを有し、一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されているパンツ型吸収性物品に関する。
前記パンツ型吸収性物品は、着用者の前後方向に対応する縦方向及び該縦方向と直交する横方向を有する。
前記パンツ型吸収性物品は、前記外装体における前記横方向の長さが最も短い最幅狭部が、該外装体の前記縦方向の全長を二等分し前記横方向に延びる縦方向中央線よりも前記腹側部側に、位置している。
前記外装体は、少なくとも前記股下部に、前記縦方向に伸縮する縦方向伸縮シートが配された縦方向伸縮領域を有している。
前記縦方向伸縮シートは、前記縦方向中央線よりも前記腹側部側の部分が、該縦方向中央線よりも前記背側部側の部分に比して前記縦方向の長さが長い。
前記縦方向伸縮シートの前記縦方向の中央位置と前記吸収性本体の前記縦方向の中央位置とが一致している。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、着用したときに、ウエスト開口部の周縁が適切な位置に配されるとともに、フィット性に優れるパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明のパンツ型吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつの展開且つ伸長状態における肌対向面(内面)側を模式的に示す展開平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すおむつの着用状態を示す側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すおむつに係る伸縮シートの一例を模式的に示す一部破断斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明のパンツ型吸収性物品の別の実施形態であるパンツ型使い捨ておむつの展開且つ伸長状態における肌対向面(内面)側を模式的に示す展開平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
図1~
図3に本発明のパンツ型吸収性物品の一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ(以下、「おむつ」と言う。)1を示す。おむつ1は、
図1~
図3に示すとおり、着用時に着用者の腹側に配される腹側部Aと、該着用者の背側に配される背側部Bと、その間に位置する股下部Cとを備える。またおむつ1は、着用者の前後方向に対応する縦方向X及び該縦方向Xと直交する横方向Yを有する。縦方向Xは、腹側部Aから股下部Cを介して背側部Bに延びる方向である。
【0009】
おむつ1は、
図1~
図3に示すとおり、吸収性本体2と、該吸収性本体2の非肌対向面側に配された外装体3とを備えている。外装体3は、腹側部Aに配される腹側外装体3Aと、背側部Bに配される背側外装体3Bと、股下部Cに配される股下外装体3Cとを含んでいる。
【0010】
おむつ1は、腹側外装体3Aの縦方向Xに沿う両側部3e,3eと、背側外装体3Bの縦方向Xに沿う両側部3f,3fとが接合されて一対のサイドシール部S,S、ウエスト開口部WH及び一対のレッグ開口部LH,LHが形成されている。またおむつ1は、腹側部Aと背側部Bとが筒状に連結された胴周り部Dを有する。
【0011】
吸収性本体2は、
図1に示すように、平面視長方形形状を有し、その長手方向をおむつ1の縦方向Xに一致させて、外装体3の横方向Yの中央部に配置され、腹側部Aから股下部Cを介して背側部Bにわたって縦方向Xに延在している。
吸収性本体2は、
図2に示すとおり、吸収体23、該吸収体23の肌対向面側に配された表面シート21及び該吸収体23の非肌対向面側に配された裏面シート22を有する。
吸収体23は、吸収性本体2と同様に、おむつ1の縦方向Xに長い形状を有しており、表面シート21と裏面シート22との間に介在配置されている。
表面シート21、吸収体23及び裏面シート22は、接着剤による接着、融着等の公知の接合手段により、一体化されている。
【0012】
「肌対向面」は、おむつ1又はその構成部材(例えば吸収体23)に着目したときに、おむつ1の着用時に着用者の肌に向けられる面であり、「非肌対向面」は、おむつ1の着用時に着用者の肌とは反対側に向けられる面である。また「着用時」及び「着用状態」は、おむつ1の適正な着用位置が維持されて着用された状態を指す。
【0013】
外装体3は、上述のとおり、腹側外装体3Aと背側外装体3Bと股下外装体3Cとを含んでいる。本実施形態では、これら複数の外装体3A~3Cどうしが縦方向Xに連接されて1枚の連続した形状を有する外装体3を形成している。外装体3は、吸収性本体2よりも面積が大きく、吸収性本体2の周縁から外方に延出している。外装体3は、
