(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/08 20060101AFI20250212BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20250212BHJP
【FI】
A61B18/08
A61M25/10 510
(21)【出願番号】P 2023024275
(22)【出願日】2023-02-20
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】小磯 智春
(72)【発明者】
【氏名】飯島 俊之
(72)【発明者】
【氏名】井上 匡央
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-505136(JP,A)
【文献】特表2001-526572(JP,A)
【文献】特開平08-173559(JP,A)
【文献】特開2006-198209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0069620(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113318329(CN,A)
【文献】特開平10-230017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/04-18/16
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの先端側部分に設けられ、前記シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、
前記バルーン内において前記シャフトに固定され、前記流体を加熱する加熱部材と、
前記シャフトと一体又は前記シャフト上に設けられ、前記加熱部材に近接又は接触する突起部と、を備え、
前記突起部は、前記加熱部材の外周面の少なくとも一部よりも径方向で高い位置にある高位部を備えるバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記高位部は、前記シャフトの軸線周りの全周に亘って設けられる請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記突起部は、一の前記加熱部材に対応して間隔を空けて複数設けられ、その対応する前記加熱部材に近接又は接触する請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記突起部は、一の前記加熱部材に対応して軸方向に間隔を空けて複数設けられる請求項3に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記突起部は、前記加熱部材の軸方向片側にある端部を径方向外側から覆う覆い部を備える請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項6】
前記突起部は、前記加熱部材を径方向外側から覆わない非覆い部を備え、
前記覆い部の軸方向範囲は、前記非覆い部の軸方向範囲よりも短い請求項5に記載のバルーンカテーテル。
【請求項7】
前記突起部は、前記加熱部材を径方向外側から覆う覆い部と、前記加熱部材を径方向外側から覆わない非覆い部とを備え、
前記突起部は、前記覆い部で最大高さとなる請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項8】
前記バルーンは、前記流体によって拡張可能な拡張部を備え、
前記加熱部材の全体は、前記拡張部の軸方向中央位置に対して軸方向片側に設けられ、
前記突起部は、前記加熱部材の外端部に対応して設けられ、その対応する外端部に近接又は接触する請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項9】
前記加熱部材は、前記中央位置に対して軸方向先端側に全体が設けられる第1加熱部材と、前記中央位置に対して軸方向基端側に全体が設けられる第2加熱部材とを含み、
前記突起部は、前記第1加熱部材及び前記第2加熱部材それぞれの外端部に対応して個別に設けられ、その対応する外端部に近接又は接触する請求項8に記載のバルーンカテーテル。
【請求項10】
前記突起部は、前記加熱部材を前記シャフトに接着する接着剤により構成される請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項11】
