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特許7633159メラノーマの転移及び患者の予後を予測するための遺伝子シグネチャー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】メラノーマの転移及び患者の予後を予測するための遺伝子シグネチャー
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20250212BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20250212BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6851 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021528324
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 NL2019050487
(87)【国際公開番号】W WO2020022895
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】62/703,221
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/750,294
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/778,777
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521033239
【氏名又は名称】スカイラインディーエックス ビー.ブイ.
(73)【特許権者】
【識別番号】511281899
【氏名又は名称】マヨ ファウンデーション フォー メディカル エデュケーション アンド リサーチ
【氏名又は名称原語表記】MAYO FOUNDATION FOR MEDICAL EDUCATION AND RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】メベス,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ベロモ,ドミニコ
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513159(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0222457(US,A1)
【文献】HAQQ, Christopher et al.,Proceedings of the National Academy of Sc iences of the United States of America,2005年04月26日,Vol. 102, No. 17,pp. 6092-6097,DOI: 10.1073/pnas.0501564102
【文献】JAEGER, Jochen et al.,Clinical Cancer Research,2007年02月01日,Vol. 13, No. 3,pp. 806-815,DOI: 10.1158/1078-0432.CCR-06-1820
【文献】RIKER, Adam I. et al.,BMC Medical Genomics,2008年04月28日,Vol. 1, Article No. 13,DOI: 10.1186/1755-8794-1-13
【文献】SINGH, R. K. et al.,Melanoma Research,1999年08月,Vol. 9, No. 4,pp. 383-387,DOI: 10.1097/00008390-199908000-00007
【文献】SINGH, Seema et al.,Future Oncology,2010年01月,Vol. 6, No. 1,pp. 111-116,DOI: 10.2217/fon.09.128
【文献】MEVES, Alexander et al.,Journal of Clinical Oncology,2015年08月10日,Vol. 33, No. 23,pp. 2509-2515,DOI: 10.1200/JCO.2014.60.7002
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
A61P 1/00-43/00
A61K 35/00-51/12
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原発皮膚メラノーマに罹患している個体を分類する方法であって、前記個体からのサンプルにおいて遺伝子発現シグネチャーを決定することを含み、前記遺伝子発現シグネチャーは、ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8を含み、前記個体は転移陽性SLNを有するとして分類されるか、又は転移陰性SLNを有するとして分類され、
前記サンプルは、原発皮膚メラノーマ病変からの生検である、方法。
【請求項2】
皮膚メラノーマに罹患している個体のための治療及び/又は診断ワークアップスケジュールを決定する方法であって、前記個体からのサンプルにおいて、ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8の発現レベルを決定することと、前記発現レベルに基づいて治療及び/又は診断ワークアップスケジュールを決定することとを含む方法。
【請求項3】
原発皮膚メラノーマに罹患している個体の予後を予測する方法であって、前記個体からのサンプルにおいて遺伝子発現シグネチャーを決定することを含み、前記遺伝子発現シグネチャーは、ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8を含み、前記個体の予後は、前記遺伝子発現レベルに基づいて決定される、方法。
【請求項4】
前記個体は、転移陽性SLNを有するとして分類されるか、又は転移陰性SLNを有するとして分類される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記個体は、前記分類及び/又は発現レベルに基づいてSLNBのために選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
転移陽性SLNを有するとして分類された個体は、SLNBを実施することによって治療される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記個体の予後は、前記遺伝子発現レベルに基づいて決定され、個体は、不良な予後又は良好な予後を有するとして分類される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記遺伝子発現シグネチャーは、MLANA、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子発現シグネチャーは、ADIPOQをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記遺伝子発現シグネチャーは、PRKCB、ADAM12、LGALS1をさらに含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
原発皮膚メラノーマに罹患している個体を分類することであって、前記個体からのサンプルにおいて遺伝子発現シグネチャーを決定することを含む、分類すること、をさらに含み、前記遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:KRT14、SPP1、FN1、LOXL3の少なくとも1つを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記分類する方法は、前記個体の年齢及び/又はブレスロー深さを決定すること、任意選択的にまたメラノーマ病変の潰瘍化を決定することをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記発現は、RNAの検出によって決定される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
原発皮膚メラノーマに罹患している個体の分類に使用するためのキットであって、
a)ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8、及び/又は
b)以下の遺伝子:KRT14、SPP1、FN1及びLOXL3の少なくとも1つ、
を増幅するためのプライマー対を含むキット。
【請求項15】
前記キットはさらに、少なくとも1つの参照遺伝子を増幅するためのプライマー対を含む、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
前記参照遺伝子は、ACTB、RPLP0及び/又はRPL8である、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
MLANA、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1を増幅するためのプライマー対を含む、請求項14に記載のキット。
【請求項18】
ADIPOQを増幅するためのプライマー対をさらに含む、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
PRKCB、ADAM12、LGALS1を増幅するためのプライマー対をさらに含む、請求項17又は18に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、皮膚メラノーマに罹患している個体を分類する遺伝子シグネチャーを提供する。本明細書に提供される「SLN遺伝子シグネチャー」は、予後に基づいて個体を分類し、及び/又は転移陽性若しくは陰性のセンチネルリンパ節(SLN)を有するとして個体を分類する。本明細書に提供される「N-SLN遺伝子シグネチャー」は、転移陽性又は陰性の非センチネルリンパ節(N-SLN)を有するとして個体を分類する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
皮膚メラノーマは、皮膚の表皮の基底層に主に位置する色素生成メラノサイト系細胞から生じる悪性腫瘍である。ほとんどの病変は、ABCDEルール:非対称性、境界不規則性、色ムラ、6mm超の直径及び進化(すなわち迅速変化傾向)によって記述される徴候を伴って現れる(Abbasi NR, Shaw HM, Rigel DS, et al. Early Diagnosis of Cutaneous Melanoma Revisiting the ABCD Criteria. JAMA. 2004;292(22):2771-2776)。部位は、典型的には、無症状であるが、掻痒及び/又は出血を引き起こすことがある(とりわけより後期のステージにおいて)。疑わしい病変の検出は、ABCDE基準又は「アグリーダックリング徴候(ugly duckling sign)」に基づいてルーチンで実施することが推奨される皮膚の自己検査によって通常行われる(Grob J. The’Ugly Duckling’Sign: Identification of the Common Characteristics of Nevi in an Individual as a Basis for Melanoma Screening. Arch Dermatol. 1998;134:103-104)。複数の既知の臨床的及び病理学的な変種が存在するため、続いて医師によって正式にメラノーマと診断されたとき、特定のサブタイプを決定することが重要である。最も一般的な形態は、皮膚メラノーマであり(症例の約70%を占める表在拡大型メラノーマ)、これは、色白の人々でとりわけ頻発している。病態の重症度は、原発領域からマイグレートするメラノーマ細胞の能力に大きく依存する。こうした理由から、腫瘍が局在しているか又はリンパ節若しくは器官に広がっているかを評価することは、最優先事項である。
【0003】
メラノーマのステージ判定は、患者の予後並びにさらなるモニタリング及び治療のストラテジーの決定にきわめて重要である。これは、欧州9ヵ国の系統的文献レビューで報告された5年間の全生存数:95%~100%(ステージI)、65%~92.8%(ステージII)、41%~71%(ステージIII)及び9%~28%(ステージIV)の顕著な対比にも反映される。これらの差は、局在メラノーマ病変に対比されるメラノーマの転移能に大きく依存する。異なるステージクラス間の正確な識別は、重要であり、最も一般的には、原発腫瘍の厚さ(T)、腫瘍細胞の存在及び/又はリンパ節への広がり(N)並びに他の器官への遠隔転移の存在(M)を参照するTNM系に基づく。原発腫瘍ステージの広がりを評価するとき、医師は、腫瘍の厚さだけでなく、潰瘍の存在及び原発腫瘍細胞の有糸分裂速度などの追加の特性を考慮に入れる。通常、厚いメラノーマ及び/又は他の変数、例えば潰瘍に基づいて、高い腫瘍ステージの患者でのみリンパ節及び転移の広がりが評価されるであろう。当技術分野で理解されているように、予後とは、患者の医学的アウトカムの予測を意味する。例えば、個体は、不良な予後又は良好な予後を有するとして分類され得る。メラノーマに罹患している患者の予後は、例えば、長期生存、全生存、無進行生存、再発対疾患寛解予測及び疾患進行の可能性を示唆する。
【0004】
