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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ヒートシール装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/10 20060101AFI20250212BHJP
【FI】
B65B51/10 200
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022508270
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2021009718
(87)【国際公開番号】W WO2021187293
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020045005
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(73)【特許権者】
【識別番号】000180298
【氏名又は名称】四国化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 国男
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】籔内 孝憲
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-213115(JP,A)
【文献】特開2006-069641(JP,A)
【文献】特開2009-190761(JP,A)
【文献】特開2015-134620(JP,A)
【文献】特開2002-048239(JP,A)
【文献】特開2005-035643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/10
B65B 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開口部がキャップでシールされた製品を製造する製造装置で用いられるヒートシール装置において、
容器が移動する経路に加圧板が設けられており、
前記キャップの加熱方法が誘導加熱であり、
前記加圧板には容器に被せられたキャップを押圧するシールヘッドと、前記キャップを誘導加熱により発熱させる加熱部が配置され、
シールヘッドの温度を計測する温度計測装置および温度計測装置の計測結果により容器搬送駆動源に制御信号を送信する制御装置を有し、
前記制御装置は、シールヘッドの温度に応じて、容器の移動速度を調整し、シールヘッドの温度が低い場合には移動速度を遅くし、シールヘッドの温度が高い場合には移動速度を速くして、キャップの加熱時間を調整する機能を有し、
温度計測装置の上流側に容器検出センサを設け、
容器検出センサが容器を検出してから一定時間経過後に温度計測装置がシールヘッドの温度計測を開始して、
シールの開始時点においては、制御装置の制御信号が容器搬送駆動源に発信され、容器の移動速度の調整が完了している機能を有し、
シールヘッドの容器口部と接する部分には、弾性材が配置され、温度計測装置は、弾性材の温度計測を行う機能を有し、
前記温度計測装置は、加圧板の全てのシールヘッドについて温度を計測する機能を有し、
前記制御装置は、シールヘッドが低温の場合に生じるシール不良を防止するため、全てのシールヘッドの各々におけるシリコンゴムの温度計測値の中から最低温度を特定する機能を有し、
前記制御装置は、前記最低温度が、キャップの温度が低下せずホットメルトの接着力が不十分とならずキャップと容器の密封性に問題が生じない温度である下限温度より低温であるか、キャップの温度が高くなり過ぎずシールの際に容器のフランジ部が溶けるという不具合が発生せず開封感に問題が生じない温度である上限温度より高温であるか、或いは、前記下限温度と上限温度の間の温度であるかを判断する機能を有し、
前記容器検出センサが容器を検出してからシールを開始するまでの時間は、容器を検出してから温度測定までの時間と、全ての前記シリコンゴムの温度計測が終了するのに必要な時間と、制御装置から容器の移動速度を切り替える制御信号を送信した後、実際に容器の移動速度が切り替えられるのに必要な時間とを合算した時間であることを特徴とするヒートシール装置。
