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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20250212BHJP
   G06F 3/0484 20220101ALI20250212BHJP
   H04B 10/114 20130101ALI20250212BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
G02B30/56
G06F3/0484
H04B10/114
H04Q9/00 371A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022557299
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034391
(87)【国際公開番号】W WO2022085346
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2024-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2020176011
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】望月 隆義
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105744(JP,A)
【文献】特開2018-146965(JP,A)
【文献】特開2015-69572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/56
G06F 3/0484
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中に虚像を表示する空中表示装置であって、
光を照射して情報を表示する表示装置と、
前記表示装置からの光を複数回反射させて空中に虚像を表示する再帰反射部材と、
データとして用いられる赤外線を前記再帰反射部材を介して送受信する赤外線送受信部と、
前記表示装置及び前記赤外線送受信部のそれぞれと制御信号を送受信する制御部と、
前記表示装置及び前記赤外線送受信部を収容する筐体と、
を備え、
前記再帰反射部材は、前記筐体に形成された開口に取り付けられており、
前記表示装置及び前記赤外線送受信部は、前記筐体の内部に配置されている、
空中表示装置。
【請求項2】
前記再帰反射部材は、前記虚像としてスイッチ付きの表示面を表示し、
前記スイッチに接近する対象物の位置を検出するセンサと、
前記センサによって検出された前記対象物の位置に基づいて、前記スイッチが操作されたか否かを判定する判定部と、
を備える請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記赤外線送受信部は、前記判定部が前記スイッチが操作されたと判定したときに、データとして用いられる赤外線を前記再帰反射部材を介して送信する、
請求項2に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記赤外線送受信部は、データとして用いられる赤外線を前記再帰反射部材を介して照射し、
前記赤外線送受信部が赤外線を照射する方向を切り替える切り替え手段を備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記赤外線送受信部は、前記空中表示装置の外部に位置する外部機器を操作する赤外線リモコンコードとして赤外線を送信する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、虚像を表示する空中表示装置に関する。
本出願は、2020年10月20日の日本出願第2020-176011号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
空中に虚像を表示する表示装置としては従来から種々のものが知られている。特開2016-154035号公報には、光センサ付きディスプレイを備えた非接触入力装置が記載されている。非接触入力装置は、平面状のディスプレイと、ディスプレイに表示される画像を入光してディスプレイの画像を第1の実像として結像する光結像手段とを備える。光結像手段は、ディスプレイの対称位置に結像を行う。
【0003】
