(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】センサ装置、制御装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01S 7/484 20060101AFI20250212BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20250212BHJP
【FI】
G01S7/484
G01S17/89
(21)【出願番号】P 2023505571
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022009949
(87)【国際公開番号】W WO2022191175
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021038057
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】永田 宏
(72)【発明者】
【氏名】出田 亮
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-050723(JP,A)
【文献】特開2013-156138(JP,A)
【文献】特開2007-093347(JP,A)
【文献】特開2012-189366(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0245903(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0355803(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0353758(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0127854(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108508430(CN,A)
【文献】特開2018-180181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
G02B 26/10-26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査部と、
前記走査部によって照射された複数のスポット
からの反射ビームの受光結果に基づいて、照射される複数のスポットが第1の所定条件を満たすまで、前記走査部によって照射される前記複数のスポットの密度分布を制御する制御部と、
を備えるセンサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ装置において、
前記制御部は、前記走査部の走査速度を制御することで、前記密度分布を制御する、センサ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンサ装置において、
前記第1の所定条件は、前記走査部によって得られる視野の中から区画された領域内の前記複数のスポットの数が所定値以上であるか否かを含む、センサ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のセンサ装置において、
前記所定値は、前記領域内の前記複数のスポットの所定方向の点の数である、センサ装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記第1の所定条件は、前記走査部によって得られる視野の中から区画された領域内の前記複数のスポットから生成される点群を用いての物体の検知、認識又は識別の成否を含む、センサ装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記第1の所定条件は、前記走査部の走査によって得られる視野の中から区画された領域内の前記複数のスポットのオーバラップ率が所定値以上であるか否かを含む、センサ装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記制御部は、前記走査部によって得られる視野の中から区画された複数の領域の中から第2の所定条件に応じて選択された領域の前記複数のスポットの前記密度分布を制御する、センサ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のセンサ装置において、
前記第2の所定条件は、前記複数の領域の各々の危険度を含む、センサ装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記制御部は、前記複数のスポットから生成される点群を用いて検知、認識又は識別された物体に識別子を付与する、センサ装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
視野の少なくとも一部分が、前記走査部によって得られる視野の少なくとも一部分と重なるセンサ部をさらに備えるセンサ装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記制御部は、前記複数のスポットが前記第1の所定条件を満たさない場合、前記密度分布の制御を停止する、センサ装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記制御部は、前記走査部によって得られる視野の中から区画された領域内の前記複数のスポットから生成される点群を用いて検知、認識又は識別された物体が所定時間以上静止している場合、前記密度分布の制御を停止する、センサ装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記制御部による前記複数のスポットの密度の変化の割合が前記複数のスポットの方向に応じて異なる、センサ装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のセンサ装置において、
