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特許7633234診断/治療支援ロボット、診断/治療支援ロボットシステム、及び診断/治療支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】診断/治療支援ロボット、診断/治療支援ロボットシステム、及び診断/治療支援方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/37 20160101AFI20250212BHJP
【FI】
A61B34/37
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022514129
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2021015000
(87)【国際公開番号】W WO2021206161
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2020071351
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020094574
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康彦
(72)【発明者】
【氏名】亀山 篤
(72)【発明者】
【氏名】掃部 雅幸
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0177558(US,A1)
【文献】国際公開第2017/002143(WO,A1)
【文献】中国実用新案第209826974(CN,U)
【文献】特開2017-104453(JP,A)
【文献】特開2005-261734(JP,A)
【文献】特開2002-085353(JP,A)
【文献】国際公開第2019/092372(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110948505(CN,A)
【文献】鐘南山氏のチームなどがスマート化咽頭拭いロボットシステムを開発,2020年03月10日,https://spc.jst.go.jp/news/200302/topic_2_01.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30-34/37
A61B 10/00-10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者によって遠隔操作される手術マニピュレータを備える診断/治療支援ロボットであって、前記手術マニピュレータが、先端部に、被施術者に対して手術を行うための手術インストゥルメントが装着されるインストゥルメント装着部を含むロボットアームを備え、前記インストゥルメント装着部が、前記手術インストゥルメント以外のインストゥルメントであって、対象者に対して感染症の診断及び治療の少なくともいずれかの補助行為を行うための補助インストゥルメントを装着することが可能である、診断/治療支援ロボットと、
前記診断/治療支援ロボットの前記手術マニピュレータを前記操作者が遠隔操作するための遠隔操作ユニットと、
前記手術マニピュレータの前記ロボットアームの前記インストゥルメント装着部に装着された、前記対象者に対する診断/治療を行う診断/治療エリアの状況を撮像するための第1撮像器と、を含み、
前記手術マニピュレータが、複数の前記ロボットアームを備えており、
複数の前記ロボットアームは、前記インストゥルメント装着部に前記補助インストゥルメントが装着された診断/治療アームと、前記インストゥルメント装着部に前記第1撮像器が装着された撮像アームと、を含み、
前記遠隔操作ユニットは、前記第1撮像器で撮像された前記診断/治療エリアの状況を表示するための第2表示器と、前記操作者を撮像する第2撮像器と、を含み、
前記手術マニピュレータは、さらに、前記第2撮像器で撮像された前記操作者の画像を表示するための第1表示器を含む、診断/治療支援ロボットシステム。
【請求項2】
前記診断/治療支援ロボットが、第2マイクによって取得された前記操作者の声を前記対象者に伝えるための第1スピーカ及び前記対象者の声を取得するための第1マイクを備え、
前記遠隔操作ユニットが、前記第1マイクによって取得された前記対象者の声を前記操作者に伝えるための第2スピーカ及び前記操作者の声を取得するための前記第2マイクを備える、請求項に記載の診断/治療支援ロボットシステム。
【請求項3】
感染者又は被疑感染者を隔離するための隔離エリアに前記診断/治療支援ロボットが配置されており、前記隔離エリアでない通常エリアに前記遠隔操作ユニットが配置されている、請求項又はに記載の診断/治療支援ロボットシステム。
【請求項4】
前記補助インストゥルメントが、診断/治療部材を保持する保持インストゥルメントであり、
前記保持インストゥルメントが複数のレーザ光指示具を備え、前記複数のレーザ光指示具は、当該複数のレーザ光指示具から出射されるレーザ光が互いに交差するように構成されている、請求項乃至のいずれかに記載の診断/治療支援ロボットシステム。
【請求項5】
前記診断/治療部材が前記対象者から感染症の検体を採取するための綿棒であり、前記保持インストゥルメントが前記綿棒の一方の端部を保持可能な保持部を備え、
前記保持部及び前記複数のレーザ光指示具は、当該複数のレーザ光指示具から出射されるレーザ光が互いに交差する領域が、前記保持部によって保持された綿棒の前記一方の端部から他方の端部に向かう方向において、当該保持部より前記他方の端部側に位置するように配置されている、請求項に記載の診断/治療支援ロボットシステム。
【請求項6】
前記診断/治療支援ロボットシステムが前記対象者の横顔を撮像するための補助撮像器を含み、
前記第1撮像器が前記対象者の正面の顔を撮像するためのものであり、
前記第2表示器は、前記第1撮像器で撮像された画像及び又は前記補助撮像器で撮像された画像を表示するよう構成されている、請求項又はに記載の診断/治療支援ロボットシステム。
【請求項7】
複数の前記ロボットアームは、前記インストゥルメント装着部に前記補助撮像器が装着された補助撮像アームをさらに含む、請求項に記載の診断/治療支援ロボットシステム。
【請求項8】
前記診断/治療部材が前記対象者から感染症の検体を採取するための綿棒であり、
前記第2表示器は、少なくとも前記第1撮像器で撮像された画像又は前記補助撮像器で撮像された画像と一緒に前記保持インストゥルメントに保持された綿棒が前記対象者の体内にどの程度挿入されたかを示す綿棒挿入程度モデルを表示するよう構成されている、請求項又はに記載の診断/治療支援ロボットシステム。
【請求項9】
前記診断/治療部材が前記対象者から感染症の検体を採取するための綿棒であり、
前記遠隔操作ユニットは解除操作部を備えており、
前記手術マニピュレータは、前記解除操作部が操作されると、前記診断/治療アームの前記インストゥルメント装着部に装着された前記保持インストゥルメントに保持された綿棒を解放するように構成されている、請求項乃至のいずれかに記載の診断/治療支援ロボットシステム。
【請求項10】
前記手術マニピュレータは、前記解除操作部が操作されると、前記対象者から前記保持インストゥルメントを遠ざけるように前記診断/治療アームを動作させるよう構成されている、請求項に記載の診断/治療支援ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本件出願は、2020年4月10日に日本特許庁に出願された特願2020-071351号及び2020年5月29日に日本特許庁に出願された特願2020-094574号の優先権を主張するものであり、その全体を参照することにより本件出願の一部をなすものとして引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、診断/治療支援ロボット、診断/治療支援ロボットシステム、及び診断/治療支援方法に関する。
【背景技術】
【0003】
手術以外の医療行為である医療補助行為を支援するロボットが知られている。例えば、特許文献1には、採血管準備装置で準備された在室患者の採血管収納トレイを、ロボットが自走して採血台へ供給する採血システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-130282公開特許公報
【発明の概要】
【0005】
ところで、現在(2020年4月)、新型コロナウイルス(covid-19)による感染症が拡大しており、その診断及び治療の補助行為に多数の医療従事者(医師、看護師等)が必要とされている。また、感染症の場合、医療従事者の感染を防止する必要がある。しかし、上記従来のロボットでは、そもそも、採血を行うことができない。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、医療従事者に代わって診断及び治療の少なくともいずれかの補助行為を行い、それによって、感染症への医療従事者の感染を防止することが可能な診断/治療支援ロボット、診断/治療支援ロボットシステム、及び診断/治療支援方法を提供することを目的としている。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示のある形態(aspect)に係る、診断/治療支援ロボットは、操作者によって遠隔操作される手術マニピュレータを備え、前記手術マニピュレータが、先端部に、被施術者に対して手術を行うための手術インストゥルメントが装着されるインストゥルメント装着部を含むロボットアームを備え、前記インストゥルメント装着部が、前記手術インストゥルメント以外のインストゥルメントであって、対象者に対して感染症の診断及び治療の少なくともいずれかの補助行為を行うための補助インストゥルメントを装着することができる。
