IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キノシス・セラピューティクス・ピーティーワイ・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-オピオイド離脱の治療 図1
  • 特許-オピオイド離脱の治療 図2
  • 特許-オピオイド離脱の治療 図3
  • 特許-オピオイド離脱の治療 図4
  • 特許-オピオイド離脱の治療 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】オピオイド離脱の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5517 20060101AFI20250212BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20250212BHJP
   A61K 31/554 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20250212BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20250212BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
A61K31/5517
A61K31/485
A61K31/553
A61K31/554
A61P25/30
A61P25/36
C07D487/04 CSP
C07D487/04 153
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022515554
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-10
(86)【国際出願番号】 AU2020050941
(87)【国際公開番号】W WO2021042178
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】2019903299
(32)【優先日】2019-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】522089516
【氏名又は名称】キノシス・セラピューティクス・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・トーマス・ボーウェン
(72)【発明者】
【氏名】イアイン・スチュワート・マクレガー
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525351(JP,A)
【文献】国際公開第2018/107216(WO,A1)
【文献】Oxytocin and opioid addiction revisited: old drug, new applications,British Journal of Pharmacology,2018年,175,pp.2809-2824,DOI:10.1111/bph.13757
【文献】The oxytocin analogue carbetocin prevents priming-induced reinstatement of morphine-seeking:Involvement of dopaminergic, noradrenergic and MOPr systems,European Neuropsychopharmacology,2015年,25,pp.2459-2464,http://dx.doi.org/10.1016/j.euroneuro.2015.09.015
【文献】The Effects of Oxytocin on Withdrawal, Craving and Stress Response in Heroin-Dependent Patients: A Randomized, Double-Blind Clinical Trial,Eur Addict Res,2019年01月10日,25,pp.41-47,DOI: 10.1159/000496194
【文献】Breaking the loop: Oxytocin as a potential treatment for drug addiction,Hormones and Behavior,2012年,61,pp.331-339,doi:10.1016/j.yhbeh.2011.12.001
【文献】The Oxytocin Analogue Carbetocin Prevents Emotional Impairment and Stress-Induced Reinstatement of Opioid-Seeking in Morphine-Abstinent Mice,Neuropsychopharmacology,2014年,39,pp.855-865
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 25/00-25/36
C07D 487/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オピオイド離脱又は前記オピオイド離脱に関連する症状を治療するための剤であって、式(I化合物
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、C 1~5アルキル又はO1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、C 1~5アルキル又はO1~5アルキルから選択され;
、C 1~5アルキルであり、
いずれのC 1~5 アルキル基も、OH、NH 、ハロゲン、NH(C 1~5 アルキル)、N(C 1~5 アルキル) 、CN、NO 、CO H、及びOC 1~5 アルキルから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
いずれのOC 1~5 アルキル基も、OH、NH 、ハロゲン、NH(C 1~5 アルキル)、N(C 1~5 アルキル) 、CN、NO 、CO H、及びOC 1~5 アルキルから選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい
又はその薬学的に許容される塩を含む、剤。
【請求項2】
前記式(I)の化合物が
【化3】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記剤がオピオイド及び/又はオピエートに曝露されてい対象に投与するためのものであり、並びに、前記剤がオピオイド及び/又はオピエート曝露の停止後に投与を開始するためのものである、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項4】
前記剤がオピオイド及び/又はオピエートに曝露されてい対象に投与するためのものであり、並びに、前記剤が前記オピオイド及び/又はオピエートの最後の用量と同時に投与を開始するためのものである、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項5】
前記剤がオピオイド及び/又はオピエートに曝露されてい対象に投与するためのものであり、並びに、前記剤が前記オピオイド及び/又はオピエート曝露の停止前に投与を開始するためのものである、請求項1又は2に記載の剤。
【請求項6】
前記剤が、オピオイド及び/又はオピエートをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の剤。
【請求項7】
前記剤が、漸減投与レジメンに従ってオピオイド及び/又はオピエートを投与するためのものである、請求項1~のいずれか一項に記載の剤。
【請求項8】
前記剤が、オピオイド/オピエート用量漸減の開始前に開始される投与のためのものである、請求項に記載の剤。
【請求項9】
前記剤が、オピオイド/オピエート用量漸減の開始と同時に開始される投与のためのものである、請求項に記載の剤。
【請求項10】
前記剤が、オピオイド/オピエート用量漸減の終了後に開始される投与のためのものである、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記剤が、少なくとも約1週間維持される投与のためのものである、請求項1~1のいずれか一項に記載の剤。
【請求項12】
前記症状が、振戦、震え、ホットフラッシュ若しくはコールドフラッシュ、鳥肌、発汗、速い呼吸、心拍数の上昇、血圧上昇、体痛、嘔吐、下痢、発熱、不快感、不安、落ち着きのなさ、易刺激性、不眠、あくび、幻覚、痛覚過敏、高カチフィテイア及び食欲不振、又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~1のいずれか一項に記載の剤。
【請求項13】
薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の剤。
【請求項14】
・ 請求項1又は2に定義された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩;並びに
・ オピオイド及び/又はオピエート
を別個の部分で含む、オピオイド離脱又は前記オピオイド離脱に関連する症状を治療するためのキット。
【請求項15】
前記オピオイド及び/又はオピエートが、漸減レジメンに適した複数の剤形で提供される、請求項1に記載のキット。
【請求項16】
・ 請求項1又は2に定義された式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩;並びに
・ オピオイドアンタゴニスト及び/又は部分アゴニスト
を別個の部分で含む、オピオイド離脱又は前記オピオイド離脱に関連する症状を治療するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月6日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2019903299号明細書の優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、オピオイド離脱を治療及び/又は予防するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オピオイド及びオピエートは、疼痛管理において広く使用されていることを見出す有用なクラスの鎮痛薬である。オピオイド及びオピエートはまた、娯楽的使用者、及びオピオイド療法後にオピオイド使用障害を発症した患者の両方による乱用物質となっている。また、オピオイド及び/又はオピエートの使用を中止すると、オピオイド離脱に至る場合がある。オピオイド離脱は、オピオイド及び/又はオピエートに対する対象の身体的依存から生じる生理学的状態であり、場合によっては、短期間のオピオイド及び/又はオピエートへの曝露後に発現する可能性がある。
