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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/53 20060101AFI20250212BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20250212BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20250212BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/533 100
A61F13/532 200
A61F13/511 100
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021133566
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023028086
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】金子 将也
(72)【発明者】
【氏名】立川 裕美
(72)【発明者】
【氏名】糸井 奈美江
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-297048(JP,A)
【文献】特開2009-125485(JP,A)
【文献】国際公開第2020/122160(WO,A1)
【文献】特開2020-188917(JP,A)
【文献】特開2020-188920(JP,A)
【文献】特開2001-293034(JP,A)
【文献】特開2006-223854(JP,A)
【文献】特開2017-217104(JP,A)
【文献】特開2021-065631(JP,A)
【文献】特開2016-123612(JP,A)
【文献】特開2017-154000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、着用者の排泄部に対向配置される縦中央域と、該縦中央域よりも縦方向前側に配される前方域と、該縦中央域よりも縦方向後側に配される後方域とを有し、吸収体を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、合成繊維を含む繊維塊と、吸水性繊維とを含み、
前記吸収体は、肌対向面から非肌対向面に向かって凹陥し且つ前記縦方向に延びる一対の凹陥部を有し、
前記吸収体を、前記各凹陥部よりも横方向内方に位置する横中央域と、前記各凹陥部よりも横方向外方に位置する一対の横側方域とに区分したときに、
前記吸水性繊維の坪量に対する前記繊維塊の坪量の比が前記横中央域の該比よりも高い高坪量領域が前記各横側方域に形成されており、
前記高坪量領域は、少なくとも前記縦中央域において、前記吸収体の前記縦方向に沿う側縁を含むように位置している、吸収性物品。
【請求項2】
5cN/cmの荷重下において、前記両高坪量領域の最大厚みが、前記吸収体の前記横中央域の最大厚みよりも大きい、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記高坪量領域は、該高坪量領域における他の部位の剛性よりも剛性が高い高剛性領域を含み、
前記高剛性領域は、前記吸収体の前記縦方向に沿う前記側縁を含むように位置している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体は、該吸収体における前記高坪量領域よりも横方向内方の位置に、前記凹陥部の深さよりも深さが小さい小凹部を複数有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体の肌対向面側に配された表面シートを更に備え、
前記凹陥部は、前記表面シート及び前記吸収体が一体的に凹陥して形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の非肌対向面側に配された裏面シートと、該裏面シートの非肌対向面に配された粘着部とを更に備え、
前記粘着部は、前記高坪量領域と平面視で重ならない位置に配されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
一対の主面を有し、且つ平面視において第1方向とこれに直交する第2方向とを有する吸収体であって、
前記吸収体は、合成繊維を含む繊維塊と、吸水性繊維とを含み、
前記吸収体は、その一方の主面から他方の主面に向かって厚み方向に凹陥し且つ前記第1方向に延びる一対の凹陥部が形成されており、
前記吸収体を、前記各凹陥部よりも第2方向内方に位置する第2方向中央域と、前記各凹陥部よりも第2方向外方に位置する一対の第2方向側方域とに区分したときに、
前記吸水性繊維の坪量に対する前記繊維塊の坪量の比が前記第2方向中央域の該比よりも高い高坪量領域が前記各第2方向側方域に形成されており、
前記高坪量領域は、少なくとも第1方向の中央域において第1方向に沿う側縁を含むように位置している、吸収体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の吸収性物品は、一般に、吸収体を含んで構成される。この吸収体は、典型的には、木材パルプ等の吸水性繊維や吸水性ポリマーなどの吸水性材料を含有する吸収性コアを主体とし、更に、該吸収性コアの外面を被覆するコアラップシートを含んで構成される。
【0003】
本出願人は、着用感やクッション性、圧縮回復性等を向上させることを目的として、合成繊維を含む繊維塊を含んで構成された吸収体及びこれを具備する吸収性物品を提案した(特許文献1及び2)。これらの吸収体は、繊維塊が吸収体内に均一に存在しているか、又は、繊維塊の含有質量比が該吸収体の非肌対向面側よりも肌対向面側の方が小さく構成されている。
【0004】
特許文献3には、熱融着繊維どうしが結合した3次元構造の不織布片と親水性の繊維とを混合した吸収体が記載されている。
特許文献4には、吸収性物品にいて、表面シートと裏面シートとの間に介在する吸収体を、表面シート側に位置し、不織布の細片の集合体で構成されたクッション層と、裏面シート側に位置する吸収層とから構成することが記載されている。
特許文献5には、熱融着繊維を含み、予め繊維間を結合させて三次元構造を付与した不織布片と、親水性の繊維とが混合状態で成形される吸収性物品用吸収体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-063469号公報
【文献】特開2019-098157号公報
【文献】特開2002-301105号公報
【文献】特開2003-052750号公報
