(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】高剛性鉄基合金、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 33/02 20060101AFI20250212BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20250212BHJP
B22F 3/26 20060101ALI20250212BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20250212BHJP
B22F 10/38 20210101ALI20250212BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20250212BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20250212BHJP
C22C 1/10 20230101ALI20250212BHJP
C22C 14/00 20060101ALN20250212BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
C22C33/02 103G
B22F1/00 S
B22F3/26 Z
B22F10/28
B22F10/38
B33Y10/00
B33Y70/00
C22C1/10 K
C22C14/00 Z
C22C38/00 304
(21)【出願番号】P 2021139912
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鴨 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】前田 千芳利
(72)【発明者】
【氏名】青柳 健大
(72)【発明者】
【氏名】松尾 優太朗
(72)【発明者】
【氏名】千葉 晶彦
(72)【発明者】
【氏名】山中 謙太
(72)【発明者】
【氏名】卞 華康
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-088972(JP,A)
【文献】特開2020-084294(JP,A)
【文献】特開2021-066933(JP,A)
【文献】米国特許第04419130(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00,1/14,3/105,3/16,3/26,
10/00,10/28,10/38
B33Y 10/00,70/00
C22C 1/10,14/00,33/02,38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄又は鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックス中に分散しているホウ化チタンとを含む高剛性鉄基合金であって、
マトリックスのIPF画像による結晶粒の円相当平均粒径が、0.1μm~0.5μmであり、
ここで、マトリックスのIPF画像による結晶粒の円相当平均粒径は、まず、測定の対象となる高剛性鉄基合金のEBSD-IPF画像を3画像撮影し、次に、各画像において、ランダムに30個の結晶粒を選択し、続いて、選択した各結晶粒について面積を算出し、算出した面積から円相当径を算出し、最後に、算出した円相当径から加算平均値をとることで算出され、
ホウ化チタンのSEM画像による円相当平均粒径が、0.01μm~0.2μmであ
り、ここで、ホウ化チタンのSEM画像による円相当平均粒径は、まず、測定の対象となる高剛性鉄基合金のBSE-SEM画像を3画像撮影し、次に、各画像において、ランダムに300個のホウ化チタンを選択し、続いて、選択した各ホウ化チタンについて面積を算出し、算出した面積から円相当径を算出し、最後に、算出した円相当径から加算平均値をとることで算出される、
高剛性鉄基合金。
【請求項2】
(i)鉄、ホウ素及びチタンを含む材料を準備する工程であって、鉄、ホウ素及びチタンを含む材料が、鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末とを混合して得られる混合粉末である、工程、並びに
(ii)(i)の工程で準備した材料を、電子ビームにより処理して高剛性鉄基合金を得る工程であって、電子ビームによる処理がPBF方式の電子ビーム照射を伴う積層造形法である、工程
を含む、高剛性鉄基合金を製造する方法。
【請求項3】
(i)鉄、ホウ素及びチタンを含む材料を準備する工程であって、鉄、ホウ素及びチタンを含む材料が、鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体及び/又は焼結体及び/又は積層体である、工程、並びに
(ii)(i)の工程で準備した材料を、電子ビームにより処理して高剛性鉄基合金を得る工程であって、電子ビームによる処理がDED方式の電子ビーム照射を伴う積層造形法である、工程
