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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】乗りかご上の作業者検知システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022028688
(22)【出願日】2022-02-25
(65)【公開番号】P2023124724
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三之宮 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
(72)【発明者】
【氏名】東田 一夫
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-196428(JP,A)
【文献】特開2017-141081(JP,A)
【文献】特開2021-080076(JP,A)
【文献】国際公開第2009/073001(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0088691(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの乗りかご上の作業者を検知する乗りかご上作業者検知システムにおいて、
前記乗りかご上に設定された作業領域のうち一部の作業領域を検知範囲として、前記検知範囲内に存在する作業者を検知する作業者検知部と、
前記作業者検知部を駆動して前記検知範囲を可変に調整する検知範囲駆動部と、
前記エレベーターの昇降路内に配置された複数の機器の各々の設置高さ位置と前記各機器の設置高さ位置に対応した前記検知範囲の中心を示す検知方向とを含む機器配置情報を格納する機器配置情報保存部と、
前記エレベーターの昇降路内における前記乗りかごの位置を検出して乗りかご位置情報を生成する乗りかご位置検出部と、
前記乗りかご位置検出部の生成による前記乗りかご位置情報と前記機器配置情報保存部に保存された前記機器配置情報とを照合し、当該照合結果を基に前記乗りかごの位置における前記検知方向を特定し、特定した前記検知方向を前記検知範囲駆動部の目標値として前記検知範囲駆動部の駆動を制御する制御部と、を備え、
前記検知範囲駆動部は、
前記作業者検知部を、その光軸が前記検知方向となる向きに駆動することを特徴とする乗りかご上作業者検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の乗りかご上作業者検知システムにおいて、
前記作業者検知部の検知結果を基に、前記作業者の身体が前記作業領域からはみ出しているか否かを判定し、当該判定結果を前記制御部に出力する判定部と、
前記制御部から報知指令を受けたことを条件に前記乗りかご上の前記作業者に対する警告を行う報知部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記作業者の身体が前記作業領域からはみ出しているとの判定結果を得た場合、前記エレベーターの停止措置を示すエレベーター停止措置情報を入力していないことを条件に、前記報知部に前記報知指令を出力することを特徴とする乗りかご上作業者検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかご上の作業者検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターは、昇降路の上端や下端に設置された巻上機に主ロープを掛けると共に、この主ロープの一端側に乗りかごを、他端側に釣合いおもりをそれぞれ吊り下げ、巻上機を駆動して主ロープを巻き上げることにより、乗りかごと釣合いおもりが昇降路内を釣瓶式に昇降するように構成されている。
【0003】
このような構成のエレベーターにおいて、定期検査や保守等の点検作業においては、作業者が乗かごの上面に乗り、乗りかごを昇降させることで、昇降路内に設置された機器にアクセスして実施する必要がある。
【0004】
昇降路内に設置された各機器を点検する場合、計測作業者は、乗りかご上手すりから手や頭をはみ出した状態で、各機器に直接触れながら作業を実施している。この際、エレベーターの主電源遮断や安全スイッチの投入などの停止措置が講じられていない場合、他の作業者等が不注意で乗りかごを操作すると、作業者の意図しない、乗りかごの昇降により、作業者に危険が及ぶ恐れがある。
【0005】
また、作業者が乗りかご上に乗って乗りかごを昇降している際に、作業者の不注意によって乗りかご上手すりから身体をはみ出している場合においても、作業者に危険が及ぶ恐れがある。
【0006】
そこで、昇降路内における保守点検作業が正しく行われているかを判定し、乗りかご上で作業する作業者の位置と体勢とを把握する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-141081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された技術では、作業者の位置と体勢とから、予め保存された正規作業情報と照合して良否判定している。
【0009】
しかし、特許文献1に記載された従来技術は、作業者を検知する手段として想定されるカメラや赤外線センサーの検出範囲において、1つの検出手段で乗りかご上の作業者を死角なく検出し、かつ作業者の位置と体勢とを精度よく検出することは困難である。
