(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】重合体ラテックス組成物、浸漬成形体、及び、重合体ラテックス組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 13/02 20060101AFI20250212BHJP
C08F 236/12 20060101ALI20250212BHJP
C08F 236/18 20060101ALI20250212BHJP
C08J 3/21 20060101ALI20250212BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20250212BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
C08L13/02
C08F236/12
C08F236/18
C08J3/21 CEQ
C08K3/06
C08K3/22
(21)【出願番号】P 2023548449
(86)(22)【出願日】2022-09-09
(86)【国際出願番号】 JP2022033948
(87)【国際公開番号】W WO2023042768
(87)【国際公開日】2023-03-23
【審査請求日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2021152300
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真洋
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 雄志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実沙樹
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020478(JP,A)
【文献】特開2014-114342(JP,A)
【文献】特表2015-532675(JP,A)
【文献】特開2007-106994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 13/02
C08F 236/12
C08F 236/18
C08J 3/21
C08K 3/06
C08K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)と、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)と、金属酸化物(C)を含有する重合体ラテックス組成物であって、
前記重合体ラテックス組成物中のカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)の成分比が(A)/(B)=90/10~50/50であることを特徴とする重合体ラテックス組成物。
【請求項2】
カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)は、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)に由来する単量体単位及びカルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)に由来する単量体単位を含み、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を100質量部としたとき、カルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)に由来する単量体単位を0.5~5.0質量部含むことを特徴とする請求項1記載の重合体ラテックス組成物。
【請求項3】
カルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及び、フマル酸からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載の重合体ラテックス組成物。
【請求項4】
硫黄、加硫促進剤、及び、老化防止剤を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重合体ラテックス組成物。
【請求項5】
前記重合体ラテックス組成物を含む浸漬成形体を120℃、20分で加硫して得られた加硫後の浸漬成形体のJIS K6251に準拠して測定した破断強度が17MPa以上、破断伸びが550%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重合体ラテックス組成物。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の重合体ラテックス組成物から得られる浸漬成形体。
【請求項7】
手袋、風船、カテーテル又は長靴である、請求項6に記載の浸漬成形体。
【請求項8】
請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の重合体ラテックス組成物の製造方法であって、
カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)重合工程及び混合工程を備え、
前記カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)重合工程では、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)及びカルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)を含む原料、または、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)、カルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)、及び、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体を含む原料を、少なくとも、純水、連鎖移動剤、乳化剤、pH調整剤、及び開始剤の存在下、重合温度5~55℃、重合転化率60%~99%で重合してカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックスを得、
前記混合工程では、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)を含むカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)ラテックスと、前記カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含有するカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックスを混合する、
重合体ラテックス組成物の製造方法。
【請求項9】
前記カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)は、前記カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を100質量%としたとき、カルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位を、0.5~8質量%含む、請求項1又は請求項2に記載の重合体ラテックス組成物。
【請求項10】
前記重合体ラテックス組成物を含む浸漬成形体を120℃、20分で加硫して得られた加硫後の浸漬成形体のJIS K6251に準拠して測定した300%伸長時モジュラスが、3.1~5.0MPaである、請求項1又は請求項2に記載の重合体ラテックス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体とクロロプレン共重合体を含む重合体ラテックス組成物、浸漬成形体、及び、重合体ラテックス組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレン重合体を含有するクロロプレンラテックス組成物は、浸漬成形体(浸漬製品)、繊維処理剤、紙加工剤、粘着剤、接着剤、弾性アスファルト(改質アスファルト)、弾性セメント等の種々な分野で利用されている。特に浸漬成形体では、工業用、検査用、手術用等の各種手袋の主原料としてクロロプレンラテックス組成物が用いられている。手袋の用途においては、従来天然ゴムが主に使用されていたが、天然ゴムに含まれるタンパク質等によるアレルギーが問題となるため、合成ゴム手袋の需要が高まってきている。
【0003】