【0004】
例えば、医原性オピオイド離脱症候群(IOWS)は、急性又は慢性の疼痛管理のためにオピオイド鎮痛薬による治療を受けたか、又は受けている患者に頻繁に出現する。例えば、平均約6日間のオピオイド治療を受けた集中治療室(ICU)の成人の16.7%がIOWSに罹患したことが2017年に報告された。また、小児集団では、ICUで24時間超オピオイドを受けている患者の10人~57%がIOWSに罹患すると報告されている。IOWSに罹患する患者の割合は、オピオイド治療がより長期的な場合、劇的に増加する。例えば、一部のランダム化比較試験(RCT)では、オピオイドの用量漸減又は中止によりIOWSに罹患する80人%以上の患者が報告された。IOWSは、オピオイド使用の中止の成功を妨げる場合があり、治療関連有害事象及びオピオイド誤用のリスクを劇的に増加させることから、治療にあたる医師にとって大きな課題となっている。一部の集団では、2/3の患者がオピオイド治療をうまく中止できず、離脱症状がこの失敗の主要な要因となっている。
【0005】
オピオイド離脱は、罹患者に有意な疼痛、身体的及び心理的苦痛を引き起こす。従って、オピオイド離脱のための有効な治療を提供することは、それを必要とする対象に急性の軽減を提供するために望ましい。さらに、オピオイド離脱症状から逃れたいという願望は、処方された使用から乱用へと移行する患者において役割を果たし、従って、オピオイド離脱を効果的に予防又は治療することは、処方された方法で最初にオピオイド及び/又はオピエートを使用した可能性がある個人におけるオピオイド使用障害の発生を予防するのに役立つ可能性がある。また、オピオイド離脱症状の克服は、典型的には、オピオイド使用障害に罹患した個人における回復の最初の主要な障害である。従って、オピオイド離脱を効果的に治療することは、対象がしらふ状態(soberiety)を達成するのを助けることができる。
【0006】
オピオイド使用障害の状況において、オピオイド離脱に対する既存の管理戦略には、オピオイド(典型的には、ブプレノルフィン又はメサドン)が代替オピオイドとして投与される補充療法が含まれる。オピオイド補充療法は、オピオイド離脱の出現を予防し若しくは遅らせ、及び/又は出現する離脱症候群の重篤度を最小限に抑えようとする。しかしながら、補充療法に用いられるオピオイド自体は、中止するか又は用量を漸減すると、その後、他の副作用とともに、オピオイド離脱をもたらすことが多い。さらに、特に対象がオピオイド使用障害を発症している場合には、長期間にわたり補充療法が必要となることがある。
【0007】
ロフェキシジンは、オピオイド離脱症状の管理のために米国食品医薬物品局(FDA)により承認された最初の、且つ出願時においても尚唯一の、非オピオイド薬物である。しかしながら、臨床試験では、ロフェキシジン療法は急性オピオイド離脱症状及び治療保持においてわずかな改善をもたらすのみであり、一方で低血圧、徐脈及び不眠症を含むやっかいな副作用を引き起こした。さらに、ロフェキシジンは、最大14日間の使用のみが承認されている。
【0008】
従って、オピオイド離脱を管理するための代替選択肢を提供する必要性が継続している。
【0009】
本明細書に引用され得る全ての刊行物、特許及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
本明細書における先行技術への言及は、その先行技術が任意の管轄区域における共通の一般的知識の一部を形成すること、又はその先行技術が当業者によって関連すると理解され、見なされ、及び/若しくは先行技術の他の部分と組み合わされることが合理的に期待され得ることの承認又は示唆ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、オピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量の式(I)による化合物
【化1】
(式中:
Vは、NH、CH、又は直接結合であり;
Wは、NH、CH、又は直接結合であり;
Xは、NH、CH、又は直接結合であり;
Yは、NH、CH、又は直接結合であり;
Zは、NH、O、S、S(O)、SO又は直接結合から選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、場合により置換されたC1~5アルキルであり;
mは、0又は1であり;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1である)
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを投与して、それにより対象におけるオピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を治療することを含む方法を提供する。
【0012】
化合物は:
【化2】
又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグであり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、化合物は、二塩酸塩(CMPD1-2HCL)などの化合物1の塩酸塩であってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、化合物は、化合物1のリン酸付加塩(CMPD1-PO4)であってもよい。リン酸付加塩は、化合物1のリン酸塩と呼ぶことができる。
【0015】
別の態様において、オピオイド及び/若しくはオピエートに曝露されているか、又はオピオイド及び/若しくはオピエートに曝露されるリスクがある対象を治療する方法であって、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを対象に投与して、それによりオピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を治療及び/又は予防することを含む方法が提供される。
【0016】
別の態様において、オピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を治療するための医薬の製造における、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの使用が提供される。
【0017】
別の態様において、オピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を治療するための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの使用が提供される。
【0018】
別の態様において、オピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状の治療における使用のための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグが提供される。
【0019】
別の態様では、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグ、並びにオピオイド及び/又はオピエートを含む医薬組成物が提供される。
【0020】
別の態様では、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグ、並びに有効量のオピオイドアンタゴニスト及び/又は部分アゴニストを含む医薬組成物が提供される。
【0021】
別の態様では、以下を別個の部分で含むキットが提供される:
・有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグ、並びに
・オピオイド及び/又はオピエート。
【0022】
別の態様では、以下を別個の部分で含むキットが提供される:
・有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグ、並びに
・有効量のオピオイドアンタゴニスト及び/又は部分アゴニスト。
【0023】
いくつかの実施形態において、これらの医薬組成物及びキットは、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて使用され得る。
【0024】
別の態様において、オピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を予防する方法であって、それを必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグを投与することを含む方法が提供される。
【0025】
別の態様において、疼痛を治療する方法が提供され、該方法は、それを必要とする対象に、有効量のオピオイド及び/又はオピエート、並びに有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを投与することを含む。いくつかの実施形態において、オピオイド及び/又はオピエートの用量は、漸減レジメンに従って減少され得る。式(I)の化合物の投与は、本明細書に記載のオピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を治療、予防、管理及び/又は制御する方法のいずれかに従った、オピオイド及び/又はオピエートの投与を中止した後も維持することができる。
【0026】
別の態様において、オピオイド過剰摂取を治療する方法が提供され、該方法は、それを必要とする対象に、有効量のオピオイドアンタゴニスト、並びに有効量のその薬学的に許容される塩及び/又はプロドラッグの式(I)の化合物を投与することを含む。
【0027】
本明細書で使用されるように、文脈が特に必要とする場合を除き、用語「含む(comprise)」及びその変形、例えば「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised)」は、さらなる添加物、成分、整数又は工程を除外することを意図するものではない。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が別段の明確な指示をしない限り、複数の参照を含むことに留意するべきである。従って、例えば、「症状」及び/又は「少なくとも1つの症状」への言及は、1つ以上の症状などを含むことができる。
【0029】
用語「及び/又は」は、「及び」又は「又は」を意味することができる。
【0030】
名詞に続く用語「(s)」は、単数形若しくは複数形、又はその両方を意図する。
【0031】
本発明の様々な特徴は、特定の値又は値の範囲を参照して説明される。これらの値は、様々な適切な測定技法の結果に関連することを意図しており、従って、任意の特定の測定技法に固有の誤差のマージンを含むものとして解釈されるべきである。本明細書で言及される値のいくつかは、この変動性を少なくとも部分的に説明するために、用語「約」によって示される。用語「約」は、値を記述するために使用される場合、その値の±25%、±10%、±5%、±1%又は20±0.1%以内の量を意味し得る。
