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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20250212BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20250212BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20250212BHJP
【FI】
H05K9/00 Q
B32B7/025
C09J7/29
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023511448
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022015761
(87)【国際公開番号】W WO2022210814
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2021060395
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高見 晃司
(72)【発明者】
【氏名】上農 憲治
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正博
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-010995(JP,A)
【文献】国際公開第2010/082514(WO,A1)
【文献】特開2009-200113(JP,A)
【文献】特開2016-046405(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
C09J 7/29
H01L 23/28-23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層と、
前記保護層に積層されたシールド層と、
前記シールド層に積層された接着剤層とからなり、
前記シールド層の前記接着剤層側には複数の導電性バンプが形成されており、
前記シールド層を前記接着剤層側から平面視すると、
前記導電性バンプは、2種以上の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されており、かつ、
前記複数の導電性バンプのそれぞれにつき、各前記導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、前記直線上には、前記導電性バンプが等間隔で配置されていない領域があることを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記多角形は、正三角形と正方形との2種類であり、前記正三角形の一辺の長さと、前記正方形の一辺の長さとが等しい請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記多角形は、ひし形と正六角形との2種類であり、前記ひし形の一辺の長さと、前記正六角形の一辺の長さとが等しい請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記多角形は、正三角形と正六角形との2種類であり、前記正三角形の一辺の長さと、前記正六角形の一辺の長さとが等しい請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記多角形は、正三角形と正方形と正六角形との3種類であり、前記正三角形の一辺の長さと、前記正方形の一辺の長さと、前記正六角形の一辺の長さとが等しい請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
前記多角形は、正三角形と正十二角形との2種類であり、前記正三角形の一辺の長さと、前記正十二角形の一辺の長さとが等しい請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項7】
前記多角形は、正方形と正八角形との2種類であり、前記正方形の一辺の長さと、前記正八角形の一辺の長さとが等しい請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項8】
前記多角形は、正方形と正六角形と正十二角形との3種類であり、前記正方形の一辺の長さと、前記正六角形の一辺の長さと、前記正十二角形の一辺の長さとが等しい請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項9】
保護層と、
前記保護層に積層されたシールド層と、
前記シールド層に積層された接着剤層とからなり、
前記シールド層の前記接着剤層側には複数の導電性バンプが形成されており、
前記シールド層を前記接着剤層側から平面視すると、
前記導電性バンプは、2種以上の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されており、
前記複数の導電性バンプは、第1導電性バンプと、前記第1導電性バンプに最も近い位置にある第2導電性バンプとを含み、
前記シールド層を前記接着剤層側から平面視し、前記第1導電性バンプと前記第2導電性バンプとを通る直線aを引いた際に、直線a上には、前記第1導電性バンプ及び前記第2導電性バンプの外側に他の前記導電性バンプが配置されており、
前記直線a上に配置された前記導電性バンプについて、任意の2個の前記導電性バンプを選択した際に、選択した2個の前記導電性バンプの間の距離が最も長くなる場合の距離をDとし、前記第1導電性バンプから前記第2導電性バンプまでの距離をDとすると、前記直線a上に配置された前記導電性バンプの数が、D/D+1個未満であることを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板に代表されるプリント配線板は、小型化、高機能化が急速に進む携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコンなどの電子機器において、複雑な機構の中に回路を組み込むために多用されている。さらに、その優れた可撓性を生かして、プリンタヘッドのような可動部と制御部との接続にも利用されている。これらの電子機器では、電磁波シールド対策が必須となっており、装置内で使用されるプリント配線板においても、電磁波シールドフィルムを貼付する等の電磁波シールド対策を施したプリント配線板(以下、「シールドプリント配線板」とも記載する)が用いられるようになってきた。
【0003】
一般的に、電磁波シールドフィルムは、最外層の保護層と、電磁波をシールドするためのシールド層と、プリント配線板に貼付するための接着剤層とからなる。
シールドプリント配線板を製造する際には、電磁波シールドフィルムの接着剤層が、プリント配線板に接触するように、電磁波シールドフィルムがプリント配線板に貼付されることになる。
【0004】
また、プリント配線板のグランド回路は、筐体等の外部グランドに電気的に接続されることになるが、プリント配線板に貼付された電磁波シールドフィルムを介して、プリント配線板のグランド回路と外部グランドとを電気的に接続することも行われている。