検査用の手袋においてはアクリロニトリル・ブタジエン共重合体を含有するアクリロニトリル・ブタジエンラテックス組成物が最も使用されており、その重合体のほとんどがメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス組成物である。この共重合体ラテックス組成物から得られる浸漬成形体は破断強度に優れ、薄い手袋であっても破けにくい特徴がある一方、柔軟性や破断伸びに劣り、装着感や作業性の点で課題があった。
【0004】
そこで、手袋に柔軟性を付与するために可塑剤の添加が採用されるが、優れた柔軟性発現のためには大量の可塑剤の添加が必要であり、ブリードアウト等の衛生性の観点で懸念がある。そこで、柔軟性の優れる重合体(たとえば、天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム)をカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体にブレンドする方法が考えられる。しかし、少量添加では優れた柔軟性や破断伸びの向上は得られず、大量添加では手袋の破断強度が大きく低下してしまう。
【0005】
アクリロニトリル・ブタジエン共重合体とクロロプレン重合体のブレンドは検討されており(下記特許文献1,2)、また手袋においても検討されている(下記特許文献3,4)が、柔軟性や破断伸びの向上の課題を解決するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭47-031412号
【文献】特開昭52-060839号
【文献】国際公開2015/074092号
【文献】特開2020-189963号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を用いて得られる浸漬成形体(手袋等)の破断強度を大きく低下させず、柔軟性と破断伸びを向上させることが求められる。
【0008】
本発明の一側面は、優れた柔軟性と破断伸び及び破断強度を有する浸漬成形体を得ることが可能な重合体ラテックス組成物を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、前述の重合体ラテックス組成物の浸漬成形体を提供することを目的とする。また、本発明の一側面は、上記の重合体ラテックス組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが前述の課題を解決するため鋭意検討した結果、重合体ラテックス組成物に、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体とカルボキシ変性クロロプレン共重合体と金属酸化物を含ませ、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体とカルボキシ変性クロロプレン共重合体の混合比を特定することで上記の課題を達成できることを見出した。すなわち、本発明は、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)と、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)と、金属酸化物(C)を含有する重合体ラテックス組成物であって、前記重合体ラテックス組成物中のカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)の成分比が(A)/(B)=90/10~50/50であることを特徴とする重合体ラテックス組成物に関する。
【0010】
本発明の別の観点によれば、前記記載の重合体ラテックス組成物から得られる浸漬成形体が提供される。
本発明の別の観点によれば、前記記載の重合体ラテックス組成物の製造方法であって、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)重合工程及び混合工程を備え、前記カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)重合工程では、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)及びカルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)を含む原料、または、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)、カルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)、及び、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体を含む原料を、少なくとも、純水、連鎖移動剤、乳化剤、pH調整剤、及び開始剤の存在下、重合温度5~55℃、重合転化率60%~99%で重合してカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックスを得、前記混合工程では、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)を含むカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)ラテックスと、前記カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含有するカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックスを混合する、重合体ラテックス組成物の製造方法が提供される。
【0011】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
[1]カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)と、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)と、金属酸化物(C)を含有する重合体ラテックス組成物であって、前記重合体ラテックス組成物中のカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)の成分比が(A)/(B)=90/10~50/50であることを特徴とする重合体ラテックス組成物。
[2]カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)は、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)に由来する単量体単位及びカルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)に由来する単量体単位を含み、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を100質量部としたとき、カルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)に由来する単量体単位を0.5~5.0質量部含むことを特徴とする[1]記載の重合体ラテックス組成物。
[3]カルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及び、フマル酸からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする[2]に記載の重合体ラテックス組成物。
[4]硫黄、加硫促進剤、及び、老化防止剤を含むことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の重合体ラテックス組成物。
[5]前記重合体ラテックス組成物を含む浸漬成形体を120℃、20分で加硫して得られた加硫後の浸漬成形体のJISK6251に準拠して測定した破断強度が17MPa以上、破断伸びが550%以上であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか一項に記載の重合体ラテックス組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の重合体ラテックス組成物から得られる浸漬成形体。
[7]手袋、風船、カテーテル又は長靴である、[6]に記載の浸漬成形体。
