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特許7633261流動層反応器及びそれを用いたリチウム二次電池の活性金属の回収方法
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  • 特許-流動層反応器及びそれを用いたリチウム二次電池の活性金属の回収方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】流動層反応器及びそれを用いたリチウム二次電池の活性金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20250212BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20250212BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20250212BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C22B7/00 C
H01M10/54
C22B26/12
C22B1/00 601
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022540332
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2020017486
(87)【国際公開番号】W WO2021137453
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0178430
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ソン スン レル
(72)【発明者】
【氏名】スン ミン ジ
(72)【発明者】
【氏名】ハ ヒョン ベ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジ ミン
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-047739(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0118405(KR,A)
【文献】特開平08-060215(JP,A)
【文献】特開昭57-028982(JP,A)
【文献】特表2001-523805(JP,A)
【文献】特表2017-509598(JP,A)
【文献】特開2019-120472(JP,A)
【文献】特開2019-120473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0110956(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0083617(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第101397606(CN,A)
【文献】国際公開第2019/199014(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00 - 61/00
B01J 8/00 - 8/46
B01J 19/00 - 19/32
H01M 10/52 - 10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池の廃正極から取得された廃正極活物質混合物を準備するステップと、
前記廃正極活物質混合物を流動層反応器内で反応ガスと反応させ、予備前駆体混合物を形成するステップと、
前記予備前駆体混合物から選択的にリチウム前駆体を回収するステップとを含み、
前記流動層反応器は、反応器本体、前記反応器本体の上部に接続される垂直拡張管、および前記上部の上で前記垂直拡張管を介して連通する水平拡張ベッドを含み、前記反応器本体の直径に対する前記水平拡張ベッドの直径の比が3以上である、リチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項2】
前記予備前駆体混合物を形成するステップは、前記反応ガスによって前記反応器本体から前記水平拡張ベッドに上昇した前記廃正極活物質混合物または前記予備前駆体混合物を下降させ、前記反応器本体に収集するステップをさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項3】
前記反応器本体の直径に対する前記水平拡張ベッドの直径の比が3~10である、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項4】
前記垂直拡張管の傾斜角度が45~80°である、請求項に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項5】
前記反応ガスは水素を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項6】
前記リチウム前駆体を回収するステップは、前記予備前駆体混合物を水洗処理するステップを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項7】
