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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】経皮吸収製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20250212BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20250212BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20250212BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250212BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A61K31/506
A61K9/70 401
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/18
A61K47/22
A61P25/22
A61P43/00 114
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022501956
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006052
(87)【国際公開番号】W WO2021166987
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020026337
(32)【優先日】2020-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020132798
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】一林 英里
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅康
(72)【発明者】
【氏名】池田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 智仁
(72)【発明者】
【氏名】田村 圭
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 海治
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-228414(JP,A)
【文献】国際公開第2010/016219(WO,A1)
【文献】特開2006-169238(JP,A)
【文献】特開平11-079979(JP,A)
【文献】特表2017-522285(JP,A)
【文献】特開2006-241179(JP,A)
【文献】国際公開第2017/037812(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/117886(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/044336(WO,A1)
【文献】特表2018-518502(JP,A)
【文献】Tandospirone,DRUGBANK,https://go.drugbank.com/drugs/DB12833
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 25/00-25/36
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮吸収層を有する経皮吸収製剤であって、該経皮吸収層が、
(i)タンドスピロン又はその薬学的に許容される塩
(ii)レブリン酸又はその薬学的に許容される塩、及び
(iii)多価アルコール脂肪酸エステル
を含有することを特徴とする経皮吸収製剤。
【請求項2】
貼付製剤の形態である、請求項1に記載の経皮吸収製剤。
【請求項3】
さらに前記経皮吸収層が、オレイン酸を含有する、請求項1又は2に記載の経皮吸収製剤。
【請求項4】
さらに前記経皮吸収層が、(iv)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、チオ硫酸ナトリウム、2-メルカプトベンゾイミダゾール、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項5】
(i)が、タンドスピロンである、請求項1~のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項6】
(ii)が、レブリン酸である、請求項1~のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項7】
(iv)が、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを含む、請求項のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項8】
(iv)が、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及びチオ硫酸ナトリウムを含む、請求項のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項9】
(iii)が、プロピレングリコール脂肪酸エステルである、請求項のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項10】
前記プロピレングリコール脂肪酸エステルが、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、又はそれらの組合せである、請求項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項11】
前記経皮吸収層が、さらに1価アルコール脂肪酸エステルを含有する、請求項1~1のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項12】
前記1価アルコール脂肪酸エステルが、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、又はそれらの組合せである、請求項1に記載の経皮吸収製剤。
【請求項13】
前記経皮吸収層100重量%中の(i)の含有量が、0.1~30重量%である、請求項1~1のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項14】
前記経皮吸収層100重量%中の(ii)の含有量が、0.1~20重量%である、請求項1~1のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項15】
前記経皮吸収層100重量%中の(ii)の含有量が、3~10重量%である、請求項1~1のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項16】
前記経皮吸収層100重量%中の(ii)の含有量が、6~7重量%である、請求項1~1のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項17】
前記経皮吸収層100重量%中の(iv)の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールの含有量が、0.001~10重量%である、請求項~1のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項18】
前記経皮吸収層100重量%中の(iv)のチオ硫酸ナトリウムの含有量が、無水物として0.001~7重量%である、請求項~1のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項19】
前記経皮吸収層100重量%中の(iv)の2-メルカプトベンゾイミダゾールの含有量が、0.001~5重量%である、請求項~1のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項20】
前記経皮吸収層100重量%中の(iv)の没食子酸プロピルの含有量が、0.001~7重量%である、請求項19のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項21】
前記経皮吸収層100重量%中の(iii)の多価アルコール脂肪酸エステルの含有量が、1~20重量%である、請求項~2のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【請求項22】
前記経皮吸収層が、粘着剤層であって、支持体の少なくとも片面に該粘着剤層を有する、請求項2~2のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンドスピロン又はその薬学的に許容される塩を含む経皮吸収製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
(1R,2S,3R,4S)-N-[4-[4-(ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-イル]ブチル]-2,3-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジカルボキシイミド(一般名「タンドスピロン」)は、選択的なセロトニン1A受容体アゴニストであり、日本ではタンドスピロンクエン酸塩錠(商品名:セディール(登録商標)錠)が抗不安薬として市販されている。
【0003】
特許文献1~3には、タンドスピロンを含有する経皮吸収製剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-228414号公報
【文献】WO2005/117886号公報
【文献】WO2008/044336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タンドスピロンの皮膚透過性が向上し、製剤の保存安定性に優れたタンドスピロン含有経皮吸収製剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、レブリン酸を配合することにより、タンドスピロンの皮膚透過性が向上することを見出し、これにより、タンドスピロン含有経皮吸収製剤の塗布量や散布量が少なくてよいこと、或いは製剤面積を小さくできることを可能にした。また、レブリン酸に特定の添加剤(iii)を併用することにより、タンドスピロンの皮膚透過性の向上において相乗効果が奏されることを見出した。
本発明者らは、さらに鋭意検討を加えた結果、特定の添加剤(iv)を配合することによって、タンドスピロンの皮膚透過性の向上を維持しつつ、安定性が良好な経皮吸収製剤が得られることを見出した。本発明は、この点においても優れる。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]
経皮吸収層を有する経皮吸収製剤であって、該経皮吸収層が、
(i)タンドスピロン又はその薬学的に許容される塩、及び
(ii)レブリン酸又はその薬学的に許容される塩
を含有することを特徴とする経皮吸収製剤(以下、「本発明の経皮吸収製剤」と称することもある。)。
[2]
貼付製剤の形態である、上記[1]に記載の経皮吸収製剤(以下、「本発明の貼付製剤」と称することもある。)。
[3]
さらに(iii)多価アルコール脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドからなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤を含有する、上記[1]又は[2]に記載の経皮吸収製剤。
[4]
さらに前記経皮吸収層が、オレイン酸を含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[5]
さらに(iv)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、チオ硫酸ナトリウム、2-メルカプトベンゾイミダゾール、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤を含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[6]
(i)が、タンドスピロンである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[7]
(ii)が、レブリン酸である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[8]
(iv)が、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを含む、上記[5]~[7]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[9]
