(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】滑り支承
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20250212BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20250212BHJP
【FI】
F16F15/02 L
E04H9/02 331E
(21)【出願番号】P 2024110861
(22)【出願日】2024-07-10
【審査請求日】2024-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 伸介
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】西本 晃治
(72)【発明者】
【氏名】市川 康
(72)【発明者】
【氏名】引野 剛
(72)【発明者】
【氏名】川村 典久
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120345(JP,A)
【文献】特開2023-067717(JP,A)
【文献】特開2021-085454(JP,A)
【文献】特開2009-041351(JP,A)
【文献】特開2018-189204(JP,A)
【文献】国際公開第2021/124686(WO,A1)
【文献】特許第5521096(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
E04H 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体と前記上部構造体に対向する下部構造体との間に配置される滑り支承であって、
前記上部構造体に固定される上沓と、
前記下部構造体に固定される下沓と、
前記上沓及び前記下沓の間に配置され、前記上沓及び前記下沓の双方に対して水平方向に相対移動自在な支持体と、を備え、
前記上沓は球面状の第1凹球面を備え
、
前記上沓は、
前記第1凹球面が形成された板状の第1滑り板と、
前記第1滑り板が取り付けられた上沓基部と、を備え、
前記第1滑り板を前記上沓基部に引き込んで固定する引込手段を備えている、
ことを特徴とする滑り支承。
【請求項2】
前記上沓基部は、前記第1滑り板が取り付けられる表面に凹曲面を備え、
前記第1滑り板は、前記上沓基部の前記凹曲面に沿った形状で前記上沓基部に固定されている、
ことを特徴とする、請求項
1に記載の滑り支承。
【請求項3】
前記引込手段は、
前記第1滑り板の裏面に設けられるナットと、
前記上沓基部に対して前記第1滑り板が設けられた側とは反対側から挿入され、前記ナットに係合する連結ボルトと、を備え、
前記上沓基部には、前記滑り板が設けられた側の表面に前記ナットが収容される凹部が形成され、
前記連結ボルトの先端は前記ナットの厚みの範囲内に収まっている、
ことを特徴とする、請求項
1に記載の滑り支承。
【請求項4】
前記連結ボルト及び前記ナットの軸心は、前記第1滑り板に形成された前記第1凹球面の法線方向に沿う、
ことを特徴とする、請求項
3に記載の滑り支承。
【請求項5】
前記連結ボルト及び前記ナットの軸心は、鉛直方向に沿う、
ことを特徴とする、請求項
3に記載の滑り支承。
【請求項6】
前記上沓は、固定部をさらに備え、
前記第1滑り板は、環状のフランジを備え、
前記固定部は、前記フランジを
前記上沓基部に固定する、
ことを特徴とする、請求項
1に記載の滑り支承。
【請求項7】
前記固定部は、前記フランジの形状に対応し、前記フランジの周方向に連続する環状の第1固定部材を備え、
前記第1固定部材は、前記上沓基部との間に前記フランジを挟んだ状態で前記上沓基部に固定されている、
ことを特徴とする、請求項
6に記載の滑り支承。
【請求項8】
前記固定部は、前記フランジの周方向に沿って分散配置される複数の第2固定部材を備え、
前記第2固定部材は、前記上沓基部との間に前記フランジを挟んだ状態で前記上沓基部に固定されている、
ことを特徴とする、請求項
6に記載の滑り支承。
【請求項9】
前記第1滑り板は、環状のフランジを備え、
前記フランジは固定ボルトによって直接押さえつけられることにより、前記上沓基部に固定されている、
ことを特徴とする、請求項
1に記載の滑り支承。
【請求項10】
上部構造体と前記上部構造体に対向する下部構造体との間に配置される滑り支承であって、
前記上部構造体に固定される上沓と、
前記下部構造体に固定される下沓と、
前記上沓及び前記下沓の間に配置され、前記上沓及び前記下沓の双方に対して水平方向に相対移動自在な支持体と、を備え、
前記上沓は球面状の第1凹球面を備え
、
前記支持体は、前記第1凹球面に摺動する第1凸球面を備え、
前記第1凸球面は、前記第1凹球面の曲率半径より小さい曲率半径を有する、
ことを特徴とする滑り支承。
【請求項11】
前記第1凸球面の一部分の曲率半径は、前記第1凹球面の曲率半径よりも小さい、
ことを特徴とする、請求項
10に記載の滑り支承。
【請求項12】
前記支持体は摩擦材で被覆され、
前記摩擦材は、
第1繊維と、
前記第1繊維よりも引張強度が高く、かつ前記第1繊維よりも摩擦係数が高い第2繊維と、
により形成される二重織物である、
ことを特徴とする、請求項
1~10のいずれか1項に記載の滑り支承。
【請求項13】
前記支持体は、略円柱形状であり、
前記支持体の底面に位置し前記第1凹球面に摺動する第1凸球面と、
前記支持体の側面に位置する側周面と、を備え、
前記摩擦材は、前記支持体の第1凸球面から前記側周面にかけて配設され、前記側周面において固定されている、
ことを特徴とする、請求項
12に記載の滑り支承。
【請求項14】
前記支持体は、前記第1凹球面に摺動する第1凸球面を備え、
前記第1凸球面の曲率半径は、前記第1凹球面の曲率半径と等しい、
ことを特徴とする、請求項
1~9のいずれか1項に記載の滑り支承。
【請求項15】
前記支持体は、略円柱形状であり、
前記支持体の底面に位置し前記第1凹球面に摺動する第1凸球面と、
前記支持体の側面に位置する側周面と、を備え、
前記第1凸球面と前記側周面とがなす環状の第1稜線は、前記支持体の軸を含む断面における形状が曲線である、
ことを特徴とする請求項
1~10のいずれか1項に記載の滑り支承。
【請求項16】
前記支持体は、摩擦材で被覆され、
前記摩擦材は、前記支持体の前記第1凸球面から前記側周面にかけて配設され、前記側周面において固定されている、
ことを特徴とする、請求項
15に記載の滑り支承。
【請求項17】
前記上沓は、前記第1凹球面の外周縁を囲む環状の段部を備えている、
ことを特徴とする、請求項
1~10のいずれか1項に記載の滑り支承。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、滑り支承に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震国であるわが国においては、ビルや橋梁、高架道路、戸建の住宅といった様々な構造物に対して、地震力に抗する技術、構造物に入る地震力を低減する技術など、様々な耐震技術や免震技術、制震技術が開発され、各種構造物に適用されている。中でも免震技術は、構造物に入る地震力そのものを低減する技術であることから、地震時の構造物の振動は効果的に低減される。この免震技術を概説すると、下部構造物である基礎と上部構造物との間に免震装置を介在させ、地震による基礎の振動の上部構造物への伝達を低減し、上部構造物の振動を低減して構造安定性を保証するものである。尚、この免震装置は、地震時のみならず、構造物に対して常時作用する交通振動の上部構造物への影響低減にも効果を発揮する。