【0005】
なお、一般的に、個々のプリント配線板に合わせ、電磁波シールドフィルムを設計することは行われておらず、電磁波シールドフィルムには、どのようなプリント配線板に対しても電磁波をシールドする機能が要求される。
これは、プリント配線板の形状、配線等の構成は無数にあり、個々のプリント配線板に合わせ、最適となるように電磁波シールドフィルムを設計することは費用対効果の面から現実的でないためである。
【0006】
例えば、特許文献1には、このような要求に応えることができる電磁波シールドフィルムとして、保護層と、前記保護層に積層されたシールド層と、前記シールド層に積層された接着剤層とからなり、前記シールド層の前記接着剤層側には導電性バンプが形成されており、前記導電性バンプの体積は、30000~400000μmであることを特徴とする電磁波シールドフィルムが開示されている。
特許文献1では、プリント配線板のグランド回路とシールド層との間の接続抵抗を充分に小さくするために、電磁波シールドフィルムのシールド層に導電性バンプを形成し、その導電性バンプをプリント配線板のグランド回路に接触させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2020/090727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された電磁波シールドフィルムを用いてシールドプリント配線板を作製すると、そのシールドプリント配線板において、伝送損失が大きくなる場合があった。
【0009】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、伝送損失を小さくすることができる電磁波シールドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特許文献1に係る電磁波シールドフィルムにおいて、電磁波シールドフィルムを平面視した際に、導電性バンプが直線上に等間隔で配列されていると、伝送損失が大きくなる場合があることを見出し本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の電磁波シールドフィルムは、保護層と、上記保護層に積層されたシールド層と、上記シールド層に積層された接着剤層とからなり、上記シールド層の上記接着剤層側には複数の導電性バンプが形成されており、上記シールド層を上記接着剤層側から平面視すると、上記導電性バンプは、2種以上の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されており、かつ、上記複数の導電性バンプのそれぞれにつき、各上記導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、上記直線が他の上記線分と重複しない部分を有するように、上記導電性バンプが配置されていることを特徴とする。
【0012】
導電性バンプがこのように配列されているということは、シールド層を接着剤層側から平面視した際に、隣り合う導電性バンプが、直線上に等間隔に配列されていないことを意味する。
【0013】
本発明の電磁波シールドフィルムは、プリント配線板に配置されることになる。
まず、導電性バンプが直線上に等間隔で配列されている電磁波シールドフィルムをプリント配線板に用いると、伝送損失が大きくなる原因について説明する。
一般的に、プリント配線板のグランド回路の近くには、グランド回路とは別の信号回路が配置されている。電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置する際、電磁波シールドフィルムの導電性バンプがこのような信号回路の上に位置することがあり、これにより寄生回路が発生して伝送損失が大きくなることがある。
特に、導電性バンプが直線上に等間隔で配置されていると、導電性バンプの配列方向と、信号回路の形成方向が一致した際に、信号回路の上に位置する導電性バンプの数が多くなる。この場合、多数の寄生回路が発生して伝送損失が大きくなる。
また、信号回路が複数ある場合、導電性バンプとの間に発生する寄生回路の数が、信号回路毎に偏ってしまうことがある。このような場合さらに伝送損失が大きくなる。
【0014】
しかし、本発明の電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプが直線上に等間隔に配列されていないので、プリント配線板の信号回路の上に導電性バンプが位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【0015】
信号回路の上に多数の導電性バンプが配置されることを抑制するために、導電性バンプの配置をランダムにする方法も考えられる。しかし、導電性バンプをランダムに配置すると、導電性バンプとグランド回路との接触が不充分になる部分が生じやすい。
本発明の電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプは、2種以上の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されている。つまり、本発明の電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプは規則的にジグザグに配置されている。
導電性バンプが規則的にジグザグに配列されていると、導電性バンプとグランド回路とを確実に接触させることができる。
その結果、電磁波シールドフィルムのシールド層と、プリント配線板のグランド回路との接続安定性を高くすることができる。
【0016】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記多角形は、ひし形と正六角形との2種類であり、上記ひし形の一辺の長さと、上記正六角形の一辺の長さとが等しい形状であってもよい。
【0017】
また、本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記多角形は、正三角形と正方形との2種類であり、上記正三角形の一辺の長さと、上記正方形の一辺の長さとが等しい形状であってもよい。
【0018】
また、本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記多角形は、正三角形と正六角形との2種類であり、上記正三角形の一辺の長さと、上記正六角形の一辺の長さとが等しい形状であってもよい。
【0019】
また、本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記多角形は、正三角形と正方形と正六角形との3種類であり、上記正三角形の一辺の長さと、上記正方形の一辺の長さと、上記正六角形の一辺の長さとが等しい形状であってもよい。
【0020】
また、本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記多角形は、正三角形と正十二角形との2種類であり、上記正三角形の一辺の長さと、上記正十二角形の一辺の長さとが等しい形状であってもよい。
【0021】