前記制御部は、前記走査部によって得られる視野の一部分の前記複数のスポットの前記密度分布と、前記視野の他の一部分の前記複数のスポットの前記密度分布と、を異ならせる、センサ装置。
【請求項15】
走査部によって照射された複数のスポット
からの反射ビームの受光結果に基づいて、照射される複数のスポットが第1の所定条件を満たすまで、前記走査部によって照射される前記複数のスポットの密度分布を制御する制御部を備える制御装置。
【請求項16】
コンピュータが、走査部によって照射された複数のスポット
からの反射ビームの受光結果に基づいて、照射される複数のスポットが第1の所定条件を満たすまで、前記走査部によって照射される前記複数のスポットの密度分布を制御する、制御方法。
【請求項17】
コンピュータに、走査部の走査によって照射された複数のスポット
からの反射ビームの受光結果に基づいて、照射される複数のスポットが第1の所定条件を満たすまで、前記走査部によって照射される前記複数のスポットの密度分布を制御する機能を持たせるプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のプログラムを記憶した記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置、制御装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LiDAR(Light Detection And Ranging)等の様々なセンサ装置が開発されている。センサ装置は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー等の走査部を備えている。走査部は、パルスレーザ等の光源から繰り返して出射された複数のビームを反射して、視野(FOV)内に複数のスポットを照射する。センサ装置は、複数のスポットからの反射ビームをAPD(アバランシェフォトダイオード)等の光検知素子によって検知する。センサ装置は、光検知素子の検知結果を用いて点群を生成し、複数のスポットが照射された物体を検知、認識又は識別する。
【0003】
特許文献1には、センサ装置の一例について記載されている。センサ装置は、第1LiDARと、第2LiDARと、を備えている。第1LiDARは、FOV内の空間的に均一に複数のビームを照射している。第2LiDARは、FOV内の空間的に非均一に複数のビームを照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物体に照射する複数のスポットの密度分布を制御して複数のスポットの密度を増加させることで、当該物体を比較的高解像度で検知、認識又は識別することがある。しかしながら、複数のスポットの密度を単に増加させるだけでは、FOVが小さくなることで、物体の検出範囲が必要以上に狭くなったり、複数のスポットの密度が必要以上に高くなったりする等、複数のスポットの密度分布が適切な分布にならないことがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、複数のスポットの密度分布を適切な分布に制御することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
走査部と、
前記走査部によって照射される複数のスポットが第1の所定条件を満たすまで、前記走査部によって照射される前記複数のスポットの密度分布を制御する制御部と、
を備えるセンサ装置である。
【0008】
請求項15に記載の発明は、
走査部によって照射される複数のスポットが第1の所定条件を満たすまで、前記走査部によって照射される前記複数のスポットの密度分布を制御する制御部を備える制御装置である。
【0009】
請求項16に記載の発明は、
コンピュータが、走査部によって照射される複数のスポットが第1の所定条件を満たすまで、前記走査部によって照射される前記複数のスポットの密度分布を制御する、制御方法である。
【0010】
請求項17に記載の発明は、
コンピュータに、走査部の走査によって照射される複数のスポットが第1の所定条件を満たすまで、前記走査部によって照射される前記複数のスポットの密度分布を制御する機能を持たせるプログラムである。
【0011】
請求項18に記載の発明は、
上記プログラムを記憶した記憶媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】実施形態に係る制御部の制御の一例を示すフローチャートである。
【
図3】制御部のハードウエア構成を例示する図である。
【
図5】実施例に係る制御部の制御の第1例を示すフローチャートである。
【
図6】
図5に示した制御の一例を説明するための図である。
【
図7】
図5に示した制御の一例を説明するための図である。
【
図8】実施例に係る制御部の制御の第2例を示すフローチャートである。
【
図9】実施例に係る制御部の制御の第3例を示すフローチャートである。
【
図10】光源から出射されるビームを第2方向に走査するための第1駆動信号及び第2駆動信号の一例を説明するためのグラフである。
【
図11】
図10に示した第1駆動信号によって走査部を駆動した場合の複数のスポットの一例を示す図である。
【
図12】
図10に示した第2駆動信号によって走査部を駆動した場合の複数のスポットの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態、変形例及び実施例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0014】
本明細書において、「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞は、特に断りのない限り、同様の名称が付された構成を単に区別するために付されたものであり、構成の特定の特徴(例えば、順番又は重要度)を意味するものではない。
【0015】
図1は、実施形態に係るセンサ装置10を示す図である。
