(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ブームスプレーヤ
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20250212BHJP
B05B 17/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A01M7/00 J
B05B17/00 101
(21)【出願番号】P 2021152931
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2024-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】小山 剛
(72)【発明者】
【氏名】久野 秀泰
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-074094(JP,A)
【文献】特開2011-093355(JP,A)
【文献】特開2018-042499(JP,A)
【文献】特開2021-010326(JP,A)
【文献】特開2004-313949(JP,A)
【文献】国際公開第2019/215760(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
B05B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(3)上に、車両前後方向前側から、運転席(6)、薬液タンク(11)、エンジンルーム(10)が配置され自走可能な車両(1)と、前記運転席(6)の前方に配置され車両左右方向に延びるセンターブーム(20)と、その端部が、前記センターブーム(20)の端部に回動可能に連結され、前記センターブーム(20)と直線状に並ぶ開位置と前記センターブーム(20)に対して回動され前記車体フレーム(3)の側方に折り畳まれる閉位置との間を移動するサイドブーム(21)と、前記センターブーム(20)及び前記サイドブーム(21)に複数が設けられ薬液を散布する噴霧ノズル(23)と、を備えたブームスプレーヤ(100)において、
前記車体フレーム(3)において前記運転席(6)の前方で車両左右方向の両側に、前記運転席(6)の上方へ延びるように立設された門形のメインフレーム(25)と、
車両前後方向に延びるようにして一対が車両左右方向に離間して設けられ、一端が前記メインフレーム(25)の上部に連結されると共に、他端が前記運転席(6)より後方の車両(1)側に連結されたサポートフレーム(26,41)と、を有する安全フレーム(24)を備え、
前記メインフレーム(25)の強度は、前記サポートフレーム(26,41)の強度より高いことを特徴とするブームスプレーヤ(100)。
【請求項2】
前記車体フレーム(3)は、その前部に、車両左右方向に延びる車体フレーム角パイプ(17)を備え、
前記メインフレーム(25)を構成し上下方向に延びる上下フレーム(27)は、その下部に、車両左右方向内側へ突出する差込角パイプ(30)を備え、
前記差込角パイプ(30)は、前記車体フレーム角パイプ(17)に内挿又は外挿により差し込まれていることを特徴とする請求項1記載のブームスプレーヤ(100)。
【請求項3】
前記車体フレーム角パイプ(17)は、前記センターブーム(20)を上下動するブーム装置(2)の4節リンク機構(15)の後側リンク(16)を支持していることを特徴とする請求項2記載のブームスプレーヤ(100)。
【請求項4】
前記サポートフレーム(26)の前記他端は、前記薬液タンク(11)の後端部まで延びて連結されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のブームスプレーヤ(100)。
【請求項5】
前記車体フレーム(3)の後部の車両左右方向両側から立設された一対の起立部(42)と、
車両左右方向に延びて前記起立部(42)に掛け渡され、前記サイドブーム(21)を受けるためのブーム受け(43)と、を備え、
前記ブーム受け(43)に、前記サポートフレーム(41)の前記他端が連結されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のブームスプレーヤ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームスプレーヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前部に設けられているセンターブームと一直線になるように、車両両側のサイドブームを広げ、運転手の運転により自走しながら、センターブーム及びサイドブームに設けられている多数の噴霧ノズルから、薬液を散布するブームスプレーヤが知られている。