【文献】特開2011-244894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸収性物品は着用者の大腿間に挟まれるように用いられることが一般的であるので、吸収性物品は幅方向内方に外力が付与されやすい。これに起因して、吸収性物品は、その着用時に意図しない変形やヨレを生じ、ひいては排泄された体液の漏れの一因となる。特許文献1~5に記載の技術は、変形やヨレのさらなる低減や、着用者の身体の動きに対する追従性を更に向上させる点に改善の余地があった。
【0007】
したがって本発明の課題は、着用時における意図しない変形やヨレを低減して、着用者の身体の動きに対する追従性に優れる吸収体及びこれを備える吸収性物品を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、着用者の前後方向に対応する縦方向とこれに直交する横方向とを有し、着用者の排泄部に対向配置される縦中央域と、該縦中央域よりも縦方向前側に配される前方域と、該縦中央域よりも縦方向後側に配される後方域とを有し、吸収体を備える吸収性物品であって、
前記吸収体は、合成繊維を含む繊維塊と、吸水性繊維とを含み、
前記吸収体は、肌対向面から非肌対向面に向かって凹陥し且つ前記縦方向に延びる一対の凹陥部を有し、
前記吸収体を、前記各凹陥部よりも横方向内方に位置する横中央域と、前記各凹陥部よりも横方向外方に位置する一対の横側方域とに区分したときに、
前記吸水性繊維の坪量に対する前記繊維塊の坪量の比が前記横中央域の該比よりも高い高坪量領域が前記各横側方域に形成されており、
前記高坪量領域は、少なくとも前記縦中央域において、前記吸収体の前記縦方向に沿う側縁を含むように位置している、吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、着用時における意図しない変形やヨレを低減して、着用者の身体の動きに対する追従性に優れる吸収体及びこれを備える吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンの肌対向面側を一部破断して模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1のI-I線に沿う断面の一実施形態を模式的に示す横断面図である。
図3図3は、図1のI-I線に沿う断面の別の実施形態を模式的に示す横断面図である。
図4図4は、図1のI-I線に沿う断面の更に別の実施形態を模式的に示す横断面図である。
図5図5は、図1のI-I線に沿う断面の更に別の実施形態を模式的に示す横断面図である。
図6図6は、図1のI-I線に沿う断面の更に別の実施形態を模式的に示す横断面図である。
図7図7は、吸収体の一実施形態を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキン(以下、単にナプキンともいう。)1が示されている。ナプキン1は、その着用者から排泄された経血等の体液を吸収するために用いられる物品である。
【0012】
ナプキン1は、図1に示すように、着用者の前後方向に対応し、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる縦方向Xと、これに直交する横方向Yとを有する。また縦方向Xにおいて、着用者の膣口などの排泄部に対向する排泄部対向部(排泄ポイント)を含む縦中央域Mと、縦中央域Mよりも着用者の前側(腹側)に配される前方域Fと、縦中央域Mよりも着用者の後側(背側)に配される後方域Rとを有する。
【0013】
ナプキン1は、排泄された体液を吸収保持するための吸収体4を備える。これに加えて、ナプキン1は、着用者の肌と接触し得る液透過性の表面シート2と、防漏性の裏面シート3とを更に備えることが好ましい。この場合、吸収体4は、表面シート2と裏面シート3との間に配される。
【0014】
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体4)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
【0015】
ナプキン1は、図1及び図2に示すように、縦中央域Mの縦方向Xに沿う両側部それぞれから横方向Yの外方に延出する一対のウイング部5W,5Wを更に有していてもよい。本実施形態における一対のウイング部5W,5Wは、ナプキン1を横方向Yに二分して縦方向Xに延びる縦中心線を基準として線対称に形成されている。
【0016】
本発明の吸収性物品における縦中央域は、ナプキン1のように吸収性物品がウイング部5Wを有する場合には、該吸収性物品の縦方向Xにおいてウイング部を有する領域に相当する。具体的には、図1に示すように、ナプキン1における一方のウイング部5Wの縦方向Xに沿う付け根と他方のウイング部5Wの縦方向Xに沿う付け根とに挟まれた領域である。
また、ウイング部を有しない吸収性物品(例えば使い捨ておむつ)における縦中央域は、該吸収性物品を縦方向に三等分したときに中間に位置する領域に相当する。
【0017】
吸収体4は経血等の体液を吸収保持する吸収性コア40と、該吸収性コア40の外面を被覆する液透過性のコアラップシート41とを含んで構成されている。
本実施形態における吸収性コア40は、平面視において縦方向Xに長い形状をなしており、吸収性コア40の長手方向は、ナプキン1の縦方向Xと一致し、吸収性コア40の幅方向は、ナプキン1の横方向Yと一致している。
吸収体4は、図1に示すように、ナプキン1の縦方向Xの略全長にわたっており、前方域Fから縦中央域Mを介して後方域Rにわたって延在している。吸収性コア40とコアラップシート41との間は、ホットメルト型接着剤等の接着剤によって接合されていてもよい。
【0018】
コアラップシート41は、1枚のシートのみから構成されてもよく、複数枚のシートを含んで構成されていてもよい。前者の形態のコアラップシート41は1枚の連続したシートであり、吸収性コア40の肌対向面の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の下方に巻き下げられて、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆する。後者の形態のコアラップシート41は、例えば、吸収性コア40の肌対向面を被覆する1枚の肌側コアラップシートと、該肌側コアラップシートとは別体で、吸収性コア40の非肌対向面を被覆する1枚の非肌側コアラップシートとの2枚を含んで構成される。いずれの形態であっても、コアラップシート41は、紙や透水性の不織布から構成される。
【0019】