を含む、高剛性鉄基合金を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄又は鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックス中に分散している微細なホウ化チタンとを含む高剛性鉄基合金、及び積層造形法によって、当該高剛性鉄基合金を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、構造用金属材料として、鋼又は鉄合金がもっとも広く利用されている。これら金属材料は、合金元素添加や熱処理によって極めて多様な組織変化を示し、強度及び靱延性などの機械的性質を幅広く制御することが可能である。
【0003】
例えば、特許文献1では、フェライトとパーライトとからなる組織を有する非調質鋼部材であって、当該非調質鋼部材の長手方向に延びた幅200μm以下の帯状のパーライト層と、前記パーライト層同士の間において、前記長手方向に延びて析出したフェライト層と、からなる柱状組織を有する、非調質鋼部材及びその製造方法が記載されている。
【0004】
一方で、実部品の設計において重要となる剛性は、原子間の結合力に直接関与した物質固有の値であるため、剛性を大幅に向上させることは困難であると考えられてきた。
【0005】
このような状況下において、鉄又は鉄合金において、高剛性化を意図して高ヤング率であるホウ化物などの化合物粒子を分散させた研究開発が行われており、例えば、特許文献2では、鉄又は鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックス中に分散し粒径が1~100μmである、4A族元素を主体とするホウ化物の少なくとも一種以上とからなり、該4A族元素を主体とする硼化物は該マトリックス中で熱力学的に安定であることを特徴とする高剛性鉄基合金が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-203148号公報
【文献】特開2002-285303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば特許文献2などに記載される高剛性鉄基合金では、鉄又は鉄合金からなるマトリックスの結晶粒が大きく、さらに当該マトリックス中に分散されている高硬度のホウ化物もまた粗大であり、切削加工などの機械加工時に、切削工具を破壊してしまう可能性があった。
【0008】
したがって、本発明は、容易に機械加工することができる高剛性鉄基合金、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
高剛性鉄基合金中のマトリックスの結晶粒及びホウ化物が粗大化してしまう要因としては、高剛性鉄基合金製造時に加えられる熱が過剰であること、高剛性鉄基合金のマトリックスを構成する鉄又は鉄合金の粉末と、粒径の小さなホウ化物、例えば1μm以下の平均粒径を有するホウ化物の粉末とを混合して均質な混合物を得ることが困難であること、さらに、粉末混合物を融解(溶融)する際に、もともと微細であったホウ化物同士が、凝集・結合し、大きくなることなどが挙げられる。
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、鉄又は鉄合金からなるマトリックス中、in-situ反応でホウ化物を生成し、生成したホウ化物が過度に結晶成長しないように熱履歴を制御すること、あるいは鉄、ホウ素、及びチタンを含む材料に電子ビーム(EB)を照射することによって、結晶粒の小さなマトリックス中に粒径が小さいホウ化物が形成された高剛性鉄基合金を製造することができることを見出した。
【0011】
そこで、本発明者らは、さらに検討した結果、鉄、ホウ素、及びチタンを含む材料、例えば、鉄チタン金属間化合物(FeTi)の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物(FeB)の粉末とを混合して得られた混合粉末、又は鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体及び/又は焼結体及び/又は積層体を、電子ビームにより処理することにより、結晶粒の小さな鉄又は鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックス中に分散している微細なホウ化チタンとを含む高剛性鉄基合金を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)鉄又は鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックス中に分散しているホウ化チタンとを含む高剛性鉄基合金であって、
マトリックスのIPF画像による結晶粒の円相当平均粒径が、1μm以下である、高剛性鉄基合金。
(2)ホウ化チタンのSEM画像による円相当平均粒径が、0.01μm~0.2μmである、(1)に記載の高剛性鉄基合金。