【0016】
図1において、第1方向X、第2方向Y又は第3方向Zを示す矢印は、当該矢印の基端から先端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の正方向であり、かつ当該矢印の先端から基端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の負方向であることを示している。
【0017】
第1方向Xは、鉛直方向に直交する水平方向に平行な一方向である。第3方向Zの負方向から見て、第1方向Xの正方向は、水平方向の右から左に向かう方向となっており、第1方向Xの負方向は、水平方向の左から右に向かう方向となっている。第2方向Yは、鉛直方向に平行な方向である。第2方向Yの正方向は、鉛直方向の下から上に向かう方向となっており、第2方向Yの負方向は、鉛直方向の上から下に向かう方向となっている。第3方向Zは、水平方向に平行かつ第1方向Xに直交する一方向である。第1方向Xの負方向から見て、第3方向Zの正方向は、水平方向の左から右に向かう方向となっており、第3方向Zの負方向は、水平方向の右から左に向かう方向となっている。第1方向X、第2方向Y、第3方向Z、水平方向及び鉛直方向の関係は、上述した例に限定されない。第1方向X、第2方向Y、第3方向Z、水平方向及び鉛直方向の関係は、センサ装置10の配置に応じて異なる。例えば、第3方向Zが鉛直方向に平行になっていてもよい。
【0018】
センサ装置10は、走査部100、光源110及び制御部200を備えている。
【0019】
本実施形態において、走査部100は、直交する2つの所定の回転軸の周りに回転又は揺動可能なMEMSミラーである。具体的には、走査部100は、2つの回転軸のうちの一方を回転又は搖動させることで、光源110から走査部100に入射するビームを第3方向Zに垂直な仮想平面上で第1方向Xに走査している。走査部100は、2つの回転軸のうちの他方を回転又は搖動させることで、光源110から走査部100に入射するビームを第3方向Zに垂直な仮想平面上で第2方向Yに走査している。走査部100は、MEMSミラーと異なる走査部、例えばポリゴンミラーやガルバノミラーであってもよい。
【0020】
光源110は、例えばパルスレーザである。走査部100は、光源110から時間的に繰り返して出射された複数のビームを走査線Lに沿って走査する。
図1に示す走査線Lは、第3方向Zに直交する仮想平面に投影された走査線を示している。
図1において光源110から走査部100を経由して走査線Lにかけて延びる破線は、あるタイミングで光源110から出射されて走査部100によって仮想平面に向けて反射されたビームの方向を示している。光源110から時間的に繰り返して出射された複数のビームが走査部100によって走査線Lに沿って照射されることで、走査線Lに沿って複数のスポットが照射される。センサ装置10の視野(FOV)は、走査部100によって走査される領域の少なくとも一部分を有している。
【0021】
センサ装置10は、複数のスポットからの反射ビームを不図示のAPD等の光検知素子によって検知している。センサ装置10は、光検知素子の検知結果を用いて点群を生成し、複数のスポットが照射された物体を検知、認識又は識別する。以下、必要に応じて、センサ装置10によって検知、認識又は識別される物体を標的物体という。
【0022】
一例において、センサ装置10は、コアキシャルLiDARである。この場合、走査部100から複数のスポットに向けて照射するビームの光軸と、複数のスポットからセンサ装置10に向けて戻る反射ビームの光軸と、が同一軸上に位置している。或いは、センサ装置10は、バイアキシャルLiDARであってもよい。この場合、走査部100から複数のスポットに向けて照射するビームの光軸と、複数のスポットからセンサ装置10に向けて戻る反射ビームの光軸と、は同一軸上にない。
【0023】
図2は、実施形態に係る制御部200の制御の一例を示すフローチャートである。
【0024】
制御部200は、走査部100によって照射される複数のスポットが所定条件を満たすか否かを判断する(判断ステップS20)。制御部200は、走査部100によって照射される複数のスポットが所定条件を満たすまで、走査部100によって照射される複数のスポットの密度分布を制御している(判断ステップS20のNo、制御ステップS40)。制御部200は、走査部100によって照射される複数のスポットが所定条件を満たす場合(判断ステップS20のYes)、複数のスポットの密度分布の制御を停止する。一例として、次いで、センサ装置10は、判断ステップS20及び制御ステップS40後の状態の密度分布の複数のスポットを用いて、標的物体を検知、認識又は識別する。
【0025】
判断ステップS20及び制御ステップS40を行う場合、判断ステップS20及び制御ステップS40を行わない場合と比較して、標的物体を高解像度で検知、認識又は識別することができる。例えば、走査部100から標的物体までの距離が比較的遠距離である場合を想定する。光源110から繰り返して出射されて走査部100によって標的物体に向けて反射される複数のビームの空間的間隔は、走査部100から標的物体に向かうにつれて広がる。したがって、走査部100から標的物体までの距離が比較的遠距離であって判断ステップS20及び制御ステップS40を行わない場合、標的物体に照射される複数のスポットの密度が比較的低くなって、標的物体に照射される複数のスポットの数が十分に多くならないことがある。これに対して、判断ステップS20及び制御ステップS40を行う場合、判断ステップS20及び制御ステップS40を行わない場合と比較して、判断ステップS20の所定条件を適切に設定することで、標的物体に照射される複数のスポットの数を増加させることができる。上記では走査部100から標的物体までの距離が比較的遠距離である場合について説明した。しかしながら、判断ステップS20及び制御ステップS40を行う場合、走査部100から標的物体までの距離の大きさにかかわらず、判断ステップS20及び制御ステップS40を行わない場合と比較して、標的物体を高解像度で検知、認識又は識別することができる。
