(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞を用いたミトコンドリア増強療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20250212BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20250212BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20250212BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250212BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20250212BHJP
C12N 5/0789 20100101ALN20250212BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20250212BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P13/12
A61P21/00
A61P43/00 105
C12N5/0775
C12N5/0789
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2021503582
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(86)【国際出願番号】 IL2019050828
(87)【国際公開番号】W WO2020021541
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-21
(32)【優先日】2018-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522384293
【氏名又は名称】ミノヴィア セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】イヴギ オハナ,ナタリエ
(72)【発明者】
【氏名】ハラヴィー,ウリエル
(72)【発明者】
【氏名】ブクスファン,シュムエル
(72)【発明者】
【氏名】シェール,ノア
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507690(JP,A)
【文献】国際公開第2018/088874(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101708(WO,A1)
【文献】特表2002-523434(JP,A)
【文献】日老医誌,2006年,43, [3],p.274-282
【文献】日内会誌,2017年,106, [5],p.1019-1028
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00ー35/768
A61K 36/06-36/068
A61P 13/12
A61P 21/00-21/06
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の衰弱状態を治療または縮小するのに使用するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、前記対象の体重1キログラムあたり少なくとも10
5~2×10
7個の幹細胞を含み、前記幹細胞が、前記細胞の生存能力を支援することができる薬学的に許容可能な液体培地中に懸濁されており、
前記幹細胞が、外因性ミトコンドリアで富化されており、かつミトコンドリア富化前の前記幹細胞のミトコンドリアDNA含有量と比較して増加したミトコンドリアDNA含有量を有し、かつ
前記衰弱状態が、加齢に伴う中程度の運動機能障害、加齢に伴う腎臓機能の低下、加齢に伴う筋肉機能の低下、加齢に伴う筋力の低下、および加齢に伴う協調運動障害からなる群から選択され、かつ前記幹細胞はCD34+細胞である、医薬組成物。
【請求項2】
前記富化が、百万個の細胞あたり少なくとも0.044~最大176ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量と前記幹細胞を接触させることを含むか、または
前記富化が、百万個の細胞あたり0.044~最大17.6ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量と前記幹細胞を接触させることを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記幹細胞が、自家、同系、またはドナーからであるか、
前記幹細胞が、衰弱状態に罹患している対象に対して同種異系であるか、または
前記幹細胞が、衰弱状態に罹患している対象に対して同種異系であり、かつ前記治療が、衰弱状態に罹患している対象に、前記対象と前記同種異系のドナーの幹細胞との間の有害な免疫原性反応を防止、遅延、最小化、または無効化する薬剤を投与するステップをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、特定の組織または器官に、
全身非経口投与によって投与されるか、または静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、および組織または器官への直接注射からなる群から選択される非経口経路により投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ミトコンドリア富化された前記幹細胞が、ミトコンドリア富化前の前記幹細胞における対応するレベルと比較して、
(i)増加したCS活性レベル、
(ii)コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体サブユニットA(SDHA)およびチトクロームCオキシダーゼ(COX1)から選択される少なくとも1つのミトコンドリアタンパク質の増加した含有量、
(iii)増加したO
2消費率、
(iv)増加したATP産生率、または
(v)それらの任意の組み合わせ
を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
富化されていない幹細胞、巨核球、赤血球、肥満細胞、筋芽細胞、好塩基球、好中球、好酸球、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、小リンパ球、Tリンパ球、Bリンパ球、形質細胞、細網細胞、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
増加したミトコンドリアDNA含有量が、内因性および/または外因性ミトコンドリア由来である、請求項5または6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記外因性ミトコンドリアが、ミトコンドリアで富化された前記幹細胞中の全ミトコンドリアの少なくとも1%を構成する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記幹細胞が、骨髄系共通前駆細胞、リンパ球系共通前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記幹細胞が、少なくとも部分的に精製されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ミトコンドリアが、胎盤、培養で成長させた胎盤細胞、および血液細胞からなる群から選択される細胞または組織に由来する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が、前記対象の体重1キログラムあたり少なくとも約10
6個のミトコンドリア富化幹細胞を含むか、または前記医薬組成物が、ミトコンドリアで富化された、合計5×10
5~5×10
9個の幹細胞を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞、ならびに老齢および老齢関連疾患を含む衰弱状態ならびに抗癌療法の治療の衰弱作用を縮小するためのかかる細胞を利用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアは、ほとんどの真核細胞に見出される、直径0.5~1.0μmの範囲の膜結合小器官である。ミトコンドリアは、ほぼ全ての真核生物に見出され、細胞型に応じて数および位置が異なる。ミトコンドリアは、独自のDNA(mtDNA)と、RNAおよびタンパク質を合成するための独自の機構とを含有する。mtDNAは37個の遺伝子しか含有しないため、哺乳類の体内の遺伝子産物のほとんどは核DNAによってコードされている。
【0003】
ミトコンドリアは、ピルビン酸酸化、クレブス回路、ならびにアミノ酸、脂肪酸、およびステロイドの代謝などの、真核細胞内の多数の重要な課題を実行する。しかしながら、ミトコンドリアの主な機能は、電子伝達鎖および酸化的リン酸化系(「呼吸鎖」)によるアデノシン三リン酸(ATP)としてのエネルギーの生成である。ミトコンドリアが関与する追加のプロセスには、熱産生、カルシウムイオンの貯蔵、カルシウムシグナリング、プログラム細胞死(アポトーシス)、および細胞増殖が含まれる。
【0004】
細胞内のATP濃度は、典型的には1~10mMであるATPは、エネルギー源として単糖および複合糖(炭水化物)または脂質を使用した酸化還元反応によって産生され得る。複雑な燃料をATPに合成するには、まず、より小さく、より単純な分子に分解する必要がある。複雑な炭水化物は、グルコースおよびフルクトースなどの単糖に加水分解される。脂肪(トリグリセリド)は代謝されて脂肪酸およびグリセロールをもたらす。
【0005】
グルコースを二酸化炭素に酸化する全体的なプロセスは細胞呼吸として既知であり、グルコースの単一分子から約30個のATPの分子を産生することができる。ATPは、いくつかの異なる細胞プロセスによって産生される。真核生物においてエネルギーを生成するために使用される3つの主要な経路は、解糖およびクエン酸回路/酸化的リン酸化(両方とも細胞呼吸の構成要素)およびベータ酸化である。非光合成の真核生物によるこのATP産生の大部分はミトコンドリアで起こり、典型的な細胞の総体積のほぼ25%を占める場合がある。様々なミトコンドリア障害は、ミトコンドリアDNAの欠損遺伝子に起因することが既知である。
【0006】
本発明者らのWO2016/135723は、ミトコンドリア病の治療のためにミトコンドリアで富化された哺乳類の骨髄細胞を開示している。
【0007】
US2012/0058091は、ミトコンドリア障害に関する診断および治療的処置を開示している。この方法は、異種ミトコンドリアを卵母細胞または胚性細胞にマイクロインジェクションすることを伴い、異種ミトコンドリアは、卵母細胞または胚性細胞において少なくとも正常レベルのミトコンドリア膜電位を達成することができる。
【0008】
WO2001/046401は、種間核移植によって産生された胚性または幹様細胞を開示している。核移動効率は、適合性のある細胞質またはミトコンドリアDNA(同じ種またはドナー細胞もしくは核に類似)の導入によって増強される。
【0009】
WO2013/002880は、受精能増強手順で使用するために、老化した卵母細胞の品質を回復させるか、卵母細胞幹細胞を増強するか、またはその誘導体(例えば、細胞質または単離ミトコンドリア)を改善するための生体エネルギー剤を含む組成物および方法を記載する。
【0010】
US2013/0022666は、脂質担体およびミトコンドリアを含む組成物、ならびに外因性ミトコンドリアを細胞に送達する方法、およびミトコンドリア機能障害に関連する障害の進行を治療または逆転させる方法を、それを必要とする哺乳類対象に提供する。
【0011】
WO2017/124037は、単離されたミトコンドリアまたは合わせたミトコンドリア剤を含む組成物、およびかかる組成物を使用して障害を治療する方法に関する。
【0012】
US2008/0275005は、ミトコンドリアを標的とした抗酸化化合物に関する。本発明の化合物は、抗酸化部分に共有結合した親油性カチオンを含む。
【0013】
US9855296は、心臓または心血管機能の増強を必要とするヒト対象においてそれを行うための方法を開示し、該方法は、該対象に、該心臓または心血管機能を増強するのに十分な量の単離された実質的に純粋なミトコンドリアを含む医薬組成物を投与することを含み、該ミトコンドリアは、同系ミトコンドリアまたは同種異系ミトコンドリアである。
【0014】
US9603872は、ミトコンドリア機能障害から生じる障害の治療におけるミトコンドリア置換のための方法、キット、および組成物を提供している。本発明はまた、ミトコンドリアの構造異常に基づいて神経精神障害(例えば、双極性障害)および神経変性障害を診断する方法を特徴とする。
【0015】
US2018/0071337は、細胞から単離されたヒトミトコンドリアおよび薬学的に許容される賦形剤を含む治療組成物を開示しており、ミトコンドリアは、少なくとも1つのポリペプチドまたは糖タンパク質の有無にかかわらず、脂質二重層、小胞、またはリポソームを含む担体中にあり得る。
【0016】
US2001/0021526は、ミトコンドリアの欠損に関連する疾患の細胞および動物モデルを提供している。ミトコンドリアの欠損に関連する障害の研究のためのモデルシステムとして有用性を有するサイブリッド細胞株が記載されている。
【0017】
本発明者らに対するWO2013/035101は、ミトコンドリア組成物およびそれを使用する治療方法に関し、部分的に精製された機能的なミトコンドリアの組成物、および組成物を使用して、組成物を必要とする対象に組成物を投与することによってミトコンドリア機能の増加から恩恵を受ける病態を治療する方法を開示する。
【0018】
ミトコンドリアの宿主細胞または組織への移動を誘導する試みが報告されている。ほとんどの方法は、注射によるミトコンドリアの能動的移動が必要である(例えば、McCully et al.Am J Physiol Heart Circ Physiol.2009,296(1):H94-H105)。リポソームなどのビヒクルに貪食されたミトコンドリアの移動も既知である(例えば、Shi et al.Ethnicity and Disease,2008;18(S1):43)。
【0019】
ミトコンドリアの移動は、インビトロで細胞間で自発的に起こり得ることが示されているが、無傷の全機能的ミトコンドリアではなくmtDNAが移動されることが確立されただけである(例えば、Plotnikov et al.Exp Cell Res. 2010,316(15):2447-55;Spees et al.Proc Natl Acad Sci,2006;103(5):1283-8)。エンドサイトーシスまたは内在化によるインビトロでのミトコンドリア移動も実証されている(Clark et al.,Nature,1982:295:605-607、Katrangi et al.,Rejuvenation Research,2007;10(4):561-570)。
【0020】
US2011/0105359は、自己持続体(self-sustaining body)の形態の細胞の凍結保存された組成物、ならびに細胞および細胞内分画を提供する。一方、心臓保護のための早期再灌流中に単離されたミトコンドリアを注射する試みは、凍結されたミトコンドリアが心臓保護を提供できず、新たに単離されたミトコンドリアと比較して有意に減少した酸素消費を示したため、心臓保護には新たに単離されたミトコンドリアが必要であることを示した(McCully et al.、同上)。
【0021】
WO2016/008937は、ドナー細胞の集団から単離されたミトコンドリアのレシピエント細胞の集団への細胞間移動のための方法に関する。本方法は、ある量のミトコンドリアの移動の改善された有効性を示す。
【0022】
US2012/0107285は、細胞のミトコンドリア増強を対象としている。ある特定の実施形態には、幹細胞を改変する方法、または改変された幹細胞を少なくとも1つの生体組織に投与する方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
老齢は、多くのヒト疾患の最大の既知のリスク因子の1つである。老齢関連疾患は、老化が進むにつれて頻度が増加することで最も頻繁に見られる疾患である。本質的に、老齢関連疾患は老化から生じる合併症である。すべての成体動物は年を取るが、すべての成体動物が老齢関連疾患を経験するわけではないため、老齢関連疾患は老齢プロセス自体とは区別される。
【0024】
ミトコンドリアの質および活性の低下は、正常な老齢と関連しており、広範な老齢関連疾患の発症と相関している。ミトコンドリアは、細胞老化、慢性炎症、および幹細胞活性における老齢依存性低下を含む、老齢プロセスの特定の態様に寄与している。豊富な裏付けとなる証拠は、ミトコンドリアDNA突然変異の蓄積により、ミトコンドリア機能障害が年齢とともに起こることを示している。様々なミトコンドリアDNA点突然変異は、ヒトの脳、心臓、骨格筋、および肝臓組織において、年齢とともに大幅に増加することが示されている。ミトコンドリアDNAの欠失/挿入の頻度の増加は、動物モデルおよびヒトの両方で加齢とともに報告されている。複製サイクルおよびミトコンドリアDNA突然変異の蓄積は、ミトコンドリアが老齢のいくつかの重要な態様に影響を与えるかまたは調節するような、幹細胞老齢の根底にある保存された機構である可能性があると仮定されている(Sun et al.,Cell,2016,61:654-66;Srivastava,Genes,2017,8:398、Ren et al.,Genes,2017,8:397)。
【0025】
癌は、体の器官または組織の異常な細胞の制御されない増殖によって引き起こされる。手術、化学療法、放射線療法、免疫療法、標的療法、ホルモン療法、幹細胞移植を含む、様々な種類の癌治療が利用可能である。癌治療は、倦怠感、悪心および嘔吐、貧血、下痢、食欲不振、血小板減少症、せん妄、脱毛、生殖能力の問題、末梢神経障害、痛み、リンパ浮腫を含む、重篤な有害作用を引き起こすことが多い。これらの衰弱作用は、癌患者の生活の質を著しく低下させる。骨髄切除を受けた造血性悪性腫瘍を患う癌患者の骨髄を補充するために骨髄細胞を使用することは周知である。骨髄移植は、ほとんどの場合、適合した健康なドナーを使用する。しかしながら、多発性骨髄腫などの場合、自家骨髄を実行することができる。非造血性癌を治療するための骨髄細胞の使用は、それらの患者の治療において通例ではない。
【0026】
老齢および老齢関連疾患などの様々な状態による衰弱作用に罹患している対象、ならびに化学療法または放射線療法を受けている癌患者の生活の質を高めるという満たされていないニーズがある。ミトコンドリア機能の低下を逆転させることは、老齢の作用を遅らせ、老齢関連疾患ならびに抗癌治療の衰弱作用を縮小させる可能性がある。
【発明の概要】
【0027】
本発明は、健康な機能的ミトコンドリアで富化された哺乳類幹細胞、ならびに老齢および老齢関連疾患ならびに抗癌治療の有害事象を含む多くの状態の衰弱作用を縮小するための方法を提供する。意外なことに、健康なミトコンドリアで富化された活性細胞を移植することで、老齢の症状および老齢関連疾患の進行を大幅に遅らせることができることが今初めて示された。さらに、健康なミトコンドリアで富化された幹細胞を使用するミトコンドリア増強療法は、抗癌治療を受けている癌患者における化学療法、放射線療法、および/またはモノクローナル抗体を用いた免疫療法の衰弱作用を緩和することができる。特に、本発明は、機能的ミトコンドリアで富化された自家またはドナー幹細胞を含む幹細胞を含む組成物を提供する。これらの細胞は、治療される対象に導入される場合、衰弱状態の作用を緩和または減少させるのに有用である。
【0028】
特定の実施形態では、対象は、健康なドナーから得られた機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞で治療される。健康なドナーミトコンドリアの簡便な供給源には、胎盤ミトコンドリアまたは血液細胞由来のミトコンドリアが含まれるが、これらに限定されない。したがって、本発明は、老齢および老齢関連疾患ならびに癌患者における抗癌治療の衰弱作用を治療または縮小するための、同種異系、自家、または同系の「ミトコンドリア富化」幹細胞の使用方法を提供する。
【0029】
本発明は、マウスの満期胎盤からの健康なミトコンドリアで富化された骨髄細胞を受ける老齢C57BLマウスが、ミトコンドリアで富化されていない骨髄を受ける同齢のマウスと比較して、機能的、認知的、および生理学的血液検査において改善を示すという発見に部分的に基づいている。
【0030】
様々な実施形態によれば、幹細胞の供給源は、自家、同系のものであるか、またはドナーからのものであり得る。衰弱状態を有する対象への、エクスビボで健康なミトコンドリアで富化され、同じ対象に戻された幹細胞の提供は、同種異系細胞療法を伴う他の方法に比べて利益を提供する。例えば、提供される方法は、時間および費用がかかるプロセスであり、常に成功するとは限らない、集団をスクリーニングし、対象とヒト白血球抗原(HLA)適合するドナーを見つける必要性を排除する。本方法は、対象の生涯にわたる免疫抑制療法の必要性をさらに有利に排除し、その結果、対象の体は同種異系の細胞集団を拒絶しない。したがって、本発明は、ヒト幹細胞が対象の体から取り除かれ、健康な機能的ミトコンドリアでエクスビボで富化され、同じ患者に戻される、エクスビボ療法の独自の方法論を有利に提供する。さらに、本発明は、いかなる理論または機構に拘束されることなく、異なる組織において体全体を循環し、対象のエネルギーレベルを高め、それにより、衰弱状態を有する対象の生活の質を高める幹細胞の投与に関する。
【0031】
本発明は、機能的ミトコンドリアが無傷の線維芽細胞、造血幹細胞、および骨髄細胞に入ることができ、線維芽細胞、造血幹細胞、および骨髄細胞を機能的ミトコンドリアで処理することが、ミトコンドリア含有量、細胞生存、およびATP産生を増加させるという驚くべき発見に部分的に基づいている。
【0032】
本発明は、初めて、増強または強化されたミトコンドリア活性を有する幹細胞を老齢対象または癌患者に提供する。これらの幹細胞は、適切な供給源からの健康な機能的ミトコンドリアで富化される。典型的には、ミトコンドリアは、血液細胞、胎盤細胞、胎盤細胞培養物、または他の好適な細胞株から得ることができる。各可能性は、本発明の別個の実施形態である。
【0033】
本発明は、一態様では、単離されたまたは部分的に精製された凍結-解凍した機能的ヒトミトコンドリアを、衰弱状態に罹患する対象からまたはドナーから得られるかまたは由来する幹細胞に導入すること、および細胞の生存能力を支援することができる薬学的に許容可能な液体培地中、患者の体重1キログラムあたり少なくとも105~2×107個の「ミトコンドリア富化」ヒト幹細胞を衰弱状態に罹患する対象に移植することにより、様々な状態の衰弱作用を治療または縮小するための方法を提供する。
【0034】
別の態様によれば、本発明は、対象の衰弱状態を治療または縮小するための方法を提供し、これには、対象に、凍結-解凍した健康な機能的外因性ミトコンドリアで富化された少なくとも5*105~5*109個のヒト幹細胞を含む医薬組成物を非経口投与することが含まれ、衰弱状態は、老齢、老齢関連疾患、および抗癌治療の続発症からなる群から選択される。
【0035】
さらに別の態様によれば、本発明は、対象の衰弱状態を治療または縮小するのに使用するための医薬組成物を提供し、医薬組成物は、対象の体重1キログラムあたり少なくとも105~2×107個のヒト幹細胞を含み、ヒト幹細胞は、細胞の生存能力を支援することができる薬学的に許容可能な液体培地中に懸濁され、ヒト幹細胞は、凍結-解凍した健康な機能的外因性ミトコンドリアで富化され、衰弱状態は、老齢、老齢関連疾患、および抗癌治療の続発症からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、幹細胞のミトコンドリア富化は、百万個の細胞あたり少なくとも0.088~最大176ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。さらなる実施形態によれば、幹細胞のミトコンドリア富化は、百万個の細胞あたり0.88~最大17.6ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、単離されたミトコンドリアの体積は、所望の濃度でレシピエント細胞に添加される。ミトコンドリアドナー細胞の数とミトコンドリアレシピエント細胞の数との比率は、2:1(ドナー細胞対レシピエント細胞)を超える比率である。典型的な実施形態では、比率は、少なくとも5、あるいは少なくとも10以上である。特定の実施形態では、ミトコンドリアが収集されるドナー細胞とレシピエント細胞との比率は、少なくとも20、50、100より高い。各可能性は、別個の実施形態である。
【0037】
いくつかの実施形態では、衰弱状態を有する対象は、老齢対象である。ある特定の実施形態では、衰弱状態を有する対象は、老齢関連疾患(複数可)を患っている。他の実施形態では、衰弱状態を有する対象は、化学療法、放射線療法、モノクローナル抗体を用いた免疫療法、またはそれらの組み合わせを受けている癌患者である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0038】