[8][1]~[5]のいずれかに記載の重合体ラテックス組成物の製造方法であって、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)重合工程及び混合工程を備え、前記カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)重合工程では、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)及びカルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)を含む原料、または、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)、カルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)、及び、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体を含む原料を、少なくとも、純水、連鎖移動剤、乳化剤、pH調整剤、及び開始剤の存在下、重合温度5~55℃、重合転化率60%~99%で重合してカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックスを得、前記混合工程では、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)を含むカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)ラテックスと、前記カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含有するカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックスを混合する、重合体ラテックス組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の重合体ラテックス組成物によれば、柔軟性と破断伸びに優れ、かつ高い破断強度等の機械的強度が発現する浸漬成形体およびその浸漬製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
1.重合体ラテックス組成物
本発明に係る重合体ラテックス組成物は、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)と、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)と、金属酸化物(C)を含有する。以下、本発明に係る重合体ラテックス組成物が含み得る成分について説明する。
【0015】
<カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)>
まず、本実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体について説明する。本発明に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、アクリロニトリル単量体に由来する単量体単位、ブタジエン単量体に由来する単量体単位、カルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位を含む。本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、アクリロニトリル単量体、ブタジエン単量体及びカルボキシ基含有ビニル単量体以外の単量体に由来する単量体単位を含むこともできる。また、本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、アクリロニトリル単量体に由来する単量体単位、ブタジエン単量体に由来する単量体単位、カルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位の三元共重合体で構成されるものとできる。
【0016】
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を100質量%としたとき、アクリロニトリル単量体に由来する単量体単位を、25~40質量%含むことができる。カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体中のアクリロニトリル単量体に由来する単量体単位の含有率は、例えば、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を100質量%としたとき、ブタジエン単量体に由来する単量体単位を、52~75質量%含むことができる。カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体中のブタジエン単量体に由来する単量体単位の含有率は、例えば、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を100質量%としたとき、カルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位を、0.5~8質量%含むことができる。カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体中のカルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位の含有率は、例えば、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の共重合比は、アクリロニトリル25質量%~40質量%、ブタジエン52質量%~75質量%、カルボキシ基含有ビニル単量体0.5質量%~8質量%であってよく、好ましくはアクリロニトリル31質量%~36質量%、ブタジエン59質量%~69質量%、カルボキシ基含有ビニル単量体0.8質量%~7質量%である。
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を100質量%としたとき、アクリロニトリル単量体に由来する単量体単位、ブタジエン単量体に由来する単量体単位、カルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位を合計で90質量%以上含むことができ、95質量%以上含むことが好ましく、98質量%以上含むことがより好ましい。
【0020】
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を100質量%としたとき、ハロゲン含有率を0.2質量%未満とすることができ、0.1質量%未満であることが好ましい。本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、ハロゲンを含まないものとすることもできる。
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、アクリロニトリル単量体に由来する単量体単位、ブタジエン単量体に由来する単量体単位、カルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位から構成されるものとすることもできる。
【0021】
カルボキシ基含有ビニル単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸からなる群から選ばれる少なくとも1つとすることができ、メタクリル酸を含むことが好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体は、水中に分散しているものとすることができ、単量体をロジン酸又はアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤の存在下で乳化重合することで得られるラテックスとできる。カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を含むラテックスは、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体を主要な成分として含み、水等の溶媒を含むことができ、その他乳化重合時に用いる添加剤等を含むことができる。本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックスは、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス100質量%に対し、ロジン酸又はアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上の乳化剤とカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体との合計である固形分が、40~50質量%であることが好ましく、42~46質量%であることがより好ましい。
【0023】
<カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)>