【0003】
このブームスプレーヤでは、例えば圃場等への進入時に、前輪を支点として前方へ回転してしまう前方回転転倒を起こす虞がある。このため、ブームスプレーヤには、前輪を支点とした前方回転転倒時に運転手を保護するための安全領域が、安全フレームにより確保されている。
【0004】
例えば、以下の特許文献1では、車体フレーム(機体フレーム)上で運転席の後側に、薬液タンクを車両左右方向から跨ぐように主柱となる門形のメインフレームが立設され、運転席の前方にも、車体フレームに連結されるようにして門形の前部フレームが立設され、メインフレームの車両左右方向両側の上部と、前部フレームの車両左右方向両側の上部とが、各々の上部フレームにより連結されることによって、安全フレームが構成されている。そして、この安全フレームで囲まれた領域が、安全領域と称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のブームスプレーヤにあっては、車両の前輪を支点とした前方回転転倒時に、前側の門形の前部フレームが例えば地面等の衝突物に衝突すると、門形の前部フレームは、特許文献1の
図1~
図3から見て取ると、細い丸棒か丸パイプから成るため、変形する可能性が高く、安全領域が侵される虞がある。
【0007】
加えて、前側の前部フレームが変形し衝突物が後側のメインフレームに衝突すると、後側のメインフレームが衝突物に衝突するまでの距離が、前側の前部フレームが衝突物に衝突するまでの距離に比して長いため、後側のメインフレームに作用するモーメントが大きくなり、後側のメインフレームも変形してしまい、安全領域が狭くなる虞がある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、安全領域が充分に確保できるブームスプレーヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるブームスプレーヤ(100)は、車体フレーム(3)上に、車両前後方向前側から、運転席(6)、薬液タンク(11)、エンジンルーム(10)が配置され自走可能な車両(1)と、運転席(6)の前方に配置され車両左右方向に延びるセンターブーム(20)と、その端部が、センターブーム(20)の端部に回動可能に連結され、センターブーム(20)と直線状に並ぶ開位置とセンターブーム(20)に対して回動され車体フレーム(3)の側方に折り畳まれる閉位置との間を移動するサイドブーム(21)と、センターブーム(20)及びサイドブーム(21)に複数が設けられ薬液を散布する噴霧ノズル(23)と、を備えたブームスプレーヤ(100)において、車体フレーム(3)において運転席(6)の前方で車両左右方向の両側に、運転席(6)の上方へ延びるように立設された門形のメインフレーム(25)と、車両前後方向に延びるようにして一対が車両左右方向に離間して設けられ、一端がメインフレーム(25)の上部に連結されると共に、他端が運転席(6)より後方の車両(1)側に連結されたサポートフレーム(26,41)と、を有する安全フレーム(24)を備え、メインフレーム(25)の強度は、サポートフレーム(26,41)の強度より高いことを特徴としている。
【0010】
このようなブームスプレーヤ(100)によれば、車体フレーム(3)において運転席(6)の前方で車両左右方向の両側に、運転席(6)の上方へ延びるように立設された門形のメインフレーム(25)の強度が、車両前後方向に延びるようにして一対が車両左右方向に離間して設けられ、一端がメインフレーム(25)の上部に連結されると共に、他端が運転席(6)より後方の車両(1)側に連結されたサポートフレーム(26,41)の強度より高いため、車両(1)の前輪(12)を支点とした前方回転転倒時に、前側の門形のメインフレーム(25)が例えば地面等の衝突物に衝突しても、前側の門形のメインフレーム(25)の変形を概ね抑えることが可能となる。加えて、車両(1)の前輪(12)を支点とした前方回転転倒時に、前側のメインフレーム(25)が衝突物に衝突するまでの距離は短く、メインフレーム(25)に作用するモーメントは小さいため、前側の門形のメインフレーム(25)の変形を概ね抑えることが可能となる。その結果、メインフレーム(25)及びサポートフレーム(26,41)により囲まれる安全領域を充分に確保することができる。
【0011】