ある特定の実施形態では、健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアは、同種異系ミトコンドリアである。他の実施形態では、健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアは、自家または同系であり、すなわち、同じ母体血統のものである。
【0039】
別の態様では、本発明は、健康なミトコンドリアでヒト幹細胞を富化するためのエクスビボ法を提供し、本方法は、(i)衰弱状態に罹患している個体からまたは衰弱状態に罹患していない健康なドナーから得られたかまたは由来する複数のヒト幹細胞を含む、第1の組成物を提供するステップと、(ii)衰弱状態に罹患していない健康なドナーから得られた単離されたまたは部分的に精製された凍結-解凍した複数のヒトの機能的で健康な外因性ミトコンドリアを含む、第2の組成物を提供するステップと、(iii)第1の組成物のヒト幹細胞を、第2の組成物の凍結-解凍したヒト機能的ミトコンドリアと、106個の幹細胞あたり0.088~176mUのCS活性の比率で接触させるステップと、(iv)凍結-解凍したヒト機能的ミトコンドリアがヒト幹細胞に入るのを可能にする条件下で(iii)の組成物をインキュベートし、それにより、該凍結-解凍したヒト幹細胞を該ヒト機能的ミトコンドリアで富化するステップと、を含み、富化されたヒト幹細胞の機能的ミトコンドリア含有量は、第1の組成物中のヒト幹細胞の健康な機能的ミトコンドリア含有量よりも検出可能に高い。
【0040】
特定の実施形態では、衰弱状態に罹患している対象は、衰弱性抗癌治療による治療後の癌患者である。したがって、本発明は、ヒト幹細胞を健康な機能的外因性ミトコンドリアで富化するためのエクスビボ法を提供し、本方法は、(i)悪性疾患に罹患している個体からまたは悪性疾患に罹患していない健康な対象からの複数のヒト幹細胞を含む、第1の組成物を提供するステップと、(ii)抗癌治療前の、悪性疾患に罹患している同じ個体からまたは悪性疾患に罹患していない健康な対象から得られた単離されたまたは部分的に精製された凍結-解凍した複数のヒト機能的ミトコンドリアを含む、第2の組成物を提供するステップと、(iii)第1の組成物のヒト幹細胞を、第2の組成物の凍結-解凍したヒト機能的ミトコンドリアと、106個の幹細胞あたり0.088~176mUのCS活性の比率で接触させるステップと、(iv)ヒト機能的ミトコンドリアが凍結-解凍したヒト幹細胞に入るのを可能にする条件下で(iii)の組成物をインキュベートし、それにより、該ヒト幹細胞を該ヒト機能的ミトコンドリアで富化するステップと、を含み、富化されたヒト幹細胞の機能的ミトコンドリア含有量は、第1の組成物中のヒト幹細胞の健康な機能的ミトコンドリア含有量よりも検出可能に高い。
【0041】
いくつかの実施形態では、健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアがヒト幹細胞に入るのを可能にする条件は、ヒト幹細胞を、該健康な機能的外因性ミトコンドリアとともに、16~37℃の範囲の温度で0.5~30時間の範囲の時間にわたってインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアがヒト幹細胞に入るのを可能にする条件は、細胞の生存を支援する環境下の培養培地中で、ヒト幹細胞を、該健康な機能的外因性ミトコンドリアとともに、16~37℃の範囲の温度で0.5~30時間の範囲の時間にわたってインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態によると、培養培地は、ヒト血清アルブミンを含有する生理食塩水である。いくつかの実施形態では、インキュベーションの条件は、5%のCO2を含有する雰囲気を含む。いくつかの実施形態では、インキュベーションの条件は、空気中に見られるレベルを超える追加のCO2を含まない。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0042】
いくつかの実施形態では、本方法は、インキュベーション前、インキュベーション中、またはインキュベーション後のヒト幹細胞および健康な機能的外因性ミトコンドリアの遠心分離をさらに含む。いくつかの実施形態では、インキュベーションの前に、本方法は、2500×gを超える遠心力でのヒト幹細胞および健康な機能的外因性ミトコンドリアの単一遠心分離をさらに含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0043】
いくつかの実施形態では、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、凍結-解凍サイクルを受けていない対照ミトコンドリアと比較して、解凍後に同等の酸素消費率を示す。
【0044】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、ミトコンドリア富化ヒト幹細胞を凍結することをさらに含み、任意選択で解凍することをさらに含む。
【0045】
追加の実施形態では、ヒト幹細胞は、ミトコンドリア増強の前または後に拡大される。
【0046】
機能的ミトコンドリアによる幹細胞の検出可能な富化は、酸素(O2)消費率、クエン酸シンターゼの活性レベル、アデノシン三リン酸(ATP)産生率、ミトコンドリアタンパク質含有量(コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体サブユニットA-SDHAおよびチトクロームCオキシダーゼ-COX1など)、ミトコンドリアDNA含有量を含むがこれらに限定されない機能的および/または酵素的アッセイによって決定され得る。別の方法では、健康なドナーミトコンドリアによる幹細胞の富化は、ドナーのミトコンドリアDNA(mtDNA)の検出によって確認することができる。いくつかの実施形態によれば、機能的ミトコンドリアによる幹細胞の富化の程度は、ヘテロプラスミーの変化のレベルによって、および/または細胞あたりのmtDNAのコピー数によって決定され得る。ある特定の例示的な実施形態によれば、健康な機能的ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、当技術分野で認識されている従来のアッセイによって決定することができる。例えば、ドナーミトコンドリアの存在は、(i)クエン酸シンターゼの活性レベル、または(ii)mtDNAの2つ以上の供給源を示すmtDNA配列決定から選択される方法によって決定することができる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す
【0047】
いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリアは、mtDNAハプログループに従って、ドナーと治療された対象との間で適合され得る。他の実施形態によれば、ミトコンドリアは、幹細胞富化の前に、特定の異なるmtDNAハプログループに従って選択される。
【0048】
ある特定の実施形態では、第1の組成物または第4の組成物中の幹細胞のミトコンドリア含有量は、クエン酸シンターゼの活性レベルを決定することによって決定される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0049】
ある特定に実施形態では、ヒト幹細胞をミトコンドリアで富化するプロセスは、細胞を凍結する前に実行される。他の実施形態では、ヒト幹細胞をミトコンドリアで富化するプロセスは、細胞を凍結および解凍した後に実行される。
【0050】
ある特定の実施形態では、自家ヒト幹細胞は、衰弱状態に罹患する前に凍結および保存される。他の実施形態では、ヒト幹細胞をミトコンドリアで富化するプロセスは、細胞を凍結および解凍した後に実行される。
【0051】
ある特定の実施形態では、幹細胞は多能性幹細胞(PSC)である。他の実施形態では、PSCは非胚性幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、人工PSC(iPSC)である。ある特定の実施形態では、幹細胞は、骨髄細胞に由来する。特定の実施形態では、幹細胞は、骨髄造血前駆細胞抗原CD34(CD34+)を発現する。特定の実施形態では、幹細胞は、間葉系幹細胞である。他の実施形態では、幹細胞は、脂肪組織に由来する。さらに他の実施形態では、幹細胞は、血液に由来する。さらなる実施形態では、幹細胞は、臍帯血に由来する。さらなる実施形態では、幹細胞は、口腔粘膜に由来する。さらなる実施形態では、幹細胞は、骨髄系共通前駆細胞、リンパ球系共通前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0052】
ある特定の実施形態では、幹細胞は、骨髄細胞である。
【0053】
ある特定の実施形態では、幹細胞は、骨髄造血細胞を含む骨髄由来の幹細胞である。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、赤血球生成細胞を含む。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、多能性造血幹細胞(HSC)を含む。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、骨髄系共通前駆細胞、リンパ球系共通前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、巨核球、赤血球、肥満細胞、筋芽細胞、好塩基球、好中球、好酸球、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、小リンパ球、Tリンパ球、Bリンパ球、形質細胞、細網細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、間葉系幹細胞を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0054】
特定の実施形態では、幹細胞は、CD34+細胞である。ある特定の実施形態では、CD34+発現細胞は、臍帯血(すなわち、非骨髄造血幹細胞)から得られる。いくつかの実施形態では、使用される細胞は、自家幹細胞であり、それらは、老齢または癌療法に関する衰弱状態の前に凍結および保存され得る。いくつかの実施形態では、細胞をミトコンドリアで富化するプロセスは、凍結する前に実行される。代替の実施形態では、細胞をミトコンドリアで富化するプロセスは、幹細胞を凍結および解凍した後に実行される。
【0055】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、老齢対象からまたはドナーから得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、老齢対象の骨髄からまたはドナーから得られる骨髄細胞である。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、老齢対象の骨髄からまたはドナーの骨髄から直接的または間接的に得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、老齢対象の骨髄から動員されるか、またはドナーの骨髄から動員される。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、老齢対象の末梢血から得られるか、またはドナーの末梢血から得られる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0056】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、悪性疾患に罹患している対象から得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、非造血性悪性疾患に罹患している対象から、または悪性疾患に罹患していない健康な対象から得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、非造血性悪性疾患に罹患している対象の骨髄から、または悪性疾患に罹患していない健康な対象から得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、非造血性悪性疾患に罹患している対象の骨髄から動員されるか、または悪性疾患に罹患していない健康な対象の骨髄から動員される。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、非造血性悪性疾患に罹患している対象の骨髄から直接得られるか、または悪性疾患に罹患していない健康な対象の骨髄から直接得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、非造血性悪性疾患に罹患している対象の骨髄から間接的に得られるか、または悪性疾患に罹患していない健康な対象の骨髄から間接的に得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物の骨髄細胞は、非造血性悪性疾患に罹患している対象の末梢血から得られるか、または悪性疾患に罹患していない健康な対象の末梢血から得られる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0057】
ある特定の実施形態では、幹細胞は、少なくとも部分的に精製される。
【0058】
ある特定の実施形態では、健康な機能的ミトコンドリアは、胎盤、培養で成長させた胎盤細胞、および血液細胞からなる群から選択される細胞または組織に由来する。
【0059】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、老齢、老齢関連疾患、および抗癌治療の続発症からなる群から選択される衰弱状態を患っている対象に投与される。さらなる実施形態では、医薬組成物は、特定の組織または器官に投与される。またさらなる実施形態では、医薬組成物は、全身非経口投与によって投与される。他の実施形態では、患者の体重1キログラムあたり少なくとも約106個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む医薬組成物。追加の実施形態では、ヒトミトコンドリアで富化された合計約5×105~5×109個のヒト幹細胞を含む医薬組成物。ある特定の実施形態では、対象への医薬組成物の投与は、組織または器官への静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、および直接注射からなる群から選択される非経口経路によるものである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0060】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、前ステップをさらに含み、本ステップは、老齢または非造血性悪性疾患のいずれかの衰弱状態に罹患している対象、または健康なドナーに、骨髄から末梢血に幹細胞の動員を誘導する薬剤を投与することを含む。ある特定の実施形態では、薬剤は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、1,1’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス[1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン](Plerixafor)、それらの塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある特定の実施形態では、上記の方法は、老齢または非造血性悪性疾患のいずれかの衰弱状態に罹患している対象の末梢血から、または健康な対象の末梢血から幹細胞を単離するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、単離はアフェレーシスによって実行される。
【0061】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、老齢、老齢関連疾患、および抗癌治療の続発症からなる群から選択される衰弱状態を患っている対象に、対象と同種異系ドナーの幹細胞との間の有害な免疫原性反応を防止、遅延、最小化、または無効化する薬剤を投与するステップをさらに含む。追加の実施形態では、第2の組成物中の機能的ミトコンドリアは、抗癌治療の前に悪性疾患に罹患している対象から得られる。
【0062】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、インキュベーションの前またはインキュベーション中に、第3の組成物中の幹細胞および機能的ミトコンドリアを濃縮することをさらに含む。ある特定の実施形態では、上記の方法は、インキュベーションの前、インキュベーション中、またはインキュベーションの後に、第3の組成物を遠心分離することをさらに含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0063】
代替の実施形態では、老齢対象または老齢関連疾患(複数可)を患っている対象に、ミトコンドリアで富化された幹細胞を移植する。ある特定の実施形態では、幹細胞は、老齢関連疾患に罹患していないドナーからのものである。特定の実施形態では、幹細胞は、自家骨髄幹細胞である。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、老齢対象または老齢関連疾患(複数可)に罹患している対象の骨髄から動員されるか、または老齢関連疾患に罹患していない健康なドナーの骨髄から動員される。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、老齢対象または老齢関連疾患(複数可)に罹患している対象の末梢血から得られるか、または老齢関連疾患に罹患していない健康なドナーの末梢血から得られる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0064】
代替の実施形態では、対象は造血性悪性腫瘍を患っており、対象に移植された幹細胞はミトコンドリアで富化されている。ある特定の実施形態では、幹細胞は、悪性疾患に罹患していない健康なドナーからのものである。特定の実施形態では、幹細胞は、多発性骨髄腫およびある特定の種類のリンパ腫を含む様々な造血性悪性腫瘍で使用されるような自家骨髄幹細胞である。これらの実施形態によれば、第1の組成物中の幹細胞は、非造血性悪性疾患に罹患している対象の骨髄から得られるか、または悪性疾患に罹患していない健康な対象の骨髄から得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、造血性悪性疾患に罹患している対象の骨髄から動員されるか、または悪性疾患に罹患していない健康な対象の骨髄から動員される。ある特定の実施形態では、第1の組成物の幹細胞は、造血性悪性疾患に罹患している対象の末梢血から得られるか、または悪性疾患に罹患していない健康な対象の末梢血から得られる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0065】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、前ステップをさらに含み、本ステップは、対象に、骨髄から末梢血に骨髄幹細胞の動員を誘導する薬剤を投与することを含む。ある特定の実施形態では、薬剤は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、1,1’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス[1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン](Plerixafor)、それらの塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある特定の実施形態では、上記の方法は、造血性悪性疾患に罹患している対象の末梢血から、または悪性疾患に罹患していない健康な対象の末梢血から幹細胞を単離するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、単離はアフェレーシスによって実行される。
【0066】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、インキュベーションの前またはインキュベーション中に、組成物(iii)中の幹細胞および機能的ミトコンドリアを濃縮することをさらに含む。ある特定の実施形態では、上記の方法は、インキュベーションの前、インキュベーション中、またはインキュベーションの後に、組成物(iii)を遠心分離することをさらに含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0067】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱療法を受けている老齢、老齢関連疾患、および悪性疾患から選択される衰弱状態を有する対象から得られ、衰弱状態に罹患していない対象と比較して、(i)減少した酸素(O2)消費率、(ii)減少したクエン酸シンターゼの活性レベル、(iii)減少したアデノシン三リン酸(ATP)産生率、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0068】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患していない健康なドナーから得られ、(i)正常な酸素(O2)消費率、(ii)正常なクエン酸シンターゼの活性レベル、(iii)正常なアデノシン三リン酸(ATP)産生率、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある特定の実施形態では、第2の組成物中の単離されたまたは部分的に精製されたヒト機能的ミトコンドリアは、正常なミトコンドリアDNAを有する、衰弱状態に罹患していないドナーから得られる。本明細書で使用される場合、「正常なミトコンドリアDNA」という用語は、原発性ミトコンドリア病に関連することが既知である任意の欠失または突然変異を有さないミトコンドリアDNAを指す。
【0069】
ある特定の実施形態では、健康な機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞は、ミトコンドリア富化前の幹細胞と比較して、(i)増加した酸素(O2)消費率、(ii)増加したクエン酸シンターゼの活性レベル、(iii)増加したアデノシン三リン酸(ATP)産生率、(iv)増加した正常なミトコンドリアDNA含有量、または(v)(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の任意の組み合わせを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0070】
ある特定の例示的な実施形態によれば、健康な機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞は、ミトコンドリア富化前の幹細胞と比較して、(i)増加したクエン酸シンターゼの活性レベル、および(ii)増加した正常なミトコンドリアDNA含有量を有する。
【0071】
ある特定の実施形態では、部分的に精製されたミトコンドリア中のミトコンドリアタンパク質の総量は、試料内の細胞タンパク質の総量の20%~80%である。単離されたまたは部分的に精製されたミトコンドリアのかかる組成物を得るための例示的な方法は、WO2013/035101に開示されている。
【0072】
本発明はさらに、別の態様では、上記の方法の実施形態のいずれか1つによって得られる、健康なミトコンドリアで富化された複数のヒト幹細胞を提供する。明確に、本発明による機能的ミトコンドリアで富化されたヒト幹細胞は、原発性ミトコンドリア病に罹患している対象に由来しないことが理解されるべきである。いくつかの特定の実施形態によれば、健康なミトコンドリアで富化された幹細胞は、骨髄幹細胞以外のものである。
【0073】
本発明はさらに、別の態様では、ミトコンドリアでエクスビボで富化された複数のヒト幹細胞を提供し、幹細胞は、ミトコンドリア富化前の幹細胞の対応するレベルと比較して、(a)増加したミトコンドリアDNA含有量、(b)増加したクエン酸シンターゼの活性レベル、(c)増加したSDHAおよびCOX1から選択される少なくとも1つのミトコンドリアタンパク質の含有量、(d)増加した酸素(O2)消費率、(e)増加したATP産生率、または(f)それらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、幹細胞は、CD34+幹細胞である。本発明による機能的ミトコンドリアでエクスビボで富化されたヒト幹細胞は、原発性ミトコンドリア病に罹患している対象に由来しない。
【0075】
ある特定の実施形態では、部分的に精製されたミトコンドリア中のミトコンドリアタンパク質の総量は、試料内の細胞タンパク質の総量の20%~80%である。
【0076】
ある特定の実施形態では、上記の複数のヒト幹細胞は、CD34+であり、ミトコンドリア富化前の幹細胞と比較して、増加したミトコンドリア含有量、増加したミトコンドリアDNA含有量、増加した酸素(O2)消費率、増加したクエン酸シンターゼの活性レベルを有する。いくつかの実施形態では、増加した含有量または活性は、単離時の細胞における含有量または活性よりも高い。