(3)(i)鉄、ホウ素及びチタンを含む材料を準備する工程、並びに
(ii)(i)の工程で準備した材料を、電子ビームにより処理して高剛性鉄基合金を得る工程
を含む、高剛性鉄基合金を製造する方法。
(4)(i)の工程において、鉄、ホウ素及びチタンを含む材料が、鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末とを混合して得られる混合粉末である、(3)に記載の高剛性鉄基合金を製造する方法。
(5)(ii)の工程において、電子ビームによる処理が電子ビーム照射を伴う積層造形法である、(4)に記載の高剛性鉄基合金を製造する方法。
(6)(ii)の工程において、電子ビーム照射を伴う積層造形法がPBF方式である、(5)に記載の高剛性鉄基合金を製造する方法。
(7)(i)の工程において、鉄、ホウ素及びチタンを含む材料が、鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体及び/又は焼結体及び/又は積層体である、(3)に記載の高剛性鉄基合金を製造する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、容易に機械加工することができる高剛性鉄基合金、及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の(ii)の工程において、鉄チタン金属間化合物の粉末(FeTi)と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末(FeB)とを混合して得られる混合粉末に電子ビームを照射することによりホウ化チタン(TiB
2)が形成される様子を示す模式図である。
【
図2】PBF方式による積層造形法を実施するための装置の一例を示す模式図である。
【
図3】DED方式による積層造形法を実施するための装置の一例を示す模式図である。
【
図4】実施例1において得られた試験片の模式図である。
【
図5】実施例1のA)IPF画像及びB)SEM画像である。
【
図7】実施例2における電子ビームによる照射部位の組織の変化を模式的に示した図である。
【
図8】鋳造体1及び2における電子ビーム照射出力と照射された鋳造体のビッカース硬さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
本明細書では、適宜図面を参照して本発明の特徴を説明する。図面では、明確化のために各部の寸法及び形状を誇張しており、実際の寸法及び形状を正確に描写してはいない。それ故、本発明の技術的範囲は、これら図面に表された各部の寸法及び形状に限定されるものではない。なお、本発明の高剛性鉄基合金、及びその製造方法は、下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者がおこない得る変更、改良などを施した種々の形態にて実施することができる。
【0016】
本発明は、鉄又は鉄合金からなるマトリックスと、該マトリックス中に分散しているホウ化チタンとを含む高剛性鉄基合金であって、マトリックスの結晶粒径が特定の範囲である高剛性鉄基合金に関する。
【0017】
ここで、本発明の高剛性鉄基合金は、鉄又は鉄合金からなるマトリックス中に微細なホウ化チタンが均一に分散している構造を有している。
【0018】
本発明の高剛性鉄基合金のマトリックスを構成する鉄合金としては、フェライト系、オーステナイト系、マルテンサイト系など、広範囲なものが使用可能であり、熱力学的安定性の観点から、炭素含有量が0.1重量%以下のものが好ましい。
【0019】
本発明の高剛性鉄基合金において、鉄又は鉄合金からなるマトリックスのIPF画像による結晶粒の円相当平均粒径は、1μm以下、好ましくは0.1μm~0.5μmである。
【0020】
鉄又は鉄合金からなるマトリックスのIPF画像による結晶粒の円相当平均粒径の測定方法は、まず、測定の対象となる高剛性鉄基合金のEBSD法(Electron Back Scattered Diffraction Pattern)(電子線後方散乱回折)-IPF(Inverse Pole Figure)画像(逆極点図)を3画像撮影し、次に、各画像において、ランダムに30個の結晶粒を選択し、続いて、選択した各結晶粒について面積を算出し、算出した面積から円相当径を算出し、最後に、算出した円相当径から加算平均値をとることで実施することができる。
【0021】
鉄又は鉄合金からなるマトリックスの結晶粒の平均粒径が前記範囲であることで、高剛性鉄基合金の加工時において、高硬度のホウ化チタンの切断における切削工具にかかる応力が分散され、切削工具の破壊が低減され、高剛性を維持したまま被削性が向上する。
【0022】
本発明の高剛性鉄基合金の鉄又は鉄合金からなるマトリックス中に均一に分散しているホウ化チタンは、化学式TiB2で示される二ホウ化物である。
【0023】
