(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】クロロプレン系重合体、クロロプレン系重合体ラテックス、クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法、コンパウンド組成物、及び加硫成形体
(51)【国際特許分類】
C08F 36/18 20060101AFI20250212BHJP
C08F 2/26 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C08F36/18
C08F2/26 A
C08F2/26 Z
(21)【出願番号】P 2023511125
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2022014017
(87)【国際公開番号】W WO2022210265
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2021060717
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】富澤 聖耶
(72)【発明者】
【氏名】西野 渉
(72)【発明者】
【氏名】夛田 美沙希
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-191235(JP,A)
【文献】特開2008-231404(JP,A)
【文献】特開2013-177504(JP,A)
【文献】特開2020-196785(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221881(WO,A1)
【文献】特開昭58-219206(JP,A)
【文献】特開平08-269116(JP,A)
【文献】国際公開第2022/210263(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 2/00- 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重クロロホルム溶媒中で測定される
1H-NMRスペクトルにおいて、
5.80~6.00ppmにピークを有し、
5.80~6.00ppmのピーク面積Aとし、4.05~6.10ppmのピーク面積Bとしたとき、A/Bが1.20/100以下であり、
5.40~5.60ppmにピークを有し、
5.40~5.60ppmのピーク面積をDとし、4.05~6.10ppmのピーク面積をBとしたとき、D/Bが97.20/100以下であ
り、
4.15~4.20ppmにピークを有し、
4.15~4.20ppmのピーク面積をCとし、4.05~6.10ppmのピーク面積をBとしたとき、C/Bが0.10/100以上である、
クロロプレン系重合体。
【請求項2】
加硫成形体用である、請求項
1に記載のクロロプレン系重合体。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載のクロロプレン系重合体を含むクロロプレン系重合体ラテックスであって、
単位質量あたりの前記クロロプレン系重合体ラテックス中のアルカリ金属のカチオンの物質量が0.05~0.12mmol/gであり、
前記クロロプレン系重合体ラテックスを凍結乾燥させて得たクロロプレン系重合体を含む固形分のうち、JIS K 6229で規定されるエタノール-トルエン共沸混合物可溶分を還流抽出し、得られた抽出物を塩酸で酸処理した後にガスクロマトグラフにより測定されるロジン酸量が、前記クロロプレン系重合体100質量%に対して1.4~3.2質量%であることを特徴とするクロロプレン系重合体ラテックス。
【請求項4】
請求項
3に記載のクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法であって、
クロロプレン単量体を含む単量体を乳化重合する乳化重合工程を含み、
前記乳化重合工程において、
クロロプレン単量体及びクロロプレンと共重合可能な単量体との合計100質量部に対して、ロジン酸塩1.2~2.2質量部を用い、
水媒体100質量部に対して、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの総量0.1~0.5質量部を用いる、
クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法。
【請求項5】
請求項1
又は請求項2に記載のクロロプレン系重合体を含む、コンパウンド組成物。
【請求項6】
請求項
5に記載のコンパウンド組成物からなる加硫成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレン系重合体、クロロプレン系重合体ラテックス、クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法、コンパウンド組成物、及び加硫成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴムは、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、耐薬品性、難燃性等に優れ、加工しやすいことから、各種自動車用部品、ベルト、ホース、防振ゴムなどの工業用ゴム部品の原材料として広く使用されている。