現在、患者の正確な層別化及び予後の予測に広く適用されている手順は、SLNB(センチネルリンパ節生検)法により、SLNにおける転移の存在を決定することである。皮膚メラノーマ患者の管理は、1990年代前半にSLNB手順によるリンパ系マッピングが含められたことから著しく進歩した(Morton DL, Wen DR, Wong JH, et al. Technical details of intraoperative lymphatic mapping for early stage melanoma. Arch Surg. 1992;127(4):392-399)。外科技術は、青色色素と、γプローブ検出によるラジオトレーサーとを用いたデュアルモダリティー手術中アプローチの実現によって改善されてきた。加えて、病理学的評価は、SLNのシリアルセクショニングの採用と免疫組織化学とによってアップグレードされた。この結果、腫瘍に密に近接して位置する最初の所属リンパ節又はリンパ節群(すなわちSLN)、したがって転移疾患の可能性の高い部位が、より良好に同定されるようになった。この手順は、「センチネルリンパ節マッピング」ともいう。
【0005】
SLN陽性の有意な影響は、MSLT-1試験でも示され、腫瘍陽性SLNの患者及び腫瘍陰性SLNの患者の5年生存率がそれぞれ72.3%及び90.2%であり、差が示唆された(Morton DL, Thompson JF, Cochran AJ, et al. Sentinel-Node Biopsy or Nodal Observation in Melanoma. new engl J Med. 2006;355(13):1307-1317)。米国癌合同委員会(AJCC)メラノーマガイドライン第8版によれば、SLNB手順は、≧0.8mmの皮膚メラノーマを有する患者について推奨される(Gershenwald JE, Scolyer RA, Hess KR, et al. Melanoma Staging: Evidence-Based Changes in the American Joint Committee on Cancer Eighth Edition Cancer Staging Manual. CA Cancer J Clin. 2017;67(6):472-492)。この患者群では、SLNB手順が一般に実施され、さらに、治療は、転移レベルに依存する。ボーダーライン群内では、SLNBは、特にメラノーマが追加の有害予後パラメーターを伴って現れる場合に考慮され得る。<0.8mmのメラノーマの厚さを有する患者では、標準的治療で十分であると一般に考えられ、SLNBは、推奨されない。標準的治療は、マージンを広くとった原発メラノーマの局所切除、すなわち腫瘍の外科切除を含む。本明細書で用いられる場合、「切除」とは、ヒト患者からのメラノーマ特有悪性組織の外科除去を意味するものと理解される。一実施形態によれば、切除とは、利用可能な方法で前記患者内の残留悪性組織の存在が検出不能であるような悪性組織の除去を意味すると理解されるものとする。
【0006】
SLNBが陽性として分類される割合は、かなり変動しやすく、原発腫瘍の既知の予後因子にかなりの程度依存する。臨床ステージI又はIIの患者では、SLN転移のパーセントは、15~30%であるが、薄いメラノーマでは5.2%であることが示される。メラノーマ専門家パネルステージ判定ガイドラインの現行版には、0.8mmのT1メラノーマのサブカテゴリー化の臨床的意義が指摘された。これは、0.7~0.8mmの領域に潜在的臨床インターセプトが存在するという、T1メラノーマのいくつかの生存試験で検出された傾向に基づく。しかしながら、SLNB後の患者の長期フォローアップに基づいて、当初、腫瘍フリーであったセンチネル節を有する患者において局所節再発が起こることが示された。この情報は、SLBN試験性能の計算を可能にし、12.5%の全偽陰性率を有することが確立された。より最近、Mortonらは、16.0%陽性のSLNBを有する中間厚さのメラノーマでは、10年間のフォローアップ期間内の再発に基づいて4.8%が偽陰性試験結果を有すると報告した。厚いメラノーマの32.9%陽性のSLNBでは、偽陰性率は、10.3%であった。
【0007】
SLNBは、皮膚メラノーマのステージを潜在的に判定する方法であるだけでなく、SLNの転移分類に依存して必要であることもそうでないこともある治療の一部でもある。SLNB手順は、患者に合併症を引き起こす可能性があるうえにコストがかかる。したがって、この手順は、(低リスク病変の大多数から)転移の広がるリスクがより高いと考えられる選択された患者群のみに実施される。転移リスクは、ブレスロー深さとして知られる腫瘍浸潤深さ及び腫瘍表面の潰瘍化をはじめとする臨床病理学的因子の評価によって評価され得る。皮膚中に垂直により深く成長する腫瘍及びメラノーマの潰瘍化は、有害アウトカムのより高いリスクに関連付けられる。例えば、SLN生検は、T1aの薄いメラノーマで推奨されず、T1bの薄いメラノーマの患者では「推奨されることがあり」、T2及びT3の中間厚さのメラノーマ患者では推奨され、且つT4の厚いメラノーマ患者では「推奨されることがある」。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
臨床病理学的変数を用いたこの概念では、腫瘍スペクトルの最端の高リスク患者の同定は、一般に可能であるが、本方法は、中間病変には正確でない。さらに、高又は低リスク群内に例外も存在する。例えば、「薄い」メラノーマ(<0.8mmの浸潤深さ)は、標準臨床病理学的変数に基づいて低リスクプロファイルを有すると通常分類されるという事実にもかかわらず、その5%は、局所転移することが知られている。95%の生物学的緩慢病変からより高リスクの病変をより良好に識別するために、腫瘍の有糸分裂速度(有糸分裂/mm)などの追加の組織学的変数及び蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)などの追加の分子的方法が導入されてきた。残念ながら、これらの技術は、部分的にのみ成功したにすぎず、SLNBの95%まで陰性であるという事実をもたらす結果となった。結果として、現在の診断基準では過剰治療が見られ、患者の大多数は、不必要なSLNB手術を受け、回避することができた関連副作用を発生させる。逆に、臨床病理学的因子に基づいて現在のところSLNBではないとみなされる患者の一部は、それでもなおより後期のステージでSLN転移又は遠隔転移を呈する可能性がある。したがって、SLNB手順は、切除組織でSLN陽性節を正確に同定するが、このSLNB手順の適格患者の選択には、依然として課題が残っている。本発明の1つの目的は、転移陽性SLNを有するリスク、したがってSLNB手順の必要性に関して個体を分類することである。本発明のさらなる目的は、原発皮膚メラノーマに罹患している個体の予後を予測することである。この情報は、例えば、最適な治療ストラテジーの決定に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、原発皮膚メラノーマに罹患している個体を分類する方法であって、前記個体からのサンプルにおいて遺伝子発現シグネチャーを決定することを含み、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の3つ以上を含む、方法を提供する。好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8を含む。好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の3つ以上を含む。同様に好ましいのは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の3つ以上を含む遺伝子シグネチャーである。
【0010】
皮膚メラノーマに罹患している個体のための治療及び/又は診断ワークアップスケジュールを決定する方法であって、前記個体からのサンプルにおいて、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の3つ以上の発現レベルを決定することと、発現レベルに基づいて治療及び/又は診断ワークアップスケジュールを決定することとを含む方法も提供される。好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8を含む。好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の3つ以上を含む。同様に好ましいのは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の3つ以上を含む遺伝子シグネチャーである。
【0011】
原発皮膚メラノーマに罹患している個体の予後を予測する方法であって、前記個体からのサンプルにおいて遺伝子発現シグネチャーを決定することを含み、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の3つ以上を含む、方法も提供される。好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の3つ以上を含む。同様に好ましいのは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の3つ以上を含む遺伝子シグネチャーである。
【0012】
一態様では、個体は、転移陽性SLNを有するとして分類されるか、又は転移陰性SLNを有するとして分類される。一態様では、個体の予後は、遺伝子発現レベルに基づいて決定される。好ましくは、個体は、不良な予後又は良好な予後を有するとして分類される。個体は、前記分類及び/又は発現レベルに基づいてSLNBのために選択され得る。転移陽性SLNを有するか又はさもなければ不良な予後を有するとして分類された個体は、SLNB及び/又はアジュバント治療を実施することによって治療される。
【0013】
本発明は、原発皮膚メラノーマに罹患している個体を分類する方法であって、前記個体からのサンプルにおいて遺伝子発現シグネチャーを決定することを含み、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:KRT14、SPP1、FN1及びLOXL3の少なくとも1つを含む、方法も提供する。
【0014】
さらに提供されるのは、原発皮膚メラノーマに罹患している個体を治療する方法であって、
- 前記個体からのサンプルにおいて遺伝子発現シグネチャーを決定することであって、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の3つ以上を含む、決定することと、
- 遺伝子発現シグネチャーに基づいて、転移陽性SLN及び/又は不良な予後を有するとして前記個体を分類することと、
- SLNBを実施することによって前記個体を治療すること、及び/又は前記個体に癌治療を提供することと
を含む方法である。
【0015】
好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8を含む。好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の3つ以上を含む。同様に好ましいのは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の3つ以上を含む遺伝子シグネチャーである。
【0016】
本発明は、原発皮膚メラノーマに罹患している個体を治療する方法であって、
- 前記個体からのサンプルにおいて遺伝子発現シグネチャーを決定することであって、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子KRT14、SPP1、FN1及びLOXL3の少なくとも1つを含む、決定することと、
- 遺伝子発現シグネチャーに基づいて、転移陽性N-SLNを有する高いリスクとして前記個体を分類することと、
- 完全リンパ節郭清を実施することによって前記個体を治療すること、及び/又は前記個体に癌治療を提供することと
を含む方法も提供する。
【0017】
原発皮膚メラノーマに罹患している個体において遺伝子シグネチャーを解析する方法であって、
- 前記個体からの原発皮膚メラノーマ病変からRNAを抽出することと、
- 以下の遺伝子ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の少なくとも3つのRNA転写物を逆転写することであって、RNA転写物のcDNAを生成する、ことと、
- RNA転写物の発現レベルの決定のために、cDNAを増幅することであって、cDNAからアンプリコンを生成する、ことと
を含む方法も提供される。
【0018】
本発明は、原発皮膚メラノーマに罹患している個体において遺伝子シグネチャーを解析する方法であって、
- 前記個体からの原発皮膚メラノーマ病変からRNAを抽出することと、
- 以下の遺伝子KRT14、SPP1、FN1及びLOXL3の少なくとも1つのRNA転写物を逆転写することであって、RNA転写物のcDNAを生成する、ことと、
- RNA転写物の発現レベルの決定のために、cDNAを増幅することであって、cDNAからアンプリコンを生成する、ことと
を含む方法も提供する。
【0019】
さらに提供されるのは、原発皮膚メラノーマに罹患している個体の分類に使用するためのキットであって、
a)以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の3つ以上、及び/又は
b)以下の遺伝子:KRT14、SPP1、FN1及びLOXL3の少なくとも1つ、並びに任意選択的に、
c)少なくとも1つの参照遺伝子
を増幅するためのプライマー対を含むキットである。
【0020】