本実施形態に係るカルボキシ変性クロロプレン共重合体は、クロロプレン単量体に由来する単量体単位とカルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位を含む共重合体のことである。また、本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性クロロプレン共重合体は、2-クロロ-1,3-ブタジエン(以下クロロプレン単量体とも記す)と、カルボキシ基含有ビニル単量体との共重合体、または、クロロプレン単量体と、カルボキシ基含有ビニル単量体と、これらと共重合可能な他の単量体との共重合体であり、他の単量体としては、1-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、硫黄などを挙げることができ、他の単量体として、これらを2種類以上併用してもよい。
【0024】
カルボキシ変性クロロプレン共重合体が、クロロプレン単量体及びカルボキシ基含有ビニル単量体以外の他の単量体由来の単量体単位を含む場合、カルボキシ変性クロロプレン共重合体は、カルボキシ変性クロロプレン共重合体全体を100質量%とした時、クロロプレン単量体に由来する単量体単位を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。
【0025】
カルボキシ基含有ビニル単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びフマル酸からなる群から選択される少なくとも1つとすることができ、メタクリル酸を含むことが好ましい。
【0026】
カルボキシ変性クロロプレン共重合体中のカルボキシ基含有ビニル単量体の共重合量は、カルボキシ変性クロロプレン共重合体100質量%に対し、0.5~5.0質量%とすることができ、1.0~4.0質量%が好ましい。カルボキシ変性クロロプレン共重合体中のカルボキシ基含有ビニル単量体由来の単量体単位の含有率は、カルボキシ変性クロロプレン共重合体を100質量%としたとき、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
カルボキシ変性クロロプレン共重合体中のクロロプレン単量体由来の単量体単位の含有率は、カルボキシ変性クロロプレン共重合体を100質量%としたとき、50~99.5質量%とすることができ、特に好ましくは95.0~99.5質量%である。クロロプレン単量体由来の単量体単位の含有率は、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、95.5、96、96.5、97、97.5、98、98.5、99、99.5質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)は、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を100質量%としたとき、クロロプレン単量体(B-1)に由来する単量体単位を95.0~99.5質量%、カルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)に由来する単量体単位を0.5~5.0質量%含むことができる。
【0027】
カルボキシ変性クロロプレン共重合体中のクロロプレン単量体及びカルボキシ基含有ビニル単量体以外の単量体単位の含有率は、カルボキシ変性クロロプレン共重合体を100質量%としたとき、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性クロロプレン共重合体は、クロロプレン単量体及びカルボキシ基含有ビニル単量体以外の単量体単位を含まないものとすることもできる。
【0028】
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)は、該カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックス組成物を、130℃、30分で加硫して得られた加硫後の浸漬成形体のJIS K6251に準拠して測定した破断強度が8MPa以上、破断伸びが600%以上であることが好ましい。破断強度は、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。破断伸びは、例えば、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
なお、上記カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックス組成物からなる浸漬成形体は、少なくともカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)と金属酸化物(C)を含み、さらに加硫剤を含むものとできる。また、上記の浸漬成形体はさらに加硫促進剤を含むこともできる。また、上記の浸漬成形体はさらに老化防止剤を含むこともできる。上記の浸漬成形体及び加硫後の浸漬成形体の製造方法は、実施例の方法に準じて得ることができる。また、厚みは、一例として、0.10~0.30mmとできる。
【0030】
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、クロロプレン単量体に由来する単量体単位を含み、カルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位を含まないクロロプレン系重合体を含むこともできる。一例として、本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、クロロプレン単量体単位から構成されるクロロプレン重合体を含むこともできる。
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、カルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位を含まないクロロプレン系重合体よりも、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を多く含むことが好ましい。重合体ラテックス組成物に含まれる、カルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位を含まないクロロプレン系重合体の含有率は、重合体ラテックス組成物中に含まれるカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)とカルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位を含まないクロロプレン系重合体の合計100質量%に対して、50質量%未満であることが好ましく、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)の製造方法は、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)及びカルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)を含む原料、または、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)、カルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)、及び、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体を含む原料を、純水、連鎖移動剤、乳化剤、pH調整剤、及び開始剤の存在下、重合温度5~55℃、重合転化率60%~99%で重合してカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックスを得る、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)重合工程を含む。重合工程においては、さらに、分散剤及び/又は還元剤を添加することもできる。
【0032】
本発明の実施形態に係るカルボキシ変性クロロプレン共重合体を製造する際は、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の重合方法により原料単量体を重合することができる。これらの重合方法の中でも、制御しやすく、重合終了液からのポリマーを取り出しやすく、重合速度が比較的速い等、種々の利点がある乳化重合が好適である。
【0033】
乳化重合は、ラジカル重合の一種であり、原料単量体を、連鎖移動剤、水、アルカリ(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物)等のpH調整剤、乳化剤、分散剤、還元剤(例えば亜硫酸水素ナトリウム)、重合開始剤などと共に反応缶中に投入して重合させる方法である。
【0034】