また、本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記多角形は、正方形と正八角形との2種類であり、上記正方形の一辺の長さと、上記正八角形の一辺の長さとが等しい形状であってもよい。
【0022】
また、本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記多角形は、正方形と正六角形と正十二角形との3種類であり、上記正方形の一辺の長さと、上記正六角形の一辺の長さと、上記正十二角形の一辺の長さとが等しい形状であってもよい。
【0023】
多角形がこれらの形状である場合、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際に、隣り合う導電性バンプが、直線上に等間隔に配列されない。そのため、本発明の電磁波シールドフィルムをプリント配線板に用いた際に、伝送損失を小さくすることができる。
【0024】
また、多角形がこれらの形状である場合、本発明の電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際に、導電性バンプは規則的にジグザグに配置されることになる。
一般的に、作業効率の観点から、電磁波シールドフィルムに配置された導電性バンプの配列方向と、プリント配線板のグランド回路の形成方向との関係を考慮して電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置することは少ない。
そのため、導電性バンプが直線上にのみ配置されている場合において、電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置する際に、プリント配線板のグランド回路が形成されている方向と、導電性バンプが配列されている方向が一致することがある。
この場合において、導電性バンプがグランド回路に接触するように位置しているのであれば、電磁波シールドフィルムのシールド層と、プリント配線板のグランド回路との電気的な接続安定性は問題が無い。しかし、導電性バンプがグランド回路に接触しないように位置している場合、その直線上に配置された導電性バンプの全てがグランド回路に接触できない状態となる。その結果、電磁波シールドフィルムのシールド層とプリント配線板のグランド回路とは、その直線状に配置された導電性バンプを介して電気的に接続できない状態となる。
一方、上記本発明の電磁波シールドフィルムのように、導電性バンプが規則的にジグザグに配置されていると、一つの導電性バンプがグランド部材に接触できない位置に配置されたとしても、他の導電性バンプがグランド部材に接触できる可能性が高くなる。そのため、電磁波シールドフィルムのシールド層とプリント配線板のグランド回路とが導電性バンプにより電気的に接続できない状態となる可能性が低くなる。
そのため、製造されるシールドプリント配線板において、電磁波シールドフィルムのシールド層と、プリント配線板のグランド回路との接続安定性を高くすることができる。
【0025】
本発明の電磁波シールドフィルムは、保護層と、上記保護層に積層されたシールド層と、上記シールド層に積層された接着剤層とからなり、上記シールド層の上記接着剤層側には複数の導電性バンプが形成されており、上記複数の導電性バンプは、第1導電性バンプと、上記第1導電性バンプに最も近い位置にある第2導電性バンプとを含み、上記シールド層を上記接着剤層側から平面視し、上記第1導電性バンプと上記第2導電性バンプとを通る直線aを引いた際に、直線a上には、上記第1導電性バンプ及び上記第2導電性バンプの外側に他の上記導電性バンプが配置されており、上記直線a上に配置された上記導電性バンプについて、任意の2個の上記導電性バンプを選択した際に、選択した2個の上記導電性バンプの間の距離が最も長くなる場合の距離をDとし、上記第1導電性バンプから上記第2導電性バンプまでの距離をDとすると、上記直線a上に配置された上記導電性バンプの数が、D/D+1個未満であることを特徴とする。
【0026】
導電性バンプがこのように配列されているということは、シールド層を接着剤層側から平面視した際に、隣り合う導電性バンプが、直線上に等間隔に配列されていないことを意味する。
【0027】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプが直線上に等間隔に配列されていないので、プリント配線板の信号回路の上に導電性バンプが位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の電磁波シールドフィルムは、グランド回路が形成されているプリント配線板に配置される。この際、本発明の電磁波シールドフィルムの導電性バンプと、プリント配線板のグランド回路は接触する。
本発明の電磁波シールドフィルムでは、隣り合う導電性バンプが、直線上に等間隔に配列されていないので、プリント配線板の信号回路の上に導電性バンプが位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1A図1Aは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図1B図1Bは、図1Aに示す電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列を模式的に示す平面図である。
図1C図1Cは、図1A及び図1Bに示す電磁波シールドフィルムにおいて、導電性バンプの配列が本発明の特徴を有することを説明する平面図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムが用いられたシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、導電性バンプが直線上に等間隔に配列されている電磁波シールドフィルムを備えるシールドプリント配線板において、導電性バンプとグランド回路との位置関係の一例を模式的に示す平面図である。
図5A図5Aは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
図5B図5Bは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
図5C図5Cは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
図5D図5Dは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
図5E図5Eは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
図5F図5Fは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
図6A図6Aは、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図6B図6Bは、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