【0010】
例えば、エレベーターの昇降路内の点検作業時には、点検対象の機器は、昇降路の壁面四方向にそれぞれ配置され、かつ高さ方向によっても異なる。このような構成のエレベーターにおいて、検出装置を複数備えることで作業者の検出精度を上げることは可能であるが、構成が複雑になり、かつコストが増加する課題がある。
【0011】
本発明の目的は、乗りかご上の作業領域の一部に対応した検知範囲を、乗りかごの位置に応じて可変に調整し、作業領域における作業者を検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、エレベーターの乗りかご上の作業者を検知する乗りかご上作業者検知システムにおいて、前記乗りかご上に設定された作業領域のうち一部の作業領域を検知範囲として、前記検知範囲内に存在する作業者を検知する作業者検知部と、前記作業者検知部を駆動して前記検知範囲を可変に調整する検知範囲駆動部と、前記エレベーターの昇降路内に配置された複数の機器の各々の設置高さ位置と前記各機器の設置高さ位置に対応した前記検知範囲の中心を示す検知方向とを含む機器配置情報を格納する機器配置情報保存部と、前記エレベーターの昇降路内における前記乗りかごの位置を検出して乗りかご位置情報を生成する乗りかご位置検出部と、前記乗りかご位置検出部の生成による前記乗りかご位置情報と前記機器配置情報保存部に保存された前記機器配置情報とを照合し、当該照合結果を基に前記乗りかごの位置における前記検知方向を特定し、特定した前記検知方向を前記検知範囲駆動部の目標値として前記検知範囲駆動部の駆動を制御する制御部と、を備え、前記検知範囲駆動部は、前記作業者検知部を、その光軸が前記検知方向となる向きに駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乗りかご上の作業領域の一部に対応した検知範囲を、乗りかごの位置に応じて可変に調整し、作業領域における作業者を検知することができる。
【0014】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの主要部を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムの構成例を示す構成図である。
図3】本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムの機器配置情報保存部に記憶された機器配置情報テーブルのデータ構成例を示す構成図である。
図4】本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの最上階における上面図である。
図5】本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの頂部における上面図である。
図6】本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの最上階における上面図である。
図7】本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの中間階における上面図である。
図8】本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの途中階における上面図である。
図9】本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターにおける処理を説明するためのフローチャートの一例である。
図10】本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムの作業不履行検知の処理を説明するためのフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態である実施例を、添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの主要部を示す概略構成図である。図1において、エレベーター1は、一般的なロープ方式の機械室レスエレベーターである。このエレベーター1は、建物に設置された昇降路2内において、主ロープ3を介して接続された乗りかご4と釣合いおもり5が、巻上機6の駆動力によって昇降移動するものである。昇降路2内は、頂部2a、最上階2b、途中階2c、中間階2d、途中階2c、底部2eに分けられている。昇降路2内には、乗りかご4と釣合いおもり5が、主ロープ3を介して昇降自在に配置されている。巻上機6は、昇降路2内の頂部2aに設置されており、その駆動は、最上階2bに設置された制御装置9によって制御される。巻上機6の駆動が停止する際、巻上機6には、制動装置13a、13bによる制動力が付与される。主ロープ3は、その両端部のうち一方の主ロープ端部7aが頂上梁7aに固定され、他方の主ロープ端部7bが頂上梁7bに固定され、主ロープ端部7aと主ロープ端部7bとを結ぶ連結部が、釣合いおもり5を経由して巻上機6に巻回された後、乗りかご4の下部を通る経路で配置されている。
【0018】
昇降路2内には、釣合いおもり5を、乗りかご4の昇降方向(鉛直方向)に沿って案内する一対の釣合いおもり用ガイドレール(図示せず)と、乗りかご4を、乗りかご4の昇降方向(鉛直方向)に沿って案内する一対の乗りかご用ガイドレール(図示せず)が配置される。
【0019】
なお、以下の説明では、乗りかご4の奥行方向をx軸、乗りかご4の幅方向をy軸、乗りかご4の昇降方向をz軸とする座標系を用いる。