【0003】
免震装置には、鉛プラグ入り積層ゴム支承装置や高減衰積層ゴム支承装置、積層ゴム支承とダンパーを組み合わせた装置、滑り免震装置など、様々な形態の装置が存在している。
特許文献1には、すべり板の表面上にすべり材を摺動可能に配置した構成とされ、構造物とその支持構造物との間に介装されることにより、構造物の鉛直荷重を支持しつつ該構造物を支持構造物に対して所定の摺動抵抗を与えつつ相対水平変位可能に支持するためのすべり支承装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている前記すべり支承装置は、すべり板が平面状である平面滑り免震装置である。
しかしながら、平面滑り免震装置が備える滑り支承は復元力を有していないため、地震発生時等に自己復帰することができない。従って、地震発生後に滑り支承を手作業で地震発生前の位置に戻す必要がある。言い換えれば、平面滑り免震装置はメンテナンス性能に課題を有している。
【0006】
本開示では、自己復帰可能であり、高いメンテナンス性能を有する滑り支承を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、前記課題を解決するためになされたもので、以下の手段を提案している。
本開示の一態様に係る滑り支承は、上部構造体と上部構造体に対向する下部構造体との間に配置される滑り支承であって、上部構造体に固定される上沓と、下部構造体に固定される下沓と、上沓及び下沓の間に配置され、上沓及び下沓の双方に対して水平方向に相対移動自在な支持体と、を備え、上沓は球面状の第1凹球面を備え、下沓は球面状の第2凹球面を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、自己復帰可能であり、高いメンテナンス性能を有する滑り支承を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係る滑り支承の断面図である。
【
図3】フランジと支持体の位置関係を示す模式図である。
【
図4】シミュレーションにより算出された支持体及びフランジに負荷されるひずみの分布を示す図である。
【
図5】ナットに係合する連結ボルト付近を示す断面図である。
【
図6】第1凸球面を被覆する摩擦材の構造の一例を示した模式図である。
【
図7】本開示の第1変形例に係る滑り支承であって、引込手段を備えていない滑り支承の断面図である。
【
図8】本開示の第2変形例に係る滑り支承であって、固定部が複数の第2固定部材を備えている場合の滑り支承の分解斜視図である。
【
図9】本開示の第3変形例に係る滑り支承であって、上沓が固定部を備えていない場合の滑り支承の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本開示の一実施形態に係る滑り支承100について説明する。滑り支承100は、
図1に示すように、上部構造体Hと上部構造体Hに対向する下部構造体Lとの間に配置される滑り支承である。上部構造体H及び下部構造体Lは、鉄筋コンクリート製又は鋼製である柱と、柱の上面又は下面に配設されている鋼製のベースプレートと、を有している。
図1は、本開示の一実施形態に係る滑り支承100の断面図である。滑り支承100は、上沓10と、引込手段23と、下沓27と、支持体40と、を備えている。
【0011】
以下では、上沓10の中心軸線に沿う方向を軸方向といい、上沓10を軸方向から見た平面視で、前記中心軸線と交差する方向を径方向という。また、前記平面視で前記中心軸線回りに周回する方向を周方向という。
また、径方向の外側、径方向の内側は、それぞれ以下のように規定される。前記平面視で、径方向において中心軸線から遠ざかる側は、径方向の外側である。前記平面視で、径方向において中心軸線に近づく側は、径方向の内側である。
【0012】
上沓10は、上部構造体Hに固定されている。詳細には、上沓10は、上部構造体Hのベースプレートに固定されている。上沓10は、上沓基部11と、第1滑り板16と、固定部24と、を備えている。
上沓基部11は、平面視矩形形状である。上沓基部11は、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)、鋳鋼材、又は鋳鉄等から形成されている。
上沓基部11には、凹曲面12が形成されている。凹曲面12は、凹球状で平面視円形形状である。なお、上沓基部11の外周縁は、
図1及び
図2に示すように凹球状ではなく、鉛直方向に一定の厚み(位置によらず同程度の厚み)を有している。
図2は、滑り支承100のうち下沓27を省略した分解斜視図である。
【0013】
さらに、上沓基部11には、第1凹部13と、第2凹部14と、第3凹部15と、が形成されている。
第1凹部13は、詳細には、後述する第1滑り板16が設けられる側の上沓基部11の面に形成されている。第1凹部13には、第1滑り板16の裏面において突出する状態で固定された、後述するナット22が収容される。
第2凹部14は、詳細には、第1凹部13が形成されている側とは反対側の上沓基部11の面に形成されている。第2凹部14には、後述する連結ボルト21が収容される。
第3凹部15は、
図2に示すように、前記上沓基部11の周縁部に各々形成されている。第3凹部15には、後述する第1固定部材19を固定するための固定ボルト20が挿入される。
なお、上沓基部11に形成される第1凹部13、第2凹部14、及び第3凹部15の個数は特に限定されない。
【0014】
第1滑り板16は、後述する連結ボルト21により上沓基部11に連結されている。詳細な構成は後述するが、
図5に示すように、連結ボルト21のねじ頭が第2凹部14の凹入底部で位置決めされているため、連結ボルト21をナット22に対して締め付けることで、第1滑り板16は、複数の部分において上沓基部11に引き寄せられ、第1滑り板16が上沓基部11の凹曲面12に押圧された状態となる。これにより、第1滑り板16は、上沓基部11の凹曲面12の形状に沿った形状で上沓基部11に固定される。
【0015】
第1滑り板16は、厚みを有する板状の部材である。第1滑り板16は、平面視円形形状である。
第1滑り板16は、例えばステンレス材(SUS材)により形成されている。第1滑り板の厚みは1mm以上である。第1滑り板16の板材としては、例えば3mm乃至10mm程度の厚みの板材が適用される。
第1滑り板16は、例えばプレスにより湾曲成形されている。さらに、第1滑り板16は上沓基部11とは別体とされた状態で成形される。従って、例えば、上沓基部11ではなく第1滑り板16のみを加工したい場合等において、大重量の上沓基部11と一緒に取り扱わなくて済むので、より容易に第1滑り板16を取り扱うことができる。
【0016】
第1滑り板16には、第1凹球面17及びフランジ18が形成されている。
第1凹球面17は、球状で平面視円形形状である。
【0017】
フランジ18は、第1凹球面17の外周縁を囲むように円環状に形成されている。フランジ18は、第1滑り板16において第1凹球面17に対し、径方向に環状の段部Gをなしている。本実施形態では、