【請求項2】
シールヘッドは、加圧板に円周状に配置され、シールヘッドに接した容器は、加圧板の回転に合わせて移動する請求項1に記載のヒートシール装置。
【請求項3】
請求項1、2の何れかに記載のヒートシール装置を用いたヒートシール方法において、
温度計測装置によりシールヘッドの温度を計測し、
シールヘッドの温度計測結果に基づいて容器搬送駆動源に制御信号を送信し、
シールヘッドの温度に応じて、キャップの加熱時間を決定することを特徴とするヒートシール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートシール装置に関し、より詳細にはシール部材と接触する弾性材の温度に基づいて最適なヒートシールを行う機能を有するヒートシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種飲料を収容する容器(例えば樹脂製容器)の開口部(口部)は、製造工程において、キャップ(例えば、アルミニウム製のキャップ)によりシールされる場合がある。係るシールを行うことにより、内容物である飲料が漏洩することや、異物が容器や飲料内に侵入することを防止している。ここで、容器の口部をキャップでシールすることは、製造ラインにおける充填機において実行される。
【0003】
飲料を容器に充填する充填機にはカッティングヘッドが組み合わされており、飲料が充填された容器に対してキャップが被される(冠帽)。冠帽した時点ではキャップは容器をシールしておらず、キャップが容器に載っただけの状態となっている。
搬送手段に載置された容器にキャップが被せられた後、シールする際には、先ず、シールヘッドでキャップを容器に対して押圧する。
そして、例えば金属製(アルミニウム等)のキャップであれば、電磁誘導によりうず電流を発生させ、キャップ自体を発熱させる。キャップの容器側にはホットメルトが塗布されており、加熱されることでホットメルトが溶融し、キャップは容器の口部に接着される。
【0004】
ここで、キャップを押圧するシールヘッドには、キャップを容器に均等に押圧するため、弾性材(例えばシリコンゴム)が配置されている。弾性材の温度について、従来技術では特に測定は為されておらず、弾性材の温度とは無関係に例えば金属製のキャップをホットメルトにより容器に接着していた。
しかし、例えば、電磁誘導によって発生したうず電流が一定であっても、弾性材の温度が低い場合は、誘導加熱の結果として生じたキャップの熱が弾性材に奪われてしまい、キャップの温度が上昇せず、ホットメルトによるキャップの接着が不十分となり、密封性に問題が生じてしまう(「シール不良」を生じる)。また、弾性材の温度が低い場合に合わせて、誘導加熱量を大きく設定すると、弾性材の温度が上昇した際に、シールが強くなり過ぎ、及び/又は、容器フランジ部が溶ける等の不具合が発生し、開封に際して問題が生じてしまう(「シール不良」及び/又は「開封感の問題」を生じる)。
【0005】
その他の従来技術として、シールヘッドの温度を計測し、その温度を適切な温度に調整するヒートシール装置が開示されている(特許文献1参照)。しかし、係る従来技術では、上述した様なシール不良や開封感の問題の発生を防止できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-189323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、キャップの加熱量が不適当でシール不良や開封感の問題を生じることを防止することが出来るヒートシール装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のヒートシール装置(10)は、容器(1:例えば樹脂製容器)の開口部(1A:口部)がキャップ(2:例えばアルミニウム製キャップ)でシールされた製品を製造する製造装置(100)で用いられるヒートシール装置(10)において、
容器(1)が移動する経路に加圧板(5)が設けられており、
前記キャップ(2)の加熱方法が誘導加熱であり、