また、これらの製品には耐久寿命や信頼性の向上が恒常的に求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、クロロプレン単位の結合量が78~98.9質量%、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単位の結合量が1~20質量%、α,β-不飽和カルボン酸単位の結合量が0.1~2質量%であり、重量平均分子量が34万~52万である、キサントゲン変性クロロプレンゴムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のクロロプレン系重合体は、該クロロプレン系重合体を含む加硫成形体の動的耐久疲労性が十分ではないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、動的耐久疲労性に優れる加硫成形体を得ることができる、クロロプレン系重合体、クロロプレン系重合体ラテックス、そのようなクロロプレン系重合体を含む、コンパウンド組成物、及び加硫成形体、並びにこれらの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、クロロプレン系重合体であって、重クロロホルム溶媒中で測定される1H-NMRスペクトルにおいて、5.80~6.00ppmにピークを有し、5.80~6.00ppmのピーク面積Aとし、4.05~6.10ppmのピーク面積Bとしたとき、A/Bが1.20/100以下であり、5.40~5.60ppmにピークを有し、5.40~5.60ppmのピーク面積をDとし、4.05~6.10ppmのピーク面積をBとしたとき、D/Bが97.20/100以下である、クロロプレン系重合体が提供される。
【0008】
本発明者は、鋭意検討を行ったところ、重クロロホルム溶媒中で測定される1H-NMRスペクトルにおいて、特定の位置に観察されるピークのピーク面積比を、特定の数値範囲内に調整することで、動的耐久疲労性に優れる加硫成形体を得ることができる、クロロプレン系重合体となることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、重クロロホルム溶媒中で測定される1H-NMRスペクトルにおいて、4.15~4.20ppmにピークを有し、4.15~4.20ppmのピーク面積をCとし、4.05~6.10ppmのピーク面積をBとしたとき、C/Bが0.10/100以上である。
好ましくは、前記記載のクロロプレン系重合体は、加硫成形体用である。
本発明の別の形態によれば、前記記載のクロロプレン系重合体を含むクロロプレン系重合体ラテックスであって、単位質量あたりの前記クロロプレン系重合体ラテックス中のアルカリ金属のカチオンの物質量が0.05~0.12mmol/gであり、前記クロロプレン系重合体ラテックスを凍結乾燥させて得たクロロプレン系重合体を含む固形分のうち、JIS K 6229で規定されるエタノール-トルエン共沸混合物可溶分を還流抽出し、得られた抽出物を塩酸で酸処理した後にガスクロマトグラフにより測定されるロジン酸量が、前記クロロプレン系重合体100質量%に対して1.4~3.2質量%であることを特徴とするクロロプレン系重合体ラテックスが提供される。
また、本発明の別の形態によれば、前記記載のクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法であって、クロロプレン単量体を含む単量体を乳化重合する乳化重合工程を含み、前記乳化重合工程において、クロロプレン単量体及びクロロプレンと共重合可能な単量体との合計100質量部に対して、ロジン酸塩1.2~2.2質量部を用い、水媒体100質量部に対して、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの総量0.1~0.5質量部を用いる、
クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法が提供される。
また、本発明の別の形態によれば、前記記載のクロロプレン系重合体を含む、コンパウンド組成物が提供される。
また前記記載のコンパウンド組成物からなる加硫成形体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るクロロプレン系重合体によれば、動的耐久疲労性に優れる加硫成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.クロロプレン系重合体
本発明に係るクロロプレン系重合体は、2-クロロ-1,3-ブタジエン(以下、クロロプレン)の単独重合体、又はクロロプレン単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体である。
【0013】
クロロプレン単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸又はそのエステル類、メタクリル酸又はそのエステル類等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に制限されるものではないが、クロロプレンに由来する性状を維持するという観点から、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、クロロプレン系重合体を100質量%としたとき、クロロプレン単量体に由来する単量体単位を70質量%以上有することが好ましく、80質量%以上有することがより好ましく、90質量%以上有することがさらにより好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、重クロロホルム溶媒中で測定される1H-NMRスペクトルにおいて、5.80~6.00ppmにピークを有する。また、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、5.80~6.00ppmのピーク面積をAとし、4.05~6.10ppmのピーク面積をBとしたとき、A/Bが1.20/100以下である。