(iv)が、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及びチオ硫酸ナトリウムを含む、上記[5]~[8]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[10]
(iii)が、多価アルコール脂肪酸エステルを含有する、上記[3]~[9]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[11]
(iii)が、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する、上記[3]~[10]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[12]
前記経皮吸収製剤が、さらに(v)1価アルコール脂肪酸エステルを含有する、上記[1]~[11]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[13]
前記(v)1価アルコール脂肪酸エステルが、ミリスチン酸イソプロピル及び/又はパルミチン酸イソプロピルである、上記[12]に記載の経皮吸収製剤。
[14]
前記経皮吸収層100重量%中の(i)の含有量が、0.1~30重量%である、上記[1]~[13]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[15]
前記経皮吸収層100重量%中の(ii)の含有量が、0.1~20重量%である、上記[1]~[14]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[16]
前記経皮吸収層100重量%中の(ii)の含有量が、3~10重量%である、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
[17]
前記経皮吸収層100重量%中の(ii)の含有量が、6~7重量%である、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の経皮吸収製剤。
[18]
前記経皮吸収層100重量%中の(iv)の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールの含有量が、0.001~10重量%である、上記[5]~[17]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[19]
前記経皮吸収層100重量%中の(iv)のチオ硫酸ナトリウムの含有量が、無水物として0.001~7重量%である、上記[5]~[18]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[20]
前記経皮吸収層100重量%中の(iv)の2-メルカプトベンゾイミダゾールの含有量が、0.001~5重量%である、上記[5]~[19]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[21]
前記経皮吸収層100重量%中の(iv)の没食子酸プロピルの含有量が、0.001~7重量%である、上記[5]~[20]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[22]
前記経皮吸収層100重量%中の(iii)の多価アルコール脂肪酸エステルの含有量が、1~20重量%である、上記[3]~[21]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[23]
前記経皮吸収製剤が、貼付製剤であり、経皮吸収層が、粘着剤層である、上記[2]~[22]のいずれかに記載の経皮吸収製剤。
[24]
前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーを含み、該粘着剤層中のアクリル系ポリマーと有機液状成分の合計の重量比が、1:2.33~1:0.25である、上記[23]に記載の経皮吸収製剤。
[25]
(i)タンドスピロン又はその薬学的に許容される塩、並びに非プロトン性極性溶媒、有機酸(レブリン酸及び酢酸を除く)、非イオン性界面活性剤及び高級アルコールエステルからなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤を含有することを特徴とする経皮吸収製剤。
[26]
有機酸が、オレイン酸である、上記[25]に記載の経皮吸収製剤。
[27]
(i)タンドスピロン又はその薬学的に許容される塩、並びに(iv)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、チオ硫酸ナトリウム、2-メルカプトベンゾイミダゾール、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤を含有することを特徴とする経皮吸収製剤。
[28]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、チオ硫酸ナトリウム、2-メルカプトベンゾイミダゾール、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、(i)タンドスピロン又はその薬学的に許容される塩、及び(ii)レブリン酸又はその薬学的に許容される塩を含む医薬を安定化するための組成物。
[29]
(ii)レブリン酸又はその薬学的に許容される塩、及び(iii)多価アルコール脂肪酸エステル又は脂肪酸アミドを含有する、(i)タンドスピロン又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性を向上させるための組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製剤中のタンドスピロン又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性に優れ、使用時はタンドスピロンの薬効が発揮されるのに十分な血中濃度が維持できるタンドスピロン含有経皮吸収製剤を提供することができる。さらに、製剤中のタンドスピロン又はその薬学的に許容される塩の熱、湿度及び光に対する保存安定性が良好であり、製造性や品質管理が容易なタンドスピロン含有経皮吸収製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明において、経皮吸収製剤の剤型としては、従来外用剤として使用されている剤型であれば特に限定されない。例えば、第十七改正日本薬局方に記載される剤型が挙げられ、好ましくは、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲル状クリーム剤、スプレー剤(例えば、外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤)、外用液剤(リニメント剤及びローション剤)及び貼付製剤であり、より好ましくは、軟膏剤又は貼付製剤であり、さらに好ましくは、貼付製剤である。
【0011】
貼付製剤とは、皮膚に貼り付けられる製剤全般を意味する。本発明において、貼付製剤の形状は限定されず、例えば、テープ状、シート状等であってもよい。貼付製剤の具体例としては、例えば、テープ製剤、パッチ製剤、パップ製剤、プラスター製剤等が挙げられる。
【0012】
一般に、貼付製剤は、支持体、粘着剤層、剥離フィルム(ライナー)による3層からなるシート状の構造を有する。支持体には、不織布、ニット、プラスチックフィルム等が用いられる。粘着剤層は、有効成分及び粘着剤を含有し、適度な粘着力を有する主要構成部分である。剥離フィルムは、使用前まで粘着剤層の貼付面を保護する被覆物であり、ポリプロピレン、ポリエチレン、セロファン、ポリエステル、剥離紙等が用いられる。通常、粘着剤層は、支持体と剥離フィルムに挟まれた構造で保管され、剥離フィルムを剥がして粘着剤層の貼付面を皮膚に貼り付けて使用する。
【0013】
本発明における経皮吸収層とは、皮膚に直接接触する部分の組成物を意味する。経皮吸収製剤が、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲル状クリーム剤、ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤又はリニメント剤の場合、経皮吸収層は、製剤組成物そのものである。経皮吸収層は、(i)タンドスピロン又はその薬学的に許容される塩を含有する。さらに、添加剤(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び/又はその他の添加剤を含有することができる。
経皮吸収製剤が貼付製剤の場合、経皮吸収層は粘着剤層を意味する。該粘着剤層には、(i)タンドスピロン又はその薬学的に許容される塩、及び粘着基剤を含有する。さらに、添加剤(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び/又はその他の添加剤を含有することができる。
【0014】
(有効成分薬物)
(i)本発明の経皮吸収製剤に含まれる有効成分薬物である、(1R,2S,3R,4S)-N-[4-[4-(ピリミジン-2-イル)ピペラジン-1-イル]ブチル]-2,3-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジカルボキシイミド(一般名「タンドスピロン」)は、下記式:
【0015】
【化1】
【0016】
で表される化合物(以下、「化合物A」と称することもある。)であり、選択的なセロトニン1A受容体アゴニストである。タンドスピロンのクエン酸塩は、抗不安薬(セディール(登録商標)錠)として市販されている。
【0017】
本発明の有効成分薬物は、化合物A(タンドスピロン遊離塩基)であってもよいし、その薬学的に許容される塩であってもよい。薬学的に許容される塩としては、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸との塩;塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸との塩等が挙げられる。また、化合物A又はその薬学的に許容される塩は、溶媒和物(例、水和物、エタノール溶媒和物、プロピレングリコール溶媒和物)又は非溶媒和物のいずれであってもよい。
【0018】
上記化合物A又はその薬学的に許容される塩は、例えば、特開昭58-126865号公報に記載の方法又はこれに準じる方法によって製造することができる。製造された化合物A又はその薬学的に許容される塩は、通常用いられる方法にて適宜粉砕化してもよい。
【0019】
本発明の経皮吸収製剤に配合される「化合物A又はその薬学的に許容される塩」の含有量は、投与される患者の年齢、症状等により設定する必要があるため、特に限定されないが、化合物A(タンドスピロンの遊離塩基)に換算して、経皮吸収層100重量%中、通常、約0.1~約30重量%程度であり、好ましくは、約0.1~約20重量%程度、より好ましくは、約0.1~約15重量%程度である。
経皮吸収製剤が貼付製剤の場合は、粘着剤層100重量%中、通常、約0.1~約30重量%程度であり、好ましくは、貼付製剤の面積にもよるが、約0.1~約20重量%程度、より好ましくは、約0.1~約15重量%程度である。さらに好ましくは、1~10重量%、さらにより好ましくは、2~8重量%である。
ここで、「化合物Aに換算して」とは、化合物Aが塩の形態をとっている場合、又は化合物Aが結晶水を有する場合に、当該塩又は結晶水相当量は、化合物Aの重量には含めないものとする。言い換えれば、化合物Aの塩又はその水和物について、それと等モルの化合物A(遊離塩基非水和物)の重量に置き換えて計算することを意味する。
【0020】
(レブリン酸)
本発明で使用されるレブリン酸は、ケト酸に分類される有機酸である。本発明で使用されるレブリン酸は、レブリン酸の遊離酸(すなわち、レブリン酸自体)であり、本発明で使用される添加剤(ii)は、レブリン酸の遊離酸(すなわち、レブリン酸自体)であってもよいし、その薬学的に許容される塩として提供されてもよい。薬学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられる。レブリン酸又はその薬学的に許容される塩としては、市販品をそのまま使用してもよいし、自体公知の方法に従い、レブリン酸から調製された、その薬学的に許容される塩を使用してもよい。本発明で使用される(ii)レブリン酸又はその薬学的に許容される塩としては、レブリン酸が好ましい。
【0021】
本発明の経皮吸収製剤において、経皮吸収層中のレブリン酸又はその薬学的に許容される塩の含有量が、少なすぎると薬物(すなわち、化合物A又はその薬学的に許容される塩)の皮膚透過性の促進効果が充分に得られない傾向を示したり、化合物A又はその薬学的に許容される塩の一部が製造中又は保管中に結晶状態になる傾向を示す。また、経皮吸収層中のレブリン酸又はその薬学的に許容される塩の含有量が、多すぎると皮膚刺激性が増大する傾向を示す。そのため、経皮吸収層中のレブリン酸又はその薬学的に許容される塩の含有量は、レブリン酸(レブリン酸の遊離酸)に換算して、経皮吸収層100重量%中、0.1~20重量%が好ましく、0.5~15重量%がより好ましく、1~10重量%がさらに好ましく、3~8重量%が最も好ましい。薬物の皮膚透過性促進の観点からは、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、3重量%以上であることがさらに好ましい。皮膚刺激性の観点からは、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。具体的には、経皮吸収層中のレブリン酸又はその薬学的に許容される塩の含有量は、レブリン酸(レブリン酸の遊離酸)に換算して、経皮吸収層100重量%中、下限値としては、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%を挙げることができ、上限値としては、20重量%、15重量%、10重量%、8重量%、7重量%を挙げることができる。