前記加圧板(5)には容器(1)に被せられたキャップ(2)を押圧するシールヘッド(4)と、前記キャップ(2)を誘導加熱により発熱させる加熱部(3)が配置され、
シールヘッド(4)の温度を計測する温度計測装置(7:例えば、非接触の赤外線放射温度計)および温度計測装置(7)の計測結果により容器搬送駆動源(例えばインバータ)に制御信号を送信する制御装置(8:コントロールユニット)を有し、
前記制御装置(8)は、シールヘッド(4)の温度に応じて、容器(1)の移動速度を調整し、シールヘッド(4)の温度が低い場合には移動速度を遅くし、シールヘッド(4)の温度が高い場合には移動速度を速くして、キャップ(2)の加熱時間を調整する機能を有し、
温度計測装置(7)の上流側(容器1が供給される側)に容器検出センサ(9)を設け、
容器検出センサ(9)が容器(1)を検出してから一定時間経過後に温度計測装置(7)がシールヘッド(4)の温度計測を開始して、
シールの開始時点においては、制御装置(8)の制御信号が容器搬送駆動源(例えばインバータ)に発信され、容器(1)の移動速度の調整が完了している機能を有し、
シールヘッド(4)の容器口部と接する部分にはシリコンゴム(6)が配置され、温度計測装置(7)は、シリコンゴム(6)の温度計測を行う機能を有し、
前記温度計測装置(7)は、加圧板(5)の全てのシールヘッド(4)について温度を計測する機能を有し、
前記制御装置(8)は、シールヘッド(4)が低温の場合に生じるシール不良を防止するため、全てのシールヘッド(4)の各々におけるシリコンゴム(6)の温度計測値の中から最低温度を特定する機能を有し、
前記制御装置(8)は、前記最低温度が、キャップ(2)の温度が低下せずホットメルトの接着力が不十分とならずキャップ(2)と容器(1)の密封性に問題が生じない温度である下限温度より低温であるか、キャップ(2)の温度が高くなり過ぎずシールの際に容器(1)のフランジ部が溶けるという不具合が発生せず開封感に問題が生じない温度である上限温度より高温であるか、或いは、前記下限温度と上限温度の間の温度であるかを判断する機能を有し、
前記容器検出センサ(9)が容器(1)を検出してからシールを開始するまでの時間は、容器(1)を検出してから温度測定までの時間と、全ての前記シリコンゴム(6)の温度計測が終了するのに必要な時間と、制御装置(8)から容器の移動速度を切り替える制御信号を送信した後、実際に容器(1)の移動速度が切り替えられるのに必要な時間とを合算した時間であることを特徴としている。
【0011】
本発明において、シールヘッド(4)は、加圧板(5)に円周状に配置され、シールヘッド(4)に接した容器(1)は、加圧板の回転に合わせて移動するのが好ましい。
【0012】
上述した本発明のヒートシール装置(10)を用いた方法において、
温度計測装置(7:例えば、非接触の赤外線放射温度計)によりシールヘッド(4)の温度を計測し、
シールヘッド(4)の温度計測結果に基づいて容器搬送駆動源(例えばインバータ)に制御信号を送信し、
シールヘッド(4)の温度に応じて、キャップ(2)の加熱時間を決定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
上述の構成を具備する本発明によれば、シールヘッド(4)の温度を計測する温度計測装置(7:例えば、非接触の赤外線放射温度計)と、シールヘッド(4)の温度に応じて、容器の移動速度を調整する機能を有する制御装置(8:コントロールユニット)を有しているので、例えば、シールヘッド(4)の温度が低温の場合には、容器(1)の移動速度を遅くして、加熱(例えば誘導加熱)する時間を長くすることで、所望の温度までキャップ(2)を昇温することが出来る。その結果、ホットメルトによりキャップ(2)が容器(1)に確実に接着され、シール不良を防止出来る。
一方、シールヘッド(4)の温度が高温の場合には、容器(1)の移動速度を速くし、以て、キャップ(2)を加熱(例えば誘導加熱)する時間を短縮する。これにより、キャップ(2)の温度は適正な範囲に抑えられ、シールが強くなり過ぎることや、容器(1)のフランジ部が溶けてしまうこと等の不具合が防止され、開封感の問題を生じることやシール不良が防止される。