好ましくは、キットは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8の3つ以上を増幅するためのプライマー対を含み、より好ましくは、キットは、ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8を増幅するためのプライマー対を含む。好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の3つ以上を含む。同様に好ましいのは、以下の遺伝子:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の3つ以上を含む遺伝子シグネチャーである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】1)ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8遺伝子シグネチャー(分子モデル)、2)臨床病理学的変数(年齢及びブレスロー深さ)、3)ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8遺伝子シグネチャーと臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされたロジスティック回帰分類器の平均ROC曲線である。x軸は、偽陽性発見率(すなわち1-特異度)を表し、y軸は、真発見率(すなわち感度)を表す。
図2】全770名の患者コホートにおけるITLPスコア及びSLN遺伝子シグネチャー(「ロジスティック回帰モデル」という)についてのROC曲線である。x軸は、偽陽性発見率(すなわち1-特異度)を表し、y軸は、真発見率(すなわち感度)を表す。
図3】異なるITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8遺伝子のサブセット、5つのITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8遺伝子のフルセット並びにITLPシグネチャーについてのROC曲線下面積のボックスプロットである。
図4】1)遺伝子発現、2)臨床病理学的変数、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされたロジスティック回帰分類器の平均ROC曲線である。x軸は、偽陽性発見率(すなわち1-特異度)を表し、y軸は、真発見率(すなわち感度)を表す。
図5】異なる遺伝子のサブセット及び4つの遺伝子のフルセットについてのROC曲線下面積のボックスプロットである。
図6】全体性能比較:CL対GE対GECL。1)遺伝子発現、2)臨床病理学的変数、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされたロジスティック回帰分類器のROC曲線である。
図7】NPV対SLNBRR。1)遺伝子発現、2)臨床病理学的変数、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされたロジスティック回帰分類器の陰性的中率(NPV)対センチネルリンパ節低減率(SLNB RR)である。
図8】遺伝子サブセット-AUCボックスプロットである。全コホートでトレーニングされた2、3、4、5、6、7、8つの遺伝子のサブセットを用いたロジスティック回帰分類器のROC曲線の曲線下面積(AUC)のボックスプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
開示される実施形態の詳細な説明
本開示は、部分的には、原発皮膚メラノーマ腫瘍組織サンプルの解析を行う方法、キット、遺伝子シグネチャー及びかかる遺伝子シグネチャーの検出手段を提供する。一態様では、本開示は、「SLN遺伝子シグネチャー」を提供する。SLN遺伝子シグネチャーは、原発皮膚メラノーマに罹患している個体を分類し、特に、遺伝子シグネチャーは、転移陽性SLN及び/又は不良な予後を有する個体のリスクを分類する。このリスク評価は、SLNB手順及び/又は代替治療ストラテジーが必要とされるかを決定するときに医師及び患者に有用である。この評価は、臨床試験に含めるべき患者を選択するときにも有用である。
【0023】
本明細書で用いられる場合、SLNは、腫瘍からリンパ排液を受け取る最初のリンパ節(又は最初のリンパ節セット)であり、癌の広がる可能性が高い最初のリンパ節(又は最初のリンパ節セット)である。N-SLNは、腫瘍からリンパ排液を受け取る最初のリンパ節ではないリンパ節である。かかるN-SLNは、多くの場合、同一節区域にあるか又はSLNに密に近接する節である。
【0024】
いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、転移陽性SLNのリスクを分類する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、転移陽性SLNを有するか又は転移陰性SLNを有するとして個体を分類する。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、個体の予後を分類する。本明細書で用いられる場合、予後は、医学的アウトカムの予測を意味し、全生存、メラノーマ特異的生存、無再発生存、無再燃生存、無遠隔再燃生存(distant relapse free survival)などの尺度に基づき得る。
【0025】
SLN遺伝子シグネチャーの利点の1つは、転移陰性SLNとして分類された(及び/又は良好な予後を有するとして分類された)患者に対する外科手順の回数を低減させ得ることである。特に、中間病変を有する患者は、SLNが事実上転移陰性の可能性が十分にあっても、SLNB手順を受けた可能性が高いであろう。SLN遺伝子シグネチャーを用いたかかる患者の正確な分類は、SLNB手順の必要性を回避し、SLNBを置き換えて、中間病変に対する現在の標準ケアとして使用され得る。不必要なSLNBの低減は、全ヘルスケアコストを低減し、SLNの除去に起因して合併症を抱える患者数を低減する。加えて、SLN転移陽性又は陰性の個体の分類は、予後情報も提供し、治療又は診断ワークアップスケジュールを決定するために使用され得る。
【0026】
驚くべきことに、SLN遺伝子シグネチャーは、標準ケアSLN生検よりも正確に予後を予測することができる(実施例7を参照されたい)。理論によって拘束されることを望むものではないが、SLN生検を上回る遺伝子シグネチャーの改善された予後予測能についての可能な説明の1つは、かかる生検を実施する技術的限界(例えば、生検についての適正リンパ節の同定、腫瘍細胞検出の限界、サンプル処理/分類のヒューマンエラー)に関する。追加的又は代替的に、本開示の遺伝子シグネチャーは、生検で検出可能になる前のステージでSLN転移を予測可能であり得る(例えば、腫瘍が転移しており、腫瘍細胞は、SLNに至る経路にある)。これに関連して、SLNシグネチャーは、SLNBを置き換えて、臨床試験及び/又は追加治療に含めるべき基準として使用され得る。
【0027】
SLN遺伝子シグネチャーのさらなる利点は、現在の標準ケアでは臨床パラメーターに基づいてSLNBに適格でないことがあり得るが、遺伝子シグネチャーに基づいて、転移陽性SLNのリスクが高い、薄い厚さのメラノーマを有する患者を同定できることである。特に、遺伝子シグネチャーは、現在のところガイドラインに準拠してSLNB手順に適格でない薄い(<0.8mm)メラノーマ患者において、転移陽性SLNの同定を大幅に増加させるであろう。かかる患者の早期検出及び治療は、この患者サブ集団について無進行生存及び全生存を増加させるであろう。
【0028】
本明細書に開示される実施例は、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の1つ以上を含む遺伝子発現シグネチャー(すなわちSLN遺伝子シグネチャー)が、個体の分類及び予後の予測、特に転移陽性又は陰性のSLNの分類に有用であることを実証する。そのため、一態様では、本開示は、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の1つ以上、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上を含む遺伝子シグネチャーを提供する。好適な遺伝子シグネチャーは、以下の組合せ:ITGB3及びPLAT、ITGB3及びSPP1、ITGB3及びGDF15、ITGB3及びIL8、PLAT及びSPP1、PLAT及びGDF15、PLAT及びIL8、SPP1及びGDF15、SPP1及びIL8、GDF15及びIL8を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、ITGB3、PLAT並びにSPP1、GDF15及びIL8の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、SLN遺伝子シグネチャーは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の3つ以上を含む。いくつかの実施形態では、SLN遺伝子シグネチャーは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の4つ以上を含む。いくつかの実施形態では、SLN遺伝子シグネチャーは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8のすべてを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現シグネチャーは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8の3つ以上を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8を含む。好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、以下:ITGB3、PLAT、GDF15、SPP1及びIL8の少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つを含む。好ましくは、遺伝子シグネチャーは、ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、以下:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1の少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ又はすべてを含む。本発明者らは、ADIPOQの欠如した遺伝子シグネチャーが同様の性能を示すことも実証する。したがって、いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、以下:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1の少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ又はすべてを含む。ある実施形態では、遺伝子シグネチャーは、
- ITGB3、PLAT、GDF15、IL8、MLANA並びにLOXL4及びSERPINE2の一方又は両方、
- ITGB3、PLAT、GDF15、IL8、MLANA並びにSERPINE2及びTGFBR1の一方又は両方、
- ITGB3、PLAT、GDF15、IL8並びにMLANA及びTGFBR1の一方又は両方、
- ITGB3、PLAT、GDF15、IL8並びにTGFBR1及びSERPINE2の一方又は両方、
- ITGB3、PLAT、GDF15、IL8、SERPINE2並びにLOXL4及びTGFBR1の一方又は両方、
- ITGB3、PLAT、GDF15、IL8、LOXL4、
- ITGB3、PLAT、GDF15、IL8、SERPINE2、
- ITGB3、PLAT、GDF15、IL8、TGFBR1、又は
- ITGB3、PLAT、GDF15、IL8、MLANA
を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、以下:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、少なくとも11又はすべてを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、以下:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1の少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10又はすべてを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、上述の遺伝子からなる。当業者に理解されるように、SLN遺伝子シグネチャーが上述の遺伝子からなるとき、解析を実施する方法は、追加の遺伝子(例えば、正規化用)の発現を測定することを含み得るが、個体を分類するために遺伝子シグネチャーのみが使用される。
【0033】
ITGB3遺伝子は、インテグリンβ-3をコードする。例示的なホモ・サピエンス(Homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_000212.2(2018年6月17日)の下に見出され得る。
【0034】
PLAT遺伝子は、プラスミノーゲンアクチベーター(組織型)をコードする。例示的なホモ・サピエンス(Homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_001319189.1(2018年7月1日)の下に見出され得る。
【0035】
SPP1遺伝子は、分泌リンタンパク質1をコードする。例示的なホモ・サピエンス(Homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_001040058.1(2018年6月24日)の下に見出され得る。