光結像手段が結像した第1の実像には、指が触れられる。指が当該実像に触れられると、指にディスプレイから赤外線が照射される。指からの反射光が光結像手段を介してディスプレイ上に第2の実像として結像する。ディスプレイには赤外線センサが内蔵されている。赤外線センサが第2の実像の位置を光学的に検知することにより、指が第1の実像のどの部分を押したかが認識される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-154035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、指の検知等のセンシング以外の目的として赤外線を送受信する場合であって、当該赤外線を送受信する赤外線送受信部を筐体の内部に配置する場合、赤外線の送受信のための窓を別途筐体に形成しなければならないことがある。このように、センシング以外の目的で赤外線の送受信を行う場合には、筐体に窓を別途形成する必要が生じうる。従って、筐体のデザイン性、及び筐体の作製にかかるコストの点で改善の余地がある。
【0006】
本開示は、筐体のデザイン性の低下を抑制すると共に、筐体の作製にかかるコストの増大を抑制することができる空中表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る空中表示装置は、空中に虚像を表示する空中表示装置である。空中表示装置は、光を照射して情報を表示する表示装置と、表示装置からの光を複数回反射させて空中に虚像を表示する再帰反射部材と、データとして用いられる赤外線を再帰反射部材を介して送受信する赤外線送受信部と、表示装置及び赤外線送受信部のそれぞれと制御信号を送受信する制御部と、表示装置及び赤外線送受信部を収容する筐体と、を備える。再帰反射部材は、筐体に形成された開口に取り付けられており、表示装置及び赤外線送受信部は、筐体の内部に配置されている。
【0008】
この空中表示装置では、表示装置が再帰反射部材に光を照射することによって空中に虚像を表示すると共に、データとして用いられる赤外線を再帰反射部材を介して赤外線送受信部が送受信する。表示装置及び赤外線送受信部は筐体の内部に配置されており、再帰反射部材は筐体の開口に取り付けられている。従って、光を照射して情報を表示する表示装置と、データ通信用の赤外線を送受信する赤外線送受信部とで、筐体の開口に取り付けられた再帰反射部材を共用することができる。すなわち、表示装置が虚像を表示するため、及び赤外線の送受信のための双方の目的で再帰反射部材を共用することができる。よって、開口とは別に筐体に窓を形成する必要がないので、筐体のデザインをシンプルにして筐体の作製にかかるコストの増大を抑制することができる。表示装置及び赤外線送受信部のそれぞれに制御信号を送受信する制御部が設けられることにより、表示装置による虚像の表示と赤外線送受信部によるデータの送受信とを連動させることができる。
【0009】
再帰反射部材は、虚像としてスイッチ付きの表示面を表示し、スイッチに接近する対象物の位置を検出するセンサと、センサによって検出された対象物の位置に基づいて、スイッチが操作されたか否かを判定する判定部と、を備えてもよい。この場合、表示装置が虚像としてスイッチ付きの表示面を表示し、スイッチに接近する指等の対象物の位置をセンサが検出する。対象物の位置に基づいて、判定部は、スイッチが操作されたか否かを判定する。従って、空中に虚像としてスイッチを表示してスイッチが操作されたか否かの判定を行うことができるので、スイッチの操作に連動して赤外線送受信部による赤外線の送受信を行うことができる。
【0010】
赤外線送受信部は、判定部がスイッチが操作されたと判定したときに、データとして用いられる赤外線を再帰反射部材を介して送信してもよい。この場合、スイッチが操作されたと判定部が判定したときにデータとしての赤外線が送信されるので、スイッチの操作と赤外線の照射とを連動させることができる。
【0011】
赤外線送受信部は、データとして用いられる赤外線を再帰反射部材を介して照射し、赤外線送受信部が赤外線を照射する方向を切り替える切り替え手段を備えてもよい。この場合、赤外線送受信部が送信する赤外線の方向を切り替え手段によって所望の方向に切り替えることができる。
【0012】
赤外線送受信部は、空中表示装置の外部に位置する外部機器を操作する赤外線リモコンコードとして赤外線を送信してもよい。この場合、表示装置による虚像の表示と赤外線リモコンコードの送信とを連動させることができると共に、赤外線リモコンコードの送信によって外部機器を操作することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、筐体のデザイン性の低下を抑制すると共に、筐体の作製にかかるコストの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る空中表示装置が設置された例示的なトイレを示す斜視図である。