前記突起部は、前記加熱部材よりも柔らかい請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項12】
前記加熱部材の軸方向片側にある端部には、前記シャフトの外周面よりも径方向外側に位置する外側エッジ部が設けられ、
前記突起部は、前記外側エッジ部が設けられる前記加熱部材の端部に対応して設けられ、その端部に近接又は接触する請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項13】
前記シャフトの外周面は、前記加熱部材と径方向に重なる重なり領域と、前記加熱部材と径方向に重ならない非重なり領域とを備え、
前記重なり領域と前記非重なり領域は軸方向に面一に連続している請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、体内に挿入されるシャフトと、シャフトの先端側部分に設けられるバルーンと、バルーン内においてシャフトに固定され、バルーン内に供給される流体を加熱する加熱部材と、を備えるバルーンカテーテルを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バルーン内の流体を加熱部材によって効果的に加熱するうえでは、加熱部材による流体の加熱の妨げとならないよう、加熱部材へのバルーンの直接接触をできるだけ抑制することが望まれる。
【0005】
そこで、本開示の目的の1つは、加熱部材へのバルーンの直接接触を抑制できるバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のバルーンカテーテルは、体内に挿入されるシャフトと、前記シャフトの先端側部分に設けられ、前記シャフトの基端側から供給される流体によって拡張可能なバルーンと、前記バルーン内において前記シャフトに固定され、前記流体を加熱する加熱部材と、前記シャフトと一体又は前記シャフト上に設けられ、前記加熱部材に近接又は接触する突起部と、を備え、前記突起部は、前記加熱部材の外周面の少なくとも一部よりも径方向で高い位置にある高位部を備えるバルーンカテーテルである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、加熱部材へのバルーンの直接接触を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態のバルーンカテーテルの全体図である。
【
図2】本実施形態のバルーンを周辺構造とともに示す断面図である。
【
図4】実施形態の突起部の効果に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のバルーンカテーテルを実施するための実施形態を説明する。同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書での「接触」、「固定」、「接着」とは、特に明示がない限り、言及する条件を二者が直接的に満たす場合の他に、他の要素を介して間接的に満たす場合も含む。
【0010】
まず、本実施形態のバルーンカテーテル10の概要を説明する。
図2を参照する。本実施形態のバルーンカテーテル10は、バルーン14内に供給される流体(不図示)を加熱部材16A、16Bにより加熱することで用いられるアブレーションバルーンカテーテルである。このバルーンカテーテル10では、バルーン14内の流体の温度を加熱部材16A、16Bの加熱により調整することで、バルーン14の表面温度が調整される。このように表面温度の調整されたバルーン14を生体組織に接触させることで、バルーンカテーテル10による治療(例えば、生体組織のアブレーション)がなされる。
【0011】
図3を参照する。本実施形態のバルーンカテーテル10は、シャフト12と一体又はシャフト12上に設けられ、加熱部材16A、16Bに近接又は接触する突起部50A、50Bを備える。この突起部50A、50Bは、加熱部材16A、16Bの外周面の少なくとも一部よりも径方向で高い位置にある高位部52を備える。
【0012】
図4を参照する。仮に、加熱部材16A、16Bの外周面に向けてバルーン14が径方向内側に接近しようとした場合を想定する。バルーン14の接近は、例えば、生体組織のアブレーションのために、バルーン14を生体組織に接触させたときに生じ得る。特に、このようなバルーン14の接近は、管腔器官の曲げ部内に配置されたバルーン14を曲げ外側の内腔面に接触させようとしたときに生じ易くなる。このとき、バルーン14の変形を伴いバルーン14及び加熱部材16A、16Bの少なくとも一方が移動することで、加熱部材16A、16Bに向かってバルーン14が相対的に接近する。