【0032】
本明細書で特に定義しない限り、化学用語は、当技術分野で公知のそれらの一般的な意味を有する。
【0033】
本明細書で使用される場合、単独で又は複合語で使用される用語「C1~5アルキル」は、1~5個の炭素原子を有する一価の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を指す。当業者によって理解されるように、用語「C1~5アルキル」は、1、2、3、4若しくは5個の炭素原子、又は1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5及び4~5を含む、整数のうちの任意の2つを含む領域の炭素原子を有するアルキル鎖を意味する。適切なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、イソ-ペンチル及びtert-ペンチルが含まれるが、これらに限定されない。C1~4アルキルは、場合により1個以上の置換基で置換されていてもよい。置換基は、炭素鎖の任意の位置にあってよい。適切な置換基には、OH、NH、ハロゲン、NH(C1~5アルキル)、N(C1~5アルキル)、CN、NO、COH、又はOC1~5アルキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0034】
用語「ヒドロキシ」及び「ヒドロキシル」は、基-OHを指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、単独で又は複合語で使用される用語「OC1~5アルキル」は、1~5個の炭素原子を有するアルコキシ基を指す。当業者によって理解されるように、用語「OC1~5アルキル」は、1、2、3、4若しくは5個の炭素原子、又は1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、3~5及び4~5を含む、それらの整数のうちの任意の2つを含む領域の炭素原子を有するアルコキシ基を意味する。適切なOC1~5アルキル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソ-ペンチルオキシ及びtert-ペンチルオキシが含まれるが、これらに限定されない。C1~5アルキルは、場合により1個以上の置換基で置換されていてもよい。置換基は、炭素鎖の任意の位置にあってよい。適切な置換基には、OH、NH、ハロゲン、NH(C1~5アルキル)、N(C1~5アルキル)、CN、NO、COH、又はOC1~5アルキルが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)又はヨウ素(ヨード)を指す。
【0037】
本発明のさらなる態様、及び前の段落で説明された態様のさらなる実施形態は、例として与えられ、添付の図面を参照して、以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、CMPD1-2HCLで治療した後の、C57BL/6マウスが経時的に移動した距離のチャートである(実施例1の実験1の結果)。
図2図2Aは、ナロキソン投与によってC57BL/6マウスにオキシコドン離脱を誘発した後の治療群(0、2.5、5又は10mg/kg CMPD1-2HCL)(右端の4群)と、オキシコドン離脱を受けていないC57BL/6マウス(左端の群)における跳躍の頻度のチャートである(実施例1の実験1.2の跳躍結果)。図2Bは、ナロキソン投与によってC57BL/6マウスにオキシコドン離脱を誘発した後の治療群(0、2.5、5又は10mg/kg CMPD1-2HCL)(右端の4群)と、オキシコドン離脱を受けていないC57BL/6マウス(左端の群)における足振戦の持続時間(秒単位の持続時間)のチャートである(実施例1の実験1.2の足振戦結果)。
図3図3a~hは、ナロキソン投与によってC57BL/6マウスにオキシコドン離脱を誘発した後の治療群(右端の2群)と、オキシコドン離脱を受けていないC57BL/6マウス(左端の2群)における8つの脳領域(a.扁桃体中心部の内側部;b.外側傍小脳脚核、c.水道周囲灰白質;d.外側手綱;e.側坐核殻;f.外側中隔の腹側部;g.腹側被蓋野;及びh.背側縫線核)にわたるc-fos陽性細胞数の一連のチャートを示す(実施例2のc-fos結果)。
図4図4は、ナロキソン投与によりC57BL/6マウスにオキシコドン離脱を誘発した後の治療群(ビヒクルのみ、オキシコドン及びオキシコドンに続いてCMPD1-2HCL)による糞便(fecal boli)数のチャートである(実施例3の糞便結果)。
図5図5は、右端の3群におけるナロキソン投与によりC57BL/6マウスにオキシコドン離脱を誘発した後の治療群(ビヒクルのみ、オキシコドン、オキシコドンに続いてCMPD1-PO4及びオキシコドンに続いてCMPD1-2HCL)による跳躍の頻度のチャートである(実施例4の跳躍結果)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、オピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を治療する方法を提供する。この方法は、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグを投与することを含む。
【0040】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の化合物がオピオイド離脱症状を治療することができることを見出した。従って、式(I)の化合物の投与を含む治療は、オピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を治療、予防、管理及び/又は制御するのに有用であり得る。
【0041】
オピオイド離脱は、対象がオピオイド及び/又はオピエートに曝露された後に現れる場合があり、オピオイド及び/又はオピエートに身体的に依存するようになる生理学的現象である。従って、オピオイド離脱は、オピオイド及び/若しくはオピオイドへの曝露が除去された場合、並びに/又はオピオイドアンタゴニスト及び/若しくはオピオイド部分アゴニストへの曝露時に、対象に発現する可能性がある。オピオイド離脱に関連して開発された多数の診断ツールが存在する。このような診断ツールの1つは、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5(DSM-5又はDSM-V)で定義されている。DSM-5によれば、オピオイド離脱は、(1)大量且つ長期にわたる(即ち、数週間以上)オピオイド若しくはオピエート使用の中止(又は減量);並びに/又は(2)オピオイド及び/若しくはオピエート使用期間後のオピオイドアンタゴニストの投与のいずれかによって診断され得る。しかしながら、DSM-5の診断基準に含まれていないオピオイド離脱が記録されているいくつかの注目すべき例が存在し、これには、新生児オピオイド離脱及び一部のIOWS症例が含まれる。
【0042】
本発明の方法において、対象は、オピオイド及び/若しくはオピエートに曝露されていてもよく、又はオピオイド及び/若しくはオピエートに曝露されるリスクがある。いくつかの実施形態では、対象は、オピオイド及び/又はオピエートを投与されている。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも約1日(d)、2d、3d、4d、5d、6d、1週間(w)、2w、3w、4w以上の期間、オピオイド及び/又はオピエートに曝露されている。この投与は、例えば、IOWSについて上述したように、臨床的設定におけるものであってもよい。オピオイド及び/又はオピエートは、対象において身体的及び/又は体性離脱を誘発する可能性のあるものであってもよい。これらのオピオイド及びオピエートには、オキシコドン、モルヒネ、ブプレノルフィン、コデイン、フェンタニル、アヘン、メサドン、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、オキシモルフォン、メペリジン、トラマドール、プロポキシフェン、ジフェノキシラート、ロペラミド、ナルブフィン、ブトルファノール、ペンタゾシン、カルフェンタニル及び他のフェンタニル類似体、並びにこれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、これらのオピオイド及び/又はオピエートは、全て1つ以上のオピオイド受容体のアゴニスト又は部分アゴニストであるため、オピオイドアゴニストと呼ぶことができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の投与は、オピオイド及び/又はオピエートの投与の停止後に開始され得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグの投与は、オピオイド及び/又はオピエートの最後の用量の少なくとも約30分(m)、45m、1時間(h)、1.5h、2h、5h、10h、12h、18h又は24h以内に開始される。
【0044】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の投与は、オピオイド及び/又はオピエートの投与の停止前に開始され得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の最初の用量の投与は、オピオイド及び/又はオピエートの最後の用量と同時に行われる。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の最初の用量の投与は、オピオイド及び/又はオピエートの最後の用量の少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14日以上前に行われる。
【0045】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の投与は、オピオイド及び/又はオピエートの投与の前に開始され得る。このような方法は、例えば、オピオイドが手技の間又は回復の間に必要とされる可能性が高い外科手技の前に有用であり得る。
【0046】
式(I)の化合物がオピオイド及び/又はオピエート使用の停止又は減少の前に投与される場合(式(I)の化合物の投与がオピオイド及び/又はオピエート投与に先行する場合を含む)、オピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状は、対象において予防され得ることが認識されるであろう。従って、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、オピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を予防する方法であって、オピオイド離脱のリスクがある対象に、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグを投与して、それによりオピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を予防することを含む方法である。