換言すれば、本発明では、加圧板(5)に配置された弾性材(6)の温度をパラメータとして容器(1)の移動速度を制御しているので、シール不良及び開封感の問題を防止することが可能になった。
【0014】
本発明において、温度計測装置(7)の上流側(容器1が供給される側)に容器検出センサ(9)を設け、
同容器検出センサ(9)が容器を検出してから一定時間経過後に温度計測装置(7)がシールヘッド(4)の温度計測を開始して、
シールの開始時点においては、制御装置(8)の制御信号が容器搬送駆動源(例えばインバータ)に発信され、容器搬送速度の調整が完了していれば、適切なタイミングで効率的にヒートシールを実行することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態が適用される製造ラインを示す説明図である。
図2図1の製造ラインにおける充填機を示す平面図である。
図3】充填機の要部を示す拡大正面説明図である。
図4】充填機のブロック図である。
図5】図示の実施形態の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態において、容器1は樹脂製であり、キャップ2はアルミニウム製であり、弾性材6は例えばシリコンゴムで構成されている。ただし、容器1、キャップ2および弾性材6は、その他の材質で構成することも可能である。
【0017】
図1において、製造装置100には充填機20が設置され、充填機20により容器1に飲料が充填され、キャップを被せた後(冠帽、キャッピングの後)、シールする。また、冠帽の時点では、キャップ2は容器1に載っただけの状態であり、容器1と接着していないため、充填機20にはヒートシール装置10が設けられており、ヒートシール装置10でキャップ2を容器1に接着している。また、製造装置100においては、必要に応じて、充填機20の前後に検査装置や製造機器を設置する。
なお、明確には図示されていないが、整立機30は、容器1の開口部(口部)を上方に向けて整列して、順次、次工程に送り出す機能を有している。
【0018】
ここで、充填機20は充填部21、中間スターホイール22、シール部23を有している(図2参照)。充填機20内を移動する容器1(図3図4参照)の経路は、図2では矢印Aで示されている。
中間スターホイール22の符号Bで示す領域(破線円で示す)は、カッティングヘッド24(図1参照)で成形されたキャップ2を容器1に冠帽(キャッピング)する領域である。
ホイール状のシール部23はヒートシール装置10を備え、ヒートシール装置10は加熱部3を備え、加熱部3では容器1に被せられたキャップ2を加熱する。キャップ2の容器側には熱可塑性の樹脂(ホットメルト)が塗布されており、加熱部3で加熱することにより、ホットメルトが溶融し、以て、キャップ2を容器1に接着する。
【0019】
図3において、充填機20のシール部23(図2)のヒートシール装置10は、加熱部3、円板形状の加圧板5、シールヘッド4を有しており、シールヘッド4は加圧板5の一部を構成しており、容器1に被せられたアルミキャップ2を加圧する機能を有している。
加圧板5は中心軸Cを有する円板形状であり、図4で示す様に、加圧板5の外周近傍の円周方向に複数(例えば36個)のシールヘッド4が設けられている。図3では、加圧板5の円周方向に複数存在するシールヘッド4の一つのみを示している。
シールヘッド4の容器1側(図3で下方側)には収納部4Aが形成されており、収納部4Aには弾性材であるシリコンゴム6が配置されている。シリコンゴムの詳細については後述する。
加圧板5の複数のシールヘッド4の移動経路は、シール部23(図2)における容器1の搬送経路の一部を構成している。そして加圧板5は中心軸C廻りに回転しつつ、シールヘッド4のシリコンゴム6を介してアルミキャップ2を容器1に押圧し、以て容器1を搬送している。
【0020】
図3で示す様に、搬送手段11に載置された容器1の上端の口部1A(開口部)にはアルミキャップ2が被せられ、上述した様に、キャップ2はシリコンゴム6を介して容器1側(図3では下側)に押圧されている。
キャップ2の容器1側にはホットメルト(図3で符号HMで示す)が塗布されており、容器1の搬送経路に設けた加熱部3による誘導加熱によりアルミキャップ2が自己発熱し、ホットメルトHMが溶融して、キャップ2は容器1の口部1Aに接着する。