【0036】
GDF15遺伝子は、成長分化因子15をコードする。例示的なホモ・サピエンス(Homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_004864.3(2018年6月17日)の下に見出され得る。
【0037】
IL8遺伝子は、インターロイキン8をコードする。例示的なホモ・サピエンス(homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのAF043337.1(2001年2月1日)の下に見出され得る。
【0038】
MLANA遺伝子は、メラン-Aをコードする。例示的なホモ・サピエンス(homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_005511(2018年10月20日)の下に見出され得る。
【0039】
LOXL4遺伝子、リシルオキシダーゼ様4をコードする。例示的なホモ・サピエンス(homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_032211(2018年11月22日)の下に見出され得る。
【0040】
ADIPOQ遺伝子は、アディポネクチン(C1Q及びコラーゲンドメイン含有)をコードする。例示的なホモ・サピエンス(homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_004797(2018年12月2日)の下に見出され得る。
【0041】
PRKCB遺伝子は、プロテインキナーゼCβをコードする。例示的なホモ・サピエンス(homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_212535(2018年11月12日)の下に見出され得る。
【0042】
SERPINE2遺伝子は、セルピンファミリーEメンバー2をコードする。例示的なホモ・サピエンス(homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_006216(2018年11月17日)の下に見出され得る。
【0043】
ADAM12遺伝子は、ADAMメタロペプチダーゼドメイン12をコードする。例示的なホモ・サピエンス(homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_003474(2018年8月5日)の下に見出され得る。
【0044】
LGALS1遺伝子は、ガレクチン1をコードする。例示的なホモ・サピエンス(homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_002305(2018年11月22日)の下に見出され得る。
【0045】
TGFBR1遺伝子は、トランスフォーミング成長因子βレセプター1をコードする。例示的なホモ・サピエンス(homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_004612(2018年10月28日)の下に見出され得る。
【0046】
本開示は、個体を分類する方法であって、サンプル中のSLN遺伝子シグネチャーを決定することを含む方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、個体は、転移陽性SLN又は転移陰性SLNを有するとして分類され得る。他の一実施形態では、個体は、良好又は不良な予後を有するとして分類され得る。SLN転移に関連付けられた遺伝子シグネチャーは、以前に報告された(Meves et al. J Clinical Oncology 2015 33:2509-2516)。アルゴリズムは、4つの遺伝子ITGB3、LAMB1、PLAT及びTP53の原発メラノーマ遺伝子発現と組み合わせて、臨床病理学的変数の年齢、ブレスロー深さ及び潰瘍化を用いることにより、SLN転移を予測する。図3に示されるように、本SLN遺伝子シグネチャーは、これまで報告されたシグネチャーよりも優れた性能を示す。
【0047】
一態様では、本開示は、「N-SLN遺伝子シグネチャー」を提供する。N-SLN遺伝子シグネチャーは、原発皮膚メラノーマに罹患している個体を分類し、特に、遺伝子シグネチャーは、転移陽性非センチネルリンパ節(N-SLN)を有する個体のリスクを分類する。このリスク評価は、治療選択肢を決定するとき及び患者の予後を決定するうえで医師及び患者に有用である。
【0048】
いくつかの実施形態では、N-SLN遺伝子シグネチャーは、転移陽性N-SLNのリスクを分類する。個体は、転移陽性N-SLN又は転移陰性N-SLNを有するとして分類され得る。遠隔位置のリンパ節への腫瘍細胞の浸潤は、予後不良のインジケーターであり、よりアグレッシブな形態の治療の使用を示唆する。早期検出及び治療は、患者のアウトカムを改善すると予想される。
【0049】
本明細書に開示される実施例は、以下の遺伝子:KRT14、SPP1、FN1、LOXL3の1つ以上を含む遺伝子発現シグネチャー(すなわちN-SLN遺伝子シグネチャー)が、特に転移陽性N-SLNのリスクを決定するための個体の分類に有用であることを実証する。そのため、一態様では、本開示は、以下の遺伝子:KRT14、SPP1、FN1、LOXL3の少なくとも1つを含む遺伝子シグネチャーを提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、以下の遺伝子:KRT14、SPP1、FN1、LOXL3の少なくとも2つ又は少なくとも3つを含む。いくつかの実施形態では、N-SLN遺伝子シグネチャーは、KRT14、SPP1、FN1、LOXL3を含むか又はそれからなる。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、上述の遺伝子からなる。当業者に理解されるように、N-SLN遺伝子シグネチャーが上述の遺伝子からなるとき、解析を実施する方法は、追加の遺伝子(例えば、正規化用)の発現を測定することを含み得るが、個体を分類するために遺伝子シグネチャーのみが使用される。いくつかの実施形態では、N-SLN遺伝子シグネチャーは、皮膚メラノーマの再発(recurrence)/再燃(relapse)を患っており、及び/又はすでにSLN生検を受けた個体において決定される。
【0050】
KRT14遺伝子は、ケラチン14をコードする。例示的なホモ・サピエンス(Homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_000526.4(2018年6月17日)の下に見出され得る。
【0051】
FN1遺伝子は、フィブロネクチン1をコードする。例示的なホモ・サピエンス(Homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_001306129.1(2018年6月3日)の下に見出され得る。
【0052】
LOXL3遺伝子は、リシルオキシダーゼ様3をコードする。例示的なホモ・サピエンス(homo sapiens)mRNA配列は、NCBIデータベースのNM_001289165.1(2018年6月30日)の下に見出され得る。
【0053】
本開示は、個体を分類する方法であって、サンプル中のN-SLN遺伝子シグネチャーを決定することを含む方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、個体は、転移陽性N-SLN又は転移陰性N-SLNを有するとして分類され得る。いくつかの実施形態では、SLN遺伝子シグネチャー及びN-SLN遺伝子シグネチャーの両方を決定する方法が提供される。
【0054】
本明細書に開示される遺伝子シグネチャーの解析は、哺乳動物及びヒトを含めていずれかの個体で実施され得るが、ヒトが好ましい。いくつかの実施形態では、個体は、T1~T3の皮膚メラノーマを有すると診断されている。いくつかの実施形態では、個体は、特に遺伝子シグネチャーがSLN遺伝子シグネチャーであるとき、原発メラノーマのSLNの生検を依然として受けていない。遺伝子シグネチャーは、低年齢、高有糸分裂速度(例えば、2/mm超)、疾患の既往歴、アウトカム不良疾患の家族歴及び/又はリンパ管浸潤を有する個体を分類するのに特に有用である。
【0055】
遺伝子発現シグネチャーは、腫瘍細胞がSLN又はN-SLNに転移しているリスク又はその可能性を予測するのに有用である。当業者に明らかであるように、個体の分類とは、リスクがあると予測された全患者の100%が、事実上、検出可能な転移を有することを意味するものでもなく(感度又は陽性パーセント一致ともいう)、転移を有していないと予測された全患者の0%が、事実上、明らかに転移があることを意味するものでもなく(特異度又は陰性パーセント一致ともいう)、その確率又は「リスク」を意味する。実施例に開示されるように、SLN及びN-SLNの遺伝子発現シグネチャーは、感度及び特異度の両方で高性能レベルを呈する。実施例に開示されるように、SLN遺伝子シグネチャーは、メラノーマに罹患している個体の予後を標準ケアSLN生検よりも良好に予測することができる。そのため、本開示は、遺伝子発現シグネチャーが個体の予後を予測するのに有用であることを実証する。
【0056】
当業者に公知のように、転移疾患の体積によって測定される転移の負荷は、個体によって異なり得る。いくつかの実施形態では、転移は、腫瘍細胞クラスターの存在を意味し、孤立した又は稀な腫瘍細胞のみを含有するリンパ節を含まない。いくつかの実施形態では、転移は、リンパ節外浸潤(extra-capsular extension)あり又はなしのいずれかで直径が少なくとも0.1mmの細胞クラスターの存在を意味する。
【0057】
遺伝子発現を決定するのに好適なサンプルを得ることは、当業者の能力の範囲内である。好適なサンプルとしては、原発皮膚メラノーマ病変生検が挙げられる。かかる生検は、切除病変(例えば、腫瘍の広範な切除除去)を含む。サンプルは、遺伝子発現プロファイリングに適合可能であるように、当技術分野で公知のいずれかの手段によって処理又は保持され得る。例えば、サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋原発皮膚メラノーマ病変生検及びフリーズサンプルであり得る。
【0058】
好ましくは、サンプルは、RNA含有サンプルである。mRNA抽出の一般的方法は、当技術分野で周知であり、Ausubel et al. (1997) Current Protocols of Molecular Biology, John Wiley and Sonsをはじめとする分子生物学の標準的教科書に開示されている。パラフィン包埋組織からのRNA抽出方法は、例えば、Rupp & Locker (1987) Lab Invest. 56:A67及びDe Andres et al., BioTechniques 18:42044 (1995)に開示されている。特に、RNA単離は、製造業者の説明書に従い、Qiagenなどの商業製造業者からの精製キット、緩衝剤セット及びプロテアーゼを用いて実施することができる(QIAGEN Inc., Valencia, Calif.)。例えば、全RNAは、Qiagen RNeasyミニカラムを用いて培養下の細胞から単離することができる。多くのRNA単離キットが市販されており、本発明の方法に使用され得る。
【0059】
本明細書に開示される方法は、遺伝子発現シグネチャーを決定することを含む。特に、本方法は、遺伝子発現レベルを決定することを含む。遺伝子発現レベルは、核酸又はタンパク質の発現レベルを測定することによって決定され得る。好ましくは、mRNA発現レベルが決定される。いくつかの実施形態では、核酸又はタンパク質は、サンプルから精製され、遺伝子発現は、核酸又はタンパク質の発現解析によって測定される。タンパク質発現レベルは、ELISA、免疫細胞化学、フローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング、プロテオミック及び質量分析をはじめとする当技術分野で公知のいずれかの方法によって決定され得る。
【0060】
好ましくは、核酸発現レベルが決定される。核酸発現レベルは、RT-PCR、定量PCR、ノーザンブロッティング、遺伝子シーケンシング、特にRNAシーケンシング及び遺伝子発現プロファイリング技術をはじめとする当技術分野で公知のいずれかの方法によって決定され得る。シーケンシングベース遺伝子発現解析の代表的方法としては、遺伝子発現連続解析(SAGE)及び大規模並列シグネチャーシーケンシング(MPSS)による遺伝子発現解析が挙げられる。
【0061】
好ましくは、核酸は、mRNA又はプレmRNAなどのRNAである。当業者によって理解されるように、決定されるRNA発現レベルは、直接的に検出され得るか、又は最初にcDNA生成及び/又はRNA/cDNA増幅などを行って間接的に決定され得る。いくつかの実施形態では、原発メラノーマサンプルを得、組織サンプルからRNAを抽出し、続いて対象遺伝子(例えば、バイオマーカー及びハウスキーピング遺伝子)のRNA転写物を逆転写して、RNA転写物のcDNAを生成し、且つRNA転写物の発現レベルの決定のために、cDNAを増幅してcDNAからアンプリコンを生成する。
【0062】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現は、NanoString遺伝子発現解析によって決定され得る。NanoStringは、遺伝子発現を検出する多重化法であり、転写も増幅も用いないmRNAの直接測定法を提供する。NanoString及びその態様は、Geiss et al.,“Direct multiplexed measurement of gene expression with color-coded probe pairs”Nature Biotechnology 26, 317-325 (2008)に記載されている。