【0026】
判断ステップS20における所定条件は、標的物体に照射される複数のスポットの密度が増加しても、FOVの大きさ、すなわち検出範囲が必要以上に小さくならなかったり、複数のスポットの密度が必要以上に高くならなかったりする等、複数のスポットの密度分布を適切な分布にすることができる。したがって、判断ステップS20及び制御ステップS40を行う場合、判断ステップS20及び制御ステップS40を行わない場合と比較して、FOVの大きさが必要以上に小さくならなかったり、複数のスポットの密度が必要以上に高くならなかったりする等、複数のスポットの密度分布を適切な分布に制御することができる。
【0027】
一例として、制御ステップS40において、制御部200は、走査部100の走査速度を制御することで、複数のスポットの密度分布を制御してもよい。例えば走査部100がMEMSミラーである場合、走査部100の走査速度は、MEMSミラーの角速度で決まる。例えば、光源110から繰り返して出射されるビームの繰り返し時間を短くすることで複数のスポットの密度分布を増加させることが、アイセーフ等の要因から認められない場合、走査部100の走査速度を制御することで、複数のスポットの密度分布を制御する。具体的には、光源110から繰り返して出射されるビームの繰り返し時間が一定の場合、走査部100の走査速度を所定速度より遅くしたときの複数のスポットの密度は、走査部100の走査速度を所定速度にしたときの複数のスポットの密度より高くなる。光源110から繰り返して出射されるビームの繰り返し時間が一定の場合、走査部100の走査速度を所定速度より速くしたときの複数のスポットの密度は、走査部100の走査速度を所定速度にしたときの複数のスポットの密度より低くなる。制御部200による複数のスポットの密度分布の制御方法は、上述した例に限定されない。
【0028】
一例として、制御ステップS40において、制御部200は、FOV全体の大きさを制御することで複数のスポットの密度分布を制御してもよい。例えば、FOV全体の大きさを所定の大きさより小さくしたときの複数のスポットの密度は、FOV全体の大きさが所定の大きさであるときの複数のスポットの密度より高くなる。FOV全体の大きさを所定の大きさより大きくしたときの複数のスポットの密度は、FOV全体の大きさが所定の大きさであるときの複数のスポットの密度より低くなる。或いは、制御ステップS40において、制御部200は、FOVの一部分の複数のスポットの密度分布と、FOVの他の一部分の複数のスポットの密度分布と、を異ならせてもよい。
【0029】
一例として、制御ステップS40において、制御部200による複数のスポットの密度の変化の割合は、複数のスポットの方向に応じて異なっていてもよい。例えば、標的物体が、人等、第1方向Xよりも第2方向Yに長手方向を有する物体である場合、第2方向Yにあまり高い解像度を要求されないことがある。この場合、制御部200は、複数のスポットの第1方向Xの密度の増加率を複数のスポットの第2方向Yの密度の増加率より高くする。この制御において、制御部200は、複数のスポットの第2方向Yにおける密度分布を変化させなくてもよい。或いは、例えば、標的物体が、自動車等、第2方向Yよりも第1方向Xに長手方向を有する物体である場合、第1方向Xにあまり高い解像度を要求されないことがある。この場合、制御部200は、複数のスポットの第2方向Yの密度の増加率を複数のスポットの第1方向Xの密度の増加率より高くする。この制御において、制御部200は、複数のスポットの第1方向Xにおける密度分布を変化させなくてもよい。制御部200による複数のスポットの密度の変化の割合を複数のスポットの方向に応じて適切に異ならせることで、標的物体に応じて複数のスポットの第1方向X及び第2方向Yの適切な粗密度合いを設定することができ、標的物体の認識又は識別に適した点群を生成することができる。
【0030】
一例として、制御部200は、複数のスポットから生成される点群を用いて検知、認識又は識別された物体に識別子を付与してもよい。識別子が付与された物体は、比較的高密度の複数のスポットを照射しなくても、トラッキング処理によって検知、認識又は識別することができる。このため、識別子が付与された後、制御部200は、複数のスポットの密度分布を初期の密度分布、すなわち、
図2に示す制御前の密度分布に戻してもよい。この場合、制御部200は、識別子が付与された物体と異なる他の物体に照射される複数のスポットの密度分布を制御することができる場合がある。
【0031】
一例として、制御部200は、走査部100によって照射される複数のスポットが所定条件を満たさない場合(判断ステップS20のNo)、複数のスポットの密度分布の制御を停止してもよい。複数のスポットの密度分布の制御を停止した後、制御部200は、複数のスポットの密度分布を初期の密度分布、すなわち、
図2に示す制御前の密度分布に戻してもよい。例えば、制御部200の制御によって複数のスポットの少なくとも一部分の密度が所定の上限値に達したとき、制御部200は、複数のスポットの密度分布の制御を停止する。或いは、例えば、制御部200が判断ステップS20及び制御ステップS40を行う時間が所定の上限時間に達したとき、制御部200は、複数のスポットの密度分布の制御を停止する。
【0032】
一例として、制御部200は、標的物体が所定時間以上静止している場合、複数のスポットの密度分布の制御を停止してもよい。複数のスポットの密度分布の制御を停止した後、制御部200は、複数のスポットの密度分布を初期の密度分布、すなわち、
図2に示す制御前の密度分布に戻してもよい。この場合、制御部200は、所定時間静止していた物体と異なる他の物体に照射される複数のスポットの密度分布を制御することができる。例えば、移動する自動車を標的物体としているにもかかわらず標的物体が所定時間以上静止している場合、制御部200は、複数のスポットが照射されている物体が駐車又は停車している自動車であると判断することができる。或いは、人を標的物体としているにもかかわらず標的物体が所定時間以上静止している場合、制御部200は、複数のスポットが照射されている物体が人に近似した別の物体であると判断することができる。