【0013】
本実施形態によれば、このようにバルーン14が加熱部材16A、16Bに相対的に接近しようとした場合に、突起部50A、50Bの高位部52がバルーン14に接触することで、その接近を妨げることができる。ひいては、突起部50A、50Bがない場合と比べ、加熱部材16A、16Bへのバルーン14の直接接触を抑制できるようになる。これにより、加熱部材16A、16Bによる流体の加熱がバルーン14により妨げられ難くなり、バルーン14内の流体を加熱部材16A、16Bによって効果的に加熱できるようになる。例えば、直接抵抗加熱等によりバルーン14内の流体を加熱部材16A、16Bにより直接加熱する場合、加熱部材16A、16Bへのバルーン14の直接接触を抑制することで、加熱部材16A、16Bによりバルーン14内の広範囲の流体を効果的に直接加熱し易くなる。また、間接抵抗加熱等により加熱部材16A、16Bの発熱によりバルーン14内の流体を間接的に加熱する場合、加熱部材16A、16Bへのバルーン14の直接接触を抑制することで、加熱部材16A、16Bから流体への熱伝達によりバルーン14内の広範囲の流体を効果的に加熱し易くなる。
【0014】
図1を参照する。実施形態のバルーンカテーテル10の詳細な説明に移る。バルーンカテーテル10は、生体の処置に用いられる。ここでの「処置」とは、生体の治療又は検査に関する行為をいう。本実施形態のバルーンカテーテル10は、生体組織のアブレーションに用いられる例を示すが、それ以外の用途に用いられてもよい。バルーンカテーテル10による処置対象となる器官は特に限定されず、例えば、心臓、血管等の循環器官の他、腸管、肝管等の消化器官等の各種器官であってもよい。
【0015】
バルーンカテーテル10は、少なくとも先端側部分において体内に挿入されるシャフト12と、シャフト12の先端側部分に設けられるバルーン14と、バルーン14内に供給される流体を加熱する加熱部材16A、16Bと、シャフト12の基端側部分に取り付けられるハンドル18と、を備える。ハンドル18は、医師等の術者により把持される。本明細書では、シャフト12の軸線に沿った方向を、単に「軸方向」といい、シャフト12の軸線を中心とする円の半径方向及び円周方向を、単に「径方向」、「周方向」という。
【0016】
図2を参照する。シャフト12は、曲げ変形可能な可撓性を持つ。シャフト12は、少なくとも一つのシャフト部材20A、20Bによって構成される。本実施形態のシャフト12は、シャフト部材20A、20Bとして、アウターシャフト部材20Aと、インナーシャフト部材20Bを備える。アウターシャフト部材20Aには、インナーシャフト部材20Bが挿通されるメインルーメン22が形成される。インナーシャフト部材20Bにはガイドワイヤー等の医療デバイスを挿通するためのインナールーメン26が形成される。
【0017】
以上のシャフト12には、バルーン14内に供給される流体が通流する流体通流ルーメン28が形成される。本実施形態の流体通流ルーメン28は、アウターシャフト部材20Aのメインルーメン22が兼ねている。
【0018】
バルーン14は、シャフト12の基端側から供給される流体によって拡張可能である。
図2ではバルーン14が拡張した状態を示す。本明細書では、特に言及しない限り、バルーン14が拡張した状態にある場合を前提として各種構成要素の関係を説明する。バルーン14を拡張するための流体は、ハンドル18に設けられた流入ポート18a(
図1参照)からシャフト12の流体通流ルーメン28内に流入し、流体通流ルーメン28を経由してバルーン14内に供給される。この流体は、ここでは造影剤を例に説明する。この流体の具体例は、加熱部材16A、16Bによって加熱できるものであれば特に限定されない。この流体は、例えば、造影剤、生理食塩水、減菌水等の各種液体の他に、空気等の各種気体でもよい。
【0019】