【0063】
発現レベルは、絶対値である必要はなく、むしろ正規化発現値又は相対値であり得る。例えば、発現レベルは、ハウスキーピング又は参照遺伝子発現に対して正規化され得る。かかる遺伝子としては、ABCF1、ACTB、ALAS1、CLTC、G6PD、GAPDH、GUSB、HPRT1、LDHA、PGK1、POLR1B、POLR2A、RPL19、RPLPO、SDHA、TBP及びTUBBが挙げられる。
【0064】
正規化は、マイクロアレイデータに基づいて発現が決定されるときにも有用である。正規化は、異なるチップからのデータの同時解析が可能であるように、マイクロアレイ内及びサンプル全体の変動の補正を可能にする。ロバストマルチアレイ解析(RMA)アルゴリズムは、すべてのサンプルについてプローブセットデータを遺伝子発現レベルに前処理するために使用され得る。(Irizarry R A, et al., Biostatistics (2003)及びIrizarry R A, et al., Nucleic Acids Res. (2003))。加えて、Affymetrixデフォルト前処理アルゴリズム(MAS 5.0)も採用され得る。発現データを正規化する追加の方法は、米国特許出願公開第20060136145号に記載されている。
【0065】
いくつかの実施形態では、発現レベルは、リアルタイムPCR(すなわち定量PCR又はqPCR)を用いて決定される。リアルタイムPCR(qPCR)では、反応は、固定サイクル数後の標的蓄積量ではなく、標的の増幅が最初に検出されるサイクル処理時の時間点によって特徴付けられる。シグナルが最初に検出されるこの点は、閾値サイクル(Ct)といわれる。
【0066】
いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャー発現は、ハウスキーピング遺伝子の平均Ctからシグネチャー遺伝子のCtを減算して、ハウスキーピング遺伝子発現に対する正規化によって互いに定量される。いくつかの実施形態では、次いで、これらのΔCt値は、SLN転移の予測を計算するアルゴリズムで患者の年齢及びメラノーマ病変のブレスロー深さと組み合わされる。いくつかの実施形態では、正規化に使用されるハウスキーピング遺伝子は、ACTB、RPLP0及びRPL8である。しかしながら、他のハウスキーピング遺伝子も使用され得る。続いて、遺伝子発現シグナルの比は、患者SLNBのアウトカム予測を計算するアルゴリズムで臨床変数と組み合わされる。結果は、二元分類(陰性又は陽性)で表される。「陰性」結果は、個体が転移陽性SLNの低いリスクを有するか、又はさもなければ個体が良好な予後を有することを示唆するが、「陽性」結果は、個体が転移陽性SLNの高いリスク又はさもなければ不良な予後を有することを示唆する。
【0067】
本明細書に記載の方法は、遺伝子発現シグネチャーに基づいて個体を分類する。いくつかの実施形態では、個体における1つ以上のシグネチャー遺伝子の差次的発現は、個体が転移のリスクがあることを示唆するか又はさもなければ個体の予後を示唆する。本明細書で用いられる場合、「差次的発現」とは、対象において測定される発現レベルが参照と有意に異なることを意味する。参照は、単一値又は数値範囲であり得る。適切な参照値を決定することは、当業者の可能な範囲内である。いくつかの実施形態では、参照値は、あらかじめ決められた値である。いくつかの実施形態では、参照値は、特定の患者クラスの発現値の平均である。例えば、参照値は、臨床的に確認されたSLN転移を有する患者(又はN-SLNシグネチャーでは、臨床的に確認されたN-SLN転移を有する患者)のクラスにおける発現値の平均であり得る。参照値はまた、式の形態をとり得るか又は式から導出され得る。患者における発現レベルが参照と「有意に」異なるかを決定することは、当業者の可能な範囲内である。
【0068】
例示的な実施形態では、参照値は、実施例に記載のようにSLNBを受けたメラノーマ患者のコホートから決定される。類似の試験からのデータも使用し得ることは、当業者に明らかである。
【0069】
差次的発現遺伝子の発現レベルと特異的患者反応クラスとの間の相関強度は、統計的有意性検定によって決定され得る。例えば、χ検定を用いてχ値を各差次的発現マーカーに割り当てることにより、特異的患者反応クラスについてのそのマーカーの発現の相関強度を示唆し得る。同様に、t-統計メトリック及びWilkinsメトリックの両方は、マーカーの発現とその特異的患者反応クラスとの間の相関強度の指標となる値又はスコアを提供する。加えて、相関強度を決定するためにSAM又はPAM解析ツールが使用され得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、個体からの遺伝子発現シグネチャーは、個体からの遺伝子発現シグネチャーが参照プロファイルに十分に類似しているかを決定するために参照発現シグネチャーと比較される。代替的に、個体からの遺伝子発現シグネチャーは、個体からの遺伝子発現プロファイルに最も類似した参照発現プロファイルを選択するために複数の参照発現シグネチャーと比較される。2つ以上のデータセットを比較してそれらの間の類似性を検出する当技術分野で公知のいずれの方法も、個体からの遺伝子発現シグネチャーを参照発現プロファイルと比較するために使用され得る。
【0071】
機械学習及び統計学では、分類とは、カテゴリーメンバーシップが既知である観測(又はインスタンス)を含有するトレーニングデータセットに基づいて、新たな観測がいずれのカテゴリーセットに属するかを同定することを意味する。とりわけ、具体的な実現形態で分類を実現するアルゴリズムは、分類器として知られる。限定されるものではないが、ClaNC、最近傍平均識別器、加重投票法、単純ベイズ分類器、線形判別分析(LDA)、二次判別分析(QDA)、サポートベクトルマシン(SVM)、k最近傍(k-nn)分類器など、線形又は非線形の分類器境界を用いた多くの分類器が当技術分野で公知である。好ましい実施形態では、ロジスティック回帰分類器が使用される。ロジスティック回帰分類器を実現する例示的な実施形態は、実施例に記載される。
【0072】
当業者によって理解されるように、遺伝子発現シグネチャーのトレーニングは、感度又は特異度に有利であるように実施され得る。感度とは、それ自体適正に同定される実陽性の割合を意味し、偽陰性(例えば、事実上陽性である転移陰性として分類された患者)を回避するために高感度が望まれる。特異度とは、それ自体適正に同定される実陰性の割合を意味し、偽陽性(例えば、事実上陰性である転移陽性として分類された患者)を回避するために高特異度が望まれる。好ましくは、分類器は、転移を有する個体を同定するために高感度になるようにトレーニングされる。
【0073】
いくつかの実施形態では、個体を分類する本方法は、個体の年齢及び/又は腫瘍のブレスロー深さをさらに利用する。任意選択的に、潰瘍化及び/又は有糸分裂速度が決定され得る。ブレスロー深さは、表皮の顆粒層のトップから(又は表面が潰瘍化されている場合には潰瘍の底部から)腫瘍(真皮/皮下)の広い底部にわたって最も深い浸潤細胞まで測定される。潰瘍化とは、死滅組織の皮膚脱落を意味し、迅速腫瘍成長を反映してメラノーマの中心にある細胞の死をもたらすと考えられる。有糸分裂速度は、切除された腫瘍を調べて、有糸分裂を呈する細胞数をカウントすることによって測定され得る。有糸分裂数が多いほど、腫瘍が転移している可能性が高い。特定の実施形態では、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1を含む遺伝子シグネチャーと、年齢及びブレスロー深さの臨床変数とを含む組合せモデルが使用される。いくつかの実施形態では、遺伝子シグネチャーは、AIDPOQを追加的に含む。
【0074】
本開示は、本明細書に開示される遺伝子発現シグネチャーを決定するキットも提供する。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に開示される遺伝子シグネチャーにqPCRを実施するためのプライマー対を含む。いくつかの実施形態では、キットは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8の2つ以上、好ましくは3つ以上及び/又は以下の遺伝子:KRT14、SPP1、FN1、LOXL3の1つ以上にqPCRを実施するためのプライマー対を含む。いくつかの実施形態では、キットは、ACTB、RPLP0、RPL8などのハウスキーピング遺伝子のためのプライマー対を含む。いくつかの実施形態では、キットは、以下:DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオシド三リン酸、緩衝剤及びMg2+の1つ以上をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8の3つ以上を増幅するためのプライマー対を含み、より好ましくは、キットは、ITGB3、PLAT、GDF15及びIL8を増幅するためのプライマー対を含む。好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1を含み、より好ましくは、遺伝子発現シグネチャーは、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1を含む。いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上のプライマー対について、好ましくは各プライマーについて対照核酸を含む。好ましくは、対照核酸は、cDNAであり、より好ましくは、cDNAは、それぞれの遺伝子の少なくとも1つのイントロン/エクソン境界にまたがる配列に対応する。かかるcDNAは、遺伝子発現をゲノム汚染から識別するのに有用である。いくつかの実施形態では、プライマー対の1つ以上のプライマーは、化学修飾される。かかる修飾プライマーは、蛍光標識又は放射性標識されたプライマーを含む。
【0075】
本明細書に開示される遺伝子発現解析の結果は、診断ワークアップスケジュールを決定するのに有用である。例えば、転移陽性SLN又は不良な予後を有するとして分類された個体は、SLNBを受けることができ。いくつかの実施形態では、SLN陽性であると予測されたか又はさもなければ不良な予後を有すると予測された個体に免疫療法が施される。後続SLNBリードアウトは、免疫療法に対する反応の尺度であり得る。
【0076】
遺伝子発現シグネチャーに基づいて適切な治療レジームを決定することができる。本明細書で用いられる場合、「治療」、「治療する」及び「治療すること」という用語は、メラノーマ又はその1つ以上の症状の発生の逆転、軽減、遅延又はその進行の阻害を意味する。いくつかの実施形態では、転移陽性SLNを有するか又はさもなければ不良な予後を有するとして分類された個体は、SLNBによって治療され得る。SLNの位置は、当業者に公知のように及び本明細書に記載のように、メラノーマの位置に基づいて及び/又は「SLNマッピング」などの方法を用いて決定され得る。
【0077】
転移陽性N-SLNは、外科手順、例えば外科リンパ節郭清を実施することによって治療され得る。転移N-SLNは、完全リンパ節郭清及び/又はメラノーマを治療する他の療法によって治療され得る。いくつかの実施形態では、癌治療が個体に施される。いくつかの実施形態では、「アジュバント治療」が個体に施される。本明細書で用いられるアジュバント治療とは、1つ以上の癌性腫瘍の外科切除後の患者への1つ以上の薬剤の投与を意味し、この場合、すべての検出可能且つ切除可能な疾患(例えば、癌)が患者から除去されているが、再燃の統計的リスクが残されている。アジュバント治療は、疾患の再発の可能性又は重症度を減少させるのに有用である。
【0078】
遺伝子発現シグネチャーに基づいて示唆され得る公知のメラノーマ療法としては、
- 化学療法:例えば、ダカルバジン(DTIC)、テモゾロミド(Temodal)、カルボプラチン(Paraplatin、Paraplatin AQ)、パクリタキセル(Taxol)、シスプラチン(Platinol AQ)及びビンブラスチン(Velbe)、
- 標的療法薬剤:例えば、BRAF阻害剤(ベムラフェニブ(Zelboraf)及びダブラフェニブ(Tafinlar))並びにMEK阻害剤(コビメチニブ(Cotellic)及びトラメチニブ(Mekinist))、
- 放射線療法、
- 免疫療法:例えば、サイトカイン(例えば、インターフェロンα-2b又はインターロイキン-2)、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、イピリムマブ(Yervoy)、ニボルマブ(Opdivo)、ペムブロリズマブ(Keytruda))又は腫瘍溶解性免疫療法
が挙げられる。
【0079】
好適な薬剤療法の施行は、いずれかの適切な経路によって施され得る。好適な経路としては、経口、経直腸、経鼻、局所(経頬及び舌下を含む)、経膣並びに非経口(皮下、筋肉内、静脈内、真皮内、髄腔内及び硬膜外を含む)が挙げられる。
【0080】
本明細書で用いられる場合、「含む」及びその活用形は、その非限定的な意味で用いられ、その単語に続くアイテムを含むが、特に挙げられていないアイテムを除外するものではないことを意味する。加えて、動詞の「からなる」は、「から本質的になる」で置き換えられ得る。すなわち、本明細書に定義される化合物又は補助化合物は、本発明のユニークな特徴を変化させない前記追加の成分であれば、特に明記された以外の追加の成分を含み得る。
【0081】