図1及び図2に示すように、ナプキン1が表面シート2及び裏面シート3を更に備える場合、表面シート2は吸収体4の肌対向面の全域を被覆するように配される。また、裏面シート3は、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、後述するサイドシート6とともにサイドフラップ部を形成している。前記サイドフラップ部は、ナプキン1における、吸収体4から横方向Yの外方に延出する部材からなる部分である。裏面シート3とサイドシート6とは、吸収体4の縦方向Xに沿う両側縁からの延出部において、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合方法によって互いに接合されている。表面シート2及び裏面シート3それぞれと吸収体4との間は接着剤によって接合されていてもよい。
【0020】
またナプキン1は、表面シート2の肌対向面における縦方向Xに沿う両側部には、一対のサイドシート6,6が備えられていることが好ましい。サイドシート6は、平面視において吸収体4の縦方向Xに沿う左右両側部に重なるように縦方向Xの略全長にわたって配されている。
サイドシート6は、図2に示すように、表面シート2等の他の構成部材と接合されていない自由端と、他の構成部材に接合された接合部である固定端とを有しており、使用時には、固定端と自由端との間が表面シート2から離間し、側方への横漏れを防止する防漏ポケットを形成する。
【0021】
前記サイドフラップ部は、図1に示すように、縦中央域Mにおいて横方向Yの外方に向かって張り出しており、これによって、横方向Y外方に一対のウイング部5W,5Wが延設されている。ウイング部5Wは、図1に示す平面視において、下底(上底よりも長い辺)が横方向Yの内方側に位置する略台形形状を有している。
【0022】
表面シート2および裏面シート3としては、吸収性物品に従来使用されている各種のものを特に制限なく用いることができる。
表面シート2としては、例えば、液透過性を有する単層又は多層構造の不織布を用いることができ、該不織布として、カード法により製造された不織布(例えば、エアスルー不織布)、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布を例示できる。表面シート2を構成する不織布には、界面活性剤等の親水化剤を用いた親水化処理が施されていてもよい。
裏面シート3としては、防漏性を有するシート、すなわち、液不透過性(液を全く通さない性質)又は液難透過性(液不透過性とまでは言えないものの、液を通し難い性質)を有するシートを用いることができ、例えば、透湿性の樹脂フィルムを用いることができる。
サイドシート6としては液不透過性シートが好ましく、例えば、裏面シート3として使用可能なものを用いることができる。
【0023】
また、ナプキン1における裏面シート3の非肌対向面には、ナプキン1をショーツ等の着衣に固定するための粘着部9が設けられていることが好ましい。吸収体4と粘着部9との位置関係については後述する。
【0024】
また、ウイング部5Wは、その非肌対向面に、該ウイング部5Wをショーツ等の着衣に固定する固定手段としてのウイング部粘着部(図示せず)が設けられる場合がある。一般的に、ウイング部5Wは、ショーツ等の着衣の非肌対向面(外面)側に折り返されて用いられるため、前記ウイング部粘着部の形成面であるウイング部5Wの非肌対向面は、その使用時には、着用者の肌側に向けられて肌対向面となる。
前記ウイング部粘着部及び粘着部9はそれぞれ、ナプキン1の使用前においてはフィルム、不織布、紙等からなる剥離シート(図示せず)によって被覆されている。
【0025】
吸収体4に関する説明に戻ると、吸収体4における吸収性コア40は、図2に示すように、合成繊維を含む繊維塊11と、吸水性繊維12とを含んで構成される。液吸収性及び液保持性の向上の観点から、吸収性コア40は、繊維塊11及び吸水性繊維12に加えて、粒子状の吸水性ポリマーを更に複数含有することが好ましい(図示せず)。
【0026】
吸収性コア40においては、複数の繊維塊11と吸水性繊維12とが単に混在しているだけでなく、繊維塊11同士又は繊維塊11と吸水性繊維12とが互いに交絡していることが好ましい。このような構成とすることで、吸収性コア40は高い保形性を有する。これに加えて、当該吸収性コア40を備える吸収体4は着用時に様々な方向から受ける外力への追従性や変形性に優れながらも、柔軟性、クッション性、圧縮回復性に優れる。そして、この吸収体4を備える吸収性物品は、外力に対して容易に変形・回復し、したがってヨレにくく、ナプキン1に着用者の身体に対する高いフィット性を付与できる。
【0027】
本明細書における交絡とは、(i)交絡対象となる繊維塊11あるいは吸水性繊維12等が互いに融着しておらず、繊維塊11の構成繊維同士の絡み合いによって結合状態が維持されている形態と、(ii)吸収性コア40の自然状態(外力が加わっていない状態)では、繊維塊11同士等は結合していないが、吸収性コア40に外力が加わった状態で、繊維塊11同士等が構成繊維同士の絡み合いによって結合し得る形態との双方を包含する。
ここでいう、「吸収性コア40に外力が加わった状態」とは、例えば、吸収性コア40が適用された吸収性物品の着用中において、吸収性コア40に変形力が加わった状態を意味する。
【0028】
繊維塊11は、複数の合成繊維が塊状に集積されて一体化された繊維集合体であり、その形態を保持した状態で吸収性コア40中に複数存在する。そして繊維塊11は、その繊維集合体の形態に起因して、主として、吸収性コア40の柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性の向上に寄与する。
【0029】
本明細書において「繊維塊」とは、複数の繊維がまとまって一体となった繊維集合体のことであり、吸水性繊維12とは別体に構成されているものである。本発明で用いる繊維塊は、例えば、合成繊維シートを一定の寸法となるように切断して得られたシート片のような定形の繊維集合体が挙げられる。このような繊維塊としては、例えば、特開2019-063469号公報や特開2019-098157号公報、特開2020-188918号公報に記載の繊維塊を好適に用いることができる。
【0030】
合成繊維を構成する樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
吸水性繊維12は、吸収性コア40中に複数存在しており、それら複数の吸水性繊維12は互いに交絡し得るものの、繊維塊11の構成繊維である合成繊維のように集積されておらず、個々独立に存在することが好ましい。吸水性繊維12は主として、吸収性コア40の液吸収性の向上に寄与し、また、吸収性コア40の保形性の向上にも寄与する。
【0032】
吸水性繊維12としては、この種の吸収性物品の吸収体の形成材料として従来使用されている吸水性繊維を用いることができ、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプ;レーヨンなどの再生セルロース繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。吸水性繊維12の主たる役割が吸収体4の液吸収性の向上である点に鑑みれば、吸水性繊維12としては、セルロース系繊維が特に好ましい。