反応器本体と、
前記反応器本体と連通し、前記反応器本体の直径に対して3倍以上の直径を有する水平拡張ベッドと、
前記反応器本体と前記水平拡張ベッドとを接続する垂直拡張管と、
前記反応器本体に反応ガスを注入するガス注入路とを含
前記垂直拡張管は、前記反応器本体の上部に接続され、
前記水平拡張ベッドは、前記上部の上で前記垂直拡張管を介して連通し、
前記垂直拡張管の傾斜角度は45~80°である、流動層反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の活性金属の回収方法に関する。より詳細には、流動層反応器を活用したリチウム二次電池の活性金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池はカムコーダー、携帯電話、ノートパソコンなどの携帯用電子通信機器およびハイブリッド自動車、電気自動車などの車両の動力源として広く適用および開発されている。二次電池としては、リチウム二次電池が、動作電圧および単位重量当たりのエネルギー密度が高く、充電速度および軽量化に有利な点で積極的に開発及び適用されてきた。
【0003】
前記リチウム二次電池の正極用活物質としては、リチウム金属酸化物を用いることができる。前記リチウム金属酸化物は、さらに、ニッケル、コバルト、マンガンなどの遷移金属を共に含有することができる。
【0004】
前記正極用活物質に前述した高コストの有価金属が用いられることにより、正極材の製造に製造コストの20%以上がかかっている。また、近年、環境保護への関心が高まることによって、正極用活物質のリサイクル方法の研究が進められている。
【0005】
従来は硫酸のような強酸に廃正極活物質を浸出させて有価金属を順次回収する方法が活用されていたが、前記のような湿式工程の場合は、再生選択性、再生時間などの面で不利であり、環境汚染を引き起こすことがある。そのため、反応ガスとの接触による乾式ベースの反応を活用して有価金属を回収する方法が研究されている。
【0006】
しかしながら、乾式反応のために供給される活物質粒子のサイズが微細化することにより、凝集による反応不均一が発生することがある。また、反応器内の反応ガスの局所的な不均一供給によって活物質の回収率が低下することもある。
【0007】
例えば、韓国特許第10-0709268号では、廃マンガン電池及びアルカリ電池のリサイクル装置及び方法を開示しているが、高選択性、高収率で有価金属を再生するための乾式ベースの方法は提示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、回収効率に優れたリチウム二次電池の活性金属の回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法では、リチウム二次電池の廃正極から取得された廃正極活物質混合物を準備する。前記廃正極活物質混合物を流動層反応器内で反応ガスと反応させ、予備前駆体混合物を形成する。前記予備前駆体混合物から選択的にリチウム前駆体を回収する。この場合、前記流動層反応器は反応器本体と水平拡張ベッドとを含み、前記反応器本体の直径に対する前記水平拡張ベッドの直径の比は3以上であってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記予備前駆体混合物を形成するにあたり、前記反応ガスによって前記反応器本体から前記水平拡張ベッドに上昇した前記廃正極活物質混合物または前記予備前駆体混合物を下降させ、前記反応器本体に収集することを含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記反応器本体の直径に対する前記水平拡張ベッドの直径の比は3~10であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記流動層反応器は、前記反応器本体と前記水平拡張ベッドとを接続する垂直拡張管をさらに含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記垂直拡張管の傾斜角度は45~80°であってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記反応ガスは水素を含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記リチウム前駆体を回収するにあたり、前記予備前駆体混合物を水洗処理することができる。
【0016】
本発明の実施形態による流動層反応器は、反応器本体と、前記反応器本体と連通し、前記反応器本体の直径に対して3倍以上の直径を有する水平拡張ベッドと、前記反応器本体と前記水平拡張ベッドとを接続する垂直拡張管と、前記反応器本体に反応ガスを注入するガス注入路とを含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法は、反応器本体の直径に対する水平拡張ベッドの直径の比が3以上の流動層反応器を使用することにより、前記予備前駆体混合物の形成過程で予備前駆体混合物が外部に流出するか、または壁面に蓄積することを防ぐことができる。前記流動層反応器に注入される反応ガスの注入速度を向上させ、より容易に流動層を形成することができ、これにより、リチウム前駆体の回収効率を向上させることができる。