図3に示すように、フランジ18及び第1凹球面17における第1滑り板16の板厚の違いによって、段部Gが形成されている。
段部Gは、
図3(b)に示すように、支持体40が上沓10の径方向外側に飛び出すことを抑制する。
図3は、段部Gと、第1凹球面17に沿って径方向に摺動する支持体40の位置関係を示す模式図である。ここで、詳細は後述するが、支持体40は上沓10及び下沓27の双方に対して水平方向に相対移動自在である。まず、
図3(a)に示すように、支持体40が径方向外側に向かって相対移動していない場合(初期位置に位置する場合)、支持体40は、図外に位置しており、段部Gには接近していない。一方、
図3(b)に示すように、地震等によって支持体40が径方向に大きく相対移動した場合、支持体40は段部Gに接触することがある。ここで、段部Gは、第1滑り板16における第1凹球面17の端縁から、第1凹球面17に関して曲率中心が位置する側に立ち上がる環状の規制面を備えている。従って、支持体40が径方向外側に向かって相対移動し、段部Gに接触した場合、段部Gは、支持体40が径方向外側へさらに移動することを規制する。よって、設計段階で想定した規模を超える想定外の規模の地震が発生しても、支持体40が上沓10の径方向外側に飛び出すことを抑制することができる。
【0018】
支持体40が上沓10の段部Gよりも径方向外側へ移動することを、段部Gが規制する場合に、支持体40及び段部Gに負荷されるひずみの分布をシミュレーションによって算出した。
図4は、シミュレーションにより算出された、支持体40及び段部Gに負荷されるひずみの分布を示している。
図4に示すように、支持体40と段部Gとの接触部分を中心としてひずみが付加されることにより、支持体40が上沓10の径方向外側へさらに移動することをフランジ18によって規制することが可能であることが理解できる。
【0019】
なお、段部Gは、フランジ18の板厚と第1凹球面17の板厚との違いによって形成されていると説明したが、これに限定されない。段部Gは、単一又は複数の固定部材(例えば、後述する第1固定部材19や第2固定部材25)によって環状に形成されていてもよい。この場合、フランジ18における板厚は、第1凹球面17における板厚と同等であってもよい。
【0020】
固定部24は、フランジ18を上沓基部11に固定する。固定部24は、第1固定部材19を備えている。
第1固定部材19は、環状の部材である。第1固定部材19は、例えばストッパーリングと呼ばれる。第1固定部材19は、第1凹球面17のフランジ18を上沓基部11とで挟むように取り付けられている。
図2に示すように、第1固定部材19には、その周方向の全体に亘って複数の固定ボルト20が挿通されるキリ孔が形成されている。
【0021】
固定ボルト20は、第1固定部材19に形成されるキリ孔に挿通され、その先端は、上沓基部11の縁部に周方向に分散形成された複数の第3凹部15に螺合する。従って、第1固定部材19は、上沓基部11との間にフランジ18を挟んだ状態で、上沓基部11に固定される。これにより、フランジ18は、上沓基部11の環状の縁部における周方向に並ぶ複数の位置において、上沓基部11に押圧される第1固定部材19により押圧されることになる。その結果、環状のフランジ18は、周方向全体に亘って上沓基部11に押圧される。従って、フランジ18における固定ボルト20のキリ孔に押圧荷重が集中することを回避することができ、フランジ18の寿命を延ばすことができる。
【0022】
引込手段23は、第1滑り板16を上沓基部11に引き込んで固定する。引込手段23は、例えば、第1滑り板16に対して、上沓基部11に向けた引張力を付与する。本実施形態においては、引込手段23は、連結ボルト21と、ナット22と、を備えている。
図5に示すように、連結ボルト21は第2凹部14に収容される。
図5は、ナット22に係合する連結ボルト21付近を示す断面図である。連結ボルト21は、ナット22と係合する。詳細には、連結ボルト21は、上沓基部11に対して第1滑り板16が設けられる側とは反対の側から挿入され、ナット22と螺合する。
【0023】
連結ボルト21の先端は、ナット22の厚みに収まっている。
ナット22は、上述のように、第1凹部13に収容される。ナット22は、第1滑り板16の裏面、すなわち第1凹球面17が形成されている側とは反対側に溶接により設けられる。ナット22は、上述のように連結ボルト21と螺合する。ナット22が連結ボルト21と螺合することにより、第1滑り板16が上沓基部11に固定される。そのため、第1滑り板16の曲率半径の精度が求められる場合に好適な構成となる。すなわち、上沓基部11は機械加工で精度良く曲率半径の製造管理が可能であるが、第1滑り板16を上沓基部11の凹曲面12に対してはめ込むだけの構成の場合、精度良く嵌め込んだとしても第1滑り板16と上沓基部11の凹曲面12との間に僅かな隙間が空いてしまう恐れがある。その結果、第1滑り板16の曲率半径の精度が損なわれる恐れがある。この点、本実施形態の構成であれば、連結ボルト21及びナット22によって第1滑り板16を上沓基部11に引き付けるように固定することにより、第1滑り板16が上沓基部11の凹曲面12に押圧された状態とすることができ、第1滑り板16の形状を上沓基部11の凹曲面12の形状に高精度に一致させることができる。したがって、第1滑り板16の曲率半径の精度を確保できる。さらに、ナット22は第1滑り板16の裏面に設けられるため、第1滑り板16の表面に連結ボルト21を収容又は係合等させるための穴を穿孔する必要がなく、第1凹球面17の摺動性を損なうことがない。
【0024】
連結ボルト21及びナット22の軸心AXの方向は、特に限定されない。
図4は、異なる軸心AXを有する連結ボルト21及びナット22を示す断面図である。例えば、連結ボルト21及びナット22の軸心AXは、
図4(a)に示すように、第1凹球面17の鉛直方向に沿っていてもよい。ここで、例えば第1滑り板16を加工するために上沓基部11から第1滑り板16を取り外す場合には、ナット22と係合する連結ボルト21を取り外す必要がある。連結ボルト21及びナット22の軸心AXが鉛直方向に沿っている場合、連結ボルト21を鉛直方向に取り外すことができる。従って、連結ボルト21及び第1滑り板16を上沓基部11から容易に取り外し、第1滑り板16を容易に加工することができる。
さらに、例えば、連結ボルト21及びナット22の軸心AXは、
図4(b)に示すように、第1凹球面17の法線方向に沿っていてもよい。ここで、第1滑り板16が連結ボルト21及びナット22によって固定される場合、第1滑り板16には荷重がかかる。連結ボルト21及びナット22の軸心AXが第1凹球面17の法線方向に沿っている場合、前記軸心AXが第1凹球面17の法線方向以外に沿っている場合と比較して、滑り板16に均一に荷重をかけることができる。従って、滑り板16にかかる荷重を分散させることができる。
【0025】
図1に戻り、下沓27は、下沓基部28と、第2滑り板33と、固定部38と、を備えている。
下沓基部28には、凹曲面29が形成されている。さらに、下沓基部28には、第4凹部30と、第5凹部31と、第6凹部32と、が形成されている。第4凹部30、第5凹部31、及び第6凹部32は、上沓基部11に形成されている第1凹部13、第2凹部14、及び第3凹部15に対応する。
第2滑り板33には、第2凹球面34及びフランジ35が形成されている。さらに、第2滑り板33は、固定ボルト37と、を備えている。