ここで、車体フレーム(3)は、その前部に、車両左右方向に延びる車体フレーム角パイプ(17)を備え、メインフレーム(25)を構成し上下方向に延びる上下フレーム(27)は、その下部に、車両左右方向内側へ突出する差込角パイプ(30)を備え、差込角パイプ(30)は、車体フレーム角パイプ(17)に内挿又は外挿により差し込まれているのが好ましい。このような構成を採用した場合、車両(1)の前輪(12)を支点とした前方回転転倒時に、前側の門形のメインフレーム(25)が例えば地面等の衝突物に衝突し、メインフレーム(25)の差込角パイプ(30)が回転しようとした場合、差込角パイプ(30)が車体フレーム角パイプ(17)に差し込まれているため、角パイプ(17,30)同士により差込角パイプ(30)の車体フレーム角パイプ(17)に対する回転が抑制され、メインフレーム(25)が車体フレーム(3)と一体となって、メインフレーム(25)の変形を抑えることができる。
【0012】
また、車体フレーム角パイプ(17)は、センターブーム(20)を上下動するブーム装置(2)の4節リンク機構(15)の後側リンク(16)を支持しているのが好ましい。このような構成を採用した場合、ブーム装置(2)の4節リンク機構(15)の後側リンク(16)を支持している車体フレーム角パイプ(17)に、メインフレーム(25)の差込角パイプ(30)が支持されるため、メインフレーム(25)は、車体フレーム(3)に強固に支持される。
【0013】
また、サポートフレーム(26)の他端は、薬液タンク(11)の後端部まで延びて連結されていると、運転席の真横後ろに、安全フレームを構成する後側の主柱が立設されていた先行技術(特開2004-074094号公報)に比して、より後方位置に、安全フレーム(24)を構成する後側のサポートフレーム(26)の他端が連結されるため、安全領域を後方へ広げることができると共に、運転席(6)への乗降が容易となる。
【0014】
また、車体フレーム(3)の後部の車両左右方向両側から立設された一対の起立部(42)と、車両左右方向に延びて起立部(42)に掛け渡され、サイドブーム(21)を受けるためのブーム受け(43)と、を備え、ブーム受け(43)に、サポートフレーム(41)の他端が連結されているのが好ましい。このような構成を採用した場合、安全フレーム(24)を構成する後側のサポートフレーム(41)の他端が、車体フレーム(3)の後部側のブーム受け(43)に連結されるため、安全領域を後方へ大きく広げることができると共に、ブーム受け(43)が兼用とされ部品点数を低減できる。
【発明の効果】
【0015】
このように本発明によれば、安全領域を充分に確保したブームスプレーヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るブームスプレーヤを前方斜め上方から見た斜視図である。
【
図2】
図1から、日除け、ハンドル、操作機器部、操作部、薬液ホース、電動油圧シリンダ、油圧ホース等を取り外した斜視図である。
【
図3】
図1及び
図2中の車体フレーム角パイプとメインフレームの差込角パイプとの連結部分を拡大して示す斜視図である。
【
図5】車体フレーム角パイプにメインフレームの差込角パイプを連結する前の斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係るブームスプレーヤのサポートフレームを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るブームスプレーヤの好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るブームスプレーヤを前方斜め上方から見た斜視図、
図2は、
図1から、日除け、運転席前の運転操作を行うハンドルや薬液散布操作を行うための操作機器部、運転席前横に配置されサイドブームの開閉操作を行うための開閉レバー等を備えた操作部、噴霧ノズルへ薬液を送るための薬液ホース、センターブームを昇降させるための電動油圧シリンダ、電動油圧シリンダに対する油圧ホース等を取り外した斜視図、
図3は、
図1及び
図2中の車体フレーム角パイプとメインフレームの差込角パイプとの連結部分を拡大して示す斜視図、
図4は、
図1及び
図2中の安全フレームを示す斜視図、
図5は、車体フレーム角パイプにメインフレームの差込角パイプを連結する前の斜視図であり、本実施形態のブームスプレーヤは、例えば圃場において走行しながら例えば作物に薬液を散布するものである。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」は、ブームスプレーヤを基準とした方向とする。
【0018】
図1及び
図2に示すように、ブームスプレーヤ100は自走式であり、走行可能な車両1と、車両1から薬液を散布するためのブーム装置2と、を備えている。
【0019】
車両1は、車両前後方向に長い略矩形状の車体フレーム3を備えている。車体フレーム3の前部上には、