本発明の高剛性鉄基合金に含まれるホウ化チタンは、規則的な結晶構造を有し、構成原子が強固に結合した化合物であるため、その結合力が直接反映されるヤング率は、極めて高いものである。また、ホウ化チタンは、鉄合金中において、熱力学的に安定であるため、異種原子の侵入・置換、あるいは他の複合化合物の形成など、ホウ化チタンと鉄又は鉄合金からなるマトリックスとの反応に起因する結晶学的な変化を起こすことがない。この結果、ホウ化チタンは、鉄合金中でも強固な結合力を維持し、高ヤング率のまま変化せず、鉄基合金の高剛性化に寄与する強化粒子として、その優れた特性を十分に発揮することができる。したがって、本発明の鉄基合金は、極めて高いヤング率を有することができる。
【0024】
ホウ化チタンの平均粒径は、SEM画像による円相当平均粒径として、通常0.01μm~1μm、好ましくは0.01μm~0.2μmであり、より好ましくは0.01μm~0.1μmである。
【0025】
ホウ化チタンのSEM画像による円相当平均粒径の測定方法は、まず、測定の対象となる高剛性鉄基合金のBSE-SEM画像(反射電子像)を3画像撮影し、次に、各画像において、ランダムに300個のホウ化チタンを選択し、続いて、選択した各ホウ化チタンについて面積を算出し、算出した面積から円相当径を算出し、最後に、算出した円相当径から加算平均値をとることで実施することができる。
【0026】
ホウ化チタンの平均粒径が前記範囲であることで、高剛性鉄基合金の加工時において、高硬度のホウ化チタンの切断における切削工具にかかる応力が分散され、切削工具の破壊が低減され、高剛性を維持したまま被削性が向上する。
【0027】
ホウ化チタンの粒度は、揃っていることが好ましい。ホウ化チタンの粒度は、限定されないが、例えば、ホウ化チタンの粒子が正規分布に従うとき、ホウ化チタンの粒子数の68%の粒子が、通常平均粒径±0.1μm、好ましくは平均粒径±0.05μmの範囲内にある。
【0028】
ホウ化チタンの粒度が揃うことで、高剛性鉄基合金の加工時において、高硬度のホウ化チタンの切断における切削工具にかかる応力が分散され、切削工具の破壊が低減され、高剛性を維持したまま被削性が向上する。
【0029】
ホウ化チタンの含有量は、高剛性鉄基合金の全体積に対して、通常3体積%~40体積%、好ましくは7体積%~35体積%である。
【0030】
ホウ化チタンの含有量が前記範囲であることにより、ホウ化チタンが、ホウ化物同士の凝集、合体の形成を生じることなく、高剛性鉄基合金において、十分な機械特性、特に高剛性を発揮することができる。
【0031】
したがって、本発明の高剛性鉄基合金は、ホウ化チタンを有することによる十分な機械特性、特に高剛性を示しつつ、さらに、該ホウ化チタンが微細であること及び鉄又は鉄合金からなるマトリックスの結晶粒が小さいことにより、切削工程において、切削工具を破壊することなく、容易に切削することができる。
【0032】
本発明の高剛性鉄基合金は、ホウ化チタン以外にも、最終的に得られる高剛性鉄基合金中に求められる成分に応じて、一種以上の他の元素、例えばニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、モリブデン、炭素、マンガン、及びそれらの化合物、例えばホウ化物などを含んでいてもよい。
【0033】
さらに、本発明は、前記で説明した本発明の高剛性鉄基合金の製造方法にも関する。すなわち、本発明は、(i)鉄、ホウ素及びチタンを含む材料を準備する工程、並びに(ii)(i)の工程で準備した材料を、電子ビームにより処理して高剛性鉄基合金を得る工程を含む、高剛性鉄基合金を製造する方法に関する。
【0034】
以下に(i)~(ii)の各工程について説明する。
【0035】
(i)鉄、ホウ素及びチタンを含む材料を準備する工程
本発明の(i)の工程では、鉄、ホウ素及びチタンを含む材料を準備する。
【0036】
鉄、ホウ素及びチタンを含む材料としては、鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末とを混合して得られる混合粉末が挙げられる。
【0037】
鉄チタン金属間化合物の粉末は、鉄とチタンを含む合金(FeTi)の粉砕粉末である。
【0038】
鉄チタン金属間化合物の粉末の平均粒径は、限定されないが、例えば、レーザー回折・散乱法により測定された体積基準の粒度分布におけるD50として、通常25μm~200μm、好ましくは45μm~140μmである。
【0039】
鉄チタン金属間化合物の粉末の平均粒径が前記範囲になることで、ホウ化鉄金属間化合物の粉末との混合を容易に、均一に行うことができる。
【0040】
鉄チタン金属間化合物の組成は、製造する高剛性鉄基合金に含まれるホウ化チタンの量に依存して変更可能であるが、鉄とチタンとの重量比(Fe:Ti)が、通常80:20~25:75、好ましくは70:30~50:50になるように調整される。
【0041】
鉄チタン金属間化合物の組成が前記範囲になることで、安定した鉄チタン金属間化合物を得ることができ、ホウ化鉄金属間化合物との反応により、最終的に得られる高剛性鉄基合金において、前記で説明した量のホウ化チタンを確保することができる。
【0042】
ホウ化鉄金属間化合物の粉末は、鉄とホウ素を含む合金(FeB)の粉砕粉末である。