【0077】
本発明はさらに、別の態様では、上記のように健康な機能的ミトコンドリアでエクスビボで富化された複数のヒト骨髄幹細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0078】
本発明はさらに、別の態様では、衰弱状態に罹患しているヒト対象を治療するのに使用するための上記の医薬組成物を提供する。ある特定の実施形態によれば、衰弱状態に罹患している対象は、老齢対象である。ある特定の実施形態では、衰弱状態に罹患している対象は、老齢関連疾患(複数可)を患っている。いくつかの実施形態では、衰弱状態に罹患している対象は、衰弱する療法を受けている悪性疾患を患っている。さらなる実施形態では、上記の医薬組成物は、寛解中または悪性疾患からの回復後にヒト対象を治療するために使用される。
【0079】
本発明はさらに、別の態様では、衰弱状態に罹患しているヒト対象を治療する方法を提供し、これには、上記の医薬組成物を患者に投与するステップが含まれる。ある特定の実施形態によれば、衰弱状態に罹患している対象は、老齢対象である。ある特定の実施形態では、衰弱状態に罹患している対象は、老齢関連疾患(複数可)を患っている。いくつかの実施形態では、衰弱状態に罹患している対象は、衰弱する療法を受けている悪性疾患を患っている。さらなる実施形態では、上記の医薬組成物は、寛解中または悪性疾患からの回復後にヒト対象を治療するために使用される。ある特定の実施形態では、医薬組成物を含む幹細胞は、衰弱状態に罹患している対象に対して自家または同系である。ある特定の実施形態では、医薬組成物を含む幹細胞は、衰弱状態に罹患している対象に対して同種異系である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0080】
本発明のさらなる実施形態および適用可能性の全範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲内での様々な変更および修正は、この詳細な説明から当業者に明らかになるであろうから、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、単に例示として与えられているにすぎないことは理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】蛍光共焦点顕微鏡で得られた、ミトコンドリアGFPを発現するマウス線維芽細胞(左のパネル)、単離されたRFP標識ミトコンドリアとのインキュベーション(中央のパネル)、およびオーバーレイ(右のパネル)を示す3枚の顕微鏡写真である。
【
図2】未処理(対照)、ミトコンドリア複合体I不可逆阻害剤(ロテノン)で処理された、またはロテノンおよびマウス胎盤ミトコンドリア(ロテノン+ミトコンドリア)で処理された、のいずれかであるマウス線維芽細胞のATPレベルの比較を示す棒グラフである。データは、平均値±SEM、(*)p値<0.05として表される。RLU-相対発光単位。
【
図3】マウスメラノーマ細胞から単離されたGFP標識ミトコンドリアとともにインキュベートされたマウス骨髄細胞を示す蛍光共焦点顕微鏡で得られた4枚の顕微鏡写真である。
【
図4】C57BLマウスからの外因性ミトコンドリアで富化した骨髄細胞をIV注射した後の様々な時点でのFVB/Nマウスの骨髄中のC57BL mtDNAのレベルを示す棒グラフである。
【
図5】遠心分離の有無にかかわらず、マウスメラノーマ細胞から単離された様々な量のGFP標識ミトコンドリアとともにインキュベートされたマウス骨髄(BM)細胞におけるクエン酸シンターゼ(CS)活性の比較を示す棒グラフである。
【
図6A】GFP標識ミトコンドリアの量を増加して富化した後のマウスBM細胞のCS活性の比較を示す棒グラフである。
【
図6B】GFP標識ミトコンドリアの活性(灰色の棒)と比較した、これらの細胞におけるチトクロームcレダクターゼ活性(黒色の棒)の比較を示す棒グラフである。
【
図7A】未処理の細胞(NT)と比較した、様々な濃度(0.044、0.44、0.88、2.2、4.4、8.8、17.6mUnitのCS活性)のC57BLマウスからの外因性ミトコンドリアとともに細胞をインキュベートした後のFVB/N骨髄細胞におけるC57BLmtDNAのコピー数を示す棒グラフである。
【
図7B】Janusレベルに正規化された、未処理の細胞(NT)と比較した、様々な濃度(0.044、0.44、0.88、2.2、4.4、8.8、17.6mUnitのCS活性)のC57BLマウスからの外因性ミトコンドリアとともに細胞をインキュベートした後のFVB/N骨髄細胞におけるmtDNAコードされている(COX1)タンパク質の含有量を示す棒グラフである。
【
図7C】Janusレベルに正規化された、未処理の細胞(NT)と比較した、様々な濃度(0.044、0.44、0.88、2.2、4.4、8.8、17.6mUnitのCS活性)のC57BLマウスからの外因性ミトコンドリアとともに細胞をインキュベートした後のFVB/N骨髄細胞における核コードされている(SDHA)タンパク質の含有量を示す棒グラフである。
【
図8A】対照、遠心分離をしたまたはしない、ヒト胎盤細胞から単離されたGFP標識ミトコンドリアとともにインキュベートした未処理ヒトBM細胞およびヒトBM細胞におけるCS活性の比較を示す棒グラフである。
【
図8B】対照、未処理ヒトBM細胞、および遠心分離をした、ヒト胎盤細胞から単離されたGFP標識ミトコンドリアとともにインキュベートしたヒトBM細胞におけるATPレベルの比較を示す棒グラフである。
【
図9A】GFP標識ミトコンドリアとともにインキュベートしていないヒトBM細胞におけるFACS分析の結果を示す。
【
図9B】遠心分離後GFP標識ミトコンドリアとともにインキュベートしたヒトBM細胞におけるFACS分析の結果を示す。
【
図10A】未処理(NT)または血液由来ミトコンドリア(MNV-BLD)で処理された健康なドナーからのヒトCD34+細胞のATP含有量を示す棒グラフである。
【
図10B】血液由来ミトコンドリアで処理されたまたは処理されていない健康なドナーからのヒトCD34+細胞のCS活性を示す棒グラフである。
【
図11】HeLa-TurboGFP-ミトコンドリア細胞から単離されたGFP標識ミトコンドリアとともにインキュベートしたCD34+細胞の蛍光共焦点顕微鏡で得られた3枚の顕微鏡写真である。
【
図12A】ピアソン患者の臍帯血細胞におけるmtDNAの欠失、ならびにその欠失を示すサザンブロット分析の図解である。
【
図12B】非増強臍帯血細胞(UCB)を注射したマウスと比較した、ヒトミトコンドリアで富化されたピアソン臍帯血細胞(UCB+Mito)を使用したミトコンドリア増強療法の2ヶ月後のNSGSマウスの骨髄におけるヒトmtDNAコピー数を示す棒グラフである。
【
図13A】C57BL胎盤から得られた健康な機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞の投与1ヶ月後のFVB/Nマウスの骨髄におけるFVB/N ATP8突然変異mtDNAレベルを示す棒グラフである。
【
図13B】C57BL胎盤から得られた健康な機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞の投与3ヶ月後のFVB/Nマウスの肝臓におけるFVB/N ATP8突然変異mtDNAレベルを示す棒グラフである。
【
図14A-14C】MATの最大3ヶ月後のマウスの骨髄(
図14A)、脳(
図14B)、および心臓(
図14C)におけるC57BL mtDNAの量によるミトコンドリアで富化された骨髄細胞の生体内分布を示すグラフ棒である。白色の棒および関連するドットは骨髄試料の増強を示し、灰色の棒は対照である。
【
図15】未処理のFVB/Nマウス(ナイーブ)、C57BLの健康な肝臓ミトコンドリアで富化された幹細胞を投与されたFVB/Nマウス(C57BL Mito)、C57BLの健康なミトコンドリアで富化された幹細胞を投与され、幹細胞投与前に全身照射(TBI)を受けたFVB/Nマウス(TBI C57BL Mito)、およびC57BLの健康なミトコンドリアで富化された幹細胞を投与され、幹細胞投与前にブスルファン化学療法剤を受けたFVB/Nマウス(ブスルファンC57BL Mito)の、健康な機能的野生型ミトコンドリア(C57BLマウスの肝臓から単離)で富化された幹細胞の投与1ヶ月後のFVB/Nマウスの脳におけるFVB/N ATP8突然変異mtDNAレベルの比較を示す棒グラフである。
【
図16A-16C】治療前および治療9ヶ月後のミトコンドリア富化BM細胞(MNV-BM-PLC、1x106個の細胞)、骨髄細胞(BM対照、1x106個の細胞)、または対照ビヒクル溶液(対照、0.9%w/vNaCl中4.5%アルブミン)で処置された12月齢のC57BL/6Jマウスのオープンフィールド行動試験の能力を示す折れ線グラフを示す。
図16Aは、オープンフィールド試験中に移動した距離の定量化を示す。
図16Bは、中央持続時間(時間(秒)またはベースラインからの%変化)を示す。
図16Cは、壁持続時間(時間(秒)またはベースラインからの%変化)を示す。
【
図16D】治療前および治療9ヶ月後のミトコンドリア富化BM細胞(MNV-BM-PLC、1x106個の細胞)、骨髄細胞(BM対照、1x106個の細胞)、または対照ビヒクル溶液(対照、0.9%w/vNaCl中4.5%アルブミン)で処置された12月齢のC57BL/6Jマウスの血中尿素窒素(BUN)レベルを示す折れ線グラフである。
【
図16E-16F】ミトコンドリア増強骨髄(BM)細胞(MNV-BM-PLC、1×106個の細胞)、骨髄細胞(BM、1x106個の細胞)、または対照ビヒクル溶液(VEHICLE、0.9%w/vNaCl中4.5%アルブミン)のいずれかで投与され処置された12月齢のC57BL/6Jマウスのロータロッド試験を示す棒グラフを示す。示される結果は、処置前ならびに処置1および3ヶ月後である。
図16Eは、示された時点での様々な処置された試験群のロータロッドスコア(秒単位(s))を示す。
図16Fは、示された時点での様々な処置された試験群のロータロッドスコア(ベースラインからのパーセンテージとして表されるを示す。
【
図16G-16J】ミトコンドリア増強骨髄(BM)細胞(MNV-BM-PLC、1×106個の細胞)、骨髄細胞(BM、1x106個の細胞)、または対照ビヒクル溶液(VEHICLE、0.9%w/vNaCl中4.5%アルブミン)のいずれかで投与され処置された12月齢のC57BL/6Jマウスの力試験を示す棒グラフを示す。示される結果は、処置前ならびに処置1および3ヶ月後である。
図16G~16H-握力(力)(ベースラインからのgまたは%変化);
図16I~16J-握力時間(時間(秒)またはベースラインからの%変化)。
【
図17A】mtDNAに欠失突然変異があり、ATP8を含む、患者1(若年のピアソン症候群(PS)およびPS関連ファンコニー症候群(FS)の患者)に対して実行された臨床試験における治療および評価の過程を示すスキームである。
【
図17B】機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞の投与前、富化幹細胞の投与2.5ヶ月および8ヶ月後の有酸素代謝当量(MET)スコアを示す棒グラフである。
【
図17C】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の血中乳酸レベルを示す棒グラフである。
【
図17D】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の体重および身長の標準偏差スコアを示す折れ線グラフである。
【
図17E】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者のアルカリホスファターゼ(ALP)レベルを示す折れ線グラフである。
【
図17F】本発明により提供される療法前後のPS患者の血中赤血球(RBC)レベルの長期的な上昇を示す折れ線グラフである。
【
図17G】本発明により提供される療法前後のPS患者の血中ヘモグロビン(HGB)レベルの長期的な上昇を示す折れ線グラフである。
【
図17H】本発明により提供される療法前後のPS患者の血中ヘマトクリット(HCT)レベルの長期的な上昇を示す折れ線グラフである。
【
図17I】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者のクレアチニンレベルを示す折れ線グラフである。
【
図17J】治療前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の重炭酸塩レベルを示す折れ線グラフである。
【
図17K】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の塩基過剰レベルを示す折れ線グラフである。
【
図17L】療法前後、マグネシウム補給前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の血中マグネシウムのレベルを示す棒グラフである。
【
図17M】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の尿中グルコース対クレアチニン比を示す棒グラフである。
【
図17N】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の尿中カリウム対クレアチニン比を示す棒グラフである。
【
図17O】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の尿中塩化物対クレアチニン比を示す棒グラフである。
【
図17P】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の尿中ナトリウム対クレアチニン比を示す棒グラフである。
【
図18A】細胞あたりの正常なmtDNAの数を表す18SゲノムDNAと比較した、欠失領域(各患者)のデジタルPCRによって測定され、ベースラインごとに正規化された、療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療された3人のPS患者(Pt.1、Pt.2、およびPt.3)の正常なmtDNA含有量を示す折れ線グラフである。
【
図18B】MAT後のベースライン時の3人のPS患者(Pt.1、Pt.2、およびPt.3)のヘテロプラスミーレベル(全mtDNAと比較した欠失mtDNA)を示す折れ線グラフである。点線は、各患者のベースラインを表す。
【
図19A】本発明によってさらに提供される、ピアソン症候群(PS)患者の異なる治療段階の別のスキームである。
【
図19B】療法前(B)および療法後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の血中乳酸レベルを示す棒グラフである。
【
図19C】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の立ち上がり(sit-to-stand)スコアを示す棒グラフである。
【
図19D】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の6分間の歩行試験スコアを示す棒グラフである。
【
図19E】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の3回の連続反復(R1、R2、R3)の力量計スコアを示す棒グラフである。
【
図19F】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者における尿中マグネシウム対クレアチニン比を示す棒グラフである。
【
図19G】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者における尿中カリウム対クレアチニン比を示す棒グラフである。
【
図19H】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者における尿中カルシウム対クレアチニン比を示す棒グラフである。
【
図19I】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の尿中ATP8対18Sのコピー数比を示す棒グラフである。
【
図19J】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者のリンパ球におけるATPレベルを示す棒グラフである。
【
図20A】本発明によってさらに提供される、ピアソン症候群(PS)患者およびカーンズ・セイヤー症候群(KSS)患者の異なる治療段階のさらに別のスキームである。
【
図20B】療法前(B)および療法後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者の血中乳酸レベルを示す棒グラフである。
【
図20C】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者のASTおよびALTレベルを示す棒グラフである。
【
図20D】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者のトリグリセリド、総コレステロール、およびVLDLコレステロールレベルを示す棒グラフである。
【
図20E】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者のヘモグロビンA1C(HbA1C)スコアを示す棒グラフである。
【
図20F】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者(Pt.3)の立ち上がりスコアを示す折れ線グラフである。
【
図20G】療法前後の時間の関数として、本発明で提供される方法によって治療されたPS患者(Pt.3)の6分間の歩行試験スコアを示す折れ線グラフである。
【
図21】療法前後の、本発明で提供される方法によって治療されたKSS患者の末梢血中のATP含有量を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明は、治療的に有意な量の完全に機能的で健康なミトコンドリアの標的化された全身送達のための細胞プラットフォーム、より具体的には幹細胞由来の細胞プラットフォーム、ならびに老齢対象および老齢関連疾患(複数可)を患っている対象、ならびに化学療法、放射線療法、またはモノクローナル抗体を用いた免疫療法を含む抗癌治療の続発症を患っている癌患者を含む、衰弱状態を有する対象におけるそれらの利用のための方法を提供する。本発明は、いくつかの驚くべき発見に基づいており、その中には、正常の機能的で健康なミトコンドリアで富化された骨髄由来造血幹細胞の静脈内注射が対象の様々な組織に有益に影響を及ぼし得ることを示す、本明細書に例示される臨床結果がある。言い換えれば、機能の改善は、健康なミトコンドリアで富化された幹細胞の投与後、様々な器官および組織において達成することができる。
【0083】
本発明は、例えばWO2016/135723に開示されているように、骨髄細胞が無傷の機能的ミトコンドリアで富化されることを受容し、ヒト骨髄細胞がミトコンドリアで富化されることを特に受容するという発見に部分的に基づいている。いかなる理論または機構に拘束されることなく、幹細胞と健康なミトコンドリアとの共インキュベーションは、無傷の機能的ミトコンドリアの幹細胞への移行を促進すると仮定されている。
【0084】
ミトコンドリアによる、骨髄由来造血幹細胞を含むがこれに限定されない幹細胞の富化の程度、および細胞のミトコンドリア機能の改善は、単離されたまたは部分的に精製されたミトコンドリアの濃度、ならびにインキュベーション条件を含むがこれらに限定されないミトコンドリア富化に使用される条件に依存し、したがって、所望の富化を得るために操作することができることも見出された。
【0085】
本発明は、一態様では、部分的に精製された健康なヒトミトコンドリアを、衰弱状態に罹患する対象からまたは健康なドナーから得られるかまたは由来する幹細胞にエクスビボで導入すること、および「ミトコンドリア富化」幹細胞を衰弱状態に罹患している対象に移植することにより、様々な状態の衰弱作用を治療および/または縮小するための方法を提供する。
【0086】
ある特定の実施形態では、衰弱状態に罹患している対象は、老齢または老齢関連疾患(複数可)を患っている。他の実施形態では、衰弱作用に罹患している対象は、化学療法、放射線療法、またはモノクローナル抗体を用いた免疫療法を受けている癌患者である。いくつかの実施形態では、癌患者は、非造血性悪性疾患に罹患している対象である。他の実施形態では、癌患者は、非造血性悪性疾患に罹患している対象である。
【0087】
さらなる実施形態では、対象に投与されるヒト幹細胞は、対象に対して自家である。他の実施形態では、対象に投与されるヒト幹細胞は、ドナーからのものであり、すなわち、対象に対して同種異系である。
【0088】
ある特定の実施形態では、自家または同種異系のヒト幹細胞は、多能性幹細胞(PSC)または人工多能性幹細胞(iPSC)である。さらなる実施形態では、自家または同種異系のヒト幹細胞は、間葉系幹細胞である。
【0089】
いくつかの実施形態によれば、ヒト幹細胞は、脂肪組織、口腔粘膜、血液、臍帯血、または骨髄に由来する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態では、ヒト幹細胞は、骨髄に由来する。
【0090】
別の態様では、本発明は、対象の衰弱状態を治療または縮小するのに使用するための医薬組成物を提供し、医薬組成物は、対象の体重1キログラムあたり少なくとも105~2×107個のヒト幹細胞を含み、ヒト幹細胞は、細胞の生存能力を支援することができる薬学的に許容可能な液体培地中に懸濁され、ヒト幹細胞は、凍結-解凍した健康な機能的外因性ミトコンドリアで富化され、衰弱状態は、老齢、老齢関連疾患、および抗癌治療の続発症からなる群から選択される。
【0091】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1キログラムあたり少なくとも105~2×107個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1キログラムあたり少なくとも5×105~1.5×107個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1キログラムあたり少なくとも5×105~4x107個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1キログラムあたり少なくとも106~107個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1キログラムあたり少なくとも105個または少なくとも106個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、合計少なくとも5×105~最大5×109個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、合計少なくとも106~最大109個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、合計少なくとも2×106~最大5×108個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。
【0092】
別の態様では、本発明は、ヒト幹細胞を機能的ミトコンドリアで富化するためのエクスビボ法を提供し、本方法は、(i)衰弱状態に罹患している対象からまたは衰弱状態に罹患していない健康なドナーから得られたかまたは由来する複数のヒト幹細胞を含む、第1の組成物を提供するステップと、(ii)衰弱状態に罹患していない健康なドナーから得られた単離されたまたは部分的に精製された複数のヒト機能的ミトコンドリアを含む、第2の組成物を提供するステップと、(iii)第1の組成物のヒト幹細胞を、第2の組成物のヒト機能的ミトコンドリアと接触させ、したがって、第3の組成物を形成するステップと、(iv)ヒト機能的ミトコンドリアがヒト幹細胞に入るのを可能にする条件下で第3の組成物をインキュベートし、それにより、該ヒト幹細胞を該ヒト機能的ミトコンドリアで富化し、したがって、第4の組成物を形成するステップと、を含み、第4の組成物中の富化されたヒト幹細胞のミトコンドリア含有量は、第1の組成物中のヒト幹細胞のミトコンドリア含有量よりも検出可能に高い。
【0093】
本発明は、一態様では、ヒト骨髄細胞を機能的ミトコンドリアで富化するためのエクスビボ法を提供し、本方法は、(i)悪性疾患に罹患している患者からまたは悪性疾患に罹患していない健康な対象から得られたまたは由来する複数のヒト骨髄細胞を含む、第1の組成物を提供するステップと、(ii)抗癌治療前の、悪性疾患に罹患している同じ患者からまたは悪性疾患に罹患していない健康な対象から得られた単離された複数のヒト機能的ミトコンドリアを含む、第2の組成物を提供するステップと、(iii)第1の組成物のヒト骨髄細胞を、第2の組成物のヒト機能的ミトコンドリアと混合し、したがって、第3の組成物を形成するステップと、(iv)ヒト機能的ミトコンドリアがヒト骨髄細胞に入るのを可能にする条件下で第3の組成物をインキュベートし、それにより、該ヒト骨髄細胞を該ヒト機能的ミトコンドリアで富化し、したがって、第4の組成物を形成するステップと、を含み、第4の組成物中のヒト骨髄細胞のミトコンドリア含有量は、第1の組成物中のヒト骨髄細胞のミトコンドリア含有量よりも検出可能に高い。