加圧板5の上方には、加熱部3を構成する加熱コイル3Aが配置されている。加熱コイル3Aに高周波電流を流すことにより加熱コイル3Aに1次磁界MF1が発生し、1次磁界MF1によりシールヘッド4に2次磁界MF2が生じると、アルミキャップ2に3次磁界MF3が生じ、3次磁界MF3によりアルミキャップ2にはうず電流が発生して、アルミキャップ2が発熱する。
明確には図示されないが、図3で示す加圧板5のシールヘッド4の上方には加熱コイル3A及び高周波電流を供給する手段(図示せず)が配置されている。
【0021】
図示の実施形態では、加圧板5は円板形状で、シールヘッド4は加圧板5内に円周上に配置されて加熱方法は誘導加熱である。ただし、いずれの構成も特に限定はなく、シールヘッド4の配置は例えば直線状でも問題はなく、加熱方法も誘導加熱であるかは問わず、その他の構成に対応して適宜設定することが出来る。
また、加圧板5の下方の収容部4Aに配置される弾性材としてシリコンゴム6を例示したが、当該弾性材としては、弾性、耐熱性、離型性(型に付着しない性質)、絶縁性(非電導性)、衛生性を有する材料であれば、特に限定は無い。換言すれば、シリコンゴムはその様な性質を有する材料の一例であり、シリコンゴムの表面をフッ素樹脂(テフロン(登録商標))で加工したものであっても良い。
【0022】
図3において、シリコンゴム6を介して、アルミキャップ2を容器1側に押圧するに際し、上述した様に、アルミキャップ2に接触するシリコンゴム6の温度が低いとアルミキャップ2の熱がシリコンゴム6に奪われてしまう。そのため、アルミキャップ2の温度が上がらず、ホットメルトが十分に溶融せず、アルミキャップ2と容器1のシール箇所或いは接着箇所における密封性が不十分になってしまう。
一方、シリコンゴム6の温度が高いと、アルミキャップ2と容器1のシール或いは接着が強くなり過ぎ、及び/又は、容器1のフランジ部が溶ける等の不具合が発生する。
【0023】
図4において、シール部23の下流側端部(図4では右端)には温度計測装置7(温度センサ)が設けられており、温度センサ7は近傍のシールヘッド4の温度を計測し、その計測結果を制御装置8(コントロールユニット)に伝達する機能を有している。
また、充填機20は容器検出センサ9、インバータ(容器搬送駆動源:図示せず)を有しており、当該インバータは、コントロールユニット8の制御信号により加圧板5の回転速度(すなわち容器1の移動速度)を制御・駆動する機能を有している。
容器1は充填部21、中間スターホイール22を流れ、シール部23でアルミキャップ2(図3)と容器1のシール(接着)が行われる。容器1の経路は矢印Aで示されている。
【0024】
図4において、シール部23では、容器1は、加圧板5の円周方向に複数設けられたシールヘッド4に対応して位置している。換言すれば、シールヘッド4に対応する箇所の下方に容器1(キャップ2が冠帽された容器1)が配置され、容器1は加圧板5の回転によりシール部23内を搬送される。
加熱部3は加圧板5の一部領域に固定、配置され、図4では加圧板5の上方に加熱部3が配置されており、加熱コイル3A(図3参照)及び高周波電流発生手段(図示しない)が配置されている。
【0025】
図4において加熱部3の出口近傍(下流側端部:図3では右端)に設けられた温度センサ7によりシリコンゴム6(弾性材、図3)の温度を検出する。
ここでシリコンゴム6の温度検出は、例えば非接触の赤外線放射温度計を用いて行なわれる。非接触の赤外線放射温度計は公知の市販品を用いることが出来る。
温度センサ7で検出されたシリコンゴム6(加熱部3の出口近傍のシールヘッド4におけるシリコンゴム6)の温度計測結果は、信号ラインSL1を介して制御装置8(コントロールユニット)に送信される。
コントロールユニット8は、温度センサ7から取得した温度計測結果に基づき、適正な加圧板5の回転速度を決定し、信号ラインSL2を介して、図示しないインバータ(容器搬送駆動源)に制御信号(加圧板5の回転速度に関する制御信号)を送信する。
【0026】
図示しないインバータにコントロールユニット8から制御信号(加圧板5の回転速度に関する制御信号)を送信することにより、加圧板5の回転速度すなわち容器1の移動速度を制御する。