【0033】
図1及び図2に示すように、ナプキン1は、吸収体4がその肌対向面から非肌対向面に向かって凹陥した凹陥部7を一対備える。一対の凹陥部7,7はいずれも、少なくとも縦中央域Mに形成されており、またこれらは縦方向Xに延びるように形成されている。凹陥部7は、コアラップシート41及び吸収性コア40が一体的に凹陥して形成されている。凹陥部7は、吸収体4を貫通しておらず、肌対向面に開口を有するとともに、該開口とは反対側に底部を有する。ナプキン1の肌対向面に形成された凹陥部7は、経血等の体液の面方向の移動を阻害する機能を有する。
【0034】
図1及び図2に示すように表面シート2を更に備える形態とした場合、凹陥部7は、表面シート2、並びに吸収体4としてのコアラップシート41及び吸収性コア40が一体的に凹陥して形成されていることが好ましい。このような構成を有することで、着用時のフィット性が更に向上する。
【0035】
本実施形態における凹陥部7は、縦方向Xに延びる左右一対の縦凹陥部7X,7Xと、横方向Yに延びる前後一対の横凹陥部7Y,7Yとを含んで構成されている。本実施形態における各凹陥部7X,7Yはいずれも表面シート2及び吸収体4が一体的に凹陥して形成されている。
一対の縦凹陥部7X,7Xは、それぞれ、縦中央域Mの縦方向Xの全域において直線状又は曲線状等の形状で延在し、更に前方域F及び後方域Rに延出しており、全体として連続線状をなしている。
一対の横凹陥部7Y,7Yのうちの一方は、少なくとも一部が前方域Fに位置し、他方は少なくとも一部が後方域Rに位置している。一対の横凹陥部7Y,7Yは、平面視において縦方向Xの外方に向かって凸のU字状ないし弧状の連続線状をなし、且つそのU字状ないし弧状の頂部がナプキン1の横方向Yの中央域に位置している。
【0036】
凹陥部7を構成する各凹陥部7X,7Y同士は、それらの長さ方向の端部にて連結しており、凹陥部7全体として平面視において長楕円形状をなしている。縦中央域Mにおいて、一対の縦凹陥部7X,7Xで囲まれた領域は、縦中央域Mの中央部に位置し、前記排泄部対向部(排泄ポイント)を含む。同図に示す凹陥部7は、上述した縦中心線を基準として線対称に形成されているが、本発明の効果が奏される限りにおいて線対称でなくてもよい。
【0037】
上述した凹陥部7は、ナプキン1の肌対向面側である肌側コアラップシート側、あるいは表面シート2側から圧搾加工を施すことによって好適に形成することができる。この場合、凹陥部7は、いわゆる圧搾部と同義である。このように形成された凹陥部7は、その厚み方向Zにおいて、吸収体4における凹陥部7の周囲に比して構成材料の密度が高い部位となっている。このような圧搾加工としては、例えば熱の付与の有無を問わないエンボス加工、超音波エンボス等の公知のエンボス加工を行うことができる。
【0038】
図2に示す実施形態のナプキン1は、説明の便宜上、凹陥部7は、吸収体4がその肌対向面から非肌対向面に向かって凹陥した態様として説明したが、これに加えて、又はこれに代えて、吸収体4がその非肌対向面から肌対向面に向かって凹陥した裏面凹陥部を備えていてもよい(図示せず)。
【0039】
裏面凹陥部が形成されている場合、裏面凹陥部は、上述した凹陥部7の形態と同様に、吸収体4におけるコアラップシート41及び吸収性コア40が一体的に凹陥して形成される。また、裏面凹陥部は、平面視において凹陥部7と略同形状・同寸法であり、平面視において凹陥部7と重なる位置において形成されることもフィット性向上の点で好ましい。裏面凹陥部は、凹陥部7と同様の方法で、非肌側コアラップシート側から圧搾加工を施すことによって好適に形成することができる。裏面凹陥部について特に説明しない点については、上述した凹陥部7に関する説明が適宜適用される。
【0040】
ナプキン1の構成部材である吸収体4は、上述した凹陥部7の形成位置と、繊維塊11及び吸水性繊維12の存在割合とが所定の関係になっていることに特徴の一つを有する。
【0041】
詳細には、図2に示すように、吸収体4に形成されている一対の凹陥部7である各縦凹陥部7X,7Xよりも横方向Y内方に位置する領域を横中央域4Cとし、各縦凹陥部7X,7Xよりも横方向Y外方に位置する一対の領域を横側方域4S,4Sとする。
このように各領域を区分したときに、吸水性繊維12の坪量W2に対する繊維塊11の坪量W1の比(以下、これを「W1/W2比」ともいう)が横中央域4CにおけるW1/W2比よりも高い領域である高坪量領域45が、各横側方域4S,4Sにそれぞれ形成されていることが好ましい。これに加えて、各高坪量領域45,45は、少なくとも縦中央域Mにおいて、吸収体4の縦方向Xに沿う側縁4aを含むようにそれぞれ位置していることが好ましい。つまり、ナプキン1における吸収体4は、繊維塊11が他の部位と比較して相対的に多い部位が吸収体4の横方向Y外方域に偏在して存在することが好ましい。高坪量領域45は、吸収体4の厚み方向Zにおいて略均一に存在する。
高坪量領域45は縦中央域Mにのみ一対存在してもよく、吸収体4の縦中央域Mを含み且つ前方域F及び後方域Rを含むように縦方向Xに延在してもよい。いずれの場合であっても、高坪量領域45の幅(横方向Yに沿う長さ)は一定となっていることが、意図しない変形やヨレを低減できる点で好ましい。
【0042】
高坪量領域45が吸収体4の横方向外方域に形成されていることによって、吸収体4の柔軟性及びクッション性を十分に維持しながらも、ナプキン1の着用時において両大腿で挟まれることに起因して発生する横方向Y内方への外力に対する追従性を高くすることができ、着用時のフィット性が向上する。また、上述した外力の解除又は減弱が生じた場合には、繊維塊11の存在に起因する吸収体4の圧縮回復性及び保形性を横方向Yにおいて向上させやすくすることができ、ナプキン1の着用時における意図しない変形やヨレを低減することができる。
上述した繊維塊11及び吸水性繊維12の存在割合が異なる吸収性コア40は、例えば、公知の積繊装置において、回転ドラム上での積繊順序などを適宜調整することで製造可能である。
【0043】
なお、本明細書における横中央域4Cと横側方域4Sとの境界Lは、縦凹陥部7Xの横方向Y外方端の位置を基準とする(図2参照)。また縦凹陥部7Xがナプキン1の縦中央域Mにのみ形成されている場合には、前方域F及び後方域Rにおける横中央域4C及び横側方域4Sは、縦凹陥部7Xを縦方向Xに仮想的に延在させたときに区別される領域とする。
【0044】