冠詞の「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つ以上(すなわち少なくとも1つ)を意味するものとして用いられる。例として、「要素」は、1つの要素又は2つ以上の要素を意味する。
【0082】
数値との関連で用いられるときの「およそ」又は「約」という語(およそ10、約10)は、好ましくは、その値が、10の所与の値よりも1%大きい又は小さい値であり得ることを意味する。
【0083】
以下の実施例で本発明をさらに説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明を明確化する役割を果たすにすぎない。
【実施例
【0084】
実施例1:SLN転移ステータスを予測する遺伝子シグネチャー
本発明者らは、三次ケアセンターでSLN生検を受けた813名の継続メラノーマ患者のコホートを集めた。対象アウトカムは、SLN生検で組織学的に同定されたSLN及び転移であった。原発メラノーマ診断生検組織での29の転移促進間質反応遺伝子の発現は、ポリメラーゼ連鎖反応によった。二重ループ交差検証(DLCV)トレーニング検証スキームで正則化ロジスティック回帰を臨床病理学的変数及び分子データに適用した。
【0085】
臨床データセット
以上の臨床変数のうちの6つのみがSLNB陽性とSLNB陰性との間で有意差を示す。
・年齢
・ブレスロー深さ
・潰瘍化
・有糸分裂速度
・クラークレベル
・血管リンパ管浸潤
【0086】
6つの変数のうち、本発明者らは、クラークレベル及び血管リンパ管浸潤を対象外とし、年齢、ブレスロー深さ、潰瘍化及び有糸分裂速度のみを考慮するように決定する。なぜなら、後者の変数は、必ずしも利用可能であるとは限らないうえに、それらの品質は、SLNBを実施するヘルスケア提供者に依存して異なり得るからである。
【0087】
本発明者らは、Meves et al. 2015にあるようなコピー数によるのではなく、ΔCtによって遺伝子発現を定量した。なぜなら、本発明者らのシグネチャーでコピー数を用いても有意差が見られず、単に実験負荷を増加させるにすぎないからである。Meves et al. 2015と比較して、KRT14バックグラウンド補正も省略した。いわゆるITLP正規化も省略した。なぜなら、それは、測定された発現のアドホックオーバールーリングに基づいており、主に閾値の形態で多くの任意パラメーターを必要とするからである。
【0088】
【表1】
【0089】
直径0.1mm未満の細胞クラスターを有するサンプルを転移陽性とみなすべきであるか、また臨床的視点から一般に陰性とみなされるかについて議論の余地がある。したがって、本発明者らは、分類器のトレーニングセットから、1又は2に等しい転移疾患の体積を有する813名中43名の患者を除外するように決定し、このセットについて分類器の性能を個別に評価した。以下の29の遺伝子を測定した:
KRT14、MLANA、MITF、ITGB3、PLAT、LAMB1、TP53、AGRN、THBS2、PTK2、SPP1、COL4A1、CDKN1A、CDKN2A、PLOD3、GDF15、FN1、TNC、THBS1、CTGF、LOXL1、LOXL3、ITGA5、ITGA3、ITGA2、CSRC、CXCL1、IL8、LAMB。
【0090】
性能尺度
分類器の性能を評価するために、分割表を構築した。これらの分割表から、2つの基準、すなわちPPA(陽性パーセント一致)及びNPA(陰性パーセント一致)を導出した。これらは、以下のように定義される。
【数1】

式中、TPは、真陽性の数を表し、FNは、偽陰性の数を表し、TNは、真陰性の数を表し、及びFPは、偽陽性の数を表す。PPA及びNPA基準の式は、それぞれ感度及び特異度と均等である。しかしながら、非ゴールデンスタンダード参照(FISHデータ)に対して比較が行われるため、PPA及びNPAという用語を使用することにする。
【0091】
分類器のトレーニングを最適化するために、最大化(又は誤差基準の場合には最小化)されるべき単一性能基準が必要である。この目的のため、PPA及びNPAの平均を使用する。
【数2】

式中、pは、性能を表す。p=50は、ランダム性能を示唆し、p=100は、完全分類を示唆する。
【0092】
他の性能尺度:
・陰性的中率
・陽性的中率
・確度
・バランス確度
・陰性アウトカムの対数尤度比
・陽性アウトカムの対数尤度比
・ROC曲線下面積。
【0093】
分類器
分類器は、すべて29遺伝子の発現レベル、臨床病理学的変数及びそれらの両方についてトレーニングされる。
【0094】
分類器:ペナルティー付き最大尤度によるロジスティック回帰
本発明者らは、Rパッケージglmnetで実現されるロジスティック回帰分類器を使用した。パラメーターは、パーシモニアス表現を得るために、L1ノルムペナルティー項(LASSO正則化)を用いて最尤推定によって推定される。
【0095】
分類器の二重ループ交差検証
Wesselsら[Wessels et al. Bioinformatics, Volume 21, Issue 19, 2005, Pages 3755-3762]は、二重ループ交差検証(DLCV)を利用して高スループットデータから診断分類器を構築するために、広く適用可能なフレームワークを記載した。DLCVエクササイズにより、開発者は、トレーニングデータセットとは独立したデータに将来適用できるように、分類器の性能(一般化誤差による)を推定/予測することができる。この方法は、特徴セレクターとしてフォワードフィルタリング、個別遺伝子を評価する基準としてt-統計及び様々な分類器と組み合わされて採用された。トレーニング及び検証手順は、外側(検証)ループで3分割交差検証及び内側ループで10分割交差検証を100回繰返し利用して実施された。内側ループでは、アルゴリズムは、LASSO正則化のための最適パラメーターλを学習する。すべてのポイントにおいて、データスプリットは、クラス事前確率に関して層別化された。
【0096】
二重ループ交差検証法は、少数の工程で記述され得る:
1.繰返しごとにデータが3つの部分にスプリット(層別化)される(繰返しごとに異なるスプリット)。
2.分割ごとに2つの部分が内側ループに使用され(トレーニングセット)、検証のために第3の部分が外側ループに使用される(検証セット)。
3.トレーニングセットデータでは、LASSOペナルティー項に用いられる最適λを推定するために10分割交差検証が実施される(学習曲線の構築)。
4.次いで、分類器は、トップの最適λを用いて完全トレーニングセットでトレーニングされる。
5.最後に、その分類器の性能が検証セットで評価される。
6.すべての繰返しが終了した後、最終分類器は、すべてのサンプルを用いて平均最適λで作成される。得られたnの平均数は、分類器をトレーニングするために使用される。次いで、この分類器は、外部検証セットで適用されるであろう。
【0097】
典型的には、データセットは、クラス事前確率に関して非平衡である。したがって、バランス確度は、クラス事前確率を考慮に入れるため、確度よりも良好な分類性能である。本発明者らは、繰返しごとに、内側ループにおいて性能基準としてブライアスコアを使用した。
【0098】
【表2】
【0099】
表1は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、全770名の患者コホート分類器でトレーニングされた最終分類器の性能を表す。係数が正である場合、より高い値は、リスクの増加を示唆する。係数が負である場合、低減値は、リスクの減少を示唆する。より大きい(絶対量)係数を有する変数は、より大きい寄与を有する。
【0100】
表2は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0101】
【表3】
【0102】
表3 パラメーター「年齢」が年単位で導入され、且つ「ブレスロー深さ」がミリメートル単位で導入される。潰瘍化は、ブール変数(あり/なし)である。表は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、全770名の患者コホート分類器でトレーニングされた最終分類器の性能を表す。表4は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0103】
【表4】
【0104】
表5は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、全770名の患者コホート分類器でトレーニングされた最終分類器の性能を表す。
【0105】
表6は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0106】
図1は、1)遺伝子発現、2)臨床病理学的変数、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされたロジスティック回帰分類器のROC曲線を表す。
【0107】
表7は、1)遺伝子発現(「GE」、すなわちITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8遺伝子シグネチャー)、2)臨床病理学的変数(「CL」、すなわち年齢及びブレスロー深さ)、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せ(「GECL」)について、DLCVでトレーニングされた分類器の平均性能を表す。3つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPVが考慮された。
【0108】
実施例2 比較例
ITLPスコア(ITGB3、LAMB1、PLAT及びTP53)に基づく分類器
表8は、全770名の患者コホートについてのITLPスコアの性能を表す。
【0109】
【表5】
【0110】
表9は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、全770名の患者コホート分類器でトレーニングされた最終分類器の性能を表す。
【0111】
表10は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0112】
実施例3 比較分析
ITLP対ITGB3、PLAT、GDF15、SPP1及びIL8遺伝子シグネチャー
図2は、ITLPスコア並びにITGB3、PLAT、GDF15、SPP1及びIL8遺伝子シグネチャー(図中では「ロジスティック回帰」という)についてのROC曲線を表す。ITGB3、PLAT、GDF15、SPP1及びIL8遺伝子シグネチャーは、明らかにITLPシグネチャーよりも優れた性能を示す。
【0113】
実施例4:遺伝子サブセットの性能
前の実施例では、5つの遺伝子:ITGB3、PLAT、GDF15、SPP1及びIL8を遺伝子シグネチャーに使用した。本発明者らは、2つ、3つ及び4つの遺伝子のすべての可能なサブセットの性能を調べた。以下のシグネチャーについて、遺伝子の全数から選択可能な特定の次元のサブセットの数は、以下の通りである:2つの遺伝子のシグネチャーから10サブセット、3つの遺伝子のシグネチャーから10サブセット、4つの遺伝子のシグネチャーから5サブセット及び5つすべてを含む1シグネチャー。本発明者らは、ROC曲線下面積に関して、ITLPシグネチャーと比較して性能を評価した。AUC(又はその範囲)は、ITLPでは0.68、2のすべてサブセットでは0.72~0.75、3のすべてサブセットでは0.74~0.77、4のすべてサブセットでは0.76~0.77及び5遺伝子シグネチャーでは0.77であった。これは、図3にも示される。そのため、以下の遺伝子:ITGB3、PLAT、GDF15、SPP1及びIL8の少なくとも2つを含むすべての遺伝子シグネチャーは、ITLPシグネチャーよりも優れた性能を示す。
【0114】
実施例5:小体積の転移疾患を有する43サンプルでの性能
第1のインスタンスでは、小体積(体積1及び2)の転移疾患を有する患者は、分類器のトレーニングに使用されるコホートから除外された。直径0.1mm未満の細胞クラスターを有するサンプルを転移陽性とみなすべきであるか及び臨床的視点から一般に陰性とみなされるかについて議論の余地がある。本試験では、43名の患者は、体積1又は2を有するため、最初に解析から除外された。かかる患者にITGB3、PLAT、GDF15、SPP1及びIL8分類器を適用したところ、陽性として29名及び陰性として14名の分類をもたらした。
【0115】
実施例6:誤分類解析
偽陰性。誤分類された陽性サンプルは、主に、潰瘍化なし且つ血管リンパ管浸潤なしで薄いメラノーマ(2mm未満)を有する患者からのものである。換言すると、これらは、転移を発生する非常に低いアプリオリリスクを呈する患者である。アルゴリズムの100回の繰返しをすべて行うと誤分類されるサンプルは、少数である。
【0116】
偽陽性。誤分類された陰性サンプルは、主に、潰瘍化あり且つ血管リンパ管浸潤ありで厚いメラノーマ(2mm超)を有する患者からのものである。換言すると、これらは、転移を発生する高いアプリオリリスクを呈する患者である。アルゴリズムの100回の繰返しをすべて行うと誤分類されるサンプルは、少数である。
【0117】
分類器出力分布
予想確率分布は、ガウス型ではなく、単一モードで長い右側テールを有する。操作ポイントを選択するために使用される閾値は、分布の平均近傍となる。推定確率は、0.6を超えない。
【0118】
実施例7:SLN遺伝子シグネチャーの予後関連
3つのタイプの生存についてのカプラン・マイヤー生存推定値は、遺伝子ITGB3、PLAT、SPP1、GDF15及びIL8(実施例では「GECL」という)(表19~21(a))、SLNBステータス(表19~21(a))並びにそれらの2つの組合せ(表22~24(a))を含むSLN分類器で発生された。文献で公知のように、陽性SLNBステータスは、劣った生存に関連付けられる。注目すべき点として、GECLモデルは、より大きいハザード比からも明らかなかなり強い分離を生存推定値で提供した(表25(a))。加えて、多変量解析では、GECL分類器は、かなり大きいハザード比及びより有意なp値も有する(表26を参照(a)されたい)。特に注目すべきであるのは、GECL陰性群の非常に良好なメラノーマ特異的生存であり、160ヶ月間で0.966の生存推定値を有する(表19(a))。