A/Bは、例えば、1.00、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.10、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20/100とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0015】
1H-NMRスペクトルは、クロロプレン系重合体をベンゼンとメタノールで精製し、凍結乾燥した試料を、重クロロホルムに溶解した液を対象に測定する。ピーク位置は重クロロホルム中のクロロホルムのピーク(7.24ppm)を基準とする。
【0016】
なお、1H-NMRスペクトルにおける、5.80~6.00ppmに現れるピークは、下記式(1)で表される構造に関連すると推測される。
【0017】
【0018】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、A/Bを上記上限以下とし、架橋点となり得る構造の量を適切に制御することで、動的耐久疲労性に優れる加硫成形体を得ることができるクロロプレン系重合体となるものと推測される。
【0019】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、重クロロホルム溶媒中で測定される1H-NMRスペクトルにおいて、5.40~5.60ppmにピークを有する。また、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、5.40~5.60ppmのピーク面積をDとし、4.05~6.10ppmのピーク面積をBとしたとき、D/Bが97.20/100以下であり、97.18/100以下であることがより好ましく、97.15/100以下であることがさらにより好ましい。
D/Bは、例えば、97.00、97.01、97.02、97.03、97.04、97.05、97.06、97.07、97.08、97.09、97.10、97.11、97.12、97.13、97.14、97.15、97.16、97.17、97.18、97.19、97.20/100とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
また、1H-NMRスペクトルにおける、5.40~5.60ppmに現れるピークは、下記式(2)で表される構造に関連すると推測される。
【0021】
【0022】
D/Bを上記上限以下とすることで、得られる加硫成形体のゴム特性を維持することができ、特にはゴムが硬くなりすぎることを防ぐことができる。
従来、例えば、クロロプレン系重合体重合時の温度を調整することによって、又はクロロプレン系重合体を加熱処理することによって、クロロプレン系重合体のミクロ構造の含有量を調整する試みが行われていた。しかしながら、クロロプレン系重合体を加熱処理する等の従来の方法では、架橋点となり得るA/Bに対応する式(1)で表される構造の量を低減させた場合、同時に、D/Bに対応する式(2)で表される構造の量が増加してしまい、クロロプレン系重合体のミクロ構造の含有量を高度に調整すること、特には、D/Bに対応する式(2)で表される構造の量の増加を抑制しつつ、架橋点となり得るA/Bに対応する式(1)で表される構造の量を低減することは困難であった。しかしながら、本発明によれば、クロロプレン系重合体の製造条件、特には、クロロプレン系重合体重合時の、ロジン酸塩並びに水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの仕込み量を高度に調整することで、D/Bに対応する式(2)で表される構造の量を増やさずに、架橋点となり得るA/Bに対応する式(1)表される構造の量を低減することができ、動的耐久疲労性に優れる加硫成形体を得ることができるクロロプレン系重合体となるものと推測される。
【0023】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、重クロロホルム溶媒中で測定される1H-NMRスペクトルにおいて、4.15~4.20ppmにピークを有する。また、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、4.15~4.20ppmのピーク面積をCとし、4.05~6.10ppmのピーク面積をBとしたとき、C/Bが0.10/100以上であることが好ましい。上限は特に規定されないが、例えば、1.000/100以下である。
C/Bは、例えば0.10、0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.90、1.00とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
なお、1H-NMRスペクトルにおける、4.15~4.20ppmに現れるピークは、下記式で表される、1,2-OH転位構造に関連すると推測される。
【0025】