【0018】
例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法は、特定の傾斜角度を満たす垂直拡張管を含む流動層反応器を使用することにより、外部に流出する予備前駆体混合物の量を低減することができ、垂直拡張管の傾斜面に沿って前記予備前駆体混合物を再び反応器本体に投入し、リチウム前駆体の回収効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、例示的な実施形態による流動層反応器およびそれを活用したリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態は、反応器本体の直径に対する水平拡張ベッドの直径の比が3以上の流動層反応器を活用した高純度、高収率の活性金属の回収方法を提供するものである。
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。但し、これらの実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0022】
本明細書で使用される用語「前駆体」は、電極活物質に含まれる特定の金属を提供するために、前記特定の金属を含む化合物を包括的に指すものとして使用される。
【0023】
図1に示すように、リチウム二次電池の廃正極から廃正極活物質混合物を準備することができる(例えば、S10工程)。
【0024】
前記リチウム二次電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する分離膜とを含む電極組立体を含むことができる。前記の正極および負極は、それぞれ正極集電体および負極集電体上にコーティングされた正極活物質層および負極活物質層を含むことができる。
【0025】
例えば、前記正極活物質層に含まれた正極活物質は、リチウムおよび遷移金属を含有する酸化物を含むことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0027】
[化学式1]
LiM1M2M3
【0028】
化学式1中、M1、M2及びM3は、Ni、Co、Mn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、GaまたはBから選択される遷移金属であってもよい。化学式1中、0<x≦1.1、2≦y≦2.02、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<a+b+c≦1であってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むNCM系リチウム酸化物であってもよい。
【0030】
前記廃リチウム二次電池から前記正極を分離して廃正極を回収することができる。前記廃正極は、前述のように正極集電体(例えば、アルミニウム(Al))および正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、前述の正極活物質に加えて、導電材(導電材料)及び結合剤を共に含むことができる。
【0031】
前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素系物質を含むことができる。前記結合剤は、例えば、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)などの樹脂物質を含むことができる。
【0032】
例示的な実施形態によると、回収された前記廃正極を粉砕して廃正極活物質混合物を生成することができる。これにより、前記廃正極活物質混合物は、粉末状に製造することができる。前記廃正極活物質混合物は、前述のようにリチウム-遷移金属酸化物の粉末を含み、例えばNCM系リチウム酸化物粉末(例えば、Li(NCM)O)を含むことができる。
【0033】
本出願で使用される用語「廃正極活物質混合物」は、前記廃正極から正極集電体が実質的に除去された後に、後述する流動層反応処理に投入される原料物質を指すことができる。一実施形態では、前記廃正極活物質混合物は、前記NCM系リチウム酸化物のような正極活物質粒子を含むことができる。一実施形態では、前記廃正極活物質混合物は、前記結合剤または前記導電材に由来する成分を一部含むこともできる。一実施形態では、前記廃正極活物質混合物は、前記正極活物質粒子で実質的に構成されてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記廃正極活物質混合物の平均粒径(D50)は5~100μmであってもよい。前記範囲内では、前記廃正極活物質混合物に含まれる正極集電体、導電材及び結合剤から、回収対象であるLi(NCM)Oのようなリチウム-遷移金属酸化物を容易に分離することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記廃正極活物質混合物を後述する流動層反応器に投入する前に熱処理を行うことができる。前記熱処理により、前記廃正極活物質混合物に含まれた前記導電材および結合剤のような不純物を除去または低減し、前記リチウム-遷移金属酸化物を高純度で前記流動層反応器内に投入することができる。
【0036】