連鎖移動剤は、通常のクロロプレンの乳化重合に使用されるものを使用することができる。連鎖移動剤の具体例としては、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類;ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサンドゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類などが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の使用量は、単量体100質量部に対し、好ましくは0.01~1質量部である。
【0035】
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等が挙げられる。アニオン性乳化剤としては、牛脂脂肪酸カリウム、部分水添牛脂脂肪酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム、水添ロジン酸カリウム、水添ロジン酸ナトリウム等の樹脂酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩などが挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、ポリエチレングリコールエステル型乳化剤、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、アニオン性乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。これらの乳化剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体100質量部に対し、好ましくは0.5~6.5量部である。
【0036】
分散剤としては、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などが挙げられる。分散剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。分散剤の使用量は、単量体100質量部に対し、好ましくは0.1~3.0質量部である。
重合工程においては、乳化剤及び分散剤を用いることがより好ましい。
【0037】
pH調整剤としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。pH調整剤は、これら単体だけでなく2種以上のものを併用してもよい。pH調整剤の中でも、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムを用いると、pHの値を大きくする効果が高いため好ましい。pH調整剤の添加量は、単量体100質量部に対して、0.01~2.0質量部とすることができる。
【0038】
還元剤としては、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム等を挙げることができる。還元剤の添加量は、単量体100質量部に対して、0.1~4.0質量部とすることができる。
【0039】
重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物類などを用いることができる。これらの重合開始剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は、単量体100質量部に対し、好ましくは0.01~10質量部である。
【0040】
乳化重合する際に使用する水の量は、単量体100質量部に対し、好ましくは50~300質量部、より好ましくは80~150質量部である。
【0041】
重合温度は、特に限定されるものではないが、カルボキシ変性クロロプレン共重合体の柔軟性の経時的安定性を保持しやすい観点から、好ましくは5~55℃の温度範囲であり、より好ましくは10~50℃の温度範囲である。重合温度は、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0042】
原料単量体の重合率(重合転化率)は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更により好ましくは80%以上である。上限は、例えば、99%以下とできる。重合転化率は、例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、99%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。重合転化率をこの範囲内にすることで、カルボキシ変性クロロプレン共重合体の固形分及び製造時の重合時間が適切となり生産性に優れる。
【0043】
原料単量体の重合率が目標の重合率に達し、重合を停止する際に添加する重合停止剤としては、例えば、チオジフェニルアミン、4-tert-ブチルカテコール、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ジエチルヒドロキシルアミン等を用いることができる。
【0044】
重合後に未反応単量体を除去した後、濃縮操作により、固形分濃度を最適な範囲に調節する。固形分濃度は40~50質量%の範囲であることが好ましい。
【0045】
以上の製造方法で、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックスを得ることができる。なお、本発明の一実施形態に係るカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックスは、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)と結合していない遊離カルボキシル基含有ビニル単量体を含むことができる。遊離カルボキシル基含有ビニル単量体の含有量は、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)100質量%に対し、0.1~2.0質量%とできる。なお、遊離カルボキシル基含有ビニル単量体の含有量は、液体クロマトグラフィーで評価できる。
【0046】
本実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、重合体ラテックス組成物中のカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)の成分比が(A)/(B)=90/10~50/50である。重合体ラテックス組成物中のカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)の合計を100質量%としたとき、重合体ラテックス組成物中のカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)の含有率は、10~50質量%であり、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明に係る重合体ラテックス組成物は、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)と金属酸化物(C)を含み、重合体ラテックス組成物中のカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)の成分比(A)/(B)を特定の範囲にすることで、優れた破断強度でありながら、柔軟性と破断伸びの発現が可能となる。
【0047】
<金属酸化物(C)>
本発明に係る重合体ラテックス組成物は、金属酸化物(C)を含有する。
上記したように、本発明に係る重合体ラテックス組成物に含まれるアクリロニトリル・ブタジエン共重合体と、クロロプレン共重合体は、共にカルボキシ基含有ビニル単量体に由来する単量体単位を有する。この各共重合体に含まれるカルボキシ基が、金属酸化物に由来する金属イオンによりイオン架橋されることによって、優れた破断強度、柔軟性、及び破断伸びを有する浸漬成形体を得ることができると考えられる。
【0048】
金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化鉛、四酸化三鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化カルシウムなどが挙げられる。金属酸化物の含有量は、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)間の架橋がより充分に進行しやすく、柔軟性、破断伸び、破断強度、モジュラス等に優れる浸漬成形体を得やすい観点から、重合体ラテックス組成物の固形分100質量部に対して0.5~10質量部であってよい。なお、重合体ラテックス組成物の固形分とは、重合体ラテックス組成物から水等の揮発分を取り除いた全ての成分であり、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)や、乳化重合時に添加した各種添加物の不揮発分を含むものである。