図1に示す如き展開且つ伸長状態のおむつ1の平面視において、股下外装体3Cを含む縦方向Xの中央部が括れており、外装体3全体として砂時計形状を有している。外装体3における横方向Yの長さが最も短い最幅狭部3gが、該外装体3の縦方向Xの全長Lを二等分し横方向Yに延びる縦方向中央線Lxよりも腹側部A側に、位置している。
【0014】
図1に示す実施形態においては、腹側外装体3A及び背側外装体3Bは、外層シート32、該外層シート32の肌対向面側に配された内層シート31と、両シート31,32間に配された複数本の糸状又は帯状の弾性部材33とを有する。弾性部材33は、伸長状態で外装体3を構成するシートに固定されている。弾性部材33は、ウエスト開口部WHの周縁部WEに、横方向Yに沿って配されたウエスト弾性部材33wを含んでいる。
外装体3は、少なくとも股下部Cに縦方向伸縮領域41を有している。縦方向伸縮領域41は、外装体3の厚み方向の全域にわたっている。縦方向伸縮領域41には、縦方向Xに伸縮する縦方向伸縮シート42が配されている。縦方向伸縮シート42は、縦方向Xの伸縮性を阻害しない他の部材と重なる部分を有していてもよい。本実施形態では、股下外装体3Cは、縦方向伸縮シート42により形成されている。縦方向伸縮シート42の肌対向面側に内層シート31が積層されていてもよい。内層シート31は、縦方向伸縮シート42の伸縮を阻害しないシートであることが好ましい。
【0015】
おむつ1では、縦方向伸縮シート42は、縦方向中央線Lxよりも腹側部A側の部分42Aが、縦方向中央線Lxよりも背側部B側の部分42Bに比して縦方向Xの長さが長くなっている。こうすることの利点は以下のとおりである。おむつ1は、上述のように、最幅狭部3gが、縦方向中央線Lxよりも腹側部A側に位置している。これにより、外装体3は、背側部B側が腹側部A側に比して縦方向Xの長さが長くなり、着用者の臀部を覆う背側部Bの面積が相対的に大きくなるので、おむつ1のフィット性が向上している。従来のおむつでは、最幅狭部3gを縦方向中央線Lxよりも腹側部A側に位置させた場合、
図3に示すように、該おむつの着用時に、ウエスト開口部WHの周縁WSの位置が、腹側部Aの方が背側部Bよりも低くなってしまう場合がある。これに対し、本実施形態のおむつ1は、縦方向伸縮シート42における縦方向中央線Lxよりも腹側部A側の部分42Aが背側部B側の部分42Bに比して縦方向Xの長さが長くなっているので、該縦方向伸縮シート42が縦方向Xに伸縮することにより、外装体3が全体として腹側部A側に引っ張られることになる。これにより、ウエスト開口部WHの周縁WEの位置が、腹側部Aの方が背側部Bよりも低くなってしまうことを防ぐことができ、ウエスト開口部WHの周縁WEが適切な位置に配されるようにすることができる。
このように本実施形態のおむつ1によれば、ウエスト開口部WHの周縁が適切な位置に配されるとともに、フィット性に優れる。
【0016】
前述した効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、縦方向伸縮シート42における縦方向中央線Lxよりも腹側部A側の部分42Aの縦方向Xの長さLaは、縦方向伸縮シート42における縦方向中央線Lxよりも背側部B側の部分42Bの縦方向Xの長さLbの、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.3倍以上であり、また好ましくは2.0倍以下、より好ましくは1.5倍以下であり、また好ましくは1.2倍以上2.0倍以下、より好ましくは1.3倍以上1.5倍以下である。
【0017】
またおむつ1は、縦方向伸縮シート42の縦方向Xの中央位置42cと吸収性本体2の縦方向Xの中央位置2cとが一致している。これにより、縦方向伸縮シート42が伸縮した場合であっても、吸収性本体2の縦方向Xの中央位置42cの外装体3に対する相対的な位置がずれにくくなるので、おむつ1を着用したときに、吸収性本体2を適切な位置に配することができ、おむつ1のフィット性を更に向上させることができる。ここで、縦方向伸縮シート42の縦方向Xの中央位置42cと吸収性本体2の縦方向Xの中央位置2cとが一致しているとは、縦方向伸縮シート42の縦方向Xの中央位置42cと、吸収性本体2の縦方向Xの中央位置2cとの間の距離が、吸収性本体2の全長の10%以内、好ましくは5%以内であることを意味する。
【0018】