図1に示すように、作業者が着座する空間を形成しハンドル4による運転操作や、操作機器部5による薬液散布操作等を行うための運転席6が設けられている。運転席6の前横には、後述のサイドブーム21の開閉操作を行うための開閉レバー7等を備えた操作部8が配置されている。運転席6の上方には、日除け9が配置されている。日除け9は、後述の安全フレーム24上に設置されている。
【0020】
図1及び
図2に示すように、車体フレーム3の後部上には、エンジンや薬液圧送ポンプ等を収容するエンジンルーム10が設けられている。車体フレーム3上で運転席6とエンジンルーム10との間には、ブーム装置2から散布される薬液を収容する薬液タンク11が搭載されている。
【0021】
車体フレーム3の車両左右方向両側下方で前後には、一対の前輪12及び一対の後輪13がそれぞれ設けられている。前輪12、後輪13は、エンジンの駆動により回転する。本実施形態では4輪駆動のため、前輪12及び後輪13が回転するが、前輪駆動、後輪駆動であっても良い。なお、車体フレーム3の後端部には、車体フレーム3上に対して上り下りするためのステップ14が設けられている。
【0022】
車体フレーム3において運転席6より前方には、車両左右方向に対をなすブームリフトとしての4節リンク機構15が前方に延びるようにそれぞれ配設されている。上記ブーム装置2は、4節リンク機構15を介して車体フレーム3に支持されている。
【0023】
具体的には、4節リンク機構15は、
図1~
図3に示すように、上下方向に延びる後側リンク16が、車体フレーム3の前部で車両左右方向に延びる剛性の高い車体フレーム角パイプ17に、支持部材18を介して固定されている(
図3参照)。この4節リンク機構15が、
図1に示すように、電動油圧シリンダ(アクチュエータ)44の伸縮動作により作動することによって、4節リンク機構15の前側リンクに連結された水平制御装置19が昇降(上下動)する。
【0024】
ブーム装置2は、
図1及び
図2に示すように、4節リンク機構15の上下方向に延びる前側リンクに連結された水平制御装置19と、水平制御装置19に揺動可能に連結され、車両左右方向に延びるセンターブーム20と、センターブーム20の両端に回動可能に連結された一対のサイドブーム21と、を備えている。センターブーム20は、水平制御装置19により、重力により水平となるように車両左右方向に振り子状に揺動可能に支持されている。すなわち、センターブーム20は、水平制御装置19に従い、重力により水平となる。なお、水平制御装置19には、センターブーム20の水平制御を任意に停止させるためのロック装置が付設されている。
【0025】
センターブーム20及びサイドブーム21には、これらに沿ってそれぞれノズルパイプ22が取り付けられており、各ノズルパイプ22には、薬液散布用の噴霧ノズル23が、長手方向に沿って複数設けられている。サイドブーム21は、薬液散布を行うときには、図示の閉位置から回動移動しセンターブーム20に対して一直線状となる開位置に広げられる。このように、センターブーム20及びサイドブーム21並びに水平制御装置19を備えるブーム装置2は、4節リンク機構15を介して、車体フレーム角パイプ17に支持されているため、車体フレーム角パイプ17の強度は非常に高くなっている。
【0026】
そして、エンジンの駆動により自走しながら薬液圧送ポンプが駆動され、薬液タンク11の薬液は、センターブーム20及びサイドブーム21のノズルパイプ22を介して噴霧ノズル23から下方へ散布される。サイドブーム21は、薬液散布を行わないときには図示の閉位置に回動移動して折り畳まれ、車体フレーム3の側方において斜め後ろ上がりの状態で格納されている。
【0027】
ブームスプレーヤ100には、運転手を保護するための安全フレーム24が設けられている。安全フレーム24は、前側のメインフレーム25と、後側のサポートフレーム26と、を備え、このメインフレーム25及びサポートフレーム26上に上記日除け9が設置されている。
【0028】
メインフレーム25は、
図1、
図2及び
図4に示すように、門形に形成され、
図1及び
図2に示すように、車体フレーム3において運転席6の前方で車両左右方向の両側に、運転席6の上方へ延びるように立設されている。
【0029】
サポートフレーム26は、車両前後方向に延びるようにして一対が車両左右方向に離間して設けられ、一端がメインフレーム25の上部に連結されると共に、他端が薬液タンク11の後端部上に連結されている。
【0030】
メインフレーム25は、ここでは、角パイプで構成され、
図4に示すように、車両左右方向に離間し上下方向に延びる上下フレーム27を、曲りフレーム28を介して、車両左右方向に延びる連結フレーム29で連結したものであり、連結フレーム29は、組立上のため、ここでは、2分割にされている。
【0031】
上下フレーム27の下部には、車両左右方向内側へ突出する差込角パイプ30が、車体フレーム角パイプ17(