【0026】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、クロロプレン系重合体の製造条件、特には、クロロプレン系重合体重合時の、ロジン酸塩並びに水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの仕込み量を高度に調整することで、D/Bに対応する式(2)で表される構造の量を増やさずに、架橋点となり得るA/Bに対応する式(1)表される構造の量を低減することができ、またこの場合、従来のクロロプレン系重合体よりも、C/Bに対応する式(3)で表される構造が増える場合がある。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、D/B、A/B、C/Bが上記数値範囲内であることにより、より動的耐久疲労性に優れる加硫成形体を得ることができるクロロプレン系重合体となるものと推測される。
上記の特性を有する観点から、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体は、加硫成形体用であることが好ましい。
【0027】
2.クロロプレン系重合体ラテックス
本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックスは上記のクロロプレン系重合体を含み、クロロプレン系重合体ラテックス中のアルカリ金属のカチオンの物質量、並びにクロロプレン系重合体に含まれるロジン酸量が特定の数値範囲内であることが好ましい。
【0028】
2.1 アルカリ金属のカチオン
本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、単位質量あたりの該クロロプレン系重合体ラテックス中のアルカリ金属のカチオンの物質量が0.05~0.12mmol/gであることが好ましい。アルカリ金属のカチオンの物質量は、例えば、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12mmol/gとすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
なお、クロロプレン系重合体ラテックス中のアルカリ金属のカチオンの物質量は、クロロプレン系重合体ラテックスを、硫硝酸等で酸分解し、塩酸酸性にした後、誘導結合プラズマ発光分光分析装置で分析することで定量することができ、具体的には実施例に記載の方法で求めることができる。
【0029】
本発明の一実施形態に係るアルカリ金属のカチオンは、カリウムイオン及びナトリウムイオンであることが好ましい。
【0030】
2.2 ロジン酸
本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、該クロロプレン系重合体ラテックスを凍結乾燥させて得たクロロプレン系重合体を含む固形分のうち、JIS K 6229で規定されるエタノール-トルエン共沸混合物可溶分を還流抽出し、得られた抽出物を塩酸で酸処理した後にガスクロマトグラフにより測定されるロジン酸量が、前記固形分に含まれる前記クロロプレン系重合体100質量%に対して1.4~3.2質量%であることが好ましい。クロロプレン系重合体を含む固形分中のロジン酸量は、例えば、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2質量%とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
なお、クロロプレン系重合体を含む固形分中のロジン酸量は、クロロプレン系重合体ラテックスを凍結乾燥させて得たクロロプレン系重合体を含む固形分からエタノール-トルエン共沸混合物(エタノール/トルエン容積比7/3(ETA))でロジン酸類を抽出し、ガスクロマトグラフにて求めることができ、具体的には実施例に記載の方法で評価することができる。
【0031】
本発明の一実施形態に係るロジン酸は、例えば、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマール酸、ジヒドロピマール酸、イソピマール酸、セコデヒドロアビエチン酸等の樹脂酸の単成分あるいはこれらの混合物を含むことが好ましい。
【0032】
本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、アルカリ金属のカチオンの量及びロジン酸の量を上記特定の数値範囲内とすることで、より動的耐久疲労性に優れる加硫成形体を得ることができるクロロプレン系重合体となる。
【0033】
また、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、本発明の効果を阻害しない範囲で、凍結安定剤、乳化安定剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防腐剤などを含むことができる。
【0034】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、クロロプレン系重合体ラテックスに含まれるクロロプレン系重合体を100質量%としたとき、ロジン酸を含む乳化剤以外の乳化剤の含有量を、1質量%以下とでき、0.5質量%以下とできる。ここで、ロジン酸を含む乳化剤以外の乳化剤としては、芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物の金属塩、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸カリウム、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸カリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルフォン酸カリウム、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルスルフォン酸カリウム等が挙げられる。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物の金属塩の含有量、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の含有量を、1質量%以下とでき、0.5質量%以下とできる。