また高坪量領域45は、その横方向Yの内方端が縦凹陥部7Xの横方向Y外方端と一致するように形成されていてもよく、高坪量領域45の横方向Yの内方端が縦凹陥部7Xの横方向Y外方端よりも横方向外方に位置して離間した状態となっていてもよい。後者の場合、吸収性コア40における高坪量領域45の横方向Yの内方端から凹陥部7までの領域は、横中央域4Cにおける吸収性コア40と同一の構成となっていてもよく、高坪量領域45から横中央域4Cまで横方向Y内方に向かってみたときに、上述したW1/W2比が連続的に又は段階的に減少していてもよい。
また、平面視において凹陥部7と重なる位置における吸収性コア40には、少なくとも吸水性繊維12が存在していればよく、これに加えて、繊維塊11が存在していてもよく、繊維塊11が存在していなくてもよい。
【0045】
高坪量領域45におけるW1/W2比は、それぞれ独立して、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下である。高坪量領域45がこのようなW1/W2比となっていることによって、ごわつき等の装着違和感を生じることなく、吸液時の回復性を向上できる。W1/W2比は、各高坪量領域45で同じであってもよく、異なってもよいが、いずれの場合であっても、上述の範囲を満たすことが好ましい。
【0046】
高坪量領域45における繊維塊11の坪量W1は、それぞれ独立して、好ましくは10g/m以上、より好ましくは20g/m以上であり、好ましくは400g/m以下、より好ましくは350g/m以下である。このような坪量となっていることによって、吸収性物品と身体との隙間を少なくすることで漏れを防止するとともに、吸液時においても高い圧縮回復性を維持できる。
【0047】
高坪量領域45における吸水性繊維12の坪量W2は、それぞれ独立して、好ましくは10g/m以上、より好ましくは20g/m以上であり、好ましくは300g/m以下、より好ましくは200g/m以下である。このような坪量となっていることによって、排出された体液によって湿潤した吸水性繊維12が繊維塊11による圧縮回復性を阻害することなく、体液の横漏れの抑制と、変形した状態から所定の形状への回復力の向上とを両立させることができる。
【0048】
横中央域4CにおけるW1/W2比は、高坪量領域45におけるW1/W2比よりも低いことを条件として、好ましくは0又は0以上、より好ましくは0.5以上であり、好ましくは1.0以下又は1.0未満、より好ましくは0.8以下である。つまり、横中央域4Cにおける吸収性コア40は、繊維塊11が存在しておらず吸水性繊維12が存在した態様であってもよく、繊維塊11及び吸水性繊維12が上述したW1/W2比を満たす範囲で存在する態様であってもよい。横中央域4CがこのようなW1/W2比となっていることによって、吸液性能を損なうことなく、フィット性や吸液時の圧縮回復性を向上させることができる。
【0049】
横中央域4Cに繊維塊11が存在している場合において、横中央域4Cにおける繊維塊11の坪量W1は、好ましくは10g/m以上、より好ましくは20g/m以上であり、好ましくは400g/m以下、より好ましくは350g/m以下である。このような坪量となっていることによって、着用者との隙間を埋め高いフィット性を発現できるとともに、吸液時の圧縮回復性を向上させることができる。
【0050】
横中央域4Cにおける吸水性繊維12の坪量W2は、好ましくは100g/m以上、より好ましくは200g/m以上であり、好ましくは1000g/m以下、より好ましくは800g/m以下である。このような坪量となっていることによって、吸収性物品中央での高い吸液性を発現することができる。
【0051】
吸収体4の横方向Yに沿う全長に対する、一つの横側方域4Sの横方向Yに沿う長さの比は、好ましくは20%以上40%以下である。このような構成となっていることによって、横中央域4Cの吸収性を維持したまま、横側方域4Sの高いフィット性や幅方向圧縮回復性を発現することができる。
【0052】
横中央域4Cに繊維塊11が存在している場合、横中央域4Cにおける繊維塊11の存在質量に対する高坪量領域45における繊維塊11の存在質量の比が、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは10以下である。このような割合となっていることによって、横中央域4Cの高い吸液性を維持したまま、横側方域4Sによる高いフィット性や幅方向圧縮回復性を発現することができる。
【0053】
図3には、ナプキン1の縦中央域Mの横方向Yに沿う断面における別の実施形態が示されている。同図に示すように、ナプキン1における吸収体4は、その両高坪量領域45,45の最大厚みH1が、吸収体4の横中央域4Cの最大厚みH2よりも大きいことが好ましい。このような構成になっていることによって、高坪量領域45が横方向外方に存在することに起因して、横方向Y内方への外力に対する吸収体4の柔軟性、クッション性、フィット性及び圧縮回復性を更に向上させることができるとともに、高坪量領域45に防漏壁の役割を担わせて、排泄された体液が横方向外方へ漏れることを効果的に防止することができる。
【0054】
このような構成とするためには、例えば吸収性コア40を製造する積繊装置において、回転ドラム上での積繊順序及び積繊量を適宜調整することで製造可能である。このように製造された吸収性コア40は、吸収性コア40における高坪量領域の最大厚みが、該コア40の横中央域の最大厚みよりも大きく構成される。またこれによって、吸収体4の高坪量領域45の最大厚みH1が、吸収体4の横中央域4Cの最大厚みH2よりも高くなる。
【0055】
高坪量領域45の最大厚みが吸収体4の横中央域4Cの最大厚みよりも高い場合、横中央域4Cから高坪量領域45に向かって横方向Y外方に沿ってみたときに、吸収体4は、その厚みが連続的に又は段階的に増加している部位を有する。この部位は、吸収体4の厚みの差や密度の差、剛性の差が生じている境界の部位である。
この境界の部位において、吸収体4の意図しない破壊や着用時におけるヨレを効果的に防止する観点から、吸収体4の横中央域4Cから高坪量領域45に向かって横方向Yに沿ってみたときに、吸収体4はその厚みが連続的に増加している部位を有することが好ましい。この場合、高坪量領域45は、その肌対向面が傾斜面のみで構成されていてもよく、傾斜面が形成されるとともに該傾斜面の横方向Y外方側に平坦な部位を有していてもよい。
【0056】
吸収体4の各高坪量領域45,45の最大厚みH1は、それぞれ独立して、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下である。このような厚みとなっていることによって、装着感を損なうことなく、体液の横漏れを抑制することができる。
【0057】
吸収体4の横中央域4Cの最大厚みH2は、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上であり、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下である。このような厚みとなっていることによって、装着感を損なうことなく、高い吸液性を発現することができる。