バルーン14は、流体によって拡張可能な拡張部14aと、拡張部14aに対して軸方向両側に設けられる基端側スリーブ部14b及び先端側スリーブ部14cを備える。拡張部14aは各スリーブ部14b、14cに対して径方向外側に膨らむように拡張する。本実施形態の拡張部14aは、軸方向に向かってストレートに延びる筒状をなす胴部14dと、胴部14dに対して軸方向両側に設けられ胴部14dから軸方向外側に向かうに連れて縮径するテーパー部14eを備える。基端側スリーブ部14bは、シャフト12を取り囲む筒状をなし、その基端側部分においてシャフト12の一部(ここではアウターシャフト部材20A)に溶着、接着等により取り付けられる。先端側スリーブ部14cは、シャフト12を取り囲む筒状をなし、シャフト12の一部(ここではインナーシャフト部材20B)に溶着、接着等により取り付けられる。バルーン14の拡張部14aにおける形状の具体例は特に限定されず、例えば、球状等をなしていてもよい。
【0020】
加熱部材16A、16Bは、バルーン14内においてシャフト12に固定される。本実施形態の加熱部材16A、16Bは、直接抵抗加熱により流体を加熱する電極により構成される。電極となる加熱部材16A、16Bは、外部給電装置(不図示)から供給された電流をバルーン14内の流体に通電させることで流体を加熱する。加熱部材16A、16Bの加熱態様は特に限定されず、間接抵抗加熱、超音波加熱、レーザー加熱、マイクロ波加熱等により流体を加熱してもよい。
【0021】
加熱部材16A、16Bの全体は、バルーン14の拡張部14aの軸方向中央位置Paに対して軸方向片側に設けられる。加熱部材16A、16Bは、軸方向中央位置Pa上には設けられていないことになる。本実施形態の加熱部材16A、16Bは、その中央位置Paに対して軸方向先端側に全体が設けられる第1加熱部材16Aと、その中央位置Paに対して軸方向基端側に全体が設けられる第2加熱部材16Bとを含む。これにより、第1、第2加熱部材16A、16Bによって、バルーン14の拡張部14a内の広い軸方向範囲で流体を加熱できる。第1、第2加熱部材16A、16Bは互いの間で通電するバイポーラ電極として機能する。
【0022】
図2、
図3を参照する。加熱部材16A、16Bは、シャフト12を取り囲むリング状をなしており、リング電極を構成する。加熱部材16A、16Bの形状はこれに限定されず、線状、板状等をなしていてもよい。加熱部材16A、16Bは、バルーン14の拡張部14aにおける軸方向外側にある外端部16aと、その拡張部14aにおける軸方向内側にある内端部16bとを備える。ここでの軸方向外側とは、バルーン14の拡張部14aの軸方向中央位置Paに対して軸方向で遠ざかる側をいい、軸方向内側とは、その中央位置Paに対して軸方向で近づく側をいう。加熱部材16A、16Bの両端部16a、16bには、シャフト12の外周面よりも径方向外側に位置する外側エッジ部16cが設けられる。外側エッジ部16cは、加熱部材16A、16Bの軸方向を向く側面16fと径方向外側を向く外周面16gとがなす角部に形成される。この他に、加熱部材16A、16Bは、突起部50A、50B(後述する覆い部56)により覆われずにバルーン14の内部空間14fに露出する露出面16dを備える。
【0023】
加熱部材16A、16Bは、シャフト12の一部(ここではインナーシャフト部材20B)に接着剤40を用いた接着により固定される。これを実現するうえで、リング状の加熱部材16A、16Bの内周側にはシャフト12との間にリング状の内側隙間42が設けられ、その内側隙間42を埋めるように接着剤40が設けられる。シャフト12に対する加熱部材16A、16Bの固定態様はこれに限定されない。例えば、加熱部材16A、16Bは、リング状の内側隙間42を空けずにシャフト12に接着により固定されてもよいし、スエージング加工等により固定されてもよい。
【0024】
バルーンカテーテル10は、加熱部材16A、16Bと外部給電装置を電気的に接続するための導線44を備える。導線44は、個々の加熱部材16A、16Bに対応して個別に設けられる。導線44の末端部は、加熱部材16A、16Bの内周側にある内側隙間42に部分的に配置され、加熱部材16A、16Bに導通されている。これにより、導線44の末端部が加熱部材16A、16Bにより保護され、導通信頼性の確保に寄与する。この他にも、導線44は、バルーン14の内部空間14fに露出する加熱部材16A、16Bの表面に導通されていてもよい。導線44は、バルーン14内において接着剤40から引き出されたうえで、図示しないものの、シャフト12の内部(ここではアウターシャフト部材20Aのメインルーメン22)を通してハンドル18内にまで延びている。
【0025】