金属酸化物の含有率は、例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。金属酸化物は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、pH調整剤、凍結安定剤、乳化剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防腐剤等を含有してよい。
pH調整剤、乳化剤等としては、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックス製造時に用いるpH調整剤及び乳化剤等を用いることができる。
【0050】
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤(酸化防止剤、例えばオゾン老化防止剤)、充填剤、可塑剤、顔料、着色剤、湿潤剤、消泡剤等の添加剤を含有してよい。本実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)及び金属酸化物(C)とこれらの添加剤とを含有する重合体ラテックス組成物とすることができ、浸漬成形用の重合体ラテックス組成物であってよい。本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、これらの添加剤を混合する前の態様として、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤、顔料、着色剤、湿潤剤、及び、消泡剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を含有しない態様であってもよい。
【0051】
加硫剤としては、硫黄(分子状硫黄。例えば、S8等の環状硫黄)などが挙げられる。加硫剤の含有量は、架橋が充分に進行しやすく、浸漬成形体の破断強度、モジュラス等を好適に得やすい観点、及び、浸漬成形体の好適な触感を得やすい観点から、重合体ラテックス組成物の固形分100質量部に対して0.5~10質量部であってよい。加硫剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
加硫促進剤としては、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、グアニジン系、キサントゲン酸塩系、チアゾール系等の加硫促進剤が挙げられる。一例としては、ジチオカルバミン酸塩系の加硫促進剤を用いることができ、ジチオカルバミン酸塩系の加硫促進剤としては、ジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、N-エチル-N-フェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等が挙げられる。
加硫促進剤は、適切な強度が得られる観点から、重合体ラテックス組成物の固形分100質量部に対して0.5~5質量部であってよい。加硫促進剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
老化防止剤としては、オゾン老化防止剤、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤を挙げることができる。アミン系老化防止剤としては、オクチル化ジフェニルアミン、p-(p-トルエン-スルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'-ジフェニル-p-フェニレジアミン(DPPD)、N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)等のジフェニルアミン系化合物などが挙げられる。オゾン老化防止剤としては、N,N'-ジフェニル-p-フェニレジアミン(DPPD)、N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)等が挙げられる。老化防止剤としては、医療用手袋等のように外観(特に色調)又は衛生性が重視される場合には、ビンダードフェノール系酸化防止剤を用いることができる。一例としては、DCPD とp-クレゾールのブチル化反応物を挙げることができる。老化防止剤の含有量は、老化防止効果を充分に得やすい観点から、重合体ラテックス組成物の固形分100質量部に対して0.1~5質量部であってよい。
【0054】
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、重合体ラテックス組成物を含む浸漬成形体を120℃、20分で加硫して得られた加硫後の浸漬成形体のJIS K6251に準拠して測定した破断強度が17MPa以上であることが好ましい。破断強度は、例えば、17、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0055】
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、重合体ラテックス組成物を含む浸漬成形体を120℃、20分で加硫して得られた加硫後の浸漬成形体のJIS K6251に準拠して測定した破断伸びが550%以上であることが好ましい。破断伸びは、例えば、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0056】
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、重合体ラテックス組成物を含む浸漬成形体を120℃、20分で加硫して得られた加硫後の浸漬成形体のJIS K6251に準拠して測定した100%伸長時モジュラスが、2.5MPa以下であることが好ましい。100%伸長時モジュラスは、例えば、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0057】
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、重合体ラテックス組成物を含む浸漬成形体を120℃、20分で加硫して得られた加硫後の浸漬成形体のJIS K6251に準拠して測定した300%伸長時モジュラスが、5.0MPa以下であることが好ましい。300%伸長時モジュラスは、例えば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0058】
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物は、重合体ラテックス組成物を含む浸漬成形体を120℃、20分で加硫して得られた加硫後の浸漬成形体のJIS K6251に準拠して測定した500%伸長時モジュラスが、15.0MPa以下であることが好ましい。500%伸長時モジュラスは、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
上記の浸漬成形体は、少なくともカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)と金属酸化物(C)を含み、さらに加硫剤を含むものとできる。また、上記の浸漬成形体はさらに加硫促進剤を含むこともできる。また、上記の浸漬成形体はさらに老化防止剤を含むこともできる。上記の浸漬成形体及び加硫後の浸漬成形体の製造方法は、実施例の方法で得ることができる。また、厚みは、一例として、0.06~0.07mmとできる。
【0059】
2.重合体ラテックス組成物の製造方法
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物の製造方法は、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)重合工程及び混合工程を備えるものとできる。