最大厚みH2は、後述する肉厚部が形成されている場合でも、上述の範囲を満たすことが好ましい。
【0058】
吸収体4の最大厚みは、以下の方法で測定することができる。
測定対象の吸収体を水平な場所にシワや折れ曲がりがないように静置し、吸収体から測定対象部位を切り出して測定サンプルとする。そして、測定サンプルにおける5cN/cmの荷重下での厚みを測定する。具体的には、厚みの測定に、例えば、厚み計PEACOCK DIAL UPRIGHT GAUGES R5-C(OZAKI MFG.CO.LTD.製)を用いる。このとき、厚み計の先端部と測定サンプルとの間に、荷重が5cN/cmとなるように大きさを調整した平面視円形状又は正方形状のプレート(厚み5mm程度のアクリル板)を配置して、最大厚みを測定する。厚み測定では、測定サンプルにおける任意の10箇所を測定し、それら10箇所のうち最も厚い値を上述した最大厚みH1又は最大厚みH2とする。
【0059】
高坪量領域45は、上述のとおりW1/W2比が吸収体4の横中央域4Cよりも高く構成されているところ、これに加えて、図4に示すように、ナプキン1における吸収体4は、高坪量領域45における他の部位の剛性よりも剛性が高い高剛性領域48を含んで構成されることが好ましい。そして、高剛性領域48は、吸収体4の縦方向Xに沿う側縁4aを含むように位置することも好ましい。高剛性領域48は、吸収体4の厚み方向Zにおいて略均一に存在する。
高剛性領域48は、高坪量領域45と同様に、少なくとも縦中央域Mにおいて一対存在しており、縦中央域Mにのみ存在してもよく、縦中央域Mを含み且つ前方域F及び後方域Rを含むように縦方向Xに延在してもよい。いずれの場合であっても、高剛性領域48の幅(横方向Yに沿う長さ)は一定となっていることが、意図しない変形やヨレを低減できる点で好ましい。
【0060】
高剛性領域48が吸収体4の横方向外方端を含むように形成されていることによって、高坪量領域45に存在する繊維塊に起因して、吸収体4の柔軟性及びクッション性を十分に維持しながらも、ナプキン1の着用時において両大腿で挟まれることに起因して発生する横方向Y内方への外力による圧縮変形を低減して、追従性を高くすることができ、着用時のフィット性が向上する。また、上述した外力の解除又は減弱が生じた場合には、圧縮回復性及び保形性を容易に且つ十分に発現させることができ、ナプキン1の着用時における意図しない変形やヨレを一層効果的に低減することができる。
特に、高坪量領域45の最大厚みH1が吸収体4の他の部位よりも高くした構成と組み合わせて採用することによって、着用時に発生する外力によってナプキン1が変形した場合であっても、高剛性領域48が外力に対する抵抗性を発現しつつ防漏壁の役割を担うことができるので、排泄された体液が横方向外方へ漏れることを効果的に防止することができる。
【0061】
吸収体4に高剛性領域48を設けるためには、例えば、図4に示すように、吸収性コア40の構成材料である繊維塊11及び吸水性繊維12のうち少なくとも一種の坪量を他の高坪量領域よりも高くなるように配したりすることができる。これに加えて、又はこれに代えて、吸収性コア40に吸水性ポリマーを含有させる場合は吸水性ポリマーの坪量を他の高坪量領域よりも高くなるように配したり、あるいは、繊維塊11、吸水性繊維12及び吸水性ポリマー以外の他の原料を吸収性コア40の構成材料として用いたりすることができる。高い剛性を発現可能な他の原料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリスチレンの発泡樹脂等が挙げられる。
いずれの場合であっても、高剛性領域48は上述した高坪量領域45におけるW1/W2比を満たすことを条件とする。
【0062】
高坪量領域45における高剛性領域48と高剛性領域48以外の領域における剛性は、それぞれ以下の方法で測定することができる。
詳細には、カトーテック株式会社製のKES(カワバタ・エバリュエーション・システム)での測定値で表し得ることが一般的に知られている(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄、昭和55年7月10日発行)。具体的には、カトーテック株式会社製の自動化圧縮試験装置KES-G5を用いて圧縮仕事量を測定することができる。測定手順は以下の通りである。
試料としての「吸収体を有する吸収性物品」を圧縮試験装置の試験台に取り付ける。次に、その試料を面積2cmの円形平面を持つ鋼板間で圧縮する。圧縮速度は0.02cm/sec、圧縮最大荷重は490mN/cmとする。回復過程も同一速度で測定を行う。
【0063】
圧縮仕事量(WC)及び回復仕事量(WC’)は次式で表される。また、式中のPは測定時(圧縮過程)の荷重(mN/cm)、Pは測定時(回復過程)の荷重(mN/cm)を示す。圧縮仕事量(WC)及び回復仕事量(WC’)は、上述の測定条件で、荷重0mN/cmから490mN/cmまで圧縮した際の仕事量として表される。つまり、以下の式において、T=0mN/cm、T=490mN/cmを代入して測定及び算出された値である。
【0064】
圧縮仕事量は、吸収体のクッション性の尺度となるものであり、WC値が大きいほど、クッション性が高いと評価でき、また、剛性が高いと評価できる。つまり、本明細書における剛性は圧縮仕事量(WC)の値に相当する。回復仕事量は、吸収体を圧縮し、圧縮状態を解放したときの回復の程度を示す尺度であり、WC’値が大きいほど圧縮回復性が高く、ヨレにくいと評価できる。
【0065】
【数1】
【0066】
【数2】
【0067】
上述した高剛性領域48による効果をより効果的に得る観点から、高剛性領域48の剛性N1は、好ましくは120mN・cm/cm以上300mN・cm/cm以下である。
【0068】
高坪量領域45における高剛性領域48以外の領域の剛性N2は、着用時において高剛性領域48を含まない高坪量領域45を優先的に変形させて、フィット性や幅方向圧縮回復性を高める観点から、好ましくは80mN・cm/cm以上150mN・cm/cm以下である。
【0069】
また、高坪量領域45において、高剛性領域48以外の領域の剛性N2に対する高剛性領域48の剛性N1の比(N1/N2)は、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下であり、低ければ低いほど好ましいが0超が現実的である。このような比となっていることによって、高剛性領域48を含まない高坪量領域45を優先的に変形させて、フィット性や幅方向圧縮回復性を高めることができる。
【0070】