ここで、「レブリン酸に換算して」とは、レブリン酸が塩の形態をとっている場合に、当該塩相当量は、レブリン酸の重量には含めないものとする。言い換えれば、レブリン酸の塩について、それと等モルのレブリン酸(遊離酸)の重量に置き換えて計算することを意味する。
【0022】
経皮吸収製剤が貼付製剤の場合、「経皮吸収層」100重量%中のレブリン酸又はその薬学的に許容される塩の含有量は、「粘着剤層中」のレブリン酸又はその薬学的に許容される塩の含有量と読み替えることができる。
【0023】
(多価アルコール脂肪酸エステル及び脂肪酸アミド)
本発明において使用される添加剤(iii)は、多価アルコール脂肪酸エステル及び脂肪酸アミドからなる群から選択することができる。好ましくは、多価アルコール脂肪酸エステルから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ジエチレングリコール脂肪酸エステルが好ましく、グリセリン脂肪酸エステル及びプロピレングリコール脂肪酸エステルがより好ましく、プロピレングリコール脂肪酸エステルが特に好ましい。
脂肪酸アミドとしては、例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド等が挙げられる。
【0024】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセロールトリカプリレート、グリセロールカプレート、グリセロールトリアセテート、グリセリルモノカプリレート、グリセリルカプリレート、グリセリルオレエート、グリセリルステアレート、グリセロールモノリノレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールステアレート等が挙げられる。また、プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、プロピレングリコールジカプレート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプリレート等(好ましくは、プロピレングリコールモノラウレート及びプロピレングリコールモノカプリレートである。)が挙げられる。当該多価アルコール脂肪酸エステルは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明の経皮吸収製剤において、経皮吸収層中の多価アルコール脂肪酸エステル又は脂肪酸アミドの含有量は、特に限定されないが、経皮吸収層100重量%中、好ましくは、1~20重量%である。皮膚刺激性の観点から、経皮吸収層中の多価アルコール脂肪酸エステル又は脂肪酸アミドの含有量は、経皮吸収層100重量%中、より好ましくは、1~15重量%である。
具体的には、経皮吸収層中の多価アルコール脂肪酸エステル又は脂肪酸アミドの含有量は、経皮吸収層100重量%中、下限値としては、1重量%、1.5重量%、3重量%、5重量%を挙げることができ、上限値としては、20重量%、18重量%、15重量%、13重量%を挙げることができる。
【0026】
経皮吸収製剤が貼付製剤の場合、「経皮吸収層」100重量%中の多価アルコール脂肪酸エステル又は脂肪酸アミドの含有量は、「粘着剤層中」の多価アルコール脂肪酸エステル又は脂肪酸アミドの含有量と読み替えることができる。
【0027】
本発明で使用される(ii)レブリン酸、及び(iii)多価アルコール脂肪酸エステル又は脂肪酸アミドからなる添加剤成分を、以下、「添加剤A群」と称する。これらの「添加剤A群」の組み合わせにより、化合物A又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過促進効果が得られた。
【0028】
(安定化剤)
本発明において使用される添加剤(iv)(以下、「添加剤B群」と称することもある。)は、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、チオ硫酸ナトリウム、2-メルカプトベンゾイミダゾール、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムからなる群から選択することができる。添加剤B群は、好ましくは、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、チオ硫酸ナトリウム及び2-メルカプトベンゾイミダゾールから選択され、より好ましくは、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及びチオ硫酸ナトリウムから選択される。
また、製剤中の化合物A又はその薬学的に許容される塩の安定化効果は、添加剤B群に含まれる添加剤1種のみの添加でも得られるが、添加剤B群から選択される2種以上の添加剤を組合せて添加しても得られる。特に、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールと、チオ硫酸ナトリウム及び2-メルカプトベンゾイミダゾールから選択される2種以上の組合せは、製剤中の化合物Aの相乗的な安定化効果が得られるため好ましい。ここで、安定化効果とは、本発明の経皮吸収製剤中の化合物Aの熱、湿度及び/又は光に対する安定性(保存安定性)を向上させる効果を意味し、例えば、製剤の製造中或いは保管時に、40℃、50℃及び60℃で一定時間加温された時、一定時間加湿された時(25℃60%RH、40℃75%RH条件等)、一定時間曝光された時の化合物Aの含量低下を抑制する効果、類縁物質の生成を抑制する効果、製剤の変色を抑制する効果等が挙げられる。
【0029】
経皮吸収層中の添加剤B群の添加剤の含有量が少なすぎると、化合物A又はその薬学的に許容される塩の安定化効果が十分に得られない傾向を示し、また、多すぎると経皮吸収層中で添加剤B群の添加剤が、他の成分と分離して、貼付製剤の製造に支障をきたす。このため、経皮吸収層中の添加剤B群の添加剤の含有量は、経皮吸収層100重量%中、0.001~10重量%が好ましい。2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールの含有量は、経皮吸収層100重量%中、通常0.001~10重量%であり、0.005~10重量%が好ましく、0.01~10重量%がより好ましく、0.01~8重量%がさらに好ましい。チオ硫酸ナトリウムの含有量は、経皮吸収層100重量%中、通常0.001~7重量%であり、0.001~5重量%が好ましく、0.001~3重量%がより好ましく、0.001~2重量%がさらに好ましい。2-メルカプトベンゾイミダゾールの含有量は、経皮吸収層100重量%中、通常0.001~5重量%であり、0.05~5重量%が好ましく、0.1~5重量%がより好ましい。また、没食子酸プロピルの含有量は、経皮吸収層100重量%中、0.001~7重量%が好ましく、0.001~5重量%がより好ましい。また、添加剤B群の添加剤を組み合わせて用いる場合、添加剤B群から選択される2種以上の添加剤の合計含有量は、経皮吸収層100重量%中、0.002~15重量%が好ましく、0.005~10重量%がより好ましい。2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及びチオ硫酸ナトリウムを含む場合の合計含有量は、経皮吸収層100重量%中、0.002~10重量%が好ましく、0.002~8重量%がより好ましい。2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及び2-メルカプトベンゾイミダゾールの合計含有量は、経皮吸収層100重量%中、0.05~10重量%が好ましい。
これらの添加剤の組合せの含有比率として、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及びチオ硫酸ナトリウムの含有量比は、重量比で、1:0.001~1:1000が好ましく、1:0.005~1:500がより好ましく、1:0.01~1:50がさらに好ましい。2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及び2-メルカプトベンゾイミダゾールの含有量比は、重量比で、1:0.01~1:500が好ましく、1:0.1~1:100がより好ましく、1:0.5~1:50がさらに好ましい。
【0030】
経皮吸収製剤が貼付製剤の場合、「経皮吸収層」100重量%中の添加剤B群の含有量は、「粘着剤層中」の添加剤B群の含有量と読み替えることができる。
【0031】
(有機液状成分)
本発明の貼付製剤において、粘着剤層をより柔軟化し、貼付時及び/又は剥離時の物理的な皮膚刺激を低減する観点から、粘着剤層には、有機液状成分を含有することが好ましい。
【0032】
本発明の貼付製剤において、粘着剤層をより柔軟化し、貼付時及び/又は剥離時の物理的な皮膚刺激を低減する観点から、粘着剤層中の粘着基剤と有機液状成分の合計の含有量比は、重量比(粘着基剤:有機液状成分の合計の重量%比率)で、1:2.33~1:0.25が好ましく、製造性の観点から、より好ましくは、1:2.33~1:0.66である。また、粘着剤層中の粘着基剤の成分比率が大きくなることで粘着性が向上し、剥離時の皮膚刺激性も向上することから、皮膚接着力の観点からは、粘着基剤と有機液状成分の合計の含有量比は、より好ましくは、1:1.86~1:0.66であり、皮膚刺激性の観点からは、より好ましくは、1:1.86~1:1である。
【0033】
本発明の貼付製剤において、粘着剤層をより柔軟化し、貼付時及び/又は剥離時の物理的な皮膚刺激を低減する観点から、粘着剤層中のアクリル系ポリマーと有機液状成分の合計の含有量比は、重量比(アクリル系ポリマー体:有機液状成分の合計の重量%比率)で、1:2.33~1:0.25であることが好ましい。皮膚接着性の観点から、粘着剤層中のアクリル系ポリマーと有機液状成分の合計の含有量比(重量%比率)は、1:1.86~1:0.66であることが好ましい。
【0034】
本発明において、有機液状成分の合計の重量は、後述するように、25℃±5℃の範囲で「液体」、「液体(一部析出)」、「液状」、「油状」又は「軟ペースト状」に該当する成分の合計重量を意味する。後述する具体例を含む有機液状成分は、有機液状成分として計算される。
【0035】
本発明における有機液状成分とは、それ自体が室温(25℃)で液状であり、粘着剤層を可塑化する作用を示し、上記の粘着剤を構成する粘着性ポリマーと相溶する有機物質である。ここで、「液状」とは、製剤化において品質を損なうことがない程度に適宜温めて液体として用いることができればよく、25℃で液状のもののほか、一部析出がみとめられるものや一部固化したもの等も包含する意味で用いられる。例えば、後述する具体的な添加剤(市販品)の説明書において、25℃±5℃の範囲で、「Liquid」、「液体」、「液体(一部析出)」、「液状」、「油状」又は「軟ペースト状」と記載されるものは、本明細書における「液状」に含まれる。
【0036】
本発明において、有機液状成分の具体例としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、ラウリン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸オクチル、アジピン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、オレイン酸オレイル、エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸-2エチルヘキシル、酢酸-n-ブチル、セバシン酸ジエチル等の炭素数8~18(好ましくは、12~16)の脂肪酸と炭素数が1~18の1価アルコールとの脂肪酸エステル(以下、「C8~18(12~16)-C1~18脂肪酸エステル」とも略称する。);グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の炭素数8~18の脂肪酸と炭素数が1~18の多価アルコールとの脂肪酸エステル;ラウリン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸N-メチルエタノールアミド等の脂肪酸アミド;脂肪酸(例えば、カプリル酸(オクタン酸、C8)、カプロン酸、ペラルゴン酸(ノナン酸、C9)、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、レブリン酸、乳酸、オレイン酸等)、アルキルスルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ポリオキシエチレンエーテルスルホン酸等)等の有機酸;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;オリーブ油、ヒマシ油、ヤシ油、ゴマ油、スクアレン等の油脂類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、オレイルアルコール、ラウリン酸、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル、ラウリン酸デカグリセリル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(ラウロマクロゴール)、ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレエート、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、グリセロールモノオレエート、トコフェノール等の液状の界面活性剤;ゲル化炭化水素、流動パラフィン等の炭化水素類;公知の可塑剤;その他、エトキシ化ステアリルアルコール、グリセリン等が挙げられる。当該有機液状成分は、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。本発明における有機液状成分としては、好ましくは、C8~18(12~16)-C1~18脂肪酸エステルを含有し、特に好ましくは、ミリスチン酸イソプロピル又はパルミチン酸イソプロピルを含有する。