前記カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)重合工程では、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)及びカルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)を含む原料、または、2-クロロ-1,3-ブタジエン単量体(B-1)、カルボキシ基含有ビニル単量体(B-2)、及び、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体を含む原料を、少なくとも純水、連鎖移動剤、乳化剤、pH調整剤、及び開始剤の存在下、重合温度5~55℃、重合転化率60%~99%で重合してカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックスを得ることができ、前記混合工程では、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)を含むカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)ラテックスと、前記カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含有するカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)ラテックスを混合することができる。混合工程における混合の順番は特に制限されるものではないが、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)を含む重合体ラテックスと、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含む重合体ラテックスとをカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)の成分比(A)/(B)=90/10~50/50となるよう混合し、さらに金属酸化物(C)を添加することができる。また、混合工程では、金属酸化物(C)と、必要に応じて添加する加硫剤、加硫促進剤等の成分を含む混合液を事前に調製し、該混合液にカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)を含む重合体ラテックスと、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含む重合体ラテックスとを添加することもできる。
【0060】
3.浸漬成形体及び浸漬成形体の製造方法
本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物の浸漬成形体とできる。本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物を用いた浸漬成形体であり、本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物を浸漬成形して得ることができる。本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物を含む凝固液に基材を浸漬し、該基材上浸漬成形膜を形成することで得ることができる。
【0061】
本実施形態に係る浸漬成形体の製造方法では、本実施形態に係る重合体ラテックス組成物を浸漬成形する。本実施形態に係る浸漬成形体を製造する際の成形方法としては、公知の方法を使用することが可能であり、単純浸漬法、凝着浸漬法、感熱浸漬法、電着法等が挙げられる。製造しやすい観点、及び、一定の厚さの浸漬成形体が得られやすい観点から、凝着浸漬法を用いることができる。具体的には、凝集剤をコーティングした成形型を重合体ラテックス組成物に浸漬し、重合体ラテックス組成物を凝固させる。そして、浸出により水溶性不純物を除去した後に乾燥させ、さらに、加硫することにより浸漬成形膜(ゴム被膜)を形成した後に浸漬成形膜を離型する。これにより、フィルム状の浸漬成形体を得ることができる。
【0062】
浸漬成形体の厚さ(例えば最小の厚さ)は、0.01~0.50mm、0.02~0.20mm、又は、0.04~0.10mmであってよい。浸漬成形体の厚さは、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。浸漬成形体の厚さは、成形型を重合体ラテックス組成物に浸漬する時間、重合体ラテックス組成物の固形分濃度等によって調整することができる。浸漬成形体の厚さを薄くしたい場合、浸漬時間を短縮し、又は、重合体ラテックス組成物の固形分濃度を低くすればよい。
【0063】
4.加硫物及び加硫物の製造方法
本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物及び未加硫の浸漬成形体を加硫することにより加硫物(加硫後の浸漬成形体)を得ることができる。本発明の一実施形態に係る加硫物は、本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物及び未加硫の浸漬成形体の加硫物であり、本発明の一実施形態に係る重合体ラテックス組成物及び未加硫の浸漬成形体を加硫して得ることができる。本実施形態に係る加硫物は、フィルム状とできる。重合体ラテックス組成物及び未加硫の浸漬成形体を加硫する温度は、重合体ラテックス組成物の組成に合わせて適宜設定すればよく、100~220℃、又は、110~190℃であってよい。重合体ラテックス組成物及び未加硫の浸漬成形体を加硫する加硫時間は、ゴム組成物の組成、未加硫成形体の形状等によって適宜設定すればよく、10~60分であってよい。
【0064】
本発明の一実施形態に係る浸漬成形体及び加硫物は、柔軟性が非常に高く、また、浸漬成形体として充分な破断強度及び破断伸びを有する。本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、本実施形態に係る加硫物の成形体であってよい。本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、手袋、風船、カテーテル又は長靴であってよい。手袋としては、検査用手袋、手術用手袋、家庭用手袋等を挙げることができる。本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、破断強度に優れ、薄い手袋であっても破けにくいことに加え、改善された柔軟性及び破断伸びを有するため、例えば、使い捨ての手袋や、検査用の手袋として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
<カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)>
カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)を含むラテックスとして、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス「LX550L」(日本ゼオン社)を用いた。H-NMR測定の結果、アクリロニトリル単量体由来の単量体単位33質量%、ブタジエン由来の単量体単位61質量%、メタクリル酸由来の単量体単位6質量%の組成であった。
【0067】
<カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)の調製>
2-クロロ-1,3-ブタジエン99.0質量部、メタクリル酸1.0質量部、n-ドデシルメルカプタン0.40質量部、純水90質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:G-15)1.4質量部、水酸化ナトリウム0.16質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)1.20質量部、亜硫酸水素ナトリウム0.41質量部を混合した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加した後、重合温度45℃にて窒素気流下で重合を行った。重合率98%となった時点で、重合停止剤を加えて重合を停止させ、未反応単量体の除去し、10%KOHを添加してpHを10.5に調整した。次いで、固形分調整により固形分濃度45%のカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックスを得た。カルボキシ変性クロロプレン共重合体のH-NMR測定を行ったところ、クロロプレン由来の単量体単位99.2質量%、メタクリル酸由来の単量体単位0.8質量%のポリマー組成であった。
【0068】
次いで、これらのカルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)を含むラテックスと,カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックスを(A)/(B)=70/30(固形分の質量比)で混合して重合体ラテックスを得た。
【0069】
(実施例2)
実施例1において、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックスを調製する際に用いる単量体を2-クロロ-1,3-ブタジエン97.5質量部、メタクリル酸2.5質量部としたこと以外は実施例1と同様に重合体ラテックスを調整した。H-NMR測定を行ったところ、クロロプレン由来の単量体単位98.0質量%、メタクリル酸由来の単量体単位2.0質量%のポリマー組成であった。
【0070】
(実施例3)