【0094】
本明細書で使用される場合、「エクスビボ法」という用語は、人体外でのみ実行されるステップを含む方法を指す。特に、エクスビボ法は、後に治療される対象に再導入または移植される体外の細胞の操作を含む。
【0095】
本明細書で使用される場合、「富化」という用語は、ミトコンドリア含有量、例えば、無傷のミトコンドリアの数、または哺乳類細胞のミトコンドリアの機能性を増加させるように設計された任意の作用を指す。特に、機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞は、富化前の同じ幹細胞と比較して増強された機能を示す。
【0096】
本明細書で使用される場合、「幹細胞」という用語は、一般に、任意の哺乳類の幹細胞を指す。幹細胞は、他の種類の細胞に分化することができ、分裂してほぼ同じ種類の幹細胞を産生することができる未分化細胞である。幹細胞は、全能性または多能性のいずれかであり得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、「ヒト幹細胞」という用語は、一般に、ヒトに自然に見出されるすべての幹細胞、およびエクスビボで産生または誘導され、ヒトと適合性のあるすべての幹細胞を指す。幹細胞のような「前駆細胞」は、特定の種類の細胞に分化する傾向があるが、すでに幹細胞よりも特異的であり、その「標的」細胞に分化させられる。幹細胞と前駆細胞の最も重要な違いは、幹細胞は無制限に複製することができるのに対し、前駆細胞は限られた回数しか分裂することができないことである。本明細書で使用される場合、「ヒト幹細胞」という用語は、「前駆細胞」および「完全に分化していない幹細胞」をさらに含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、ヒト幹細胞を該健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアとインキュベートした後に、ミトコンドリア富化幹細胞を洗浄することを含む。このステップは、細胞片またはミトコンドリア膜の残遺物および幹細胞に入らなかったミトコンドリアを実質的に欠いているミトコンドリア富化幹細胞の組成物を提供する。いくつかの実施形態では、洗浄は、ヒト幹細胞を該健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアとインキュベートした後に、ミトコンドリア富化幹細胞を遠心分離することを含む。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む医薬組成物は、遊離ミトコンドリア、すなわち、幹細胞に入らなかったミトコンドリア、または他の細胞片から分離される。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む医薬組成物は、検出可能な量の遊離ミトコンドリアを含まない。
【0099】
本明細書で使用される場合、「多能性幹細胞(PSC)」という用語は、無制限に増殖することができ、また体内に複数の細胞型を生じさせることができる細胞を指す。全能性幹細胞は、体内の他のすべての細胞型を生じさせることができる細胞である。胚性幹細胞(ESC)は全能性幹細胞であり、人工多能性幹細胞(iPSC)は多能性幹細胞である。
【0100】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞(iPSC)」という用語は、ヒト成体体細胞から生成することができる一種の多能性幹細胞を指す。
【0101】
本明細書で使用される場合、「胚性幹細胞(ESC)」という用語は、胚盤胞の内部細胞塊に由来する一種の全能性幹細胞を指す。
【0102】
本明細書で使用される場合、「骨髄細胞」という用語は、一般に、ヒトの骨髄に自然に見られるすべてのヒト細胞、およびヒトの骨髄に自然に見られるすべての細胞集団を指す。「骨髄幹細胞」および「骨髄由来幹細胞」という用語は、骨髄に由来する幹細胞集団を指す。
【0103】
「機能的ミトコンドリア」および「健康なミトコンドリア」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、正常なmtDNAおよび正常な非病理学的活性レベルを示すパラメーターを示すミトコンドリアを指す。ミトコンドリアの活性は、膜電位、O2消費、ATP産生、およびクエン酸シンターゼ(CS)活性レベルなど、当技術分野で周知の様々な方法で測定することができる。
【0104】
本明細書で使用される場合、「衰弱状態に罹患している対象からまたは衰弱状態に罹患していないドナーから得られた幹細胞」という句は、対象から単離された時点で対象/ドナーの幹細胞であった細胞を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「衰弱状態に罹患している対象または衰弱状態に罹患していないドナーに由来する幹細胞」という句は、対象/ドナーの幹細胞ではなく、幹細胞になるように操作された細胞を指す。本明細書で使用される場合、「操作された」という用語は、体細胞を未分化状態に再プログラミングし、人工多能性幹細胞(iPSC)になり、任意選択で、骨髄細胞(Xu Y.et al.,PLoS ONE,2012,Vol.7(4),page e34321)などの所望の系統または集団の細胞になるようにiPSCをさらに再プログラミングする(Chen M.et al.,IOVS,2010,Vol.51(11),pages 5970-5978)ための、この分野で既知の方法のいずれか1つ(Yu J.et al.,Science,2007,Vol.318(5858),pages 1917-1920)を使用することを指す。
【0106】
本明細書で使用される場合、「CD34+細胞」という用語は、幹細胞から得られるか、または骨髄から動員されるか、または臍帯血から得られるCD34陽性であると特徴付けられる造血幹細胞を指す。
【0107】
本明細書で使用される場合、「衰弱状態に罹患している対象」という用語は、ある特定の状態によって引き起こされる衰弱作用を経験しているヒト対象を指す。衰弱状態は、老齢、老齢関連疾患、または抗癌治療を受けている癌患者、ならびに他の衰弱状態を指し得る。
【0108】
「老齢」という用語は、加齢に伴う生理学的機能の不可避の進行性の低下を指し、人口統計学的に、年齢に依存した死亡率の増加および様々な身体的および精神的能力の低下を特徴とする。
【0109】
本明細書で使用される場合、「老齢関連疾患」という用語は、「高齢者の疾患」を指し、老化の増加とともにますます頻繁に見られる疾患である。老齢関連疾患には、アテローム性動脈硬化症および心血管疾患、癌、関節炎、白内障、骨粗鬆症、2型糖尿病、高血圧症、およびアルツハイマー病などの認知症が含まれるが、これらに限定されない。これらすべての疾患の発生率は、加齢とともに累積的に増加する。
【0110】
本明細書で使用される場合、「悪性疾患に罹患している対象」という用語は、悪性疾患と診断された、悪性疾患を有すると疑われる、または悪性疾患を発症するリスク群にあるヒト対象を指す。ある特定の種類の悪性腫瘍は遺伝性であるため、悪性疾患と診断された対象の子孫は、悪性疾患を発症するリスク群と見なされる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「悪性疾患に罹患していない対象/ドナー」という用語は、悪性疾患と診断されない、および/または悪性疾患を有すると疑われないヒト対象を指す。
【0112】
本明細書で使用される場合、「非造血性悪性疾患に罹患している対象」という用語は、非造血性悪性疾患と診断された、および/または非造血性悪性疾患を有すると疑われるヒト対象を指す。
【0113】
本明細書で使用される場合、「造血性悪性疾患に罹患している対象」という用語は、造血性悪性疾患と診断された、および/または造血性悪性疾患を有すると疑われるヒト対象を指す。
【0114】
「健康なドナー」および「健康な対象」という用語は、交換可能に使用され、治療されている疾患または状態を患っていない対象を指す。
【0115】
「接触する」という用語は、ミトコンドリアおよび細胞の組成物を十分に近接させて、ミトコンドリアが細胞に入るのを促進することを指す。ミトコンドリアを標的細胞に導入するという用語は、接触するという用語と交換可能に使用される。
【0116】
本明細書で使用される場合、「単離されたまたは部分的に精製されたヒトの機能的ミトコンドリア」という用語は、ミトコンドリア病に罹患していない健康な対象から得られた細胞から単離された無傷のミトコンドリアを指す。部分的に精製されたミトコンドリア中のミトコンドリアタンパク質の総量は、試料内の細胞タンパク質の総量の20%~80%である。
【0117】
ミトコンドリアの文脈において、本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「単離された」という用語は、該供給源に見出される他の構成要素から少なくとも部分的に精製されたミトコンドリアを含む。ある特定の実施形態では、複数の単離された健康な機能的外因性ミトコンドリアを含む第2の組成物中のミトコンドリアタンパク質の総量は、試料内の細胞タンパク質の総量の20%~80%、20~70%、40~70%、20~40%、または20~30%である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある特定の実施形態では、複数の単離された健康な機能的外因性ミトコンドリアを含む第2の組成物中のミトコンドリアタンパク質の総量は、試料内の細胞タンパク質の総量の20%~80%である。ある特定の実施形態では、複数の単離された健康な機能的外因性ミトコンドリアを含む第2の組成物中のミトコンドリアタンパク質の総量は、ミトコンドリアおよび他の細胞内分画の合計重量の20%~80%である。他の実施形態では、複数の単離された健康な機能的外因性ミトコンドリアを含む第2の組成物中のミトコンドリアタンパク質の総量は、ミトコンドリアおよび他の細胞内分画の合計重量の80%を超える。
【0118】
いくつかの実施形態によれば、ヒト幹細胞を健康な機能的外因性ミトコンドリアで富化するための方法は、細胞の膜電位を測定することを含まない。
【0119】
いくつかの実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、百万個の細胞あたり少なくとも0.044~最大176ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、百万個の細胞あたり少なくとも0.088~最大176ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。他の実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、百万個の細胞あたり少なくとも0.2~最大150ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。他の実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、百万個の細胞あたり少なくとも0.4~最大100ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、百万個の細胞あたり少なくとも0.6~最大80ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、百万個の細胞あたり少なくとも0.7~最大50ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、百万個の細胞あたり少なくとも0.8~最大20ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、百万個の細胞あたり少なくとも0.88~最大17.6ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。いくつかの実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、百万個の細胞あたり少なくとも0.44~最大17.6ミリユニットのCS活性のミトコンドリアの用量を幹細胞に導入することを含む。
【0120】
ミトコンドリアの用量は、本明細書で説明するように、健康な機能的ミトコンドリアの量の他の定量化可能な測定値のCS活性ユニットまたはmtDNAコピー数で表すことができる。「CS活性のユニット」は、1mLの反応体積で1分間に1マイクロモルの基質の変換を可能にする量として定義される。
【0121】
いくつかの実施形態では、内因性ミトコンドリアの外因性ミトコンドリアからの特定/区別は、後者が標的細胞に導入された後、例えば、限定されないが、mtDNA配列の差異、例えば、内因性ミトコンドリアと外因性ミトコンドリアとの間の異なるハプロタイプを特定すること、外因性ミトコンドリアの供給源組織に由来する特定のミトコンドリアタンパク質、例えば、胎盤からのチトクロームp450コレステロール側鎖切断(P450SCC)、褐色脂肪組織からのUCP1などを特定すること、またはそれらの任意の組み合わせを含む、様々な手段によって実行され得る。
【0122】
ミトコンドリアに関して「外因性」という用語は、細胞の外部にある供給源から標的細胞(例えば、幹細胞)に導入されるミトコンドリアを指す。例えば、いくつかの実施形態では、外因性ミトコンドリアは、一般に、標的細胞とは異なるドナー細胞に由来するかまたは単離され得る。例えば、外因性ミトコンドリアは、ドナー細胞で産生/作製され、ドナー細胞から精製/単離、得られ、その後、標的細胞に導入され得る。
【0123】
ミトコンドリアに関して「内因性」という用語は、細胞によって作製/発現/産生されており、外部供給源から細胞に導入されないミトコンドリアを指す。いくつかの実施形態では、内因性ミトコンドリアは、細胞のゲノムによってコードされているタンパク質および/または他の分子を含有する。いくつかの実施形態では、「内因性ミトコンドリア」という用語は、「宿主ミトコンドリア」という用語と等しい。
【0124】
本明細書で使用される場合、「自家細胞」または「自家である細胞」という用語は、患者自身の細胞であることを指す。「自家ミトコンドリア」という用語は、患者自身の細胞または母性関連細胞から得られるミトコンドリアを指す。「同種異系細胞」または「同種異系ミトコンドリアという用語は、異なるドナー個体からのものであることを指す。
【0125】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「同系」という用語は、拒絶なく個体間の移植を可能にするのに十分な遺伝的同一性または遺伝的近同一性を指す。ミトコンドリアの文脈における同系という用語は、本明細書では、同じ母体の血統を意味する自家ミトコンドリアという用語と交換可能に使用される。
【0126】
「外因性ミトコンドリア」という用語は、細胞の外部にある供給源から標的細胞(すなわち、幹細胞)に導入されるミトコンドリアまたはミトコンドリアDNAを指す。例えば、いくつかの実施形態では、外因性ミトコンドリアは、標的細胞とは異なる細胞に由来するかまたは単離され得る。例えば、外因性ミトコンドリアは、ドナー細胞で産生/作製され、ドナー細胞から精製/単離、得られ、その後、標的細胞に導入され得る。
【0127】
本明細書で使用される場合、「ヒト機能的ミトコンドリアがヒト幹細胞に入るのを可能にする条件」という句は、一般に、時間、温度、培養培地、およびミトコンドリアと幹細胞との間の近接性などのパラメーターを指す。例えば、ヒト細胞およびヒト細胞株は、日常的に、37℃および5%CO2雰囲気で、組織培養インキュベーターなどにおいて、液体培地中でインキュベートされ、無菌環境で保持される。本明細書に開示および例示される代替の実施形態によれば、細胞は、ヒト血清アルブミンを補給した生理食塩水中で室温でインキュベートすることができる。いくつかの実施形態によれば、ヒト機能的ミトコンドリアとヒト幹細胞とのインキュベーションの前に、遠心分離が行われる。他の実施形態によれば、インキュベーションは、遠心分離の前に起こる。またさらなる実施形態では、遠心分離は、該インキュベーション中に起こる。ある特定の実施形態では、遠心速度は8,000gである。ある特定の実施形態では、遠心速度は7,000gである。さらなる実施形態によれば、遠心分離は、5,000~10,000gの速度である。さらなる実施形態によれば、遠心分離は、7,000~8,000gの速度である。
【0128】
ある特定の実施形態では、ヒト幹細胞は、約16~約37℃の範囲の温度で、0.5~30時間の範囲の時間にわたって、健康な機能的外因性ミトコンドリアとともにインキュベートされる。ある特定の実施形態では、ヒト幹細胞は、1~30または5~25時間の範囲の時間にわたって、健康な機能的外因性ミトコンドリアとともにインキュベートされる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態では、インキュベーションは、20~30時間である。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、少なくとも1、5、10、15、または20時間である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。他の実施形態では、インキュベーションは、最大5、10、15、20、または30時間である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態では、インキュベーションは24時間である。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、室温(16℃~30℃)である。他の実施形態では、インキュベーションは37℃である。いくつかの実施形態では、インキュベーションは、5%CO2雰囲気中である。他の実施形態では、インキュベーションは、空気中に見られるレベルを超える追加のCO2を含まない。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、幹細胞中のミトコンドリア含有量が、それらの初期ミトコンドリア含有量と比較して平均して1%~45%増加するまでである。
【0129】
またさらなる実施形態では、インキュベーションは、ヒト血清アルブミン(HSA)を補給した培養培地で実行される。追加の実施形態では、インキュベーションは、HSAを補給した生理食塩水中で実行される。ある特定の例示的な実施形態によれば、機能的ミトコンドリアがヒト幹細胞に入り、それにより、該ヒト幹細胞を該ヒト機能的ミトコンドリアで富化することを可能にする条件は、4.5%ヒト血清アルブミンを補給した生理食塩水中での室温でのインキュベーションを含む。
【0130】
インキュベーションの条件を操作することにより、産物の特徴を操作することができる。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、37℃で実行される。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、少なくとも6時間実行される。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、少なくとも12時間実行される。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、12~24時間実行される。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、4.4ミリユニットのCSを有するかまたは示す外因性ミトコンドリアの量あたり1*105~1*107個のナイーブ幹細胞の比率で実行される。ある特定の実施形態では、インキュベーションは、4.4ミリユニットのCSを有するかまたは示す外因性ミトコンドリアの量あたり1*106個のナイーブ幹細胞の比率で実行される。ある特定の実施形態では、条件は、CS活性によって決定されるように、ナイーブ幹細胞のミトコンドリア含有量を少なくとも約3%、5%、または10%増加させるのに十分である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0131】
本明細書で使用される場合、「ミトコンドリア含有量」という用語は、細胞内の機能的ミトコンドリアの量、または複数の細胞内の機能的ミトコンドリアの平均量を指す。
【0132】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「ミトコンドリア病」という用語および「原発性ミトコンドリア病」という用語は、交換可能に使用され得る。本明細書で使用される場合、「原発性ミトコンドリア病」という用語は、ミトコンドリアDNAの既知のもしくは明白な病原性突然変異によって、または遺伝子産物がミトコンドリアに取り込まれる核DNAの遺伝子の突然変異によって診断されるミトコンドリア病を指す。いくつかの実施形態によれば、原発性ミトコンドリア病は、先天性疾患である。いくつかの実施形態によれば、原発性ミトコンドリア病は、続発性ミトコンドリア機能障害ではない。「続発性ミトコンドリア機能障害」および「後天性ミトコンドリア機能障害」という用語は、本出願を通して交換可能に使用される。
【0133】
ある特定の実施形態では、その様々な実施形態における上記の方法は、幹細胞と外因性ミトコンドリアとのインキュベーションの前、インキュベーション中、またはインキュベーションの後に遠心分離をさらに含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、その様々な実施形態における上記の方法は、幹細胞と外因性ミトコンドリアとのインキュベーションの前、インキュベーション中、またはインキュベーションの後に単一遠心分離ステップを含む。いくつかの実施形態では、遠心力は1000g~8500gの範囲である。いくつかの実施形態では、遠心力は2000g~4000gの範囲である。いくつかの実施形態では、遠心力は2500gを超える。いくつかの実施形態では、遠心力は2500g~8500gの範囲である。いくつかの実施形態では、遠心力は2500g~8000gの範囲である。いくつかの実施形態では、遠心力は3000g~8000gの範囲である。他の実施形態では、遠心力は4000g~8000gの範囲である。特定の実施形態では、遠心力は7000gである。他の実施形態では、遠心力は8000gである。いくつかの実施形態では、遠心分離は2分~30分の範囲の時間にわたって実行される。いくつかの実施形態では、遠心分離は3分~25分の範囲の時間にわたって実行される。いくつかの実施形態では、遠心分離は5分~20分の範囲の時間にわたって実行される。いくつかの実施形態では、遠心分離は8分~15分の範囲の時間にわたって実行される。
【0134】
いくつかの実施形態では、遠心分離は、4~37℃の範囲の温度で実行される。ある特定の実施形態では、遠心分離は、4~10℃または16~30℃の範囲の温度で実行される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。特定の実施形態では、遠心分離は2~6℃で実行される。特定の実施形態では、遠心分離は4℃で実行される。いくつかの実施形態では、その様々な実施形態における上記の方法は、幹細胞と外因性ミトコンドリアとのインキュベーションの前、インキュベーション中、またはインキュベーションの後に単一遠心分離、続いて細胞を30℃より低い温度で静止させることを含む。いくつかの実施形態では、ヒト機能的ミトコンドリアがヒト幹細胞に入るのを可能にする条件は、幹細胞と外因性ミトコンドリアとのインキュベーションの前、インキュベーション中、またはインキュベーションの後に単一遠心分離、続いて16~28℃の範囲の温度で細胞を静止させることを含む。
【0135】
ある特定の実施形態では、第1の組成物は新鮮である。ある特定の実施形態では、第1の組成物は、凍結され、次いでインキュベーションの前に解凍された。ある特定の実施形態では、第2の組成物は新鮮である。ある特定の実施形態では、第2の組成物は、凍結され、次いでインキュベーションの前に解凍された。ある特定の実施形態では、第4の組成物は新鮮である。ある特定の実施形態では、第4の組成物は、凍結され、次いで投与の前に解凍された。
【0136】
特定の実施形態では、悪性疾患に罹患している患者からまたは健康な対象から得られる幹細胞は、骨髄細胞または骨髄由来幹細胞である。
【0137】
「機能的ミトコンドリアで富化された哺乳類幹細胞」という用語は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を指す。
【0138】