【0033】
図3は、制御部200のハードウエア構成を例示する図である。制御部200は、集積回路300を用いて実装されている。集積回路300は、例えばSoC(System-on-a-Chip)である。
【0034】
集積回路300は、バス302、プロセッサ304、メモリ306、ストレージデバイス308、入出力インタフェース310及びネットワークインタフェース312を有する。バス302は、プロセッサ304、メモリ306、ストレージデバイス308、入出力インタフェース310及びネットワークインタフェース312が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ304、メモリ306、ストレージデバイス308、入出力インタフェース310及びネットワークインタフェース312を互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。プロセッサ304は、マイクロプロセッサ等を用いて実現される演算処理装置である。メモリ306は、RAM(Random Access Memory)等を用いて実現されるメモリである。ストレージデバイス308は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等を用いて実現されるストレージデバイスである。
【0035】
入出力インタフェース310は、集積回路300を周辺デバイスと接続するためのインタフェースである。入出力インタフェース310には走査部100が接続されている。
【0036】
ネットワークインタフェース312は、集積回路300をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、例えばCAN(Controller Area Network)ネットワークである。ネットワークインタフェース312がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。
【0037】
ストレージデバイス308は、制御部200の機能を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ304は、これらのプログラムモジュールをメモリ306に読み出して実行することで、制御部200の機能を実現する。
【0038】
集積回路300のハードウエア構成は、
図3に示した構成に限定されない。例えば、プログラムモジュールはメモリ306に格納されてもよい。この場合、集積回路300は、ストレージデバイス308を備えていなくてもよい。
【0039】
図4は、変形例に係るセンサ装置10Aを示す図である。変形例に係るセンサ装置10Aは、以下の点を除いて、実施形態に係るセンサ装置10と同様である。
【0040】
センサ装置10Aは、センサ部500Aをさらに備えている。センサ部500Aは、例えば、カメラ等の撮像部や、LiDAR等のセンサである。センサ部500AのFOVと、走査部100によって得られるFOVと、を第3方向Zに垂直な仮想平面に投影した場合、センサ部500AのFOVの少なくとも一部分は、走査部100によって得られるFOVの少なくとも一部分と重なっている。したがって、走査部100のFOVが制御部200の制御によって走査部100の初期状態におけるFOVより狭くなっても、走査部100のFOVの外側に存在する物体をセンサ部500Aによって検知、認識又は識別することができる。
【実施例】
【0041】
図5は、実施例に係る制御部200の制御の第1例を示すフローチャートである。
【0042】
まず、制御部200は、走査部100によって得られるFOVの中から少なくとも1つの領域を区画する(区画ステップS10A)。具体的には、区画ステップS10Aにおいて、制御部200は、道路、床、壁等に照射された複数のスポットから生成される点群等、人、自動車等の標的物体の検知、認識又は識別に不要な点群を除きつつ、互いに比較的近接している点群を他の点群から区画している。以下、必要に応じて、走査部100によって得られるFOVの中から区画された領域を区画領域という。区画領域は、長方形や台形のような直線で区切られたものに限らず、自由曲線で区切られた領域でもよい。
【0043】
一例として、区画ステップS10AにおいてFOVの中から複数の領域が区画された場合、後述する判断ステップS20A及び制御ステップS40Aにおいて、制御部200は、FOVの中から区画された複数の領域の中から危険度等の所定条件に応じて選択された領域の複数のスポットの密度分布を制御してもよい。例えば、制御部200は、FOVの中から区画された複数の領域の中から、危険度が高い領域から危険度が低い領域への優先順位で選択された少なくとも1つの領域の複数のスポットの密度分布を制御する。この制御において、制御部200は、FOVの中から選択された複数の領域のすべての領域の複数のスポットの密度分布を制御してもよいし、又はFOVの中から選択された複数の領域のすべての領域の複数のスポットの密度分布を制御しなくてもよい。例えば、センサ装置10が特定の部屋にセキュリティ用途で設けられる場合、制御部200は、その部屋の入口に近い領域ほど危険度が高く、その部屋の入口から遠い領域ほど危険度が低いものと判断する。この場合、制御部200は、FOVの中から区画された複数の領域の中から、その部屋の入口に近い領域からその部屋の入口から遠い領域への優先順位で選択された少なくとも1つの領域の複数のスポットの密度分布を制御する。また、例えば、センサ装置10が特定の自動車に自動運転の用途で搭載されている場合、制御部200は、その自動車に近い領域ほど危険度が高く、その自動車から遠い領域ほど危険度が低いものと判断する。この場合、制御部200は、FOVの中から区画された複数の領域の中から、その自動車に近い領域からその自動車から遠い領域への優先順位で選択された少なくとも1つの領域の複数のスポットの密度分布を制御する。