【0047】
いくつかの実施形態では、この方法は、オピオイド及び/又はオピエートの用量を漸減することを含む。漸減は、ある期間にわたって段階的な様式でオピオイド及び/又はオピエートの用量を減少させることを含む。適切な漸減レジメンは、特定のオピオイド及び/又はオピエート、並びに当業者によって理解される他の因子に依存するであろう。
【0048】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の投与は、オピオイド/オピエート用量漸減の開始前に開始される。
【0049】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の投与は、オピオイド/オピエート用量漸減の開始と同時に開始される。これらの実施形態において、式(I)の化合物は、オピオイド及び/又はオピエートの漸減レジメンの最初の用量の約15m、30m、60m又は120m以内(例えば、オピオイド及び/又はオピエートの最後の最高用量)に投与され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の投与は、オピオイド/オピエート用量の漸減中に、例えば、オピオイド及び/又はオピエート投与量が約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、90%又は95%減少したときに開始される。
【0051】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の投与は、オピオイド/オピエート用量漸減の終了後に開始される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグの投与は、オピオイドの最終用量の少なくとも約30分(分)、45分、1時間(h)、1.5h、2h、5h、10h、12h、18h又は24h以内に開始される。
【0052】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の投与は、少なくとも約1週間(w)、2w、3w、4w、5w、6w、7w、8w、9w、10w、11w、12w以上維持され得る。投与が維持される時間の長さは、離脱症状を引き起こすオピオイド及び/又はオピエート、個々の対象、並びに任意の同時投与期間の長さに依存するであろう。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物の投与は、対象が最初の治療期間後にオピオイド離脱の症状の開始を経験する場合、停止及び再開され得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、オピオイド離脱は、新生児オピオイド離脱である。これらの実施形態では、オピオイド及び/又はオピエートへの曝露は、子宮内で起こる。
【0054】
いくつかの実施形態において、オピオイド離脱は、オピオイドアンタゴニスト又は部分アゴニストの投与によって誘導され得る。従って、この方法は、オピオイドアンタゴニスト又は部分アゴニストの投与を含み得る。典型的には、オピオイドアンタゴニストには、ナロキソン及びナルトレキソンがあり、オピオイド部分アゴニストには、ブプレノルフィンがある。これらの方法において、式(I)の化合物は、オピオイドアンタゴニスト又は部分アゴニストの投与と同時に、投与の前又は後に投与され得る。好ましくは、式(I)の化合物は、オピオイドアンタゴニスト又は部分アゴニストの投与がオピオイド離脱を誘導し得るので、オピオイドアンタゴニスト又は部分アゴニストと同時に投与される。
【0055】
オピオイドアンタゴニストは、オピオイド過剰摂取の治療に使用される場合がある。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、オピオイド過剰摂取を治療する方法において使用され得る。従って、本明細書には、有効量のオピオイドアンタゴニストと組み合わせて、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物を、それを必要とする対象に投与することを含む、オピオイド過剰摂取を治療する方法も記載される。式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくは溶媒和物は、オピオイドアンタゴニストに同じ又は異なる経路で投与することができる。
【0056】
本明細書には、有効量のオピオイド及び/又はオピエートと、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグとを投与することを含む、疼痛を治療する方法も記載される。疼痛は、オピオイド及び/又はオピエート療法が有効な任意の疼痛であり得る。これらの方法における式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグの投与は、オピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を予防し又はその重篤度を減少させることを意図する。従って、これらの方法における式(I)の化合物の投与は、本明細書に記載のオピオイド離脱及び/又はオピオイド離脱に関連する症状を治療する方法のいずれかにおけるその投与によるものであってもよい。
【0057】
化合物
本発明の方法は、式(I)の化合物を投与することを含む
【化3】
(式中:
Vは、NH、CH、又は直接結合であり;
Wは、NH、CH、又は直接結合であり;
Xは、NH、CH、又は直接結合であり;
Yは、NH、CH、又は直接結合であり;
Zは、NH、O、S、S(O)、SO又は直接結合から選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、場合により置換されたC1~5アルキルであり;
mは、0又は1であり;
nは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1である)。
【0058】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物として提供され得る
【化4】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、場合により置換されたC1~5アルキルである)。
【0059】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物として提供され得る
【化5】
(式中:
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、場合により置換されたC1~5アルキルである)。
【0060】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ic)の化合物又はその塩若しくはプロドラッグとして提供され得る
【化6】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、場合により置換されたC1~5アルキルである)。
【0061】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Id)の化合物として提供され得る
【化7】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、場合により置換されたC1~5アルキルである)。
【0062】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ie)の化合物として提供され得る
【化8】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、場合により置換されたC1~5アルキルである)。
【0063】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(If)の化合物として提供され得る
【化9】
(式中:
Zは、NH、O、S、S(O)又はSOから選択され;
は、H又はC(O)Rから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、H、OH、ハロゲン、場合により置換されたC1~5アルキル又は場合により置換されたOC1~5アルキルから選択され;
は、場合により置換されたC1~5アルキルである)。
【0064】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0065】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0066】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ic)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0067】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Id)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0068】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(Ie)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0069】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(If)の化合物、又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0070】
いくつかの実施形態では、VはNHである。
【0071】
いくつかの実施形態では、VはCHである。
【0072】
いくつかの実施形態では、Vは直接結合である;
【0073】
いくつかの実施形態では、WはNHである。
【0074】
いくつかの実施形態では、WはCHである。
【0075】
いくつかの実施形態では、Wは直接結合である。
【0076】
いくつかの実施形態では、XはNHである。
【0077】
いくつかの実施形態では、XはCHである。
【0078】
いくつかの実施形態では、Xは直接結合である。
【0079】
いくつかの実施形態では、YはNHである。
【0080】
いくつかの実施形態では、YはCHである。
【0081】
いくつかの実施形態では、Yは直接結合である。
【0082】