容器1のキャップ2に接触するシリコンゴム6の温度が低温の場合には、コントロールユニット8から図示しないインバータに制御信号を送信して、加圧板5の回転速度を遅くする。その結果、容器1の移動速度が遅くなり、アルミキャップ2を誘導加熱する時間がより長くなり、所望の温度までキャップ2を昇温することが出来るので、ホットメルトによりアルミキャップ2が容器1に確実に接着される。
【0027】
一方、シリコンゴム6の温度が高温過ぎる場合には、加圧板5の回転速度を速くして、容器1の移動速度を速くする。その結果、キャップ2を誘導加熱する時間が短縮され、ホットメルトが適正に溶融し、容器1のフランジ部が溶けてしまうこと等の不具合も防止される。
また、例えば、事前にシリコンゴム6の温度に合わせて加圧板5の回転速度すなわち容器1の移動速度を設定し、昇温に合わせて、回転速度を変化させることも可能である。
ここで、容器1の移動速度は、シリコンゴム6の温度に応じて連続的に変化しても良いし、断続的に変化しても良い。容器1の移動速度を断続的に変化させる場合には、例えば、予め温度センサ7の温度計測結果に応じて複数段階(例えば5段階)の加圧板回転速度を設定しておく。
【0028】
図4において、ヒートシール装置10の上流側(図示の実施形態では充填部21の入口より上流側)には、容器1の通過を検出する容器検出センサ9が配置され、容器検出センサ9の検出信号は信号ラインSL3を介してコントロールユニット8に送信される。ここで、図4を用いて、図示の実施形態における作動について説明する。
【0029】
図4において、容器1がP1に移動すると、容器検出センサ9の検出信号がコントロールユニット8に送信される。検出信号を受けた後、コントロールユニット8はSL1を介して、温度センサ7に温度の計測を開始する信号を送信する。
実際には、容器1を検出してから温度測定までは、第1のタイムラグが発生し、温度を測定し始めるタイミングにおいて容器1はP10の位置まで移動している。
【0030】
図示の実施形態では36個のシリコンゴム6の温度を計測した後、36個の計測結果中の最低温度に基づいて、加圧板5の回転速度を決定する。例えば、シリコンゴム6の温度に合わせて予め設定された回転速度(例えば5段階の回転速度)の中から、該当するシリコンゴム6の温度に対応する回転速度を選択する。そして、選択された回転速度に対応する制御信号が、コントロールユニット8からインバータ(図示せず)に送信される。
多数の計測値(36個のシリコンゴム6の温度の計測値)における最低温度に基づいて加圧板5の回転速度を決定しているのは、図示の実施形態では、シールヘッド4が低温の場合に生じるシール不良を防止することが最大の目的だからである。
【0031】
36個のシリコンゴムの温度計測が終了した時点で、容器検出センサ9が最初に検出した容器1は位置P10から位置P46(=10+36)に移動する。すなわち36個のシリコンゴムの温度計測が終了するのに必要な時間、第2のタイムラグが必要である。
また、P46の時点ではまだ、加圧板の回転速度は変更されておらず、ここから、コントロールユニット8からインバータに回転速度を切り替える制御信号を送信した後、実際に加圧板5の回転速度が切り替えられる(変更される)には第3のタイムラグが必要となる。
当該タイムラグ3は位置P46にあった容器1が加熱部3に流入する直前の位置P65まで移動するのに要する時間に相当する。
【0032】
上述した様に、図4において、容器検出センサ9が容器1を検出してから加熱部に突入するまでには、第1のタイムラグと第2のタイムラグと第3のタイムラグの和に相当する所定時間の経過が必要である。換言すれば、容器1が加熱部に突入する時点で加圧板5の回転速度の設定を完了させるためには、適切な位置に容器検出センサを設けて、制御を開始させる必要がある。シールヘッドの個数やインバータの種類によって、第1~第3のタイムラグは変動するため、上述した構成に対応して第1~第3のタイムラグを決定する必要がある。
【0033】
図示の実施形態における制御を、主として図5を参照して説明する。
図5において、ステップS1では、充填機20内の所定位置(位置P1)に配置された容器検出センサ9(図4)により、搬送される容器1(図3図4)を検出したか否かを判断する。