【0044】
一例において、区画ステップS10Aにおいて、制御部200は、区画領域内の点群の重心位置を算出した結果を用いて制御してもよい。
【0045】
区画ステップS10A後、制御部200は、区画領域内の複数のスポットの数が所定値以上であるか否かを判断する(判断ステップS20A)。制御部200は、区画領域内の複数のスポットの数が所定値以上となるまで、複数のスポットの密度分布を制御している(判断ステップS20AのNo、制御ステップS40A)。制御部200は、区画領域内の複数のスポットの数が所定値以上である場合(判断ステップS20AのYes)、複数のスポットの密度分布の制御を停止する。
【0046】
判断ステップS20Aにおける所定値は、標的物体に応じて標的物体の検知、認識又は識別に必要な複数のスポットの点の数となっている。したがって、判断ステップS20A及び制御ステップS40Aを行う場合、判断ステップS20A及び制御ステップS40Aを行わない場合と比較して、標的物体を高解像度で検知、認識又は識別することができる。
【0047】
判断ステップS20Aにおける所定値は、標的物体に照射される複数のスポットの密度が増加しても、FOVの大きさが必要以上に小さくならなかったり、複数のスポットの密度が必要以上に高くならなかったりする等、複数のスポットの密度分布が適切な分布になる値にすることができる。したがって、判断ステップS20A及び制御ステップS40Aを行う場合、判断ステップS20A及び制御ステップS40Aを行わない場合と比較して、FOVの大きさが必要以上に小さくならなかったり、複数のスポットの密度が必要以上に高くならなかったりする等、複数のスポットの密度分布を適切な分布に制御することができる。
【0048】
判断ステップS20Aにおける所定値は、区画領域内の複数のスポットの総数であってもよいし、又は区画領域内の複数のスポットの第1方向X、第2方向Y等の所定方向の数であってもよい。例えば、標的物体が、人等、第1方向Xよりも第2方向Yに長手方向を有する物体である場合、第2方向Yにあまり高い解像度を要求されないことがある。この場合、判断ステップS20Aにおける所定値は、区画領域内の複数のスポットの第1方向Xの数としてもよい。或いは、例えば、標的物体が、自動車等、第2方向Yよりも第1方向Xに長手方向を有する物体である場合、第1方向Xにあまり高い解像度を要求されないことがある。この場合、判断ステップS20Aにおける所定値は、区画領域内の複数のスポットの第2方向Yの数としてもよい。
【0049】
図6及び
図7は、
図5に示した制御の一例を説明するための図である。
【0050】
図6及び
図7において、第3方向Zを示すX付き丸は、紙面の手前から奥に向かう方向が第3方向Zの正方向であり、紙面の奥から手前に向かう方向が第3方向Zの負方向であることを示している。
【0051】
図6及び
図7では、走査部100によって、人である標的物体Qに複数のスポットPが照射されている。
図6において、複数のスポットPは、第1方向Xに3列かつ第2方向Yに4行並んでいる。
図7において、複数のスポットPは、第1方向Xに5列かつ第2方向Yに4行並んでいる。
【0052】
まず、区画ステップS10Aとして、
図6に示す例において、制御部200は、標的物体Qに照射された少なくとも1つのスポットPを、標的物体Qに照射されていない少なくとも1つのスポットPから区画する。
図6に示す例では、第1方向Xの正方向側から1列目かつ第2方向Yの正方向側から2行目の1つのスポットPの少なくとも一部分と、第1方向Xの正方向側から2列目かつ第2方向Yの正方向側から1行目、2行目、3行目及び4行目の4つのスポットPの各々の少なくとも一部分と、第1方向Xの正方向側から3列目かつ第2方向Yの正方向側から2行目の1つのスポットPの少なくとも一部分と、が標的物体Qに照射されている。制御部200は、標的物体Qに照射されたこれらのスポットPを含む区画領域を特定する。
【0053】
次いで、判断ステップS20Aとして、制御部200は、
図6に示す例おいて区画領域内のスポットPの数が所定値以上であるか否かを判断する。例えば、判断ステップS20Aにおける所定値が区画領域内のスポットPの総数である場合、制御部200は、
図6に示す例における区画領域内のスポットPの総数6が当該所定値以上であるか否かを判断する。或いは、例えば、判断ステップS20Aにおける所定値が区画領域内のスポットPの第1方向Xの数である場合、制御部200は、
図6に示す例における区画領域内のスポットPの第1方向Xの数3が当該所定値以上であるか否かを判断する。
【0054】
判断ステップS20Aにおいて制御部200が
図6に示す例における区画領域内のスポットPの数が所定値以上でないと判断した場合、制御ステップS40Aとして、制御部200は、
図6に示す状態から
図7に示す状態にかけて、区画領域内のスポットPの数を増加させるように制御する。
図6に示す状態から
図7に示す状態にかけて、制御部200は、区画領域内のスポットPの第2方向Yの数は変化させずに、区画領域内のスポットPの第1方向Xの数を増加させている。
図7に示す例では、第1方向Xの正方向側から1列目かつ第2方向Yの正方向側から2行目の1つのスポットPの少なくとも一部分と、第1方向Xの正方向側から2列目、3列目及び4列目かつ第2方向Yの正方向側から1行目、2行目、3行目及び4行目の12のスポットPの各々の少なくとも一部分と、第1方向Xの正方向側から5列目かつ第2方向Yの正方向側から2行目の1つのスポットPの少なくとも一部分と、が標的物体Qに照射されている。
【0055】
次いで、判断ステップS20Aとして、
図6を用いて説明した判断ステップS20Aと同様にして、制御部200は、区画領域内のスポットPの数が所定値以上であるか否かを判断する。
図7に示す例において、制御部200が、区画領域内のスポットPの数が所定値以上であると判断した場合、制御部200は、区画領域内の複数のスポットPの密度分布の制御を停止する。