縦方向伸縮シート42は、吸収性本体2と縦方向Xの長さが同じであることが好ましい。こうすることにより、縦方向伸縮シート42の伸縮力が小さくなることを防ぎ、縦方向伸縮シート42が伸縮することによる効果を一層顕著なものとすることができる。また外装体3のみが収縮して該外装体3にしわが生じ着用者が違和感を感じることを防ぐこともできる。
ここで、縦方向伸縮シート42の縦方向Xの長さL3と、吸収性本体2の縦方向Xの長さL2とが同じであるとは、前記長さL3と前記長さL2とが完全に同じである場合のみならず、前記長さL3と前記長さL2とが略同じである場合も含む。
【0019】
吸収性本体2の縦方向Xの長さL2に対する縦方向伸縮シート42の縦方向Xの長さL3の比L3/L2は、縦方向伸縮シート42が伸縮することによる効果を一層顕著なものとする観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.9以上であり、外装体3のみが収縮して該外装体3にしわが生じ着用者が違和感を感じることを防ぐ観点から、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.1以下であり、これらの両立の観点から、好ましくは0.5以上1.4以下、より好ましくは0.9以上1.1以下である。
【0020】
縦方向伸縮シート42の横方向Yの長さD3は、吸収性本体2の横方向Yの長さD2以上であることが好ましい。こうすることにより、縦方向伸縮シート42の伸縮力が小さくなることを防ぎ、縦方向伸縮シート42が伸縮することによる効果を一層顕著なものとすることができる。
前記長さD2に対する前記長さD3の比D3/D2は、同様の観点から、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.2以上であり、また好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下であり、また好ましくは1.0以上2.0以下、より好ましくは1.2以上1.5以下である。
【0021】
おむつ1は、腹側部Aと背側部Bとが筒状に連結された胴周り部Dを有する。実施形態では、胴周り部Dは、腹側外装体3Aの両側部3e,3eと、背側外装体3Bの両側部3f,3fとが接合されることにより形成される。
縦方向Xにおいて、縦方向伸縮シート42の腹側部A側の端部42aは、該腹側部Aの胴周り部Dまで達していることが好ましい。こうすることにより、縦方向伸縮シート42における腹側部A側の部分42Aの長さLaが一層長くなるので、ウエスト開口部WHの周縁WEの位置が、腹側部Aの方が背側部Bよりも低くなってしまうことを一層防ぐことができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、縦方向伸縮シート42の長さL3に対する、該縦方向伸縮シート42と腹側部Aの胴周り部Dとが縦方向Xに重なっている部分の長さL4の比L4/L3は、好ましくは0以上、より好ましくは0.1以上であり、また好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下であり、また好ましくは0以上0.5以下、より好ましくは0.1以上0.2以下である。
【0022】
縦方向伸縮シート42の背側部B側の端部42bは、背側部Bの胴周り部Dまで達していないことが好ましい。こうすることにより、背側部Bの胴周り部Dに余計なしわが発生することを防ぐことができ、おむつ1の装着感を向上させることができる。
【0023】
おむつ1では、上述のように股下外装体3Cは縦方向伸縮シート42を含んでいる。腹側外装体3A及び背側外装体3Bは、横方向に伸縮する横方向伸縮シートを含むことが好ましい。おむつ1では、外層シート32が横方向伸縮シート32となっている。横方向伸縮シート32及び縦方向伸縮シート42は、
図4に示すとおり、縦方向X又は横方向Yに延びるように配された弾性フィラメント53が2枚の不織布51,52の間に接合されている伸縮シートである。2枚の繊維シート51,52は縦方向X又は横方向Yに伸縮可能である。
【0024】
上述の構成を有する横方向伸縮シート32及び縦方向伸縮シート42は、例えば、特開2009-61743号公報に記載の方法に従って製造することができる。具体的には例えば、紡糸ノズルから紡出された溶融状態の複数の弾性フィラメント53を所定速度で引き取って延伸しつつ、該弾性フィラメント53の固化前に、該弾性フィラメント53が互いに交差せず一方向に配列するように該弾性フィラメント53を繊維シート51,52に融着させた後、その弾性フィラメント53が融着した両シート51,52を、該弾性フィラメント53の延びる方向に沿って延伸することによって、横方向伸縮シート32又は縦方向伸縮シート42を製造することができる。横方向伸縮シート32は、その全体が横方向Yに伸縮性を有しており、縦方向伸縮シート42は、その全体が縦方向Xに伸縮性を有している。