固定部38は、第1固定部材36を備えている。
下沓27が備えるこれらの下沓基部28~固定部38までの構成は、上沓10と対応する構成であるため、説明を省略する。
【0026】
支持体40は、略円柱形状である。ここで「略円柱形状」とは、外形が凡そ円柱である形状を指す。例えば、略円柱形状は、その底面又は側面が3次元の曲率を有する形状を含んでいてもよい。
支持体40は、
図1に示すように、鉛直方向において上沓10及び下沓27の間に配置される。支持体40は、前記上沓10及び下沓27の双方に対して水平方向に相対移動自在である。よって、前記支持体40を備える滑り支承100は復元力を有している。そのため、滑り支承100は、地震等が発生した時でも自己復帰することができる。従って、地震発生後に手作業で滑り支承100を地震発生前の位置に戻す必要がない。言い換えれば、本実施形態に係る滑り支承100は、平面滑り免震装置と比較してメンテナンス性能に優れている。
支持体40は、上沓基部11と同様、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)、あるいはステンレス材(SUS材)や鋳鋼材、鋳鉄等から形成されている。支持体40は、面圧60N/mm
2(60MPa)程度の耐荷強度を有している。さらに、例えば、支持体40がSUS304から形成されている場合、支持体40の降伏荷重は206MPa以上であり、支持体40の可動が担保される荷重は120MPaである。
【0027】
支持体40は、
図2に示すように、第1凸球面41と、第2凸球面42と、側周面43と、を備えている。
第1凸球面41は、鉛直方向において上沓10を向いており、略円柱形状の支持体40の底面に位置する。第1凸球面41は、上沓10の第1凹球面17に対して摺動する。
図6に示すように、第1凸球面41及び第2凸球面42は、摩擦材44で被覆されている。
【0028】
ここで、第1凸球面41及び第1凹球面17が有する曲率半径の値は特に限定されない。
例えば、第1凸球面41は、第1凹球面17の曲率半径より小さい曲率半径を有していてもよい。ここで、支持体40が上沓10及び下沓27の双方に対して水平方向に相対移動し、第1凹球面17の外周縁付近まで支持体40が相対移動したとき、前記外周縁にはひずみが発生する。よって、第1凸球面41が第1凹球面17の曲率半径より小さい曲率半径を有している場合、第1凹球面17の外周縁でひずみが極大化することを回避することができる。
さらに、例えば、第1凸球面41のうち一部分の曲率半径が、第1凹球面17の曲率半径よりも小さくてもよい。この場合、第1凸球面41の全面の曲率半径が第1凹球面17の曲率半径よりも小さい場合と比較して、支持体40の第1稜線47及び第2稜線48におけるひずみの極大化を抑制でき、支持体40が摺動する際に支持体40の第1凸球面41や第2凸球面42の縁部において、摩擦材44の摩耗が極端に進行してしまうことを抑制できる。そのため、摩擦材44の交換の頻度を低減でき、メンテナンス性を向上させることができる。
また、例えば、第1凸球面41の曲率半径は、前記第1凹球面17の曲率半径と等しくてもよい。この場合、支持体40は、第1凹球面17に沿って適切に摺動することができる。従って、支持体40の摺動性を高めることができる。
【0029】
第2凸球面42は、鉛直方向において下沓27を向いている底面に位置する。下沓27が備える第2凹球面34に摺動する。また、第2凸球面42の曲率半径と第2凹球面34の曲率半径との関係は、第1凸球面41の曲率半径と第1凹球面17の曲率半径との関係と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0030】
側周面43は、略円柱形状の支持体40の側面に位置する。詳細には、側周面43は、支持体40の側面全周に亘って位置している。
側周面43と第1凸球面41とは環状の第1稜線47をなし、側周面43と第2凸球面42とは環状の第2稜線48をなしている。さらに、これらの稜線は、
図2及び
図3(b)に示すように、支持体40の中心軸を含む断面において曲線形状である。ここで、支持体40が上沓10及び下沓27の双方に対して水平方向に相対移動し、第1凹球面17の外周縁付近まで支持体40が相対移動したとき、前記外周縁にはひずみが発生する。一方、第1稜線47及び第2稜線48は、支持体40の中心軸を含む断面において曲線形状である。従って、前記外周縁に発生するひずみを抑制することができる。
【0031】
摩擦材44は支持体40を被覆している。詳細には、摩擦材44は支持体40の第1凸球面41及び第2凸球面42(摺動面)から側周面43に亘って配設され、支持体40を被覆している。さらに、摩擦材44は、側周面43において固定されている。従って、支持体40から摩擦材44が剥離する虞を低減させることができる。よって、摩擦材44のメンテナンス性を高めることができる。
【0032】
なお、支持体40への摩擦材44の固定方法は特に限定されない。例えば、摩擦材44は、支持体40に接着剤を介して固定されてもよい。さらに、例えば、摩擦材44は、側周面43に対して環状の締結バンド(不図示)により固定されていてもよい。
【0033】
上記したように、第1稜線47及び第2稜線48は、支持体40の中心軸を含む断面において曲線形状である。従って、この場合、摩擦材44を支持体40の第1凸球面41から側周面43にかけて、及び、第2凸球面42から側周面43にかけて、容易に配置することができる。
【0034】
摩擦材44は、第1繊維45と、第2繊維46と、により形成される二重織物である。よって、摩擦材44が例えば一重織物である場合と比較して、本実施形態の摩擦材44は高い面圧対抗性を有している。従って、摩擦材44に被覆される支持体40は高い摺動耐久性を有している。
第2繊維46は、第1繊維45よりも引張強度が高い。さらに、第2繊維46は、第1繊維45よりも摩擦係数が高い。例えば、第1繊維45はPTFE繊維であってもよく、第2繊維46はPPS繊維であってもよい。さらに、例えば、第1繊維45及び第2繊維46は、プラスチック材料から成形される繊維であってもよい。具体的には、第1繊維45及び第2繊維46は、アラミド繊維や高強度高密度ポリエチレン繊維等の高強度繊維であってもよい。
【0035】
図5は、第1凸球面41を被覆する摩擦材44の構造の一例を示した模式図である。以下、
図5を参照して摩擦材44の構造を説明する。
図5に示すように、第1繊維45は第1緯糸45a及び第1経糸45bを備えている。
同様に、第2繊維46は第2緯糸46a及び第2経糸46bを備えている。
第1繊維45は、第2繊維46よりも第1凸球面41に対してより鉛直方向上方に配設される。第1繊維45の第1経糸45bは、第1緯糸45aを巻き込むようにして織り込まれる。
第2繊維46の第2経糸46bは、第2緯糸46aを巻き込むようにして織り込まれる。
さらに、第1繊維45の第1経糸45bは、第1経糸45bよりも鉛直方向下方に位置する第2繊維46の第2緯糸46aも巻き込むようにして織り込まれる。
【0036】
以上説明した本実施形態の滑り支承100の構成によれば、滑り支承100は、上部構造体Hに固定される上沓10と、下部構造体Lに固定される下沓27と、上沓10及び下沓27の間に配置され、上沓10及び下沓27の双方に対して水平方向に相対移動自在な支持体40と、を備えている。よって、支持体40を備える滑り支承100は復元力を有しているため、地震等が発生した時でも自己復帰することができる。従って、地震発生後に手作業で滑り支承100を地震発生前の位置に戻す必要がない。言い換えれば、本実施形態に係る滑り支承100は、平面滑り免震装置と比較して、メンテナンス性能に優れている。