図2】実施形態に係る空中表示装置がスイッチ付きの表示面を表示している状態を示す斜視図である。
図3】実施形態に係る空中表示装置の縦断面図である。
図4】実施形態に係る空中表示装置の機能を示すブロック図である。
図5】変形例に係る空中表示装置の縦断面図である。
図6】変形例に係る空中表示装置の縦断面図である。
図7】変形例に係る空中表示装置の縦断面図である。
図8】変形例に係る空中表示装置の縦断面図である。
図9】変形例に係る空中表示装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本開示に係る空中表示装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る一例としての空中表示装置1を示す斜視図である。図2は、空中表示装置1が空中にスイッチ11付きの表示面10を表示している状態を示す斜視図である。例えば、本実施形態に係る空中表示装置1は、機器を操作するための操作入力装置である。
【0017】
空中表示装置1は、一例として、トイレTに設けられ、表示面10のスイッチ11はトイレTの各部を動作させるスイッチである。スイッチ11付きの表示面10は、空中に浮き出るように表示される空中浮遊像である。スイッチ11付きの表示面10は、空中に虚像として表示される。操作者は直接ボタン等に触れなくて済むため衛生的にトイレTの各部を操作することが可能である。
【0018】
例えば、トイレTは、便器Bと、便器Bに隣接する壁部Wとを備える。例えば、壁部Wは、便器Bに着座した操作者から見て右側に設けられる。例示的な壁部Wには、空中表示装置1及びトイレットペーパーEが固定されており、洗面台Mが設けられていてもよい。便器Bは、例えば、ウォシュレット(登録商標)付きである。表示面10のスイッチ11からトイレTのウォシュレットが操作可能とされている。例えば、表示面10は、複数のスイッチ11を備える。操作者が複数のスイッチ11を操作することによってウォシュレットの各部を動作させることが可能である。
【0019】
空中表示装置1は、例えば、壁部Wに固定されている。空中表示装置1は、壁部Wに埋め込まれていてもよいし、壁部Wに対して着脱可能であってもよい。例示的な空中表示装置1は、筐体2と、筐体2の下部から突出する突出部3とを備える。突出部3には、スイッチ11に接近する対象物Fを検出する複数のセンサ12が埋め込まれている。
【0020】
本開示において、「対象物」とは、スイッチ11を操作して機器を動作させるものを示しており、例えば、操作者の指を示している。センサ12はスイッチ11に対応して設けられている。各スイッチ11は各センサ12の斜め上方に表示される。一例として、スイッチ11及びセンサ12の数は7である。
【0021】
表示面10は、空中表示装置1の上下方向D1、及び壁部Wからの突出方向D3の双方に対して斜め上方に向けられるように表示される。これにより、操作者に表示面10を視認しやすくすることができる。例えば、表示面10は光って表示されるので、周囲の明るさにかかわらず容易に表示面10を視認することができる。表示面10は、例えば、左右方向D2に長く延びる形状を呈する。
【0022】
一例として、表示面10は、矩形状に表示される。表示面10の縦方向の長さL1は表示面10の横方向の長さL2よりも短い。長さL1と長さL2のアスペクト比を1:X(Xを実数)とすると、例えば、Xの値は2以上且つ10以下である。Xの値の下限は3であてもよいし、Xの値の上限は5、6、7、8又は9であってもよい。
【0023】
一例として、上記のXの値は4であり、長さL1と長さL2のアスペクト比は1:4であってもよい。スイッチ11は、例えば、矩形状を呈する。一例として、スイッチ11は正方形状であってもよい。スイッチ11の一辺の長さは、例えば、18mm以上且つ24mm以下である。しかしながら、スイッチ11の形状及び大きさは適宜変更可能である。
【0024】
表示面10は、複数のスイッチ11以外のものを表示してもよい。例えば、表示面10は、複数のスイッチ11と、文字情報13とを含んでもよい。文字情報13は、一例として、日付情報、時刻情報、気温情報、温度情報及び気圧情報の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0025】
表示面10では、例えば、表示面10の下側において複数のスイッチ11が横方向に並ぶように表示され、複数のスイッチ11の上方に文字情報13が表示されてもよい。スイッチ11は、表示面10の中心10bからずれた位置に中心11bが位置するように配置されてもよい。一例として、複数のスイッチ11のそれぞれは、中心10bを通ると共に表示面10の長手方向(横方向)に延びる基準線Vからオフセットした位置に表示される。