【0119】
同様に、3つのタイプの生存についてのカプラン・マイヤー生存推定値は、遺伝子GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1(実施例では「GECL」という)(表19~21)、SLNBステータス(表19~21)及びそれらの2つの組合せ(表22~24)を含むSLN分類器で発生された。表19~26(b)は、トレーニングで0.97に設定されたNPVによる結果を記載する一方、表19~26(c)は、トレーニングで0.98に設定されたNPVによる結果を記載する。この分類器に関するさらなる考察については、実施例8を参照されたい。
【0120】
GECL分類器出力からの結果とSLNBステータスとを組み合わせて、真陽性(TP)、偽陽性(FP)、偽陰性(FN)及び真陰性(TN)の4つの群を提供した。先に示唆されたように、非常にわずかなFN症例及び実質的パーセントのFP症例が存在する。注目すべき点として、偽陽性群(GECLで陽性の陰性SLNBステータス)は、真陰性群に非常に類似した生存推定値を有する。このことから、GECL分類器出力は、メラノーマ患者に予後を提供する手段としてSLNBステータスよりも優れていることが示唆される。
【0121】
カプラン・マイヤー法は、いくつかの時間インターバルで生存確率を推定するために使用される。ログランク検定は、2つ以上の群間で生存曲線の比較に使用されるノンパラメトリック検定である。
【0122】
ハザード比(HR)は、所与の時間インターバルで発生する(一方の群におけるアウトカムのリスク)/(他方の群におけるアウトカムのリスク)の比として定義される。ハザード比1は、関連の欠如を意味し、1超のハザード比は、リスクの増加を示唆し、且つ1未満のハザード比は、より小さいリスクを示唆する。ハザード比は、2群間のみで相対差を表すために使用される。
【0123】
実施例8:SLN分類器のリファインメント
合計109ユニーク遺伝子について、全855コホートで4つの遺伝子パネルを測定した。しかしながら、解析時にサンプルを取り出せなかったため又は十分なRNAが存在しなかったため、サンプルのいくつかでは遺伝子発現を測定できなかった。したがって、770名の代わりに754名の患者のコホートで探索が行われた。探索コホートは、小体積の転移疾患を有する患者を含まない。
【0124】
各分類器について、本発明者らは、以下を報告する。
・全コホートでトレーニングされた最終分類器の性能
・交差検証の平均性能(外部ループでは3分割及び内部ループでは10分割を有する二重ループ交差検証の100回の繰返し)。3分割の性能は、全コホートをカバーするためにコンカチネートされる。
【0125】
各分類器について、4つの異なる操作ポイントで性能が計算される。
・MaxbACC:最大バランス確度
・SEeqSP:特異度に等しい感度
・NPV97:トレーニングで97%に等しい陰性的中率
・NPV98:トレーニングで98%に等しい陰性的中率
【0126】
臨床病理学的モデル(CL)
臨床病理学的変数に基づくロジスティック分類器モデルのパラメーターは、以下の通りである。
特徴 パラメーター
(切片) -2.0547083
年齢 -0.0112913
ブレスロー深さ 0.6116335
血管リンパ管浸潤あり 0.1205238
【0127】
表27は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)NPV98、トレーニングで0.98に設定されたNPVについて、全754名の患者コホートでトレーニングされた最終分類器の性能を表す。係数が正である場合、より高い値は、リスクの増加を示唆する。係数が負である場合、低減値は、リスクの減少を示唆する。より大きい(絶対量)係数を有する変数は、より大きい寄与を有する。
【0128】
表28は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)NPV98、トレーニングで0.98に設定されたNPVについて、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0129】
【表6】
【0130】
表29は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)NPV98、トレーニングで0.98に設定されたNPVについて、全754名の患者コホートでトレーニングされた最終分類器の性能を表す。係数が正である場合、より高い値は、リスクの増加を示唆する。係数が負である場合、低減値は、リスクの減少を示唆する。より大きい(絶対量)係数を有する変数は、より大きい寄与を有する。
【0131】
表30は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)NPV98、トレーニングで0.98に設定されたNPVについて、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0132】
【表7】
【0133】
表31は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)NPV98、トレーニングで0.98に設定されたNPVについて、全754名の患者コホートでトレーニングされた最終分類器の性能を表す。係数が正である場合、より高い値は、リスクの増加を示唆する。係数が負である場合、低減値は、リスクの減少を示唆する。より大きい(絶対量)係数を有する変数は、より大きい寄与を有する。
【0134】
表32は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)NPV98、トレーニングで0.98に設定されたNPVについて、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0135】
図6は、1)遺伝子発現、2)臨床病理学的変数、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされたロジスティック回帰分類器のROC曲線を表し、且つ図7は、1)遺伝子発現、2)臨床病理学的変数、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされたロジスティック回帰分類器の陰性的中率(NPV)対センチネルリンパ節低減率(SLNB RR)を表す。
【0136】
異なる操作ポイント(OP)での比較:CL対CE対GECL
表33は、1)遺伝子発現(「GE」、すなわちGDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1遺伝子シグネチャー)、2)臨床病理学的変数(「CL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ及び血管リンパ管浸潤の存在)、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せ(「GECL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器の平均性能を表す。操作ポイントについて、最大バランス確度(max bACC)である。
【0137】
表34は、1)遺伝子発現(「GE」、すなわちGDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1遺伝子シグネチャー)、2)臨床病理学的変数(「CL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ及び血管リンパ管浸潤の存在)、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せ(「GECL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器の平均性能を表す。操作ポイントについて、特異度(SEeqSP)に等しい感度を使用する。
【0138】
表35は、1)遺伝子発現(「GE」、すなわちGDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1遺伝子シグネチャー)、2)臨床病理学的変数(「CL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ及び血管リンパ管浸潤の存在)、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せ(「GECL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器の平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.97に設定されたNPV(NPV97)を使用する。
【0139】
表36は、1)遺伝子発現(「GE」、すなわちGDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1遺伝子シグネチャー)、2)臨床病理学的変数(「CL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ及び血管リンパ管浸潤の存在)、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せ(「GECL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器の平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.98に設定されたNPV(NPV98)を使用する。
【0140】
Tステージ判定によって層別化される性能
表37は、臨床病理学的変数(「CL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ及び血管リンパ管浸潤の存在)について、DLCVでトレーニングされた分類器のTステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.97に設定されたNPV(NPV97)を使用する。
【0141】
表38は、遺伝子発現(「GE」、すなわちGDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器のTステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.97に設定されたNPV(NPV97)を使用する。
【0142】
表39は、遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せ(「GECL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器のTステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.97に設定されたNPV(NPV97)を使用する。
【0143】
表40は、臨床病理学的変数(「CL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ及び血管リンパ管浸潤の存在)について、DLCVでトレーニングされた分類器のTステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.98に設定されたNPV(NPV98)を使用する。
【0144】
表41は、遺伝子発現(「GE」、すなわちGDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器のTステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.98に設定されたNPV(NPV98)を使用する。
【0145】
表42は、遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せ(「GECL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器のTステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.98に設定されたNPV(NPV98)を使用する。
【0146】
臨床ステージ判定によって層別化される性能
表43は、臨床病理学的変数(「CL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ及び血管リンパ管浸潤の存在)について、DLCVでトレーニングされた分類器の臨床ステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.97に設定されたNPV(NPV97)を使用する。
【0147】
表44は、遺伝子発現(「GE」、すなわちGDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器の臨床ステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.97に設定されたNPV(NPV97)を使用する。
【0148】
表45は、遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せ(「GECL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器の臨床ステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.97に設定されたNPV(NPV97)を使用する。