図7図7は、導電性バンプが直線上に等間隔に配列されている電磁波シールドフィルムの導電性バンプの配列を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0031】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムは、保護層と、上記保護層に積層されたシールド層と、上記シールド層に積層された接着剤層とからなり、上記シールド層の上記接着剤層側には複数の導電性バンプが形成されており、上記シールド層を上記接着剤層側から平面視すると、上記導電性バンプは、2種以上の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されており、かつ、上記複数の導電性バンプのそれぞれにつき、各上記導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、上記直線が他の上記線分と重複しない部分を有するように、上記導電性バンプが配置されていることを特徴とする。
本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムはこのような特徴を有していれば、発明の効果を奏する範囲で、他にどのような特徴を有していてもよい。
【0032】
以下に、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例について図面を用いて説明する。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【0033】
図1Aに示すように、電磁波シールドフィルム10は、保護層11と、保護層11に積層されたシールド層12と、シールド層12に積層された接着剤層13とからなる。
保護層11、シールド層12及び接着剤層13は順に積層されている。
また、シールド層12の接着剤層13側には複数の導電性バンプ14が形成されている。
【0034】
電磁波シールドフィルム10の導電性バンプ14の配列について説明する。
図1Bは、図1Aに示す電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列を模式的に示す平面図である。
【0035】
図1Bに示すように、電磁波シールドフィルム10では、導電性バンプ14は、正三角形51aと正方形52aで平面充填された各正三角形51a及び各正方形52aの頂点に位置するように配置されている。なお、正三角形51aの一辺の長さと、正方形52aの一辺の長さとは等しい。
なお、図1Bでは、説明の便宜上、符号51aで示す正三角形及び符号52aで示す正方形を強調して図示しているが、電磁波シールドフィルム10では、強調して図示した正三角形51a及び正方形52aは、他の正三角形及び正方形と構造的な相違点や、機能的な相違点等は無い。
【0036】
電磁波シールドフィルム10では、導電性バンプ14のそれぞれにつき、導電性バンプ14と最も近い位置にある最近接の導電性バンプ14とを結ぶ線分を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、直線が他の線分と重複しない部分を有するように導電性バンプ14が配置されている。
【0037】
導電性バンプ14がこのように配列されていることを、図面を用いて具体的に説明する。
図1Cは、図1A及び図1Bに示す電磁波シールドフィルムにおいて、導電性バンプの配列が本発明の特徴を有することを説明する平面図である。
【0038】
図1Cに示すように、まず、各導電性バンプ14と最も近い位置にある最近接の導電性バンプ14とを結ぶ線分(図1Cにおいて導電性バンプ14同士を結ぶ実線で示す線分)を描く。
電磁波シールドフィルム10では、一つの線分を通る直線を引いた際に、直線が他の線分と重複しない部分を有していれば、各々の線分が分離して直線上に位置していてもよく、一部の線分が連続して直線上に位置していてもよい。
【0039】
まず、各々の線分が分離して直線上に位置している場合について説明する。
図1Cにおいて、導電性バンプ14の中の導電性バンプ14a及び導電性バンプ14bに着目する。導電性バンプ14aは、導電性バンプ14bに最も近い位置にある最近接の導電性バンプである。導電性バンプ14aと導電性バンプ14bとは、線分A1により結ばれている。
線分A1を通る直線aを引くと、直線a上には、導電性バンプ14同士の距離が最短にならない箇所(図1C中、符号B1で示す線分)が生じる。すなわち、直線aは、各導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分と重複しない部分を有する。
また、直線a上では、各々の各導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分は連続しておらず分離している。
【0040】
次に、一部の線分が連続して直線上に位置している場合について説明する。
図1Cにおいて、導電性バンプ14の中の導電性バンプ14c、導電性バンプ14d及び導電性バンプ14eに着目する。
導電性バンプ14cは、導電性バンプ14dに最も近い位置にある最近接の導電性バンプである。導電性バンプ14dは、導電性バンプ14eに最も近い位置にある最近接の導電性バンプである。
導電性バンプ14cと導電性バンプ14dとは、線分A2により結ばれている。また、導電性バンプ14dと導電性バンプ14eとは、線分A3により結ばれている。
導電性バンプ14c、導電性バンプ14d及び導電性バンプ14eは一直線上に配置されている。
導電性バンプ14c、導電性バンプ14d及び導電性バンプ14eを通る直線aを引くと、導電性バンプ14同士の距離が最短にならない箇所(図1C中、符号B2で示す線分)が生じる。すなわち、直線aでは、一部の線分(すなわち、線分A2及び線分A3)が連続して重複している。しかし、直線aは、各導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分と重複しない部分を有する。
【0041】
以上より、電磁波シールドフィルム10では、導電性バンプ14のそれぞれにつき、導電性バンプ14と最も近い位置にある最近接の導電性バンプ14とを結ぶ線分を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、直線が他の線分と重複しない部分を有するように導電性バンプ14が配置されていると言える。
【0042】
導電性バンプ14がこのように配列されているということは、シールド層12を接着剤層13側から平面視した際に、隣り合う導電性バンプ14が、直線上に等間隔に配列されておらず、規則的にジグザグに配置されていることを意味する。
【0043】
電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に配置され、シールドプリント配線板の構成要素の一部となった際に効果を発揮する。
そこで、電磁波シールドフィルム10を備えるシールドプリント配線板について説明する。
【0044】
図2は、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムが用いられたシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、シールドプリント配線板1は、ベースフィルム21と、ベースフィルム21の上に形成された複数のグランド回路22aを含むプリント回路22と、プリント回路22を覆うカバーレイ23とを備え、カバーレイ23にはグランド回路22aを露出する開口部23aが形成されているプリント配線板20と、プリント配線板20に配置された電磁波シールドフィルム10とを構成要素として含む。