【0026】
図3は、例示的な筐体2及び突出部3を示す縦断面図である。図2及び図3に示されるように、例えば、筐体2は、横長に延びる箱状を呈する。一例として、筐体2は、前面2bと、左右一対の側面2cと、上面2dと、下面2fとを有する。前面2bは、壁部Wに取り付けられた状態において上下方向D1及び左右方向D2に延びる。側面2cは、上下方向D1及び壁部Wからの突出方向D3に延びる。上面2dは、左右方向D2及び突出方向D3に延びる。下面2fは、上面2dの反対側を向く。
【0027】
突出部3は、例えば、矩形板状を呈する。一例として、突出部3は、前面2bの下側から突出すると共に上方に向けられる主面3bと、左右方向D2又は突出方向D3を向く端面3cと、主面3bの反対側を向く裏面3dとを有する。前述したように突出部3にはセンサ12が内蔵されている。これにより、センサ12によって対象物Fを検出しやすくすることができる。
【0028】
空中表示装置1は、スイッチ11付きの表示面10を表示する再帰反射部材14と、筐体2の内部に配置された表示装置15と、制御部20と、データとして用いられる赤外線Sを送受信する赤外線送受信部30とを備える。赤外線送受信部30は、例えば、赤外線LEDである。
【0029】
一例として、赤外線送受信部30は、制御部20から制御信号を受けて赤外線Sを送信する。しかしながら、赤外線送受信部30は、空中表示装置1の外部の装置(例えばリモコン)から赤外線を受信してもよい。再帰反射部材14及び表示装置15は、表示面10を虚像として空中に表示する虚像表示部に相当する。再帰反射部材14は、例えば、筐体2の前面2bの内側に位置する開口2gに固定されている再帰反射鏡である。
【0030】
開口2gは、例えば、筐体2の前面2bを構成する一対の第1板部2hと、第1板部2hの筐体2の内側に固定された一対の第2板部2jとによって画成される。一例として、第1板部2h及び第2板部2jは、上下一対に設けられる。再帰反射部材14は、第1板部2hと第2板部2jの間に挟まれた状態で筐体2に固定されている。
【0031】
再帰反射部材14は、例えば、左右方向D2に延びる長辺と、上下方向D1に延びる短辺とを有する長方形状とされている。再帰反射部材14の一方の長辺及び他方の長辺のそれぞれが、第1板部2hと第2板部2jの間に挟まれている。表示装置15は、再帰反射部材14に対して斜めに配置されている。
【0032】
一例として、表示装置15は液晶ディスプレイ(LCD)である。表示装置15は、筐体2の内部において再帰反射部材14の斜め上方に配置されている。表示装置15は、画像を表示するスクリーン15bを有する。スクリーン15bは、例えば、再帰反射部材14に向けて斜め下方に画像としての光Cを照射する。再帰反射部材14は、表示装置15からの光Cを内部において複数回(例えば2回)反射し、操作者から見て再帰反射部材14よりも手前側の空間に表示面10を結像する。
【0033】
センサ12は、例えば、突出部3の主面3bに露出していてもよい。一例として、センサ12は深度センサである。例えば、センサ12は、スイッチ11から延びる仮想直線上、すなわち、虚像であるスイッチ11に対して正面位置に設けられる。センサ12は、当該仮想直線に対して垂直な面における対象物Fの位置(2次元位置)の情報と、センサ12から対象物Fまでの距離Kの情報とを含む距離画像データを取得する。センサ12は、例えば、距離画像データを取得する。センサ12は、例えば、取得した距離画像データを所定の周期(例えば1/30秒)で制御部20に出力する。
【0034】
具体例として、センサ12は、対象物Fを含む撮影領域内に存在する物体上の各点に光線(又は赤外線)を照射し、物体上の各点から反射した光線を受光する。センサ12は、受光した光線に基づいてセンサ12と物体上の各点との距離を測定し、測定した距離を画素毎に出力する。センサ12と物体上の各点との距離は、例えばLight Coding方式によって測定されてもよい。
【0035】
Light Coding方式では、センサ12は、対象物Fを含む撮影領域内に存在する物体上の各点にランダムドットパターンで光線を照射する。センサ12は、物体上の各点から反射した光線を受光し、反射した光線のパターンの歪みを検出することによって、センサ12と物体上の各点との距離を測定する。センサ12は、物体上の各点の2次元位置の情報と、センサ12から物体上の各点までの距離の情報とを複数の画素として検出し、検出した複数の画素を制御部20に出力する。