横方向伸縮シート32及び縦方向伸縮シート42それぞれを、上述のような伸縮シートとすることにより、おむつ1に、下着のような、面で当たるフィット感を付与することができる。
弾性フィラメント53は、実質的に非伸長状態で固定されている点、及び長手方向と直交する断面の面積が、ウエスト開口部WHに配されている弾性部材33に比して小さい点において、ウエスト開口部WHに配されている糸状又は帯状の弾性部材33とは異なる。
【0025】
腹側外装体3Aが有する横方向伸縮シート32、背側外装体3Bが有する横方向伸縮シート32、及び股下外装体3Cが有する縦方向伸縮シート42は、同種の伸縮シートであることが好ましい。こうすることにより、おむつ1の外観の統一感を向上させることができる。ここで、伸縮シートが同種であるとは、a)シートの製造プロセス、b)シートの構成繊維の種類・繊維径・繊維長、c)シートの厚み及び坪量、がすべて同じであることを意味する。前記a)~c)のうちの少なくとも1つが異なる場合には、当該シートどうしは種類が異なる、即ち、同種ではない。例えば、横方向伸縮シート32と縦方向伸縮シート42とで、伸縮特性(伸縮方向、伸長率、伸長応力等)、色、模様の有無、弾性部材の有無、弾性部材の配置パターン等が異なっていても、前記a)~c)が全て同じであれば、両シート32,42は種類が同じ、即ち、同種である。
【0026】
横方向伸縮シート32と縦方向伸縮シート42とは、伸長率が異なることが好ましい。こうすることにより、股下部C及び胴周り部Dそれぞれの応力を最適なものとすることができる。より具体的には、横方向伸縮シート32の伸長率は、好ましくは170%以上、より好ましくは190%以上であり、また好ましくは250%以下、より好ましくは230%以下であり、また好ましくは170%以上250%以下、より好ましくは190%以上230%以下である。縦方向伸縮シート42の伸長率は、好ましくは110%以上、より好ましくは130%以上であり、また好ましくは190%以下、より好ましくは170%以下であり、また好ましくは110%以上190%以下、より好ましくは130%以上170%以下である。
【0027】
伸長率は、以下の方法により測定することができる。
<伸長率の測定方法>
以下、横方向伸縮シート32の伸長率の測定方法について説明するが、縦方向伸縮シート42の伸長率も同様にして測定することができる。
おむつ1を自然状態にして、横方向伸縮シート32に、該横方向伸縮シート32の伸縮方向に50mmの間隔を空けて2つの印を付ける。おむつ1を横方向伸縮シート32の伸縮方向に最大に伸長させた状態で、前記2つの印間の距離を測定し、該測定した値を伸長距離H(mm)とする。そして、次式より、伸長率を求める。
伸長率(%)=〔伸長距離H(mm)/50(mm)〕×100
【0028】
外装体3の内層シート31は、横方向伸縮シート32と重なる領域において、該横方向伸縮シート32の伸縮を阻害しないシートであることが好ましい。斯かるシートとしては、(1)横方向Yに伸縮する伸縮シート、例えば、横方向伸縮シート32と同様の構成を有するシート、(2)少なくとも横方向Yに伸長する伸長性シート、(3)非伸長性のシートであるが、横方向伸縮シート32を伸長させた状態で、該横方向伸縮シート32と接合されているシートが挙げられる。(1)のシートは、横方向Yの伸縮性に加えて、縦方向Xの伸縮性又は伸長性を有していてもよい。横方向伸縮シート32は、伸縮を阻害しないシートと組み合わされて横方向Yの伸縮性を有する、腹側外装体3A及び背側外装体3Bを形成している。
また内層シート31は、縦方向伸縮シート42と重なる領域において、該縦方向伸縮シート42の伸縮を阻害しないシートであることも好ましい。斯かるシートとしては、(4)縦方向Xに伸縮する伸縮シート、例えば、縦方向伸縮シート42と同様の構成を有するシート、(5)少なくとも縦方向Xに伸長する伸長性シート、(6)非伸長性のシートであるが、縦方向伸縮シート42を伸長させた状態で、該縦方向伸縮シート42と接合されているシートが挙げられる。(4)のシートは、縦方向Xの伸縮性に加えて、横方向Yの伸縮性又は伸長性を有していてもよい。
上記の各態様において、内層シート31と横方向伸縮シート32又は縦方向伸縮シート42とは、両者が重なる領域全体で接合されていてもよいし、該領域において部分的に接合されていてもよい。内層シート31と横方向伸縮シート32又は縦方向伸縮シート42との接合部は、横方向伸縮シートの伸縮方向に間欠的に配置されていてもよいし、ドット状、ストライプ状、スパイラル状等の規則的なパターンで配置されていてもよい。
【0029】