図5には、ナプキン1の縦中央域Mの横方向Yに沿う断面における更に別の実施形態が示されている。同図に示すように、ナプキン1は、吸収体4における高坪量領域45よりも横方向Y内方の位置に、小凹部49を複数有することが好ましい。これらの小凹部49はいずれも、その深さが凹陥部7の深さよりも小さいことも好ましい。このような構成となっていることによって、着用時のフィット性を十分に維持しつつ、吸収体4全体の剛性を高めて、ナプキン1の着用時における意図しない変形やヨレを一層効果的に低減することができる。
【0071】
本実施形態の小凹部49は、高坪量領域45の横方向内方端よりも横方向Y内方の位置であり、且つ横中央域4Cに形成されている。小凹部49は、吸収体4を構成する吸収性コア40及びコアラップシート41が肌対向面から非肌対向面側に向かって一体的に凹陥することで形成されており、表面シート2は小凹部49が存在する位置で凹陥していない。小凹部49は、平面視において連続線状又は破線状に一方向に延びるように複数形成されていてもよく、散点状に複数形成されていてもよい。
高坪量領域45が横側方域4Sの横方向Y全域に形成されていない場合は、高坪量領域45の横方向内方端よりも横方向Y内方の位置であり、且つ凹陥部7よりも横方向Y外方の位置において小凹部49が更に形成されることは妨げられない。
【0072】
このように形成された小凹部49は、その厚み方向Zにおいて、吸収体4における小凹部49及び凹陥部7が形成されていない部位に比して構成材料の密度が高い部位となっている。また、吸収体4における小凹部49が形成された部位は、その構成材料の密度が、凹陥部7の厚み方向Zにおける構成材料の密度よりも低い構成となっている。この密度の異なる部位を吸収体4に設けることによって、吸収体4全体の剛性を高めて、ナプキン1の着用時における意図しない変形やヨレを効果的に低減することを可能にしている。
このような小凹部49は、例えば、表面シート2を配する前の吸収体4に対して、ラウンドエンボスやピンエンボス加工等の圧縮加工を、凹陥部7の形成時の押圧度合いよりも押圧の程度を小さくすることで形成することができる。
【0073】
また本実施形態では、小凹部49は吸収体4の肌対向面にのみ形成されているが、これに加えて、又はこれに代えて、吸収体4の非肌対向面から肌対向面側に向かって凹陥する裏面小凹部が形成されていてもよい(図示せず)。裏面小凹部は、平面視において小凹部49と略同形状・同寸法であり、平面視において小凹部49と重なる位置において形成されることも着用時における変形やヨレを防ぐ点で好ましい。裏面小凹部は、小凹部49と同様の方法で、非肌側コアラップシート側からエンボス加工を施すことによって好適に形成することができる。裏面小凹部について特に説明しない点については、小凹部49に関する説明が適宜適用される。
【0074】
吸収体4と粘着部9との位置関係については、粘着部9は、吸収体4における高坪量領域45と平面視で重ならない位置に配されていることが好ましい。このような構成となっていることによって、高坪量領域45が着衣に固定されず、動きの自由度を比較的高くした状態で存在させることができるので、ナプキン1の着用時において生じる横方向Y内方への外力に対する追従性を更に高い状態とすることができ、着用時のフィット性が更に向上する。また、上述した外力の解除又は減弱が生じた場合には、粘着部9の影響を受けることなく吸収体4の圧縮回復性及び保形性を吸収体4の横方向において向上させることができ、ナプキン1の着用時における意図しない変形やヨレを更に低減することができる。
【0075】
本実施形態おける粘着部9は、図2~6に示すように、高坪量領域45よりも横方向Y内方の位置である横中央域4Cに間欠的に配されている。これに代えて、粘着部9は、高坪量領域45よりも横方向Y内方の位置の全域に配されていてもよい。また、例えば、高坪量領域45が縦中央域Mのみに形成されている場合には、粘着部9は、高坪量領域45よりも横方向Y内方の位置に加えて、又はこれに代えて、前方域F及び後方域Rの少なくとも一方の領域に連続的に又は間欠的に配されていてもよい。
【0076】
図6には、ナプキン1の縦中央域Mの横方向Yに沿う断面における別の実施形態が示されている。同図に示すように、ナプキン1における吸収体4は、その横中央域4Cにおいて、横中央域4Cにおける周辺部に比べて厚みが大きい肉厚部50を有することが好ましい。この場合、肉厚部50は、少なくとも縦中央域Mに形成されており、着用者の膣口等の排泄部に対向する部位に配されている。
【0077】
本実施形態では、吸収性コア40の横中央域4Cにおける横方向Yの中央部が肉厚部50であり、ナプキン1の肌対向面側に突出するように形成されている。また、横中央域4Cにおける肉厚部50以外の部分は、肉厚部50に比べて厚みが小さい肉薄部51である。肉厚部50は、吸水性繊維等の吸収性コア40の構成材料の坪量を多くすることによって形成されており、肉薄部51に比べて、吸収性コア40の形成材料の坪量が大きいことに起因して剛性が高い。したがって、このような構成となっていることによって、吸収体4の剛性を高めて、ナプキン1の着用時における意図しない変形やヨレを一層効果的に低減することができる。また排泄された体液の吸収保持性が更に向上する。本発明の効果が奏される限りにおいて、肉厚部50はナプキン1の非肌対向面側に突出するように形成されていてもよい。
【0078】
吸収体4における肉厚部50の厚みは、上述した吸収体4の横中央域4Cの最大厚みH2と同様の範囲とすることができる。
また、肉薄部51の厚みは、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下である。
【0079】
高坪量領域45が吸収体4の縦中央域Mにのみ形成されている場合において、吸収体4は、図7に示すように、該吸収性コア40の肌対向面及び非肌対向面の少なくとも一方に開口を有し且つ所定方向に延在する、溝状凹部42が単独で又は複数形成されることが好ましい。溝状凹部42は、吸収性コア40の構成材料が存在しない空間部である。ここでいう、「構成材料が存在しない」には、構成材料が全く存在しない形態のみならず、空間部として認識できる程度のごく少量のコア形成材料が存在する形態も包含される。
【0080】
高坪量領域45が吸収体4の縦中央域Mにのみ形成されている場合において、溝状凹部42が更に形成されることによって、吸収性コア40は、前方域F及び/又は後方域Rに屈曲誘導部(可撓軸)として作用し得る溝状凹部42が存在することに起因して、ナプキン1の着用時に着用者の身体形状に沿って変形しやすくなる。また、ナプキン1の着用者が排泄した経血等の体液は速やかに吸収されつつ吸収性コア40の面方向に拡散され、その際、溝状凹部42は、体液の導通路及び体液を一時的に保持するストック層として機能し、体液の面方向への拡散を促進する。そして、吸収性コア40の柔軟性、クッション性、圧縮回復性、保形性の向上に寄与し得る繊維塊11が含有されているので、着用感やフィット性などが一層向上されており、ヨレにくい。
【0081】