前記熱処理温度は、例えば約100~500℃、好ましくは約350~450℃であってもよい。前記範囲内では、実質的に前記不純物が除去され、リチウム-遷移金属酸化物の分解、損傷を防止することができる。
【0037】
例えば、S20工程では、前記廃正極活物質混合物を流動層反応器100内で反応ガスと反応させ、予備前駆体混合物80を形成することができる。
【0038】
図1に示すように、流動層反応器100は、反応器本体110、反応器下部120、および水平拡張ベッド130に区分できる。反応器本体110は、ヒーターなどの加熱手段を含むか、または加熱手段と一体化することができる。
【0039】
反応器下部120は、反応器本体110における分散プレート50の下部と定義することができる。
【0040】
前記廃正極活物質混合物は、供給流路108aを介して反応器本体110内に供給することができる。前記廃正極活物質混合物は、反応器本体110の上部に接続された供給流路108aを介して滴下することができる。前記廃正極活物質混合物は、反応器本体110の底部に接続された供給流路(図示せず)を介して投入することもできる。
【0041】
反応器下部120に接続されたガス流路104を介して、反応器本体110内に前記廃正極活物質混合物を予備前駆体に変換するための反応ガスを供給することができる。例示的な実施形態によると、前記反応ガスは還元性ガスを含み、例えば水素(H)を供給することができる。
【0042】
前記反応ガスは、前記分散プレートに含まれる噴射カラム60を介して反応器本体110内に噴出することができる。流動層反応器100の下部から反応ガスが供給されて前記廃正極活物質混合物と接触するので、前記廃正極活物質混合物が水平拡張ベッド130に移動し、前記反応ガスと反応して予備前駆体混合物80に変換され得る。
【0043】
例えば、反応器本体110の直径に対する水平拡張ベッド130の直径の比は3以上であってもよい。好ましくは、前記直径比は3~10であってもよく、より好ましくは3~5であってもよい。
【0044】
前記直径は、流動層反応器100の中心軸および流動層反応器100の内壁を基準に測定することができる。この場合には、反応器本体110から水平拡張ベッド130に移動する予備前駆体混合物80または前記反応ガスの流速を急激に減少させることができる。これにより、予備前駆体混合物80の移動速度が終端速度(u)未満の値を有し、反応器本体110の外部に流出する予備前駆体混合物80の量を効果的に低減できる。
【0045】
例えば、反応器本体110の直径に対する水平拡張ベッド130の直径の比は3~10であってもよい。例えば、前記直径比が3未満であると、流動層反応器100の水平拡張ベッド130の直径が十分に拡張されず、十分な減速効果を期待しにくく、10を超えると、流動層反応器100の水平拡張ベッド130の大きさが大きくなりすぎて、全体的な工程効率が低下することがある。
【0046】
例えば、流動層反応器100は、反応器本体110と水平拡張ベッド130とを接続する垂直拡張管140をさらに含むことができる。垂直拡張管140は、反応器本体110の直径よりも水平拡張ベッド130の直径が大きくなることにより、一定の傾斜角度(a)をもって直径が徐々に増加する領域を意味し得る。例えば、傾斜角度(a)は、反応器本体110の側面に対する垂直方向の延長線と垂直拡張管140の傾斜面とがなす角度と定義することができる。
【0047】
例えば、垂直拡張管140の傾斜角度(a)は、約45~80°であってもよい。より好ましくは、垂直拡張管140の傾斜角度(a)は、約60~80°であってもよい。例えば、傾斜角度(a)が前記範囲を満たすと、流動層反応器100に含まれる水平拡張ベッド130の領域が不必要に増加しない範囲で、効果的な予備前駆体混合物80の減速効果が期待できる。
【0048】
また、減速して下降する予備前駆体混合物80が、垂直拡張管140の傾斜面に沿って反応器本体110内に再流入することにより、リチウム前駆体の回収効率をより向上させることができる。
【0049】
いくつかの例示的な実施形態では、流動層反応器100は、反応器本体110に反応ガスを注入するガス注入路104を含むことができる。
【0050】
前記反応ガスは、前記ガス注入路104、ベースプレート50および噴射カラム60を順次通過し、反応器本体110内に注入され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記リチウム-遷移金属酸化物が前記水素ガスによって還元され、例えば、リチウム水酸化物(LiOH)、リチウム酸化物(例えば、LiO)を含む予備リチウム前駆体、および遷移金属または遷移金属酸化物が生成され得る。例えば、還元反応により、前記予備リチウム前駆体とともに、Ni、Co、NiO、CoOおよびMnOが生成され得る。
【0052】
反応器本体110における前記還元反応は、約400~700℃、好ましくは450~550℃で行うことができる。前記反応温度の範囲内では、予備リチウム前駆体および前記遷移金属/遷移金属酸化物の再凝集、再結合を招くことなく還元反応を促進することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、反応器下部120からキャリアガスを前記反応ガスと共に供給することができる。例えば、前記キャリアガスは、ガス流路104を介して前記反応ガスと共に供給することもできる。例えば、前記キャリアガスは、窒素(N)、アルゴン(Ar)などの不活性気体を含むことができる。前記キャリアガスもまた、分散プレートの噴射カラム60を介して噴出供給され、流動層の形成を促進することができる。例えば、前記キャリアガスによるサイクロンの形成を促進することができる。