実施例1において、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックスを調製する際に用いる単量体を2-クロロ-1,3-ブタジエン94.0質量部、メタクリル酸6.0質量部とし、純水を120質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.87質量部としたこと以外は実施例1と同様に重合体ラテックスを調整した。H-NMR測定を行ったところ、クロロプレン由来の単量体単位95.0質量%、メタクリル酸由来の単量体単位5.0質量%のポリマー組成であった。
【0071】
(実施例4)
重合体の混合比を(A)/(B)=90/10としたこと以外は実施例1と同様に重合体ラテックスを調整した。
【0072】
(実施例5)
重合体の混合比を(A)/(B)=50/50としたこと以外は実施例1と同様に重合体ラテックスを調整した。
【0073】
(実施例6)
実施例1において、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックスを調製する際に用いる単量体を2-クロロ-1,3-ブタジエン88.0質量部、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン9.5質量部、メタクリル酸2.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にラテックス組成物を調整した。H-NMR測定を行ったところ、クロロプレン由来の単量体単位98.0質量%、メタクリル酸由来の単量体単位2.0質量%のポリマー組成であった。
【0074】
(実施例7)
実施例1において、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックスを調製する際に用いる単量体を2-クロロ-1,3-ブタジエン97.5質量部、マレイン酸2.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にラテックス組成物を調整した。H-NMR測定を行ったところ、クロロプレン由来の単量体単位98.0質量%、マレイン酸由来の単量体単位2.0質量%のポリマー組成であった。
【0075】
(比較例1)
実施例1において、カルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックスに変えて、以下の方法で製造したクロロプレン重合体を用いた。2-クロロ-1,3-ブタジエン100質量部、n-ドデシルメルカプタン0.04質量部、純水90質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、商品名:G-15)1.4質量部、水酸化ナトリウム0.16質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)1.20質量部を混合した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加した後、重合温度45℃にて窒素気流下で重合を行った。重合率90%となった時点で、重合停止剤を加えて重合を停止させ、未反応単量体の除去、及び、固形分調整により固形分濃度45%のカルボキシ未変性クロロプレン重合体を得た。その後は実施例1と同様にラテックス組成物を調整した。
【0076】
(比較例2)
重合体の混合比を(A)/(B)=100/0としたこと以外は実施例1と同様に重合体ラテックスを調整した。
【0077】
(比較例3)
重合体の混合比を(A)/(B)=30/70としたこと以外は実施例1と同様に重合体ラテックスを調整した。
【0078】
<重合体ラテックス組成物の調製>
陶器製ボールミルを用いて、硫黄1質量部、2種酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、商品名:酸化亜鉛2種)2質量部、加硫促進剤(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、大内新興化学社製、商品名:ノクセラーBZ)2質量部、老化防止剤(フェノール系老化防止剤,オリゴマー型ヒンダードフェノール(DCPD とp-クレゾールのブチル化反応物)、OMNOVA SOLUTIONS社製、商品名:Wingstay-L)2質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.1質量部、及び、水10.7質量部を20℃で16時間混合することにより固形分濃度40%の水分散液を調製した。5%水酸化カリウム水溶液を添加し、pHを10に調整した実施例1~7、及び比較例1~3の重合体ラテックスの固形分100質量部に前記水分散液の固形分7.1質量部を混合した後、水を加えて全体の固形分濃度を13.5質量%に調整することにより重合体ラテックス組成物を作製した。
【0079】
(比較例4)
実施例1と同様に重合体ラテックスを調整した。
陶器製ボールミルを用いて、硫黄1質量部、加硫促進剤2質量部、老化防止剤2質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.1質量部、純水7.7質量部を20℃で16時間混合することにより固形分濃度40%の水分散液を調製した。5%水酸化カリウム水溶液を添加し、pHを10に調整した重合体ラテックスの固形分100質量部に前記水分散液の固形分5.1質量部を混合した後、水を加えて全体の固形分濃度を13.5質量%に調整することにより重合体ラテックス組成物を作製した。
【0080】
評価方法を以下に記載する。
<評価用フィルムの作製>
水72.7質量部、硝酸カリウム四水和物27.3質量部、及び、界面活性剤(花王株式会社製、商品名:エマルゲン109P)0.05質量部を混合することにより凝固液を得た。この凝固液に外径50mmの陶器製の円筒(材質:セラミックス、シンコー社製)を5秒間浸漬した後に円筒を取り出した。室温にて3分間乾燥させた後、70℃で1分間乾燥させた。その後、上述のラテックス組成物に円筒を23秒間浸漬した。続いて、100℃で2分間乾燥させた後、45℃の温水に1分間浸して洗浄した。その後、120℃で20分間加硫することにより、円筒の外周面等に評価用フィルム(浸漬成形体、加硫フィルム)を作製した。評価用フィルムを円筒の外周面から剥離して評価を行った。
【0081】
<評価方法>
(カルボキシ変性クロロプレン共重合体中のカルボキシ基含有ビニル単量体由来の単量体単位の共重合量)
カルボキシ変性クロロプレン共重合体ラテックスを-60℃で24時間凍結させたのち、24時間真空乾燥を行い、カルボキシ変性クロロプレン共重合体のフィルムを得た。はさみを用いてこのフィルムを2mm角に切断し、エタノール-トルエン混合溶液に浸して1時間攪拌した。熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(JMS-Q1000GC、日本電子社製)を用いて、カルボキシ基のマススペクトル成分のピークを定量分析し、カルボキシ変性クロロプレン共重合体中のカルボキシ基含有ビニル単量体の共重合割合を定量した。
【0082】
(評価用フィルムの厚さ)
試験片測厚器(高分子計器株式会社製、商品名:ASKER SDA-12)を用いて評価用フィルムの中央部の3か所の厚さ(フィルム厚)を測定し、最小の厚さを評価用フィルムの厚さとして得た。
【0083】
(評価用フィルムの物性)
JIS K 6251に準拠して評価用フィルムの100%、300%、500%伸長時モジュラス、破断強度及び破断伸びを測定した。柔軟性の指標である300%伸長時モジュラスが5.0MPa以下かつ破断伸び550%以上かつ破断強度が17.0MPa以上である場合を良好であると判断した。
【0084】
<結果>
各実施例と各比較例との対比により、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)とカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)が、成分比(A)/(B)=90/10~50/50であり、金属酸化物を含有すれば、300%伸長時モジュラスが低く柔軟性に優れ、かつ、破断伸びも大きく、かつ、高い破断強度を示すことが分かる。なお、実施例1で得られたカルボキシ変性クロロプレン共重合体(B)を含むラテックスについて、カルボキシ変性アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(A)を含むラテックスを添加しなかった以外は実施例1と同様に重合体ラテックス組成物及び浸漬成形体を作製し、130℃、30分で加硫して得られた加硫後の浸漬成形体(厚み0.10~0.30mm)について破断強度及び破断伸びを測定したところ、破断強度8MPa以上、破断伸び600%以上であることが確認された。
【0085】