【0020】
昇降路2内の頂部2aには、調速機10が設置され、昇降路2内の底部2eには、調速機おもり11が設置されている。調速機10には、乗りかご4と連結された環状の調速機ロープ12が調速機おもり11を経由して巻き掛けられている。調速機ロープ12は、その一端が乗りかご上(乗りかご上面)4aに連結され、その他端が乗りかご4の底部に連結され、全体として環状に形成されている。調速機ロープ12は、乗りかご4の昇降移動に伴って移動する。この調速機ロープ12の移動により、乗りかご4の昇降移動と連動して調速機10が回転する。調速機10に設置された乗りかご位置検出装置10aは、調速機10の回転を測定することで、乗りかご4のz軸方向の位置と速度を検出する。
【0021】
昇降路2内には、調速機10や乗りかご位置検出装置10a等を含む各機器がそれぞれ四方向に分散して設置されている。このため、作業者は、各機器を点検する際には、乗りかご4の上面である乗りかご上4aに乗り、乗りかご上4aを作業足場(作業領域)として使用することで、昇降路2内の各機器にアクセスする。この際、作業者は、乗りかご4内の操作盤17を操作して、運転モードを通常モードから作業モードに切替えた後に、各階の乗り場14に設けられた乗り場ドア15を開いて開口部を形成し、その開口部から乗りかご上4aに乗り込む。乗りかご上4aには、乗りかご上手すり(図1には図示なし)が、乗りかご上4aの縁に沿って設けられている。この乗りかご上手すりは、作業者の昇降路2内への落下防止となる枠であって、作業者の安全な作業範囲を示している。また、乗りかご上4aにおいて、作業者は、昇降路2内のz軸方向(昇降方向)に異なる位置に設置された各機器にアクセスするために、各機器の位置に応じて、乗りかご上制御装置16を操作することで、乗りかご4の昇降移動を行う。乗りかご4の昇降を制御する乗りかご上制御装置16の上部には、作業者の位置を検知するための作業者検知装置102が配置される。
【0022】
なお、昇降路2内の底部2eは、乗りかご4の最低停止位置より下方であるため、乗りかご上4aを作業足場として使用しない。したがって本実施例では、昇降路2内の頂部2a、最上階2b、途中階2c、中間階2dにおける各機器を、点検作業の対象とする。
【0023】
図2は、本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムの構成例を示す構成図である。図2において、乗りかご上作業者検知システム101は、エレベーター1の制御系機器1aと作業者検知装置102を備える。制御系機器1aは、エレベーター1の全体制御を行う制御装置9と、乗りかご4のz軸方向の位置と速度を検出し、乗りかご4のz軸方向の位置と速度を含む乗りかご位置情報を制御装置9に送信する乗りかご位置検出装置10aと、作業者の操作に応答して運転モード情報を生成する操作盤17と、制御装置9から送信された乗りかご位置情報及び操作盤17から送信された運転モード情報を受信し、受信した乗りかご位置情報及び運転モード情報を作業者検知装置102へ伝達する乗りかご上制御装置16と、を備える。この際、乗りかご位置検出装置10aは、エレベーター1の昇降路内における乗りかご4の位置を検出して乗りかご位置情報を生成する乗りかご位置検出部として機能する。
【0024】
作業者検知装置102は、制御部103と、作業者検知部104と、検知範囲駆動部105と、機器配置情報保存部106と、判定部107と、報知部108と、表示部109と、を備える。制御部103は、乗りかご上制御装置16と情報の送受信を行い、作業者検知装置102全体を統括制御する。作業者検知部104は、乗りかご上制御装置16の上に配置されて、x軸、y軸、及びz軸のうち少なくともz方向に沿って配置される駆動軸(図示せず)に取り付けられる。作業者検知部104は、駆動軸の回転により、例えば、その光軸が、駆動軸を基準にx-y平面上を180度変化し、乗りかご上4aの作業領域のうち一部の領域を検知範囲として、検知範囲内に存在する検知対象、例えば、作業者を検出し、作業者情報を出力する。
【0025】
機器配置情報保存部106は、昇降路2内に配置された各機器の配置に関する機器配置情報を保存する。例えば、機器配置情報保存部106は、各機器の設置高さ位置と各機器の設置高さ位置に対応した検知範囲の中心を示す検知方向とを含む機器配置情報を格納する。検知範囲駆動部105は、制御部103からの制御信号を基に作業者検知部104の駆動軸を回転駆動して、作業者検知部104の検知範囲を可変に調整する。すなわち、検知範囲駆動部105は、作業者検知部104の光軸を点検対象機器方向に向けるように、作業者検知部104の駆動軸を回転駆動する。
【0026】
この際、制御部103は、乗りかご上制御装置16から受信した乗りかご位置情報と、機器配置情報保存部106に保存された機器配置情報とを照合し、照合結果に従って制御信号を生成し、生成した制御信号を基に検知範囲駆動部105を駆動して作業者検知部104を点検対象機器方向へ向ける。例えば、制御部103は、乗りかご位置情報と機器配置情報とを照合し、照合結果を基に乗りかごの位置における検知方向を特定し、特定した検知方向を検知範囲駆動部105の目標値として検知範囲駆動部105の駆動を制御する。
【0027】
判定部107は、作業者検知部104で検知された作業者情報を基に乗りかご上手すりから作業者の身体がはみ出しているか否かを判定し、判定結果を制御部103に送信する。報知部108は、判定部107で身体乗り出し有と判定され、且つ乗りかご4の停止措置が取られていない場合に、作業者に警告を行う。表示部109は、制御部103の処理内容や処理結果を示す情報を画面上に表示する。