【0045】
シールドプリント配線板1では、電磁波シールドフィルム10の導電性バンプ14は、接着剤層13を貫き、プリント配線板20のグランド回路22aと接触している。
【0046】
ここで、導電性バンプが直線上に等間隔で配列されている電磁波シールドフィルムをプリント配線板に用いると、伝送損失が大きくなる原因について説明する。
一般的に、プリント配線板のグランド回路の近くには、グランド回路とは別の信号回路が配置されている。電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置する際、電磁波シールドフィルムの導電性バンプがこのような信号回路の上に位置することがあり、これにより寄生回路が発生して伝送損失が大きくなることがある。
特に、導電性バンプが直線上に等間隔で配置されていると、導電性バンプの配列方向と、信号回路の形成方向が一致した際に、信号回路の上に位置する導電性バンプの数が多くなる。この場合、多数の寄生回路が発生して伝送損失が大きくなる。
また、信号回路が複数ある場合、導電性バンプとの間に発生する寄生回路の数が、信号回路毎に偏ってしまうことがある。このような場合さらに伝送損失が大きくなる。
【0047】
しかし、電磁波シールドフィルム10では、導電性バンプ14が直線上に等間隔に配列されていないので、プリント配線板20の信号回路の上に導電性バンプ14が位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【0048】
次に、導電性バンプ14とグランド回路22aとの位置関係を説明する。
図3は、図2のA-A線断面図である。なお、図3では、説明の便宜上、1つのグランド回路22aのみを示している。
図3に示すように、グランド回路22aは直線状に形成されている。
また、図3に示すように、電磁波シールドフィルム10の導電性バンプ14が規則的にジグザグに配置されていると、導電性バンプ14とグランド回路22aとを確実に接触させることができる。つまり、導電性バンプ14gがグランド回路22aに接触できない位置に配置されたとしても、導電性バンプ14fがグランド回路22aに接触できる。
そのため、シールドプリント配線板1において、電磁波シールドフィルム10のシールド層12と、プリント配線板20のグランド回路22aとの接続安定性を高くすることができる。
【0049】
電磁波シールドフィルムにおいて導電性バンプが直線上に等間隔に配列されている場合の導電性バンプとグランド回路との位置関係に基づく問題点について説明する。
図4は、導電性バンプが直線上に等間隔に配列されている電磁波シールドフィルムを備えるシールドプリント配線板において、導電性バンプとグランド回路との位置関係の一例を模式的に示す平面図である。
【0050】
図4に示すように、導電性バンプ14´が直線上にのみ配置されていると、グランド回路22aが形成されている方向と、導電性バンプ14´の配列方向とが一致した際に、導電性バンプ14´がグランド回路22aに接触しないように位置している場合、その直線上に配置された導電性バンプ14´の全てがグランド回路22aに接触できない状態となる。特にグランド回路22aの幅が狭い場合にこのようなことが生じやすい。その結果、電磁波シールドフィルムのシールド層とプリント配線板のグランド回路22aとは、その直線状に配置された導電性バンプ14´を介して電気的に接続できない状態となる。
【0051】
しかし、上記の通り電磁波シールドフィルム10を用いたシールドプリント配線板1では、このような問題は生じにくい。
【0052】
次に、電磁波シールドフィルム10の各構成について好ましい態様を説明する。
【0053】
(保護層)
保護層11の材料は特に限定されないが、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、活性エネルギー線硬化性組成物等から構成されていることが好ましい。
【0054】
上記熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等が挙げられる。
【0055】
上記熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、ウレタンウレア系樹脂組成物、スチレン系樹脂組成物、フェノール系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物及びアルキッド系樹脂組成物からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂組成物が挙げられる。
【0056】
上記活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等が挙げられる。
【0057】
保護層11は、1種単独の材料から構成されていてもよく、2種以上の材料から構成されていてもよい。
【0058】
保護層11には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0059】
保護層11の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1~15μmであることが好ましく、3~10μmであることがより好ましい。
保護層の厚さが1μm未満であると、薄すぎるのでシールド層及び接着剤層を充分に保護しにくくなる。
保護層の厚さが15μmを超えると、厚すぎるので保護層が折り曲がりにくくなり、また、保護層自身が破損しやすくなる。そのため、耐折り曲げ性が要求される部材へ適用しにくくなる。
【0060】
(シールド層)
シールド層12は、電磁波をシールドすることができれば、その材料は特に限定されず、例えば、金属からなっていてもよく、導電性樹脂からなっていてもよい。
【0061】
シールド層12が金属からなる場合、金属としては金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、パラジウム、クロム、チタン、亜鉛等が挙げられる。これらの中では、銅であることが好ましい。銅は、導電性及び経済性の観点からシールド層にとって好適な材料である。
【0062】
なお、シールド層12は、上記金属の合金からなっていてもよい。
また、シールド層12は、金属箔であってもよく、スパッタリングや無電解めっき、電解めっき等の方法で形成された金属膜であってもよい。
【0063】
シールド層12が導電性樹脂からなる場合、シールド層12は、導電性粒子と樹脂から構成されていてもよい。
【0064】
導電性粒子としては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0065】
導電性粒子が金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが好ましい。
【0066】
導電性粒子の平均粒子径D50は、特に限定されないが、0.5~15.0μmであることが好ましい。導電性粒子の平均粒子径が0.5μm以上であると、導電性樹脂の導電性が良好となる。導電性粒子の平均粒子径が15.0μm以下であると、導電性樹脂を薄くすることができる。