【0008】
この構成によれば、インストゥルメント装着部に補助インストゥルメントを装着し、操作者が手術マニピュレータを操作することによって、対象者に対して感染症の診断及び治療の少なくともいずれかを行うことができる。その結果、診断/治療支援ロボットが、医療従事者に代わって診断及び治療の少なくともいずれかを行うことができる。しかも、一般に、手術マニピュレータは、被施術者に対して、精密な動作で手術を行うことができるので、多少複雑な診断又は治療の補助行為であっても適切に行うことができる。また、手術マニピュレータを、感染が疑われる者(以下「被疑感染者」という)又は感染者を隔離する隔離エリア(以下、単に「隔離エリア」という場合がある)に配置するとともに操作者を、隔離されていないエリアである通常エリアに配置し、手術マニピュレータを遠隔操作することによって、操作者の感染症への感染を防止することができる。その結果、医療従事者の感染症への感染を防止することができる。
【0009】
さらに、感染症の流行は、間欠的であるので、感染症が流行していないときには、ロボットアームに手術インストゥルメントを装着して、診断/治療支援ロボットを、本来の手術ロボットとして使用することによって、診断/治療支援ロボットを有効に使用することができる。
【0010】
また、本開示の他の形態(aspect)に係る診断/治療支援ロボットシステムは、上記の診断/治療支援ロボット及び補助インストゥルメントを含む。
【0011】
この構成によれば、診断/治療支援ロボットの手術マニピュレータに診断/治療インストゥルメントを装着することによって、手術マニピュレータを用いて、診断及び治療の少なくともいずれかを行うことができる。
【0012】
また、本開示のさらなる形態(aspect)に係る診断/治療支援ロボットシステムは、上記の診断/治療支援ロボットと、前記診断/治療支援ロボットの前記手術マニピュレータを前記操作者が遠隔操作するための遠隔操作ユニットと、前記手術マニピュレータの前記ロボットアームのインストゥルメント装着部に装着された、前記対象者に対する診断/治療を行うエリアの状況を撮像するための第1撮像器と、を含み、前記手術マニピュレータが、複数の前記ロボットアームを備えており、複数の前記ロボットアームは、インストゥルメント装着部に前記補助インストゥルメントが装着された診断/治療アームと、前記インストゥルメント装着部に前記第1撮像器が装着された撮像アームと、を含み、前記遠隔操作ユニットは、前記第1撮像器で撮像された前記エリアの状況を表示するための第2表示器と、前記操作者を撮像する第2撮像器と、を含み、前記手術マニピュレータは、さらに、前記第2撮像器で撮像された前記操作者の画像を表示するための第1表示器を含む。
【0013】
この構成によれば、手術マニピュレータのロボットアームのインストゥルメント装着部に装着された第1撮像器によって、対象者に対する診断/治療を行うエリア(以下、「診断/治療エリア」という場合がある)の状況を撮像し、その撮像された診断/治療エリアの状況を、遠隔操作ユニットの第2表示器に表示させることができる。それにより、操作者が第2表示器に表示された診断/治療エリアの状況を見ながら手術マニピュレータを操作することができるので、診断又は治療の補助行為を適切に行うことができる。特に、第1撮像器が手術マニピュレータのロボットアームに装着されているので、操作者が、第1撮像器を自在に操作して、見たいものを見たいように見ることができる。
【0014】
また、遠隔操作ユニットの第2撮像器で撮像された操作者の画像を、手術マニピュレータの第1表示器が表示するので、対象者は、操作者の様子(顔の表情、態度等)を知ることができる。その結果、対象者を安心させることができる。このようにして、操作者と対象者とが、映像によるコミュニケーションを行うことができる。
【0015】
また、本開示の他の形態(aspect)に係る診断/治療支援方法は、操作者によって遠隔操作される手術マニピュレータを備え、前記手術マニピュレータが、先端部に、被施術者に対して手術を行うための手術インストゥルメントが装着されるインストゥルメント装着部を含むロボットアームを備え、前記インストゥルメント装着部が、前記手術インストゥルメント以外のインストゥルメントであって、対象者に対して感染症の診断及び治療の少なくともいずれかの補助行為を行うための補助インストゥルメントを装着することが可能である、診断/治療支援ロボットを用いた診断/治療支援方法であって、前記インストゥルメント装着部に、前記手術インストゥルメントに代えて、前記補助インストゥルメントを装着することを含む。
【0016】
この構成によれば、手術マニピュレータが、医療従事者に代わって診断及び治療の少なくともいずれかの補助行為を行い、それによって、感染症への医療従事者の感染を防止することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本開示は、医療従事者に代わって診断及び治療の少なくともいずれかの補助行為を行い、それによって、医療従事者の感染症への感染を防止することが可能な診断/治療支援ロボット、診断/治療支援ロボットシステム、及び診断/治療支援方法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本開示に係る診断/治療支援ロボットシステムのハードウェアの構成の一例を示す外観図である。
図2図2は、図1の手術マニピュレータの構成の一例を示す外観図である。
図3図3は、図2のロボットアームの構成の一例及び補助インストゥルメントの構成の一例を示す外観図である。
図4図4は、図3のインストゥルメント装着部の可動体の構成の一例を示す断面図である。
図5図5は、保持容易化治具が装着された注射器を示す外観図である。
図6図6は、図1の診断/治療支援ロボットシステムの制御系統の構成の一例を示すブロック図である。
図7図7は、補助ロボットの構成の一例を示す外観図である。
図8図8は、手術インストゥルメントを装着した診断/治療支援ロボットを示す外観図である。
図9図9は、本開示のPCR検査への適用例に係る診断/治療支援ロボットシステムの手術マニピュレータの構成の一例を示す外観図である。
図10図10は、本開示のPCR検査への適用例に係る診断/治療支援ロボットシステムの遠隔操作ユニットの構成の一例を示す外観図である。
図11図11は、図9の保持インストゥルメント(補助インストゥルメント)の構成の一例を示す外観図である。
図12図12は、遠隔操作ユニットの表示器に表示される第1撮像器で撮像された画像及び補助撮像器で撮像された画像を示す模式図である。
図13図13は、検体の採取の際に遠隔操作ユニットの表示器に表示される第1撮像器で撮像された画像及び補助撮像器で撮像された画像を示す模式図である。
図14図14は、遠隔操作ユニットの表示器に表示される第1撮像器で撮像された画像、補助撮像器で撮像された画像、及び第1綿棒挿入程度モデルを示す模式図である。
図15図15は、遠隔操作ユニットの表示器に表示される第1撮像器で撮像された画像、補助撮像器で撮像された画像、及び第2綿棒挿入程度モデルを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態)
以下、本開示の具体的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。なお、以下で説明する図は、本発明を説明するための図であるので、それらの図において本開示に無関係な要素が省略される場合、誇張等のために寸法が正確でない場合、複数の図において、互いに対応する要素が一致しない場合等がある。また、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0020】
[ハードウェアの構成]
図1は、本開示に係る診断/治療支援ロボットシステムのハードウェアの構成の一例を示す外観図である。図2は、図1の手術マニピュレータの構成の一例を示す外観図である。なお、図2では、図1の表示器173が省略されている。
【0021】
図1を参照すると、本実施形態の診断/治療支援ロボットシステム1は、診断/治療支援ロボット10と、遠隔操作ユニット20と、を含む。診断/治療支援ロボット10は、感染者又は被疑感染者を隔離する隔離エリアに配置される。隔離エリアは、例えば、陰圧室とされる。遠隔操作ユニット20は、隔離されていないエリアである通常エリアに配置される。
【0022】
以下、この診断/治療支援ロボットシステムの構成を詳しく説明する。
【0023】
<診断/治療支援ロボット10>