【0035】
3.クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法
本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は特に限定されないが、クロロプレン単量体を含む単量体を乳化重合する乳化重合工程を含む製造方法によって得ることができる。
本発明の一実施形態に係る乳化重合工程では、クロロプレン単量体、又はクロロプレン単量体及びこれと共重合可能な他の単量体を、乳化剤や分散剤や触媒や連鎖移動剤等を適宜に用いて乳化重合させ、目的とする重合率に達した際に重合停止剤を添加してクロロプレン系重合体ラテックスを得ることができる。また、このようにして得られたクロロプレン系重合体ラテックスから、スチームフラッシュ法や濃縮法等によって、未反応の単量体を除去することができる。
【0036】
<単量体>
クロロプレン単量体を含む単量体には、クロロプレン単量体、及び上記したクロロプレン単量体と共重合可能な他の単量体が含まれる。
【0037】
<ロジン酸塩>
本発明の一実施形態に係る乳化重合工程では、クロロプレン単量体及びクロロプレンと共重合可能な単量体との合計100質量部に対して、ロジン酸塩を1.2~2.2質量部用いることが好ましい。
ロジン酸塩の使用量は、例えば、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2質量部とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
ロジン酸塩としては、例えば、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が上げられる。好適には、取り扱いが容易である等の観点からナトリウム塩やカリウム塩を用いることが望ましい。また、ロジン酸塩に含まれるロジン酸としては、上記に例示したロジン酸が含まれることが好ましい。
本発明の一実施形態に係る乳化重合工程では、ロジン酸を併用してもよい。ロジン酸を用いる場合、ロジン酸の使用量は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5質量部とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0038】
<その他の乳化剤・分散剤>
本発明の一実施形態に係る製造方法では、必要に応じて、重合反応の制御を安定化させる目的等で、他の乳化剤を併用してもよい。他の乳化剤・分散剤としては、例えば、上記にロジン酸を含む乳化剤以外の乳化剤として列挙した化合物を用いることができる。本発明の一実施形態に係る製造方法では、ロジン酸を含む乳化剤以外の乳化剤の使用量を、クロロプレン単量体及びクロロプレンと共重合可能な単量体との合計100質量部に対して、1質量%以下とでき、0.5質量%以下とできる。
【0039】
<水酸化カリウム及び水酸化ナトリウム>
また、本発明の一実施形態に係る乳化重合工程では、水媒体100質量部に対して、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを総量で0.1~0.5質量部用いることが好ましく、0.1~0.5質量部未満用いることがより好ましい。
水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの総量は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5質量部とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
水媒体としては、水、特には純水を用いることが好ましい。
【0040】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、通常のラジカル重合で用いられる過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム及び過酸化水素等を用いることができる。
【0041】
<連鎖移動剤>
連鎖移動剤としては、クロロプレン系重合体の製造に一般的に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、n-ドデシルメルカプタンやtert-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等の公知の連鎖移動剤を使用することができる。
【0042】
<重合温度>
重合温度は、反応を制御しやすい等の観点から0~55℃の範囲であることが望ましい。重合反応をより円滑かつ安全に行なう観点からは、重合温度の下限値を10℃以上、上限値を45℃以下とすることが望ましい。
【0043】
<重合転化率>
重合転化率は60~95%の範囲とすることができる。重合反応は、重合停止剤を加えることにより停止させることができる。重合転化率を上記数値範囲内とすることで、ゲルの生成を抑制することができる。