【0028】
作業者検知部104は、作業者の人体検知を行う装置である。例えばデジタルカメラ等の撮像手段や、人感センサーとしての赤外線センサー等であってもよいし、これらを組み合わせたもので実現してもよい。
【0029】
検知範囲駆動部105は、作業者検知部104の駆動軸を回転駆動して、作業者検知部104の光軸を、作業者を検知すべき方向へと向ける装置である。例えばサーボモータ等である。
【0030】
機器配置情報保存部106は、昇降路2内における各機器の配置情報を記憶する装置である。例えばHDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等である。
【0031】
制御部103および判定部107は、演算処理を行う装置である。例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等で構成される。
【0032】
報知部108は、判定部107で作業者の不安全行動や作業不履行が判定され、制御部103から報知指令を受けたことを条件に、作業者へ警告を行う装置である。例えば、スピーカーやブザー等である。
【0033】
表示部109は、判定部107の判定結果を制御部103から取り込み、判定部107の判定結果を表示する画面表示装置である。例えば、液晶モニタで構成される。
【0034】
さらに、乗りかご上作業者検知システム101を補完するものとして、計画作業DB202と作業履歴DB203が、ネットワーク201を介して乗りかご上作業者検知システム101に接続される。計画作業DB202は、作業者の点検作業の計画を示す情報(作業計画情報)を記録する。作業履歴DB203は、判定部107での作業者の身体乗り出し等の不安全行動や後述する作業不履行の結果等、作業者の作業履歴を示す情報を記録する。乗りかご上作業者検知システム101は、ネットワーク201を介して計画作業DB202及び業履歴DB203と通信を行う。
【0035】
図3は、本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムの機器配置情報保存部に記憶された機器配置情報テーブルのデータ構成例を示す構成図である。図3において、機器配置情報テーブル301は、機器配置情報を管理するテーブルであって、エレベーター1の型式情報ごとに分かれて機器配置情報保存部106に格納される。各機器配置情報テーブル301は、機器単位で割り振られた管理番号302、昇降路2内に配置された各機器を記述した機器303と、その機器が設置されているz軸方向の高さ位置である機器設置高さ位置304と、機器が設置されている昇降路2内の平面位置を昇降路2の壁面位置で示した機器設置平面位置305と、その機器が作業対象となる作業項目を記述した対象計画作業306と、作業項目に応じて作業者検知部104の光軸の方向(検知範囲の中心を示す検知方向)を3軸(X、Y、Z)の座標で示した重点センシング座標307と、から構成される。
【0036】
管理番号302には、機器単位で割り振られた数字の情報が格納される。機器303には、昇降路2内に配置された各機器の名称、例えば、「巻上機」の情報が格納される。機器設置高さ位置304には、基準階(底部2eと途中階2cとの間の最下階)の床を基準とした、z軸方向の高さ位置を示す数値の情報が格納される。なお、機器設置高さ位置304に、z軸方向の高さ位置を示す情報として、頂部2a、最上階2b、途中階2c、中間階2dをそれぞれ示す情報を格納することもできる。例えば、巻上機6が頂部2aに配置される場合、巻上機6に対応した機器設置高さ位置304に、「頂部」の情報を格納することができる。
【0037】
機器設置平面位置305には、機器が設置されている昇降路2内の平面位置として、例えば、機器が、乗り場ドアから見て左側の領域に配置されている場合、「左側面」の情報が格納される。対象計画作業306には、機器が作業対象となる作業項目として、例えば、全ての機器が作業対象となる場合には、「A」の情報が格納される。重点センシング座標307には、作業者検知部104の光軸を点検対象機器に向けるときの、駆動軸の回転位置を示す3軸(X、Y、Z)の座標に関する情報が格納される。
【0038】
制御部103は、乗りかご上制御装置16から受信した乗りかご位置情報と機器配置情報保存部106に格納された機器設置高さ位置304とを照合して、該当する機器を点検対象機器として特定し、特定した点検対象機器に紐づいた重点センシング座標307を基に検知範囲駆動部105を駆動させることで、重点センシング位置へ作業者検知部104の光軸を向ける。
【0039】
図4は、本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの最上階における上面図である。図4において、エレベーター1の乗りかご上4aには、乗りかご上4aの三つの縁に沿って乗りかご上手すり20が配置されている。乗りかご上4aのうち乗りかご上手すり20で囲まれた領域が、作業者21の作業領域となる。また、乗りかご上4aのうち乗り場ドア15側には、乗りかご上制御装置16と作業者検知装置102が配置されている。作業者検知装置102に属する作業者検知部104には、作業者21の作業領域の一部が検知範囲22に設定される。例えば、作業者21の作業領域を、破線で示す対角線で二つの作業領域に分けてときに、左側の作業領域が検知範囲22に設定される。