ステップS1において、容器1を検出した場合(ステップS1が「Yes」)はステップS2に進み、容器1を検出しない場合はステップS1を繰り返す(ステップS1が「No」のループ)。
【0034】
ステップS2(容器検出センサ9が容器1を検出した場合)では、温度センサ7(図4)によるシールヘッド4の温度(シリコンゴム6の温度)の計測を開始する。当該温度計測は、加圧板5(図3図4)の全ての(例えば36個の)シールヘッド4について順次行なう。図示の実施形態においては、シールヘッド4の温度計測は、ステップS1で容器1を検出後、所定時間(図4を参照して上述した「第1のタイムラグ」)経過後に開始される。そしてステップS3に進む。
ステップS3では、加圧板5の円周方向等間隔に配置された全ての(36個の)シールヘッド4について温度を計測したか否かを判断する。
ステップS3の判断の結果、加圧板5の全てのシールヘッド4について温度を計測した場合(ステップS3が「Yes」)はステップS4に進み、加圧板5の全てのシールヘッド4については温度を計測していない(温度計測が完了していない)場合(ステップS4が「No」)はステップS2に戻り、シールヘッド4の温度計測を継続する。
【0035】
ステップS4(加圧板5の全てのシールヘッド4について温度を計測した場合)では、ステップS3で計測した加圧板5の全ての(36個の)シールヘッド4におけるシリコンゴム6の温度計測値の中から最低温度を特定する。そして、特定された最低温度が所定範囲内であるか、所定の下限温度より低温であるか、或いは所定の上限温度より高温であるか、を判断する。
加圧板の回転速度により、最適な温度範囲は異なるが、「所定の下限温度」は、キャップ2の温度が低下せず、ホットメルトの接着力が不十分とならず、キャップ2と容器1のシール(接着)の密封性に問題が生じない最低温度であり、また「所定の上限温度」は、キャップ2の温度が高くなり過ぎず、シールの際に容器1のフランジ部が溶ける等の不具合が発生せず、開封感に問題が生じない最高温度である。
従って、所定の下限温度以上で且つ所定の上限温度以下(所定範囲)であれば、適正なヒートシールが実現出来る。
【0036】
ステップS4において、最低温度が「所定の下限温度」より低い場合はステップS5に進み、最低温度が「所定の上限温度」より高い場合はステップS6に進み、最低温度が「所定範囲」である場合はステップS7に進む。
ステップS5(最低温度が「所定の下限温度」より低い場合)では、インバータに制御信号を送信して、加圧板5の回転速度を低下して、容器1の移動速度を低下させる。
容器1の移動速度を低下させて容器1の移動速度を低下させることにより、誘導加熱する時間が長くなり、キャップ2を誘導加熱するのに適正な時間を確保することが出来る。
ステップS5が終了したら、ステップS8に進む。
【0037】
ステップS6(最低温度が「所定の上限温度」より高い場合)では、インバータに制御信号を送信して加圧板5の回転速度を速め、容器1の移動速度を速くする。加圧板5の回転速度を上昇させることにより、キャップ2を誘導加熱する時間が短縮され、ホットメルトの接着力が強くなり過ぎることが抑制されて適正になり、容器1のフランジ部が溶けてしまう等の不具合が防止される。ステップS6が終了したら、ステップS8に進む。
ステップS7(最低温度が「所定範囲」である場合)では、加圧板5の回転速度を維持し、容器1の移動速度を維持する。
ステップS7が終了したら、ステップS8に進む。
【0038】
ここで、上述したステップS4~ステップS7において、シールヘッド4の最低温度が、「下限温度より低い温度」、「上限温度より高い温度」、「所定の範囲(下限温度以上、且つ上限温度以下)」に、それぞれ「加圧板5の回転速度を低下させる」、「加圧板5の回転速度を上昇させる」、「加圧板5の回転速度を維持する」の制御を行っている。
それに代えてシールヘッド4の最低温度と加圧板5の回転速度の関係を予め定め、当該関係とシールヘッド4の最低温度に基づき、加圧板5の回転速度を決定することも出来る。ここで前記関係は、表、演算式、その他であっても良い。
ステップS8では、図5で示す制御を終了するか否かを判断する。ここで、終了の判断基準については、実施形態に合わせて任意に設定することができる。