【0037】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、上沓10は、第1凹球面17が形成された板状の第1滑り板16と、第1滑り板16が取り付けられた上沓基部11と、を備えている。従って、第1滑り板16は上沓基部11とは別体とされた状態で成形される。よって、例えば、上沓基部11ではなく第1滑り板16のみを加工したい場合等において、大重量の上沓基部11と一緒に取り扱わなくて済むので、より容易に第1滑り板16を取り扱うことができる。
【0038】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、上沓基部11は、第1滑り板16が取り付けられる表面に凹曲面12を備え、第1滑り板16は、上沓基部11の凹曲面12に沿った形状で上沓基部11に固定されている。よって、例えば、仮に第1滑り板16が所望の曲率を有していない場合であっても、第1滑り板16を上沓基部11の凹曲面12によって矯正し、第1滑り板16を上沓基部11の凹曲面12に沿わせた形状とすること等ができる。この場合、例えば、第1滑り板16の加工精度を緩和することが可能になり、第1滑り板16を加工し易くなる。
【0039】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、滑り支承100は、第1滑り板16を上沓基部11に引き込んで固定する引込手段23を備えている。従って、引込手段23によって第1滑り板16をより強固に上沓基部11に固定することができる。
【0040】
本実施形態の滑り支承100が備える引込手段23は、第1滑り板16の裏面に設けられるナット22と、上沓基部11に対して第1滑り板16が設けられた側とは反対側から挿入され、ナット22に係合する連結ボルト21と、を更に備える。従って、ナット22が連結ボルト21と係合することにより、第1滑り板16が上沓基部11に固定される。そのため、第1滑り板16の曲率半径の精度が求められる場合に好適な構成となる。すなわち、上沓基部11は機械加工で精度良く曲率半径の製造管理が可能であるが、第1滑り板16を上沓基部11の凹曲面12に対してはめ込むだけの構成の場合、精度良く嵌め込んだとしても第1滑り板16と上沓基部11の凹曲面12との間に僅かな隙間が空いてしまう恐れがある。その結果、第1滑り板16の曲率半径の精度が損なわれる恐れがある。この点、上記構成によれば、連結ボルト21及びナット22によって第1滑り板16を上沓基部11に引き付けるように固定することにより、第1滑り板16が上沓基部11の凹曲面12に押圧された状態とすることができ、第1滑り板16の形状を上沓基部11の凹曲面12の形状に高精度に一致させることができる。したがって、第1滑り板16の曲率半径の精度を確保できる。
さらに、ナット22は第1滑り板16の裏面に設けられるため、第1滑り板16の表面に連結ボルト21を収容又は係合等させるための穴を穿孔する必要がなく、第1凹球面17の摺動性を損なうことがない。
【0041】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、連結ボルト21及びナット22の軸心AXは、第1滑り板16に形成された第1凹球面17の法線方向に沿っている。ここで、第1滑り板16が連結ボルト21及びナット22によって固定される場合、第1滑り板16には荷重がかかる。連結ボルト21及びナット22の軸心AXが第1凹球面17の法線方向に沿っている場合、前記軸心AXが第1凹球面17の法線方向以外に沿っている場合と比較して、滑り板16に均一に荷重をかけることができる。従って、滑り板16にかかる荷重を分散させることができる。
【0042】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、連結ボルト21及びナット22の軸心AXは、鉛直方向に沿っている。
ここで、例えば第1滑り板16を加工するために上沓基部11から第1滑り板16を取り外す場合には、ナット22と係合する連結ボルト21を取り外す必要がある。連結ボルト21及びナット22の軸心AXが鉛直方向に沿っている場合、連結ボルト21を鉛直方向に取り外すことができる。
従って、連結ボルト21及び第1滑り板16を上沓基部11から容易に取り外し、第1滑り板16を容易に加工することができる。
【0043】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、上沓10は、固定部24をさらに備え、第1滑り板16は、環状のフランジ18を備え、固定部24は、フランジ18を上沓基部11に固定している。よって、フランジ18を利用して第1滑り板16を上沓基部11に固定することができる。
【0044】
本実施形態の滑り支承100が備える固定部24は、フランジ18の形状に対応し、フランジ18の周方向に連続する環状の第1固定部材19を備え、第1固定部材19は、上沓基部11との間にフランジ18を挟んだ状態で上沓基部11に固定されている。これにより、フランジ18は、上沓基部11に周方向全体に亘って押圧され、上沓基部11にフランジ18を安定して固定することができる。
【0045】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、支持体40は摩擦材44で被覆され、摩擦材44は、第1繊維45と、第1繊維45よりも引張強度が高く、かつ第1繊維45よりも摩擦係数が高い第2繊維46と、により形成される二重織物である。従って、摩擦材44が例えば一重織物である場合と比較して、本実施形態の摩擦材44は高い面圧対抗性を有している。よって、摩擦材44に被覆される支持体40は高い摺動耐久性を有している。
【0046】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、支持体40は、略円柱形状であり、支持体40の底面に位置し第1凹球面17に摺動する第1凸球面41と、支持体40の側面に位置する側周面43と、を備え、第1凸球面41は摩擦材44で被覆されている。摩擦材44は、支持体40の第1凸球面から側周面43にかけて配設され、側周面43において固定されている。従って、支持体40から摩擦材44が剥離する虞を低減させることができる。よって、摩擦材44のメンテナンス性を高めることができる。
【0047】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、支持体40は、第1凹球面17に摺動する第1凸球面41を備え、第1凸球面41は、第1凹球面17の曲率半径より小さい曲率半径を有する。
ここで、支持体40が上沓10及び下沓27の双方に対して水平方向に相対移動し、第1凹球面17の外周縁付近まで支持体40が相対移動したとき、前記外周縁にはひずみが発生する。
よって、第1凸球面41が第1凹球面17の曲率半径より小さい曲率半径を有している場合、第1凹球面17の外周縁でひずみが極大化することを回避することができる。