【0037】
(架橋剤)
本発明の貼付製剤においては、粘着剤層に架橋処理を施すことができる。当該架橋処理は、特に限定されず、化学的架橋処理(架橋剤を用いた架橋処理等)及び物理的架橋処理(γ線のような電子線照射や紫外線照射による架橋処理等)等の、当技術分野で一般的に行われている手法により行うことができる。当該架橋処理により粘着剤層は、いわゆるゲル状態の粘着剤層となり、皮膚にソフト感を与えつつ、適度な接着性と凝集力を有するものとなる。本発明の貼付製剤において、粘着剤層に化学的架橋処理又は物理的架橋処理を行うと、製剤の製造工程中又は保管中における化合物A又はその薬学的に許容される塩の安定性が低下しやすくなる(すなわち、類縁物質の生成量が増加する傾向になる)。本発明においては、架橋処理がなされたアクリル系ポリマー中に上記添加剤B群を配合することにより、化合物A又はその薬学的に許容される塩の安定性を向上させることが確認された。
【0038】
粘着剤層に、架橋剤を用いた化学的架橋処理を施す場合、粘着剤層に自己架橋を起こさせることも可能であるが、架橋剤を粘着剤層に含有させることによって架橋を効果的に生じさせることができる。そのような架橋剤としては、化合物A又はその薬学的に許容される塩によって架橋の形成が阻害されない架橋剤であれば特に制限されず、例えば、過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)等)、イソシアネート系化合物、有機金属化合物(例えば、ジルコニウム、亜鉛、酢酸亜鉛等)、金属アルコラート(例えば、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アルミニウムイソプレピレート、アルミニウムsec-ブチレート等)、金属キレート化合物(例えば、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ジプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、テトラオクチレングリコールチタン、アルミニウムイソプロピレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート))等が挙げられる。とりわけ、粘着剤層に含有せしめる架橋剤としては、本発明の貼付製剤をヒト皮膚に貼付した状態で、粘着剤層の凝集力の低下が軽減され、粘着剤層を剥離する際の凝集破壊が生じにくくなる観点から、金属キレート化合物が好ましい。当該架橋剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
粘着剤層に、架橋剤を用いた化学的架橋処理を施す場合の架橋剤の量は、架橋剤や粘着性ポリマーの種類によっても異なるが、通常、粘着剤層100重量%中、好ましくは、0.01~10重量%、より好ましくは、0.05~5重量%である。架橋剤の量が、粘着剤層100重量%に対して、0.01重量%より少ないと、架橋点が少なすぎるために粘着剤層に充分な凝集力を付与できず、貼付製剤を皮膚から剥離する際に凝集破壊に起因する糊残りや強い皮膚刺激が発現するおそれがある。架橋剤の量が、粘着剤層100重量%に対して、10重量%より多いと、凝集力は大きいが、充分な皮膚接着力が得られなくなる場合がある。また、未反応の架橋剤の残留によって皮膚刺激がおこるおそれがある。化学的架橋処理は、例えば、架橋剤の粘着剤層への添加後、架橋反応温度以上に加熱して保管する工程、すなわち、熟成工程を経ることにより実施することができ、このときの加熱温度は、架橋剤の種類に応じて適宜選択されるが、好ましくは、60~90℃であり、より好ましくは、60~80℃である。加熱時間は、好ましくは、12~96時間であり、より好ましくは、24~72時間である。
【0040】
本発明において、非プロトン性極性溶媒は、特に限定されないが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルラウリルアミド等から選択することができる。
また、非イオン性界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、ラウロマクロゴール、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート80、ポリソルベート20等から選択することができる。
有機酸(レブリン酸及び酢酸を除く)は、レブリン酸及び酢酸以外であれば特に限定されないが、脂肪酸、芳香族カルボン酸、アルキルスルホン酸、コール酸誘導体等が挙げられる。具体的には、脂肪酸としては、例えば、プロピオン酸、クエン酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、乳酸、マレイン酸、オレイン酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸等が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、フタル酸、サリチル酸、安息香酸及びアセチルサリチル酸等が挙げられ、アルキルスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロピルスルホン酸、ブタンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸等が挙げられ、コール酸誘導体としては、例えば、デヒドロコール酸等が挙げられる。有機酸(レブリン酸及び酢酸を除く)は、好ましくは、脂肪酸であり、特に好ましくは、オレイン酸である。
高級アルコールエステルは、特に限定されないが、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、オレイン酸オレイル、セバシン酸ジエチル等から選択することができる。
経皮吸収層中の非プロトン性極性溶媒の含有量は、経皮吸収層100重量%中、0.1~20重量%が好ましく、0.5~15重量%がより好ましく、1~10重量%がさらに好ましい。
経皮吸収層中の非イオン性界面活性剤の含有量は、経皮吸収層100重量%中、0.1~20重量%が好ましく、0.5~15重量%がより好ましく、1~10重量%がさらに好ましい。
経皮吸収層中の有機酸(レブリン酸及び酢酸を除く)の含有量は、経皮吸収層100重量%中、0.1~30重量%が好ましく、0.1~25重量%がより好ましく、0.1~20重量%、0.1~15重量%がさらに好ましい。別の態様としては、0.3~20重量%が好ましく、0.3~10重量%がより好ましい。
本発明の経皮吸収製剤において、経皮吸収層中のオレイン酸は、化合物A又はその薬学的に許容される塩の一部が製造中又は保管中に結晶状態になることを防いだり、貼付時の皮膚刺激を低減する効果も期待できる。オレイン酸は、経皮吸収層中に高い割合で含有することができる。具体的には、経皮吸収層中のオレイン酸の含有量は、経皮吸収層100重量%中、0.1~30重量%が好ましく、0.1~25重量%がより好ましく、0.3~20重量%がさらに好ましい。
経皮吸収層中のオレイン酸の含有量は、経皮吸収層100重量%中、下限値としては、0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、3重量%を挙げることができ、上限値としては、30重量%、25重量%、20重量%、15重量%、10重量%を挙げることができる。
上記有機酸がオレイン酸の場合、経皮吸収層中のレブリン酸とオレイン酸の含有量比は、1:20~20:1が好ましく、1:10~15:1がより好ましく、1:5~10:1がさらに好ましい。
また、経皮吸収層中の高級アルコールエステルの含有量は、経皮吸収層100重量%中、0.1~30重量%が好ましく、0.5~20重量%がより好ましく、1~15重量%がさらに好ましい。
これらの添加剤を配合することにより、化合物A又はその薬学的に許容される塩の皮膚透過性を向上することができる。
【0041】
(軟膏基剤)
本発明の経皮吸収製剤が軟膏剤の場合、軟膏剤の基剤としては、特に限定されないが、例えば、油脂類、ロウ類(ミツロウ)、パラフィン、ワセリン、ラノリン、加水ラノリン、ラノリンアルコール等の炭化水素類等の油脂性基剤、又は、マクロゴール等の水溶性基剤を用いることができる。
【0042】
(経皮吸収層)
本発明の経皮吸収製剤における経皮吸収層には、上記各成分の他に、特に支障のない限り、経皮吸収製剤の製造に用いられる薬学的に許容されるその他の添加剤を必要に応じて配合してもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、香料、着色剤、充填剤、増粘剤、pH調節剤、乳化剤、懸濁化剤等が挙げられる。
【0043】
(粘着剤層)
本発明の貼付製剤における粘着剤層は、支持体の少なくとも片面に形成され、少なくとも、(i)化合物A又はその薬学的に許容される塩及び粘着基剤を含有する。粘着剤層は、さらに、 (ii)レブリン酸又はその薬学的に許容される塩を含有することが好ましい。粘着剤層は、さらに、(iii)多価アルコール脂肪酸エステル又は脂肪酸アミド、及び/又は(iv)2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、チオ硫酸ナトリウム、2-メルカプトベンゾイミダゾール、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムからなる群から選択される1種又は2種以上の添加剤を含有してもよい。
【0044】
粘着剤層の厚みは、極端に厚くならない限り特に制限されないが、20~600μmが好ましく、30~300μmがより好ましく、50~200μmがさらに好ましい。
【0045】
本発明の貼付製剤における粘着剤層には、上記各成分の他に、特に支障のない限り、貼付製剤の製造に用いられる薬学的に許容されるその他の添加剤を必要に応じて配合してもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、香料、着色剤、充填剤、増粘剤等が挙げられる。
【0046】
香料としては、特に限定されないが、例えば、dl-メントール、オレンジ油、ハッカ油、レモン油、ローズ油等が挙げられる。増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ペクチン、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、N-ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体等が挙げられる。pH調節剤としては、特に限定されないが、クエン酸水和物、グリシン、酢酸、酒石酸、炭酸水素ナトリウム、乳酸等が挙げられる。乳化剤としては、特に限定されないが、オレイルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、プロピレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。また、懸濁化剤としては、特に限定されないが、カルメロースナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等が挙げられる。
【0047】
(支持体)
本発明の貼付製剤は、支持体と、該支持体の少なくとも片面に形成された粘着剤層とを含む。つまり、支持体はシート状構造の第一の面と第二の面とを有し、少なくとも第一の面には粘着剤層を形成する。必要に応じて、粘着剤層の支持体側とは反対側の面に剥離シートを有していてもよい。また、貼付製剤の形状は、任意形状の枚葉型でも、ロール状に巻回したものでもよい。
【0048】
(粘着基剤)