【0036】
制御部20は、センサ12、表示装置15及び赤外線送受信部30のそれぞれと通信可能とされている。制御部20は、例えば、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む記憶部と、入出力部と、ドライバとを含む。制御部20の各機能は、CPUの制御の下で入出力部を動作させ、記憶部におけるデータの読み出し又は書き込みを行うことによって実現される。制御部20の形態及び配置場所については特に限定されない。
【0037】
図4は、制御部20の機能ブロック図である。図3及び図4に示されるように、制御部20は、機能的構成要素として、画像出力部21と、対象物検出部22と、判定部23と、信号出力部24と、通知部25とを有する。画像出力部21は、表示装置15に表示される画像の画像データの制御信号を表示装置15に出力する。表示装置15は、画像出力部21からの画像データの制御信号に基づいて、様々な種類の画像を表示することが可能である。
【0038】
対象物検出部22は、センサ12から出力される距離画像データに基づいて対象物Fを検出する。対象物検出部22は、対象物Fを検出すると、対象物Fの位置を示す位置データを判定部23に出力する。判定部23は、対象物検出部22から出力された位置データに基づいて、対象物Fによってスイッチ11が押下されたかどうかを判定する。
【0039】
具体的には、判定部23は、センサ12と対象物Fとの距離Kが閾値Y以下であるか否かを判定する。判定部23は、距離Kが閾値Y以下であると判定したときに、対象物Fが仮想の押下判定面Zに到達し、スイッチ11が押下されたと判定する。例えば、判定部23は、スイッチ11が押下されたと判定したときにスイッチ11の操作が行われたことを示す操作信号を生成する。
【0040】
押下判定面Zは、センサ12からの距離が一定である部位に形成された仮想の面である。例えば、押下判定面Zは、スイッチ11の近接位置に設けられる。押下判定面Zの位置は、スイッチ11の位置と一致していてもよいし、スイッチ11から所定位置だけ離間した位置であってもよい。本実施形態では、押下判定面Zの位置はスイッチ11の位置と一致している。
【0041】
通知部25は、スイッチ11が押下されたと判定部23が判定したときに判定部23から操作信号を受信する。通知部25は、スイッチ11が操作されたと判定部23が判定したときに、スイッチ11が操作されたことを操作者に通知する通知手段である。通知部25は、例えば、音声出力部25bと、色彩変更部25cとを有する。
【0042】
一例として、音声出力部25bは、スピーカであり、判定部23から操作信号を受信したときに音声を出力する。音声出力部25bからの音声を操作者が聞くことにより、操作者はスイッチ11が操作された旨を把握可能となる。色彩変更部25cは、例えば、判定部23から操作信号を受信したときに色彩変更信号を生成する。色彩変更部25cは、色彩変更信号を表示装置15に出力する。
【0043】
表示装置15は、色彩変更部25cから色彩変更信号を受信すると、例えば、操作者が押下したスイッチ11の色彩を変更する。スイッチ11の色彩が変更されたことを操作者が視認することにより、操作者はスイッチ11が操作された旨を把握可能となる。表示装置15は、色彩変更部25cから色彩変更信号を受信したときに、スイッチ11以外の箇所の色彩を変更してもよい。
【0044】
以上の通知部25を備えることにより、操作者はスイッチ11が操作された旨を把握できる。しかしながら、通知部25では、音声出力部25b及び色彩変更部25cの少なくともいずれかが省略されてもよい。通知部25は、音声出力部25bによる音声出力、又は色彩変更部25cによる色彩変更、とは異なる態様でスイッチ11が操作された旨を操作者に通知してもよい。
【0045】
信号出力部24は、スイッチ11の押下操作がなされたと判定部23が判定したときに、スイッチ11の押下操作に基づく制御信号を生成する。信号出力部24は、生成した制御信号を赤外線送受信部30に送信する。制御信号を受けた赤外線送受信部30は空中表示装置1の外部の機器を動作させる。
【0046】
一例としての赤外線送受信部30は、データとして用いられる赤外線Sを再帰反射部材14を介して送信することによって、空中表示装置1の外部機器を制御する装置制御部である。赤外線送受信部30は、例えば、ウォシュレット付きの便器B(図1参照)、ウォシュレットの各部、及び洗面台Mのいずれかを動作させてもよい。一例として、赤外線送受信部30は、便器洗浄に対応するスイッチ11が押下されたときに便器Bに便器洗浄を行わせてもよい。このように、例示的な空中表示装置1では、虚像として表示されるスイッチ11の操作でトイレTの各部を動作させることが可能である。従って、トイレTの各部の動作のためにボタン等を直接(物理的に)押す必要がないため、衛生的に操作を実現させることができる。