【0048】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、第1凸球面41の一部分の曲率半径は、第1凹球面17の曲率半径よりも小さい。この場合、第1凸球面41の全面の曲率半径が第1凹球面17の曲率半径よりも小さい場合と比較して、支持体40の第1稜線47及び第2稜線48におけるひずみの極大化を抑制でき、支持体40が摺動する際に支持体40の第1凸球面41や第2凸球面42の縁部において摩擦材44の摩耗が極端に進行してしまうことを抑制できる。そのため、摩擦材44の交換の頻度を低減でき、メンテナンス性を向上させることができる。
【0049】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、支持体40は、略円柱形状であり、支持体40の底面に位置し第1凹球面17に摺動する第1凸球面41と、支持体40の側面に位置する側周面43と、を備え、第1凸球面41と側周面43とがなす環状の第1稜線47は、支持体40の軸を含む断面における形状が曲線である。ここで、支持体40が上沓10及び下沓27の双方に対して水平方向に相対移動し、第1凹球面17の外周縁付近まで支持体40が相対移動したとき、前記外周縁にはひずみが発生する。一方、第1稜線47は、支持体40の中心軸を含む断面において曲線形状である。従って、前記外周縁に発生するひずみを抑制することができる。
【0050】
本実施形態の滑り支承100の構成によれば、上沓10は、第1凹球面17の外周縁を囲む環状の段部Gを備えている。従って、支持体40が径方向外側に向かって自在に相対移動し、段部Gに接触した場合、段部Gは、支持体40が径方向外側へさらに移動することを規制する。よって、段部Gは、支持体40が上沓10の径方向外側に飛び出すことを抑制することができる。
【0051】
なお、本開示の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、下沓27は、上沓10と対応する構成であるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、下沓27は、上沓10と対応せず、上沓10とは異なる構成であってもよい。さらに、例えば、下沓27が本実施形態で記載した上沓10と対応する構成であって、上沓10は本実施形態で記載した構成とは異なり、下沓27とは対応しない構成であってもよい。
【0052】
また、例えば、引込手段23は連結ボルト21及びナット22を備えていなくてもよい。従って、上沓10が備える引込手段23は、連結ボルト21及びナット22以外の手段(例えば、ナット22に代えて天面に連結ボルト21が螺合する連結孔を備えたハット型ブラケットを用いたものや、ターンバックルを用いたもの等)で第1滑り板16を上沓基部11に引き込んだ状態で固定してもよい。
また、例えば、支持体40における第1凸球面41の曲率半径は、第1凹球面17の曲率半径と等しくてもよい。この場合、支持体40は、第1凹球面17に沿って適切に摺動することができる。従って、第1凹球面17での支持体40の摺動性を高めることができる。
【0053】
(第1変形例)
さらに、例えば、滑り支承100は、引込手段23を備えていなくてもよい。すなわち、
図7に示すように、第1滑り板16の第1凹球面17の裏面の全面が、上沓基部11の凹曲面12に当接することにより、第1滑り板16は上沓基部11に固定されていてもよい。詳細には、第1滑り板16は、第1凹球面17が曲率中心側に弾性変形した状態(第1凹球面17がなす曲率が、大きくなるように弾性変形した状態)で、第1凹球面17の裏面の全面が、上沓基部11の凹曲面12に押圧されていてもよい。この時、第1滑り板16は、前記曲率中心側への弾性変形によって生ずる、前記曲率中心側とは反対側への復元力によって、第1凹球面17の裏面の全面が凹曲面12に押圧される。
図7は、引込手段23を備えていない滑り支承100の断面図である。
この場合、第1滑り板16の裏面を上沓基部11に引き込む構成と比較して、第1滑り板16において局部的な曲率の乱れを生じにくくすることができる。
上記第1凹球面17の裏面を、凹曲面12へ当接及び固定させる方法は特に限定されない。例えば、第1滑り板16は、引込手段23によって上沓基部11に引き込まれることなく、上沓基部11の凹曲面12に押し込まれている又は嵌合されていてもよい。例えば、第1滑り板16の第1凹球面17の裏面の全面は、上沓基部11の凹曲面12と接着して固定されていてもよい。
なお、
図7に示すように、滑り支承100が引込手段23を備えていない場合であっても、第1滑り板16が備えるフランジ18は、上記固定部24によって固定されていてもよく、固定ボルト20を直接押し付けることによって固定されていてもよい。この場合、フランジ18を備える第1滑り板16が上沓基部11から係脱するのを防止することができる。
【0054】
(第2変形例)
さらに、例えば、
図8に示すように、上沓10の固定部24は、第1固定部材19ではなく、複数の第2固定部材25を備えていてもよい。
図8は、固定部24が複数の第2固定部材25を備えている場合の滑り支承100の分解斜視図である。第2固定部材25は、例えば扇型であり、フランジ18の周方向に一定の長さを有している。
図8の例では、第2固定部材25は、周方向に沿って分散配置されている。この場合、第2固定部材25は、フランジ18の複数個所を、上沓基部11の外縁との間で挟むことにより、フランジ18を固定する。さらに、各第2固定部材25は、第1固定部材19と同様に、固定ボルト20が挿通され、上沓基部11におけるそれぞれが対応する第3凹部15に螺合することにより、フランジ18に固定されてもよい。
第1固定部材19がフランジ18の周方向で連続した構成を有しているのに対し、複数の第2固定部材25はフランジ18の周方向で互いに連続していない。しかしながら、各第2固定部材25は周方向に一定の長さを有しているため、第2固定部材25に固定ボルト20が挿通される場合、固定ボルト20による締め付け力を分散することができる。
【0055】
(第3変形例)
一方、上沓10は、固定部24を備えていなくてもよい。
図9は、上沓10が固定部24を備えていない場合の滑り支承100の分解斜視図である。この場合、
図9に示すように、第1滑り板16のフランジ18は、固定ボルト20が第3凹部15に直接(第1固定部材19や第2固定部材25を介さず)挿通及び螺合されることにより、上沓基部11に固定されていてもよい。
【0056】
第3変形例の滑り支承100によれば、第1滑り板16は、環状のフランジ18を備え、フランジ18は固定ボルト20によって直接押さえつけられることにより、上沓基部11に固定されている。従って、フランジ18を上沓基部11に固定するための構成をより簡素にすることができる。
【0057】
(その他の変形例)
支持体40の形状は略円柱形状ではない形状であってもよい。例えば、支持体40は四角柱や球体等の形状であってもよい。
さらに、支持体40は摩擦材44に被覆されていなくてもよい。例えば、支持体40の一部分が摩擦材44に被覆されていてもよい。また、支持体40が摩擦材44に被覆されている場合、摩擦材44は支持体40の摺動面のみにかけて配設されていてもよい。
また、上沓10は上記した第1滑り板16及び上沓基部11を備えず、一体成形されていてもよい。さらに、例えば、上沓10は上記した段部Gを備えていなくてもよい。この場合、例えば、第1凹球面17の周縁部の曲率半径を、前記周縁部以外の部分の曲率半径よりも小さくすることにより、支持体が上沓10の径方向外側に飛び出すことを抑制してもよい。