図1及び図2を参照すると、診断/治療支援ロボット10は、手術マニピュレータ6と、台車70と、を備える。
【0024】
{台車70}
台車70は、本体70aと前輪141A及び後輪141bとを含む。前輪141Aが駆動輪であり、後輪が操舵輪である。前輪は、本体70aに内蔵された駆動源(不図示。例えば、モータ。)により駆動され、後輪は、この駆動源により操舵される。これにより、台車70が自律走行可能に構成されている。本体70aには、第1制御器31が格納されている。前輪141A及び後輪141Bの動作は、第1制御器31によって制御される。これにより、台車70が自動走可能に構成されている。第1制御器31は、内蔵する走行プログラム又は後述する遠隔操作ユニット20からの走行指令に従って、前輪141A及び後輪141Bの動作を制御する。ここでは、第1制御器31は、走行プログラムに従って前輪141A及び後輪141Bを制御する。これにより、台車70は、予め設定された移動経路を通って、通常エリアから隔離エリアに移動する。
【0025】
{手術マニピュレータ6}
手術マニピュレータ6は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。ここでは、手術マニピュレータ6は、ポジショナ7とロボットアーム130とを含む。
【0026】
ポジショナ7は、ロボットアーム130を、当該ロボットアーム130が対象者(手術の場合は被施術者、診断又は治療の場合であれば感染者又は被疑感染者。)に対する作業を行いやす位置に位置させるためのものである。
【0027】
具体的には、ポジショナ7は、垂直型の多関節ロボットで構成される。ここでは、ポジショナ7は、基台117から先端に向けて配置された第1乃至第6ポジショナリンク111~116とこれらを順に連結する7つの関節JP1~7とを含み、先端にアームベース120が設置されている。基台117は、台車70の本体70aの上面に固定されている。
【0028】
アームベース120は、ロボットアーム130のプラットホームとして機能する。アームベース120には、ロボットアーム130が連結されている。ロボットアーム130の数は特に、限定されない。ロボットアーム130は、ここでは、4つである。なお、ロボットアームを総称する場合又は代表例を示す場合には、参照符号として「130」を付与し、複数のロボットアームを個別に称する(指す)場合には、「130」の後に大文字のアルファベットを付した参照符号を各ロボットアームに付与する。ここでは、手術マニピュレータ6は、第1乃至第4ロボットアーム130A~130Dを備える。
【0029】
図2には、4つのロボットアーム130A~130Dを代表して、1つのロボットアーム130が示されている。図2において、参照符号Gは、隔離エリアの床面を示す。参照符号OTは、ベッドを示す。参照符号Pは、対象者を示す。図2は、診断/治療支援ロボット10を、ベッドOTに仰臥された対象者Pに対する診断及び又は治療に適した位置に位置させ、手術マニピュレータ6によって、対象者Pに対する診断及び又は治療の補助行為を行おうとしている様子を示している。
【0030】
図2を参照すると、アームベース120は、第1取付部121を介して、捩じり回転関節JP7の回動軸線SP1の周りに回動可能に第6ポジショナリンク116に連結されている。また、アームベース120には、第2取付部122を介して、ロボットアーム130が連結されている。
【0031】
ロボットアーム130は、多関節のロボットアームで構成される。ここでは、ロボットアーム130は、基部138から先端に向けて配置された第1乃至第6アームリンク131~136とこれらを順に連結する7つの関節JA1~7とを含み、先端にインストゥルメント装着部137が連結されている。基部138は、アームベース120の第2取付部122に対し、所定の捩じり回動軸線SA1の周りに回動自在に連結されている。所定の捩じり回動軸線SA1は、アームベース120の長手方向から見て、捩じり回転関節JP7の回動軸線SP1と所定の角度で交差するように設定されている。
【0032】
インストゥルメント装着部137には、補助インストゥルメント150が装着されている。
【0033】
{インストゥルメント装着部137}
図3は、図2のロボットアーム130の構成の一例及び補助インストゥルメント150の構成の一例を示す外観図である。なお、図3では、図1の表示器173が省略されている。
【0034】
図3を参照すると、ロボットアーム130は、インストゥルメント装着部137を、3次元方向XA,YA,ZAに自在に移動させ、且つ、インストゥルメント装着部137の姿勢を3次元方向XA,YA,ZAに自在に変化させることができる。
【0035】
補助インストゥルメント150は4(又はそれ以上)の動きの自由度を有している。そしてインストゥルメント装着部137は補助インストゥルメント150を装着して4(又はそれ以上)の動きの自由度で動作させることが可能である。よって、補助インストゥルメント150に複雑な作業を行わせることができる。
【0036】
インストゥルメント装着部137は、取付部137aと、本体137bと、可動体137cと、を含む。取付部137aは、本体137bの一方の側に突設されていて、ロボットアーム130の第6アームリンク136に対し、曲げ回転関節である第7関節JT7の回動軸線(不図示)の周りに回動自在に連結されている。本体137bは、可動体137cを第7関節JT7の回動軸線に直交する方向D1A,D1Bに移動させる。可動体137cには、補助インストゥルメント150が連結されている。従って、インストゥルメント装着部137は、補助インストゥルメント150を、上記方向D1A,D1Bに移動させる。
【0037】
図4は、図3のインストゥルメント装着部137の可動体137cの構成の一例を示す縦断面図である。図4は、図3の可動体137cの長手方向の縦断面を示す。
【0038】
図4を参照すると、可動体137cは、中空の箱状に形成されていて、内部にモータ(例えば、サーボモータ)Mと、このモータMの主軸Rに連結された回転角検知器としてのエンコーダEと、が配置されている。可動体137cの一方の端部の本体137bと反対側の側面には、円柱状の凹部50が形成されている。この凹部50の中心軸は、第7関節JT7の回動軸線と上述の方向D1A,D1Bとに直交する方向に延在する。凹部50の底面の中央部には開口51が形成されている。この開口51から外部に主軸Rが突出するようにモータM及びエンコーダEが設けられている。モータMは、主軸Rが凹部50の中心軸に一致するように配置されている。また、主軸Rの先端部には、雌継手61が設けられている。雌継手61の先端面には、異形断面を有する篏合凹部61aが形成されている。異形断面として、マイナス、プラス、四角形、六角形等が例示される。
【0039】
凹部50の内周面の互いに対向する少なくとも一対の部位に、係止部52が設けられている。この係止部52は、凹部50の半径方向に出没自在な係止ピン51aを備える。係止ピン51aは先端部が半球状に形成されていて、弾性機構(不図示)によって、凹部50の半径方向に付勢されている。
【0040】
一方、後述するように、補助インストゥルメント150は、取付部150dを備えていて、この取付部150dが、先端が開放された円筒状の凸部60を備えている。この凸部60は、凹部50に篏合する形状に形成されている。従って、凸部60の中心軸は、凹部50の中心軸に一致する。凸部60の底面の中央部には開口66が形成されている。この開口66を貫通して凸部60の内部から取付部150dの内部に延びるように、駆動軸63が配置されている。駆動軸63は、開口66に設けられた軸受け64によって、モータMの主軸Rと回転軸が一致するように回動自在に支持されている。駆動軸63の先端部には、雄継手62が設けられている。雄継手62の先端面には、雌継手61の篏合凹部61aに篏合する篏合凸部62aが形成されている。雄継手62は、凸部60が、凹部50の奥まで嵌挿された状態で、丁度、篏合凸部62aが雌継手61の篏合凹部61aに篏挿されるように設けられている。
【0041】
凸部60の外周の互いに反対方向を向いた少なくとも一対の部位に、係合部67が設けられている。この係合部67は、凸部60の半径方向に半球状に凹んだ凹部で構成される。係合部67は、凸部60が凹部50の奥まで嵌挿された状態で、丁度、係合部67に、凹部50の係止ピン51aが進出して、凸部60が、凹部50に係止されるように設けられている。なお、参照符号65は、取付部150dの内部をシールするためのシール機構を示す。
【0042】
補助インストゥルメント150を可動体137c(インストゥルメント装着部137)に取り付けるには、補助インストゥルメント150の凸部60を可動体137cの凹部50に奥まで押し込む。すると、凹部50の係止ピン51aが凸部60の係合部67に進出(進入)して凸部60を凹部50に係止する。これにより、補助インストゥルメント150が可動体137cに取り付けられる。
【0043】
そして、この状態から、凸部60を凹部50から抜く方向に所要の力で引っ張ると、補助インストゥルメント150が可動体137cから抜ける。これにより、補助インストゥルメント150が可動体137cから取り外される。
【0044】