【0040】
乗りかご4が最上階2bに位置する場合、昇降路2の壁面と乗りかご上手すり20との間の領域(機器配置領域)のうち、最上階2bの乗り場14に位置する作業者21から見て左側の領域には、釣合いおもり5のz軸方向への移動をガイドする釣合いおもり用ガイドレール18a、18bの一部と、乗りかご4のz軸方向への移動をガイドする乗りかご用ガイドレール19aの一部が配置され、右側の領域には、制御装置9と主ロープ端部8bが配置されると共に、乗りかご用ガイドレール19bの一部が配置される。最上階2bの乗り場14に位置する作業者21は、乗り場ドア15を開いて、乗りかご上4aに乗り込むことができる。
【0041】
図5は、本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの頂部における上面図である。図5において、乗りかご上4aには、乗りかご上制御装置16と作業者検知装置102が配置されている。乗りかご4が頂部2aに位置する場合、昇降路2の壁面と乗りかご上手すり20との間の領域(機器配置領域)のうち、頂部2aに位置する乗りかご上制御装置16から見て左側の領域には、釣合いおもり用ガイドレール18a、18bの一部と、乗りかご用ガイドレール19aの一部が配置され、さらに、巻上機6、主ローブ端部8a、調速機10、制動装置13a、13bが配置され、右側の領域には、乗りかご用ガイドレール19bの一部が配置される。
【0042】
乗りかご4が頂部2aに位置する場合、巻上機6、主ローブ端部8a、調速機10、制動装置13a、13bがそれぞれ作業者21の点検対象となるので、これら点検対象の機器設置高さ位置304と重点センシング座標307に関する情報が機器配置情報テーブル301に記録される。作業者検知装置102に属する作業者検知部104には、作業者21の作業領域の一部が検知範囲22に設定される。この際、頂部2aに位置する乗りかご上制御装置16から見て左側の領域に各点検対象が配置されているので、頂部2aに位置する作業者検知装置102に属する作業者検知部104から見て左側の領域が検知範囲22に設定される。
【0043】
図6は、本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの最上階における上面図である。図6において、乗りかご上4aには、乗りかご上制御装置16と作業者検知装置102が配置されている。乗りかご4が最上階2bに位置する場合、昇降路2の壁面と乗りかご上手すり20との間の領域のうち、最上階2bに位置する乗りかご上制御装置16から見て左側の領域には、釣合いおもり用ガイドレール18a、18bの一部と、乗りかご用ガイドレール19aの一部が配置され、右側の領域には、制御装置9、主ロープ端部8bが配置されると共に、乗りかご用ガイドレール19bの一部が配置される。
【0044】
乗りかご4が最上階2bに位置する場合、制御装置9、主ロープ端部8bがそれぞれ作業者21の点検対象となるので、これら点検対象の機器設置高さ位置304と重点センシング座標307に関する情報が機器配置情報テーブル301に記録される。作業者検知装置102に属する作業者検知部104には、作業者21の作業領域の一部が検知範囲22に設定される。この際、最上階2bに位置する乗りかご上制御装置16から見て右側の領域に各点検対象が配置されているので、最上階2bに位置する作業者検知装置102に属する作業者検知部104から見て右側の領域が検知範囲22に設定される。
【0045】
図7は、本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの中間階における上面図である。図7において、乗りかご上4aには、乗りかご上制御装置16と作業者検知装置102が配置されている。乗りかご4が中間階2dに位置する場合、昇降路2の壁面と乗りかご上手すり20との間の領域のうち、中間階2dに位置する乗りかご上制御装置16から見て左側の領域には、釣合いおもり5と、主ロープ3の一部と、釣合いおもり用ガイドレール18a、18bの一部と、乗りかご用ガイドレール19aの一部、及び調速機ロープ12の一部が配置され、右側の領域には、主ロープ3の一部と、乗りかご用ガイドレール19bの一部が配置される。
【0046】
乗りかご4が中間階2dに位置する場合、釣合いおもり5と、主ロープ3と、釣合いおもり用ガイドレール18a、18bと、乗りかご用ガイドレール19a、及び調速機ロープ12がそれぞれ作業者21の点検対象となるので、これら点検対象の機器設置高さ位置304と重点センシング座標307に関する情報が機器配置情報テーブル301に記録される。作業者検知装置102に属する作業者検知部104には、作業者21の作業領域の一部が検知範囲22に設定される。この際、中間階2dに位置する乗りかご上制御装置16から見て左側の領域に各点検対象が配置されているので、中間階2dに位置する作業者検知装置102に属する作業者検知部104から見て左側の領域が検知範囲22に設定される。
【0047】
図8は、本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターの途中階における上面図である。図8において、乗りかご上4aには、乗りかご上制御装置16と作業者検知装置102が配置されている。乗りかご4が途中階2cに位置する場合、昇降路2の壁面と乗りかご上手すり20との間の領域のうち、途中階2cに位置する乗りかご上制御装置16から見て左側の領域には、主ロープ3の一部と、釣合いおもり用ガイドレール18a、18bの一部と、乗りかご用ガイドレール19aの一部、調速機ロープ12の一部、及び乗場ドア15が配置され、右側の領域には、主ロープ3の一部と、乗りかご用ガイドレール19bの一部が配置される。