【0044】
<重合停止剤>
重合停止剤としては、例えばチオジフェニルアミン、4-第3ブチルカテコール、2,2'-メチレンビス-4-メチル-6-第3-ブチルフェノール等を用いることができる。乳化重合終了後の未反応単量体は、常法の減圧蒸留等の方法で除去することができる。
【0045】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は、140℃以上で1時間以上加熱する工程を有ないことが好ましく、140℃以上で加熱する工程を有しないことがより好ましい。また、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は、55℃以上で3時間以上加熱する工程を有しないことが好ましく、55℃以上で1時間以上加熱する工程を有しないことが更に好ましい。
本発明の一実施形態に係る製造方法によれば、クロロプレン系重合体の製造条件、例えば、クロロプレン系重合体重合時の、ロジン酸塩並びに水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの仕込み量を高度に調整することで、上記加熱工程を有しなくても、又は従来よりも加熱工程の温度を低くしても、若しくは時間を少なくしても、クロロプレン系重合体のミクロ構造をより高度に制御することができ、従来よりも、より動的耐久疲労性に優れる加硫成形体を得ることができるクロロプレン系重合体となる。
【0046】
4.クロロプレン系重合体の製造方法
本発明に係るクロロプレン系重合体は、上記したクロロプレン系重合体ラテックスをドライアップして得ることができる。
ドライアップは公知の方法で行われる。
【0047】
5.コンパウンド組成物・加硫成形体
本発明に係るコンパウンド組成物は、上記したクロロプレン系重合体ラテックス又はクロロプレン系重合体を含む。また、本発明に係る加硫成形体は、上記したコンパウンド組成物を加硫してなる。
【0048】
本発明の一実施形態に係るコンパウンド組成物は、上記したクロロプレン系重合体ラテックス又はクロロプレン系重合体以外に、例えば、加硫剤、加硫促進剤、充填剤又は補強剤、可塑剤、加工助剤及び滑剤、老化防止剤、並びにシランカップリング剤などを含むことができる。
【0049】
<加硫剤>
加硫剤の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、クロロプレンゴムに用いることが可能である通常の加硫剤を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。加硫剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛、四酸化三鉛、三酸化鉄、二酸化チタン、酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が挙げられる。加硫剤の配合量も、特に限定されない。本発明の一実施形態に係るコンパウンド組成物は、クロロプレン系重合体100質量部に対して加硫剤の配合量が3~15質量部であることが好ましい。この範囲で添加を行えば、加工安全性が確保され、良好な加硫物を得ることができる。
【0050】
<加硫促進剤>
本発明の一実施形態に係るコンパウンド組成物は、前記加硫剤に加硫促進剤を併用することで、さらに効果的に加硫を行うことができる。本発明に係るコンパウンド組成物に配合することができる加硫促進剤の種類は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されず、クロロプレンゴムの加硫に一般に用いられる加硫促進剤を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。加硫促進剤としては、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、グアニジン系、キサントゲン酸塩系、チアゾール系等が挙げられ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。チウラム系の加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系の加硫促進剤としては、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等が挙げられ、特にジブチルジチオカルバミン酸亜鉛が好適に用いられる。
チオウレア系の加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、N,N'-ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、N,N'-ジフェニルチオウレア等が挙げられる。
グアニジン系の加硫促進剤としては、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ-o-トリルグアニジン塩等が挙げられる。
キサントゲン酸塩系の加硫促進剤としては、ブチルキサントゲン酸亜鉛、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等が挙げられる。
チアゾール系の加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
本発明の一実施形態に係るコンパウンド組成物は、クロロプレン系重合体100質量部に対して、加硫促進剤の添加量が0.5~5質量部であることが好ましい。
【0051】
<充填剤又は補強剤>