【0047】
赤外線送受信部30が送信する赤外線Sは、データ通信に用いられる。赤外線送受信部30は、例えば、筐体2の内部であって、再帰反射部材14から見て操作者の反対側に設けられる。赤外線送受信部30は、虚像を表示する再帰反射部材14に赤外線Sを照射する。再帰反射部材14に照射された赤外線Sは再帰反射部材14において再帰反射される。
【0048】
例えば、赤外線送受信部30は、表示装置15が照射する光Cに交差する方向に赤外線Sを照射する。一例として、赤外線送受信部30は、筐体2の内部において再帰反射部材14の斜め下方に配置されている。この場合、赤外線送受信部30は、表示装置15の下方に設けられ、斜め上方に赤外線Sを照射する。しかしながら、赤外線送受信部30の位置、及び赤外線送受信部30が赤外線Sを照射する方向は特に限定されない。
【0049】
赤外線送受信部30からの赤外線Sは、表示装置15からの光Cと同様に再帰反射部材14を通る。例えば、筐体2には赤外線Sを通すための専用の開口が設けられていない。すなわち、本実施形態では、筐体2の開口2gを、赤外線Sを通すため及び光Cを通るために共用している。
【0050】
再帰反射部材14は、赤外線送受信部30からの赤外線Sを内部において複数回(例えば2回)反射し、操作者から見て再帰反射部材14よりも手前側の空間に赤外線送受信部Xを結像する。赤外線Sは、例えば、空中表示装置1の外部機器を操作するための赤外線リモコンコード(リモコン用赤外線)である。
【0051】
赤外線送受信部30が再帰反射部材14から見て一方側(筐体2の内側)に配置されると、他方側(筐体2の外側)に面対称で赤外線送受信部Xが光学的に配置されることとなる。この赤外線送受信部Xを、例えば、トイレTの各部(一例として便器B)に向けることによってトイレTの各部に赤外線リモコンコードを照射することが可能となる。
【0052】
次に、本実施形態に係る空中表示装置1の作用効果について説明する。空中表示装置1では、表示装置15が再帰反射部材14に光Cを照射することによって空中に虚像を表示する。データとして用いられる赤外線Sを再帰反射部材14を介して赤外線送受信部30が送受信する。表示装置15及び赤外線送受信部30は筐体2の内部に配置されている。再帰反射部材14は筐体2の開口2gに取り付けられている。従って、光Cを照射して情報を表示する表示装置15と、データ通信用の赤外線Sを送受信する赤外線送受信部30とで、筐体2の開口2gに取り付けられた再帰反射部材14を共用することができる。
【0053】
表示装置15が虚像を表示するため、及び赤外線Sの送受信のための双方の目的で再帰反射部材14を共用することができる。よって、開口2gとは別に筐体2に窓を形成する必要がないので、筐体2のデザインをシンプルにして筐体2の作製にかかるコストの増大を抑制することができる。表示装置15及び赤外線送受信部30のそれぞれに制御信号を送受信する制御部20を備えることにより、表示装置15による虚像の表示と赤外線送受信部30によるデータの送受信とを連動させることができる。
【0054】
本実施形態に係る空中表示装置1では、再帰反射部材14は、虚像としてスイッチ11付きの表示面10を表示する。空中表示装置1は、スイッチ11に接近する対象物Fの位置を検出するセンサ12と、センサ12によって検出された対象物Fの位置に基づいて、スイッチ11が操作されたか否かを判定する判定部23と、を備える。表示装置15が虚像としてスイッチ11付きの表示面10を表示し、スイッチ11に接近する指等の対象物Fの位置をセンサ12が検出する。対象物Fの位置に基づいて、判定部23は、スイッチ11が操作されたか否かを判定する。従って、空中に虚像としてスイッチ11を表示してスイッチ11が操作されたか否かの判定を行うことができるので、スイッチ11の操作に連動して赤外線送受信部30による赤外線Sの送受信を行うことができる。
【0055】
本実施形態に係る空中表示装置1において、赤外線送受信部30は、判定部23がスイッチ11が操作されたと判定したときに、データとして用いられる赤外線Sを再帰反射部材14を介して送信する。よって、スイッチ11が操作されたと判定部23が判定したときにデータとしての赤外線Sが送信されるので、スイッチ11の操作を赤外線Sの照射とを連動させることができる。
【0056】