【0043】
ホウ化鉄金属間化合物の粉末の平均粒径は、限定されないが、例えば、レーザー回折・散乱法により測定された体積基準の粒度分布におけるD50として、通常25μm~200μm、好ましくは45μm~140μmである。
【0044】
ホウ化鉄金属間化合物の粉末の平均粒径が前記範囲になることで、鉄チタン金属間化合物の粉末との混合を容易に、均一に行うことができる。
【0045】
ホウ化鉄金属間化合物の組成は、製造する高剛性鉄基合金に含まれるホウ化チタンの量に依存して変更可能であるが、鉄とホウ素との重量比(Fe:B)が、通常95:5~70:30、好ましくは85:15~75:25になるように調整される。
【0046】
ホウ化鉄金属間化合物の組成が前記範囲になることで、安定したホウ化鉄金属間化合物を得ることができ、鉄チタン金属間化合物との反応により、最終的に得られる高剛性鉄基合金において、前記で説明した量のホウ化チタンを確保することができる。
【0047】
なお、鉄チタン金属間化合物の粉末及びホウ化鉄金属間化合物の粉末は、最終的に得られる高剛性鉄基合金中に求められる成分に応じて、一種以上の他の元素、例えばニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、モリブデン、炭素、マンガンなどを含んでいてもよい。
【0048】
鉄チタン金属間化合物の粉末とホウ化鉄金属間化合物の粉末との混合比は、各材料の組成、製造する高剛性鉄基合金に含まれるホウ化チタンの量に依存して変更可能である。例えば、鉄チタン金属間化合物の粉末とホウ化鉄金属間化合物の粉末との重量比(FeTi:FeB)は、通常75:25~25:75、好ましくは60:40~40:60である。あるいは、鉄チタン金属間化合物の粉末とホウ化鉄金属間化合物の粉末との混合比は、チタンとホウ素との重量比(Ti:B)が、通常1:1~10:1、好ましくは1.5:1~2.5:1になるように調整される。
【0049】
鉄チタン金属間化合物の粉末とホウ化鉄金属間化合物の粉末との混合比が前記範囲になることで、鉄又は鉄合金からなるマトリックス中において、鉄チタン金属間化合物とホウ化鉄金属間化合物とが十分に反応し、最終的に得られる高剛性鉄基合金において、前記で説明した量のホウ化チタンを確保することができる。
【0050】
なお、(i)の工程では、最終的に得られる高剛性鉄基合金中に求められる成分に応じて、一種以上の他の元素、例えばニッケル、コバルト、クロム、マグネシウム、モリブデン、炭素、マンガンなどを含む粉末を混合させてもよい。
【0051】
各粉末、すなわち、鉄チタン金属間化合物の粉末とホウ化鉄金属間化合物の粉末と場合により一種以上の他の元素を含む粉末との混合順序、混合方法は、限定されず、当技術分野において公知の混合手段を使用して混合することができる。例えば、混合粉末が一種以上の他の元素を含む粉末を含む場合、鉄チタン金属間化合物の粉末とホウ化鉄金属間化合物の粉末とを混合した後に一種以上の他の元素を含む粉末を混合してもよいし、鉄チタン金属間化合物の粉末と一種以上の他の元素を含む粉末とを混合した後にホウ化鉄金属間化合物を混合してもよいし、ホウ化鉄金属間化合物の粉末と一種以上の他の元素を含む粉末とを混合した後に鉄チタン金属間化合物を混合してもよいし、全ての粉末を同時に混合してもよい。各粉末の混合方法としては、例えば、V型混合機(V型混粉器)、ボールミル、振動ミルなどが挙げられる。なお、各粉末は、湿式混合により混合してもよい。
【0052】
本発明の(i)の工程により、鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末と、場合により一種以上の他の元素を含む粉末とが均一に分散している混合粉末を得ることができる。
【0053】
さらに、鉄、ホウ素及びチタンを含む材料としては、鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体及び/又は焼結体及び/又は積層体が挙げられる。
【0054】
例えば、鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体は、前記で説明した鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末と、場合により一種以上の他の元素を含む粉末とを混合して得られる混合粉末を、各粉末の溶融温度以上の温度に加熱し、その後冷却することにより得ることができる。
【0055】
例えば、鉄及びホウ化チタンを含む焼結体は、前記で説明した鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末と、場合により一種以上の他の元素を含む粉末とを混合して得られる混合粉末を、各粉末の溶融温度未満の温度で焼成(焼結)し、その後冷却することにより得ることができる。
【0056】
例えば、鉄及びホウ化チタンを含む積層体は、前記で説明した鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末と、場合により一種以上の他の元素を含む粉末とを混合して得られる混合粉末を、レーザー照射を伴う積層造形法により処理することにより得ることができる。