本発明の貼付製剤において、粘着剤層の処方については、特に限定されないが、粘着基剤としては、例えば、アクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、シリコーン系ポリマー等を用いることができる。また、これらの高分子は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
本発明の貼付製剤におけるアクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単位を主たる構成単位とするアクリル系ポリマーが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主たる構成単位とするアクリル系ポリマーとしては、例えば、人間の皮膚への接着性、製剤調製の際の薬物の溶解性等の観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)との共重合体か、又はこれら以外の他のモノマー(第3モノマー成分)がさらに共重合したアクリル系ポリマーが好ましい。
【0050】
本明細書中、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両方を意味する。
【0051】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)の例としては、アルキル基が、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、n-ノニル、シクロノニル、n-デシル、シクロデシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、イソテトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、イソヘキサデシル、n-オクタデシル、イソオクタデシル等)である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、好ましくは、アルキル基が、炭素数4~18の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキル基(例えば、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、n-ノニル、シクロノニル、n-デシル、シクロデシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル等)である(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。特に常温での粘着性を与えるために、重合体のガラス転移温度を低下させるモノマー成分の使用が好適であることから、アルキル基が、炭素数4~8の直鎖状、分岐鎖状又は環状アルキル基(例えば、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル等)である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、中でも、アルキル基が、n-ブチル、2-エチルヘキシル又はシクロヘキシルである(メタ)アクリル酸アルキルエステルがさらに好ましい。
【0052】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)の特に好ましい具体例としては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸シクロへキシル及びメタクリル酸シクロへキシルが挙げられ、中でも、アクリル酸2-エチルへキシルが最も好ましい。当該(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
前記架橋剤を用いる架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)としては、架橋反応に関与できる官能基が、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ビニル基等であるビニルモノマーが挙げられ、中でも、架橋反応に関与できる官能基が、ヒドロキシ基又はカルボキシ基であるビニルモノマーが好ましい。当該ビニルモノマー(第2モノマー成分)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸等が挙げられる。中でも、入手容易性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、又はアクリル酸ヒドロキシエチルエステルが好ましく、アクリル酸が最も好ましい。当該ビニルモノマー(第2モノマー成分)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
また、前記他のモノマー(第3モノマー成分)は、主として、粘着剤層の凝集力調整や薬物(化合物A又はその薬学的に許容される塩)の溶解性及び/又は放出性の調整等のために使用される。当該他のモノマー(第3モノマー成分)としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のビニルアミド類;(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル等のアルコキシ基含有モノマー;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、α-ヒドロキシメチルアクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー(かかるヒドロキシ基含有モノマーは、第3モノマー成分として使用されるので架橋反応には関与しない。);(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルアミノエチルエステル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル類;(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールエステル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキレングリコールエステル類;(メタ)アクリロニトリル;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルスルホン酸等のスルホ基を有するモノマー;ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等のビニル基含有モノマー等が挙げられる。中でも、ビニルエステル類(例、酢酸ビニル)、及びビニルアミド類(例、N-ビニル-2-ピロリドン)が好ましい。当該他のモノマー(第3モノマー成分)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
本発明の貼付製剤におけるアクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)との共重合体である場合、その共重合比(第1モノマー成分/第2モノマー成分)は、85~99重量%/1~15重量%が好ましく、90~99重量%/1~10重量%がより好ましい。
【0056】
また、本発明の貼付製剤におけるアクリル系ポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(第1モノマー成分)と、架橋反応に関与できる官能基を有するビニルモノマー(第2モノマー成分)と、これら以外の他のモノマー(第3モノマー成分)との共重合体である場合、その共重合比(第1モノマー成分/第2モノマー成分/第3モノマー成分)は、35~94重量%/1~15重量%/5~50重量%が好ましく、50~89重量%/1~10重量%/10~40重量%がより好ましい。
【0057】
前記各モノマー成分を用いた重合反応は、自体公知の方法で行えばよく、特に限定されないが、例えば、前記モノマーを、溶媒(例えば、酢酸エチル等)中で、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等)の存在下に50~70℃で5~48時間反応させる方法等が挙げられる。
【0058】
本発明の貼付製剤におけるアクリル系ポリマーとしては、アクリル酸2-エチルへキシルエステル/アクリル酸/N-ビニル-2-ピロリドン共重合体、アクリル酸2-エチルへキシルエステル/アクリル酸2-ヒドロキシエチルエステル/酢酸ビニル共重合体、アクリル酸2-エチルへキシルエステル/アクリル酸共重合体等が好ましく、アクリル酸2-エチルへキシルエステル/アクリル酸/N-ビニル-2-ピロリドン共重合体が特に好ましい。
【0059】
また、本発明の貼付製剤におけるアクリル系ポリマーのガラス転移温度は、共重合組成によっても異なるが、貼付製剤としての粘着性の観点から、好ましくは、-100~-10℃であり、より好ましくは、-90~-20℃である。ガラス転移温度は、示差走査熱量計での測定値である。
【0060】
本発明の貼付製剤におけるゴム系ポリマーとしては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、イソプレンゴム、ポリイソブチレン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンゴム等が挙げられる。中でも、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンが好ましく、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体がより好ましい。当該ゴム系ポリマーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
本発明の貼付製剤におけるシリコーン系ポリマーとしては、例えば、シリコーンゴム、ジメチルシロキサンベース、ジフェニルシロキサンベース、ポリジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサンを主成分とし、MQレジン等の粘着付与剤を含有するもの等を用いることができる。当該シリコーン系ポリマーは、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0062】
本発明の貼付製剤において、粘着剤層中の粘着基剤の含有量は、粘着剤層100重量%中、好ましくは、30~80重量%であり、より好ましくは、40~70重量%である。
【0063】
(剥離ライナー)
本発明の貼付製剤において、粘着剤層の支持体側とは反対側の面(皮膚への貼付面)は、製剤を実際に使用するまでは、剥離ライナーが積層されているのが好ましい。当該剥離ライナーとしては、特に制限されず、公知の剥離ライナーを用いることができる。具体的には、例えば、剥離処理剤からなる剥離処理剤層が剥離ライナー用の基材の表面に形成された剥離ライナー、それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルム、剥離ライナー用の基材の表面に、前記剥離性の高いプラスチックフィルムの素材による剥離層を形成した構成の剥離ライナー等が挙げられる。当該剥離ライナーの剥離面は、基材の片面のみであってもよく、両面であってもよい。
【0064】
このような剥離ライナーにおいて、剥離処理剤としては、特に制限されず、例えば、長鎖アルキル基含有ポリマー、シリコーン系ポリマー(シリコーン系剥離剤)、フッ素系ポリマー(フッ素系剥離剤)等の剥離剤が挙げられる。剥離ライナー用の基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエステル(PETを除く)フィルム等のプラスチックフィルムやこれらのフィルムに金属を蒸着した金属蒸着プラスチックフィルム;和紙、洋紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙類;不織布、布等の繊維質材料による基材;金属箔等が挙げられる。
【0065】
また、それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体(ブロック共重合体又はランダム共重合体)の他、これらの混合物からなるポリオレフィン系樹脂によるポリオレフィン系フィルム;テフロン(登録商標)製フィルム等を用いることができる。
【0066】
前記剥離ライナー用の基材の表面に形成される剥離層は、前記剥離性の高いプラスチックフィルムの素材を、前記剥離ライナー用の基材上に、ラミネート又はコーティングすることにより形成することができる。
【0067】
当該剥離ライナーの厚み(全体厚)としては、特に限定されるものではないが、通常、200μm以下であり、好ましくは、25~100μmである。
【0068】
(本発明の貼付製剤の評価方法)
本発明の貼付製剤の皮膚接着性の評価は、タック力試験、引張試験、剥離試験(JIS Z 0237:2009、JIS K 6854)等の試験法を用いて実施することができる。例えば、タック力試験では、本発明の貼付製剤をライナーから剥離し、親指を膏体面に押し付けて剥がす官能試験として評価したとき、親指を剥がす際に適度な接着性であることが好ましい。
【0069】