図3及び
図5参照)に差し込まれるものとして設けられている。この差込角パイプ30の上下フレーム27寄りの位置には、差込角パイプ30を支持部材18(
図3及び
図5参照)に取り付けるための取付部材31が例えば溶接等により固定されている。取付部材31の内側には、車体フレーム角パイプ17において支持部材18より車両左右方向外側に突出する部分32(
図5参照)を収容するための凹部33が凹設されている。なお、
図3及び
図5においては、一部のボルト、ナット等は省略されている。
【0032】
そして、上下フレーム27の差込角パイプ30の取付部材31の凹部33(
図4参照)に、車体フレーム角パイプ17の支持部材18より車両左右方向外側に突出する部分32(
図5参照)が収容されるようにして、
図3に示すように、差込角パイプ30を車体フレーム角パイプ17に内挿により差し込みながら、取付部材31を支持部材18に突き当て、当該取付部材31を例えばボルト・ナット等の締結手段により、支持部材18に固定する。
【0033】
この状態で、車体フレーム角パイプ17と、当該車体フレーム角パイプ17に内挿された差込角パイプ30の対面する面同士は、ほぼ接触した状態にある。
【0034】
次いで、
図4に示すように、上下フレーム27の上部同士を、曲りフレーム28、連結フレーム29を介して結合部34により連結することにより、
図2に示すように、車体フレーム角パイプ17に連結された門形のメインフレーム25が得られる。
【0035】
サポートフレーム26は、ここでは、丸パイプで構成され、
図4に示すように、車両左右方向に離間し車両前後方向に延びる前後フレーム35に、後方下方へ傾斜する傾斜フレーム36、曲りフレーム37を介して、下方へ延びる下方フレーム38を連結したものであり、前後フレーム35同士は、車両左右方向に延びる補強フレーム39により連結され補強されている。
【0036】
そして、サポートフレーム26の前後フレーム35を、門形のメインフレーム25の上部に連結すると共に、サポートフレーム26の下方フレーム38を、
図2に示すように、例えばボルト・ナット等の締結手段により、薬液タンク11の後端部上に固定することにより、運転席6の周囲に安全領域を確保する安全フレーム24が得られる。
【0037】
ここで、特に本実施形態では、メインフレーム25の強度は、サポートフレーム26の強度より高くなっている。
【0038】
具体的には、メインフレーム25を構成する角パイプは、ここでは、材質STKR400(角形鋼管)が用いられ、引張強さ400N/mm2、肉厚3.2mm、部品寸法50mm×50mm、断面係数8787.836928が用いられている。
【0039】
一方、サポートフレーム26を構成する丸パイプは、ここでは、材質SGP(配管用炭素鋼管)が用いられ、引張強さ290N/mm2、肉厚2.3mm、部品寸法直径31.8mm、断面係数1467.197592が用いられている。
【0040】
このように、引張強さで単純比較してみても、メインフレーム25の方が余裕をもってサポートフレーム26より強度が高くなっている。
【0041】
因みに、メインフレーム25の構成は門形のため、上下フレーム27のみの場合(連結フレーム29がない場合)に比して、車両左右方向からの荷重に対して十分な強度が確保されている。
【0042】
このように構成されたブームスプレーヤ100によれば、例えば圃場等への進入時に、前輪12を支点として前方へ回転してしまう前方回転転倒を起こした場合、車体フレーム3において運転席6の前方で車両左右方向の両側に、運転席6の上方へ延びるように立設された門形のメインフレーム25の強度が、車両前後方向に延びるようにして一対が車両左右方向に離間して設けられ、一端がメインフレーム25の上部に連結されると共に、他端が運転席6より後方の車両1側である薬液タンク11の後端部上に連結されたサポートフレーム26の強度より高いため、前側の門形のメインフレーム25が例えば地面等の衝突物に衝突しても、前側の門形のメインフレーム25の変形を概ね抑えることができる。加えて、前輪12を支点とした前方回転転倒を起こした場合、前側のメインフレーム25が衝突物に衝突するまでの距離は短く、メインフレーム25に作用するモーメントは小さいため、前側の門形のメインフレーム25の変形を概ね抑えることができる。その結果、メインフレーム25及びサポートフレーム26により囲まれる安全領域を充分に確保することができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、車体フレーム3は、その前部に、車両左右方向に延びる車体フレーム角パイプ17を備え、メインフレーム25を構成し上下方向に延びる上下フレーム27は、その下部に、車両左右方向内側へ突出する差込角パイプ30を備え、差込角パイプ30は、車体フレーム角パイプ17に内挿により差し込まれているため、前輪12を支点とした前方回転転倒時に、前側の門形のメインフレーム25が例えば地面等の衝突物に衝突し、メインフレーム25の差込角パイプ30が回転しようとしても、角パイプ17,30同士により差込角パイプ30の車体フレーム角パイプ17に対する回転が抑制され、メインフレーム25が車体フレーム3と一体となって、メインフレーム25の変形を抑えることができる。