いくつかの実施形態では、ZはNHである。
【0083】
いくつかの実施形態では、ZはOである。
【0084】
いくつかの実施形態では、ZはSである。
【0085】
いくつかの実施形態では、ZはS(O)である。
【0086】
いくつかの実施形態では、ZはSOである。
【0087】
いくつかの実施形態では、Zは直接結合である。
【0088】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。
【0089】
いくつかの実施形態では、Rは、C(O)Rである。例えば、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、イソ-ペンチル及びtert-ペンチル基から選択される、場合により置換されたC1~5アルキルであり得る。いくつかの実施形態では、Rは、場合により置換されたメチルである。
【0090】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。
【0091】
いくつかの実施形態では、Rはヒドロキシル基である。
【0092】
いくつかの実施形態では、Rはハロゲンである。例えば、いくつかの実施形態では、Rはフッ素である。別の実施形態では、Rは塩素である。
【0093】
いくつかの実施形態では、Rは、場合により置換されたC1~5アルキルである。例えば、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、イソ-ペンチル及びtert-ペンチルから選択される、場合により置換されたC1~5アルキルであり得る。いくつかの実施形態では、Rは、場合により置換されたメチルである。
【0094】
いくつかの実施形態では、Rは、場合により置換されたOC1~5アルキルである。例えば、Rは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソ-ペンチルオキシ及びtert-ペンチルオキシ基から選択される、場合により置換されたOC1~5アルキルであり得る。いくつかの実施形態では、Rは、場合により置換されたメトキシ基である。
【0095】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。
【0096】
いくつかの実施形態では、Rはヒドロキシル基である。
【0097】
いくつかの実施形態では、Rはハロゲンである。例えば、いくつかの実施形態では、Rはフッ素である。別の実施形態では、Rは塩素である。
【0098】
いくつかの実施形態では、Rは、場合により置換されたC1~5アルキルである。例えば、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、イソ-ペンチル及びtert-ペンチルから選択される、場合により置換されたC1~5アルキルであり得る。いくつかの実施形態では、Rは、場合により置換されたメチルである。
【0099】
いくつかの実施形態では、Rは、場合により置換されたOC1~5アルキルである。例えば、Rは、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、イソ-ペンチルオキシ及びtert-ペンチルオキシ基から選択される、場合により置換されたOC1~5アルキルであり得る。いくつかの実施形態では、Rは、場合により置換されたメトキシ基である。
【0100】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下から選択される:
【化10】
又はその塩若しくはプロドラッグ。
【0101】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、以下から選択される:
【化11】
又はその塩若しくはプロドラッグ。
【0102】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、以下から選択される:
【化12】
又はその塩若しくはプロドラッグ。例えば、いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は:
【化13】
又はその塩若しくはプロドラッグである。
【0103】
本方法は、式(I)の化合物を任意の薬学的に許容される形態で投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、N-オキシド、多形体、互変異性体若しくはプロドラッグの形態、又はこれらの形態の任意の比率での組合せで提供される。
【0104】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、塩、例えば薬学的に許容される塩である。
【0105】
薬学的に許容される適切な塩には、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、及び臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の塩;又は酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、イセチオン酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、及び吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
塩基塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アンモニウム及びアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容されるカチオンで形成されるもの;トリエチルアミンから形成される塩;エタノールアミンで形成されるものなどのアルコキシアンモニウム塩;並びにエチレンジアミン、コリン、又はアルギニン、リジン若しくはヒスチジンなどのアミノ酸から形成される塩が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩の型及びそれらの形成に関する一般的な情報は、当業者に公知であり、「Handbook of Pharmaceutical salts」P.H.Stahl,C.G.Wermuth,1st edition,2002,Wiley-VCHなどの一般的なテキストに記載されている。
【0107】
式(I)における塩基性含窒素基(又は式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)、式(Ie)若しくは式(If)の化合物における塩基性含窒素基)は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルクロリド、ブロミド及びヨージドなどのハロゲン化アルキルC1~6;硫酸ジメチル及びジエチルなどの硫酸ジアルキル;並びに当技術分野で公知のその他などの薬剤で第4級化され得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、以下から選択される化合物の塩である。
【化14】
【0109】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、以下から選択される化合物の塩である。
【化15】
【0110】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、以下から選択される化合物の塩である。
【化16】
【0111】
例えば、いくつかの実施形態では、式(I)の化合物の塩は
【化17】
の塩である。
【0112】
一方、さらに別の実施形態では、式(I)の化合物の塩は
【化18】
の塩である。
【0113】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、塩酸塩である。
【0114】
いくつかの実施形態では、塩酸塩は、
【化19】
である。
【0115】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、リン酸付加塩である。
【0116】
プロドラッグには、アミノ酸残基、又は2つ以上(例えば、2、3又は4つ)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖が式(I)の化合物の遊離アミノ基、ヒドロキシ基及びカルボン酸基に共有結合している化合物が含まれる。アミノ酸残基は、3文字記号によって一般に示される20の天然に存在するアミノ酸を含み、また、以下を含む:4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デモシン、イソデモシン、3-メチルヒスチジン、ノルバリン、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチン及びメチオニンスルホン。プロドラッグはまた、カルボニル炭素プロドラッグ側鎖を介して式(I)の上記置換基に共有結合され得る、カーボネート、カルバメート、アミド及びアルキルエステルを含む化合物を含む。プロドラッグはまた、リン-酸素結合を介して式(I)の化合物の遊離ヒドロキシルに結合した式(I)の化合物のリン酸誘導体(酸、酸の塩、又はエステルなど)を含む。本明細書に開示及び定義された本発明は、本文又は図面に言及され、又はそれから明らかな個々の特徴の2つ以上の代替的な組合せの全てに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組合せの全ては、本発明の様々な代替的態様を構成する。
【0117】
式(I)の化合物又はその塩、互変異性体、N-オキシド、多形体若しくはプロドラッグは、溶媒和物の形態で提供することができる。溶媒和物は、化学量論量又は非化学量論量のいずれかの溶媒を含有し、水、メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコールなどのアルコール、DMSO、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)などの薬学的に許容される溶媒との結晶化のプロセスの間に形成され得、溶媒和物は、非共有結合によって、又は結晶格子中の孔を占有することによって、結晶格子の一部を形成する。水和物は、溶媒が水の場合に形成され、アルコラートは、溶媒がアルコールの場合に形成される。本発明の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載されるプロセスの間に都合よく調製又は形成することができる。一般に、溶媒和形態は、本明細書に提供される化合物及び方法の目的のために、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0118】