なお、駆動軸63の回転動力は、後述するように、適宜な動力伝達機構を介して、補助インストゥルメント150の爪保持体150bに伝達される。
【0045】
また、可動体137cに撮像器151(図1参照)が装着される場合には、撮像器151に凸部60が取り付けられ、凹部50の雌継手61及び凸部60の雄継手62が省略され、それらの代わりに、撮像器151の制御信号、データ等を伝達する電気接点が凹部50及び凸部60に設けられる。
【0046】
また、可動体137cに手術インストゥルメント180(図8参照)が装着される場合には、手術インストゥルメント180の種類に応じて、凹部50及び凸部60が構成される。
【0047】
手術インストゥルメント180が、モータMによって駆動される駆動部を有する場合、凹部50及び凸部60は、上記と同様に構成される。
【0048】
手術インストゥルメント180が、モータMによって駆動される駆動部を有せず、電気動力、制御信号、データ等の伝達を必要とする場合、凹部50の雌継手61及び凸部60の雄継手62が省略され、それらの代わりに、電気動力、制御信号、データ等を伝達する電気接点が凹部50及び凸部60に設けられる。
【0049】
手術インストゥルメント180が、モータMによって駆動される駆動部を有せず、且つ、電気動力、制御信号、データ等の伝達を必要としない場合、凹部50の雌継手61及び凸部60の雄継手62が省略される。
【0050】
なお、手術インストゥルメント180の可動体137cへの取り付け及び取り外しは、上述の補助インストゥルメント150の場合と同様である。
【0051】
{補助インストゥルメント150}
図1を参照すると、補助インストゥルメント150は、第1ロボットアーム130A、第2ロボットアーム130B、及び第4ロボットアーム130Dの先端部に装着される。
【0052】
ここで、産業用ロボットでは、多種多様な部材を適切に取り扱い又は処理することが可能な多種多様なハンド(エンドエフェクタ)が存在するので、それらの多種多様なハンドを、適宜、修正することによって、多種多様な部材を適切に取り扱い又は処理することが可能な多種多様な補助インストゥルメント150を得ることができる。
【0053】
特に、診断又は治療の補助行為においては、医療従事者が診断/治療部材を手で保持することが多い。補助インストゥルメント150の一例としての保持インストゥルメントは、そのような診断/治療部材を保持することによって、医療従事者に代わって、診断又は治療の補助行為を幅広く行うために、ロボットアーム130の先端に装着されるツールである。
【0054】
診断/治療部材として、例えば、対象者Pの感染症に関する検体を採取する用具、点滴用具、採血用具、又は人工心肺装置のカニューレ等が挙げられる。
【0055】
本実施形態に示すように、これらの診断/治療部材を保持することが可能な補助インストゥルメント150(とりわけ、保持インストゥルメント)を実用化する(利用可能にする)ことによって、感染症の診断又は治療において特に必要な行為を、手術マニピュレータ6を用いて行うことができる。以下では、保持インストゥルメントとして、診断/治療部材を把持するものが例示されるが、保持インストゥルメントは、診断/治療部材を吸着するものであってもよい。
【0056】
さらに、補助インストゥルメント150は、診断/治療部材を保持するもの以外に、切断用具、ノズル、載置用具、等の工具、処理具、搬送具であってもよい。
【0057】
図3を参照すると、補助インストゥルメント150は、例えば、本体150aと、爪保持体150bと、一対の爪150cと、取付部150dと、連結部材150eと、を含む。
【0058】
爪保持体150bは、例えば、一対の爪150cを所定の方向において、直線移動させて開閉する。爪保持体150bとして、ラックピニオン機構、ボールねじ機構等が例示される。一対の爪150cの形状は特に限定されないが、ここでは平板状に形成される。一対の爪150cは、それぞれ、金属、プラスティック等の剛体で構成され、内面にクッション層(不図示)が設けられている。このクッション層は、適宜な、厚み、弾性、摩擦係数等の特性を有する。これらの特性は、保持対象である診断/治療部材に適合するように選択される。この選択は、実験、シミュレーション、計算等によって行われる。
【0059】
爪保持体150bは、中空の連結部材150eを介して本体150aに連結されている。取付部150dは、上述のように、本体150aの適所に突設されている。そして、取付部150dから本体150a及び連結部材150eの内部を通って爪保持体150bに至るように、上述の駆動軸63の回転動力を一対の爪150cの駆動力として伝達する動力伝達経路が形成されている。このような動力の伝達経路は公知の技術を用いて構築できるので、その説明を省略する。
【0060】
従って、一対の爪150cは、可動体137cに設けられたモータMによって、駆動される。
【0061】
{保持容易化治具}
診断/治療部材の中には、保持インストゥルメントが直接保持することが難しい部材がある。例えば、そのような部材として、壊れやすい部材(ガラス製の注射器又は容器等)、細すぎる又は小さ過ぎる部材(細い管等)、形状が複雑なために保持しくい部材等が挙げられる。そこで、そのような診断/治療部材に、保持インストゥルメントが保持しやすい治具を予め装着すると、その治具を保持インストゥルメントが保持することによって、結果的に、保持インストゥルメントによって、当該診断/治療部材を容易に保持することができる。
【0062】
図5は、保持容易化治具81,82が装着された注射器80を示す外観図である。図5を参照すると、注射器80は、シリンダ71と、ピストン72と、注射針73とを含む。シリンダ71には、第1保持容易化治具81が装着され、ピストン72には、第2保持容易化治具82が装着されている。第1保持容易化治具81は、直方体状に形成され、中央部に円形の貫通孔が形成されている。この貫通孔にシリンダ71が挿通され、適宜な接着剤によって、第1保持容易化治具81がシリンダ71に強固に固定されている。第2保持容易化治具82は、直方体状に形成され、一方の側面の中央部に円形の凹部が形成されている。この凹部にピストン72の後端部が篏挿され、適宜な接着剤によって、第2保持容易化治具82がピストン72に強固に固定されている。
【0063】
例えば、採血の際に、第1ロボットアーム130A(診断/治療アーム)の補助インストゥルメント150によって、第1保持容易化治具81を保持し、第2ロボットアーム130B(診断/治療アーム)の補助インストゥルメント150によって、第2保持容易化治具82を保持し、操作者が左右の手で、第1ロボットアームA及び第2ロボットアーム130Bを操作することによって、注射器80によって、採血を行うことができる。
【0064】
<遠隔操作ユニット20>
図1を参照すると、遠隔操作ユニット20は、操作入力装置210と、表示器220と、第2制御器32と、を含む。また、遠隔操作ユニット20は、第2スピーカ231、第2マイク232、及び第2撮像器233をさらに含む。
【0065】
操作入力装置210は、左右の操作マニピュレータ211L,211Rと、複数の操作ペダル212と、を含む。操作マニピュレータ211L,211Rは、手術マニピュレータ6の補助インストゥルメント150及び第1撮像器151の位置及び姿勢を入力するための装置である。複数の操作ペダル212は、第1撮像器151のズーム、制御モードの切り替え、操作マニピュレータ211L,211Rと対応付けられるロボットアーム130の切り替え等の指令を入力するためのものである。
【0066】
第2制御器32は、操作マニピュレータ211L,211Rによって入力される、手術マニピュレータ6の補助インストゥルメント150及び第1撮像器151の位置及び姿勢に関するデータ(信号)を診断/治療支援ロボット10の第1制御器31に送信する。また、操作ペダル212によって入力される指令等を第1制御器31に送信する。また、表示器220の表示制御と、第2スピーカ231、第2マイク232、及び第2撮像器233とに関する所要の制御を行う。
【0067】
本実施形態では、手術マニピュレータ6のロボットアーム130が、操作マニピュレータ211L,211Rによって、マスタースレーブ方式により制御される。但し、マスタースレーブ方式を用いなくてもよい。
【0068】
{音声によるコミュニケーション手段}
図1及び図2を参照すると、操作者(医療従事者)Sと対象者Pとの音声によるコミュニケーション手段として、手術マニピュレータ6のアームベース120の前面に、第1スピーカ171及び第1マイク172が設けられている。第1スピーカ171は、遠隔操作ユニット20の第2マイク232によって取得された操作者Sの声を対象者Pに伝えるためのものである。第1マイク172は、対象者Pの声を取得するためのものである。
【0069】
一方、遠隔操作ユニット20には、第2スピーカ231と第2マイク232が設けられている。第2スピーカ231は、第1マイク172によって取得された対象者Pの声を操作者Sに伝えるためのものである。第2マイク232は、操作者Sの声を取得するためのものである。
【0070】
{映像によるコミュニケーション手段}