本発明の原理によれば、健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアがヒト幹細胞に導入され、したがってこれらの細胞を健康な機能的ヒトミトコンドリアで富化する。かかる富化はヒト幹細胞のミトコンドリア含有量を変化させることを理解するべきである。ナイーブヒト幹細胞は、実質的に、宿主/自家ミトコンドリアの1つの集団を有するが、外因性ミトコンドリアで富化されたヒト幹細胞は、実質的に、宿主/自家/内因性ミトコンドリアの第1の集団と、導入されたミトコンドリアの別の集団(すなわち、外因性ミトコンドリア)とのミトコンドリアの2つの集団を有する。したがって、「富化された」という用語は、外因性ミトコンドリアの受容/取り込み後の細胞の状態に関する。ミトコンドリアの2つの集団間の数および/または比率を決定することは、2つの集団がいくつかの態様、例えばミトコンドリアDNAにおいて異なり得るため、簡単である。したがって、「健康な機能性ヒトミトコンドリアで富化されたヒト幹細胞」という句は、「内因性ミトコンドリアと健康な機能的外因性ミトコンドリアとを含むヒト幹細胞」という句と等しい。例えば、全ミトコンドリアの少なくとも1%の健康な機能的外因性ミトコンドリアを含むヒト幹細胞は、99:1の比率の宿主/自家/内因性ミトコンドリアおよび健康な機能的外因性ミトコンドリアを含むと見なされる。例えば、「全ミトコンドリアの3%」は、富化後、元の(内因性)ミトコンドリア含有量が全ミトコンドリアの97%であり、導入された(外因性)ミトコンドリアが全ミトコンドリアの3%であることを意味し、これは(3/97=)3.1%の富化と等しい。別の例として、「全ミトコンドリアの33%」は、富化後、元の(内因性)ミトコンドリア含有量が全ミトコンドリアの67%であり、導入された(外因性)ミトコンドリアが全ミトコンドリアの33%であることを意味し、これは(33/67=)49.2%の富化と等しい。
【0139】
ヘテロプラスミーとは、細胞または個体内に2種以上のミトコンドリアDNAが存在することである。ヘテロプラスミーレベルは、変異mtDNA分子対野生型/機能的mtDNA分子の比率であり、ミトコンドリア病の重症度を考慮するのに重要な要素である。低レベルのヘテロプラスミー(十分な量のミトコンドリアが機能している)は、健康な表現型に関連しているが、高レベルのヘテロプラスミー(十分な量のミトコンドリアが機能していない)は病状に関連している。ある特定の実施形態では、第4の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルは、第1の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルよりも少なくとも1%低い。ある特定の実施形態では、第4の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルは、第1の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルよりも少なくとも3%低い。ある特定の実施形態では、第4の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルは、第1の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルよりも少なくとも5%低い。ある特定の実施形態では、第4の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルは、第1の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルよりも少なくとも10%低い。ある特定の実施形態では、第4の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルは、第1の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルよりも少なくとも15%低い。ある特定の実施形態では、第4の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルは、第1の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルよりも少なくとも20%低い。ある特定の実施形態では、第4の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルは、第1の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルよりも少なくとも25%低い。ある特定の実施形態では、第4の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルは、第1の組成物中の幹細胞のヘテロプラスミーレベルよりも少なくとも30%低い。
【0140】
ある特定の実施形態では、健康なミトコンドリアで富化されたヒト幹細胞(本明細書では第4の組成物の細胞とも呼ばれる)のミトコンドリア含有量は、第1の組成物中のヒト幹細胞のミトコンドリア含有量よりも検出可能に高い。様々な実施形態によれば、第4の組成物のミトコンドリア含有量は、第1の組成物のミトコンドリア含有量よりも少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%以上高い。ある特定の実施形態では、第1の組成物は新鮮なまま使用される。
【0141】
ある特定の実施形態では、第1の組成物は、凍結され、次いで、保存され、解凍後に使用される。他の実施形態では、複数の機能的ヒトミトコンドリアを含む第2の組成物は新鮮なまま使用される。さらなる実施形態では、第2の組成物は、凍結され、使用前に解凍される。さらなる実施形態では、第4の組成物は、凍結および保存せずに使用される。またさらなる実施形態では、第4の組成物は、凍結、保存、および解凍後に使用される。生存能力を維持するために細胞調製物を凍結および解凍するのに適した方法は、当技術分野で周知である。構造および機能を維持するためにミトコンドリアを凍結および解凍するのに適した方法は、本発明者らのWO2013/035101およびWO2016/135723ならびにそれらに引用されている参考文献に開示されている。
【0142】
クエン酸シンターゼ(CS)は、ミトコンドリアマトリックスに局在するが、核DNAによってコードされている。クエン酸シンターゼは、クレブス回路の第1のステップに関与し、無傷のミトコンドリアの存在の定量的酵素マーカーとして一般的に使用される(Larsen S.et al.,J.Physiol.,2012,Vol.590(14),pages 3349-3360;Cook G.A.et al.,Biochim.Biophys.Acta.,1983,Vol.763(4),pages 356-367)。
【0143】
ある特定の実施形態では、第1の組成物、第2の組成物、または第4の組成物中の幹細胞のミトコンドリア含有量は、クエン酸シンターゼの含有量を決定することによって決定される。ある特定の実施形態では、第1の組成物、第2の組成物、または第4の組成物中の幹細胞のミトコンドリア含有量は、クエン酸シンターゼの活性レベルを決定することによって決定される。ある特定の実施形態では、第1の組成物、第2の組成物、または第4の組成物中の幹細胞のミトコンドリア含有量は、クエン酸シンターゼの含有量と相関する。ある特定の実施形態では、第1の組成物、第2の組成物、または第4の組成物中の幹細胞のミトコンドリア含有量は、クエン酸シンターゼの活性レベルと相関する。CS活性は、市販のキット、例えば、CS活性キットCS0720(Sigma)を使用することによって測定することができる。
【0144】
真核生物のNADPH-チトクロームCレダクターゼ(チトクロームCレダクターゼ)は、小胞体に局在するフラボタンパク質である。それは電子をNADPHからいくつかのオキシゲナーゼに移動し、その中で最も重要なのは生体異物の解毒に関与するチトクロームP450ファミリーの酵素である。チトクロームCレダクターゼは、小胞体マーカーとして広く使用されている。ある特定の実施形態では、第2の組成物は、チトクロームCレダクターゼまたはチトクロームCレダクターゼ活性を実質的に含まない。ある特定の実施形態では、第4の組成物は、第1の組成物と比較して、チトクロームCレダクターゼまたはチトクロームCレダクターゼ活性で富化されていない。
【0145】
ある特定の実施形態では、幹細胞は多能性幹細胞(PSC)である。他の実施形態では、PSCは非胚性幹細胞である。いくつかの実施形態によれば、胚性幹細胞は、本発明の範囲から明示的に除外される。いくつかの実施形態では、幹細胞は、人工PSC(iPSC)である。ある特定の実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞である。ある特定の実施形態では、幹細胞は、骨髄細胞に由来する。特定の実施形態では、幹細胞は、CD34+細胞である。特定の実施形態では、幹細胞は、間葉系幹細胞である。他の実施形態では、幹細胞は、脂肪組織に由来する。さらに他の実施形態では、幹細胞は、血液に由来する。さらなる実施形態では、幹細胞は、臍帯血に由来する。さらなる実施形態では、幹細胞は、口腔粘膜に由来する。
【0146】
ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、骨髄造血細胞を含む。本明細書で使用される場合、「骨髄造血細胞」という用語は、骨髄造血、例えば、骨髄およびそれから生じるすべての細胞、すなわち、すべての血液細胞の産生に関与する細胞を指す。
【0147】
ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、赤血球生成細胞を含む。本明細書で使用される場合、「赤血球生成細胞」という用語は、赤血球生成、例えば、赤血球(red blood cell)(赤血球(erythrocyte))の産生に関与する細胞を指す。
【0148】
ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、多能性造血幹細胞(HSC)を含む。本明細書で使用される場合、「多能性造血幹細胞」または「造血芽細胞」という用語は、造血のプロセスを通じて他のすべての血液細胞を生じさせる幹細胞を指す。
【0149】
ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、骨髄系共通前駆細胞、リンパ球系共通前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせを含む。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、間葉系幹細胞を含む。本明細書で使用される場合、「骨髄系共通前駆細胞」という用語は、骨髄系細胞を生成する細胞を指す。本明細書で使用される場合、「リンパ球系共通前駆細胞」という用語は、リンパ球を生成する細胞を指す。
【0150】
ある特定の実施形態では、第1の組成物の骨髄由来の幹細胞は、巨核球、赤血球、肥満細胞、筋芽細胞、好塩基球、好中球、好酸球、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、小リンパ球、Tリンパ球、Bリンパ球、形質細胞、細網細胞、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0151】
ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、間葉系幹細胞を含む。本明細書で使用される場合、「間葉系幹細胞」という用語は、骨芽細胞(骨細胞)、軟骨細胞(chondrocyte)(軟骨細胞(cartilage cell))、筋細胞(筋肉細胞)、および脂肪細胞(adipocyte)(脂肪細胞(fat cell))を含む、様々な細胞型に分化することができる、多能性間質細胞を指す。
【0152】
ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、骨髄造血細胞からなる。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、赤血球生成細胞からなる。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、多能性造血幹細胞(HSC)からなる。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、骨髄系共通前駆細胞、リンパ球系共通前駆細胞、またはそれらの任意の組み合わせからなる。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、巨核球、赤血球、肥満細胞、筋芽細胞、好塩基球、好中球、好酸球、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、小リンパ球、Tリンパ球、Bリンパ球、形質細胞、細網細胞、またはそれらの任意の組み合わせからなる。ある特定の実施形態では、骨髄由来の幹細胞は、間葉系幹細胞からなる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0153】
CD34抗原としても既知である造血前駆細胞抗原CD34は、ヒトではCD34遺伝子によってコードされているタンパク質である。CD34は、細胞表面糖タンパク質の分化クラスターであり、細胞-細胞接着因子として機能する。ある特定の実施形態では、骨髄幹細胞は、骨髄前駆細胞抗原CD34を発現する(CD34+である)。ある特定の実施形態では、骨髄幹細胞は、それらの外膜上に骨髄前駆細胞抗原CD34を提示する。ある特定の実施形態では、CD34+細胞は、臍帯血からである。
【0154】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患している対象に直接由来する。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患していないドナーに直接由来する。本明細書で使用される場合、「直接由来する」という用語は、他の細胞に直接由来した幹細胞を指す。ある特定の実施形態では、造血幹細胞(HSC)は、骨髄細胞に由来する。ある特定の実施形態では、造血幹細胞(HSC)は、末梢血に由来する。
【0155】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患している対象に間接的に由来する。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患していないドナーに間接的に由来する。本明細書で使用される場合、「間接的に由来する」という用語は、非幹細胞に由来した幹細胞を指す。ある特定の実施形態では、幹細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)になるように操作された体細胞に由来した。
【0156】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患している対象の骨髄から直接得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患していないドナーの骨髄から直接得られる。本明細書で使用される場合、「直接得られた」という用語は、例えば、外科手術または注射器による針を介した吸引などの手段によって、骨髄自体から得られた幹細胞を指す。
【0157】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患している患者の骨髄から間接的に得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患していないドナーの骨髄から間接的に得られる。本明細書で使用される場合、「間接的に得られた」という用語は、骨髄自体以外の場所から得られた骨髄細胞を指す。
【0158】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患している対象の末梢血から得られる。ある特定の実施形態では、第1の組成物の幹細胞は、衰弱状態に罹患していない対象の末梢血から、または衰弱状態に罹患していない対象の末梢血から得られる。本明細書で使用される場合、「末梢血」という用語は、血液系中を循環する血液を指す。
【0159】
ある特定の実施形態では、第1の組成物は、末梢血から得られる複数のヒト骨髄幹細胞を含み、該第1の組成物は、巨核球、赤血球、肥満細胞、骨髄芽球、好塩基球、好中球、好酸球、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、小リンパ球、Tリンパ球、Bリンパ球、形質細胞、細網細胞、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0160】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、前ステップをさらに含み、本ステップは、衰弱状態に罹患している対象に、骨髄細胞の末梢血への動員を誘導する薬剤を投与することを含む。ある特定の実施形態では、上記の方法は、前ステップをさらに含み、本ステップは、衰弱状態に罹患していないドナーに、骨髄細胞の末梢血への動員を誘導する薬剤を投与することを含む。
【0161】
ある特定の実施形態では、骨髄細胞/骨髄で産生された幹細胞の末梢血への動員を誘導する薬剤は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、1,1’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ビス[1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン](Plerixafor、CAS番号155148-31-5)、それらの塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0162】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、衰弱状態に罹患している対象の末梢血から幹細胞を単離するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、上記の方法は、衰弱状態に罹患していないドナーの末梢血から幹細胞を単離するステップをさらに含む。本明細書で使用される場合、「末梢血から単離する」という用語は、血液の他の成分からの幹細胞の単離を指す。
【0163】
アフェレーシスの間、対象またはドナーの血液は、1つの特定の成分を分離し、残りを循環に戻す装置を通過する。したがって、それは体外で実行される医療手順である。ある特定の実施形態では、単離はアフェレーシスによって実行される。
【0164】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、インキュベーションの前に、第3の組成物中の幹細胞および機能的ミトコンドリアを濃縮することをさらに含む。ある特定の実施形態では、上記の方法は、インキュベーション中に、第3の組成物中の幹細胞および機能的ミトコンドリアを濃縮することをさらに含む。
【0165】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、インキュベーションの前に第3の組成物を遠心分離することをさらに含む。他の実施形態では、上記の方法は、インキュベーション中に第3の組成物を遠心分離することをさらに含む。ある特定の実施形態では、上記の方法は、インキュベーションの後に第3の組成物を遠心分離することをさらに含む。
【0166】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患している対象から得られ、幹細胞は、(i)正常な酸素(O2)消費率、(ii)正常なクエン酸シンターゼの含有量もしくは活性レベル、(iii)正常なアデノシン三リン酸(ATP)産生率、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0167】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患している対象から得られ、幹細胞は、衰弱状態に罹患していない対象と比較して、(i)減少した酸素(O2)消費率、(ii)減少したクエン酸シンターゼの含有量もしくは活性レベル、(iii)減少したアデノシン三リン酸(ATP)産生率、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0168】
複数の細胞またはミトコンドリアを対象とする任意の測定可能な特徴または特性または態様へのいずれの言及は、複数の細胞またはミトコンドリアの測定可能な平均的な特徴または特性または態様を対象とすることが強調されるべきである。
【0169】
ある特定の実施形態では、第1の組成物中の幹細胞は、衰弱状態に罹患していないドナーから得られ、(i)正常な酸素(O2)消費率、(ii)正常なクエン酸シンターゼの含有量もしくは活性レベル、(iii)正常なアデノシン三リン酸(ATP)産生率、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0170】
ある特定の実施形態では、第2の組成物中の単離されたヒト機能的ミトコンドリアは、正常なミトコンドリアDNAを有する健康な対象から得られ、(i)正常な酸素(O2)消費率、(ii)正常なクエン酸シンターゼの含有量もしくは活性レベル、(iii)正常なアデノシン三リン酸(ATP)産生率、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0171】
ある特定の実施形態では、第4の組成物中の幹細胞は、第1の組成物中の幹細胞と比較して、(i)増加した酸素(O2)消費率、(ii)増加したクエン酸シンターゼの含有量もしくは活性レベル、(iii)増加したアデノシン三リン酸(ATP)産生率、(iv)増加したミトコンドリアDNA含有量、または(v)(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の任意の組み合わせを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0172】
本明細書で使用される場合、「増加した酸素(O2)消費率」という用語は、ミトコンドリア富化前の第1の組成物における酸素(O2)消費率よりも検出可能に高い酸素(O2)消費率を指す。
【0173】
本明細書で使用される場合、「増加したクエン酸シンターゼの含有量または活性レベル」という用語は、ミトコンドリア富化前の第1の組成物におけるクエン酸シンターゼの含有量値または活性レベルよりも検出可能に高いクエン酸シンターゼの含有量または活性レベルを指す。
【0174】
本明細書で使用される場合、「増加したアデノシン三リン酸(ATP)産生率」という用語は、ミトコンドリア富化前の第1の組成物におけるアデノシン三リン酸(ATP)産生率よりも検出可能に高いアデノシン三リン酸(ATP)産生率を指す。
【0175】
本明細書で使用される場合、「増加したミトコンドリアDNA含有量」という用語は、ミトコンドリア富化前の、第1の組成物中のミトコンドリアDNA含有量よりも検出可能に高いミトコンドリアDNAの含有量を指す。ミトコンドリア含有量は、SDHAまたはCOX1の含有量を測定することにより決定され得る。本明細書および特許請求の範囲の文脈において、「正常なミトコンドリアDNA」は、ミトコンドリア病に関連することが既知である突然変異または欠失を持たない/有さないミトコンドリアDNAを指す。本明細書で使用される場合、「正常な酸素(O2)消費率」という用語は、健康な個体からの細胞の平均O2消費を指す。本明細書で使用される場合、「クエン酸シンターゼの正常な活性レベル」という用語は、健康な個体からの細胞におけるクエン酸シンターゼの平均活性レベルを指す。本明細書で使用される場合、「正常なアデノシン三リン酸(ATP)産生率」という用語は、健康な個体からの細胞における平均ATP産生率を指す。
【0176】
いくつかの態様によれば、本発明は、衰弱状態またはその症状の治療を必要とする対象において、それらを治療する方法を提供し、本方法は、複数のヒト幹細胞を含む医薬組成物を患者に投与するステップを含み、ヒト幹細胞は、ミトコンドリアDNAに病原性突然変異がない凍結-解凍した健康な機能的外因性ミトコンドリアで富化される。
【0177】
ある特定の実施形態では、症状は、歩行能力障害、運動技能障害、言語技能障害、記憶障害、体重減少、悪液質、低血中アルカリホスファターゼレベル、低血中マグネシウムレベル、高血中クレアチニンレベル、低血中重炭酸塩レベル、低血中塩基過剰レベル、高尿中グルコース/クレアチニン比、高尿中塩化物/クレアチニン比、高尿中ナトリウム/クレアチニン比、高血中乳酸レベル、高尿マグネシウム/クレアチニン比、高尿中カリウム/クレアチニン比、高尿中カルシウム/クレアチニン比、糖尿、マグネシウム尿、高血中尿素レベル、低C-ペプチドレベル、高HbA1Cレベル、副甲状腺機能低下症、眼瞼下垂、聴力損失、心伝導障害、低ATP含有量、およびリンパ球における酸素消費量、双極性障害、強迫性障害、うつ病性障害、ならびにパーソナリティ障害を含む気分障害からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。症状を「高」および「低」と定義することは、それぞれ「正常より検出可能に高い」および「正常より検出可能に低い」に対応し、正常レベルは、ミトコンドリア病に罹患していない複数の対象における対応するレベルであることを理解されたい。
【0178】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、特定の組織または器官に投与される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、少なくとも104個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、約104~約108個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。