【0067】
導電性粒子の形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状、棒状、繊維状等から適宜選択することができる。
【0068】
導電性粒子の配合量は、特に限定されないが、15~80質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましい。
【0069】
樹脂としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
【0070】
(導電性バンプ)
導電性バンプ14は、接着剤層13を貫き、グランド回路22aに接触することになる。
導電性バンプ14の形状は、特に限定されないが、円柱、三角柱、四角柱等の柱体状であってもよく、円錐、三角錐、四角錐等の錐体状であってもよい。
これらの中では、錐体状であることが好ましい。
導電性バンプ14の形状が錐体状であると、導電性バンプ14が接着剤層13を貫きやすくなり、グランド回路22aと接触しやすくなる。
【0071】
1個当たりの導電性バンプ14の体積は、30000~400000μmであることが好ましく、50000~400000μmであることがより好ましい。
1個当たりの導電性バンプ14の体積が上記範囲内であると、導電性バンプ14がグランド回路22aにしっかり接触することができる。
1個当たりの導電性バンプの体積が30000μm未満であると、導電性バンプがグランド回路に接触しにくくなり、グランド回路-シールド層間の接続抵抗が大きくなりやすくなる。
1個当たりの導電性バンプの体積が400000μmを超えると、接着剤層において、導電性バンプが占める割合が大きくなる。
そのため、接着剤層がある領域全体の比誘電率及び誘電正接が高くなりやすくなる。従って、伝送特性が悪化しやすくなる。
【0072】
複数の導電性バンプ14の高さ(図1A中、符号「H」で示す高さ)は略同一であることが好ましい。
複数の導電性バンプ14の高さが略同一であると、均等に複数の導電性バンプ14が接着剤層13を貫き、グランド回路22aと接触しやすくなる。
【0073】
導電性バンプ14の高さは、1~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。
【0074】
なお、導電性バンプの形状、高さ、体積は、コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID、対物レンズ20倍)を用いて、導電性バンプを形成したシールド層の表面の任意の5か所を測定した後、データ解析ソフト(LMeye7)を用い解析できる。2値化のパラメータは高さで、自動しきい値アルゴリズムはKittler法を用いることができる。
【0075】
導電性バンプ14は、樹脂組成物と導電性フィラーとからなることが好ましい。
すなわち、導電性バンプ14は、導電性ペーストからなっていてもよい。
導電性ペーストを用いることにより、導電性バンプ14を任意の位置に任意の形状で容易に形成することができる。
また、導電性バンプ14は、スクリーン印刷により形成されていてもよい。
導電性ペーストを用いてスクリーン印刷により導電性バンプ14を形成する場合、導電性バンプ14を任意の位置に任意の形状で容易にかつ効率よく形成することができる。
【0076】
導電性バンプ14が樹脂組成物と導電性フィラーとからなる場合、樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。
樹脂組成物の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0077】
導電性バンプ14が樹脂組成物と導電性フィラーとからなる場合、導電性フィラーとしては、特に限定されないが、金属微粒子、カーボンナノチューブ、炭素繊維、金属繊維等であってもよい。
【0078】
導電性フィラーが金属微粒子である場合、金属微粒子としては、特に限定されないが、銀粉、銅粉、ニッケル粉、ハンダ粉、アルミニウム粉、銅粉に銀めっきを施した銀コート銅粉、高分子微粒子やガラスビーズ等を金属で被覆した微粒子等であってもよい。
これらの中では、経済性の観点から、安価に入手できる銅粉又は銀コート銅粉であることが好ましい。
【0079】
導電性フィラーの平均粒子径D50は、特に限定されないが、0.5~15.0μmであることが好ましい。
【0080】
導電性フィラーの形状は、特に限定されないが、球状、扁平状、リン片状、デンドライト状、棒状、繊維状等から適宜選択することができる。
【0081】
導電性バンプ14が樹脂組成物と導電性フィラーとからなる場合、導電性フィラーの重量割合は、30~99%であることが好ましく、50~99%であることがより好ましい。
【0082】
また、導電性バンプ14は、めっき法や蒸着法等により形成された金属からなっていてもよい。
この場合、導電性バンプは、銅、銀、スズ、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及びこれらのいずれか1つ以上を含む合金からなることが好ましい。
めっき法や蒸着法は従来の方法を用いることができる。
【0083】
(接着剤層)
上記の通り電磁波シールドフィルム10は、接着剤層13によりプリント配線板20に接着されることになる。
【0084】
電磁波シールドフィルム10では、接着剤層13のシールド層12に接する面と反対側の面は平坦であることが好ましい。
この面が平坦であると、複数の導電性バンプ14が接着剤層13を均等に貫くことになる。
そのため、複数の導電性バンプ14が均等に複数のグランド回路22aに接触することになる。
【0085】
電磁波シールドフィルム10では、接着剤層13の厚さは、5~30μmであることが好ましく、8~20μmであることがより好ましい。
接着剤層の厚さが5μm未満であると、接着剤層を構成する樹脂の量が少ないため、充分な接着性能が得られにくい。また、破損しやすくなる。
接着剤層の厚さが30μmを超えると、全体が厚くなり、柔軟性が失われやすい。また、導電性バンプが接着剤層を貫きにくくなる。
【0086】
電磁波シールドフィルム10では、接着剤層13を構成する樹脂の周波数1GHz、23℃における、比誘電率は1~5であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
また、接着剤層13を構成する樹脂の周波数1GHz、23℃における、誘電正接は0.0001~0.03であることが好ましく、0.001~0.002であることがより好ましい。
このような範囲であると、電磁波シールドフィルム10を用いて製造するシールドプリント配線板1の伝送特性を向上させることができる。
【0087】
なお、電磁波シールドフィルム10では、接着剤層13は、導電性絶着剤層であってもよく、絶縁性接着剤層であってもよいが、接着剤層13は、比誘電率及び誘電正接を低くする観点から絶縁性接着剤層であることが好ましい。
上記の通り、電磁波シールドフィルム10は、接着剤層13によりプリント配線板20に接着されることになる。