図1及び図2を参照すると、操作者Sと対象者Pとの映像によるコミュニケーション手段として、手術マニピュレータ6のアームベース120の前面に表示器(第1表示器)173が設けられ、第3ロボットアーム130C(撮像アーム)のインストゥルメント装着部170(詳しくは可動体137c)に第1撮像器151が装着されている。
【0071】
一方、遠隔操作ユニット20には、第1撮像器151で撮像された診断/治療エリアの状況を表示するための表示器220(第2表示器)と、操作者Sを撮像する第2撮像器223とが設けられている。第1及び第2撮像器151,233は、例えば、カメラ、画像センサ等で構成される。表示器173,220は、例えば、液晶ディスプレイ等で構成される。
【0072】
この構成によれば、手術マニピュレータ6の第1撮像器151によって、対象者Pに対する診断/治療を行う診断/治療エリアの状況を撮像し、その撮像された診断/治療エリアの状況を、遠隔操作ユニット20の表示器220に表示させることができる。それにより、操作者Sが表示器220に表示された診断/治療エリアの状況を見ながら手術マニピュレータ6を操作することができるので、診断又は治療の補助行為を適切に行うことができる。また、遠隔操作ユニット20の第2撮像器233で撮像された操作者Sの画像を、手術マニピュレータの第1表示器が表示するので、対象者Pは、操作者Sの様子を知ることができる。従って、操作者Sと対象者Pとが、映像によるコミュニケーションを行うことができる。
【0073】
[制御系統の構成]
図6は、図1の診断/治療支援ロボットシステム1の制御系統の構成の一例を示すブロック図である。
【0074】
図6を参照すると、第1制御器31は、プロセッサ311と、メモリ312と、通信インターフェース313と、を含む。プロセッサ311として、CPU、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等が例示される。メモリ312として、ROM、RAM、外部記憶装置(例えば、SSD(SolidState Drive)、ハードディスクドライブ)等が例示される。通信インターフェース313として、モデム、ONU(光回線の終端装置)、ルータ等が例示される。
【0075】
第1制御器31は、メモリ312に格納された制御プログラムをプロセッサ311が実行することによって、所要の制御、処理等を行う。
【0076】
プロセッサ311には、ロボットアーム130、補助インストゥルメント150、第1撮像器151、第1スピーカ171、第1マイク172、表示器173が接続されている。
【0077】
第2制御器32は、プロセッサ321と、メモリ322と、通信インターフェース323と、を含む。プロセッサ321として、CPU、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等が例示される。メモリ322として、ROM、RAM、外部記憶装置(例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ)等が例示される。通信インターフェース323として、モデム、ONU(光回線の終端装置)、ルータ等が例示される。
【0078】
第2制御器32は、メモリ322に格納された制御プログラムをプロセッサ321が実行することによって、所要の制御、処理等を行う。
【0079】
通信インターフェース313と通信インターフェース323とは、互いにデータ通信可能に接続されている。データ通信として、有線、無線、光通信等が例示される。
【0080】
<本明細書で開示する要素の機能>
ここで、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、「装置」、「器」及び「部」は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、「装置」、「器」及び「部」は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアは、ハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【0081】
[補助ロボット]
図7は、補助ロボット90の構成の一例を示す外観図である。補助ロボット90は、台車92と、台車92に設けられたロボットアーム91とを備える。台車92は、自律走行可能に構成されている。ロボットアーム91は、例えば、多関節のロボットアームで構成される。
【0082】
補助ロボット90は、診断/治療支援ロボット10の操作者Sとは別人の操作者によって、操作され、通常エリアと隔離エリアとの間を、診断/治療の補助行為に必要なもの(診断/治療部材、薬品等)を収容した収容箱93を積んで、往来する。この往来の際には、所要の消毒を、自ら行う。
【0083】
そして、診断/治療支援ロボット10による診断又は治療の補助行為を手助けする。例えば、診断/治療部材を、手術マニピュレータ6の補助インストゥルメント150が保持しやすいように、手術マニピュレータ6に渡す。
【0084】
[動作]
次に、以上のように構成された診断/治療支援ロボットシステムの1の動作例を説明する。
【0085】
<診断/治療エリアへの移動>
図1を参照すると、遠隔操作ユニット20は、通常エリアに配置されている。一方、診断/治療支援ロボット10は、通常時には、通常エリアに配置されている。そこで、操作者Sは、遠隔操作ユニット20の操作入力装置210の所定の操作部(不図示)を操作する。すると、診断/治療支援ロボット10は、予め設定された移動経路を通って、隔離エリアの診断/治療エリアに移動する。この診断/治療支援ロボット10の移動経路の途中には、消毒装置が設けられていて、診断/治療支援ロボット10はその消毒装置によって消毒される。消毒装置として、アルコール散布装置、オゾン滅菌装置等が例示される。なお、上記移動経路の途中に消毒液入りのスプレー容器が置かれていて、診断/治療支援ロボット10が、操作者Sの操作によって、スプレー容器を把持して、消毒液を自分にスプレーして消毒してもよい。
【0086】
<インストゥルメントの交換>
図8は、手術インストゥルメント181を装着した診断/治療支援ロボット10を示す外観図である。なお、図8では、図1の、第1スピーカ171、第1マイク172、表示器173等が省略されている。
【0087】
図8を参照すると、操作者Sは、診断/治療支援ロボット10から手術インストゥルメント180を取り外す。そして、図1に示すように、補助インストゥルメント150及び第1撮像器151を診断/治療支援ロボット10に装着する。
【0088】
<検体採取>
この場合、図7の補助ロボット90が診断/治療支援ロボット10の傍に居て、他の操作者によって、診断/治療支援ロボット10の作業を適宜補助する。以下に述べる他の診断/治療補助行為においても同様である。
【0089】
図1図2、及び図7を参照すると、操作者Sは、遠隔操作ユニット20の操作入力装置210を操作して、手術マニピュレータ6の第1ロボットアーム130Aの補助インストゥルメント150(ここでは保持インストゥルメント)によって、綿棒を保持し、その綿棒を対象者Pの喉の奥に挿入し、ぬぐい液を採取する。そして、その綿棒を所定の容器に収納する。すると、補助ロボット90が当該所定の容器を収容箱93に収容する。この過程において、操作者Sは、表示器220に表示される対象者Pの顔が見やすいように、第3ロボットアーム130Cによって第1撮像器151を操作する。また、操作者Sは、対象者Pに必要な説明、指示等を、第2マイク232を通じて行う。一方、対象者Pは、表示器173に表示される操作者Sの顔を見、且つ、第2マイク232から聞こえる操作者Sの声を聞きながら、操作者Sの指示に従う。このようにして、検体採取が行われる。
【0090】
<採血>
図1図2図5及び図7を参照すると、操作者Sは、遠隔操作ユニット20の操作入力装置210を操作して、手術マニピュレータ6の第1ロボットアーム130Aの補助インストゥルメント150(保持インストゥルメント)によって、注射器80の第1保持容易化治具81を保持し、第2ロボットアーム130Bの補助インストゥルメント150(保持インストゥルメント)によって、注射器80の第2保持容易化治具82を保持する。この場合、注射器80は、シリンダ71にピストン72が奥まで挿入された状態にある。
【0091】
次いで、操作者Sは、注射器80の注射針73を対象者Pの腕の所定部位に差し込む。この過程において、操作者Sは、表示器220に表示される対象者Pの腕が見やすいように、第3ロボットアーム130Cによって第1撮像器151を操作する。さらに、また、操作者Sは、対象者Pに必要な説明、指示等を、第2マイク232を通じて行う。一方、対象者Pは、表示器173に表示される操作者Sの顔を見、且つ、第2マイク232から聞こえる操作者Sの声を聞きながら、操作者Sの指示に従う。
【0092】
次いで、操作者Sは、シリンダ71を停止させた状態で、ピストン72をゆっくり後退させる。表示器220に表示される注射器80のシリンダ71内の血液が所定量に達したら、注射器80を対象者Pの腕から引き抜く。その後、適宜な処理を補助ロボット90と一緒に行う。このようにして、採血が行われる。
【0093】
<点滴>