溝状凹部42は、吸収体4における吸収性コア40の前方域F及び後方域Rの少なくとも一方に存在する。また、吸収体4における吸収性コア40の縦中央域Mにおいては、溝状凹部42が存在していてもよく、存在していなくてもよい。
【0082】
溝状凹部42は、吸収性コア40を厚み方向に貫通しないように非貫通型で形成されていてもよく、吸収性コア40を厚み方向に貫通した貫通型で形成されていてもよい。溝状凹部42が非貫通型で形成されている場合、溝状凹部42は吸収性コア40の肌対向面に開口を有するとともに該開口とは反対側に底部を有していてもよく、吸収性コア40の非肌対向面に開口を有するとともに該開口とは反対側に底部を有していてもよい。
また、溝状凹部42が非貫通型である場合、吸収性コア40における溝状凹部42の開口を有する側の面は、溝状凹部42の開口からなる凹部と小吸収部43からなる複数の凸部とで構成される凹凸形状を有し、凹凸面である。一方、吸収性コア40における溝状凹部42の開口を有する側の面は、溝状凹部42が形成されていない平坦面となっている。
【0083】
図7に示す実施形態では、溝状凹部42は、縦方向Xに延びる縦凹部42Xと、これに交差(直交)する方向に延びる横凹部42Yとを含んで構成されており、これらは吸収性コア40の前方域F及び後方域Rの双方の全域にそれぞれ存在する。一方、溝状凹部42は、縦中央域Mには存在しない。また同実施形態における溝状凹部42は、吸収性コア40の肌対向面に開口を有し、いずれも吸収性コア40を厚み方向に貫通しないように形成されている。
これによって、吸収体4の肌対向面側に排泄された体液を溝状凹部42内で速やかに吸収させながら面方向に拡散させることができ、液吸収性を更に向上させることができる。これに加えて、溝状凹部42が可撓軸となっていることによって、着用者の動きに対する追従性を高め、吸収体4が柔軟性、クッション性及び圧縮回復性に優れたものとなる。
【0084】
溝状凹部42が吸収性コア40の前方域F及び後方域Rに形成されている場合、前方域Fに位置する吸収性コア40及び後方域Rに位置する吸収性コア40は、それぞれ独立して、繊維塊11および吸水性繊維12を含んで構成されていてもよく、繊維塊11を非含有とした態様で構成されていてもよい。いずれの場合であっても、前方域Fに位置する吸収性コア40及び後方域Rに位置する吸収性コア40は、W1/W2比が高坪量領域45よりも低く構成される。
【0085】
吸収性コア40中に吸水性ポリマーを更に含む場合、吸水性ポリマーは小片あるいは粒子として吸収性コア40中に複数存在し、主として、吸収性コア40内の液吸収性の向上に寄与する。吸水性ポリマーの小片の形状は特に制限されず、例えば、球状、塊状、俵状、繊維状、不定形状であり得る。
吸水性ポリマーとしては、一般に、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を用いることができる。その例としては、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリメタクリル酸及びその塩が挙げられ、具体的には、アクアリックCA、アクアリックCAW(ともに(株)日本触媒社製)等のアクリル酸重合体部分ナトリウム塩が挙げられる。
【0086】
吸収性コア40中に吸水性ポリマーを更に含む場合、吸水性ポリマーの平均粒子径は、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上、そして、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下である。
吸収性コア40中に吸水性ポリマーを更に含む場合、吸収性コア40における吸水性ポリマーの坪量は、好ましくは5g/m以上、より好ましくは10g/m以上、そして、好ましくは200g/m以下、より好ましくは100g/m以下である。
【0087】
凹陥部7の深さ(厚み方向Zに沿う長さ)は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上であり、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。このような深さとなっていることによって、吸収体4の成形性を向上させるとともに、製品幅方向の体液の拡散を抑制することができる。
【0088】
小凹部49が形成されている場合、小凹部49の深さ(厚み方向Zに沿う長さ)は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.05mm以上であり、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.8mm以下である。このような深さとなっていることによって、吸収体4の成形性を向上させるとともに、表面シート2から吸収体4へ体液を素早く移行させることができる。
【0089】
上述の説明から明らかなとおり、本明細書は、吸収性物品だけでなく、吸収体そのものに関する事項も開示する。
詳細には、吸収体は、一対の主面を有し、且つ平面視において第1方向とこれに直交する第2方向とを有する。吸収体は、好ましくは第1方向に長い形状を有する。吸収体の主面は、これを吸収性物品の構成部材として組み込んだときに、吸収体の肌対向面及び非肌対向面をそれぞれ形成する面である。また、第1方向及び第2方向は、上述した吸収性物品における縦方向X及び横方向Yと適宜読み替えることができる。
吸収体4に関するその他の説明は上述した説明が適宜適用され、またその構成を単独で又は組み合わせて採用することができる。
【0090】
また本発明の吸収性物品は、説明の便宜上、生理用ナプキンを例にとり説明したが、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品を広く包含する。
吸収性物品は、上述した生理用ナプキンの他、生理用ショーツ、止着テープを有するいわゆる展開型の使い捨ておむつ、パンツ型の使い捨ておむつ、失禁パッド等が包含される。特に、上述した構成を有する吸収体4は、生理用ナプキンを含む上述した各吸収性物品に適用可能なものである。
【0091】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0092】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収体
4C 横中央域
4S 横側方域
40 吸収性コア
41 コアラップシート
42 溝状凹部
45 高坪量領域
48 高剛性領域
49 小凹部
50 肉厚部
6 サイドシート
7,7X,7Y 凹陥部
9 粘着部
11 繊維塊
12 吸水性繊維
F 前方域
M 縦中央域
R 後方域
X 縦方向
Y 横方向
Z 厚み方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7