【0058】
その他、本開示の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【0059】
(付記)
<1>本開示の一態様に係る滑り支承は、上部構造体と上部構造体に対向する下部構造体との間に配置される滑り支承であって、上部構造体に固定される上沓と、下部構造体に固定される下沓と、上沓及び下沓の間に配置され、上沓及び下沓の双方に対して水平方向に相対移動自在な支持体と、を備え、上沓は球面状の第1凹球面を備え、下沓は球面状の第2凹球面を備える、ことを特徴とする。
【0060】
上記構成によれば、滑り支承は、上部構造体に固定される上沓と、下部構造体に固定される下沓と、上沓及び下沓の間に配置され、上沓及び下沓の双方に対して水平方向に相対移動自在な支持体と、を備えている。よって、前記支持体を備える滑り支承は復元力を有しているため、地震等が発生した時でも自己復帰することができる。従って、地震発生後に手作業で滑り支承を地震発生前の位置に戻す必要がない。言い換えれば、本実施形態に係る滑り支承は、平面滑り免震装置と比較して、メンテナンス性能に優れている。
【0061】
<2>上記<1>に係る滑り支承において、上沓は、第1凹球面が形成された板状の第1滑り板と、第1滑り板が取り付けられた上沓基部と、を備えている、ことを特徴とする。
【0062】
上記構成によれば、上沓は、第1凹球面が形成された板状の第1滑り板と、第1滑り板が取り付けられた上沓基部と、を備えている。従って、第1滑り板は上沓基部とは別体とされた状態で成形される。よって、例えば、上沓基部ではなく第1滑り板のみを加工したい場合等において、大重量の上沓基部と一緒に取り扱わなくて済むので、より容易に第1滑り板を取り扱うことができる。
【0063】
<3>上記<2>に係る滑り支承において、上沓基部は、第1滑り板が取り付けられる表面に凹曲面を備え、第1滑り板は、上沓基部の凹曲面に沿った形状で上沓基部に固定されている、ことを特徴とする。
【0064】
上記構成によれば、上沓基部は、第1滑り板が取り付けられる表面に凹曲面を備え、第1滑り板は、上沓基部の凹曲面に沿った形状で上沓基部に固定されている、ことを特徴とする。よって、例えば、仮に第1滑り板16が所望の曲率を有していない場合であっても、第1滑り板16を上沓基部11の凹曲面12によって矯正し、第1滑り板16を上沓基部11の凹曲面12に沿わせた形状とすること等ができる。この場合、例えば、第1滑り板16の加工精度を緩和することが可能になり、第1滑り板16を容易に加工しやすくする。
【0065】
<4>上記<2>又は<3>に係る滑り支承において、第1滑り板を上沓基部に引き込んで固定する引込手段を備えている、ことを特徴とする。
【0066】
上記構成によれば、滑り支承は、第1滑り板を上沓基部に引き込んで固定する引込手段を備えている、ことを特徴とする。従って、引込手段によって第1滑り板を滑り支承により強固に固定することができる。
【0067】
<5>上記<4>に係る滑り支承において、引込手段は、第1滑り板の裏面に設けられるナットと、上沓基部に対して第1滑り板が設けられた側とは反対側から挿入され、ナットに係合する連結ボルトと、を更に備え、上沓基部には、第1滑り板が設けられた側の表面にナットが収容される凹部が形成され、連結ボルトの先端はナットの厚みの範囲内に収まっている、ことを特徴とする。
【0068】
上記構成によれば、引込手段は、第1滑り板の裏面に設けられるナットと、上沓基部に対して第1滑り板が設けられた側とは反対側から挿入され、ナットに係合する連結ボルトと、を更に備える。従って、ナットが連結ボルトと係合することにより、第1滑り板が上沓基部に固定される。そのため、第1滑り板の曲率半径の精度が求められる場合に好適な構成となる。すなわち、上沓基部は機械加工で精度良く曲率半径の製造管理が可能であるが、第1滑り板を上沓基部の凹曲面に対してはめ込むだけの構成の場合、精度良く嵌め込んだとしても第1滑り板と上沓基部の凹曲面との間に僅かな隙間が空いてしまう恐れがある。その結果、第1滑り板の曲率半径の精度が損なわれる恐れがある。この点、上記構成によれば、連結ボルト及びナットによって第1滑り板を上沓基部に引き付けるように固定することにより、第1滑り板が上沓基部の凹曲面に押圧された状態とすることができ、第1滑り板の形状を上沓基部の凹曲面の形状に高精度に一致させることができる。したがって、第1滑り板の曲率半径の精度を確保できる。
さらに、ナットは第1滑り板の裏面に設けられるため、第1滑り板の表面に連結ボルトを収容又は係合等させるための穴を穿孔する必要がなく、第1凹球面の摺動性を損なうことがない。
【0069】
<6>上記<5>に係る滑り支承において、連結ボルト及びナットの軸心は、第1滑り板に形成された第1凹球面の法線方向に沿う、ことを特徴とする。
【0070】
上記構成によれば、連結ボルト及びナットの軸心は、第1滑り板に形成された第1凹球面の法線方向に沿う、ことを特徴とする。ここで、第1滑り板が連結ボルト及びナットによって固定される場合、第1滑り板には荷重がかかる。連結ボルト及びナットの軸心が第1凹球面の法線方向に沿っている場合、前記軸心が第1凹球面の法線方向以外に沿っている場合と比較して、滑り板に均一に荷重をかけることができる。従って、滑り板にかかる荷重を分散させることができる。
【0071】
<7>上記<5>に係る滑り支承において、連結ボルト及びナットの軸心は、鉛直方向に沿う、ことを特徴とする。
【0072】
上記構成によれば、連結ボルト及びナットの軸心は、鉛直方向に沿う、ことを特徴とする。
ここで、例えば第1滑り板を加工するために上沓基部から第1滑り板を取り外す場合には、ナットと係合する連結ボルトを取り外す必要がある。連結ボルト及びナットの軸心が鉛直方向に沿っている場合、連結ボルトを鉛直方向に取り外すことができる。
従って、連結ボルト及び第1滑り板を上沓基部から容易に取り外し、第1滑り板を容易に加工することができる。
【0073】
<8>上記<3>に係る滑り支承において、第1滑り板は、第1凹球面の裏面の全面が上沓基部の凹曲面に当接している、ことを特徴とする。
【0074】
上記構成によれば、第1滑り板は、第1凹球面の裏面の全面が上沓基部の凹曲面に当接している、ことを特徴とする。従って、この場合、第1滑り板を第1凹球面の裏面から上沓基部に複数個所で引き込む場合と比較して、第1滑り板に局部的な曲率の乱れを生じにくくすることができる。
【0075】
<9>上記<2>に係る滑り支承において、上沓は、固定部をさらに備え、第1滑り板は、環状のフランジを備え、固定部は、フランジを上沓基部に固定する、ことを特徴とする。
【0076】
上記構成によれば、上沓は、固定部をさらに備え、第1滑り板は、環状のフランジを備え、固定部は、フランジを上沓基部に固定する、ことを特徴とする。よって、フランジを利用して第1滑り板を上沓基部に固定することができる。
【0077】
<10>上記<9>に係る滑り支承において、固定部は、フランジの形状に対応し、フランジの周方向に連続する環状の第1固定部材を備え、第1固定部材は、上沓基部との間にフランジを挟んだ状態で上沓基部に固定されている、ことを特徴とする。
【0078】
上記構成によれば、第1固定部材は、上沓基部との間にフランジを挟んだ状態で上沓基部に固定されている、ことを特徴とする。これにより、フランジは、上沓基部に周方向全体に亘って押圧され、上沓基部にフランジを安定して固定することができる。フランジのボルト挿通孔に押圧荷重が集中することを回避することができる。