図1図2、及び図7を参照すると、操作者Sは、遠隔操作ユニット20の操作入力装置210を操作して、第1ロボットアーム130Aの補助インストゥルメント150(保持インストゥルメント)によって、点滴液の入った容器を保持して、所定の懸架場所に懸架する。そして、第2ロボットアーム130Bの補助インストゥルメント150(保持インストゥルメント)によって、点滴用の管の先端に設けられた針を対象者Pの所定の部位(例えば、腕)に差し込む。この過程において、操作者Sは、表示器220に表示される対象者Pの所定の部位が見やすいように、第3ロボットアーム130Cによって第1撮像器151を操作する。また、操作者Sは、対象者Pに必要な説明、指示等を、第2マイク232を通じて行う。一方、対象者Pは、表示器173に表示される操作者Sの顔を見、且つ、第2マイク232から聞こえる操作者Sの声を聞きながら、操作者Sの指示に従う。このようにして、点滴作業が行われる。
【0094】
<人工心肺装置のカニューレ挿入>
図1図2、及び図7を参照すると、操作者Sは、遠隔操作ユニット20の操作入力装置210を操作して、手術マニピュレータ6の第1ロボットアーム130Aの補助インストゥルメント150(保持インストゥルメント)及び第2ロボットアーム130Bの補助インストゥルメント150(保持インストゥルメント)によって、人工心肺装置のカニューレを適宜な間隔を置いて保持する。そして、両方のロボットアーム130A,130Bによって、カニューレを対象者Pの所定の部位(例えば、下肢の付け根)の血管(大動脈又は大静脈)にゆっくり挿入する。この過程において、操作者Sは、表示器220に表示される対象者Pの所定の部位が見やすいように、第3ロボットアーム130Cによって第1撮像器151を操作する。このようにして、カニューレ挿入が行われる。
【0095】
[効果]
以上に説明したように、本実施形態によれば、診断/治療支援ロボットシステム1が、医療従事者に代わって診断及び治療の少なくともいずれかの補助行為を行い、それによって、医療従事者の感染症への感染を防止することができる。
【0096】
{PCR検査への適用例}
本適用例では、上記実施形態の診断/治療支援ロボットシステム1を感染症(例えば、新型コロナウイルス(covid-19))のPCR検査の検体の採取に適用する一例を示す。
【0097】
図9は、本開示のPCR検査への適用例に係る診断/治療支援ロボットシステム1の診断/治療支援ロボット10の構成の一例を示す外観図である。
【0098】
図9及び図10を参照すると、診断/治療支援ロボットシステム1の診断/治療支援ロボット10及び遠隔操作ユニット20は、それぞれ、隔離エリア及び通常エリアに配置される。これにより、操作者が感染症に感染することを防止できる。
【0099】
図9を参照すると、本適用例では、診断/治療支援ロボット10の第4ロボットアーム130Dに、補助インストゥルメント150に代えて補助撮像器151Bが装着される。なお、以下では、第3ロボットアーム130Cに装着された第1撮像器に参照符号151Aを付して、これを補助撮像器151Bと区別する。第1撮像器151A及び補助撮像器151Bは、動画を撮影可能なビデオカメラであってもよく、X線カメラであってもよい。なお、補助撮像器151Bを図7の補助ロボットが保持してもよく、隔離エリアの壁に配置してもよい。また、第1ロボットアーム130A及び第2ロボットアーム130Bにそれぞれ装着された補助インストゥルメント150のいずれか一方が、図11に示す保持インストゥルメント150で構成されている。ここでは、例えば、第1ロボットアーム130Aに装着された補助インストゥルメント150が、図11に示す保持インストゥルメント150で構成されている。以下では、便宜上、第3ロボットアームを「第1撮像アーム」と呼び、第4ロボットアーム130Dを「補助撮像アーム」と呼び、図11の保持インストゥルメント150が装着されたロボットアームを「診断/治療アーム」と呼ぶ。
【0100】
図10を参照すると、本適用例では、遠隔操作ユニット20の操作入力装置210の適所に解除操作部501が設けられている。
【0101】
図3、4、6、及び10を参照すると、操作入力装置210の解除操作部501が操作者Sによって操作されると、解除操作部501が解除信号を出力し、この解除信号が第2制御器32を介して第1制御器31に入力される。第1制御器31は、保持インストゥルメント(補助インストゥルメント)150の一対の爪(以下、「保持部」と呼ぶ)150cを開くようモータMを制御するとともに、当該保持インストゥルメント150を、後述する対象者Pから遠ざけるように診断/治療アーム130Aの動作を制御する。
【0102】
図11は、図9の保持インストゥルメント150の構成の一例を示す外観図である。図11を参照すると、保持インストゥルメント150においては、爪保持体150bに一対のレーザ光指示具(レーザポインタ)701A,701Bが設けられている。レーザ光指示具は3以上であってもよい。また、レーザ光の照射スポットの大きさは適宜選択される。この一対のレーザ光指示具701A,701Bは、爪保持体150bの一対の爪150cの所定の開閉方向における両側に設けられている。一対のレーザ光指示具701A,701Bは、それぞれが出射するレーザ光が、互いに交差し且つ保持部(一対の爪)150cの中心軸700と同一平面上に位置するように配置される。保持部(一対の爪)150cの中心軸700は、例えば、円柱状の連結部材150eの中心軸に一致し、一対の爪150cが閉じたときに当接する仮想面を通る仮想の軸線として定義される。綿棒601は、ここでは、この中心軸700に沿って延在するようにその一方の端部が保持部150cによって保持される。綿棒601は、中心軸700の近傍に延在すればよい。
【0103】
一対のレーザ光指示具701A,701Bは、例えば、それぞれから出射されるレーザ光702A,702Bが、綿棒601の保持部150cで保持された一方の端部から他方の端部に向かう方向において、当該綿棒601の先端(他端)よりさらに先の領域において互いに交差するように設けられる。これにより、一対のレーザ光702A,702Bにそれぞれ対応する対象者Pへの照射スポット(図13参照、照射スポットは不図示)の間隔によって、対象者Pの照射部位ひいては検体採取部位と綿棒601との距離が判る。
【0104】
図6を参照すると、一対のレーザ光指示具701A,701Bは、例えば、電源(例えば電池)を内蔵しており、且つ、そのON-OFFを、操作入力装置210の対応する操作部(不図示)を操作者Sが操作することによって、第2制御器32及び第1制御器31を介して制御される。
【0105】
図12は、遠隔操作ユニット20の表示器220に表示される第1撮像器151Aで撮像された画像901A及び補助撮像器151Bで撮像された画像901Bを示す模式図である。
【0106】
図6、9、10、及び12を参照すると、補助撮像器151Bの動作は、第1撮像器151Aと同様に、操作入力装置210の対応する操作部(不図示)を操作者Sが操作することによって、第2制御器32及び第1制御器31を介して制御される。また、補助撮像器151Bで撮像された画像901Bは、第1撮像器151Aと同様に、第1制御器31を介して第2制御器32に送られ、第2制御器32によって表示器220に表示される。
【0107】
補助撮像器151Bで撮像された画像は、単独で、あるいは他の画像と組み合わせて、表示される。
【0108】
本適用例では、対象者Pは、例えば、椅子に座った状態で、鼻又は口から滅菌綿棒(以下、単に綿棒と呼ぶ)を挿入され、感染症の検体を綿棒によって採取される。鼻から綿棒が挿入される場合、鼻咽頭ぬぐい液(粘液、鼻汁等)が採取される。口から綿棒が挿入される場合、喉のぬぐい液(粘液、痰等)又は口腔内の唾液が採取される。この検体の採取に際しては、第1撮像器151A又は補助撮像器151Bで対象者Pの検体採取部位が撮像され、その撮像された画像が表示器220に表示される。ここでは、第1撮像器151Aで対象者Pの検体採取部位が撮像される。撮像対象は、例えば、鼻から綿棒が挿入される場合、対象者Pの鼻腔であってもよく、口から綿棒が挿入される場合、対象者Pの口腔であってもよい。なお、例えば、吸引カテーテル等で下気道由来検体(喀痰等)を採取する場合には、対象者Pの口腔が撮像対象になる。この場合、例えば、吸引カテーテルが第2ロボットアーム130Bの補助インストゥルメント150(保持インストゥルメント)によって保持され且つ操作される。
【0109】
以下、鼻から綿棒が挿入される場合を例にとって、診断/治療支援ロボットシステム1を用いたPCR検査の一例を説明する。
【0110】
まず、操作者Sは、第1撮像アーム130Cを動かして、第1撮像器151Aで対象者Pの正面の顔を撮像し、補助撮像アーム130Dを動かして、補助撮像器151Bで対象者Pの横顔を撮像する。すると、図12に示すように、遠隔操作ユニット20の表示器220に、第1撮像器151Aで撮像された画像901A及び補助撮像器151Bで撮像された画像902が表示される。
【0111】
一方、操作者Sの顔が第2撮像器233で撮像され、その撮像画像が手術マニピュレータ6の表示器173に表示される。
【0112】