結晶性固体を形成する式(I)の化合物又はその塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物及び/若しくはプロドラッグは、多形性を示すことができる。化合物、塩、互変異性体、N-オキシド、溶媒和物及び/又はプロドラッグの全ての多形形態が、本発明の方法において使用され得る。
【0119】
式(I)の化合物は、互変異性を示すことができる。互変異性体は、一般に平衡状態で存在する分子の2つの交換可能な形態である。式(I)の化合物の任意の互変異性体が、本発明の方法において使用され得る。
【0120】
式(I)の化合物の作製方法は、PCT/AU2016/050588号に記載されている。
【0121】
投与
本明細書で定義される式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、任意の適切な手段、例えば、経口、直腸、鼻、膣、局所(口腔内及び舌下を含む)、非経口、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、又は槽内注射、吸入、通気、注入又は移植技術(例えば、滅菌注射用水性又は非水性溶液又は懸濁液として)によって投与され得る。
【0122】
本発明の化合物は、経口、直腸、鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)、非経口投与(筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内を含む)のためのものを含む医薬組成物として、又は吸入若しくは通気による投与に適した形態で提供され得る。従って、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、従来のアジュバント、担体又は希釈剤とともに、医薬組成物及びその単位投与量の形態に配置することができ、そのような形態で、錠剤若しくは充填カプセルなどの固体、又は溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシルなどの液体若しくはこれらで満たされたカプセルとして、全て経口使用のために、又は非経口(皮下を含む)使用のための無菌注射用溶液の形態で使用することができる。
【0123】
本発明の化合物の投与のための医薬組成物は、都合よくは、単位剤形で提示され得、薬学の分野で周知の任意の方法によって調製され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,2005,Lippincott Williams & Wilkinsを参照されたい)。全ての方法は、活性成分、例えば、式(I)によって定義される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを、1つ以上の補助成分を構成する担体と結合させる工程を含む。一般に、医薬組成物は、活性成分、例えば、式(I)によって定義される化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを、液体担体若しくは微細に分割された固体担体又はその両方と均一且つ緊密に結合させ、次いで、必要であれば、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。医薬組成物において、活性対象化合物は、所望の効果を生じるのに十分な量で含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、並びに薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含む医薬を投与することを含む。
【0124】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、対象の体重の約0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.15、0.2、0.5、1、2、3、5、10、15、20、25又は30mg/kgの用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、用量は、約0.001mg/kg~約30mg/kg、約0.2mg/kg~約30mg/kg、又は約0.2mg/kg~約10mg/kgなど、これらの量のいずれかから任意の他の量であってもよい。しかしながら、任意の特定の対象についての投与の特定の用量レベル及び頻度は、変化され得、使用される特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与の様式及び時間、排泄速度、薬物組合せ、特定の状態の重篤度、並びに治療を受ける宿主を含む種々の因子に依存することが理解されるであろう。
【0125】
式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、例えば、適切な化合物が医薬組成物に添加される場合、「有効量」で提供され得る。「有効量」は、その化合物を含む組成物の化合物を投与する研究者、獣医師、医師又は他の臨床医によって求められている組織、系、動物又はヒトの所望の生物学的又は医学的応答を誘発する化合物の量を意味すると解釈される。いくつかの実施形態では、有効量は、「治療有効量」であってもよく、対象活性化合物の量は、対象において発現した状態及び/又はその症状を治療するのに有効である。他の実施形態では、有効量は、「予防有効量」であってもよく、対象活性化合物の量は、オピオイド離脱に関連する状態及び/若しくは症状の発症を予防的に治療及び/若しくは予防するのに十分であり、又は症状が現れた場合、式(I)の化合物及び/若しくはその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグでの治療を受けていない対象の集団における状態及び/若しくはその症状の平均重篤度と比較して、状態及び/若しくはその症状の重篤度のレベルを低下させる。
【0126】
「有効量」は、本明細書で提供される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの量であり、対象へのその投与は、単回用量で、又は一連の一部として、オピオイド離脱の1つ以上の症状を管理及び/又は予防するのに有効である。量は、例えば、その投与が、オピオイド離脱の症状の停止、オピオイド離脱の症状の重篤度の軽減、対象が離脱症状を経験する期間の短縮、出現する症状の重篤度の予防、オピオイド離脱の症状の発症の予防及び/又はオピオイド離脱の症状の悪化の予防の1つ以上をもたらす場合に有効である。
【0127】
「有効量」は、特定の化合物の効力、治療される対象の身体状態、オピオイド離脱症状の重篤度、化合物の製剤、及び/又は医学的状況の専門的評価を含む、多くの因子に依存するであろう。対象の体重及び年齢も、対象が受けるべき化合物の量を決定する場合、当業者にとっての因子であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、オピオイド離脱の症状を治療する。オピオイド離脱症状には、心理的症状、身体的症状及び/又は体性症状が含まれる。
【0129】
オピオイド離脱の身体的及び体性症状には、振戦、震え、ホットフラッシュ又はコールドフラッシュ、鳥肌、発汗、速い呼吸、心拍数の上昇、血圧上昇、体痛、嘔吐、下痢及び発熱が含まれる。いくつかの実施形態では、方法は、オピオイド離脱の身体的及び/又は体性症状を治療する。いくつかの実施形態では、身体的及び/又は体性症状は、振戦及び震えから選択される。
【0130】
オピオイド離脱の心理的症状には、不快感、不安、落ち着きのなさ、易刺激性、不眠、あくび、幻覚、痛覚過敏、高カチフィテイア(hyperkatifiteia)及び食欲不振が含まれる。これらの症状は身体的/体性ではないが、オピオイド離脱の症状であり、オピオイド投与の停止若しくは減少に起因する及び/又はオピオイドアンタゴニスト投与により誘導される生理学的変化に由来すると考えられている。いくつかの実施形態では、本方法は、不快感を治療する。
【0131】
オピオイド離脱症状には、不快感、不安、落ち着きのなさ、易刺激性、不眠、あくび、幻覚、振戦、震え、ホットフラッシュ又はコールドフラッシュ、鳥肌、くしゃみ、発汗、速い呼吸、心拍数上昇、血圧上昇、瞳孔散大、立毛、頭痛、体痛、筋痙攣、筋肉痛、骨痛、関節痛、痛覚過敏、高カチフィテイア、眼及び鼻からの水様性分泌物(流涙及び鼻漏)、悪心、嘔吐、下痢、腹痛、食欲不振及び発熱が含まれる。前述したように、オピオイド離脱に関して開発された診断ツールの1つは、DSM-5である。DSM-5は、オピオイド離脱と診断される対象について、オピオイド曝露の停止(又は低下)、又はオピオイドアンタゴニスト若しくは部分アゴニストの投与のいずれかから数分から数日以内に、以下の9つの症状のうち3つが発現しなければならないと明記している。DSM-5の症状は、(1)不快気分、(2)悪心、(3)筋肉痛、(4)流涙又は鼻漏、(5)瞳孔散大、立毛又は発汗、(6)下痢、(7)あくび、(8)発熱、及び(9)不眠。従って、いくつかの実施形態では、対象はこれらのDSM-5症状の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8又は9を経験し、好ましくは、式(I)の化合物の投与は、対象が経験する症状の少なくとも1つを治療する。
【0132】
離脱症状の重篤度は、依存を引き起こすオピオイド、治療又は乱用の用量及び期間、オピオイド使用をどの程度迅速に中止するか、並びに年齢、性別、体重などの対象の特性によって決まる。
【0133】
従って、いくつかの実施形態において、方法は、振戦、震え、ホットフラッシュ又はコールドフラッシュ、鳥肌、発汗、速い呼吸、心拍数上昇、血圧上昇、体痛、嘔吐、下痢、発熱、不快感、不安、落ち着きのなさ、易刺激性、不眠、あくび、幻覚、痛覚過敏、高カチフィテイア、及び食欲不振、又はそれらの組合せからなる群から選択されるオピオイド離脱症状を治療する。
【0134】
化合物「の投与」及び/又は「を投与する」という語句は、目的の活性化合物(例えば、式(I)の化合物(又は式(Ia)、式(Ib)、式(Ic)、式(Id)若しくは式(Ie)の化合物)、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ;オピオイド及び/又はオピエート又はオピオイドアンタゴニスト又は部分アゴニスト)を、それを必要とする対象に提供することを意味すると理解されるべきである。
【0135】
本明細書に提供されるように、開示される式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグからの有益な又は所望の臨床結果には、限定されないが、オピオイド離脱症状の停止、オピオイド離脱症状の重篤度の軽減、オピオイド離脱症状の発症の予防、及び/又はオピオイド離脱症状の管理、例えば、オピオイド離脱症状の重篤度の悪化を予防すること、又は症状の重篤度を低下させ若しくは症状を予想される時間より短い時間内に停止させることが含まれる。治療又は予防手段のいずれかが達成され得る。治療が必要な者には、オピオイド離脱をすでに経験している者、及びオピオイド離脱を防ぐべき者が含まれる。治療とは、治療が行われていない場合と比較して、オピオイド離脱症状の増加を抑制又は減少させることを意味し、必ずしも該当する状態の完全な停止を意味するわけではない。