ここで、バルーンカテーテル10は、シャフト12と一体又はシャフト12上に設けられる突起部50A、50Bを備える。ここでの「シャフト12と一体に設けられる」とは、シャフト12の一部(シャフト部材)と突起部50A、50Bが一体成形されていることを意味する。ここでの「シャフト12上に設けられる」とは、シャフト12の一部の面(シャフト部材の外周面)上にシャフト12とは別体に突起部50A、50Bが設けられることを意味する。このようにシャフト12上に設けるうえで、シャフト12上に直接的に突起部50A、50Bが位置する場合の他、シャフト12上に他部材(加熱部材16A、16B、接着剤40等)を介して間接的に位置している場合が含まれる。本実施形態の突起部50A、50Bはシャフト12上に直接的に突起部50A、50Bの一部が位置するとともに、加熱部材16A、16B及び接着剤40を介してシャフト12上に間接的に突起部50A、50Bの一部が位置する。このようにシャフト12と一体又はシャフト12上に設けるという条件を満たすううえで、突起部50A、50Bとバルーン14は、互いに拘束されることなく自由に移動可能となるよう分離している。
【0026】
突起部50A、50Bは、シャフト12及び加熱部材16A、16Bの少なくとも一方の表面において突き出る突起状をなす。本実施形態では、シャフト12及び加熱部材16A、16Bの双方の表面(詳しくは外周面)において突き出る突起状をなすが、シャフト12及び加熱部材16A、16Bの一方のみの表面において突き出る突起状をなしていてもよい。ここでの表面とは、バルーン14の内部空間14fに露出する面をいう。
【0027】
本実施形態の突起部50A、50Bは、加熱部材16A、16Bをシャフト12に接着する接着剤40により構成される。よって、接着剤40とは別に突起部50A、50Bを設ける場合と比べて、バルーンカテーテル10の構造を簡素化することができる。この接着剤40は、例えば、紫外線又は可視光により硬化する光硬化性接着剤、又は、加熱により溶融し冷却により硬化する熱硬化性接着剤等を採用してもよい。この具体例として、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤を採用してもよい。シャフト12と別体に突起部50A、50Bを設けるうえで、突起部50A、50Bの具体例はこれに限定されず、線材、リング材、メッシュ材等により構成されてもよい。なお、突起部50A、50Bの概念から導線44は除かれる。
【0028】
突起部50A、50Bは、加熱部材16A、16Bに接触している。これに替えて、突起部50A、50Bは、加熱部材16A、16Bに近接していてもよい。ここでの「近接する」とは、突起部50A、50Bが加熱部材16A、16Bの近くにあることを意味している。このような「近接する」という条件を満たすうえで、突起部50A、50Bは、バルーン14が加熱部材16A、16Bに径方向に接近しようとしたときに、そのバルーン14の接近を妨げることができる位置にあればよい。この位置は、例えば、加熱部材16A、16Bに対する突起部50A、50Bの最小距離が0.5mm以内となる位置をいう。
【0029】
突起部50A、50Bは、一の加熱部材16A、16Bに対応して間隔を空けて複数設けられ、その対応する加熱部材16A、16Bに近接又は接触する。本実施形態において、一の加熱部材16A、16Bに対応する複数の突起部50A、50Bは、軸方向に間隔を空けて設けられるが、加熱部材16A、16Bの形状によっては軸方向及び周方向のいずれかに間隔を空けて設けられてもよい。一の加熱部材16A、16Bに対応する複数の突起部50A、50Bの個数は、ここでは二個であるが、三個以上でもよい。これにより、一の加熱部材16A、16Bに対応する突起部50A、50Bの個数が一つのみの場合と比べ、一の加熱部材16A、16Bへのバルーン14の直接接触を突起部50A、50Bの高位部52により効果的に抑制できる。
【0030】
一の加熱部材16A、16Bに対応する複数の突起部50A、50Bは、一の加熱部材16A、16Bの軸方向両側にある両端部16a、16bのそれぞれに対応して個別に設けられる。突起部50A、50Bは、外端部16aに対応する外側突起部50Aと、内端部16bに対応する内側突起部50Bとを含む。突起部50A、50Bは、自身の対応する加熱部材16A、16Bの端部16a、16bに近接又は接触する。外側突起部50Aは、加熱部材16A、16Bの外端部16aに近接又は接触し、内側突起部50Bは、加熱部材16A、16Bの内端部16bに近接又は接触することになる。これにより、加熱部材16A、16Bの両端部16a、16bそれぞれへのバルーン14の直接接触を、その両端部16a、16bのそれぞれに対応する突起部50A、50Bの高位部52により抑制できる。また、加熱部材16A、16Bの軸方向中間部にバルーン14が接近しようとしたとき、各突起部50A、50Bの高位部52に二点で接触することで、その中間部へのバルーン14の相対的な接近を効果的に妨げることができる。ひいては、加熱部材16A、16Bの広範囲でのバルーン14の直接接触を抑制できる点で更に有効である。