次いで、操作者Sは、例えば、表示器220を見ながら対象者Pに対し簡単な問診を行う。例えば、操作者Sは、「体調はいかがですか?」と質問する。すると、この質問が第2マイク232で取得され、第1スピーカ171から放音される。対象者Pは、表示器173を見ながら「少し熱があるみたいです。」と答える。すると、この答が第1マイク172で取得され、第2スピーカ231から放音される。この答えを聞いて、操作者Sは、「分かりました。それでは、検査してみましょう。」と言い、対象者Pは、「よろしくお願いします。」と言う。
【0113】
次いで、操作者Sは、検体採取を開始する。
【0114】
図13は、検体の採取の際に遠隔操作ユニット20の表示器220に表示される第1撮像器151Aで撮像された画像901A及び補助撮像器151Bで撮像された画像901Bを示す模式図である。
【0115】
図13を参照すると、検体の採取の際には、操作者Sは、第1撮像アーム130Cを動かして、第1撮像器151Aで対象者の正面から鼻のアップ画像901Aを撮像する。そして、補助撮像アーム130Dを動かして、補助撮像器151Bで対象者Pの斜め横顔の画像901Bを撮像する。
【0116】
操作者Sは、鼻のアップ画像901Aにおいて、一対のレーザ光指示具701A,701Bからのレーザ光702A,702Bの照射スポット(不図示)で綿棒601と検体採取部位である鼻の奥との距離を確認しながら、診断/治療アーム130Aを操作して、綿棒601を鼻の奥まで挿入し、綿棒601の先端部で当該鼻の奥部をぬぐって検体を採取する。この際、操作者Sは、斜め横顔の画像901Bで、検体の採取作業に対する対象者Pの反応(顔をしかめたり、顔を後に逃がしたり、平然としていたりする)を見る。
【0117】
そして、診断/治療アーム130Aを操作して、検体を採取した綿棒を対象者Pの鼻から抜いて、所定の容器に収納する。
【0118】
なお、検体採取の過程で、緊急事態が発生した場合には、操作者Sは、操作入力装置210の解除操作部501を操作する。すると、保持インストゥルメント150の保持部150cが開いて綿棒601が開放されるとともに保持インストゥルメント150を対象者Pから遠ざけるように診断/治療アーム130Aが動作する。
【0119】
このような本適用例では、操作者Sが、鼻のアップ画像901Aによって、綿棒601と検体採取部位との距離を確認するとともに、斜め横顔の画像901Bによって検体の採取作業に対する対象者の反応を操作者が知りながら検体採取を行うことができるので、操作者Sが対象者に苦痛を与えないように検体採取を行うことができる。また、対象者Pを緊急事態から保護することができる。また、医者が操作者Sであることで又は医者が操作者Sの傍にいることで、音声によるやりとりで診断に関するコミュニケーション(問診)を行うことができる。
【0120】
<変形例1>
図14は、遠隔操作ユニット20の表示器220に表示される第1撮像器151Aで撮像された画像901A、補助撮像器151Bで撮像された画像901B、及び第1綿棒挿入程度モデル901Cを示す模式図である。
【0121】
図14を参照すると、変形例1では、表示器220に、第1撮像器151Aで撮像された画像901A及び補助撮像器151Bで撮像された画像901Bと一緒に綿棒601が対象者Pの体内にどの程度挿入されたかを示す綿棒挿入程度モデルが表示される。綿棒挿入程度モデルとして、ここでは、第1綿棒挿入程度モデル901Cが表示される。
【0122】
この第1綿棒挿入程度モデル901Cでは、対象者Pの横顔を模した横顔モデル902の鼻腔内に綿棒601が示される。そして、この綿棒601の位置が、実際に保持インストゥルメント150によって綿棒601が鼻に挿入された程度に応じて変化される。
【0123】
この場合、第2制御器32は、第1制御器31から入力される診断/治療支援ロボット10の座標系上における綿棒601の位置と対象者Pの顔の想定位置とに基づいて、第1綿棒挿入程度モデル901Cにおける綿棒601の位置を決定する。なお、例えば、保持インストゥルメント150に位置センサを搭載し、当該位置センサの出力に基づいて第1綿棒挿入程度モデル901Cにおける綿棒601の位置を決定してもよい。本変形例1では、対象者Pの顔が上記想定位置に位置するように調整可能な椅子を用意することが好ましい。そのような椅子として、座部の高さを自動調整可能で、且つ、対象者Pの頭部を固定可能な椅子が例示される。なお、画像901A又は画像901Bを省略してよい。
【0124】
このような変形例1によれば、操作者Sが、第1綿棒挿入程度モデル901Cを見ながら、綿棒601を対象者Pの鼻の検体採取部位までスムーズに挿入することができるので、検体を速やかに且つ正確に採取することができる。
【0125】
<変形例2>
図15は、遠隔操作ユニット20の表示器220に表示される第1撮像器151Aで撮像された画像901A、補助撮像器151Bで撮像された画像901B、及び第2綿棒挿入程度モデル901Dを示す模式図である。
【0126】
図15を参照すると、変形例2では、綿棒挿入程度モデルとして、第2綿棒挿入程度モデル901Dが表示される。
【0127】
この第2綿棒挿入程度モデル901Dでは、モデル化された綿棒601上に鼻に挿入されていない部分601aと鼻に挿入された部分601bとが示される。そして、両部分の境界が、実際に保持インストゥルメント150によって綿棒601が鼻に挿入された程度に応じて変化される。この場合、例えば、鼻に挿入された部分601bをカラー表示してもよい。
【0128】
両部分の境界の位置は、変形例1と同様に決定される。なお、画像901A又は画像901Bを省略してよい。
【0129】
このような変形例2によれば、操作者Sが、第2綿棒挿入程度モデル901Dを見ながら、綿棒601を対象者Pの鼻の検体採取部位までスムーズに挿入することができるので、検体を速やかに且つ正確に採取することができる。
【0130】
<その他の変形例>
綿棒が口から挿入される場合において、綿棒が鼻から挿入される場合における上記変形例1及び変形例2と同様に、綿棒601の対象者Pの口腔内への挿入程度を示す綿棒挿入程度モデルを表示器220に表示してもよい。
【0131】
(その他の実施形態)
上記実施形態及びPCR検査への適用例の診断/治療支援ロボットシステム1は、医療用移動体(例えば、病院船、鉄道車両等)内に配置されていてもよい。
【0132】
また、第2制御器32が学習機能を備えてもよい。具体的には、第2制御器32が、操作者Sによる操作入力装置210への操作入力を丸ごと記憶する操作記憶部又は操作者Sによる操作入力装置210への操作入力を機械学習する操作学習部を備えてもよい。
【0133】
操作記憶部を備える場合、操作入力装置210からの操作入力に代えて、操作記憶部から出力される、記憶された操作入力が、診断/治療支援ロボット10の動作制御に用いられる。
【0134】
また、操作学習部を備える場合、学習時に、操作学習部に、操作入力装置210からの操作入力と、表示器220の表示画像等の適宜な動作データとが学習データとして入力され、学習完了後に、操作入力装置210からの操作入力に代えて、操作学習部から出力される、学習された操作入力が、診断/治療支援ロボット10の動作制御に用いられる。
【0135】
これにより、自動的に、診断/治療支援ロボット10が診断/治療の補助行為を行うことができる。
【0136】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。
【0137】
(実施形態によるその他の作用効果)
以上に説明したように、本開示の実施形態によれば、手術マニピュレータ6が、複数のロボットアーム130を備えてもよい。
【0138】
この構成によれば、操作者Sが、少なくとも2つのロボットアーム130を人の腕と同様に動かせるので、複雑な診断又は治療の補助行為であっても、それらを適切に行うことができる。
【0139】
補助インストゥルメント150が4以上の動きの自由度を有し、インストゥルメント装着部137が補助インストゥルメント150を4以上の動きの自由度で動作させることが可能であってもよい。
【0140】
この構成によれば、4以上の動きの自由度を有する補助インスツルメント150を動作させて、複雑な診断又は治療の補助行為を適切に行うことができる。
【0141】
手術マニピュレータ6が、自律走行可能な台車70に設けられていてもよい。
【0142】
この構成によれば、診断/治療支援ロボット10(手術マニピュレータ6)を通常エリアと隔離エリアとの間で往来させることができる。
【0143】
感染者又は被疑感染者を隔離するための隔離エリアに、対象者Pに対して感染症の診断及び治療の少なくともいずれかの補助行為を行うエリアが存在しており、手術マニピュレータ6及び台車70は、隔離エリアでない通常エリアから隔離エリアに移動するように構成されており、手術マニピュレータ6及び台車70は、通常エリアから隔離エリアに進入する前又は通常エリアに向かって隔離エリアから退出した後に、消毒されるように構成されていてもよい。
【0144】
この構成によれば、消毒した後に手術マニピュレータ6及び台車70を隔離エリアに進入させ、又は、隔離エリアから退出した手術マニピュレータ6及び台車70を、消毒した後に通常エリアに向かわせることができるので、手術マニピュレータ6及び台車70による人への感染を防止することができる。
【0145】
補助インストゥルメント150が診断/治療部材を保持する保持インストゥルメントであってもよい。
【0146】