【0048】
乗りかご4が途中階2cに位置する場合、主ロープ3と、調速機ロープ12、及び乗場ドア15がそれぞれ作業者21の点検対象となるので、これら点検対象の機器設置高さ位置304と重点センシング座標307に関する情報が機器配置情報テーブル301に記録される。作業者検知装置102に属する作業者検知部104には、作業者21の作業領域の一部が検知範囲22に設定される。この際、途中階2cに位置する乗りかご上制御装置16から見て左側の領域に各点検対象が配置されているので、途中階2cに位置する作業者検知装置102に属する作業者検知部104から見て左側の領域が検知範囲22に設定される。
【0049】
なお、本実施例で示すエレベーター1の機器配置は一例であり、y軸方向に配置された機器がミラーリングしたり、釣合いおもり5が昇降路2内背面に設置されたりすることがある。
【0050】
図9は、本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムが配置されたエレベーターにおける処理を説明するためのフローチャートの一例である。図9において、作業者21は、計画された点検作業を実施するために、乗りかご4内の操作盤17を操作して、運転モードを通常モードから作業モードに切り替える。操作盤17で生成された運転モード情報は、乗りかご上制御装置16を経由して制御部103へ伝達される。
【0051】
制御部103は、運転モード情報を受信したことを条件に、受信した運転モード情報を判別し、運転モードが作業モードであるとの判別結果を得た場合、作業者検知部104を起動する(ステップS11)。
【0052】
作業者21が乗りかご上4aに乗り込む際は、必ず乗り場ドア15を通過するため、制御部103は、検知範囲駆動部105を駆動させて、図4に示すように、作業者検知部104の光軸を乗り場ドア15方向へ向け、作業者検知部104の検知範囲22を乗り場ドア15方向とする(ステップS12)。
【0053】
その後、作業者21は、乗り場ドア15を開いて開口部を形成し、開口部から乗りかご上4aに乗り込む。
【0054】
この際、作業者検知部104は、作業者21の位置や体勢を検知し、検知結果を作業者情報として判定部107へ伝送する(ステップS13)。
【0055】
乗りかご上4aに乗り込んだ作業者21は、乗りかご上制御装置16を操作して、点検作業を実施する機器が設置された高さに応じて乗りかご4を昇降運転する。
【0056】
乗りかご4が、図5に示す頂部2aに到達した場合、頂部2aの位置では、巻上機6や制動装置13a、13bや主ロープ端部8a、調速機10が点検対象であるため、本実施例におけるエレベーター1の機器配置においては、乗りかご上4aの左側の領域が作業領域となる。この際、乗りかご位置検出装置10aにより検出された乗りかご位置情報は、制御装置9及び乗りかご上制御装置16を経由して、作業者検知装置102内の制御部103へ伝達される(ステップS14)。
【0057】
制御部103は、伝達された乗りかご位置情報と、機器配置情報保存部106に保存された機器配置情報テーブル301に記録された機器配置情報と、を照合し、照合結果に従って検知範囲駆動部105を駆動させて、図5に示すように、作業者検知部104の光軸を乗りかご上4aの左側方向へ向ける(ステップS15)。
【0058】
作業者21は、頂部2aの位置では、頂部2aの位置において計画された点検作業を実施する。頂部2aの位置での点検作業が終了した後、作業者21は、乗りかご4を下降運転して、最上階2bの位置に停止させる。以降は、ステップS14からステップS15の処理を計画作業が完了するまで繰り返すため、昇降路2内の位置における要点を記載する。
【0059】
最上階2bの位置における点検対象は、制御装置9と主ロープ端部8bであり、本実施例におけるエレベーター1の機器配置においては、乗りかご上4aの右側の領域が作業領域となる。したがって、制御部103は、機器配置情報テーブル301に記録された情報のうち最上階2bの位置における情報を基に、検知範囲駆動部105を駆動させて、図6に示すように、作業者検知部104の光軸を乗りかご上4aの右側方向へ向ける(ステップS15)。
【0060】
中間階2dの位置においては、乗りかご4と釣合いおもり5の高さが同位置となるため、中間階2dの位置における点検対象は、釣合いおもり5の他、主ロープ3及び調速機ロープ12である。中間階2dの位置では、作業者21は、釣合いおもり5と、主ロープ3及び調速機ロープ12の点検作業を実施する。そのため、本実施例における機械室エレベーター1の機器配置においては、乗りかご上4aの左側の領域が作業領域となる。したがって、制御部103は、機器配置情報テーブル301に記録された情報のうち中間階2dの位置における情報を基に、検知範囲駆動部105を駆動させて、図7に示すように、作業者検知部104の光軸を乗りかご上4の左側方向へ向ける(ステップS15)。
【0061】
最上階2bから中間階2dに至る区間および乗りかご4が到達する最低位置に至る区間を説明上、途中階2cとする。途中階2cの位置での点検対象は、主ロープ3及び調速機ロープ12の他、各階の乗り場ドア15である。したがって、本実施例で示すエレベーター1の機器配置においては、乗りかご上4aの左手前側の領域が作業領域となるため、制御部103は、機器配置情報テーブル301に記録された情報のうち途中階2cの位置における情報を基に、検知範囲駆動部105を駆動させて、図8に示すように、作業者検知部104の光軸を乗りかご上4の左側方向へ向ける(ステップS15)。