上記接着剤層13が絶縁性接着剤層である場合、接着剤層13は導電性フィラー等の導電性物質を含まないため、比誘電率及び誘電正接が充分に小さくなる。この場合、電磁波シールドフィルム10を用いて製造されたシールドプリント配線板1では、伝送特性が良好になる。
【0088】
なお、接着剤層13が導電性を有する場合、接着剤層13は、導電性フィラー等の導電性物質を含むことになる。接着剤層13が、このような導電性物質を多く含むと、接着剤層13全体の比誘電率及び誘電正接が高くなりやすい。
その一方で、製造されるシールドプリント配線板1の伝送特性を良好にするためには、接着剤層13全体の比誘電率及び誘電正接は低い方が好ましい。
そのため、接着剤層13が導電性物質を含む場合であったとしても、接着剤層13全体の比誘電率及び誘電正接が低くなるように、その含有量は少ない方が好ましい。
【0089】
接着剤層13は、熱硬化性樹脂組成物からなっていてもよく、熱可塑性樹脂組成物からなっていてもよい。
【0090】
熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、ポリアミド系樹脂組成物及びアルキッド系樹脂組成物等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、及び、アクリル系樹脂組成物が挙げられる。
また、エポキシ樹脂組成物としては、アミド変性エポキシ樹脂組成物であることがより好ましい。
これらの樹脂組成物は、接着剤層を構成する樹脂として適している。
接着剤層の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0091】
次に、プリント配線板20の各構成について好ましい態様について説明する。
【0092】
(ベースフィルム及びカバーレイ)
ベースフィルム21及びカバーレイ23の材料は、特に限定されないが、エンジニアリングプラスチックからなることが好ましい。このようなエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が挙げられる。
また、これらのエンジニアリングプラスチックの内、難燃性が要求される場合には、ポリフェニレンサルファイドフィルムが好ましく、耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。なお、ベースフィルム21の厚みは、10~40μmであることが好ましく、カバーレイ23の厚みは、10~30μmであることが好ましい。
【0093】
開口部23aの大きさは特に限定されないが、0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。
また、開口部23aの形状は、特に限定されず、円形、楕円形、四角形、三角形等であってもよい。
【0094】
(プリント回路)
プリント回路22及びグランド回路22aの材料は、特に限定されず、銅箔、導電性ペーストの硬化物等であってもよい。
【0095】
次に、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムにおける導電性バンプの別の配置について説明する。
上記のように電磁波シールドフィルム10では、導電性バンプ14は、正三角形51aと正方形52aで平面充填された各正三角形51a及び各正方形52aの頂点に位置するように配置されている。しかし、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプの配置は、例えば、以下の図5A図5Fに示す配置であってもよい。
図5A図5Fは、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列の一例を模式的に示す平面図である。
なお、図5A図5Fでは、説明の便宜上、いくつかの多角形を強調して図示しているが、本発明の電磁波シールドフィルムでは、強調して図示した多角形と、他の多角形との間には構造的な相違点や、機能的な相違点等は無い。
【0096】
図5Aに示すように、平面充填する多角形は、ひし形151Aと正六角形152Aとの2種類であり、ひし形151Aの一辺の長さと、正六角形152Aの一辺の長さとが等しくてもよい。
また、導電性バンプ114Aは、ひし形151A及び正六角形152Aの頂点に位置するように配置されている。
【0097】
図5Bに示すように、平面充填する多角形は、正三角形151Bと正六角形152Bとの2種類であり、正三角形151Bの一辺の長さと、正六角形152Bの一辺の長さとが等しくてもよい。
また、導電性バンプ114Bは、正三角形151B及び正六角形152Bの頂点に位置するように配置されている。
【0098】
図5Cに示すように、平面充填する多角形は、正三角形151Cと正方形152Cと正六角形153Cとの3種類であり、正三角形151Cの一辺の長さと、正方形152Cの一辺の長さと、正六角形153Cの一辺の長さとが等しくてもよい。
また、導電性バンプ114Cは、正三角形151C、正方形152C及び正六角形153Cの頂点に位置するように配置されている。
【0099】
図5Dに示すように、平面充填する多角形は、正三角形151Dと正十二角形152Dとの2種類であり、正三角形151Dの一辺の長さと、正十二角形152Dの一辺の長さとが等しくてもよい。
また、導電性バンプ114Dは、正三角形151Dと正十二角形152Dの頂点に位置するように配置されている。
【0100】
図5Eに示すように、平面充填する多角形は、正方形151Eと正八角形152Eとの2種類であり、正方形151Eの一辺の長さと、正八角形152Eの一辺の長さとが等しくてもよい。
また、導電性バンプ114Eは、正方形151Eと正八角形152Eの頂点に位置するように配置されている。
【0101】
図5Fに示すように、平面充填する多角形は、正方形151Fと正六角形152Fと正十二角形153Fとの3種類であり、正方形151Fの一辺の長さと、正六角形152Fの一辺の長さと、正十二角形153Fの一辺の長さとが等しくてもよい。
また、導電性バンプ114Fは、正方形151F、正六角形152F及び正十二角形153Fの頂点に位置するように配置されている。
【0102】
導電性バンプ114A~114Fが上記のように配置された電磁波シールドフィルムをプリント配線板に配置すると、プリント配線板の信号回路の上に導電性バンプが位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【0103】
これまで説明してきた導電性バンプは、2種以上の正多角形で平面充填された各正多角形の頂点に位置するように配置されている。
しかし、本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルムでは、導電性バンプが、2種以上の多角形で平面充填された各多角形の頂点に位置するように配置されており、かつ、導電性バンプのそれぞれにつき、各導電性バンプと最も近い位置にある最近接の導電性バンプとを結ぶ線分を描き、それらの線分のうち一つの線分を通る直線を引いた際に、直線が他の線分と重複しない部分を有するように配置されていれば、導電性バンプの配置は上記配列に限られない。
平面充填する多角形は、正多角形以外の凸多角形や、非凸多角形であってもよい。
【0104】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムについて説明する。