【0056】
次いで、センサ装置10は、
図7に示す状態の密度分布の複数のスポットPを用いて、標的物体Qを検知、認識又は識別する。
【0057】
図8は、実施例に係る制御部200の制御の第2例を示すフローチャートである。
【0058】
まず、制御部200は、
図5に示したフローチャートの区画ステップS10Aと同様にして、区画ステップS10Bを行う。
【0059】
次いで、制御部200は、区画領域内の複数のスポットから生成される点群を用いての物体の検知、認識又は識別の成否を判断する(判断ステップS20B)。制御部200は、区画領域内の複数のスポットから生成される点群を用いての物体の検知、認識又は識別が成功するまで、複数のスポットの密度分布を制御している(判断ステップS20BのNo、制御ステップS40B)。制御部200は、区画領域内の複数のスポットから生成される点群を用いての物体の検知、認識又は識別が成功した場合(判断ステップS20BのYes)、複数のスポットの密度分布の制御を停止する。
【0060】
一例として、制御部200は、区画領域内の複数のスポットから生成される点群を用いての物体の検知、認識又は識別が成功しない場合(判断ステップS20BのNo)、複数のスポットの密度分布の制御を停止してもよい。複数のスポットの密度分布の制御を停止した後、制御部200は、複数のスポットの密度分布を初期の密度分布、すなわち、
図8に示す制御前の密度分布に戻してもよい。例えば、制御部200の制御によって複数のスポットの少なくとも一部分の密度が所定の上限値に達したとき、制御部200は、複数のスポットの密度分布の制御を停止する。或いは、例えば、制御部200が判断ステップS20B及び制御ステップS40Bを行う時間が所定の上限時間に達したとき、制御部200は、複数のスポットの密度分布の制御を停止する。
【0061】
判断ステップS20B及び制御ステップS40Bを行う場合、区画領域内の物体の検知、認識又は識別が成功するまで標的物体に照射される複数のスポットの密度が増加される。標的物体の検知、認識又は識別の成否は、例えば、標的物体に照射された複数のスポットからの反射ビームを用いて生成される点群を機械学習等の認識処理にかけることによって判断される。或いは、例えば、検知、認識又は識別の対象となる物体の大きさと、走査部100から区画領域内の複数のスポットの重心位置までの距離との関係から、走査部100から区画領域内の複数のスポットに照射する複数のビームの角度ピッチをいずれのピッチにすれば区画領域内の物体の検知、認識又は識別が成功するかが、機械学習の結果等から予め決定されている場合がある。この場合、制御部200は、走査部100から区画領域内の複数のスポットに照射する複数のビームの角度ピッチを、区画領域内の物体の検知、認識又は識別が成功するためのピッチに制御することができる。
【0062】
判断ステップS20B及び制御ステップS40Bを行う場合、FOVの大きさが必要以上に小さくなったり、複数のスポットの密度が必要以上に高くなったりする等、複数のスポットの密度分布が適切な分布からずれる前に複数のスポットの密度の増加を停止することができる。したがって、判断ステップS20B及び制御ステップS40Bを行う場合、判断ステップS20B及び制御ステップS40Bを行わない場合と比較して、FOVの大きさが必要以上に小さくならなかったり、複数のスポットの密度が必要以上に高くならなかったりする等、複数のスポットの密度分布を適切な分布に制御することができる。
【0063】
図9は、実施例に係る制御部200の制御の第3例を示すフローチャートである。
【0064】
まず、制御部200は、
図5に示したフローチャートの区画ステップS10Aと同様にして、区画ステップS10Cを行う。
【0065】
次いで、制御部200は、区画領域内の複数のスポットのオーバラップ率が所定値以上であるか否かを判断する(判断ステップS20C)。制御部200は、区画領域内の複数のスポットのオーバラップ率が所定値以上となるまで、複数のスポットの密度分布を制御している(判断ステップS20CのNo、制御ステップS40C)。例えば、
図7に示したように複数のスポットの密度を増加させた場合、複数のスポット内の隣り合うスポットの少なくとも一部分が重なり合うことがある。少なくとも一部分が重なり合う第1スポット及び第2スポットについての複数のスポットのオーバラップ率は、第1スポットの面積と第2スポットの面積との和に対する、第1スポットのうちの第2スポットに重なる部分の面積と第2スポットのうちの第1スポットに重なる部分の面積との和の比となる。制御部200は、区画領域内の複数のスポットのオーバラップ率が所定値以上となった場合(判断ステップS20CのYes)、複数のスポットの密度分布の制御を停止する。
【0066】
判断ステップS20Cにおける所定値は、標的物体に応じて標的物体の検知、認識又は識別に不都合のない複数のスポットのオーバラップ率となっている。したがって、判断ステップS20C及び制御ステップS40Cを行う場合、判断ステップS20C及び制御ステップS40Cを行わない場合と比較して、標的物体を高解像度で検知、認識又は識別することができる。
【0067】
判断ステップS20Cにおける所定値は、標的物体に照射される複数のスポットの密度が増加しても、FOVの大きさが必要以上に小さくならなかったり、複数のスポットの密度が必要以上に高くならなかったりする等、複数のスポットの密度分布が適切な分布になる値にすることができる。複数のスポットのオーバラップ率が所定値より大きくなっても、実質的な解像度は向上しない。さらに、複数のスポットのオーバラップ率が所定値より大きくなると、物体の誤検知、誤認識又は誤識別の可能性が高まる場合がある。したがって、判断ステップS20C及び制御ステップS40Cを行う場合、判断ステップS20C及び制御ステップS40Cを行わない場合と比較して、FOVの大きさが必要以上に小さくならなかったり、複数のスポットの密度が必要以上に高くならなかったりする等、複数のスポットの密度分布を適切な分布に制御することができる。