【0057】
ここで、レーザー照射を伴う積層造形法とは、材料となる混合粉末に、レーザーを照射して、特定の部位のみを溶解・固化し、これを繰り返して合金を型なしで成形する方法である。なお、レーザーの照射は、3Dデータから変換されたスライスデータに基づいて実施してもよい。
【0058】
レーザー照射を伴う積層造形法では、混合粉末の急速加熱、対流撹拌及び急速冷却が可能である。
【0059】
なお、レーザー照射を伴う積層造形法は、下記で説明する電子ビーム照射を伴う積層造形法において、電子ビームをレーザーに置き換え、さらに、真空雰囲気下の環境をアルゴン置換した環境下に変更することで実施することができる。
【0060】
(ii)(i)の工程で準備した材料を、電子ビームにより処理して高剛性鉄基合金を得る工程
(ii)の工程では、(i)の工程で準備した材料を、電子ビームにより処理して高剛性鉄基合金を得る。
【0061】
(i)の工程で準備した材料が、鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末とを混合して得られる混合粉末である場合、(i)の工程で準備した材料を、電子ビーム照射を伴う積層造形法により処理して高剛性鉄基合金を得る。
【0062】
本発明の(ii)の工程において、電子ビーム照射を伴う積層造形法とは、材料となる混合粉末に、電子ビームを照射して、特定の部位のみを溶解・固化し、これを繰り返して合金を型なしで成形する方法である。なお、電子ビームの照射は、3Dデータから変換されたスライスデータに基づいて実施してもよい。
【0063】
電子ビームとは、電子を加速させビーム状にしたものである。
【0064】
電子ビーム照射を伴う積層造形法では、混合粉末の急速加熱、対流撹拌及び急速冷却が可能である。
【0065】
材料として鉄チタン金属間化合物の粉末とホウ化鉄金属間化合物の粉末とを用いて鉄又は鉄合金からなるマトリックス中にホウ化チタンを形成させる鉄基合金の製造方法において、焼結を用いる場合、混合粉末の焼結における昇温・焼結工程中に、固相拡散によってホウ化チタンが形成され、その後成長する。粒子は、当該粒子が成長し得る環境に属する時間が長ければ長いほど成長するため、微細なホウ化チタン及び小さな結晶粒のマトリックスを得るためには、ホウ化チタンの核形成後にホウ化チタンが成長できる時間及びマトリックスの結晶粒が成長できる時間、すなわち材料の凝固までの時間を短くすることが好ましい。したがって、本発明において、鉄チタン金属間化合物の粉末とホウ化鉄金属間化合物の粉末とを用いて鉄又は鉄合金からなるマトリックス中にホウ化チタンを形成するために電子ビーム照射を伴う積層造形法を使用することにより、粉末溶融後の冷却速度を速くすることができる、つまりホウ化チタンの核形成後の粒子(結晶)成長時間及びマトリックスの結晶粒成長時間を短くすることができる。さらに、ホウ化チタンの粒子は、マトリックスの結晶粒のピン止め(ピンディング)効果を有し、マトリックスの微細化を引き起こす。したがって、材料の凝固までの時間短縮によるホウ化チタン及びマトリックスの結晶粒微細化並びに微細ホウ化チタンのピン止め効果によるマトリックスの結晶粒微細化の相乗効果の結果、高剛性及び高強度を両立させ、さらには強度に対する伸びもまた改善させた、結晶粒の小さなマトリックス中に粒径が小さいホウ化物が形成された高剛性鉄基合金を形成することができる。
【0066】
図1に、本発明の(ii)の工程において、鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末とを混合して得られる混合粉末に電子ビームを照射することによりホウ化チタン(TiB
2)が形成される様子を模式的に示す。
【0067】
図1は、鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末とを混合して得られた混合粉末に電子ビームを照射すると、混合粉末が溶融し、鉄又は鉄合金からなるマトリックス中にTiB
2の核が形成され、その後、TiB
2の成長温度以上では、TiB
2が成長し、TiB
2の成長温度未満になることで、TiB
2の成長が止まり、組織が決定する様子を示している。電子ビームによる処理では、鉄チタン金属間化合物の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末とを混合して得られる混合粉末は、粉末状態や溶融状態に関わらず、電子ビームのエネルギーをロスすることなく吸収することができるため、エネルギーの吸収過多を抑制し、したがって、TiB
2の過剰な成長を抑制することができる。
【0068】
電子ビーム照射を伴う積層造形法は、例えば、粉末床溶融結合方式(Powder Bed Fusion:PBF)を含む。
【0069】
PBFは、混合粉末を敷き詰め、造形する部分に電子ビームを照射し、溶融・凝固させ積層させて合金を成型する方法である。
【0070】