【0136】
従って、一般に、用語「治療」(及び「治療すること」を含むその変形)は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得るために対象、組織又は細胞に影響を及ぼすことを意味し、(a)オピオイド離脱症状の停止、(b)オピオイド離脱症状の重篤度の軽減、(c)対象が離脱症状を経験する期間の短縮、(d)出現する症状の重篤度の予防、(e)オピオイド離脱症状の発症の予防、及び/又は(f)オピオイド離脱症状の悪化の予防を含む。いくつかの実施形態では、治療される症状は、オピオイド離脱の身体的及び/又は体性症状である。本明細書に開示される方法の文脈においてオピオイド離脱を管理することへの言及は、オピオイド離脱症状に対する対象の耐性の範囲内で、これらの所望の薬理学的及び/又は生理学的効果のいずれかに影響を及ぼすことによって、オピオイド離脱を治療することを包含することが意図される。
【0137】
別の態様において、オピオイド離脱を治療及び/又は管理する方法もまた提供され、該方法は、それを必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを投与することを含む。
【0138】
別の態様において、オピオイド離脱症状を治療及び/又は制御する方法もまた提供され、該方法は、それを必要とする対象に、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを投与することを含む。
【0139】
別の態様では、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの、以下のための医薬の調製における使用も提供される:
・オピオイド離脱に関連する症状の治療、管理及び/若しくは制御、並びに/又は
・オピオイド離脱の治療及び/若しくは管理。
【0140】
別の態様では、以下のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの使用も提供される:
・オピオイド離脱に関連する症状の治療、管理及び/若しくは制御、並びに/又は
・オピオイド離脱の治療及び/若しくは管理。
【0141】
別の態様では、以下における使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグも提供される:
・オピオイド離脱に関連する症状の治療、管理及び/若しくは制御、並びに/又は
・オピオイド離脱の治療及び/若しくは管理。
【0142】
別の態様では、以下における使用のための、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを含む組成物も提供される:
・オピオイド離脱に関連する生理学的症状の治療、管理及び/又は制御;
・オピオイド離脱の治療及び/又は管理。
【0143】
本発明の投与工程又は化合物に関連して本明細書に記載される任意の実施形態は、これらの化合物、組成物、使用及び/又は方法において使用され得る。
【0144】
キット
以下を別個の部分で含む、部分のキットも提供される:
・式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ、及び
・本発明の方法のいずれかにおけるその使用に関する説明書。
【0145】
以下を別個の部分で含む、部分のキットも提供される:
・式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ、並びに
・オピオイド及び/又はオピエート。
【0146】
いくつかの実施形態では、オピオイド及び/又はオピエートを含む部分は、漸減レジメンに適したものなどの複数の単位剤形でオピオイド及び/又はオピエートを含む。
【0147】
以下を別個の部分で含む、部分のキットも提供される:
・式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ、並びに
・オピオイドアンタゴニスト及び/又は部分アゴニスト。
【0148】
本明細書に開示されるキットのいずれにおいても、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ、並びに/又はオピオイド及び/若しくはオピエート、並びに/又はオピオイドアンタゴニスト及び/若しくは部分アゴニストは、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤とともに医薬組成物として製剤化され得る。医薬組成物は、経口、直腸、鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)、非経口投与(筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内を含む)、又は吸入若しくは通気による投与に適した形態を含む、本明細書に開示される任意の経路による投与のために製剤化され得る。
【0149】
組成物
別の態様では、本発明は、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグ、並びにオピオイド及び/又はオピエートを含む医薬組成物を提供する。
【0150】
本明細書に記載される式(I)の任意の化合物又はその塩及び/若しくはプロドラッグは、これらの組成物に含まれ得る。
【0151】
本明細書に記載される任意のオピオイド及び/又はオピエートは、これらの組成物に含まれ得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、オピオイド及び/又はオピエートは、有効量で提供され、いずれも、対象にオピオイド離脱のリスクを提示する任意の量であってもよい。他の実施形態では、オピオイド及び/又はオピエートは、漸減レジメンによる投与に適した量で提供される。
【0153】
式(I)の化合物又はその塩及び/若しくはプロドラッグ、並びにオピオイド及び/又はオピエートを含む医薬組成物は、経口、直腸、鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)、非経口投与(筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内を含む)のためのものを含む、式(I)の化合物を投与するための本明細書に記載の形態のいずれかで、又は吸入若しくは通気による投与に適した形態で調製することができる。
【0154】
別の態様では、本発明は、有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩及び/若しくはプロドラッグ、並びに有効量のオピオイドアンタゴニスト及び/又は部分アゴニストを含む医薬組成物を提供する。
【0155】
本明細書に記載される式(I)の任意の化合物又はその塩及び/若しくはプロドラッグは、これらの組成物に含まれ得る。
【0156】
本明細書に記載される任意のオピオイドアンタゴニスト及び/又は部分アゴニストは、これらの組成物に含まれ得る。
【0157】
式(I)の化合物又はその塩及び/若しくはプロドラッグ、並びにオピオイドアンタゴニスト及び/又は部分アゴニストを含む医薬組成物は、経口、直腸、鼻、局所(口腔内及び舌下を含む)、非経口投与(筋肉内、腹腔内、皮下及び静脈内を含む)のためのものを含む、式(I)の化合物を投与するための本明細書に記載の形態のいずれかで、又は吸入若しくは通気による投与に適した形態で調製することができる。
【0158】
医薬組成物は、典型的には、薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤をさらに含む。任意の慣用の担体、希釈剤及び/又は賦形剤が薬学の分野で公知のように含まれ得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Ed.,2005,Lippincott Williams & Wilkinsを参照されたい)。
【0159】
本明細書に記載される医薬組成物は、本明細書に記載される任意の方法において使用され得る。
【実施例
【0160】
実施例1
この実施例は、オピオイド離脱(オキシコドン投与後のナロキソン誘発離脱)のC57BL/6マウスモデルにおける実験、及び離脱症状を治療する本発明の化合物の可能性を記載する。
【0161】
【表1】
【0162】
薬物
この研究で使用された全ての薬物は、生理食塩水に溶解され、10ml/kgの体積で投与された。
【0163】
実験1.1:開放野外試験における自発運動活性に対するCMPD1-2HCLの効果
本実験の目的は、5及び10mg/kgの用量のCMPD1-2HCLが自発運動活性に対する潜在的交絡作用を引き起こさないことを実証することであった。N=18匹の成体雄C57BL/6マウスは、0、5又は10mg/kgのCMPD1-2HCL(i.p.;条件あたりn=6)を受けた。CMPD1-2HCLの腹腔内注射を受けた15分後に、マウスを新しい40(l)×40(w)×40(h)cmの運動試験アリーナに個別に配置した。セッションは、オーバーヘッドカメラによってキャプチャされ、ビデオは、60分間の運動試験セッションにわたって各5分間の時間ビンにおいて各マウスが移動した距離を提供する、自動化された挙動追跡ソフトウェアCleverSys Topscan(CleverSys、Virginia、USA)を使用することによって分析された。混合モデルANOVAを用いてSPSSによってデータを分析した。
【0164】
この実験の結果を表1~3及び図1に示す。
【0165】
【表2】
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
この実験の結果は、CMPD1-2HCL治療が対象の自発運動活性に有意に影響しないことを示す。経時的に自発運動活性の有意な減少が存在したが、この減少は、治療群(対照を含む)間で一貫しており、時間の影響であり、投与に関連したものではないことを示している。自発運動活性の量は、5分間のビン間で異なり、治療用量間で平均した[F11,165=29.5、p<0.0001]。CMPD1-2HCL用量の有意な主効果はなく[F2,15=0.997、p=0.392]、試験セッションを通してのマウスの移動距離に対する用量相互作用効果による有意な時間[F22,165=1.358、p=0.143]もなかった。
【0169】
実験1.2:ナロキソン誘発オキシコドン離脱に対するCMPD1-2HCLの効果の評価
成体雄C57BL/6マウス(N=40)を5条件のうちの1条件(各条件n=8)に割り付けた:
(1)ビヒクル、0mg/kg CMPD1-2HCL;
(2)オキシコドン、0mg/kg CMPD1-2HCL;