【0149】
表46は、臨床病理学的変数(「CL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ及び血管リンパ管浸潤の存在)について、DLCVでトレーニングされた分類器の臨床ステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.98に設定されたNPV(NPV98)を使用する。
【0150】
表47は、遺伝子発現(「GE」、すなわちGDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、PRKCB、SERPINE2、ADAM12、LGALS1及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器の臨床ステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.98に設定されたNPV(NPV98)を使用する。
【0151】
表48は、遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せ(「GECL」、すなわち年齢、ブレスロー深さ、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1)について、DLCVでトレーニングされた分類器の臨床ステージによって層別化される平均性能を表す。操作ポイントについて、トレーニングで0.98に設定されたNPV(NPV98)を使用する。
【0152】
遺伝子サブセット
図8は、GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、ADIPOQ、SERPINE2及びTGFBR1から選択される2、3、4、5、6、7、8遺伝子のサブセットを用いて、全コホートでトレーニングされたロジスティック回帰分類器についてのROC曲線の曲線下面積(AUC)のボックスプロットを表す。
【0153】
表49は、各々シグネチャーの遺伝子の全数から選択可能な特定の次元のサブセットの数並びにROC曲線下の最小及び最大面積による性能を表す。
【0154】
実施例9:非センチネルリンパ節(N-SLN)プロファイラー。
非センチネルリンパ節(N-SLN)の除去を伴う完全リンパ節郭清(CLND)は、陽性センチネルリンパ節(SLN)を有する臨床的節陰性メラノーマ患者のための標準であった。SLN生検及びその直後のCLNDは、局所疾患管理を改善し、ランダム化臨床試験は、より小体積のSLN陽性疾患の早期手術が節再燃時の手術よりも少ない長期後遺症(例えば、リンパ浮腫)をもたらすことを示した。さらに、SLN及びN-SLN転移は、アジュバント療法のための患者を選択するために使用される予後不良因子である。しかしながら、MSLT-IIに登録された患者では、CLNDによって延命効果が得られず、SLN手術単独よりも高い合併症率を有する。CLNDのための患者選択を改善するために、CLNDが奏効する可能性の高い患者、すなわちN-SLNへの局所転移のリスクのある者を同定する新しい方法が必要である。ここで、N-SLNのステータス、すなわち転移の存在又は不在を予測するために、本発明者らは、遺伝子発現(KRT14、SPP1、FN1及びLOXL3)、臨床病理学的変数(年齢、陽性SLNの数、SLNの最大寸法、最大ブレスロー深さ及び最大有糸分裂速度)並びにその両方に基づいて3つの分類器を設計する。これらの分類器は、いずれの患者がCLND手順を受けるべきかを選択するために使用され得る。
【0155】
使用された方法は、実施例1に示されるものとほぼ同一であった。同一の29遺伝子が評価された。遺伝子発現に基づくロジスティック回帰分類器モデルのパラメーターは、以下の通りである。
【0156】
【表8】
【0157】
モデルの性能
全コホート中の患者数は、140名であった。
【0158】
表11は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0159】
表12は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0160】
【表9】
【0161】
表13は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、全140名の患者コホート分類器でトレーニングされた最終分類器の性能を表す。
【0162】
表14は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0163】
【表10】
【0164】
遺伝子発現に基づくロジスティック分類器モデルのパラメーター。
表15は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、全140名の患者コホート分類器でトレーニングされた最終分類器の性能を表す。
【0165】
表16は、4つの異なる操作ポイント:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV、4)LRNn025、トレーニングで0.25に設定された陰性試験結果の対数尤度比について、100回の繰返しで平均されたDLCVでトレーニングされた分類器の性能を表す。
【0166】
図4は、1)遺伝子発現、2)臨床病理学的変数、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされたロジスティック回帰分類器の平均ROC曲線を表す。x軸は、偽陽性発見率(すなわち1-特異度)を表し、y軸は、真発見率(すなわち感度)を表す。
【0167】
図5:異なる遺伝子のサブセット及び4つの遺伝子のフルセットについてのROC曲線下面積のボックスプロット。
【0168】
表17は、1)遺伝子発現、2)臨床病理学的変数、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされた分類器の平均性能を表す。3つの異なる操作ポイントが考慮された:1)max bACC:最大バランス確度、2)SEeqSP、特異度に等しい感度、3)NPV97、トレーニングで0.97に設定されたNPV。
【0169】
N-SLNプロファイラーシグネチャーは、4つの遺伝子:KRT14、SPP1、FN1及びLOXL3を含む。本発明者らは、2つ、3つ及び4つの遺伝子のすべての可能なサブセットも同様に調べた。
【0170】
【表11】
【0171】
本発明者らは、ROC曲線下面積に関して性能を評価した(表及び図を参照されたい)。
【0172】
【表12】
【0173】
図5は、異なる遺伝子サブセット及び4つの遺伝子のフルセットについてのROC曲線下面積のボックスプロットを示す。
【0174】
本発明者らは、N-SLNプロファイラーの探索、設計及び開発を記載する。本発明者らは、いずれの患者がCLND手順を受けるべきかを選択するためにN-SLNプロファイラーが使用され得ることを示した。
【0175】
現在のところ、(i)CLND手順が奏効すると思われる患者の選択に利用可能な方法が存在しないうえに、(ii)分類器によって使用される臨床病理学的変数が常に利用可能とは限らないため、遺伝子発現に基づく分類器の性能は、興味深い。
【0176】
実施例10
ブレスロー深さ(BD≦2対BD>2)に基づく事前選択
ブレスロー深さ(BD)は、原発皮膚メラノーマを特徴付ける重要な臨床病理学的変数であり、薄いメラノーマ(BD≦2mm)は、厚いメラノーマ(BD>2mm)と比較して分子的及び生理学的に異なる特性を有し得ることが知られている。したがって、薄い及び厚いメラノーマについて2つの異なる操作ポイントを選択することが合理的であろう。ブレスロー深さ≦2mmを有する薄いメラノーマ(561サンプルのコホート)では、本発明者らは、NPVがトレーニングで0.97であるように選択される操作ポイントを用いて、前のセクション(7.8)に記載の分類器の使用を継続した。
【0177】
表18aは、1)遺伝子発現、2)臨床病理学的変数、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされた分類器の平均性能を表す。選択される操作ポイントは、NPV97、すなわちトレーニングで0.97に設定されたNPVである。
【0178】
BD>2mmを有する厚いメラノーマ(209サンプルのコホート)では、本発明者らは、同一の分類器を使用するが、異なる操作ポイント、すなわちバランス確度を最大化するように選択されるポイントを使用する。
【0179】
表18bは、1)遺伝子発現、2)臨床病理学的変数、3)遺伝子発現と臨床病理学的変数との組合せについて、DLCVでトレーニングされた分類器の平均性能を表す。選択される操作ポイントは、バランス確度を最大化するように選択された。
【0180】
ブレスロー深さ>2についての性能は、ブレスロー深さ≦2mmについての性能よりも劣っているが、依然として許容できる。なぜなら、分類器は、35%のSLNB陽性の事前確率を有するサブ集団で90%のNPVを達成し、試験を受けて陰性アウトカムを有するとき、陽性SLNを有する確率は、35%から10%に低下するからである。
【0181】
対象がリンパ節陽性又はリンパ節陰性として分類されるかを決定する方法
分類方法の例として、仮想データ(表を参照されたい)を使用し、簡単にするために2つの遺伝子を用いて、サンプルがリンパ節陽性又はリンパ節陰性としてラベルされるかを分類器によって予測する(方法/モデルは、SLNプロファイラー及びN-SLNプロファイラーの両方で同一であり、単にパラメーター及び遺伝子のアイデンティティー及び臨床変数が異なるのみである)。表は、2つの遺伝子(x,y)トイモデルのモデルパラメーターβ、β、β、仮想遺伝子発現データΔCt、推定対数オッズ比
【数3】

、推定確率p及びカットオフθ=0.19に基づく推定出力クラスラベルを記載する。対数オッズ比及び確率は、式1に基づいて計算され、且つ確率は、式2を用いて計算される。出力ラベルは、推定確率とカットオフθとを比較することによって割り当てられる:推定確率がθ以上である場合、サンプルは、節陽性として分類され、推定確率がθ未満である場合、サンプルは、節陰性として分類される。
【0182】
【表13】
【0183】
表。モデルパラメーターβ、β、β遺伝子x、yの遺伝子発現データΔC、推定対数オッズ比
【数4】

、推定確率p及びカットオフθ=0.19に基づく推定出力クラス。
【数5】
【0184】
実施例11
実施例8で実施された解析と同じように、8つの遺伝子並びに2つの臨床病理学的変数(年齢及びブレスロー深さ)を利用し、以下の遺伝子セット:GDF15、MLANA、PLAT、IL8、ITGB3、LOXL4、SERPINE2及びTGFBR1を含む、本発明の好ましい実施形態が見出された。ロジスティック回帰モデルのパラメーターは、以下に提供される通りである。
【0185】
【表14】
【0186】
様々な操作ポイントが評価され、複数の操作ポイントは、高いNPV及びSLNB手順数の大幅な低減(SLNB.RR=SLNB低減率)を伴って臨床関連分類器を提供することが明らかにされた。0.116のNPV975操作ポイントは、特に好ましい(以下の表を参照されたい)。
【0187】
【表15】
【0188】
8つの遺伝子及び2つの臨床病理学的変数を用いるGECLモデルと、実施例1及び8のものとの性能比較により、発現のみ(GE)又は臨床病理学的のみ(CL)のモデルよりも優れた性能を示し(NPV及びSLNB.RR)、実施例1のGECLモデルに非常に類似した性能を示すことが示唆される。
【0189】
RFS、DRFS及びMSSに関して、SLNBを交えてGECLモデルを評価するために、カプラン・マイヤー解析を実施した。5年/60ヵ月生存率を以下の表に報告する。GECL及びSLNBの両方は、個別に陽性/陰性群間に大きい分離を有する。より重要なことに、GECLで陽性と同定されたSLNB陰性(それ自体見落としである)の患者は、非常に生存不良である。このことから、予後マーカーとしてのGECLモデルの臨床的意義が実証される。
【0190】
【表16】
【0191】
【表17】
【0192】
【表18】
【0193】
【表19】
【0194】
【表20】
【0195】
【表21】
【0196】
【表22】
【0197】
【表23】
【0198】
【表24】
【0199】
【表25】
【0200】
【表26】
【0201】
【表27】
【0202】
【表28】
【0203】
【表29】
【0204】
【表30】
【0205】
【表31】
【0206】
【表32】
【0207】
【表33】
【0208】
【表34】
【0209】
【表35】
【0210】
【表36】
【0211】
【表37】
【0212】
【表38】
【0213】
【表39】
【0214】
【表40】
【0215】
【表41】
【0216】
【表42】
【0217】
【表43】
【0218】
【表44】
【0219】
【表45】
【0220】
【表46】
【0221】
【表47】
【0222】
【表48】
【0223】
【表49】
【0224】
【表50】
【0225】
【表51】
【0226】
【表52】
【0227】
【表53】
【0228】
【表54】
【0229】
【表55】
【0230】
【表56】
【0231】
【表57】
【0232】
【表58】
【0233】
【表59】
【0234】
【表60】
【0235】
【表61】
【0236】
【表62】
【0237】
【表63】
【0238】
【表64】
【0239】
【表65】
【0240】
【表66】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8