【0062】
以上により、作業者21が計画された点検作業を実施し、点検作業が完了すると、作業者21は、乗りかご上4aから乗り場14へ移動するために、乗り場ドア15を開き、乗りかご上4aから降りて乗り場14へ移動する。この後、作業者21は、乗りかご4内の操作盤17を操作して運転モードを作業モードから通常モードに切り替える。
【0063】
操作盤17で生成された運転モード情報は、乗りかご上制御装置16を経由して制御部103へ伝達される。制御部103は、伝達された運転モード情報を判別し、運転モードが通常モードであるとの判別結果を得た場合、作業者検知部104の起動による作業者検知の処理を終了し(ステップS16)、その後、このルーチンでの処理を終了する。
【0064】
作業者21が乗りかご上4aに乗り込み、その後、乗りかご上4aから降りるまでの間、判定部107は、作業者検知部104より伝達された作業者情報を基に乗りかご上手すり20から身体はみ出し有か否かを判定する(ステップS17)。すなわち、判定部107は、作業者21の身体が乗りかご上手すり20からはみ出しているか否かを判定し、判定結果を制御部103に出力する。
【0065】
判定部107は、ステップS17で身体のはみ出し無の判定結果を得た場合には、作業者21の不安全行動はないとして、ステップS16の処理に移行する。
【0066】
一方、判定部107は、ステップS17で身体のはみ出し有の判定結果を得た場合には、エレベーター停止措置が有るか否かを判定する(ステップS18)。すなわち、判定部107は、制御装置9から乗りかご上制御装置16を経由して制御部103に伝達されるエレベーター停止措置情報を、制御部103から受信したか否かを判定する。
【0067】
このエレベーター停止措置情報とは、エレベーター1に備えられた、主電源の開閉器(図示せず)が作業者により遮断されたことを示す情報、或いは、安全停止装置(図示せず)が作業者により投入されたことを示す情報である。
【0068】
判定部107は、制御部103からエレベーター停止措置情報を受信していない場合、すなわち、エレベーター1の停止措置がとられていない場合には、不安全行動情報を生成し、生成した不安全行動情報を制御部103に転送する。不安全行動情報を受信した制御部103は、報知部108を駆動し、報知部108により作業者への警告が行われる(ステップS19)。
【0069】
制御部103は、停止指令を乗りかご上制御装置16を経由して制御装置9へ伝送する。停止指令を受信した制御装置9は、巻上機6の駆動指令を停止すると共に、制動装置13a,13bを動作させて、巻上機6に制動装置13a,13bの制動力を付与する(ステップS20)。
【0070】
以上の処理により、昇降路2内での各機器の点検作業において、乗りかご4のz軸方向の位置によって乗りかご上4aでの作業領域(位置)を特定して、重点的に検知すべき方向を特定し、その方向へ作業者検知装置102の検知範囲22を稼働させることで、乗りかご上4aの作業者21の検出精度を向上し、作業者21の安全をより一層向上させることが可能である。
【0071】
また、本実施例に係る乗りかご上作業者検知システム101では、計画作業DB202から取得した作業計画情報に含まれる点検対象機器に対する点検作業の履行(履歴)を管理することができる。
【0072】
図10は、本発明の実施例に係る乗りかご上作業者検知システムの作業不履行検知の処理を説明するためのフローチャートの一例である。図10において、作業者検知装置102の制御部103は、作業計画DB202からネットワーク201を介して、該当する作業計画情報を受信する(ステップS101)。
【0073】
制御部103は、受信した作業計画情報を基に点検対象機器を特定する(ステップS102)。
【0074】
制御部103は、機器配置情報保存部106に記録された機器配置情報テーブル301の機器配置情報と、乗りかご位置検出装置10aにより検出された乗りかご位置情報とを照合する。この際、制御部103は、機器配置情報テーブル301の機器配置情報のうち、ステップS102で特定した点検対象機器の機器配置情報と、乗りかご位置情報とを照合する。例えば、作業計画情報で、対象計画作業306が「B」であることを示している場合、ステップS102で特定した点検対象機器は、「巻上機」であるので、制御部103は、機器配置情報のうち「巻上機」の機器配置情報と、乗りかご位置情報とを照合し、照合結果を基に重点センシング座標307を、乗りかご4の位置に対応した点検対象機器の方向(作業者検知部104の光軸の方向)として算出する(ステップS103)。
【0075】
制御部103は、ステップS103で算出した点検対象機器の方向を目標値として、検知範囲駆動部105の駆動を制御し、ステップS103で算出した点検対象機器の方向に作業者検知部104の光軸を向ける(ステップS104)。
【0076】
次に、作業者21は、操作盤17を操作して、運転モードを作業モードから通常モードに切り替える(ステップS105)。
【0077】
この後、作業者21による作業が完了するまでの間、主に判定部107が、以下の処理を行う。
【0078】
まず、判定部107は、作業者検知部104の出力を取り込み、ステップS103で照合した点検対象機器の機器設置高さ位置304において、ステップS103で算出された方向(点検対象機器の方向)の検知範囲22内で、作業者検知部104が、作業者21を検知したか否かを判定する(ステップS106)。