本実施形態に係る空中表示装置1において、赤外線送受信部30は、空中表示装置1の外部に位置する外部機器(一例としてトイレTの各機器)を操作する赤外線リモコンコードとして赤外線Sを送信する。よって、表示装置15による虚像の表示と赤外線リモコンコードの送信とを連動させることができる。赤外線リモコンコードを外部機器の受信機に送信することによって外部機器を操作することができる。
【0057】
次に、本開示に係る空中表示装置の種々の変形例について説明する。なお、本開示は、後述する変形例の内容に限定されない。後述する種々の変形例に係る空中表示装置の一部の構成は、前述した空中表示装置1の一部の構成と重複するため、以下では空中表示装置1と重複する内容の説明を適宜省略する。なお、図5図9では、理解の容易化のため、一部の図示を簡略化している。
【0058】
図5に示される空中表示装置31は赤外線送受信部35を備え、赤外線送受信部35による赤外線Sの照射方向が空中表示装置1とは異なっている。赤外線送受信部35は、再帰反射部材14に対して垂直に赤外線Sを照射する。赤外線送受信部35からの赤外線Sは、再帰反射部材14を透過し、空中表示装置31の外部に送信される。
【0059】
再帰反射部材14は、再帰反射部材14に対して垂直に入射した赤外線Sに対しては、赤外線Sを再帰反射させることなくそのまま赤外線Sを透過させる。一般的に、赤外線Sは指向性が高いので、再帰反射部材14に対して赤外線Sを垂直に照射させると、拡散及び再帰反射させることなく再帰反射部材14に赤外線Sを透過させることが可能である。従って、再帰反射部材14に対して垂直方向に強度が集中して指向性が高い赤外線Sを照射できる。
【0060】
図6に示されるように、変形例に係る空中表示装置41は、赤外線送受信部45を備える。例えば、赤外線送受信部45は、表示装置15の隣接位置に配置されており、表示装置15の光Cに沿うように赤外線Sを照射する。赤外線送受信部45は、例えば、再帰反射部材14に向けて斜め下方に赤外線Sを照射する。この場合、再帰反射部材14から斜め上方に赤外線Sを照射できるので、例えば、天井がある方向に赤外線Sを送信することができる。
【0061】
図7に示されるように、変形例に係る空中表示装置51は、赤外線送受信部55と、赤外線送受信部55が赤外線Sを照射する方向を切り替える切り替え手段56とを備える。一例として、切り替え手段56は筐体2の内面に固定されており、切り替え手段56に赤外線送受信部55が上下方向に揺動可能に固定されている。
【0062】
以上のように、変型例に係る空中表示装置51において、赤外線送受信部55は、データとして用いられる赤外線Sを再帰反射部材14を介して照射し、赤外線送受信部55が赤外線Sを照射する方向を切り替える切り替え手段56を備える。従って、赤外線送受信部55が送信する赤外線Sの方向を切り替え手段56によって所望の方向に切り替えることができる。その結果、送信される赤外線Sの位置を切り替えたり、赤外線Sの再帰反射及び透過の双方を実現させることが可能となる。
【0063】
図8に示される空中表示装置61では、赤外線送受信部65が赤外線Sを受信する受信機として機能する。一例として、空中表示装置61は、開口62g付きの筐体62を備えたデジタルサイネージである。赤外線送受信部65は、空中表示装置61の外部機器から再帰反射部材14を介して赤外線Sを受信する。空中表示装置61において、赤外線Sは、例えば、空中表示装置61が表示する画像P(虚像)の画像データである。
【0064】
赤外線送受信部65が赤外線Sを受信すると、赤外線送受信部65から制御部20に画像データが制御信号として出力される。制御部20は当該画像データを制御信号として表示装置15に出力する。当該画像データの画像の光Cを表示装置15が再帰反射部材14に照射することにより、再帰反射部材14が当該画像データの画像Pを虚像として表示する。
【0065】
以上、空中表示装置61では、赤外線送受信部65が再帰反射部材14を介して赤外線Sを外部機器から受信して、制御部20が画像データを表示装置15に出力して表示装置15が再帰反射部材14に当該画像データの画像Pの光Cを照射する。従って、再帰反射部材14によって当該画像データの画像Pを虚像として表示することができる。例えば空中表示装置61が高所にあって手が届きにくい場所にあったとしても、遠隔から空中表示装置61に赤外線Sを送信して容易に画像Pを表示させることができる。
【0066】
図9に示されるように、変形例に係る空中表示装置71は、筐体2とは異なる形状の筐体72と、ビームスプリッタ73と、再帰反射部材74と、赤外線送受信部75とを備える。筐体72は、ビームスプリッタ73が取り付けられる開口72gを有する。筐体72は、開口72gが形成された傾斜面72bと、傾斜面72bの上端から下方に延びる側面72cと、側面72c及び傾斜面72bの間に延在する底面72dとを有する。一例として、側断面視において筐体72は傾斜面72bを斜辺とした直角三角形状を呈する。