【0031】
突起部50A、50Bは、第1、第2加熱部材16A、16Bのそれぞれに対応して個別に設けられる(
図2参照)。突起部50A、50Bは、第1、第2加熱部材16A、16Bのそれぞれに対応して計4つ存在することになる。突起部50A、50Bは、第1、第2加熱部材16A、16Bそれぞれの外端部16aに対応する計2つの外側突起部50Aを含んでいる。
【0032】
バルーン14の拡張部14aは、デリバリーカテーテル等により生体器官の目標位置までデリバリーされるときに生体器官の内腔面と接触することで、軸方向端部寄りの箇所において径方向内側に変形し易くなる。このため、このようなバルーン14の拡張部14aにおける軸方向端部寄りの位置にある加熱部材16A、16Bの外端部16aは、その内端部16bと比べ、バルーン14の変形に伴いバルーン14が径方向内側に接近し易い位置(直接接触し易い位置)にある。このような箇所にある加熱部材16A、16Bの外端部16aへのバルーン14の直接接触を、その外端部16aに対応する外側突起部50Aにより抑制することができる。特に、本実施形態の外側突起部50Aは、第1、第2加熱部材16A、16Bそれぞれの外端部16aに対応して個別に設けられる。よって、第1、第2加熱部材16A、16Bそれぞれの外端部16aへのバルーン14の直接接触を個別の外側突起部50Aにより抑制できる点で更に有効である。このような加熱部材16A、16Bの端部16aへのバルーン14の直接接触を抑制することで、後述のような加熱部材16A、16Bへのバルーン14の引っ掛かりを抑制できる点で有利となる。
【0033】
突起部50A、50Bは、自身の対応する加熱部材16A、16Bの外周面の少なくとも一部よりも径方向で高い位置にある高位部52を備える。ここでの「径方向で高い」とは、シャフト12の軸線C12に対する径方向距離を高さとしたとき、その高さが高い(径方向距離が長い)ことを意味する。高位部52は、軸方向に沿って切断した断面において、加熱部材16A、16Bの外周面の少なくとも一部よりも径方向で高い位置にある。本実施形態の高位部52の少なくとも一部(ここでは全体)は、加熱部材16A、16Bの外周面における最大高さ位置Pbよりも高い位置にある。ここでの最大高さ位置Pbとは、加熱部材16A、16Bの外周面における高さが最大となる径方向位置をいう。突起部50A、50Bには、自身が対応する加熱部材16A、16Bの軸方向内側に向かうに連れて高さが徐々に高くなる曲面部54が形成される。
【0034】
高位部52は、突起部50A、50Bと対応する加熱部材16A、16Bに対してバルーン14が径方向内側に接近しようとしたとき、加熱部材16A、16Bの一部よりも先にバルーン14と接触することで、そのバルーン14の相対的な接近を妨げるためのものである(
図4参照)。これにより、突起部50A、50Bと対応する加熱部材16A、16Bへのバルーン14の直接接触を抑制できるようになる。これを実現するうえで、突起部50A、50Bの高位部52は、加熱部材16A、16Bの外周面の一部へのバルーン14の直接接触を抑制できていればよく、その外周面の全部へのバルーン14の直接接触を抑制することは必須とはならない。
【0035】
高位部52は、シャフト12の軸線回りの全周に亘って設けられる。この条件を満たすことで、高位部52によってバルーン14の接近を妨げる効果を、突起部50A、50Bの周方向位置によらず得ることができる。
【0036】
突起部50A、50Bは、加熱部材16A、16Bの軸方向片側にある端部16a、16bを径方向外側から覆う覆い部56と、加熱部材16A、16Bを径方向外側から覆わない非覆い部58とを備える。覆い部56は、加熱部材16A、16Bと径方向に重なる部位であり、非覆い部58は、加熱部材16A、16Bと径方向に重ならない部位であるともいえる。非覆い部58は、突起部50A、50Bの覆い部56により覆われる加熱部材16A、16Bの端部16a、16bに対して、加熱部材16A、16Bの軸方向外側(加熱部材16A、16Bの軸方向中央位置とは軸方向反対側)に設けられる。本実施形態の突起部50A、50Bの高位部52は覆い部56及び非覆い部58のそれぞれに連続して設けられる。覆い部56により、加熱部材16A、16Bの端部16a、16bにある外側エッジ部16cへのバルーン14の直接接触を抑制できる。この加熱部材16A、16Bの端部16a、16bに外側エッジ部16cが設けられる場合、その外側エッジ部16cへのバルーン14の直接接触は、加熱部材16A、16Bへのバルーン14の引っ掛かりを招くため、それを抑制できる点で有利となる。