腹側外装体3A及び背側外装体3Bは、ウエスト弾性部材33wを有するところ、外装体3は、ウエスト弾性部材33w以外には、糸状又は帯状の弾性部材を有していないことが好ましい。こうすることにより、おむつ1に、下着のような、面で当たるフィット感を付与することができる。
【0030】
腹側外装体3A及び背側外装体3Bは、それぞれ、横方向伸縮シート32を有するところ、横方向伸縮シート32は、縦方向中央線Lxよりも背側部B側の方が腹側部A側よりも、縦方向Xの長さが長いことが好ましい。こうすることにより、おむつ1の臀部へのフィット感を向上させることができる。この効果が一層顕著に奏されるようにする観点から、横方向伸縮シート32における縦方向中央線Lxよりも腹側部A側の部分41Aの長さL5に対する、横方向伸縮シート32における縦方向中央線Lxよりも背側部B側の部分41Bの長さL6の比L6/L5は、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.1以上であり、また好ましくは1.8以下、より好ましくは1.4以下であり、また好ましくは1.05以上1.8以下、より好ましくは1.1以上1.4以下である。
【0031】
次に、本発明の別の実施形態について
図5及び
図6を参照しながら説明する。
図5及び
図6に示す実施形態については、
図1~
図3に示す実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図5及び
図6に示す実施形態について特に説明しない点は、
図1~
図3に示す実施形態と同様であり、同実施形態についての説明が適宜適用される。
【0032】
図5及び
図6に示すおむつ1は、外装体3が、腹側部Aから股下部Cを介して背側部Bまで連続した1つの部材からなる。外装体3は、腹側部A及び背側部Bにおいては、
図1~
図3に示すおむつ1と同様に、外層シート32、該外層シート32の肌対向面側に配された内層シート31と、両シート31,32間に配された複数本の糸状又は帯状の弾性部材33とを有する。外装体3は、股下部Cにおいては、内層シート31と縦方向伸縮シート42とを有する。
図5及び
図6に示すおむつ1においても、
図1~
図3に示すおむつ1と同様に、着用したときに、ウエスト開口部WHの周縁WEが適切な位置に配されるとともに、フィット性に優れる。
【0033】
次に、上述した各実施形態について共有する事項について説明する。
【0034】
表面シート21としては、液透過性を有するシート、例えば不織布や穿孔フィルムなどを用いることができる。表面シート21は、その肌対向面側が凹凸形状になっていてもよい。例えば表面シート21の肌対向面側に、散点状に複数の凸部を形成することができる。あるいは、表面シート21の肌対向面側に、一方向に延びる畝部と溝部とを交互に形成することができる。そのような目的のために、2枚以上の不織布を用いて表面シート21を形成することもできる。
【0035】
裏面シート22としては、例えば液難透過性のフィルムやスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド積層不織布などを用いることができる。液難透過性のフィルムに、複数の微細孔を設け、該フィルムに水蒸気透過性を付与してもよい。吸収性物品の肌触り等を一層良好にする目的で、裏面シート22の外面に不織布等の風合いの良好なシートを積層してもよい。
【0036】
吸収体23は、吸収性コアを備えている。吸収性コアは例えばパルプを初めとするセルロース等の親水性繊維の積繊体、該親水性繊維と吸収性ポリマーとの混合積繊体、吸収性ポリマーの堆積体、2枚の吸収性シート間に吸収性ポリマーが担持された積層構造体などから構成される。吸収性コアは、少なくともその肌対向面が液透過性のコアラップシートで覆われていてもよく、肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域がコアラップシートで覆われていてもよい。コアラップシートとしては、例えば親水性繊維からなる薄葉紙や、液透過性を有する不織布などを用いることができる。
【0037】
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
例えば、吸収性本体2は、この種の物品において公知の構成、例えば立体ギャザー等を更に備えていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 パンツ型使い捨ておむつ
2 吸収性本体
3 外装体
3A 腹側外装体
3B 背側外装体
3C 股下外装体
3g 最幅狭部
31 内層シート
32 外層シート
42 縦方向伸縮シート
Lx 縦方向中央線