【0068】
図10は、光源110から出射されるビームを第2方向Yに走査するための第1駆動信号S1及び第2駆動信号S2の一例を説明するためのグラフである。
図11は、
図10に示した第1駆動信号S1によって走査部100を駆動した場合の複数のスポットの一例を示す図である。
図12は、
図10に示した第2駆動信号S2によって走査部100を駆動した場合の複数のスポットの一例を示す図である。
【0069】
図10において、グラフの横軸は、時間を示している。グラフの縦軸は、駆動信号の強度を示している。このグラフでは、縦軸の上方向が駆動信号の正となっており、縦軸の下方向が駆動信号の負となっている。
図10において、第1駆動信号S1が最大値をとる時間から僅か後の時間から第1駆動信号S1が当該最大値の次の最小値をとる時間から僅か前の時間にかけての走査時間区間TFOVは、光源110から走査部100に向けて複数のビームが繰り返して出射されている時間区間、すなわち計測時間区間を示している。
【0070】
図11及び
図12は、第3方向Zに垂直な仮想平面に投影されたFOVを示している。
図11では、FOV内に第2方向Yに並ぶ複数の第1走査線LAが示されている。FOV内の複数の第1走査線LAの各々には、少なくとも1つのスポットが照射されている。
図11では、説明のため、FOV内の中央部分の3つの第1走査線LAに沿って照射されたスポットPAが白丸で示されている。
図12では、FOV内に第2方向Yに並ぶ複数の第2走査線LBが示されている。FOV内の複数の第2走査線LBの各々には、少なくとも1つのスポットが照射されている。
図12では、説明のため、FOV内の中央部分の3つの第2走査線LBに沿って照射されたスポットPBが白丸で示されている。
【0071】
図10に示すように、第1駆動信号S1は、三角波形状となっている。第1駆動信号S1は、走査時間区間TFOVにおいて、一様な傾きを有している。
図11に示すFOVにおいて、走査時間区間TFOVの始期から終期にかけて、走査部100は、光源110から繰り返して出射される複数のビームを第2方向Yの正方向側から第2方向Yの負方向側に向けて走査している。第1駆動信号S1の走査時間区間TFOVにおける傾きが一様であるため、
図11に示すFOVにおいて複数の第1走査線LAは、第2方向Yに等間隔に並んでいる。
【0072】
図10に示すように、第2駆動信号S2は、三角波の変形形状となっている。具体的には、走査時間区間TFOVの中央区間における第2駆動信号S2の傾きは、走査時間区間TFOVにおける第1駆動信号S1の傾きより小さくなっている。また、走査時間区間TFOVのうちの中央区間の両側区間における第2駆動信号S2の傾きは、走査時間区間TFOVにおける第1駆動信号S1の傾きより大きくなっている。
図12に示すFOVにおいて、走査時間区間TFOVの始期から終期にかけて、走査部100は、
図1又は
図4に示した光源110から繰り返して出射される複数のビームを第2方向Yの正方向側から負方向側に向けて走査している。走査時間区間TFOVの中央区間における第2駆動信号S2の傾きが走査時間区間TFOVにおける第1駆動信号S1の傾きより小さいため、
図12に示すFOVの中央部分における複数の第2走査線LBの第2方向Yの間隔は、
図11に示すFOVの複数の第1走査線LAの第2方向Yの間隔より狭くなっている。また、走査時間区間TFOVのうちの中央区間の両側区間における第2駆動信号S2の傾きが走査時間区間TFOVにおける第1駆動信号S1の傾きより大きいため、
図12に示すFOVのうち上下の両側部分における複数の第2走査線LBの第2方向Yの間隔は、
図11に示すFOVの複数の第1走査線LAの第2方向Yの間隔より広くなっている。
【0073】
制御部200は、
図12に示すように、FOV内の第2方向Yの中央部分の複数のスポットの密度分布と、FOV内のうち中央部分の第2方向Yの両側部分の複数のスポットの密度分布と、を異ならせている。制御部200による複数のスポットの密度分布の制御は、
図12に示す例に限定されない。FOV内の第2方向Yのいずれの部分において
図12に示した複数の第2走査線LBの第2方向Yの間隔を
図11に示した複数の第1走査線LAの第2方向Yの間隔よりも狭めるかは、走査時間区間TFOVにおけるいずれの時間区間において第2駆動信号S2の傾きを第1駆動信号S1の傾きより小さくするかに応じて決定されている。したがって、走査時間区間TFOVにおけるいずれの時間区間において第2駆動信号S2の傾きを第1駆動信号S1の傾きより小さくするかに応じて、制御部200は、FOVの一部分の複数のスポットの密度分布と、FOVの他の一部分の複数のスポットの密度分布と、を異ならせることができる。
【0074】
以上、図面を参照して本発明の実施形態、変形例及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0075】
この出願は、2021年3月10日に出願された日本出願特願2021-038057号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0076】
10 センサ装置
10A センサ装置
100 走査部
110 光源
200 制御部
300 集積回路
302 バス
304 プロセッサ
306 メモリ
308 ストレージデバイス
310 入出力インタフェース
312 ネットワークインタフェース
500A センサ部
L 走査線
LA 第1走査線
LB 第2走査線
P スポット
PA スポット
PB スポット
Q 標的物体
S1 第1駆動信号
S10A 区画ステップ
S10B 区画ステップ
S10C 区画ステップ
S2 第2駆動信号
S20 判断ステップ
S20A 判断ステップ
S20B 判断ステップ
S20C 判断ステップ
S40 制御ステップ
S40A 制御ステップ
S40B 制御ステップ
S40C 制御ステップ
TFOV 走査時間区間
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向