【0179】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、非経口投与によって投与される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、全身投与によって投与される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈内注射によって投与される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、静脈内注入によって投与される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、少なくとも105個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、約106~約108個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1キログラムあたり少なくとも約105~2*107個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1キログラムあたり少なくとも約105個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1キログラムあたり約105~約2*107個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、患者の体重1キログラムあたり約106~約5*106個のミトコンドリア富化ヒト幹細胞を含む。
【0180】
ミトコンドリアDNA含有量は、核遺伝子に対して正規化された、ミトコンドリア富化の前後のミトコンドリア遺伝子の定量的PCRを実行することによって測定され得る。
【0181】
特定の状況では、ミトコンドリア富化前の同じ細胞は、CSおよびATP活性を測定し、富化レベルを決定するための対照として機能する。
【0182】
ある特定の実施形態では、本明細書で使用される場合、「検出可能に高い」という用語は、正常値と増加した値との間の統計的に有意な増加を指す。ある特定の実施形態では、本明細書で使用される場合、「検出可能に高い」という用語は、非病理学的増加、すなわち、実質的に高い値に関連する病理学的症状が明らかにならないレベルを指す。ある特定の実施形態では、本明細書で使用される場合、「増加した」という用語は、健康な対象(複数可)の対応する細胞もしくは対応するミトコンドリア、またはミトコンドリア富化前の第1の組成物の幹細胞に見られる対応する値よりも1.05倍、1.1倍、1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍以上高い値を指す。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0183】
ある特定の実施形態では、第4の組成物中の幹細胞は、(i)ミトコンドリア富化前の幹細胞におけるミトコンドリアDNA含有量と比較して、増加した正常なミトコンドリアDNA含有量、(ii)ミトコンドリア富化前の幹細胞における酸素(O2)消費率と比較して、増加した酸素(O2)消費率、(iii)ミトコンドリア富化前の幹細胞におけるクエン酸シンターゼの含有量もしくは活性レベルと比較して、増加したクエン酸シンターゼの含有量もしくは活性レベル、(iv)ミトコンドリア富化前の幹細胞におけるアデノシン三リン酸(ATP)産生率と比較して、増加したアデノシン三リン酸(ATP)産生率、または(v)(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0184】
ある特定の実施形態では、第2の組成物中のミトコンドリアタンパク質の総量は、試料内の細胞タンパク質の総量の20%~80%である。
【0185】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、示された数値の±10%を指す。典型的には、本明細書で使用される場合、数値は、示された数値の±10%を指す。
【0186】
ある特定の実施形態では、本方法は、第4の組成物を凍結することをさらに含む。ある特定の実施形態では、本方法は、第4の組成物を凍結し、その後解凍することをさらに含む。
【0187】
本発明はさらに、別の態様では、上記の方法によって得られる、機能的ミトコンドリアで富化された複数のヒト幹細胞を提供する。
【0188】
ある特定の実施形態では、複数の幹細胞は、機能的ミトコンドリアで富化される前に凍結される。さらなる実施形態では、複数の幹細胞は、凍結され、次いで機能的ミトコンドリアで富化される前に解凍される。他の実施形態では、機能的ミトコンドリアで富化された複数の幹細胞が凍結される。他の実施形態では、機能的ミトコンドリアで富化された複数の幹細胞は、凍結され、次いで使用前に解凍される。
【0189】
本発明はさらに、別の態様では、複数のヒト幹細胞を提供し、幹細胞は、本発明の原理に従い、健康なミトコンドリアでの富化前の同じ供給源からのヒト幹細胞と比較して、(a)増加したミトコンドリア含有量、(b)増加した酸素(O2)消費率、(c)増加したクエン酸シンターゼの含有量もしくは活性レベル、(d)増加したミトコンドリアDNA含有量、または(e)(a)、(b)、(c)、および(d)の任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、幹細胞は、CD34+幹細胞である。
【0190】
本明細書で使用される場合、「増加したミトコンドリア含有量」という用語は、ミトコンドリア富化前の、第1の組成物のミトコンドリア含有量よりも検出可能に高いミトコンドリア含有量を指す。
【0191】
ある特定の実施形態では、複数の細胞が凍結される。ある特定の実施形態では、複数の細胞は、凍結され、次いで使用前に解凍される。
【0192】
ある特定の実施形態では、複数のヒト幹細胞は、CD34+であり、増加したミトコンドリア含有量、増加した正常なミトコンドリアDNAのレベル、増加した酸素(O2)消費率、増加したクエン酸シンターゼの活性レベルを有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0193】
ある特定の実施形態では、複数のヒト幹細胞は、増加したミトコンドリア含有量、増加した正常なミトコンドリアDNAのレベル、増加した酸素(O2)消費率を有し、増加したクエン酸シンターゼの活性レベルを有する。
【0194】
本発明はさらに、別の態様では、上記のように機能的ミトコンドリアで富化された複数のヒト骨髄幹細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0195】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、細胞が生存可能な状態に維持される培地または担体をさらに含む細胞を含む任意の組成物を指す。
【0196】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は凍結される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、凍結され、次いで使用前に解凍される。
【0197】
ある特定の実施形態では、上記の医薬組成物は、衰弱状態を有するヒト対象のある特定の症状を治療する方法で使用するためのものである。本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、対象が罹患した状態の衰弱作用に関連するかまたは誘導される少なくとも1つの症状の縮小、緩和、または寛解を含む。
【0198】
本発明はさらに、別の態様では、老齢、老齢関連疾患、または悪性疾患に罹患しているヒト対象における抗癌療法を含むがこれらに限定されない、衰弱作用の状態を緩和または縮小する方法を提供し、これには、上記の医薬組成物を対象に投与するステップを含む。
【0199】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、一般に、化学、薬理学、生物学、生化学、および医学の技術の実務医に既知であるか、またはそれらの実務医によって既知の方法、手段、技法、および手順から容易に開発されたかのいずれかのそれらの方法、手段、技法、および手順を含むがこれらに限定されない、所与の課題を達成するための方法、手段、技法、および手順を指す。
【0200】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は凍結され、上記の方法は、使用前に凍結した医薬組成物を解凍することをさらに含む。
【0201】
ある特定の実施形態では、幹細胞は、衰弱状態に罹患している対象に対して自家である。
【0202】
機能的ミトコンドリアを、衰弱状態に罹患している対象に対して自家の幹細胞と接触させることにより、幹細胞の若返り/再生がもたらされる。
【0203】
いくつかの実施形態では、様々な実施形態における上記の方法は、第1の組成物の幹細胞を、幹細胞を拡大させることができる増殖培地中で該幹細胞を培養することによって、拡大させることをさらに含む。他の実施形態では、本方法は、第4の組成物のミトコンドリア富化幹細胞を、幹細胞を拡大させることができる培養または増殖培地中で該細胞を培養することによって、拡大させることをさらに含む。本出願を通して使用される場合、「培養または増殖培地」という用語は、細胞培養培地、細胞成長培地、細胞に栄養を提供する緩衝液などの流体培地である。本出願を通して、および特許請求の範囲で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、細胞培養培地、細胞成長培地、細胞に栄養を提供する緩衝液などの流体担体を含む。
【0204】
ある特定の実施形態では、衰弱作用に罹患している対象における機能的ミトコンドリアによって若返った幹細胞の投与は、これらの作用を縮小させることができる。いくつかの実施形態では、若返った幹細胞の投与は、衰弱状態に罹患している対象の腸絨毛における上皮細胞の組織化および分布を回復させることができる。他の実施形態では、若返った幹細胞の投与は、対象の腸陰窩における上皮幹細胞の活性を回復させることができる。さらなる実施形態では、若返った幹細胞の投与は、対象の真皮の厚さを回復させることができる。またさらなる実施形態では、若返った幹細胞の投与は、対象の毛包活性を回復させることができる。追加の実施形態では、若返った幹細胞の投与は、対象の真皮組織における創傷治癒活性を回復させることができる。いくつかの実施形態によれば、機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞は、自家造血幹細胞移植片において血液前駆細胞を若返らせることができる。他の実施形態によれば、機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞は、同種異系造血幹細胞移植片の血液前駆細胞を若返らせることができる。また他の実施形態によれば、機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞は、真皮または腸上皮の前駆細胞を若返らせることができる。追加の実施形態では、若返った幹細胞の投与は、対象におけるβ細胞の膵臓機能を回復させることができる。いくつかの実施形態によれば、機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞は、肝臓の肝細胞を若返らせることができる。他の実施形態によれば、機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞は、腎臓の機能低下を遅らせることができる。また他の実施形態によれば、機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞は、黄斑変性を縮小させることができる。
【0205】
ある特定の実施形態では、幹細胞は、衰弱状態に罹患している対象に対して同種異系である。「対象に対して同種異系」、「ドナーから」、および「健康なドナーから」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、異なるドナー個体からである幹細胞またはミトコンドリアを指す。可能であれば、ドナー幹細胞は、好ましくは、患者の細胞に対してHLA適合であるか、または少なくとも部分的にHLA適合である。ある特定の実施形態によれば、ドナーは、特定のミトコンドリアDNAハプログループの特定により患者に適合される。
【0206】
本明細書で使用される場合、「HLA適合」という用語は、少なくとも患者がドナーの幹細胞に対して急性免疫応答を発達させない程度まで、患者および幹細胞のドナーが可能な限り厳密にHLA適合であるという願望を指す。かかる免疫応答の防止および/または療法は、免疫抑制剤の急性または慢性の使用の有無にかかわらず達成され得る。ある特定の実施形態では、ドナーからの幹細胞は、患者が幹細胞を拒絶しない程度まで、患者にHLA適合である。
【0207】
ある特定の実施形態では、患者は、幹細胞移植片の免疫拒絶を防止するために免疫抑制療法によってさらに治療される。
【0208】
ある特定の実施形態では、ミトコンドリアは、同一のハプログループからである。
【0209】
他の実施形態では、ミトコンドリアは、異なるハプログループからである。
【0210】
ある特定の実施形態では、上記の方法は、医薬組成物の投与の前に、対象に移植前コンディショニング剤を投与する前ステップをさらに含む。本明細書で使用される場合、「移植前コンディショニング剤」という用語は、ヒト対象の骨髄内の骨髄細胞を殺傷することができる任意の薬剤を指す。ある特定の実施形態では、移植前コンディショニング剤はブスルファンである。
【0211】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は全身投与される。ある特定の実施形態では、対象への医薬組成物の投与は、組織または器官への静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、硝子体内、および直接注射からなる群から選択される経路によるものである。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。ある特定の実施形態によれば、医薬組成物は、本発明の衰弱状態によって影響を受ける組織および器官に直接注射される。ミトコンドリアの質および活性の低下に関連する機能障害を示すことが既知である特定の組織または器官には、眼、腎臓、肝臓、膵臓、脳、および心臓が含まれるが、これらに限定されない。
【0212】
ある特定の実施形態では、機能的ミトコンドリアは、胎盤、培養で成長させた胎盤細胞、および血液細胞からなる群から選択されるヒト細胞またはヒト組織から得られる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0213】
ある特定の実施形態によれば、機能的ミトコンドリアは、凍結-解凍サイクルを受けている。いかなる理論または機構によっても拘束されることを望むものではないが、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、凍結-解凍サイクルを受けていない対照ミトコンドリアと比較して、解凍後に同等の酸素消費率を示す。
【0214】
いくつかの実施形態によれば、凍結-解凍サイクルは、該機能的ミトコンドリアを解凍前に少なくとも24時間凍結することを含む。別の実施形態によれば、凍結-解凍サイクルは、該機能的ミトコンドリアを解凍前に少なくとも1ヶ月間、解凍前に数ヶ月以上凍結することを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、凍結-解凍サイクル後の機能的ミトコンドリアの酸素消費量は、凍結-解凍サイクル前の機能的ミトコンドリアの酸素消費量と等しいかまたはそれよりも高い。
【0215】
本明細書で使用される場合、「凍結-解凍サイクル」という用語は、機能的ミトコンドリアを0℃を下回る温度に凍結し、ミトコンドリアを0℃を下回る温度で所定の期間維持し、ミトコンドリアを室温または体温またはミトコンドリアによる幹細胞の処理を可能にする0℃超の任意の温度に解凍することを指す。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。本明細書で使用される場合、「室温」という用語は、典型的には、18℃~25℃の温度を指す。本明細書で使用される場合、「体温」という用語は、35.5℃~37.5℃、好ましくは37℃の温度を指す。別の実施形態では、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、機能的ミトコンドリアである。
【0216】
別の実施形態では、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、少なくとも-70℃以下の温度で凍結された。別の実施形態では、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、少なくとも-20℃以下の温度で凍結された。別の実施形態では、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、少なくとも-4℃以下の温度で凍結された。別の実施形態によれば、ミトコンドリアの凍結は、漸進的である。いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリアの凍結は、瞬間凍結による。本明細書で使用される場合、「瞬間凍結」という用語は、ミトコンドリアを低温貯蔵温度に供することによって急速に凍結することを指す。
【0217】
別の実施形態では、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、解凍前に少なくとも30分間凍結された。別の実施形態によれば、凍結-解凍サイクルは、機能的ミトコンドリアを解凍前に少なくとも30、60、90、120、180、210分間凍結することを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態では、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、解凍前に少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、24、48、72、96、または120時間凍結された。各凍結時間は、本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態では、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、解凍前に少なくとも4、5、6、7、30、60、120、365日間凍結された。各凍結時間は、本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、凍結-解凍サイクルは、解凍前に機能的ミトコンドリアを少なくとも1、2、3週間凍結することを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、凍結-解凍サイクルは、解凍前に機能的ミトコンドリアを少なくとも1、2、3、4、5、6ヶ月間凍結することを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0218】
別の実施形態では、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、解凍前に少なくとも30分間-70℃で凍結された。いかなる理論または機構によっても拘束されることを望むものではないが、ミトコンドリアを凍結し、それらを長期間後に解凍する可能性は、長期間の貯蔵後でも再現性のある結果をもって、ミトコンドリアの容易な貯蔵および使用を可能にする。
【0219】
ある特定の実施形態によれば、解凍は、室温である。別の実施形態では、解凍は、体温である。別の実施形態によれば、解凍は、本発明の方法によるミトコンドリアの投与を可能にする温度である。別の実施形態によれば、解凍は、漸進的に実行される。
【0220】
別の実施形態によれば、凍結融解サイクルを受けたミトコンドリアは、凍結緩衝液中で凍結された。別の実施形態によれば、凍結-解凍サイクルを受けたミトコンドリアは、単離緩衝液中で凍結された。本明細書で使用される場合、「単離緩衝液」という用語は、本発明のミトコンドリアが単離されている緩衝液を指す。非限定的な例では、単離緩衝液はスクロース緩衝液である。いかなる機構または理論によっても拘束されることを望むものではないが、単離緩衝液中でミトコンドリアを凍結すると、凍結前に単離緩衝液を凍結緩衝液に交換するか、または解凍時に凍結緩衝液を交換する必要がないため、時間および単離ステップが省ける。
【0221】
別の実施形態によれば、凍結緩衝液は、抗凍結剤を含む。いくつかの実施形態によれば、抗凍結剤は、糖、オリゴ糖、または多糖である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。別の実施形態によれば、凍結緩衝液中の糖濃度は、ミトコンドリア機能を保存するように作用する十分な糖濃度である。別の実施形態によれば、単離緩衝液は、糖を含む。別の実施形態によれば、単離緩衝液中の糖濃度は、ミトコンドリア機能を保存するように作用する十分な糖濃度である。別の実施形態によれば、糖は、スクロースである。
【0222】
ある特定の実施形態では、本方法は、(a)健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアで富化されたヒト幹細胞を凍結し、(b)健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアで富化されたヒト幹細胞を解凍し、(c)健康な機能的ヒト外因性ミトコンドリアで富化されたヒト幹細胞を患者に投与する前ステップをさらに含む。
【0223】
ある特定の実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアは、ミトコンドリア富化細胞中の全ミトコンドリアの少なくとも3%を構成する。ある特定の実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアは、ミトコンドリア富化細胞中の全ミトコンドリアの少なくとも10%を構成する。いくつかの実施形態では、健康な機能的外因性ミトコンドリアは、ミトコンドリア富化細胞中の全ミトコンドリアの少なくとも約3%、5%、10%、15%、20%、25%、または30%を構成する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0224】
機能的ミトコンドリアによる幹細胞の富化の程度は、酸素(O2)消費率、クエン酸シンターゼの含有量もしくは活性レベル、アデノシン三リン酸(ATP)産生率を含むがこれらに限定されない機能的および/または酵素的アッセイによって決定され得る。別の方法では、健康なドナーミトコンドリアによる幹細胞の富化は、ドナーのミトコンドリアDNAの検出によって確認することができる。いくつかの実施形態によれば、機能的ミトコンドリアによる幹細胞の富化の程度は、ヘテロプラスミーの変化のレベルによって、および/または細胞あたりのmtDNAのコピー数によって決定され得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0225】
TMRM(テトラメチルローダミンメチルエステル)または関連するTMRE(テトラメチルローダミンエチルエステル)は、ミトコンドリア膜電位の変化を特定することにより、生細胞のミトコンドリア機能を評価するために一般的に使用される細胞透過性蛍光発生色素である。いくつかの実施形態によれば、富化のレベルは、TMREまたはTMRMで染色することによって決定することができる。
【0226】
いくつかの実施形態によれば、ミトコンドリア膜の無傷性は、当技術分野で既知の任意の方法によって決定され得る。非限定的な例では、ミトコンドリア膜の無傷性は、テトラメチルローダミンメチルエステル(TMRM)またはテトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)蛍光プローブを使用して測定される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。顕微鏡下で観察され、TMRMまたはTMRE染色を示すミトコンドリアは、無傷ミトコンドリア外膜を有する。本明細書で使用される場合、「ミトコンドリア膜」という用語は、ミトコンドリア内膜、ミトコンドリア外膜、およびその両方からなる群から選択されるミトコンドリア膜を指す。
【0227】
ある特定の実施形態では、ミトコンドリア富化ヒト幹細胞におけるミトコンドリアの富化のレベルは、細胞中の全ミトコンドリアDNAの少なくとも統計的に代表的な部分を配列決定し、宿主/内因性ミトコンドリアDNAおよび外因性ミトコンドリアDNAの相対レベルを決定することによって決定される。ある特定の実施形態では、ミトコンドリア富化ヒト幹細胞中のミトコンドリアの富化のレベルは、一ヌクレオチド多型(SNP)分析によって決定される。ある特定の実施形態では、最大のミトコンドリア集団および/もしくは最大のミトコンドリアDNA集団は、宿主/内因性ミトコンドリア集団および/もしくは宿主/内因性ミトコンドリアDNA集団であり、かつ/または2番目に大きいミトコンドリア集団および/もしくは2番目に大きいミトコンドリアDNA集団は、外因性ミトコンドリア集団および/もしくは外因性ミトコンドリアDNA集団である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