この構成によれば、診断又は治療の補助行為においては、医療従事者が診断/治療部材を手で保持することが多いので、保持インストゥルメントによって診断/治療部材を保持することによって、医療従事者に代わって、診断又は治療の補助行為を幅広く行うことができる。また、産業用ロボットでは、多種多様な部材を適切に保持可能な多種多様なハンド(エンドエフェクタ)が存在するので、それらの多種多様なハンドを、適宜修正することによって、多種多様な保持インストゥルメントを得ることができる。
【0147】
診断/治療部材が、対象者Pの感染症に関する検体を採取する用具、点滴用具、採血用具、又は人工心肺装置のカニューレであってもよい。
【0148】
この構成によれば、感染症の診断又は治療において特に必要な行為を、手術マニピュレータを用いて行うことができる。
【0149】
ロボットアーム30が、マスタースレーブ方式によって、操作者Sにより操作されるように構成されていてもよい。
【0150】
この構成によれば、ロボットアーム130を好適に操作することができる。
【0151】
診断/治療部材に、当該診断/治療部材を保持インストゥルメントが保持することを容易にする保持容易化治具81,82が装着されていてもよい。
【0152】
診断/治療部材の中には、保持インストゥルメントが直接保持することが難しい部材がある。例えば、そのような部材として、壊れやすい部材(ガラス製の注射器又は容器等)、細すぎる又は小さ過ぎる部材(細い管等)、形状が複雑なために保持しくい部材等が挙げられる。そこで、そのような診断/治療部材に、保持インストゥルメントが保持しやすい治具を予め装着すると、その治具を保持インストゥルメントが保持することによって、結果的に、保持インストゥルメントによって、当該診断/治療部材を容易に保持することができる。
【0153】
診断/治療支援ロボットシステム1が、保持容易化治具81,82をさらに含んでもよい。
【0154】
この構成によれば、直接保持しにくい診断/治療部材を、補助インストゥルメント150によって容易に保持することができる。
【0155】
診断/治療支援ロボット10が、第2マイク232によって取得された操作者Sの声を対象者Pに伝えるための第1スピーカ171及び対象者Pの声を取得するための第1マイク172を備え、遠隔操作ユニット20が、第1マイク172によって取得された対象者Pの声を操作者Sに伝えるための第2スピーカ31及び操作者Sの声を取得するための第2マイク232を備えてもよい。
【0156】
この構成によれば、操作者Sが対象者Pと対話しながら、適切に、診断又は治療の補助行為を行うことができる。
【0157】
感染者又は被疑感染者を隔離するための隔離エリアに診断/治療支援ロボット10が配置されており、隔離エリアでない通常エリアに遠隔操作ユニット20が配置されていてもよい。
【0158】
この構成によれば、隔離エリアに配置された診断/治療支援ロボット10の手術マニピュレータ6を通常エリアに配置された遠隔操作ユニット20によって操作できるので、操作者Sが感染症に感染することを防止できる。
【0159】
保持インストゥルメント150が複数のレーザ光指示具701A,701Bを備え、複数のレーザ光指示具701A,701Bは、当該複数のレーザ光指示具701A,701Bから出射されるレーザ光702A,702Bが互いに交差するように構成されていてもよい。
【0160】
この構成によれば、保持インストゥルメント150に保持された診断/治療部材によって対象者Pに診断又は治療の補助行為を行う場合に、複数のレーザ光702A,702Bが対象者Pに照射されると、複数のレーザ光に702A,702Bそれぞれ対応する対象者Pへの照射スポットの間隔によって、対象者Pの照射部位ひいては補助行為の目的部位と診断/治療部材との距離が判る。これにより、診断又は治療の補助行為を適切に行うことができる。
【0161】
棒状の診断/治療部材が対象者Pから感染症の検体を採取するための綿棒601であり、保持インストゥルメント150が綿棒601の一方の端部を保持可能な保持部150cを備え、保持部150c及び複数のレーザ光指示具701A,701Bは、当該複数のレーザ光指示具701A,701Bから出射されるレーザ光702A,702Bが互いに交差する領域が、保持部150cによって保持された綿棒601の一方の端部から他方の端部に向かう方向において、当該保持部150cより他方の端部側に位置するように配置されていてもよい。
【0162】
この構成によれば、複数のレーザ光702A,702Bにそれぞれ対応する対象者Pへの照射スポットの間隔によって、対象者Pの照射部位ひいては検体採取部位と綿棒601との距離を好適に知ることができる。
【0163】
診断/治療支援ロボットシステム1が対象者Pの横顔を撮像するための補助撮像器151Bを含み、第1撮像器151Aが対象者Pの正面の顔を撮像するためのものであり、第2表示器220は、第1撮像器151Aで撮像された画像及び又は補助撮像器151Bで撮像された画像を表示するよう構成されていてもよい。ここで、補助撮像器151Bは、ロボットアーム130、他のロボット、隔離エリアの壁等に取り付けられてもよい。
【0164】
この構成によれば、対象者Pの鼻又は喉から感染症の検体を綿棒601によって採取する場合、第1撮像器151Aでは専ら対象者Pの正面から鼻又は口のアップ画像を撮像する。そのため、検体の採取作業に対する対象者Pの反応(顔をしかめたり、顔を後に逃がしたり、平然としていたりする)を操作者Sが知ることができない。しかし、この構成では、補助撮像器151Bで対象者Pの横顔を撮像するので、撮像画像における横顔から検体の採取作業に対する対象者Pの反応を操作者が知ることができるので、操作者Sが対象者Pに苦痛を与えないように検体採取を行うことができる。
【0165】
複数のロボットアーム130は、インストゥルメント装着部137に補助撮像器151Bが装着された補助撮像アーム130Dをさらに含んでもよい。
【0166】
この構成によれば、操作者Sが補助撮像アーム130Dを操作することによって、所望の角度及び距離から対象者Pの横顔を適切に撮像することができる。
【0167】
第2表示器220は、少なくとも第1撮像器151Aで撮像された画像又は補助撮像器151Bで撮像された画像と一緒に綿棒601が対象者Pの体内にどの程度挿入されたかを示す綿棒挿入程度モデル901C,901Dを表示するよう構成されていてもよい。ここで、綿棒挿入程度は、例えば、ロボット座標系上における綿棒601の位置と対象者Pの顔の想定位置とに基づいて決定することができる。
【0168】
この構成によれば、操作者Sが、綿棒挿入程度モデル901C,901Dを見ながら、綿棒601を対象者Pの体内の検体採取部位までスムーズに挿入することができる。その結果、検体を速やかに且つ正確に採取することができる。
【0169】
遠隔操作ユニット20は解除操作部501を備えており、手術マニピュレータ6は、解除操作部501が操作されると、診断/治療アームのインストゥルメント装着部137に装着された保持インストゥルメントに保持された綿棒601を解放するように構成されていてもよい。
【0170】
この構成によれば、緊急時(例えば、手術マニピュレータが異常動作した場合等)に操作者Sが解除操作部501を操作することによって、保持インストゥルメントに保持された綿棒601が解放されるので、対象者Pを緊急事態から保護することができる。
【0171】
手術マニピュレータ6は、解除操作部501が操作されると、対象者Pから保持インストゥルメントを遠ざけるように診断/治療アームを動作させるよう構成されていてもよい。
【0172】
この構成によれば、緊急時に操作者Sが解除操作部501を操作することによって、保持インストゥルメントに保持された綿棒601が解放されるとともに保持インストゥルメントが対象者Pから遠ざかるので、より好適に、対象者Pを緊急事態から保護することができる。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明の診断/治療支援ロボット、診断/治療支援ロボットシステム、及び診断/治療支援方法は、医療従事者に代わって診断及び治療の少なくともいずれかを行い、それによって、感染症への医療従事者の感染を防止することが可能な診断/治療支援ロボット、診断/治療支援ロボットシステム、及び診断/治療支援方法として有用である。
【符号の説明】
【0174】
1 診断/治療支援ロボットシステム
6 手術マニピュレータ
7 ポジショナ
10 診断/治療支援ロボット
20 遠隔操作ユニット
31 第1制御器
32 第2制御器
70 台車
130 ロボットアーム
150 補助インストゥルメント
151,151A 第1撮像器
151B 補助撮像器
171 第1スピーカ
172 第1マイク
173 表示器
180 手術インストゥルメント
210 操作入力装置
211 操作マニピュレータ
220 表示器
231 第2スピーカ
232 第2マイク
233 第2撮像器
501 解除操作部
601 綿棒
701A,701B レーザ光指示具
702A,702B レーザ光
901A,901B 撮像画像
901C 第1綿棒挿入程度モデル
901D 第2綿棒挿入程度モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15