【0067】
再帰反射部材74及び赤外線送受信部75は、筐体72の内部に配置されている。ビームスプリッタ73には、表示装置15から光Cが照射される。ビームスプリッタ73は、表示装置15からの光Cを再帰反射部材74に向けて反射する。再帰反射部材74は、ビームスプリッタ73から光Cを受けることにより、筐体72の外部に虚像Qを表示する。
【0068】
空中表示装置71のように、筐体2とは形状が異なる筐体72を用いて、再帰反射部材74及び赤外線送受信部75が筐体72の内部に配置されている場合がある。このような場合でも、制御部20からの制御信号を受けて赤外線送受信部75から赤外線Sが照射されるので、前述した空中表示装置1等と同様の作用効果を得られる。
【0069】
以上、本開示に係る空中表示装置の実施形態及び変形例について説明した。しかしながら、本開示に係る空中表示装置は、前述した実施形態又は変形例に限定されるものではない。本開示に係る空中表示装置は、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。空中表示装置の各部の構成、形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、前述した要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0070】
前述したように、本開示において、赤外線送受信部の配置位置、及び赤外線の照射方向は、特に限定されず、適宜変更可能である。図7では、切り替え手段56に赤外線送受信部55が上下方向に揺動可能に固定されている例について説明した。しかしながら、本開示に係る空中表示装置において、赤外線送受信部が揺動する方向は、上下方向に限られず、例えば360°方向であってもよく、適宜変更可能である。
【0071】
例えば、前述の実施形態では、センサ12は、センサ12と物体上の各点との距離をLight Coding方式によって測定する例について説明した。しかしながら、センサ12の方式は上記の方式に限定されない。例えば、センサ12は、センサ12と物体上の各点との距離を、TOF(Time Of Flight)方式によって測定してもよい。TOF方式では、センサ12は、光線が物体上の各点で反射してセンサ12に到達するまでの光線の飛行時間(遅れ時間)を算出し、算出した飛行時間と光の速度とから、センサ12と物体上の各点との距離を測定する。このような形態であっても、前述した実施形態と同様の効果を奏する。更に、センサの種類は深度センサに限定されない。深度センサであるセンサ12に代えて、赤外線センサ又は超音波センサ等を備えていてもよく、センサの種類は適宜変更可能である。
【0072】
前述の実施形態では、下部に複数のスイッチ11が横方向に並ぶように配置され、スイッチ11の上方に文字情報13が表示される表示面10を再帰反射部材14及び表示装置15が表示する例について説明した。しかしながら、表示面のスイッチ等のレイアウトは、上記の例に限られず適宜変更可能である。更に、空中表示装置は、スイッチ11付きの表示面10を表示する操作入力装置以外の装置であってもよく、前述したデジタルサイネージ等であってもよい。このように、本開示に係る空中表示装置は、空中に虚像を表示させる種々の機器に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1,31,41,51,61,71…空中表示装置、2,72…筐体、2b…前面、2c…側面、2d…上面、2f…下面、2g…開口、2h…第1板部、2j…第2板部、3…突出部、3b…主面、3c…端面、3d…裏面、10…表示面、10b…中心、11…スイッチ、11b…中心、12…センサ、13…文字情報、14,74…再帰反射部材、15…表示装置、15b…スクリーン、20…制御部、21…画像出力部、22…対象物検出部、23…判定部、24…信号出力部、25…通知部、25b…音声出力部、25c…色彩変更部、30,35,45,55,65,75…赤外線送受信部、56…切り替え手段、72b…傾斜面、72c…側面、72d…底面、72g…開口、73…ビームスプリッタ、B…便器、C…光、D1…上下方向、D2…左右方向、D3…突出方向、E…トイレットペーパー、F…対象物、K…距離、M…洗面台、P…画像、Q…虚像、S…赤外線、T…トイレ、V…基準線、W…壁部、X…赤外線送受信部、Y…閾値、Z…押下判定面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9