【0037】
加熱部材16A、16Bの覆い部56の軸方向範囲R56は、その非覆い部58の軸方向範囲R58よりも短い。これにより、覆い部56の軸方向範囲R56が非覆い部58の軸方向範囲R58よりも長くなる場合と比べ、加熱部材16A、16Bの露出面16dの軸方向範囲をできるだけ広くすることができる。この加熱部材16A、16Bの露出面16dの軸方向範囲が広くなるほど、加熱部材16A、16Bによる加熱性能を高めるうえで有利である。よって、加熱部材16A、16Bの端部16a,16bを覆い部56により覆いつつも、加熱部材16A、16Bによる加熱性能を確保することができる。
【0038】
突起部50A、50Bは、非覆い部58ではなく覆い部56で最大高さPcとなる。ここでは最大高さPcとなる位置に点を付して示す。突起部50A、50Bは、非覆い部58よりも覆い部56において径方向に高くなることになる。これにより、突起部50A、50Bが非覆い部58において最大高さPcになる場合と比べ、加熱部材16A、16Bの露出面16dに近い位置に最大高さPcになる箇所が設けられる。よって、突起部50A、50Bの最大高さPcになる箇所によって、加熱部材16A、16Bの露出面16dへのバルーン14の直接接触を効果的に抑制できるようになる。
【0039】
突起部50A、50Bは、加熱部材16A、16Bよりも柔らかい。突起部50A、50Bの表面硬さよりも加熱部材16A、16Bの表面硬さが低いということである。ここでの「柔らかい」とは、予め定められた大きさの外部荷重を付与したときの変形量が相対的に大きいことを意味する。これを実現するうえで、加熱部材16A、16Bは金属材料により構成され、突起部50A、50B(接着剤40)は樹脂材料により構成される。これにより、加熱部材16A、16Bよりも突起部50A、50Bが硬い場合(表面硬さが高い場合)と比べ、バルーン14が突起部50A、50Bに直接接触したときの当たりを和らげることができ、突起部50A、50Bによるバルーン14の引っ掛かりを効果的に抑制できる。
【0040】
シャフト12の外周面は、加熱部材16A、16Bと径方向に重なる重なり領域60と、加熱部材16A、16Bと径方向に重ならない非重なり領域62とを備える。非重なり領域62は、重なり領域60の軸方向両側に設けられる。この重なり領域60と非重なり領域62は、軸方向に面一に連続している。この条件を満たすうえで、重なり領域60と非重なり領域62は軸方向に向かって径方向位置を変えずにストレートに延びてもよいし、軸方向に向かって傾斜するように延びていてもよい。
【0041】
シャフト12に対する加熱部材16A、16Bの固定手法として、スエージング加工等によるシャフト12の塑性変形を伴い加熱部材16A、16Bを一体化させる手法が知られる。この手法を用いた場合、シャフト12に対する加熱部材16A、16Bの固定箇所において、シャフト12の内側のルーメン(ここではインナーシャフト部材20Bのインナールーメン26)の小断面積化を招くという問題点がある。この点、本実施形態によれば、シャフト12の重なり領域60と非重なり領域62が面一に連続しているため、シャフト12に加熱部材16A、16Bを固定するうえで、シャフト12の内側のルーメンの小断面積化を回避できる。
【0042】
このようにシャフト12に加熱部材16A、16Bを固定した場合、加熱部材16A、16Bの外側エッジ部16cがシャフト12の外周面よりも径方向外側に位置することで、バルーン14の引っ掛かりを招くという他の問題が生じる。このようなバルーン14の引っ掛かりを、前述した加熱部材16A、16Bの端部16a、16bに対応する突起部50A、50Bにより抑制することができる。よって、シャフト12の内側のルーメンの小断面積化を回避しつつ、外側エッジ部16cによるバルーン14の引っ掛かりを抑制できる点で特に有利となる。
【0043】