(3)オキシコドン、2.5mg/kg CMPD1-2HCL;
(4)オキシコドン、5mg/kg CMPD1-2HCL;又は
(5)オキシコドン、10mg/kg CMPD1-2HCL。
【0170】
オキシコドン条件下のマウスは、表1に示すスケジュール及び用量に従って、オキシコドンの腹腔内注射を5日間受けた。朝及び午後の用量を7時間分離した。ビヒクル条件下のマウスは、オキシコドンの代わりにビヒクル生理食塩水の注射を受けた。5日目の朝注射の1時間45分後に、マウスにCMPD1-2HCLを腹腔内投与した。15分後、マウスは10mg/kgのナロキソン(オキシコドン群)又は生理食塩水(ビヒクル群)の腹腔内注射を受け、直ちに試験に進んだ。
【0171】
【表5】
【0172】
試験は、マウスを20(l)×20(w)×30(h)cmのアリーナに個々に30分間置くことを含んだ。セッションは、サイドビュー高速(120fps)、高解像度(4K)カメラを介してキャプチャされた。跳躍の回数及び足振戦の総持続時間を、経験を積んだ実験者が条件に盲検でビデオからスコア付けした。
【0173】
データは、一元配置ANOVAと計画された対比を用いてSPSSによって分析した。
【0174】
跳躍
跳躍のデータを表5及び図2Aに示す。
【0175】
【表6】
【0176】
跳躍を評価する全体的なANOVAは有意であった[F4,35=10.51、p<0.0001]。計画された対比から、オキシコドン離脱を受けているマウスが試験セッションの間に有意に多くの回数跳躍したことが明らかになった[VEH 0CMPD1対OXCD 0CMPD1、p<0.000001]。
【0177】
CMPD1-2HCLは、試験した全用量でオキシコドン離脱誘導性跳躍を有意に阻害した[OXCD 0CMPD1対OXCD 2.5CMPD1、p=0.023;OXCD 5CMPD1、p=0.018;OXCD 10CMPD1、p<0.001]。
【0178】
CMPD1-2HCL治療マウスは、オキシコドン離脱を受けていないマウスと比較して、依然として跳躍の上昇を示した[VEH 0CMPD1対OXCD 2.5CMPD1、p=<0.001;OXCD 5CMPD1、p<0.001;OXCD 10CMPD1、p=0.011]。
【0179】
足振戦
足振戦のデータを表6及び図2Bに示す。
【0180】
【表7】
【0181】
足振戦を評価した全体的なANOVAは、有意であった[F4,35=3.97、p<0.01]。計画された対比から、オキシコドン離脱を受けているマウスは、試験セッション中に有意に長い期間、足振戦があったことが明らかになった[VEH 0CMPD1対OXCD 0CMPD1、p<0.01]。CMPD1-2HCLの最高用量は、オキシコドン離脱誘導性足振戦を有意に阻害した[OXCD 0CMPD1対OXCD 2.5CMPD1、p=0.898;OXCD 5CMPD1、p=0.083;OXCD 10CMPD1、p=0.033]。5及び10mg/kgのCMPD1-2HCLで治療したマウスは、オキシコドン離脱を受けていないマウスと比較して、もはや足振戦が有意に上昇しなかった[VEH 0CMPD1対OXCD 2.5CMPD1、p=<0.01;OXCD 5CMPD1、p=0.204;OXCD 10CMPD1、p=0.4]。
【0182】
結論
CMPD1-2HCLは、本試験(実験1)で使用した用量では、開放野外自発運動試験において自発運動活性を抑制しない。CMPD1-2HCLは、実験2においてオキシコドン離脱の不快及び体性症状(跳躍及び足振戦)を用量依存的に阻害した。総じて、CMPD1-2HCLは、離脱誘導性跳躍(オピオイド離脱によって誘発される激しい不快状態を反映する、オピオイド離脱及び逃避行動の身体的及び/又は体性症状)及び足振戦(オピオイド離脱によって誘発される別の体性症状)に対して顕著且つ一貫した治療効果を示す。
【0183】
実施例2
この実施例では、脳におけるナロキソン誘発オピオイド離脱誘導性c-fosタンパク質発現を阻害する化合物1の能力を研究した。c-fosは、神経活性化のタンパク質マーカーである。化合物1を二塩酸塩形態(CMPD1-2HCL)で投与した。
【0184】
方法
N=40の雄C57BL/6マウスを、以下の4つの条件の1つに割り当てた:
(1)VEH、VEH(n=10)
(2)VEH、CMPD1-2HCl(n=10)
(3)OXY、VEH(n=10)
(4)OXY、CMPD1-2HCl(n=10)
【0185】
オキシコドン(OXY)条件下のマウスは、増加する用量9、17.8、23.7及び33mg/kg(1日目~8日目に1日2回、隔日に用量を増やして)のオキシコドンの腹腔内注射を9日間受けた。朝及び午後の用量を7時間分離した。ビヒクル条件(VEH)下のマウスは、オキシコドンの代わりにビヒクル生理食塩水の注射を受けた。9日目の朝の注射の1時間45分後に、マウスにCMPD1-2HCL(10mg/kg、注射容量10mg/ml)又はVEHの腹腔内用量を投与した。15分後、マウスは、10mg/kgのナロキソン(OXY群)又は生理食塩水(VEH群)の腹腔内注射を受けて、離脱を誘発した。
【0186】
ナロキソン又は生理食塩水注射の75分後、マウスをペントバルビトンナトリウム過量摂取によって安楽死させ、4%パラホルムアルデヒドを用いて心臓内穿刺灌流固定を行い、次いで、脳を免疫組織化学的処理のために収集した。
【0187】
データは、二元配置ANOVA及び計画された対比を用いてSPSSにより分析した。
【0188】
結果
CMPD1-2HCL治療とオピオイド離脱との間に統計的に有意な相互作用があり、CMPD1-2HCLの投与も離脱誘導性神経活性化を有意に阻害する8つの脳領域が同定された。
【0189】
これらの脳領域から得られたc-fos数の結果を図3a~hに示し、オピオイド離脱症状の発現に重要な役割を果たすことが知られている脳領域を含む。
【0190】
実施例3
この実施例では、CMPD1-2HCLがオピオイド離脱の消化器症状を阻害する能力を、マウスモデルを用いて評価した。
【0191】
方法
成体雄C57BL/6マウス(n=30)を、4つの条件のうちの1つに割り付けた(条件当たりn=10):
(1)VEH、VEH(n=10)
(2)OXY、VEH(n=10)
(3)OXY、CMPD1-2HCL(n=10)
【0192】
オキシコドン条件(OXY)下のマウスは、表7に示すスケジュール及び用量に従ってオキシコドンの腹腔内注射を5日間受けた。朝及び午後の用量を7時間分離した。ビヒクル条件下のマウスは、オキシコドンの代わりにビヒクル生理食塩水の注射を受けた。5日目の朝注射の1時間45分後に、マウスにCMPD1-2HCL(10mg/kg)を腹腔内投与した。15分後、マウスは10mg/kgのナロキソン(オキシコドン群)又は生理食塩水(ビヒクル群)の腹腔内注射を受け、直ちに試験に進んだ。
【0193】
【表8】
【0194】
試験は、マウスを20(l)×20(w)×30(h)cmのアリーナに個々に30分間置くことを含んだ。セッション終了時、糞便の数を計測し、マウスが下痢を有したか否かを調べた。
【0195】
データは、糞便についてはANOVAと計画された対比を用いて、下痢についてはフィッシャーの直接確率検定を用いて解析した。
【0196】
糞便
図4を参照されたい。オピオイド離脱は、30分セッション中に産生された糞便の量を有意に増加させ(p<0.001)、これはCMPD1-2HCL治療により有意に阻害された(p<0.001)。
【0197】
下痢
オピオイド離脱は、下痢を患うマウスの数を有意に増加させ、これはCMPD1-2HCLによって阻害された(表8参照)。
【0198】
【表9】
【0199】
実施例4
この実施例は、オピオイド離脱(オキシコドン投与後のナロキソン誘発離脱)のC57BL/6マウスモデルにおける実験、及び離脱症状を治療するために、同じ遊離塩基等価用量で投与された2つの異なる塩形態における化合物1の可能性を記載する。
【0200】
実験2.1:ナロキソン誘発オキシコドン離脱に対するCMPD1-2HCL及びCMPD1-PO4の効果の評価
成体雄C57BL/6マウスの2つのコホートを、ナロキソン誘発離脱誘導性跳躍に対する、二塩酸塩形態(CMPD1-2HCL)及びリン酸付加塩形態(CMPD1-PO4)における7.3mg/kg遊離塩基当量(FBE)IP化合物1の効果について評価した。
【0201】
マウスの第1コホート(N=30)を以下の条件に分けた:
(1)ビヒクル、0mg/kg(n=10);
(2)オキシコドン、0mg/kg 2HCl塩形態の化合物1 FBE(n=10);
(3)オキシコドン、7.3mg/kg 2HCl塩形態の化合物1 FBE(n=10)。
【0202】
マウスの第2コホート(N=24)を以下の条件に分けた:
(1)ビヒクル、0mg/kg(n=8);
(2)オキシコドン、0mg/kg リン酸付加塩形態の化合物1 FBE(n=8);
(3)オキシコドン、7.3mg/kg リン酸付加塩形態の化合物1 FBE(n=8)。
【0203】
オキシコドン条件下のマウスは、表9に示すスケジュール及び用量に従って、オキシコドンの腹腔内注射を5日間受けた。朝及び午後の用量を7時間分離した。ビヒクル条件下のマウスは、オキシコドンの代わりにビヒクル生理食塩水の注射を受けた。5日目の朝の注射の1時間45分後に、マウスに化合物1の腹腔内用量を投与した。15分後、マウスは10mg/kgのナロキソン(オキシコドン群)又は生理食塩水(ビヒクル群)の腹腔内注射を受け、直ちに試験に進んだ。
【0204】
【表10】
【0205】
試験は、マウスを20(l)×20(w)×30(h)cmのアリーナに個々に30分間置くことを含んだ。セッションは、サイドビュー高速(120fps)、高解像度(4K)カメラを介してキャプチャされた。跳躍の回数は、経験を積んだ実験者が条件に盲検でビデオからスコア付けした。
【0206】
データは、一元配置ANOVAと計画された対比を用いてSPSSによって分析した。
【0207】
跳躍
跳躍のデータを図5に示す。コホート1マウスからのデータを四角の記号で示し、コホート2マウスからのデータを円形の記号で示す。
【0208】
跳躍を評価した全体的なANOVAは、有意であった[F3,50=21.52、p<0.0001]。計画された対比から、オキシコドン離脱を受けているマウスが試験セッションの間に有意により多くの回数跳躍したことが明らかになった[VEH_VEH対OXY_VEH、p<0.0001]。
【0209】
7.3mg/kgのFBE化合物1は、HPO(CMPD1-PO4)及び2HCl(CMPD1-2HCL)付加塩形態の両方で、試験した全ての用量でオキシコドン離脱誘導性跳躍を有意に阻害した[OXY_VEH対OXY_CMPD1-PO4、p<0.01;OXY_CMPD1-2HCL、p<0.001]。さらに、2つの塩形態のFBE投与後の結果は、離脱誘導性跳躍において互いに有意に異ならなかった[OXY_CMPD1-PO4対OXY_2HCL、p=0.901](図5参照)。
図1
図2
図3
図4
図5