充填剤又は補強剤は、ゴムの硬さを調整したり機械強度を向上したりするために添加するものであり、特に限定はないが、例えばカーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムが挙げられる。これらの充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これら充填剤及び補強剤の配合量は、ゴム組成物や当該ゴム組成物から得られる架橋ゴム又は加硫ゴムに求められる物性に応じて調整すればよく、特に限定するものではないが、本実施形態のコンパウンド組成物中のクロロプレン系重合体100質量部に対して通常は合計で15質量部以上200質量部以下の範囲で添加することができる。
【0052】
<老化防止剤>
一次老化防止剤は、主に、得られる加硫成形体が加熱されたときの硬さ、破断時伸び等の低下を抑え、耐熱性を向上させるために配合するものであり、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、アクリレート系老化防止剤、カルバミン酸金属塩及びワックスがある。これらの一次老化防止剤は、一種類もしくは併用して使用することができる。これら化合物の中でも、アミン系老化防止剤の4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンやオクチル化ジフェニルアミン、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンは、耐熱性の改善効果が大きいため好ましい。
【0053】
一次老化防止剤の配合量は、コンパウンド組成物に含まれるクロロプレン系重合体100質量部に対し、0.1~10質量部、好ましくは、1~5質量部である。一次老化防止剤の配合量をこの範囲に設定することにより、得られる加硫成形体やコンパウンドの硬さ、破断時伸び等の低下が抑えられ、耐熱性を向上させることができる。
【0054】
二次老化防止剤は、主に得られる加硫成形体やコンパウンドが加熱されたときの硬さ、破断時伸び、圧縮永久歪みの低下を抑え、耐熱性を向上させるために配合するものであり、リン系老化防止剤、イオウ系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤を挙げることができる。これらの二次老化防止剤は、一種類もしくは併用して使用することができる。これらの化合物の中でも、リン系老化防止剤のトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、イオウ系老化防止剤のチオジオプロピオン酸ジラリウル、ジミスチル-3,3'-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3'-チオジプロピオネート、イミダゾール系老化防止剤の2-メルカプトベンゾイミダゾール、1-ベンジル-2-エチルイミダゾールは、耐熱性改善効果が大きいため好ましい。
【0055】
二次老化防止剤の配合量は、コンパウンド組成物中のクロロプレン系重合体100質量部に対し、0.1~10質量部、好ましくは、0.5~5質量部である。二次老化防止剤の配合量をこの範囲にすることにより、耐熱性を向上させることができる。
【0056】
<可塑剤>
本発明の一実施形態に係るコンパウンド組成物は、可塑剤を含むことができる。可塑剤としては、クロロプレン系重合体と相溶性のある可塑剤であれば特に制限はないが、例えば、菜種油などの植物油、フタレート系可塑剤、DUP(フタル酸ジウンデシル)、DOS(セバシン酸ジオクチル)、DOA(アジピン酸ジオクチル)、エステル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、チオエーテル系可塑剤、アロマ系オイル、ナフテン系オイルなどがあり、コンパウンド組成物に要求される特性に合わせて一種類もしくは複数を併用して使用することができる。可塑剤の配合量は、クロロプレン系重合体100質量部に対して、5~50質量部が好ましい。
【0057】
<加工助剤>
本発明の一実施形態に係るコンパウンド組成物は、加工助剤を含むことができる。加工助剤は、主に、コンパウンド組成物がロールや成形金型、押出機のスクリューなどから剥離しやすくなるようにするなど、加工特性を向上させるために添加する。加工助剤としては、ステアリン酸などの脂肪酸あるいはポリエチレンなどのパラフィン系加工助剤などが挙げられ、クロロプレン系重合体100質量部に対して0.1~5質量部添加することが好ましい。
【0058】
<コンパウンド組成物の製造方法>
本発明の一実施形態に係るコンパウンド組成物は、クロロプレン系重合体又はクロロプレン系重合体ラテックス、及び必要とされるその他の成分を加硫温度以下の温度で混練することで得られる。原料成分を混練する装置としては、従来公知のミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、オープンロールなどの混練装置を挙げることができる。
【0059】
<加硫成形体>
本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、上記のコンパウンド組成物を加硫した加硫成形体である。上記のコンパウンド組成物は、所望する各種の形状に成形した後に加硫するか、又は予めコンパウンド組成物を加硫ゴムにしておき、その後各種の形状に成形してもよい。コンパウンド組成物や加硫ゴムを成形する方法は、従来のプレス成形、押出成形、カレンダー成形などの方法がある。これらは、通常のゴム工業で用いられている方法を採用すればよい。
【0060】