本発明の貼付製剤の皮膚刺激性の評価としては、例えば、ウサギ背部の正常皮膚に、本発明の貼付製剤を貼付し、投与後24時間(閉塞解除及び検体除去後30分)、さらに投与後48時間及び72時間に皮膚反応を肉眼的に観察したとき、Draize法の判定基準に従い、観察スコア2以下であることが好ましい。
【0070】
Draize法の判定基準としては、以下に示す評点に従い、各動物の皮膚反応の個別評点(観察スコア=(紅斑と痂皮形成+浮腫形成の合計)/観察ポイント数)の平均値を用いる。
【0071】
(Draize法の判定基準)
・紅斑と痂皮形成
0:紅斑なし
1:ごく軽度の紅斑
2:明らかな紅斑
3:中~強度の紅斑
4:強い紅斑~痂皮形成
・浮腫形成
0:浮腫なし
1:ごく軽度の浮腫
2:明らかな浮腫
3:中等度の浮腫
4:強度の浮腫
【0072】
(本発明の経皮吸収製剤の製造方法)
本発明の経皮吸収製剤は、薬学的に許容される添加剤を用いて、公知の方法で製造することができる。
【0073】
[1.本発明の軟膏剤の製造方法]
本発明の軟膏剤の製造方法としては、特に限定されるものではなく、一般的に知られる方法により製造することができる。例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【0074】
軟膏基剤、化合物A又はその薬学的に許容される塩、添加剤A群及び添加剤B群を、必要に応じてその他の添加剤と共に適当な溶媒に加えて、均一になるまで十分に混合し、半固形状の軟膏剤を形成する。溶媒としては、例えば、水、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。
【0075】
油脂性軟膏剤を製造するには,通例、油脂類、ろう類、パラフィン等の炭化水素類等の油脂性基剤を加温して融解し、化合物A又はその薬学的に許容される塩、添加剤A群、及び添加剤B群を加え、混和して溶解又は分散させ、全体が均質になるまで混ぜて練り合わせて製造することができる。水溶性軟膏剤を製造するには、通例、マクロゴール等の水溶性基剤を加温して融解し、化合物A又はその薬学的に許容される塩、添加剤A群、及び添加剤B群を加え、全体が均質になるまで混ぜて練り合わせることにより製造することができる。
【0076】
具体的には、例えば、化合物A又はその薬学的に許容される塩に、レブリン酸又はその薬学的に許容される塩、及び添加剤B群を、必要に応じて有機液状成分やその他の添加剤と共に、セタノールやステアリルアルコール等の高級アルコール類、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸等の高級脂肪酸又はそのエステル、精製ラノリン、鯨ロウ等のロウ類、ソルビタン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤、親水ワセリン、流動パラフィン、プラスチベース等の炭化水素類等を加え、加温下で混合し、50~100℃に保ち、全成分が透明溶解液になった後、ホモミキサーで均一に混和する。その後、冷却、放冷しながら撹拌することによって軟膏剤を得ることができる。
【0077】
[2.本発明の貼付製剤の製造方法]
本発明の貼付製剤の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【0078】
アクリル系ポリマーを含む粘着基剤、化合物A又はその薬学的に許容される塩、レブリン酸又はその薬学的に許容される塩、及び添加剤B群を、必要に応じて有機液状成分やその他の添加剤と共に適当な溶媒に加えて、均一になるまで十分に混合する。溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、2-プロパノール、メタノール、エタノール、水等が挙げられる。そして、架橋剤を配合する場合は、この混合液にさらに架橋剤を加えて十分に混合する。この際、必要に応じて、架橋剤と共に溶媒を加えて混合してもよい。
【0079】
次に、得られた混合液を、支持体の片面又は剥離ライナーの剥離処理面に塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する。なお、前記塗布は、例えば、キャスティング、プリンティング、その他の当業者に自体公知の技法により実施可能である。その後、粘着剤層に剥離ライナー又は支持体を貼り合わせて積層体を形成する。架橋処理を行う場合は、剥離ライナー又は支持体を粘着剤層上に貼りあわせた後、通常、60~90℃、好ましくは、60~70℃で24~48時間放置して架橋反応を促進させて、架橋粘着剤層を形成する。
【0080】
(本発明の経皮吸収製剤の投与量)
本発明の経皮吸収製剤の投与量は、患者の年齢、体重、症状等により異なるが、通常、成人に対して、化合物A換算値として、1日あたり通常、0.1~500mg、好ましくは、1~100mg、より好ましくは、2~50mg、さらに好ましくは、2~35mgである。
本発明の経皮吸収製剤が、貼付製剤の場合、本発明の貼付製剤のサイズは、通常、2~100cm、好ましくは、2~70cm、より好ましくは、4~50cmである。本発明の貼付製剤は、通常、3回/日~1回/週、好ましくは、1回/日~1回/週、より好ましくは、1回/日の頻度で貼り変えられる。
【0081】
(併用薬)
本発明の経皮吸収製剤において、化合物A又はその薬学的に許容される塩は、その薬効を損なわない限り、他の薬剤(以下、「併用薬」と称することもある。)と併用することができる。この際、投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。また、化合物A又はその薬学的に許容される塩と併用薬とを組み合わせて含有する単一の製剤として投与することもできる。併用薬としては、例えば、レボドパ又は既存のパーキンソン病治療薬が挙げられる。既存のパーキンソン病治療薬の具体例としては、例えば、ドパミンアゴニスト(例えば、ブロモクリプチン、ペルゴリド、タリペキソール、カベルゴリン、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン(rotigotine)等)、モノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害薬(例えば、セレギリン、ラサギリン(rasagiline)、サフィナミド(Safinamide))、カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT)阻害薬(例えば、エンタカポン)、アマンタジン、アポモルヒネ、イストラデフィリン、抗コリン薬(例えば、ビペリデン、トリヘキシフェニジル、プロフェナミン、マザチコール)、チアプリド、ドロキシドパ、カルビドパ、ゾニサミド等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【実施例
【0082】
以下に実施例及び試験例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の文中で「部」又は「%」とあるのは全て重量部又は重量%を意味する。
【0083】
[アクリル系ポリマーAの調製]
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2-エチルヘキシル55部、N-ビニル-2-ピロリドン40部、N-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミド5部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチル中60℃にて溶液重合させることにより、アクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーA)の溶液を調製した。
【0084】
[アクリル系ポリマーBの調製]
不活性ガス雰囲気下、アクリル酸2-エチルヘキシル75部、N-ビニル-2-ピロリドン22部、アクリル酸3部及びアゾビスイソブチロニトリル0.2部を酢酸エチル中60℃にて溶液重合させることにより、アクリル系ポリマー(アクリル系ポリマーB)の溶液を調製した。
【0085】
<評価試験>
貼付製剤(テープ剤)中の化合物Aの含量を増加させるためには、薬物溶解度が高い添加剤を添加することが好ましいため、HLB値が異なる種々の添加剤を用いて、化合物Aの飽和溶解度測定を行った結果を表1に示した。また、表1において飽和溶解度の高かった添加剤(すなわち、乳酸、レブリン酸及びオレイン酸)について、種々の他の添加剤を組み合わせた液剤を調製し、各液剤について、化合物Aの皮膚透過量を測定した結果を表2に示した。
【0086】
(試験例1:飽和溶解度測定)
バイアル瓶に各種添加剤を量り取り、化合物Aをそれ以上溶解しなくなるまで添加し、室温で一晩撹拌後、0.45μmのPTFEフィルターを用いてろ過し、ろ液中の化合物Aの濃度を高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、UV検出器)にて定量した。ただし、化合物Aの濃度が20%を超えた時点で、化合物Aの添加を中止した。
【0087】
(試験例2:溶液の皮膚透過性試験)
ミニブタ摘出皮膚を皮膚透過実験用セル(有効面積3mmφ、レセプター液量1.25mL)に真皮層側がレセプター層になるように装着し、各種添加剤における化合物Aの飽和溶液5μLを添加し、レセプター液温が32±1℃の条件で、24時間皮膚透過性試験を行った。レセプター液として脱気したPBS(-)溶液(リン酸緩衝生理食塩水)を用いた。24時間後にレセプター液のサンプリングを行い、透過した化合物Aの濃度を高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、UV検出器)にて定量した。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
表1によれば、種々の添加剤の中で、特に、有機酸である、乳酸、レブリン酸及びオレイン酸が、化合物Aの高い飽和溶解度を示すことが分かった。
【0091】
また、表2に示されるように、表1において化合物Aの高い飽和溶解度を示した、乳酸、レブリン酸及びオレイン酸について、種々の添加剤との3種又は4種の組み合わせからなる液剤を調製し、化合物Aを飽和させた各液剤について、化合物Aの皮膚透過量を測定した結果から、以下の点が明らかである。
(1)No.1~12の乳酸を含む組合せ、No.25~36のオレイン酸を含む組合せと比較して、No.13~24のレブリン酸を含む組合せにおいて、相対的に高い化合物Aの皮膚透過性を示すことが分かった。同等の高い飽和溶解度を示した有機酸(乳酸、レブリン酸又はオレイン酸)の中で、レブリン酸を含む組み合わせにおいて、顕著に優れた化合物Aの皮膚透過性が見られたことは、予期せぬ結果である。
(2)とりわけ、レブリン酸、多価アルコール脂肪酸エステル及び界面活性剤の組合せにおいて、化合物Aの高い皮膚透過性が得られ、その中でも特に、ミリスチン酸イソプロピル、レブリン酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ラウロマクロゴールの組合せ(No.15及びNo.21)において、化合物Aの高い皮膚透過性が得られることが分かった。
【0092】
[実施例1]
アクリル系ポリマーA 50.0部、化合物A 20.0部、ミリスチン酸イソプロピル(以下、「IPM」と称す。) 20.0部、プロピレングリコールモノカプリレート(以下、「PGMC」と称す。) 5.0部、レブリン酸 5.0部を、適量の酢酸エチル及びトルエンに溶解して溶液が均一になるまで十分に混合し、トルエンでベース濃度が20重量%に調整し、均一になるまで十分に混合撹拌を行って塗工液を得た。得られた塗工液を、シリコーン系剥離剤にて剥離処理を施した厚さ75μmポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と称す)製フィルムである剥離ライナーの剥離処理を施した面に、乾燥後の膏体厚が約150μmとなるように塗工し、乾燥し、粘着剤層を形成した。そして、形成した粘着剤層の粘着面を支持体であるPETフィルムとPET不織布との積層フィルムの不織布側に貼り合わせて積層体を作製し、実施例1の貼付製剤を得た。
なお、上記のベース濃度(重量%)とは、塗工液の重量(g)から酢酸エチルの重量(g)を引いた重量(g)を、塗工液の重量(g)で除した値に100を乗じた値(重量%)である。
【0093】
[実施例2]
IPM 17.5部、レブリン酸 7.5部としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の貼付製剤を得た。
【0094】
[実施例3]
IPM 15.0部、レブリン酸 10.0部としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の貼付製剤を得た。
【0095】
[実施例4]
アクリル系ポリマーC(MAS683、コスメディ製薬) 60.0部、化合物A 5.0部、IPM 30.0部、レブリン酸 5.0部を、適量の酢酸エチルに溶解して加え、均一になるまで十分に混合撹拌を行って塗工液を得た。得られた塗工液を、PET製フィルムである支持体に、乾燥後の膏体厚が約100μmとなるように塗工し、乾燥し、粘着剤層を形成した。そして、形成した粘着剤層を剥離ライナーに貼り合わせ、実施例4の貼付製剤を得た。
【0096】
[実施例5]