ある特定の実施形態によれば、健康な機能的ミトコンドリアによる幹細胞の富化は、当技術分野で認識されている従来のアッセイによって決定することができる。ある特定の実施形態では、ミトコンドリア富化ヒト幹細胞におけるミトコンドリアの富化のレベルは、(i)宿主/内因性ミトコンドリアDNAおよび外因性ミトコンドリアDNAのレベル、(ii)クエン酸シンターゼ(CS)、チトクロームCオキシダーゼ(COX1)、コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体フラボタンパク質サブユニットA(SDHA)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるミトコンドリアタンパク質のレベル、(iii)CS活性レベル、または(iv)(i)、(ii)、および(iii)の任意の組み合わせよって決定される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0228】
ある特定の実施形態では、ミトコンドリア富化ヒト幹細胞におけるミトコンドリアの富化のレベルは、(i)同種異系ミトコンドリアの場合、宿主ミトコンドリアDNAおよび外因性ミトコンドリアDNAのレベル、(ii)クエン酸シンターゼ活性のレベル、(iii)コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体フラボタンパク質サブユニットA(SDHA)もしくはチトクロームCオキシダーゼ(COX1)のレベル、(iv)酸素(O2)消費率、(v)アデノシン三リン酸(ATP)産生率、または(vi)それらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つによって決定される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。これらの様々なパラメーターを測定するための方法は、当技術分野で周知である。
【0229】
いくつかの態様では、本発明は、対象における状態の衰弱作用を治療または縮小するのに使用するための、健康な機能的ミトコンドリアで富化されたヒト幹細胞を含む医薬組成物を提供し、状態の衰弱作用は、老齢、老齢関連疾患、および抗癌治療の続発症からなるがこれらに限定されない群から選択される。
【0230】
いくつかの実施形態では、本発明は、対象の状態の衰弱作用を治療または縮小するための方法を提供し、これには、対象に、健康な機能的ミトコンドリアで富化されたヒト幹細胞を含む医薬組成物を投与することが含まれ、状態の衰弱作用は、老齢、老齢関連疾患、および抗癌治療の続発症からなるがこれらに限定されない群から選択される。特定の実施形態では、抗癌治療は、放射線療法、化学療法、モノクローナル抗体を用いた免疫療法、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0231】
ある特定の実施形態によれば、健康な機能的ミトコンドリアは、対象の衰弱状態により、特定のミトコンドリアハプログループから選択されるドナーから単離される。例えば、老齢対象の場合、Jミトコンドリアハプログループからの機能的ミトコンドリアで富化された幹細胞の投与は、寿命および低血圧に関連しているため好適である(De Benedictis et al.,FASEB J.1999;13(12):1532-6、Rea et al.,AGE 2013;34(4):1445-56)。HおよびNハプログループは、より良い筋肉の機能性および筋力に関連している(Larsen et al.,Biochim Biophys Acta.2014;1837(2):226-31、Fuku et al.,Int J Sports Med.2012;33(5):410-4)。D4bハプログループは、脳卒中を防ぐ可能性があり(Yang et al.,Mol Genet Genomics.2014;289(6):1241-6)、K、U、H、およびVハプログループは、認知障害に対する保護をもたらす可能性があり(Colicino et al.,Environ Health.2014;13(1):42)、Rハプログループは、敗血症性脳症からの回復のより良い予後をもたらすことが示されている(Yang et al.,Intensive Care Med.2011;37(10):1613-9)。ハプログループN9aは、糖尿病(Fuku et al.,Am J Hum Genet.2007;80(3):407-15)およびメタボリックシンドローム(Tanaka et al.,Diabetes 2007;56(2):518-21)に対する耐性をもたらす。Hハプログループは、老齢関連黄斑変性症(AMD)を含む眼疾患の発症を防ぐ(Mueller et al.,PloS one 2012;7(2):e30874)。
【0232】
ある特定の実施形態によれば、第1の組成物の幹細胞は、対象の衰弱状態により、特定のミトコンドリアハプログループから選択されるドナーからのものである。例えば、抗癌治療の衰弱作用に罹患している対象には、J、K2、およびUハプログループが同種異系造血幹細胞移植のより良いドナーであり、GVHDおよび/または再発が少ないことが示されたため、それらが検討され得る(Ross et al.Biol Blood Marrow Transplant 2015;21:81-88)。
【0233】
本明細書で使用される場合、「ハプログループ」という用語は、母系で共通の祖先を共有する人々の遺伝的集団群を指す。ミトコンドリアハプログループは、配列決定によって決定される。
【0234】
ある特定の場合において、ドナーとアクセプターとの間のハプロタイプを適合させたい場合がある。
【0235】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、示された整数、数、または量より10%未満から10%超までの範囲を意味する。例えば、「約1*105」は、「1.1*105~9*104」を意味する。
【0236】
本発明はある特定の実施形態を参照して説明されてきたが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、同等物に置き換えることができることを理解するだろう。さらに、その範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。
【0237】
以下の実施例は、本発明のより完全な理解を提供するために提示される。本発明の原理を例示するために記載された特定の技術、条件、材料、割合、および報告されたデータは、例示であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0238】
実施例1.単離されたヒトミトコンドリア:調製および凍結保存。
ミトコンドリアは、WO2013/035101およびWO2016/135723で以前に開示されたように、単離および保存することができる。
以下は、末梢血細胞からのミトコンドリアの単離(MNV-BLD)およびCD34+細胞の富化(MNV-BM-BLD)に使用される例示的なプロトコルである。
第1段階-MNV-BLDの産生:バフィーコートは、患者からえられるか、またはドナーから提供された末梢血(500mL)から単離される。次に、バフィーコートをLymphoprep(商標)の上に重ね、遠心分離する。白血球(Lymphoprep(商標)の上のバフィーコート)を収集し、遠心分離する。細胞ペレット(リンパ球)を洗浄し、細胞ペレットを凍結し、氷冷の250mMスクロース緩衝液(250mMスクロース、10mM Tris、1mM EDTA)pH=7.4に懸濁する。細胞懸濁液を収集し、30G針に3回通した後、ホモジナイズする。ホモジネートを遠心分離する。上清を収集して氷上に置き、ペレットをスクロース溶液で洗浄し、ホモジナイズし、遠心分離する。洗浄したペレットから2回目の上清を収集し、前の上清と合わせる。合わせた上清を5μmフィルタを通してろ過し、8000gで遠心分離する。ペレットをスクロース溶液で洗浄し、1mlの冷250mMスクロース緩衝液pH=7.4に再懸濁する。得られたミトコンドリア溶液(本明細書ではMNV-BLDと表記)は、使用するまで気相窒素タンクで凍結保存される。
第2段階-MNV-BM-BLDの生成:骨髄細胞が末梢血に動員された後、CliniMACS(商標)システムを使用して白血球アフェレーシスによって収集された血液から患者またはドナーのCD34+細胞を単離する。CD34+細胞のペレットを、1×106細胞/mlの最終濃度まで0.9%NaCl溶液中4.5%HSAに懸濁する。MNV-BLD(ミトコンドリア懸濁液)を室温で解凍し、細胞懸濁液1mlあたり4.4クエン酸シンターゼ(CS)活性ミリユニット(1X106個の細胞)で、CD34+細胞に添加する。MNV-BLDおよびCD34+細胞を2mLチューブで混合し、7000gで5分間4℃で遠心分離する。遠心分離後、細胞を同じ0.9%NaCl溶液中4.5%HSAで懸濁し、合わせ、フラスコに播種し、室温で24時間インキュベートする。インキュベーション後、富化されたCD34+細胞を4.5%HSA溶液で2回洗浄し、300gで10分間遠心分離する。細胞ペレットを0.9%NaCl中4.5%HSA100mlに再懸濁し、注入バッグに充填する。
【0239】
実施例2.単離されたミトコンドリアは線維芽細胞に入ることができる。
ミトコンドリアで緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するマウス線維芽細胞(3T3)(左のパネル)を、ミトコンドリアでRFPを発現するマウス線維芽細胞(3T3)から単離した赤色蛍光タンパク質(RFP)標識ミトコンドリアとともに24時間インキュベートした(中央のパネル)。蛍光共焦点顕微鏡を使用して、WO2016/135723で以前に説明されているように、黄色に見えるGFPおよびRFPの両方で標識された線維芽細胞を特定した(右のパネル)(
図1)。
【0240】
図1に示される結果は、ミトコンドリアが線維芽細胞に入ることができることを示す。
【0241】
実施例3.ミトコンドリアは、ミトコンドリア活性が阻害された細胞においてATP産生を増加させる。
マウス線維芽細胞(104、3T3)は、処理されない(対照)か、または4時間0.5μMロテノン(ロテノン、ミトコンドリア複合体I不可逆阻害剤、CAS番号83-79-4)で処理され、洗浄され、さらに0.02mg/mlのマウス胎盤ミトコンドリア(ロテノン+ミトコンドリア)で3時間処理されるかのいずれかであった。WO2016/135723に以前に示されているように、細胞を洗浄し、Perkin Elmer ATPliteキットを使用してATPレベルを決定した(
図2)。
図2に見られるように、ATPの産生は、対照と比較してミトコンドリアとともにインキュベートした細胞において完全に救済された。
【0242】
図2に示される結果は、ロテノン単独ではATPレベルが約50%減少したが、ミトコンドリアの添加によりロテノンの阻害作用を実質的に無効化し、対照細胞のATPレベルに到達することができることを明確に示す。この実験は、ミトコンドリアの活性が障害されているまたは損なわれている細胞においてミトコンドリアのATP産生を増加させるミトコンドリアの能力の証拠を提供する。
【0243】
実施例4.ミトコンドリアはマウス骨髄細胞に入ることができる。
マウス骨髄細胞(105)を、マウスメラノーマ細胞から単離したGFP標識ミトコンドリアとともに24時間インキュベートした。蛍光共焦点顕微鏡を使用して、WO2016/135723で以前に説明されているように、骨髄細胞内のGFP標識ミトコンドリアを特定した(
図3)。
図3に示される結果は、ミトコンドリアが骨髄細胞に入ることができることを示す。
【0244】
野生型(ICR)および突然変異ミトコンドリア(FVB/N、ATP8に突然変異を持つ)マウスからの骨髄細胞を、ミトコンドリア含有量および活性を増加させるために、37℃および5%CO2雰囲気で、DMEMにおいて異なる起源の単離したミトコンドリアとともに24時間インキュベートした。表1は、プロセス前の細胞のCS活性と比較した、プロセス後の細胞のCS活性の相対的な増加によって決定される、ミトコンドリア増強プロセスの代表的な結果を示す。
【表1】
【0245】
ミトコンドリア増強療法の作用をインビボで調べるために、C57/BL胎盤ミトコンドリアの4.4mUnitsCS活性で富化されたFVB/N骨髄細胞(1x106)をFVB/NマウスにIV注射した。処置の1日後、1週間後、1ヶ月後、および3ヶ月後にマウスから骨髄を収集し、dPCRを使用してWTmtDNAのレベルを検出した。
図4に見られるように、かなりの量のWT mtDNAが治療の1日後に骨髄で検出された。
【0246】
実施例5.ミトコンドリアは濃度依存的に骨髄細胞に入る。
マウス骨髄細胞(106)は、未処理であるか、またはマウスメラノーマ細胞から単離した異なる量のGFP標識ミトコンドリアとともに15時間インキュベートされた。細胞を蒔く前に、ミトコンドリアは、細胞と混合され、室温で5分間放置された((-)Cent)か、または40 Cで、8,000グラムで5分間遠心分離された((+)Cent)かのいずれかであった。次いで、細胞を24のウェル(106細胞/ウェル)に蒔いた。15時間のインキュベーション後、細胞を2回洗浄して、細胞に入らなかったミトコンドリアをすべて除去した。クエン酸シンターゼ活性は、WO2016/135723に以前に説明されているように、CS0720 Sigmaキットを使用して決定された(
図5)。上記で指定した条件下で測定されたCS活性レベルを表2に要約する。
【表2】
【0247】
図5に示す結果は、ミトコンドリアを添加すると、細胞のCS活性が用量依存的に増加し、濃度を増加させると、したがって、おそらくミトコンドリアと細胞との接触が例えば遠心分離により増加し、CS活性がさらに増加することを示す。
【0248】
マウス骨髄細胞(106)は、未処理であるか、またはマウスメラノーマ細胞から単離されたGFP標識ミトコンドリア(17ミリユニットまたは34ミリユニット、ミトコンドリア含有量のマーカーとしてのクエン酸シンターゼ活性のレベルを示す)とともに24時間インキュベートされた。細胞をミトコンドリアと混合し、8000gで遠心分離し、再懸濁した。24時間のインキュベーション後、細胞をPBSで2回洗浄し、クエン酸シンターゼ(CS)活性(
図6A)およびチトクロームcレダクターゼ活性(
図6B)のレベルを、WO2016/135723で以前に説明されているように、それぞれCS0720およびCYOIOOキット(Sigma)を使用して測定した。
【0249】
FVB/N骨髄細胞(mtDNA ATP8に突然変異を持つ)を、様々な用量(1mL中の1M細胞あたり0.044、0.44、0.88、2.2、4.4、8.8、17.6mUnits CS活性)で、胎盤から単離されたC57/BL野生型(WT)ミトコンドリアとともにインキュベートした。
図7Aに見られるように、WT特異的配列を使用したdPCRは、ほとんどの投薬量で用量依存的にWTmtDNAの増加を示した。富化された細胞は、mtDNAコード化(COX1)(
図7B)および核コード化(SDHA)(
図7C)の含有量の用量依存的な増加も示した。
【0250】
実施例6.ミトコンドリアは、ヒト骨髄細胞に入ることができる。
ヒトCD34+細胞(1.4*105、ATCC PCS-800-012)は未処理であるか、ヒト胎盤細胞から単離されたGFP標識ミトコンドリアとともに20時間インキュベートされた。細胞を蒔く前に、ミトコンドリアを細胞と混合し、8000gで遠心分離し、再懸濁した。インキュベーション後、細胞をPBSで2回洗浄し、CS0720 Sigmaキットを使用してCS活性を測定した(
図8A)。ATP含有量は、ATPlite(Perkin Elmer)を使用して測定された(
図8B)。上記で指定した条件下で測定されたCS活性レベル(
図8A)を表3に要約する。
【表3】
【0251】
図8に示される結果(表3を参照されたい)は、ヒト骨髄細胞のミトコンドリア含有量が、単離されたヒトミトコンドリアとの相互作用および共インキュベーションによって、ヒトもしくはマウスの線維芽細胞またはマウスの骨髄細胞のいずれかの能力を超える程度まで、何倍も増加する可能性があることを明確に示す。
【0252】
図8Bに示される細胞集団は、FACS分析によってさらに評価された。WO2016/135723に以前に示されているように、GFP標識ミトコンドリアとともにインキュベートしていないCD34+細胞では、細胞のごく一部(0.9%)のみが蛍光を発していたが(
図9A)、遠心分離後にGFP標識ミトコンドリアとともにインキュベートされたCD34+細胞は実質的に蛍光を発していた(28.4%)(
図9B)。
【0253】
実施例7.ミトコンドリアは、ヒトCD34+骨髄細胞に入ることができる。
GCS-Fで処理された健康なドナーのヒトCD34+細胞は、アフェレーシスによって得られ、CliniMACSシステムを使用して精製され、凍結された。細胞を解凍し、血液由来のミトコンドリア(MNV-BLD)(1x106個の細胞あたり4.4ミリユニットのミトコンドリアCS活性)で処理するか、または未処理(NT)で、8000gで遠心分離し、24時間インキュベートした。次に、細胞をPBSで洗浄し、CS活性(
図10B)およびATP含有量(
図10A)を測定した(それぞれ、CS0720 SigmaキットおよびATPlite Perkin Elmerを使用した)。
【0254】
血液由来のミトコンドリアで処理されたCD34+細胞は、CS活性(
図10B)およびATP含有量(
図10A)によって測定されるように、ミトコンドリア活性の顕著な増加を示した。
【0255】
HeLa-TurboGFP-Mitochondria細胞(CellTrend GmbH)から単離されたミトコンドリアを使用して、健康なドナーからのCD34+細胞をMitotrackerOrange(MTO)で処理し、MATの前に洗浄した。細胞を2%PFAで10分間固定し、DAPIで固定した。60X/1.42油浸対物レンズを備えた共焦点顕微鏡を使用して細胞をスキャンした。
【0256】
図11に見られるように、外因性ミトコンドリアは、MAT後0.5時間でCD34+細胞に入り(明るく、ほぼ白色の、細胞内の斑点)、試験された8時間および24時間にわたって続いた。
【0257】
実施例8.CD34+細胞を生理食塩水とともに室温で培養すると、生存能力が改善される。
CD34+細胞は、未処理(NT)であるか、または血液由来ミトコンドリア(MNV-BLD)とともにインキュベートされた。細胞は、4.5%ヒト血清アルブミン(HSA)を含む培養培地(CellGro(商標))または生理食塩水(Zenalb(商標))中で、室温(RT)または37℃で培養された。
【0258】
異なる培養条件での細胞生存能力を表4に要約する。
【表4】
【0259】
表4に示されている結果は、CD34+細胞生存能力が、培養培地ではなく生理食塩水中のヒト血清アルブミンを使用してRTで培養された場合に改善されることを示す。
【0260】
実施例9.ヒト臍帯血を移植したNSGSマウスからの骨髄は、MATの2ヶ月後により多くのヒトmtDNAを含有する
ピアソン患者の臍帯血細胞を0.88mUのヒトミトコンドリアとともに24時間インキュベートした後、培地を除去し、細胞を洗浄し、4.5%HSAに再懸濁した。富化された細胞をNSGSマウスにIV注射した(マウスあたり100,000個のCD34+細胞)。
【0261】
図12Aは、ピアソン患者の臍帯血細胞におけるmtDNA欠失の図であり、4978kbの欠失UCBmtDNA領域(左)、ならびに欠失を示すサザンブロット分析(右)を示す。
【0262】
MATの2ヶ月後にマウスから骨髄を収集し、UCB非欠失WT mtDNA配列を特定するプライマーおよびプローブを使用して、非欠失WT mtDNAのコピー数をdPCRで分析した。
【0263】
図12Bに見られるように、ミトコンドリア増強療法の2ヶ月後、マウスの骨髄は、増強されていない臍帯血細胞を注射されたマウスの骨髄と比較して、約100%多くのヒトmtDNAを含有した。
【0264】
実施例10.インビボでの安全性および生体分布動物研究
ミトコンドリアは、2つの異なるバックグラウンドからの対照の健康なマウスの骨髄細胞に導入される。ミトコンドリアの供給源は、異なるmtDNA配列を有するマウスからのものである(Jenuth JP et al.,Nature Genetics,1996,Vol.14,pages 146-151)。
【0265】
野生型マウス(C57BL)胎盤からミトコンドリアを単離した。骨髄細胞はFVB/Nマウスから単離された。突然変異したFVB/N骨髄細胞(106)に健康な機能的C57BLミトコンドリア(4.4mU)をロードし、FVB/NマウスにIV投与した。
【0266】
本方法のステップは、(1)C57BLマウスの胎盤からミトコンドリアを単離し、-80℃で凍結し、解凍するか、または新鮮なものを使用する、(2)mtDNA突然変異FVB/Nマウスから骨髄細胞を得る、(3)ミトコンドリアおよび骨髄細胞を接触させ、8000gで5分間遠心分離し、再懸濁し、24時間インキュベートする、(4)骨髄細胞をPBSで2回洗浄し、FVB/Nマウスの尾静脈に注射する。移植後、例えば、24時間、1週間、1ヶ月、3ヶ月後の様々な時点で、組織(血液、骨髄、リンパ球、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、骨格筋、眼、卵巣/精巣)を収集し、さらなる配列分析のためにDNAを抽出した。
【0267】
移植1ヶ月後の骨髄におけるFVB/Nのレベルの減少を
図13Aに示す。
図13Bに見られるように、移植3ヶ月後のFVB/Nマウスの肝臓におけるmtDNAレベルも減少した。
【0268】
FVB/N雌から採取した骨髄は、C57BL/6胎盤ミトコンドリアで富化された(1X10^6個の細胞あたり4.4mUのCS活性)。レシピエントマウスは、動物あたり100万個の増強した細胞のIV投与を受けた。デジタルPCRを使用して、C57BL/6特異的SNPを検出した。
図14Aは、MATの1日後のFVBNマウスの骨髄におけるC57BL/6 mtDNAの存在を示し、一部のマウスは治療の3ヶ月後まで持続性を示す。
図14Bおよび14Cは、MATの3ヶ月後のマウスの心臓および脳におけるC57BL/6由来のmtDNAの存在を示す。
【0269】
実施例11.インビボ前臨床動物研究:外来ミトコンドリアの移植に対する前コンディショニングの作用
野生型マウス(C57BL)肝臓からミトコンドリアを単離した。骨髄細胞は、ミトコンドリアが突然変異したマウス(FVB/Nマウス)から単離された。突然変異したFVB/N骨髄細胞に健康な機能的C57BLミトコンドリアをロードした。未処理のFVB/Nマウス(対照)、富化ミトコンドリアを投与されたFVB/Nマウス、富化ミトコンドリアの投与前に化学療法剤(ブスルファン)で処置されたFVB/Nマウス、および富化ミトコンドリアの投与前に全身照射(TBI)を受けたFVB/Nマウスを比較した。
【0270】
本方法のステップでは、(1)C57BLマウスの肝臓からミトコンドリアを単離し、-80℃で凍結し、解凍するか、または新鮮なものを使用する、(2)mtDNA突然変異FVB/Nマウスから骨髄細胞を得る、(3)ミトコンドリアおよび骨髄細胞を接触させ、8000gで5分間遠心分離し、再懸濁し、24時間インキュベートする、(4)骨髄細胞をPBSで2回洗浄する。(5)目的の群にブスルファンを投与するかまたは全身照射(TBI)する。(6)FVB/Nマウスの尾静脈にC57BLマウスの健康なミトコンドリアで富化されたFVB/Nマウスの骨髄細胞を注射する。移植の1ヶ月後、組織(血液、骨髄、リンパ球、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、脾臓、膵臓、骨格筋、眼、卵巣/精巣)を収集し、さらなる配列分析のためにDNAを抽出した。
【0271】
移植の1ヶ月後、ミトコンドリア、TBI、およびブスルファンで処置されたマウスの脳におけるFVB/Nのレベルの減少を
図15に示す。
【0272】
実施例12.老齢マウスに対するミトコンドリア富化の作用。
ミトコンドリアは、満期のC57BLマウスの胎盤から単離された。12月齢のC57BLマウスの骨髄細胞が得られた。ミトコンドリアで富化された骨髄細胞(MNV-BM-PLC、1x106個の細胞)、骨髄細胞のみ(BM、1x106個の細胞)、または対照ビヒクル溶液(VEHICLE、0.9%w/v NaCl中4.5%アルブミン)を、実験の開始時および約15月齢、18月齢、21月齢で再び12月齢のC57BLマウスの尾静脈にIV注射した。BUN血液検査は、最初のIV注射の1、3、4、および6ヶ月後に実行された。オープンフィールド試験は、最初のIV注射の9ヶ月後に実行された。BUN血液検査は、IV注射の2、4、および6ヶ月後に実行された。
【0273】
図16A~16Dに見られるように、健康なミトコンドリア(MNV-BM-PLC)で富化された骨髄細胞を移植された老齢マウス(12ヶ月)は、ミトコンドリアで富化されていない骨髄(BM対照)を移植された同齢のマウス、および全く移植されていないマウス(対照)と比較して、改善された身体活動および探索行動を示した。MNV-BM-PLC処置マウスは、対照と比較して、移動距離が長く(
図16A)、ケージの中央で過ごす時間が長く(
図16B)、壁の隣で過ごす時間が短い(
図16C)、典型的な若年マウスの行動パターンを示した。また、
図16Dに示されるように、機能的ミトコンドリアで富化された骨髄を老齢マウスに投与すると、腎臓の悪化が停止した。