なお、加熱部材16A、16Bの外側エッジ部16cへのバルーン14の引っ掛かりを抑制するうえで、外側エッジ部16cが設けられる加熱部材16A、16Bの端部16a、16bに対応する突起部50A、50Bを、その端部16aに接触させる例を説明した。これに替えて、外側エッジ部16cが設けられる加熱部材16A、16Bの端部16a、16bに対応する突起部50A、50Bを、その端部16a、16bに近接して設けてもよい。
【0044】
次に、ここまで説明した各構成要素の変形形態を説明する。
【0045】
シャフト12の具体例は特に限定されない。シャフト12は、例えば、一つのシャフト部材のみによって構成されてもよいし、三つ以上のシャフト部材によって構成されてもよい。加熱部材が固定されるシャフト部材の具体例も特に限定されない。シャフト12において流体通流ルーメン28が形成される箇所は特に限定されない。流体通流ルーメン28は、例えば、アウターシャフト部材20Aにメインルーメン22とは別に形成されてもよい。
【0046】
加熱部材16A、16Bの個数は特に限定されず、実施形態のように二つの場合の他に、単数及び三つ以上のいずれでもよい。加熱部材16A、16Bは、体外の対極板との間で通電するモノポーラ電極として機能してもよい。加熱部材は、拡張部14aの軸方向中央位置Pa上に設けられていてもよい。加熱部材16A、16Bの全体を軸方向中央位置Paに対して軸方向片側に設けるうえで、加熱部材16A、16Bは、第1加熱部材16A及び第2加熱部材16Bの一方のみを含んでいてもよい。加熱部材16A、16Bが第1加熱部材16A、第2加熱部材16Bの両方を含む場合、第1加熱部材16A、第2加熱部材16Bそれぞれの個数は少なくとも一つあればよく、二つ以上あってもよい。加熱部材16A、16Bは外側エッジ部16cが設けられていなくともよい。これは、例えば、スエージング加工等によって、シャフト12の塑性変形を伴い加熱部材16A、16Bをシャフト12に部分的に埋め込むことで、加熱部材16A、16Bの外周面とシャフト12の外周面が面一になる場合を想定している。シャフト12の外周面は重なり領域60と非重なり領域62で面一に連続していなくともよいともいえる。
【0047】
突起部50A、50Bの覆い部56により加熱部材16A、16Bを覆う箇所は特に限定されず、加熱部材16A、16Bの軸方向端部の他に、加熱部材16A、16Bの軸方向中間部でもよい。突起部50A、50Bの高位部52は、シャフト12の軸線周りの一部の周方向範囲にのみ設けられていてもよい。突起部50A、50Bそのものも同様である。突起部50A、50Bは覆い部56及び非覆い部58の少なくとも一方を備えていればよい。突起部50A、50Bは、例えば、覆い部56のみを備えてよいし、非覆い部58のみを備えてもよい。突起部50A、50Bの覆い部56の軸方向範囲R56と、非覆い部58の軸方向範囲R58の長短関係は特に限定されない。例えば、覆い部56の軸方向範囲R56≧非覆い部58の軸方向範囲R58となっていてもよい。突起部50A、50Bは、覆い部56に替えて、非覆い部58で最大高さとなってもよい。突起部50A、50Bは、加熱部材16A、16Bよりも硬くともよい。
【0048】
突起部50A、50Bは、加熱部材16A、16Bの軸方向両側の端部16a、16bのうちの一方のみに対応して設けられてもよい。突起部50A、50Bは、加熱部材16A、16Bの内端部16bのみに対応していてもよいし、その外端部16aのみに対応していてもよい。突起部50A、50Bは、複数の加熱部材16A、16Bのうちの少なくとも一つの加熱部材16A、16Bのみに対応して設けられてもよい。例えば、実施形態の例でいえば、基端側の加熱部材16A、16Bのみに対応して設けられもよい。
【0049】
以上の実施形態及び変形形態は例示である。これらを抽象化した技術的思想は、実施形態及び変形形態の内容に限定的に解釈されるべきではない。実施形態及び変形形態の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。実施形態及び変形形態において言及している構造、数値には、製造誤差、寸法誤差等を考慮すると同一とみなすことができるものも当然に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10…バルーンカテーテル、12…シャフト、14…バルーン、14a…拡張部、16A…第1加熱部材、16B…第2加熱部材、16a…外端部、16c…外側エッジ部、40…接着剤、50A、50B…突起部、52…高位部、56…覆い部、58…非覆い部、60…重なり領域、62…非重なり領域。