IPM 25.0部、レブリン酸 10.0部としたこと以外は実施例4と同様にして、実施例5の貼付製剤を得た。
【0097】
[実施例6]
アクリルポリマーC 50.0部、IPM 15.0部、レブリン酸 10.0部とし、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 5.0部を加え、さらにチオ硫酸ナトリウム(無水物として) 5.0部を適量の注射用水に溶解して加えたこと以外は実施例4と同様にして、実施例6の貼付製剤を得た。
【0098】
[実施例6a]
IPM 12.5部とし、オレイン酸 1.5部、プロピレングリコールモノラウレート(以下、「PGML」と称す。) 10.0部、ラウロマクロゴール 5.0部、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 1.0部を加えたこと以外は実施例4と同様にして、実施例6aの貼付製剤を得た。
【0099】
[実施例6b]
IPM 9.0部、オレイン酸 5.0部としたこと以外は実施例6aと同様にして、実施例6bの貼付製剤を得た。
【0100】
[比較例1]
レブリン酸を使用せず、乳酸 5.0部とした以外は実施例1と同様にして、比較例1の貼付製剤を得た。
【0101】
[比較例2]
IPM 17.5部、乳酸 7.5部とした以外は比較例1と同様にして、比較例2の貼付製剤を得た。
【0102】
[比較例3]
IPM 15.0部、乳酸 10.0部とした以外は比較例1と同様にして、比較例3の貼付製剤を得た。
【0103】
[比較例4]
レブリン酸を使用せず、IPM 35.0部とした以外は実施例4と同様にして、比較例4の貼付製剤を得た。
【0104】
[比較例5]
レブリン酸を使用せず、酢酸 5.0部を加えたこと以外は実施例4と同様にして、比較例5の貼付製剤を得た。
【0105】
[比較例6]
酢酸を使用せず、乳酸 5.0部を加えたこと以外は比較例5と同様にして、比較例6の貼付製剤を得た。
【0106】
[比較例6a]
IPM 34.0部とし、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 1.0部を加えたこと以外は比較例4と同様にして、比較例6aの貼付製剤を得た。
【0107】
<評価試験>
上記実施例及び比較例で作製した貼付製剤について、下記の試験を行った。結果は、表3、表4-1及び表4-2に示した。
【0108】
(試験例3:製剤の皮膚透過性試験1 -フローセル法-)
貼付製剤をヘアレスマウス摘出皮膚の角質層側に貼り付け、皮膚透過実験用フローセル(有効面積6mmφ)に真皮層側がレセプター層になるように装着し、フロー流量2.5mL/h、レセプター液温32±1℃の条件で、24時間皮膚透過実験を行った。レセプター液として、脱気したPBS(-)溶液(リン酸緩衝生理食塩水)を用いた。経時的にレセプター液のサンプリングを行い、透過した化合物Aの濃度を高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、UV検出器)にて定量した。
【0109】
(試験例4:製剤の皮膚透過性試験2 -プレート法-)
貼付製剤をヘアレスマウス摘出皮膚の角質層側に貼り付け、皮膚透過実験用プレートセル(有効面積8mmφ、レセプター液量1.4mL)に真皮層側がレセプター層になるように装着し、レセプター液温32±1℃の条件で、24時間皮膚透過実験を行った。レセプター液として、脱気したPBS(-)溶液(リン酸緩衝生理食塩水)を用いた。24時間後にレセプター液のサンプリングを行い、透過した化合物Aの濃度を高速液体クロマトグラフィー(ODSカラム、UV検出器)にて定量した。
【0110】
【表3】
【0111】
【表4-1】
【0112】
【表4-2】

【0113】
表3の結果から、以下の点が明らかである。
(1)粘着剤層に乳酸を含有する比較例1~3と比較して、レブリン酸を含有する実施例1~3においては、化合物Aの皮膚透過性が顕著に向上し、最大透過速度が、45μg/cm/h以上となることが分かった。
(2)また、比較例1~3において、乳酸含量を増加させると皮膚透過性が低下するのに対して、実施例1~3においては、レブリン酸含量を増加させると添加量依存的に皮膚透過性が向上することが分かった。
【0114】
また、表4-1の結果から、以下の点が明らかである。
(1)粘着剤層に有機酸を含有しない比較例4と比較して、レブリン酸を含有する実施例4~6においては、累積透過量及び最大透過速度が、1.5倍程度向上し、化合物Aの皮膚透過性が向上することが分かった。
(2)一方、酢酸又は乳酸を含有する比較例5、6においては、有機酸を含有しない比較例4と比較して、化合物Aの皮膚透過性の顕著な向上は見られなかった。
【0115】
表4-2の結果から、以下の点が明らかである。
(1)レブリン酸、オレイン酸、PGML及びラウロマクロゴールを含有する実施例6a、6bにおいては、有機酸を含有しない比較例6aと比較して化合物Aの皮膚透過性が向上することが分かった。
【0116】
[実施例7]
PGMCを使用せず、アクリル系ポリマーA 50.0部、化合物A 20.0部、IPM 25.0部、レブリン酸 5.0部とし、膏体厚が約100μmとなるよう塗工したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の貼付製剤を得た。
【0117】
[実施例8]
IPM 20.0部とし、PGMC 5.0部を加え、膏体厚が約100μmとなるよう塗工したこと以外は実施例1と同様にして、実施例8の貼付製剤を得た。
【0118】
[比較例7]
PGMCとレブリン酸を使用せず、IPM 30.0部とし、膏体厚が約100μmとなるよう塗工したこと以外は実施例1と同様にして、比較例7の貼付製剤を得た。
【0119】
[比較例8]
レブリン酸を使用せず、IPM 25.0部とし、膏体厚が約100μmとなるよう塗工したこと以外は実施例1と同様にして、比較例8の貼付製剤を得た。
【0120】
<評価試験>
上記実施例及び比較例で作製した製剤について、試験例3の評価を行った。結果は、表5に示した。
【0121】
【表5】
【0122】
表5の結果から、以下の点が明らかである。
(1)粘着剤層に添加剤A群を含有しない比較例7と比較して、多価アルコール脂肪酸エステルであるPGMCのみを含有する比較例8では、化合物Aの皮膚透過性の向上はほとんど認められなかった。これに対し、レブリン酸を含有する実施例7においては、化合物Aの皮膚透過性の顕著な向上が認められた。さらに、実施例8においては、単独では化合物Aの皮膚透過促進効果をほとんど示さなかったPGMCに、レブリン酸を組み合わせること(添加剤A群とすること)により、相乗的に化合物Aの皮膚透過性が向上することが分かった。
【0123】
[実施例9]
アクリル系ポリマーB 45.0部、化合物A 5.5部、IPM 31.7部、PGML 10.0部、レブリン酸 5.0部、ラウロマクロゴール 1.5部、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 1.0部、適量の注射用水に溶解したチオ硫酸ナトリウム(無水物として) 0.08部を、適量の酢酸エチル及びトルエンに溶解して溶液が均一になるまで十分に混合した後、架橋剤として、アルミニウムエチルアセトアセテート ジイソプロピレート(以下、「ALCH」と称す。) 0.1部を、適量の酢酸エチル及びアセチルアセトンに溶解して加え、均一になるまで十分に混合撹拌を行って、塗工液を得た。得られた塗工液を、膏体厚が約100μmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様に塗工、乾燥し、粘着剤層を形成し、支持体と貼り合わせて積層体を作製した。その後、70℃で48時間放置し、架橋粘着剤層を調製し、実施例9の貼付製剤を得た。
【0124】
[実施例10]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及びチオ硫酸ナトリウムを使用せず、アクリル系ポリマーB 42.1部、化合物A 8.0部、IPM 33.1部、PGML 7.5部、ラウロマクロゴール 4.0部、ALCH 0.4部としたこと以外は実施例9と同様にして、実施例10の貼付製剤を得た。
【0125】
[実施例11]
アクリル系ポリマーB 34.9部、IPM 26.9部、PGML 14.9部、ラウロマクロゴール 10.0部としたこと以外は実施例10と同様にして、実施例11の貼付製剤を得た。
【0126】
[実施例12]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、チオ硫酸ナトリウムを使用せず、アクリル系ポリマーB 39.6部、化合物A 5.0部、IPM 35.0部、PGML 10.0部、レブリン酸 5.0部、ラウロマクロゴール 5.0部、ALCH 0.4部としたこと以外は実施例9と同様にして、実施例12の貼付製剤を得た。
【0127】
[実施例12a]
ラウロマクロゴールを使用せず、アクリル系ポリマーB 45.0部、IPM 33.7部、ALCH 0.1部とし、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 1.0部、チオ硫酸ナトリウム(無水物として) 0.13部を加えたこと以外は実施例12と同様にして、実施例12aの貼付製剤を得た。
【0128】
[実施例13]
ラウロマクロゴールを使用せず、アクリル系ポリマーB 45.0部、化合物A 5.5部、IPM 33.2部、PGML 10.0部、レブリン酸 5.0部、ALCH 0.1部とし、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 1.0部、チオ硫酸ナトリウム(無水物として) 0.08部を加えたこと以外は実施例12と同様にして、実施例13の貼付製剤を得た。
【0129】
[実施例13a]
IPM 32.2部、レブリン酸 6.0部、チオ硫酸ナトリウム(無水物として) 0.13部としたこと以外は実施例13と同様にして、実施例13aの貼付製剤を得た。
【0130】
[実施例13b]
IPM 31.2部、レブリン酸 7.0部としたこと以外は実施例13aと同様にして、実施例13bの貼付製剤を得た。
【0131】
[実施例14]
アクリル系ポリマーB 49.9部、化合物A 6.5部、IPM 23.5部、PGML 10.0部、レブリン酸 3.0部、ラウロマクロゴール 7.0部、ALCH 0.1部としたこと以外は実施例12と同様にして、実施例14の貼付製剤を得た。
【0132】
[実施例15]
PGML及びラウロマクロゴールを使用せず、アクリル系ポリマーB 36.9部、化合物A 8.0部、IPM 49.8部、レブリン酸 5.0部、ALCH 0.4部としたこと以外は実施例12と同様にして、実施例15の貼付製剤を得た。
【0133】
[比較例9]
PGML、レブリン酸及びラウロマクロゴールを使用せず、アクリル系ポリマーB 49.9部、化合物A 5.0部、IPM 45.0部、ALCH 0.1部としたこと以外は実施例10と同様にして、比較例9の貼付製剤を得た。
【0134】
[比較例10]
アクリル系ポリマーB 49.8部、化合物A 8.0部、IPM 41.8部、ALCH 0.4部としたこと以外は比較例9と同様にして比較例10の貼付製剤を得た。
【0135】
[比較例11]
ラウロマクロゴールを使用せず、アクリル系ポリマーB 34.9部、化合物A 2.0部、IPM 42.8部、PGML 14.9部、レブリン酸 5.0部、ALCH 0.4部としたこと以外は実施例12と同様にして、比較例11の貼付製剤を得た。
【0136】
<評価試験>
上記実施例及び比較例で作製した製剤について試験例3の評価を行った。結果は表6及び7に示した。
【0137】
[実施例16]
化合物A 4.0部に、PGML 10.0部、ラウロマクロゴール 5.0部、レブリン酸 5.0部を添加して混合溶解し、ゲル化炭化水素(ハイコールジェル(登録商標)、カネダ株式会社) 76.0部を添加して、均一になるように混和練合して実施例16の軟膏剤を得た。
【0138】
[実施例17]
IPM 15.0部を加え、化合物A 5.0部、ゲル化炭化水素(ハイコールジェル(登録商標)、カネダ株式会社) 60.0部としたこと以外は実施例16と同様にして、実施例17の軟膏剤を得た。
【0139】
[実施例17a]
オレイン酸 20.0部を加え、化合物A 8.0部、レブリン酸 7.0部、ゲル化炭化水素(ハイコールジェル(登録商標)、カネダ株式会社) 50.0部としたこと以外は実施例16と同様にして、実施例17aの軟膏剤を得た。
【0140】
[実施例18]
オレイン酸 25.0部を加え、化合物A 8.0部、レブリン酸 7.0部、ゲル化炭化水素(ハイコールジェル(登録商標)、カネダ株式会社) 45.0部としたこと以外は実施例16と同様にして、実施例18の軟膏剤を得た。
【0141】
[実施例19]
オレイン酸 20.0部を加え、化合物A 10.0部、レブリン酸 7.0部、ゲル化炭化水素(ハイコールジェル(登録商標)、カネダ株式会社) 48.0部としたこと以外は実施例16と同様にして、実施例19の軟膏剤を得た。
【0142】
[比較例12]
化合物A 8.0部にオレイン酸 42.0部を添加して混合溶解し、ゲル化炭化水素(ハイコールジェル(登録商標)、カネダ株式会社) 50.0部を添加して、均一になるように混和練合して比較例12の軟膏剤を得た。