PBFでは、電子ビームが照射されることにより溶融された合金前駆体は、急速に、通常10,000K/秒以上の速度で冷却され、合金が製造され得る。
【0071】
図2に、PBF方式による積層造形法を実施するための装置の一例の模式図を示す。
図2では、真空雰囲気下にするためのカバー7の中で、まず、原料容器に装填された混合粉末1が押し上げられ、押し上げられた部分の混合粉末1がブレード2により敷き詰められる。次に、ブレード2により敷き詰められた混合粉末1に、電子ビーム発生機3により電子ビーム4が照射される。混合粉末1に電子ビーム4が照射されると、混合粉末1中の粉末同士が溶融結合してベースプレート6上に鉄基合金5が形成される。これらの工程がベースプレート6を下げながら繰り返し実施(積層造形)されることにより、鉄基合金5が成型される。
【0072】
本発明の(ii)の工程により、鉄チタン金属間化合物の粉末とホウ化鉄金属間化合物の粉末とがin-situ反応により微細なホウ化チタンを結晶粒の小さな鉄又は鉄合金からなるマトリックス中に均一に分散した状態で生成し、その結果、被削性に優れた高剛性鉄基合金を得ることができる。
【0073】
(i)の工程で準備した材料が、鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体及び/又は焼結体及び/又は積層体である場合、(i)の工程で準備した材料を、電子ビームにより処理して高剛性鉄基合金を得る。
【0074】
電子ビームによる処理では、鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体及び/又は焼結体及び/又は積層体は、粉末状態や溶融状態に関わらず、電子ビームのエネルギーをロスすることなく吸収し、結晶粒の小さなマトリックスを形成するとともに、粗大なホウ化チタンを分解・拡散することにより、微細なホウ化チタンを形成することができる。
【0075】
電子ビームによる処理は、電子ビームを材料における高剛性及び高強度が求められる目的箇所に照射する以外にも、例えば、電子ビーム照射を伴う積層造形法、例えば、指向性エネルギー堆積方式(Directed Energy Deposition:DED)を含む。
【0076】
DEDは、電子ビームを鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体及び/又は焼結体及び/又は積層体により形成されたワイヤー状の材料に照射し、溶融・積層して造形する方法であり、肉盛溶接とも呼ばれる。
【0077】
DEDでは、電子ビームが照射されることにより溶融された合金前駆体は、急速に、通常10,000K/秒程度の速度で冷却され、合金が製造され得る。
【0078】
図3に、DED方式による積層造形法を実施するための装置の一例の模式図を示す。
図3では、ワイヤー状の材料8が下地10上に配置され、電子ビーム発生機3により発生させた電子ビーム4がワイヤー状の材料8に照射される。ワイヤー状の材料8に電子ビーム4が照射されると、ワイヤー状の材料8同士が溶融結合し、下地10上に鉄基合金5が形成される。これらの工程が造形プラットフォーム9を下げながら繰り返し実施(積層造形)されることにより、鉄基合金5が成型される。
【0079】
(i)の工程で準備した材料が、鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体及び/又は焼結体及び/又は積層体であることによって、当該材料の目的箇所のみに電子ビームを照射することができ、つまり、鉄基合金における目的箇所、例えば応力集中部位のみにおいて、十分な機械特性、特に高剛性を示しつつ、さらに、該ホウ化チタンが微細であること及び鉄又は鉄合金からなるマトリックスの結晶粒が小さいことによる、切削工程において、切削工具を破壊することなく、容易に切削することができる特性を持たせることができる。したがって、材料全体に電子ビーム照射するよりも、コストを低減でき、量産性が向上する。なお、電子ビーム照射では、電子ビーム照射部分の中心部分と輪郭部分とで強度が異なり、電子ビーム照射部分の中心部分の方が輪郭部分と比較して強度が高くなるため、電子ビームが照射された部分と照射されていない部分の境目部分で歪が発生しない。
【実施例】
【0080】
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0081】
1.サンプル調製
実施例1
以下の(i)及び(ii)の工程により、鉄基合金を製造した。
【0082】
(i)鉄、ホウ素及びチタンを含む材料を準備する工程
(i)の工程において、鉄、ホウ素及びチタンを含む材料として、鉄チタン金属間化合物(FeTi)の粉末と、ホウ化鉄金属間化合物(FeB)の粉末とを混合して得られる混合粉末を使用した。
【0083】
混合粉末は、鉄チタン金属間化合物の粉末としてのFe:57重量%及びTi:43重量%の粉砕粉末(レーザー回折・散乱法による粒径(D50):45μm~140μm)と、ホウ化鉄金属間化合物の粉末としてのFe:78重量%及びB:22重量%の粉砕粉末(レーザー回折・散乱法による粒径(D50):45μm~140μm)とを、FeTiとFeBとの重量比が1:1になるように調整し、V型混粉器で30分混粉することにより得た。