ステップS8において、制御を終了しない場合(ステップS8がNo)はステップS2に戻り、温度計測、加圧板5の回転速度制御を継続する。
【0039】
図示の実施形態によれば、シールヘッド4のシリコンゴム6の温度を温度センサ7(例えば、非接触の赤外線放射温度センサ)で計測し、シリコンゴム6の温度が低い場合にはインバータ(容器搬送駆動源)に制御信号を送信して加圧板5の回転速度(容器1の移動速度)を遅くし、シリコンゴム6の温度が高温である場合には加圧板5の回転速度(容器1の移動速度)を速くしている。
そのため、シリコンゴム6の温度が低温の場合にはキャップ2の温度が低下することが防止され、所望の温度まで誘導加熱によりキャップ2を昇温して、ホットメルトによりキャップ2が容器1に確実に接着され、シール不良を防止することが出来る。
一方、シリコンゴム6の温度が高温の場合には、加圧板5の回転速度を速くして容器1の移動速度を速くし、キャップ2を誘導加熱する時間を短縮し、以て、キャップ2の温度を適正な範囲に抑え、シールが強くなり過ぎることを防止し、容器1のフランジ部が溶けてしまうこと等の不具合を防止する。
換言すれば、図示の実施形態では、加圧板5に配置されたシリコンゴム6(弾性材)の温度をパラメータとして充填機20の加圧板5の回転速度或いは容器1の移動速度を制御して、密封性及び開封感に問題が無い製品を提供することが出来る。
【0040】
また、図示の実施形態において、充填機20内であって温度センサ7(ヒートシール装置10)の上流側に配置した容器検出センサ9からの容器1の検出信号に基づき、シールヘッド4の温度計測を開始する。
そして温度計測の終了後(加圧板5の全てのシートヘッド4の温度計測)、全ての計測値の中の最低温度に基づき切り替えるべき加圧板5の回転速度を決定し、当該切り替えの制御信号をインバータに送信し、実際に加圧板5の回転速度を切り替える。
その際、コントロールユニット8は、容器1を検出してから制御を開始して、容器の検出位置は、前記第1~第3のタイムラグを考慮した位置とするため、適切なタイミングで効率的にヒートシールを実行して、無駄な電力供給(無駄な誘導加熱)が行われてしまうことを防止し、或いは、必要なタイミングで確実に誘導加熱を実施することが出来る。
【0041】
図示の実施形態において、口部の大きさが外径25mm、28mm、35mmの容器を用いて、キャップ2の加熱時間とシリコンゴム6の温度の関係を確認した。
キャップ2の加熱時間とシリコンゴム6の温度を変化させ、その時のシール状態を確認した結果を、表1(口部の大きさが外径25mm)、表2(口部の大きさが外径28mm)、表3(口部の大きさが外径35mm)に示す。
なお、各表中の
符号「〇」は適切なシール状態であることを示し、
符号「×」は加熱時間が短く、キャップの接着が不十分な状態であることを示し、
符号「××」はシールが強くなり過ぎ、及び/又は、容器のフランジが溶けた状態となったことを示している。
表1
表2
表3
【0042】
表1~表3の結果として、下記式を満たすように、加圧板の回転速度を制御して、加熱時間を調整すればよいことを見出した。
((94.0-y)×((d+50)/75))/39.6
<x
<((102-y)×((d+50)/75))/35.6
x:キャップの加熱時間(秒)、y:シリコンゴム6の温度(℃)、d:口部の大きさの外径(mm)
また、図示の実施形態は、口部の大きさの外径が20mm~40mmの容器において適応可能であることが確認された。
なお、装置の処理能力やキャップの形状、材質、加熱部の構造により、諸条件が変わる場合は、上述した式を再構築する必要がある。
【0043】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0044】
1・・・容器
1A・・・開口部(口部)
2・・・キャップ(アルミニウム製キャップ)
3・・・加熱部
4・・・シールヘッド
5・・・加圧板
6・・・弾性材(例えばシリコンゴム)
7・・・温度センサ(例えば、非接触の赤外線放射温度センサ)
8・・・コントロールユニット(制御装置)
9・・・容器検出センサ
10・・・ヒートシール装置
100・・・製造装置
図1
図2
図3
図4
図5