本発明の一実施形態に係る加硫成形体は、JIS K6260のデマッチャ屈曲疲労試験において、160万回屈曲試験を行っても亀裂が発生しないことが好ましく、180万回屈曲試験を行っても亀裂が発生しないことがより好ましく、200万回屈曲試験を行っても亀裂が発生しないことがさらにより好ましい。なお、屈曲試験は実施例に記載の方法で実施することができる。
【0061】
コンパウンド組成物の加硫は特にその方法を選ばないが、一般的なスチーム加硫やUHF加硫により加硫ゴム化することができる。スチーム加硫は、未加硫のコンパウンド組成物に、熱媒体としてのスチームガスによって圧力と温度を与えて加硫させる手段であり、UHF加硫は、コンパウンド組成物にマイクロ波を照射して加硫させる手段である。また、プレス加硫や射出成形の際に成形金型の内部にコンパウンド組成物を保持したまま金型温度を加硫温度まで上昇させて加硫させてもよい。加硫温度はコンパウンド組成物の配合や加硫剤の種類によって適宜設定でき、通常は140~220℃が好ましく、150~180℃の範囲がより好ましい。加硫時間は、例えば、10~30分とできる。上記加硫ゴムは、特に、コンパウンド、ベルト、オーバヘッドビークル向け部品、免震ゴム、ホース、ワイパー、浸漬製品、シール部品、ブーツ、ゴム引布、ゴムロール又はスポンジ製品に好適に用いられる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0063】
(実施例1)
内容積5リットルの反応器に、クロロプレン単量体100質量部に対し、n-ドデシルメルカプタン0.2部、ロジン酸カリウム(不均化トールロジンカリウム塩、メーカー:ハリマ化成株式会社製)1.6質量部、水酸化ナトリウム0.2質量部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩(商品名:デモールNL、メーカー:花王株式会社製)0.4質量部及び純水100質量部を添加した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.05質量部を添加し、重合温度35℃にて窒素気流下で重合を行った。重合転化率が65%以上となった時点で重合停止剤としてチオジフェニルアミン、0.01質量部を加え反応を停止した。減圧下で未反応単量体除去し、固形分40%のクロロプレン系重合体ラテックスを得た。
【0064】
(実施例2~3、比較例1~3)
ロジン酸の仕込み量、並びに、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの合計仕込み量を表1に記載の通りとした以外は実施例に記載の方法でクロロプレン系重合体ラテックスを得た。
【0065】
<クロロプレン系重合体を含む固形分中のロジン酸量>
クロロプレン系重合体ラテックスを凍結乾燥させて得たクロロプレン系重合体を含む固形分3gを2mm角に裁断し、コンデンサー付属のナス形フラスコに入れ、エタノール-トルエン共沸混合物(エタノール/トルエン容積比7/3(ETA))でロジン酸類を抽出し、ガスクロマトグラフにて測定を実施した。ロジン成分のピーク面積からロジン酸類含有量を求めた。結果を表1に示す。
【0066】
ガスクロマトグラフは、以下の測定条件で実施した。
・使用カラム:FFAP 0.32mmφ×25m(膜厚0.3μm)
・カラム温度:200℃→250℃
・昇温速度:10℃/min
・注入口温度:270℃
・検出器温度:270℃
・注入量:2μL
【0067】
<クロロプレン系重合体ラテックス中のアルカリ金属のカチオンの物質量>
得られたクロロプレン系重合体ラテックス1.0gを、硫硝酸で酸分解し、塩酸酸性にした後、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES:VISTA-PRO)にてカリウムイオン及びナトリウムイオンを定量した。結果を表1に示す。
【0068】
<クロロプレン系重合体の核磁気共鳴分析(1H-NMR)スペクトルの測定>
クロロプレン系重合体ラテックスをベンゼン及びメタノールで精製して凍結乾燥し、これを5%の重クロロホルム溶液に溶解して、日本電子(株)製JNM-ECX-400(400MHz、FT型)により、1H-NMRスペクトルを測定した。得られた1H-NMRスペクトルにおいて、重クロロホルム中のクロロホルムのピーク(7.24ppm)を基準とした5.80~6.00ppmのピーク面積A、4.05~6.10ppmのピーク面積B、4.15~4.20ppmの位置のピーク面積C、及び5.40~5.60ppmのピーク面積Dを測定し、A/B、C/B、D/Bを算出した。結果を表1に示す。
【0069】
核磁気共鳴分析(1H-NMR)の測定条件は以下に示す。
・測定モード:ノンデカップリング
・フリップアングル:45度
・待ち時間:4.3秒
・サンプル回転数:0~12Hz
・ウィンドウ処理:指数関数
・積算回数:512
・測定温度:30℃
【0070】
<コンパウンド組成物・加硫成形体の調整>
上記クロロプレン系重合体ラテックスを常用の方法でドライアップすることにより得たクロロプレン系重合体と、その他の成分を、表1に記載の配合で分取し、8インチロールを用いて混合し、160℃で20分間プレス架橋して、厚み2mmの加硫成形体を作製した。
【0071】
<デマッチャ屈曲疲労試験>
得られた加硫成形体について、JIS K6260のデマッチャ屈曲疲労試験に準拠して、ストローク58mm、速度300±10rpmの条件下で、亀裂が発生した時点における屈曲試験の回数(単位:万回)を確認することにより、耐久疲労性を評価した。
【0072】