【0054】
反応器本体110内では、予備リチウム前駆体および予備遷移金属前駆体(例えば、前記遷移金属または遷移金属酸化物)を含む予備前駆体混合物80を形成することができる。前記予備リチウム前駆体は、例えば、リチウム水酸化物、リチウム酸化物及び/又はリチウム炭酸化物(リチウムカーボネート)を含むことができる。
【0055】
例えば、予備前駆体混合物80を冷却することができる。この場合、予備前駆体混合物80を気体状態の冷媒または液体状態の冷媒を用いて冷却することができる。
【0056】
例えば、予備前駆体混合物80を約100℃以下に冷却することができる。より好ましくは、予備前駆体混合物80を約50~100℃に冷却することができる。例えば、予備前駆体混合物80を前記温度の範囲で冷却すると、後述するリチウム前駆体の回収時の前記リチウム前駆体の回収効率を向上させることができる。
【0057】
冷却された予備前駆体混合物80からリチウム前駆体を選択的に回収することができる(例えば、S30工程)。
【0058】
いくつかの実施形態では、冷却された予備前駆体混合物80を水で水洗処理して予備リチウム前駆体を回収することができる。前記水洗処理により、リチウム水酸化物(LiOH)形態の予備リチウム前駆体粒子は、実質的に水に溶解し、遷移金属前駆体から分離して優先して回収することができる。水に溶解したリチウム水酸化物の結晶化工程などによって、リチウム水酸化物で実質的に構成されたリチウム前駆体を得ることができる。
【0059】
一実施形態では、リチウム酸化物およびリチウムカーボネートの形態の予備リチウム前駆体粒子は、実質的に前記水洗処理によって除去することができる。一実施形態では、リチウム酸化物およびリチウムカーボネートの形態の予備リチウム前駆体粒子は、前記水洗処理によって少なくとも部分的にリチウム水酸化物に変換され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、予備リチウム前駆体を一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)などの炭素含有ガスと反応させ、リチウム前駆体としてリチウムカーボネート(例えば、LiCO)を得ることができる。前記炭素含有ガスとの反応により、結晶化したリチウム前駆体を得ることができる。例えば、前記水洗処理中に炭素含有ガスを共に注入し、リチウムカーボネートを収集することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、収集された予備遷移金属前駆体から遷移金属前駆体を得ることができる(例えば、S40工程)。
【0062】
例えば、前記予備リチウム前駆体を排出口108bを介して収集した後、前記予備遷移金属前駆体を回収することができる。その後、前記予備遷移金属前駆体を酸溶液で処理し、各遷移金属の酸塩形態の前駆体を形成することができる。
【0063】
一実施形態では、前記酸溶液として硫酸を使用することができる。この場合には、前記遷移金属前駆体として、NiSO、MnSO、及びCoSOをそれぞれ回収することができる。
【0064】
前述のように、リチウム前駆体は乾式工程によって収集した後、遷移金属前駆体は酸溶液を活用して選択的に抽出するので、各金属前駆体の純度及び選択率が向上し、湿式工程のロッドが減少して、廃水及び副産物の増加を低減することができる。
【0065】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0066】
実施例1
廃リチウム二次電池から分離された正極材の100kgを450℃で1時間熱処理した。熱処理された前記正極材を小さな単位に切断し、ミリングによって粉砕処理し、Li-Ni-Co-Mn酸化物正極活物質試料を採取した。
【0067】
反応器本体の直径に対する水平拡張ベッドの直径の比が4である流動層反応器内に前記正極活物質試料10kgをロードし、反応器下部から窒素ガスを100L/分の流量で注入した。反応器内の温度は450℃に維持した。
【0068】
反応器の外部に流出した正極活物質の量を測定し、時間当たりの流出量を計算し、その結果を下記表1に示す。
【0069】
実施例2~3及び比較例1
反応器本体の直径に対する水平拡張ベッドの直径の比を下記表1に示すように調整した以外は、実施例1と同様の方法で反応器の外部に流出した正極活物質の量を測定し、時間当たりの流出量を計算して示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、反応器本体の直径に対する水平拡張ベッドの直径の比が3以上の場合には、反応器の外部に流出する正極活物質の量が減少した。
【符号の説明】
【0072】
50:ベースプレート
60:噴射カラム
80:予備前駆体混合物
100:流動層反応器
104:ガス流路
110:反応器本体
120:反応器下部
130:水平拡張ベッド
140:垂直拡張管
a:傾斜角度
図1