【0084】
(ii)(i)の工程で準備した材料を、電子ビーム照射を伴う積層造形法(PBF方式)により処理して鉄基合金を得る工程
(ii)の工程において、(i)の工程で準備した混合粉末を、
図2に記載の装置を用いて、真空雰囲気下、下記条件で処理して、
図4に模式的に示す、直径が20mmであり、高さが3mmである円板状の鉄基合金(Fe/30vol%TiB
2)を得た。
PBF条件
電子ビーム出力:300W
スキャン速度:1000mm/秒
ビーム径:0.2mm
積層厚さ:0.09mm
冷却速度:10000K/秒以上
ここで、積層厚さとは、1層あたりの厚さである。
【0085】
実施例2
以下の(i)及び(ii)の工程により、鉄基合金を製造した。
【0086】
(i)鉄、ホウ素及びチタンを含む材料を準備する工程
(i)の工程において、鉄、ホウ素及びチタンを含む材料として、鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体(pure Fe,pure Cr,pure Ti,Fe-Bの粉末を30体積%TiB2/Fe-17質量%Crになるように混合して高周波溶解した鋳造体、Fe-17mass%Cr/30vol%TiB2)を準備した。
【0087】
(ii)(i)の工程で準備した材料を、電子ビームにより処理して鉄基合金を得る工程
(ii)の工程において、(i)の工程で準備した鋳造体に、真空雰囲気下、下記条件で、電子ビームを照射して鉄基合金を得た。
電子ビーム照射条件
電子ビーム出力:1800W
スキャン速度:500mm/秒
ビーム径:0.3mm
積層厚さ:0.07mm
冷却速度:10000K/秒以上
【0088】
2.EBSD法-IPF画像及びBSE-SEM画像評価
実施例1において得られた鉄基合金のEBSD法-IPF画像及びBSE-SEM画像を撮影し、実施例2において得られた鉄基合金のEBSD法-IPF画像を撮影した。
図5に実施例1の結果[A)IPF画像、B)SEM画像(黒色はTiB
2である)]を示し、
図6に実施例2の結果を示す。
図6では、電子ビーム照射前の材料を鋳造まま材と示し、電子ビームを照射した部分をEB照射部と示す。
【0089】
図5より、実施例1では、鉄チタン金属間化合物の粉末とホウ化鉄金属間化合物の粉末とを混合して得られる混合粉末に電子ビームを照射することにより、円相当平均粒径が1μm以下であるFe系マトリックスの結晶粒の外周に0.2μm以下の微細なホウ化チタンが存在している高剛性鉄基合金を製造することができることがわかった。
図6より、実施例2では、鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体に電子ビームを照射することにより、結晶粒の小さなFe系マトリックス中に粒径が小さいホウ化チタンが形成された高剛性鉄基合金を製造することができることがわかった。
【0090】
さらに、実施例2では、鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体のある一部分に電子ビームを照射することにより、電子ビームを照射した部分のみを、結晶粒の小さなFe系マトリックス中に粒径が小さいホウ化チタンが形成された高剛性鉄基合金とすることができることがわかった。
図7に、実施例2の模式図を示す。
【0091】
3.被削性評価
実施例1及び2において得られた鉄基合金を、汎用砥石切断基(湿式)により切削した。実施例1及び2の鉄基合金は、抵抗が小さく問題なく切削することができた。
【0092】
4.ビッカース硬さ評価
2種類の鉄及びホウ化チタンを含む鋳造体(鋳造体1:pure Fe,pure Cr,pure Ti,Fe-Bの粉末を15体積%TiB2/Fe-17質量%Crになるように混合して高周波溶解した鋳造体(Fe-17mass%Cr/15vol%TiB2)、鋳造体2:pure Fe,pure Cr,pure Ti,Fe-Bの粉末を30体積%TiB2/Fe-17質量%Crになるように混合して高周波溶解した鋳造体(Fe-17mass%Cr/30vol%TiB2))に電子ビームの出力を変更して得られた鉄基合金についてビッカース硬さを測定した。
【0093】
図8に結果を示す。
図8より、電子ビームを照射することにより照射前と比較してビッカース硬さが200%~300%増大すること、鋳造体2の方が鋳造体1と比較してビッカース硬さ増大率が大きいこと(これは、電子ビーム照射により鉄基合金の組織が均一化されたことによって、TiB
2含有量の増加に伴う強度上昇が顕著化したためであると考えられる)、電子ビームの出力が大きくなるにつれてビッカース硬さが低下することがわかった。
【符号の説明】
【0094】
1.混合粉末、2.ブレード、3.電子ビーム発生機、4.電子ビーム、5.鉄基合金、6.ベースプレート、7.カバー、8.ワイヤー状の材料、9.造形プラットフォーム、10.下地