【0143】
[比較例13]
PGML 10.0%、ラウロマクロゴール 5.0部を加え、化合物A 5.0部、オレイン酸 25.0部、ゲル化炭化水素(ハイコールジェル(登録商標)、カネダ株式会社) 55.0部としたこと以外は実施例16と同様にして、比較例13の軟膏剤を得た。
【0144】
<評価試験>
上記実施例及び比較例で作製した製剤について、有効面積10.25mmφ、ドナーサンプル200μLとして、試験例4の評価を行った。結果は、表8に示した。
【0145】
【表6】
【0146】
【表7】
【0147】
【表8】
【0148】
表6の結果から、以下の点が明らかである。
(1)添加剤A群を含有しない比較例9及び10と比較して、添加剤A群を含有する実施例9~11では、累積透過量及び最大透過速度が向上し、化合物Aの皮膚透過性において顕著な向上が認められた。
(2)添加剤A群であるプロピレングリコール脂肪酸エステルは、7.5~14.9重量%の添加量において、化合物Aの良好な皮膚透過性を示すことが分かった。
(3)界面活性剤であるラウロマクロゴールは、1.5~10.0重量%の添加量において、化合物Aの良好な皮膚透過性を示すことが分かった。
(4)添加剤A群を含有する実施例10及び11において、良好なタック力を示すことが分かった。
【0149】
表7の結果から、以下の点が明らかである。
(1)化合物Aの含量が2.0重量%である比較例11と比較して、化合物Aの含量を5.0重量%以上とした実施例12~15において、累積透過量及び最大透過速度が向上し、化合物Aの皮膚透過性が向上することが分かった。
(2)実施例14によれば、添加剤A群であるレブリン酸の含量が3.0重量%以上の条件において、化合物Aの皮膚透過性の向上効果が認められることが分かった。
(3)比較例11において、良好なタック力が得られなかった。一方で、添加剤A群を含有する実施例15において、良好なタック力を示すことが分かった。
【0150】
表8の結果から、以下の点が明らかである。
(1)添加剤A群を含有しない比較例12と比較して、添加剤A群を含有する実施例16~19では、累積透過量及び最大透過速度が向上し、化合物Aの皮膚透過性において顕著な向上が認められた。
(2)また、実施例17aと比較して実施例18では、累積透過量及び最大透過速度が向上し、レブリン酸と併用するオレイン酸含量を増加させることで、化合物Aの皮膚透過性が向上することが分かった。
(3)レブリン酸を含有しない比較例13では、比較例12と比較して累積透過量及び最大透過速度のわずかな向上しか認められなかった。
【0151】
[実施例20]
アクリル系ポリマーB 39.6部、化合物A 5.0部、IPM 35.0部、PGML 10.0部、レブリン酸 5.0部、ラウロマクロゴール 5.0部、ALCH 0.4部を使用し、実施例9と同様にして、塗工液を得た。2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 0.05部を適量のメタノールに溶解し、全量が100部となるよう先に得た塗工液を加えた後、実施例9と同様にして、実施例20の貼付製剤を得た。
【0152】
[実施例21]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを使用せず、チオ硫酸ナトリウム(無水物として) 0.13部を適量の注射用水に溶解して加えたこと以外は実施例20と同様にして、実施例21の貼付製剤を得た。
【0153】
[実施例22]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを使用せず、2-メルカプトベンズイミダゾール(以下、「2-MBI」と称す。) 0.62部を、適量のメタノールに溶解して加えたこと以外は実施例20と同様にして、実施例22の貼付製剤を得た。
【0154】
[実施例23]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを使用せず、没食子酸プロピル 0.019部を、適量のメタノールに溶解して加えたこと以外は実施例20と同様にして、実施例23の貼付製剤を得た。
【0155】
[実施例24]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを使用せず、α-トコフェロール 0.002部を、適量のメタノールに溶解して加えたこと以外は実施例20と同様にして、実施例24の貼付製剤を得た。
【0156】
[実施例25]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを使用せず、亜硫酸ナトリウム(無水物として) 0.2部を、適量の水に溶解して加えたこと以外は実施例20と同様にして、実施例25の貼付製剤を得た。
【0157】
[実施例26]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを使用せず、亜硫酸水素ナトリウム 0.3部を、適量の水に溶解して加えたこと以外は実施例20と同様にして、実施例26の貼付製剤を得た。
【0158】
[実施例27]
アクリル系ポリマーB 48.9部、化合物A 6.5部、IPM 23.5部、PGML 10.0部、レブリン酸 3.0部、ラウロマクロゴール 7.0部、ALCH 0.1部を使用し、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 1.0部を適量のメタノールに溶解して加え、実施例9と同様にして、実施例27の貼付製剤を得た。
【0159】
[実施例28]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを使用せず、アクリル系ポリマーB 49.7部とし、2-MBI 0.2部を適量のメタノールに溶解して加えたこと以外は、実施例27と同様にして、実施例28の貼付製剤を得た。
【0160】
[実施例29]
アクリル系ポリマーB 48.7部とし、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 1.0部を適量のメタノールに溶解し、チオ硫酸ナトリウム(無水物として) 0.2部を適量の水に溶解して加えたこと以外は、実施例27と同様にして、実施例29の貼付製剤を得た。
【0161】
[実施例30]
アクリル系ポリマーB 48.7部とし、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 1.0部及び2-MBI 0.2部を適量のメタノールに溶解して加えたこと以外は、実施例27と同様にして、実施例30の貼付製剤を得た。
【0162】
[実施例31]
アクリル系ポリマーB 45.0部、化合物A 5.5部、IPM 33.2部、PGML 10.0部、レブリン酸 5.0部、ALCH 0.1部、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール 1.0部を使用し、チオ硫酸ナトリウム(無水物として) 0.08部を適量の水に溶解して加えたこと以外は、実施例9と同様にして、実施例31の貼付製剤を得た。
【0163】
[実施例32]
チオ硫酸ナトリウム(無水物として) 0.13部としたこと以外は、実施例31と同様にして、実施例32の貼付製剤を得た。
【0164】
[実施例33]
IPM 31.7部とし、ラウロマクロゴール 1.5部を加えたこと以外は、実施例31と同様にして、実施例33の貼付製剤を得た。
【0165】
[実施例34]
IPM 31.7部とし、ラウロマクロゴール 1.5部を加えたこと以外は、実施例32と同様にして、実施例34の貼付製剤を得た。
【0166】
[比較例14]
アクリル系ポリマーB 39.6部、化合物A 5.0部、IPM 35.0部、PGML 10.0部、レブリン酸 5.0部、ラウロマクロゴール 5.0部、ALCH 0.4部を使用し、実施例9と同様にして、比較例14の貼付製剤を得た。
【0167】
[比較例15]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを使用せず、パルミチン酸L-アスコルビル 0.013部を適量のメタノールに溶解して加えたこと以外は実施例20と同様にして、比較例15の貼付製剤を得た。
[比較例16]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを使用せず、L-アスコルビン酸 0.1部を適量のメタノールに溶解して加えたこと以外は実施例20と同様にして、比較例16の貼付製剤を得た。
【0168】
[比較例17]
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールを使用せず、アクリル系ポリマーB 49.9部としたこと以外は、実施例27と同様にして、比較例17の貼付製剤を得た。
【0169】
<評価試験>
上記実施例及び比較例で作製した製剤について、下記の試験を行った。結果は、表10及び11に示した。
【0170】
(試験例5:製剤の安定性試験)
種々の安定化剤を含有する製剤サンプルを、苛酷条件(60℃2週間又は50℃1ヶ月)で保存を行い、保存による製剤中の化合物Aの含量の変化と製剤色差から、製剤の安定性を評価した。また、製剤の光に対する安定性を評価するため、曝光条件(総照度53000lx・h、照度2000lx、照射時間26.5h)で保存を行い、製剤中の化合物含量を測定した。化合物Aの含量の測定は、下記の方法で行った。
【0171】
[化合物Aの含量]
以下の条件において、HPLCで分析した際の、薬物(化合物A)に相当するピーク面積をHPLCのチャートから面積百分率%で算出した。
移動相A:薄めたリン酸塩緩衝液(0.05mol、pH6.8)
移動相B:HPLC用アセトニトリル
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:245nm)
カラム:内径4.6mm、長さ10cmのステンレス管にHPLC用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填する(XBridge C18又は同等品)移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を表9に示すように変えて濃度勾配制御する
【0172】
【表9】
【0173】
[色彩色差]
製剤を標準白色板の上に載せ、色彩色差計(CR-400、コニカミノルタ)を用いてb値を測定した。
【0174】
【表10】
【0175】
【表11】
【0176】
表10の結果から、以下の点が明らかである。
(1)粘着剤層に安定化剤として、パルミチン酸L-アスコルビルを含む比較例15では、粘着剤層に安定化剤を含まない比較例14と同様に苛酷条件での保存で化合物Aの含量が低下し、色差の指標であるb値も増加することが分かった。
(2)粘着剤層に安定化剤として、L-アスコルビン酸を含む比較例16では、粘着剤層に安定化剤を含まない比較例14と比較して化合物Aの含量の低下がやや抑制されたものの、b値が増加することが分かった。
(3)これに対し、粘着剤層に安定化剤として、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、チオ硫酸ナトリウム、2-MBI、没食子酸プロピル、α-トコフェロール、亜硫酸ナトリウム、又は亜硫酸水素ナトリウムを含む実施例20~26では、苛酷条件での保存下でも、化合物Aの含量の低下が抑制され、b値の増加も抑制されることが分かった。
【0177】
表11の結果から、以下の点が明らかである。
(1)粘着剤層に安定化剤を含有しない比較例17では、製剤の熱苛酷条件及び曝光条件での保存下で、化合物Aの含量が低下することが分かった。これに対し、粘着剤層に安定化剤を含有させた実施例27~34では、化合物Aの含量の低下が抑制された。
(2)また、安定化剤である2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールと、チオ硫酸ナトリウム又は2-MBIの組み合わせにより、製剤の安定性は、顕著に向上することが分かった。
(3)さらに、安定化剤である2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、チオ硫酸ナトリウム及び2-MBIを単独又は組み合わせて配合することにより、曝光条件においても、製剤中の化合物Aの安定化効果が維持されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明によれば、レブリン酸を含有することにより皮膚透過性に優れ、使用時はタンドスピロンの薬効が発揮されるのに十分な血中濃度が維持できるタンドスピロン含有経皮吸収製剤を提供することができる。さらに、特定の添加剤を製剤中に含有させることにより、保存安定性に優れ、有効成分薬物であるタンドスピロンの皮膚透過性が良好であるタンドスピロン含有経皮吸収製剤(貼付製剤)を提供することができる。
【0179】
本出願は、日本国で2020年2月19日に出願された特願2020-026337及び2020年8月5日に出願された特願2020-132798を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。