【0079】
<11>上記<9>に係る滑り支承において、固定部は、フランジの周方向に沿って分散配置される複数の第2固定部材を備え、第2固定部材は、上沓基部との間にフランジを挟んだ状態で上沓基部に固定されている、ことを特徴とする。
【0080】
上記構成によれば、固定部は、フランジの周方向に沿って分散配置される複数の第2固定部材を備え、第2固定部材は、上沓基部との間にフランジを挟んだ状態で上沓基部に固定されている、ことを特徴とする。従って、例えばボルトを介して第2固定部材をフランジに固定する場合、前記ボルトによる締め付け力を分散することができる。
【0081】
<12>上記<2>に係る滑り支承において、第1滑り板は、環状のフランジを備え、フランジは固定ボルトによって直接(第1固定部材や第2固定部材を介さず)押さえつけられることにより、上沓基部に固定されている、ことを特徴とする。
【0082】
上記構成によれば、第1滑り板は、環状のフランジを備え、フランジは固定ボルトによって直接押さえつけられることにより、上沓基部に固定されている、ことを特徴とする。従って、フランジを上沓基部に固定するための構成をより簡素にすることができる。
【0083】
<13>上記<1>~<12>のいずれか一態様に係る滑り支承において、支持体は摩擦材で被覆され、摩擦材は、第1繊維と、第1繊維よりも引張強度が高く、かつ第1繊維よりも摩擦係数が高い第2繊維と、により形成される二重織物である、ことを特徴とする。
【0084】
上記構成によれば、支持体は摩擦材で被覆され、摩擦材は、第1繊維と、第1繊維よりも引張強度が高く、かつ第1繊維よりも摩擦係数が高い第2繊維と、により形成される二重織物である、ことを特徴とする。従って、摩擦材が例えば一重織物である場合と比較して、本実施形態の摩擦材は高い面圧対抗性を有している。よって、摩擦材に被覆される支持体は高い摺動耐久性を有している。
【0085】
<14>上記<13>に係る滑り支承において、支持体は、略円柱形状であり、支持体の底面に位置し第1凹球面に摺動する第1凸球面と、支持体の側面に位置する側周面と、を備え、摩擦材は、支持体の摺動面から側周面にかけて配設され、側周面において固定されている、ことを特徴とする。
【0086】
上記構成によれば、摩擦材は、側周面において固定されている、ことを特徴とする。従って、支持体から摩擦材が剥離する虞を低減させることができる。よって、摩擦材のメンテナンス性を高めることができる。
【0087】
<15>上記<1>~<14>のいずれか一態様に係る滑り支承において、支持体は、第1凹球面に摺動する第1凸球面を備え、第1凸球面は、第1凹球面の曲率半径より小さい曲率半径を有する、ことを特徴とする。
【0088】
上記構成によれば、第1凸球面は、第1凹球面の曲率半径より小さい曲率半径を有する。
ここで、支持体が上沓及び下沓の双方に対して水平方向に相対移動し、第1凹球面の外周縁付近まで支持体が相対移動したとき、前記外周縁にはひずみが発生する。
よって、第1凸球面が第1凹球面の曲率半径より小さい曲率半径を有している場合、第1凹球面17の外周縁でひずみが極大化することを回避することができる。
【0089】
<16>上記<15>に係る滑り支承において、第1凸球面の一部分の曲率半径は、第1凹球面の曲率半径よりも小さい、ことを特徴とする。
【0090】
上記構成によれば、第1凸球面の一部分の曲率半径は、第1凹球面の曲率半径よりも小さい。この場合、第1凸球面の全面の曲率半径が第1凹球面の曲率半径よりも小さい場合と比較して、支持体の第1稜線及び第2稜線におけるひずみの極大化を抑制でき、支持体が摺動する際に支持体の第1凸球面や第2凸球面の縁部において摩擦材の摩耗が極端に進行してしまうことを抑制できる。そのため、摩擦材の交換の頻度を低減でき、メンテナンス性を向上させることができる。
【0091】
<17>上記<1>~<13>のいずれか一態様に係る滑り支承において、支持体は、第1凹球面に摺動する第1凸球面を備え、第1凸球面の曲率半径は、第1凹球面の曲率半径と等しい、ことを特徴とする。
【0092】
上記構成によれば、第1凸球面の曲率半径は、第1凹球面の曲率半径と等しい。この場合、支持体は、第1凹球面に沿って適切に摺動することができる。従って、第1凹球面での支持体の摺動性を高めることができる。
【0093】
<18>上記<1>~<9>のいずれか一態様に係る滑り支承において、支持体は、略円柱形状であり、支持体の底面に位置し第1凹球面に摺動する第1凸球面と、支持体の側面に位置する側周面と、を備え、第1凸球面と側周面とがなす環状の第1稜線は、支持体の軸を含む断面における形状が曲線である、ことを特徴とする。
【0094】
上記構成によれば、第1凸球面と側周面とがなす環状の第1稜線は、支持体の軸を含む断面における形状が曲線である。ここで、支持体が上沓及び下沓の双方に対して水平方向に相対移動し、第1凹球面の外周縁付近まで支持体が相対移動したとき、前記外周縁にはひずみが発生する。一方、前記第1稜線は、支持体の中心軸を含む断面において曲線形状である。従って、前記外周縁に発生するひずみを抑制することができる。
【0095】
<19>上記<18>に係る滑り支承において、支持体は、摩擦材で被覆され、摩擦材は、支持体の第1凸球面から側周面にかけて配設され、側周面において固定されている、ことを特徴とする。
【0096】
上記構成によれば、摩擦材は、側周面において固定されている、ことを特徴とする。従って、支持体から摩擦材が剥離する虞を低減させることができる。よって、摩擦材のメンテナンス性を高めることができる。
【0097】
<20>上記<1>~<19>のいずれか一態様に係る滑り支承において、上沓は、第1凹球面の外周縁を囲む環状の段部を備えている、ことを特徴とする。
【0098】
上記構成によれば、上沓は、第1凹球面の外周縁を囲む環状の段部を備えている。従って、支持体が径方向外側に向かって自在に相対移動し、段部に接触した場合、段部は、支持体が径方向外側へさらに移動することを規制する。よって、段部は、支持体が上沓10の径方向外側に飛び出すことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0099】
10 上沓
11 上沓基部
12 凹曲面
13 第1凹部
16 第1滑り板
17 第1凹球面
18 フランジ
19 第1固定部材
20 固定ボルト
21 連結ボルト
22 ナット
23 引込手段
24 固定部
25 第2固定部材
27 下沓
34 第2凹球面
40 支持体
41 第1凸球面
42 第2凸球面
43 側周面
44 摩擦材
45 第1繊維
46 第2繊維
47 第1稜線
48 第2稜線
H 上部構造体
L 下部構造体
G 段部
100 滑り支承
【要約】
【課題】自己復帰可能であり、高いメンテナンス性能を有する滑り支承を提供すること。
【解決手段】上部構造体Hと上部構造体Hに対向する下部構造体Lとの間に配置される滑り支承であって、上部構造体Hに固定される上沓10と、下部構造体Lに固定される下沓27と、上沓10及び下沓27の間に配置され、上沓10及び下沓27の双方に対して水平方向に相対移動自在な支持体40と、を備え、上沓10は球面状の第1凹球面17を備え、下沓27は球面状の第2凹球面34を備える、ことを特徴とする。
【選択図】
図1