本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムは、保護層と、上記保護層に積層されたシールド層と、上記シールド層に積層された接着剤層とからなり、上記シールド層の上記接着剤層側には複数の導電性バンプが形成されており、上記複数の導電性バンプは、第1導電性バンプと、上記第1導電性バンプに最も近い位置にある第2導電性バンプとを含み、上記シールド層を上記接着剤層側から平面視すると、上記第1導電性バンプと上記第2導電性バンプを結ぶ直線a上には、他の導電性バンプが配置されており、上記直線a上に配置された上記導電性バンプについて、最も離れた上記導電性バンプ間の距離をDとし、上記第1導電性バンプから上記第2導電性バンプまでの距離をDとすると、上記直線a上に配置された上記導電性バンプの数が、D/D+1個未満であることを特徴とする。
本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムは、このような特徴を有していれば、発明の効果を奏する範囲で、他にどのような特徴を有していてもよい。
なお、「直線a上に配置された導電性バンプについて、最も離れた導電性バンプ間の距離をD」とは、より具体的には以下の距離のことを意味する。
まず、直線aとシールド層の端部とが交差する交点の位置を定める。直線a上に位置し一方の交点に最も近い位置に配された導電性バンプと、直線a上に位置し他方の交点に最も近い位置に配置された導電性バンプとを選択する。これらの導電性バンプの間の距離が、距離Dである。
【0105】
図6Aは、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
【0106】
図6Aに示すように、電磁波シールドフィルム210は、保護層211と、保護層211に積層されたシールド層212と、シールド層212に積層された接着剤層213とからなる。
また、シールド層212の接着剤層213側には複数の導電性バンプ214が形成されている。
【0107】
電磁波シールドフィルム210の導電性バンプ214の配列について説明する。
図6Bは、図6Aに示す電磁波シールドフィルムのシールド層を接着剤層側から平面視した際の導電性バンプの配列を模式的に示す平面図である。
【0108】
図6Bに示すように、導電性バンプ214は、第1導電性バンプ214aと、第1導電性バンプ214aに最も近い位置にある第2導電性バンプ214aとを含む。
さらに、第1導電性バンプ214aと第2導電性バンプ214aを通る直線aを引いた際に、直線a上には、第1導電性バンプ214a及び第2導電性バンプ214aの外側に、他の導電性バンプ214b、導電性バンプ214b、導電性バンプ214b、導電性バンプ214b、及び、導電性バンプ214bが配置されている。各導電性バンプの配列順は、導電性バンプ214b、導電性バンプ214b、第1導電性バンプ214a、第2導電性バンプ214a、導電性バンプ214b、導電性バンプ214b、及び、導電性バンプ214bの順である。
なお、図6Bでは、便宜上、直線a上に配列されている導電性バンプのみを記載しているが、電磁波シールドフィルム210では、直線a上以外に導電性バンプが形成されていてもよい。
【0109】
また、直線a上に配置された導電性バンプ214について、任意の2個の導電性バンプ214を選択した際に、選択した2個の導電性バンプ214の間の距離が最も長くなる場合の距離(図6B中、導電性バンプ214bから導電性バンプ214bまでの距離)をDとし、第1導電性バンプ214aから第2導電性バンプ214aまでの距離をDとすると、直線a上に配置された導電性バンプ214の数は、D/D+1個未満である。
電磁波シールドフィルムが、このような特徴を有するということは、直線a上に導電性バンプ214が等間隔で配列されていないことを意味する。
【0110】
この点について図面を用いてより詳しく説明する。
図7は、導電性バンプが直線上に等間隔に配列されている電磁波シールドフィルムの導電性バンプの配列を模式的に示す平面図である。
【0111】
図7に示すように、導電性バンプ214c~導電性バンプ214cの合計7個の導電性バンプが直線b上に等間隔で順に並んでいる場合を考える。
これらの導電性バンプのうち、任意の2個の導電性バンプを選択した場合において、選択した導電性バンプの間の距離が最も長くなる場合は、導電性バンプ214c及び導電性バンプ214cを選択する場合である。
そこで、導電性バンプ214cから導電性バンプ214cまでの距離をDとし、各導電性バンプ間の距離をDとすると、D×(導電性バンプの合計数-1)=D×6=Dという式が成り立つ。
この式を変形すると、D/D=6(導電性バンプの合計数-1)であり、さらにこの式を変形し、D/D+1=導電性バンプの合計数とできる。つまり、導電性バンプが直線上に等間隔で並んでいる場合、この式が成り立つ。
【0112】
一方、図6Bに示すように、導電性バンプ214が直線a上に等間隔で配置されていない場合、直線a上で最小となる導電性バンプ14間同士の距離Dを(導電性バンプの合計数-1)倍しても距離D未満となる。これを式で表すと、D×(導電性バンプの合計数-1)<Dとなる。この式を変形すると(導電性バンプの合計数-1)<D/Dであり、さらにこの式を変形し、導電性バンプの合計数<D/D+1とできる。
すなわち、導電性バンプ214の数がD/D+1個未満であれば、導電性バンプ214が直線上に等間隔で配置されていないと言える。
【0113】
電磁波シールドフィルム210はこのような導電性バンプの配列を有するので(すなわち、導電性バンプ214が、直線上に等間隔に配列されていないので)、電磁波シールドフィルム210をプリント配線板に配置した際に、プリント配線板の信号回路の上に導電性バンプ214が位置することにより寄生回路が生じることを抑制することができ、その結果、伝送損失を小さくすることができる。
【0114】
上記の導電性バンプの配置以外について、本発明の第2実施形態に係る電磁波シールドフィルム210を構成する、保護層211、シールド層212、接着剤層213及び導電性バンプ214の好ましい材料等は、上記本発明の第1実施形態に係る電磁波シールドフィルム10を構成する、保護層11、シールド層12、接着剤層13及び導電性バンプ14の好ましい材料等と同じである。
【符号の説明】
【0115】
1 シールドプリント配線板
10、210 電磁波シールドフィルム
11、211 保護層
12、212 シールド層
13、213 接着剤層
14、14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、114A、114B、114C、114D、114E、114F、214 導電性バンプ
20 プリント配線板
21 ベースフィルム
22 プリント回路
22a グランド回路
23 カバーレイ
23a 開口部
214a 第1導電性バンプ
214a 第2導電性バンプ
214b、214b、214b、214b、214b その他の導電性バンプ
14´、214c、214c、214c、214c、214c、214c、214c 直線上に等間隔に配列された導電性バンプ

図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図7