アリーナの中央ゾーンで過ごす時間の増加は、ミトコンドリア増強療法を受けたマウスの広範な探索行動を示す。不安様行動に関連する接触走性の低下とともに、ミトコンドリア増強の抗不安作用を証明する。
これらのマウスでロータロッドデバイスを使用して、粗大運動能力および協調も評価された。
図16E~16Fに示されるように、投与の1ヶ月後、VEHICLEおよびBM対照群は、回転ロッドから落ちるまでの待ち時間の減少を示し(ベースラインから-2.82%および-2.18%、ns)、投与の3ヶ月後、ベースラインと比較してさらに14.15%および21.79減%低下した(***p=0.0008)。MNV-BM-PLCマウスは、ミトコンドリア富化療法の1ヶ月後にロッドから落ちるまでの待ち時間が16.17%低下し(*p=0.0464)、富化の3ヶ月後に止まった(ベースラインから-8.72%、ns)。
結果は、ミトコンドリア富化された中年期マウスでは、同齢の対照と比較して、より
軽減された運動機能障害を示しており、ミトコンドリア富化療法が老齢関連の運動機能の低下を軽減することができることを示唆する。
骨格筋機能は、これらのマウスの前肢握力試験によっても評価された。
図16G~16Hに示されるように、MNV-BM-PLCマウスは、ミトコンドリア増強(富化)療法の1ヶ月および3ヶ月後、握力スコアを一定に維持し(それぞれベースラインの-1.29%および-1.40%、投与の3ヶ月後から握力時間(把握を解放するまでの待ち時間)の悪化がより遅いことを示した(投与の1ヶ月および3ヶ月後のベースラインの+6.07%および-0.69%。
図16I~16Jに示されるように、VEHICLEおよびBM対照群と比較して、投与1ヶ月後に観察されたベースラインからの-4.80%および-0.9%の低下は、2ヶ月後にさらに増した(それぞれベースラインの-15.3%および-6.35%、ns)。VEHICLEおよびBM対照マウスのベースライン握力は、投与1ヶ月後に増加し(ベースラインから+6.01%および+4.06%、ns)、2ヶ月後にそれぞれベースラインの-6.03%(**p=0.0084)および-17.77%(*p=0.0404)低下した。
これらの結果は、ミトコンドリア富化治療マウスの握力および保持時間の悪化がより遅い/低減されることを示し、ミトコンドリア富化療法が老齢関連の筋肉機能の障害を寛解させる可能性があることを示唆する。
【0274】
実施例13.ヒト対象における老齢および老齢関連疾患の衰弱作用の縮小
老齢ヒト対象または老齢関連疾患(複数可)に罹患している対象の衰弱作用を縮小させるための方法のステップでは、(1)老齢対象またはドナーにG-CSFを10~16μg/kgの投薬量で5回投与する、(2)5日目に、対象にモゾビルを1~2日間投与することを検討する、(3)6日目に、対象の血液にアフェレーシスを実行し、骨髄細胞を得る。幹細胞の量が不十分な場合は、7日目にアフェレーシスを再度実行することができる、(4)並行して、健康なドナーの血液試料または胎盤から機能的なミトコンドリアを単離する。機能的ミトコンドリアの単離は、このプロセスの前に実行することもでき、-80℃(少なくとも)で凍結したミトコンドリアを保存し、使用前に解凍する、(5)骨髄細胞を機能的ミトコンドリアとともに24時間インキュベートする、(6)骨髄細胞を洗浄する、および(7)ミトコンドリアで富化された骨髄細胞を老齢対象に注入する。全期間を通して、患者の食物消費量、体重、乳酸アシドーシス、血球数、および生化学的血液マーカーの変化を評価する。
【0275】
老齢ヒト対象または老齢関連疾患(複数可)に罹患している対象の衰弱作用を縮小させるための別の方法は、(1)脂肪吸引などの外科手技を使用して老齢対象の脂肪組織を得る、(2)間葉系幹細胞(MSC)を単離し、培養中の細胞を増殖させ、任意選択で細胞を凍結保存する、(3)並行して、健康なドナーの血液試料または胎盤から機能的ミトコンドリアを単離する。機能的ミトコンドリアの単離は、このプロセスの前に実行することもでき、-80℃(少なくとも)で凍結したミトコンドリアを保存し、使用前に解凍する、(5)MSCを機能的ミトコンドリアとともに24時間インキュベートする、(6)MSCを洗浄する、および(7)ミトコンドリアで富化されたMSCを対象に注入する。全期間を通して、患者の食物消費量、体重、乳酸アシドーシス、血球数、および生化学的血液マーカーの変化を評価する。
【0276】
実施例14.非造血性腫瘍性疾患に罹患しているヒト患者の療法。
非造血性腫瘍性疾患に罹患しているヒト患者の療法のための方法のステップでは、(1)腫瘍性疾患に罹患している患者にG-CSFを10~16μg/kgの投薬量で5日間投与する、(2)6日目に、骨髄細胞を得るために患者の血液にアフェレーシスを実行する、(3)並行して、健康なドナーの血液試料から機能的なミトコンドリアを単離する、(4)骨髄細胞を機能的ミトコンドリアとともに24時間インキュベートする、(5)骨髄細胞を洗浄する、(6)ミトコンドリアをロードした骨髄細胞を患者に注入する。全期間を通して、患者の食物消費量、体重、乳酸アシドーシス、血球数、および生化学的血液マーカーの変化を評価する。
【0277】
実施例15.ピアソン症候群(PS)を有する若年患者に対するMNV-BLD(血液由来ミトコンドリア)で富化された自家CD34+細胞を使用した人道的治療。
6.5歳の男児患者(患者1)は、ピアソン症候群と診断され、mtDNAのヌクレオチド5835~9753が欠失している。ミトコンドリア増強療法(MAT)前の、彼の体重は14.5 KGであり、100メートル以上歩くことも階段を上ることもできなかった。彼の成長は治療前の3年間大幅に遅れ、ベースラインでの体重は-4.1標準偏差スコア(SDS)であり、身長は-3.2SDS(母集団と比較して)であり、1年以上胃瘻管(G-チューブ)によって栄養補給されていたにもかかわらず、改善しなかった。彼は、腎不全(GFR 22ml/分)および電解質補給を必要とする近位尿細管症を有した。彼は、カルシウム補給を必要とする副甲状腺機能低下症、および心電図検査での不完全な右脚ブロック(ICRBB)を有した。
【0278】
造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)の動員は、GCSF(10μg/kg)を5日間単独で皮下投与することによって実行された。白血球アフェレーシス(n=2)は、Spectra Optiaシステム(TerumoBCT)を使用して、施設のガイドラインに従って末梢静脈アクセスを介して実行された。CD34陽性選択は、CliniMACS CD34試薬を製造元の指示に従って使用することにより、動員された末梢血由来細胞で実行された。ミトコンドリアは、250mMスクロース緩衝液pH7.4を使用して、母体の末梢血単核細胞(PBMC)から分画遠心分離によって単離された。ミトコンドリア増強療法(MAT)の場合、自家CD34+細胞は、患者の母親からの健康なミトコンドリア(4.4ミリユニットのクエン酸シンターゼ(CS)を有するミトコンドリアの量あたり1*106個の細胞)とともにインキュベートされ、細胞ミトコンドリア含有量が1.56倍増加した(CS活性によって示されるようにミトコンドリア含有量の56%の増加)。ミトコンドリアとのインキュベーションは、4.5%HSAを含有する生理食塩水中で、RTで24時間実行した。富化された細胞は、生理食塩水中の4.5%ヒト血清アルブミンに懸濁された。
図17Aに示されるタイムラインに従って、患者は、IV注入により、体重1キログラムあたり、健康なミトコンドリアで富化された1.1*106個の自家CD34+細胞の1回の治療を受けた。
【0279】
図17Bに見られるように、患者の有酸素代謝当量(MET)スコアは、ミトコンドリア富化細胞の移植4ヶ月後に増加し、作用は移植8ヶ月後に変化しなかった。データは、患者の有酸素METスコアが療法後経時的に5(ウォーキングおよびサイクリングなどの中強度の活動)から8(ランニング、ジョギング、および縄跳びなどの激しい強度の活動)に大幅に増加したことを示す。METは、身体活動のエネルギーコストを表す生理学的尺度である。有酸素METスコアは年齢とともに低下するため、このパラメーターを改善する富化細胞移植の能力は、老齢対象にとって有望である。
【0280】
図17Cは、I.V.注射後の時間の関数としての患者の血中に見られる乳酸のレベルを示す。血中乳酸は、ミトコンドリアが損傷した場合、または組織への酸素輸送がミトコンドリア機能障害の特徴の1つである正常な代謝要求を支援するには不十分である場合に、嫌気性代謝の結果として血中に現れる乳酸である。
図4Cに見られるように、MAT後、患者1の血中乳酸レベルは正常値に減少した。乳酸は、人体の乳酸代謝回転に部分的に関与するミトコンドリアにおいて酸化される。ミトコンドリアの質および活性が年齢とともに低下するにつれて、乳酸レベルが上昇する。したがって、乳酸レベルを低下させる富化骨髄幹細胞の能力は、老齢対象に対する潜在的な作用を示唆する。
【0281】
表5は、細胞療法後の時間の関数としての患者の小児ミトコンドリア病尺度(IPMDS)-生活の質(QoL)質問票の結果を示す。「苦情と症状」および「身体検査」の両方のカテゴリで、0は関連する属性の「正常」を表す一方で、悪化した状態は重症度に応じて1~5のスコアが付けられる。
【表5】
【0282】
患者は治療前の3年間は体重が増えていない、すなわち、3.5歳から体重が増えていないことに留意するべきである。
図17Dに示されるデータは、患者の体重および身長の標準偏差スコアによって測定された成長を示し、データは、MAT前の4年間およびフォローアップ期間中に開始されている。データは、1回の治療から約15ヶ月後に、この患者の身長および体重が増加したことを示す。
【0283】
患者の成長の別の証拠は、アルカリホスファターゼレベルから来ている。アルカリホスファターゼレベルテスト(ALPテスト)は、血流中のアルカリホスファターゼ酵素の量を測定する。血中のALPレベルが正常よりも低い場合は、栄養失調を示している可能性があり、これは、ある特定のビタミンおよびミネラルの不足が原因である可能性がある。
図17Eに示されるデータは、患者のアルカリホスファターゼレベルをわずか12ヶ月で159から486 IU/Lに上げるには、1回の治療で十分であることを示す。体重減少の傾向の逆転ならびにALPの上昇は、老齢および抗癌治療の両方に関連しており、体重減少および栄養失調につながる可能性がある。
【0284】
図17F~Hに見られるように、治療は赤血球レベル(
図17F)、ヘモグロビンレベル(
図17G)、およびヘマトクリットレベル(
図17H)の顕著な改善をもたらした。これらの結果は、貧血の症状を寛解させるには、1回の治療で十分であることを示す。
【0285】
図17Iは、細胞移植後の尿中クレアチニンレベルによって示されるように、腎臓の悪化の停止を示す。
図17Jおよび17Kにさらに見られるように、細胞治療はまた、重炭酸塩を補給することなく、重炭酸塩(
図17J)および塩基過剰(
図17K)のレベルの顕著な改善をもたらした。
図17Lは、細胞療法後のマグネシウム補給および時間の関数としての患者の血中マグネシウムのレベルを示す。データは、患者のマグネシウムの血中レベルが経時的に大幅に増加したため、マグネシウム補給はもはや必要ないことを示す。マグネシウムを補給せずに高レベルのマグネシウムを達成することは、マグネシウム吸収の改善ならびに腎臓近位尿細管での再吸収の証拠である。
図17M~17Pに見られるように、1回の治療で、尿中のグルコースレベル(
図17M)およびある特定の塩分レベル(
図17N-カリウム;
図17O-塩化物;
図17P-ナトリウム)などのいくつかの腎尿細管症指標のレベルが顕著に低下した。
図17I~17Pは、腎臓機能が年齢とともに悪化するため、すべて老齢対象に関連している。
【0286】
使用された療法の成功の遺伝的指標は、細胞あたりの総mtDNAと比較した正常なmtDNAの普及率である。
図18A(Pt.1)に示されるように、患者の末梢血における正常な総mtDNAの普及率は、ベースラインの約1からわずか4ヶ月で1.6(+60%)にまで、治療の20ヶ月後に1.9(+90%)に、および時点の大半においてベースラインレベルを超えて増加した。特に、正常なmtDNAレベルは、ほとんどの時点でベースラインレベルを上回った。
【0287】
健康な機能的ミトコンドリアで富化された細胞を移植することの有効性の別の指標を
図18Bに示す。ベースラインでヘテロプラスミーのレベルが比較的高かった患者1では、MAT後にヘテロプラスミーがわずかに減少する(欠失mtDNAが少ない)。これはフォローアップ期間を通して続いた。
【0288】
病院の神経内科医の報告によると、欠失突然変異を持たない健康なミトコンドリアを有する自家細胞の移植後、神経学的改善が実証されている。患者は、歩行能力、階段の上り、はさみの使用、および描画を向上させた。指示の実行および応答時間、ならびに運動技能および言語技能にも実質的な改善が見られた。また、母親が記憶の改善を報告した。運動技能および記憶における神経学的悪化は老年期に起こることが多いため、これらの発見は老齢対象にとって特に関連性があり重要である。
【0289】
上に示したデータが示すように、機能的ミトコンドリアで富化された骨髄幹細胞を投与する1回の治療方法は、老齢に罹患する多くの衰弱状態の治療に成功した。
【0290】
実施例16.ピアソン症候群(PS)を有する年少者に対するMNV-BLD(血液由来ミトコンドリア)で富化された自家CD34+細胞を使用した人道的治療。
7歳の女児患者(患者2)は、ピアソン症候群と診断され、mtDNAの4977のヌクレオチドが欠失している。患者はまた、貧血、内分泌膵臓機能不全も患い、糖尿病である(HbA1C7.1%)。患者2は、乳酸レベルが高く(>25mg/dL)、体重が少なく、食事および体重増加に問題がある。患者はさらに高マグネシウム尿症(高レベルの尿中マグネシウム、低レベルの血中マグネシウム)を患っている。患者は、記憶および学習の問題、乱視があり、TMRE、ATP含有量、およびO2消費率(健康な母親と比較して)によって決定される末梢リンパ球のミトコンドリア活性が低い。
骨髄の動員は、G-CSF(10μg/kg)および1用量のPlerixafor Mozobil(商標)(0.24mg/ml)を使用して行われた。患者は、HSPCの動員に示されるタイムラインに従って、彼女の母親から単離された健康なミトコンドリアで富化された1.8*106個の細胞/kgの自家CD34+細胞を用いて治療を開始し、白血球アフェレーシスの1日前にプレリキサフォル(n=2)投与を追加して、患者1(実施例18)に類似する白血球アフェレーシスおよびCD34陽性選択を実行した。ミトコンドリアは、250mMスクロース緩衝液pH7.4を使用して、母体の末梢血単核細胞(PBMC)から分画遠心分離によって単離された。MATの場合、自家CD34+細胞は、患者の母親からの健康なミトコンドリア(4.4ミリユニットのクエン酸シンターゼ(CS)を有するミトコンドリアの量あたり106個の細胞)とともにインキュベートされ、細胞のミトコンドリア含有量が1.62倍増加した(CS活性によって示されるようにミトコンドリア含有量の62%の増加)。ミトコンドリアとのインキュベーションは、4.5%HSAを含有する生理食塩水中で、RTで24時間実行した。ミトコンドリア富化後、患者からのCD34+細胞はコロニー形成率を26%増加させたことに留意するべきである。
【0291】
患者2(治療日15KG)は、
図19Aに示されるタイムラインに従って、IV注入により、体重1キログラムあたり、健康なミトコンドリアで富化された1.8*106個の自家CD34+細胞で治療された。
【0292】
図19Bは、治療の5ヶ月後に減少する、血中乳酸レベルに対するミトコンドリア富化細胞の移植の有益な作用を示す。
【0293】
筋力および筋肉量は老齢とともに悪化することが既知である。
図19C~19Eは、一連の機能試験において、これらのパラメーターに対する富化細胞の移植の顕著な作用を示す。
図19Cは、立ち上がり試験の結果を示す。支えなしに椅子から立ち上がることができない高齢者は、さらに活動的でなくなるリスクがあり、したがってさらなる運動障害のリスクがある。試験された対象は、30秒の時間枠内でできる限り多くの立ち上がりサイクルを実行するように求められる。患者2は、移植の5ヶ月後により多くの立ち上がりサイクルを実行することができた。
図19Dは、6分間の歩行試験(6MWT)を示し、割り当てられた6分間内に対象が通過した距離をメートル単位で測定する。患者2は、移植の5ヶ月後に正常な距離を超えた。
図19Eは、力量計の抵抗に対して3回連続して繰り返した後でも、力量計ユニットの上昇から明らかなように、細胞移植の5ヶ月後に筋力の改善を示す。
【0294】
図19F、19G、および19Hは、それぞれI.V.注射後の時間の関数としての患者の尿中に見られるクレアチニンと比較したマグネシウム、カリウム、およびカルシウムの比率により示される腎臓機能の改善を示す。
図19Iは、I.V.注射後の時間の関数としての患者の尿中のATP8と18Sとの間の比率を示す。免疫系は年齢とともに悪化する。老齢によって最も影響を受ける免疫系の構成要素の中には、Tリンパ球がある。若いナイーブT細胞は、グルコース、アミノ酸、および脂質を代謝して、ミトコンドリアでのATP生成を異化作用的に促進することができる。ミトコンドリアの機能は老齢によって損なわれることも既知であるため、T細胞とミトコンドリアの低下との間の関係の可能性が示唆され、研究されている。
図19Jは、患者のリンパ球におけるATP含有量の増加を示す。
図18A(Pt.2)は、I.V.注射後の時間の関数としての正常なmtDNAの普及率を示す。
図18A(Pt.2)に見られるように、正常なmtDNAの普及率は、ベースラインの約1からわずか1ヶ月で2(+100%)にまで増加し、治療後10ヶ月まで比較的高いままであった。特に、正常なmtDNAレベルは、すべての時点でベースラインレベルを上回った
図18B(Pt.2)は、MAT後の時間の関数としてのヘテロプラスミーレベルの変化を示す。患者2では、MAT後のヘテロプラスミー(欠失mtDNAが少ない)が減少したことがわかる。これはフォローアップ期間を通して続いた。
【0295】
実施例17.ピアソン症候群(PS)およびPS関連ファンコニー症候群(FS)を有する若年患者に対するMNV-BLD(血液由来ミトコンドリア)で富化された自家CD34+細胞を使用した人道的治療。
10.5歳の女児患者(患者3)は、ピアソン症候群と診断され、mtDNAのヌクレオチド12113~14421が欠失している。患者は、貧血、および腎不全ステージ4に発展したファンコニー症候群も患っている。患者は週に3回透析で治療されている。最近、患者は、重度の視力障害、視野の狭小化、および近見視力の喪失も患っている。患者は身体活動をまったく行うことができない(歩くことはなく、ベビーカーに座っている)。
【0296】
患者の乳酸レベルは高く(>50mg/dL)、インスリンで治療された膵臓障害を有した。脳MRIは多くの病変および萎縮領域を示した。患者は、胃瘻造設術によってのみ栄養補給された。患者には記憶および学習の問題があった。患者は、テトラメチルローダミンエチルエステル(TMRE)、ATP含有量、およびO2消費率(健康な母親と比較して)試験によって決定される末梢リンパ球のミトコンドリア活性が低い。
造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)の動員、ならびに白血球アフェレーシス、およびCD34陽性選択は、白血球アフェレーシス前の-1日目にプレリキサフォル(n=1)を添加して患者1(実施例3)と同様に実行された。白血球アフェレーシスは、恒久的な透析カテーテルを介して実行された。ミトコンドリアは、250mMスクロース緩衝液pH7.4を使用して、母体の末梢血単核細胞(PBMC)から分画遠心分離によって単離された。MATの場合、自家CD34+細胞は、患者の母親からの健康なミトコンドリア(4.4ミリユニットのクエン酸シンターゼ(CS)を有するミトコンドリアの量あたり1*106個の細胞)とともにインキュベートされ、細胞ミトコンドリア含有量が1.14倍増加した(CS活性によって示されるようにミトコンドリア含有量の14%の増加)。細胞を、4.5%HSAを含有する生理食塩水中で、RTで24時間ミトコンドリアとともにインキュベートした。ミトコンドリア富化後、患者からのCD34+細胞はコロニー形成率を52%増加させたことに留意するべきである。
【0297】
患者3(21KG)は、
図20Aに示されるタイムラインに従って、IV注入により、体重1キログラムあたり、彼女の母親からの健康なミトコンドリアで富化された2.8*106個の自家CD34+細胞で治療された。
【0298】
図202Bは、移植の2および3ヶ月後に減少する、血中乳酸レベルに対するミトコンドリア富化細胞の移植の有益な作用を示す。20mg/dl未満の線は、血中乳酸の正常レベルを示す。
【0299】
図20Cは、細胞療法前後の時間の関数としての患者の血中のASTおよびALT肝臓酵素のレベルを示す。低レベル血中肝臓酵素を達成することは、肝損傷の減少の証拠である。
【0300】
図20Dは、細胞療法前後の時間の関数としての患者の血中のトリグリセリド、総コレステロール、および超低密度リポタンパク質(VLDL)コレステロールのレベルを示す。血中のトリグリセリド、総コレステロール、およびVLDLコレステロールの低レベルを達成することは、肝機能の増加および脂質代謝の改善の証拠である。
糖化ヘモグロビン(ヘモグロビンA1c、HbA1c、A1C、Hb1c、Hb1c、またはHGBA1Cとも呼ばれることがある)は、主に3ヶ月の平均血漿グルコース濃度を特定するために測定される一形態のヘモグロビンである。赤血球の寿命は4ヶ月(120日)であるため、検査は平均3ヶ月に制限される。
図20Eは、療法前後の時間の関数としての患者のA1C検査の結果を示す。
【0301】
図20Fおよび20Gは、I.V.注射後の時間の関数としての患者の「立ち上がり」(20F)および「6分間歩行」(20G)試験の結果を示し、治療5ヶ月後の両方のパラメーターにおける改善を示す。
図18A(Pt.3)は、I.V.注射後の時間の関数としての正常なmtDNAの普及率を示す。
図18A(Pt.3)に見られるように、正常なmtDNAの普及率は、治療7か月後に50%増加した。特に、正常なmtDNAレベルは、ほとんどの時点でベースラインレベルを上回った
図18B(Pt.3)は、MAT後の時間の関数としてのヘテロプラスミーレベルの変化を示す。ベースラインでヘテロプラスミーのレベルが比較的低かった患者3では、MAT後にヘテロプラスミーが減少した(欠失mtDNAが少ない)ことがわかる。これはフォローアップ期間を通して続いた。
【0302】
実施例18.カーンズ-セイヤー症候群(KSS)を有する年少者に対するMNV-BLD(血液由来ミトコンドリア)で富化された自家CD34+細胞を使用した人道的治療。
患者4は、14歳、19.5 kgの女児患者で、カーンズ・セイヤー症候群と診断され、トンネル状視野、眼瞼下垂、眼筋麻痺、および網膜萎縮を経験していた。患者は、視力の問題、CPEO、てんかん発作、病的EEG、座位または歩行障害を伴う重度のミオパチー、心不整脈を有した。患者は、ミトコンドリアDNAに7.4 Kbの欠失があり、これには次の遺伝子が含まれる:TK、NC8、ATP8、ATP6、CO3、TG、ND3、TR、ND4L、TH、TS2、TL2、ND5、ND6、TE、NC9、およびCYB。
【0303】
造血幹細胞および前駆細胞(HSPC)の動員、ならびに白血球アフェレーシス、およびCD34陽性選択は、患者3(実施例5)と同様に実行された。MATの場合、自家CD34+細胞は、4.5%HSAを含有する生理食塩水中で、患者の母親からの健康なミトコンドリア(4.4ミリユニットのクエン酸シンターゼ(CS)を有するミトコンドリアの量あたり1*106個の細胞)とともにRTで24時間インキュベートされた。富化により、細胞ミトコンドリア含有量が1.03倍増加した(CS活性によって示されるようにミトコンドリア含有量が3%増加した)。
【0304】
患者4は、
図20Aに示されるタイムラインに従って、体重1キログラムあたり、健康なミトコンドリアで富化された2.2*106個の自家CD34+細胞で治療された。
予想外に、健康なミトコンドリアでわずか3%富化されたCD34+による1回の治療の4ヶ月後、患者はEEGの改善を示し、てんかん発作がなかった。治療の5ヶ月後、患者は疾患に関連した房室(AV)ブロックを患い、ペーサーが取り付けられた。患者は回復し、改善が続いた。
図21に示されるように、末梢血中のATP含有量は、治療の6ヶ月後に測定され、治療前と比較してATP含有量が約100%増加したことを示す。治療の7ヶ月後、患者は一人で座り、助けを借りて歩き、話すことができ、食欲が増し、3.6KG増えた。
【0305】
特定の実施形態の前述の説明は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにするので、他の人は、現在の知識を適用することによって、過度の実験なしに、および一般的な概念から逸脱することなく、かかる特定の実施形態の様々な用途に容易に修正および/または適合することができ、したがって、かかる適合および変更は、本開示の実施形態の均等物の意味および範囲内で理解されるべきであり、そのように意図されている。本明細書で用いられる表現または用語は、説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではないことを理解されたい。様々な本開示の機能を実施するための手段、材料、およびステップは、本発明から逸脱することなく、様々な代替形態をとることができる。
【図 】