【0079】
判定部107は、ステップS106で、作業者検知部104が、作業者21を検知したと判定した場合には、作業履行完了として判定し、判定結果を制御部103に出力する。作業履行完了の判定結果を受信した制御部103は、作業履行完了を示す作業履行完了情報を生成し、生成した作業履行完了情報を、ネットワーク201を経由して、作業履歴DB203に登録し(ステップS107)、その後、このルーチンでの処理を終了する。
【0080】
一方、判定部107は、ステップS106で、作業者検知部104が、作業者21を検知していないと判定した場合には、作業不履行として判定し、この判定結果を制御部103に転送する。作業不履行の判定結果を受信した制御部103は、報知部108に報知指令を出力して報知部108を駆動する。これにより、報知部108による作業者への警告が行われる(ステップS108)。
【0081】
この後、判定部107は、報知部108による警告回数が1回以下か否か、或いは内蔵した時計を参照して、現在の時間が、作業計画情報に登録された作業終了予定時間以内か否かを判定し(ステップS109)、警告回数が1回以下である場合、或いは現在の時間が、作業終了予定時間以内である場合には(Yes)、肯定の判定結果を制御部103に出力する。制御部103は、表示部109に対して警告を表示させる処理を実行し(ステップS110)、ステップS103の処理に戻る。この後、ステップS103~ステップS106の処理が繰り返される。
【0082】
一方、判定部107は、報知部108による警告回数が複数回である場合、或いは、現在の時間が、作業終了予定時間を超過し作業履行完了とならない場合には(No)、否定の判定結果を制御部103に出力する。否定の判定結果を受信した制御部103は、作業不履行を示す作業不履行情報を、ネットワーク201を経由して、作業履歴DB203に登録する(ステップS111)。
【0083】
また、制御部103は、作業不履行情報を、ネットワーク201を経由して、外部報知部(図示せず)に送信する。作業不履行情報を受信した外部報知部は、管理者(図示せず)に対して、作業不履行が生じた旨の通知を行い(ステップS111)、その後、このルーチンの処理を終了する。
【0084】
本実施例において作業不履行を検知する際には、制御部103は、作業計画DB202からネットワーク201を介して受信した作業計画情報と、対象計画作業307に記録された計画作業とを照合し、照合結果を基に点検対象機器を特定し、特定した点検対象機器に紐づいた重点センシング座標307を点検対象機器の方向(検知方向)として算出し、算出した点検対象機器の方向を目標値として、検知範囲駆動部105の駆動を制御し、算出した点検対象機器の方向に作業者検知部104の光軸を向ける制御を実行する。これにより、駆動軸が、重点センシング座標307の位置まで回転し、駆動軸の回転が停止した位置で作業者検知部104の光軸が位置決めされる。
【0085】
重点センシング座標307の指定方法は、検知範囲駆動部105の構成によって1軸における座標や2軸における座標として指定してもよく、また、座標の代わりに、駆動軸の角度として指定してもよい。
【0086】
本実施例によれば、乗りかご上の作業領域の一部に対応した検知範囲を、乗りかごの位置に応じて可変に調整し、作業領域における作業者を検知することができ、結果として、単一の作業者検知部でも作業領域における作業者を確実に検知することができ、構成の簡素化を図ることができる。また、本実施例によれば、作業者が作業領域からその身体がはみ出したときには警告するようにしているので、作業者に対する安全性の向上に寄与することができる。さらに、本実施例によれば、確実に点検作業を実施することが可能になり、点検作業漏れというヒューマンエラーの発生を防止することができる他、作業不履行による保全品質の低下を防止することができる。また、本実施例によれば、作業計画情報に含まれる点検対象機器に対する点検作業の履行(履歴)を管理することができる。
【0087】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。
【0088】
また、前述した各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0089】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)の記録媒体に格納することができる。
【符号の説明】
【0090】
1 エレベーター、2 昇降路、2a 頂部、2b 最上階、2c 途中階、2d 中間階、2e 底部、3 主ロープ、4 乗りかご、4a 乗りかご上、5 釣合いおもり、6 巻上機、9 制御装置、10 調速機、10a 乗りかご位置検出装置、16 乗りかご上制御装置、17 操作盤、20 乗りかご上手すり、21 作業者、22 検知範囲、101 乗りかご上作業者検知システム、102 作業者検知装置、103 制御部、104 作業者検知部、105 検知範囲駆動部、106 判定部、107 報知部、201 ネットワーク、202 作業計画DB、203 作業履歴DB、301 機器配置情報テーブル
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
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図10