【0044】
また、ブーム装置2の4節リンク機構15の後側リンク16を支持している車体フレーム角パイプ17に、メインフレーム25の差込角パイプ30が支持されているため、メインフレーム25は、車体フレーム3に強固に支持されている。
【0045】
また、運転席の真横後ろに、安全フレームを構成する後側の主柱が立設されていた先行技術(特開2004-074094号公報)に比して、より後方位置である薬液タンク11の後端部上に、安全フレーム24を構成する後側のサポートフレーム26の他端が連結されるため、安全領域を後方へ広げることができると共に、運転席6への乗降が容易となっている。
【0046】
図6は、本発明の他の実施形態に係るブームスプレーヤのサポートフレームを示す斜視図である。
【0047】
この実施形態が、先の実施形態と違う点は、サポートフレーム26の傾斜フレーム36及び曲りフレーム37並びに下方フレーム38(
図4参照)に代えて、より後方へ延びる傾斜フレーム40を備えたサポートフレーム41を用いた点である。
【0048】
ここで、車体フレーム3の後部である後端部の車両左右方向両側からは、一対の起立部42が立設されており、一対の起立部42上に対して、車両左右方向に延び、サイドブーム21を受けるためのブーム受け43が掛け渡され連結されている。
【0049】
そして、このブーム受け43に対して、サポートフレーム41の他端である傾斜フレーム40の後端が、例えばUボルト、ナット等の締結手段を介して連結されている。
【0050】
このような構成によれば、安全フレームを構成する後側のサポートフレーム41の他端が、車体フレーム3の後部側のブーム受け43に連結されるため、安全領域を後方へ大きく広げることができると共に、ブーム受け43が兼用とされ部品点数を低減できる。
【0051】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好適であるとして、差込角パイプ30を、車体フレーム角パイプ17に内挿により差し込むようにしているが、外挿により差し込むようにしても良い。
【0052】
また、上記実施形態においては、4節リンク機構15を用いているが、4節リンク機構15以外の他のブームリフトを用いても良い。
【0053】
また、上記実施形態においては、車体フレーム角パイプ17及び差込角パイプ30を用いているが、例えば丸パイプであっても良い。但し、この場合には、互いに回らないように溶接等により固定することが必要となる。
【0054】
また、サポートフレーム26,41の補強フレーム39は無くても良い。また、サポートフレームは、その他端が、門形を成し車両1側へ連結される構成であっても良い。
【0055】
また、上記実施形態においては、特に好ましいとして、メインフレーム25に角パイプを用いているが、前述したSTKR400と同等の強度の鋼材としてSS400(一般構造用圧延鋼材)を用いても良く、この場合には、例えばブラケット等を介して、車体フレーム3上又は横に、例えばボルト、ナット等の締結手段や溶接により連結する構成が挙げられる。
【0056】
また、メインフレーム25、サポートフレーム26,41に用いる部材、材質は、上記に限定されるものではなく、要は、メインフレーム25の強度が、サポートフレーム26,41の強度より高ければ良い。
【0057】
また、上記実施形態においては、サイドブーム21がセンターブーム20の両端部に連結されているが、センターブーム20の一方の端部のみに連結されているブームスプレーヤにも適用できる。
【0058】
また、車両を構成する車体フレームに回転可能に設けられ、前後方向に離間して配置された駆動輪と遊動輪との間に、クローラが掛け回されて成るクローラ式のブームスプレーヤに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…車両、2…ブーム装置、3…車体フレーム、6…運転席、10…エンジンルーム、11…薬液タンク、15…4節リンク機構、16…後側リンク、17…車体フレーム角パイプ、20…センターブーム、21…サイドブーム、23…噴霧ノズル、24…安全フレーム、25…メインフレーム、26,41…サポートフレーム、27…上下フレーム、30…差込角パイプ、42…起立部、43…ブーム受け、100…ブームスプレーヤ。