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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-10
(45)【発行日】2025-02-19
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/86 20130101AFI20250212BHJP
【FI】
A61F2/86
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024151562
(22)【出願日】2024-09-03
【審査請求日】2024-10-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】横田 知明
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-530811(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136375(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/86 - 2/915
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部を有するステントであって、
前記筒状部は、
当該筒状部の軸方向にジグザグに振れつつ周方向に延在している環状の複数のジグザグ延在部を、前記軸方向において互いにずれた配置で複数有するとともに、
前記軸方向に隣り合う前記ジグザグ延在部どうしを接続している接続部を有し、
前記筒状部の周方向において、環状の前記ジグザグ延在部の曲率半径よりも、前記接続部の曲率半径の方が小さく、
前記接続部は、前記複数のジグザグ延在部の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状の内側に収まっているステント。
【請求項2】
前記筒状部の周方向において、前記接続部の両端の各々は、前記接続部の中央部よりも、前記筒形状の内寄りに配置されている請求項に記載のステント。
【請求項3】
前記接続部は、前記周方向における当該接続部の両端どうしを繋ぐ両端接続部を有し、
前記両端接続部は、
径方向に視た形状が直線状の直線部と、
前記直線部の両端にそれぞれ連なっている屈曲形状の屈曲部と、
を有する請求項1又は2に記載のステント。
【請求項4】
前記筒状部の周方向において、前記ジグザグ延在部の互いに近接する頂点部分の曲率半径と、前記両端接続部の曲率半径と、が互いに等しい請求項に記載のステント。
【請求項5】
前記周方向において、前記接続部の寸法は、当該接続部を介して接続されている前記ジグザグ延在部の互いに近接する頂点どうしの距離よりも大きい請求項1又は2に記載のステント。
【請求項6】
前記筒状部を覆う被覆部を有する請求項1又は2に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
生体管腔内に留置して用いられるステントとしては、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1のステントは、筒状部を有し、当該筒状部の軸方向にジグザグに振れつつ周方向に延在している環状の複数のジグザグ延在部を、軸方向において互いにずれた配置で複数有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/195841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1のステントは、生体管腔内に留置する際の容易性について、なお改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、筒状部を有するステントであって、
前記筒状部は、
当該筒状部の軸方向にジグザグに振れつつ周方向に延在している環状の複数のジグザグ延在部を、前記軸方向において互いにずれた配置で複数有するとともに、
前記軸方向に隣り合う前記ジグザグ延在部どうしを接続している接続部を有し、
前記筒状部の周方向において、環状の前記ジグザグ延在部の曲率半径よりも、前記接続部の曲率半径の方が小さく、
前記接続部は、前記複数のジグザグ延在部の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状の内側に収まっているステントが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ステントを生体管腔内により容易に留置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るステントの模式的な平面図である。
図2】実施形態における接続部及びその周辺構造の部分拡大の斜視図である。
図3】実施形態における接続部及びその周辺構造の部分拡大図であり、ステントを平坦に展開した状態を示す。
図4図4(a)は図3に示すA-A線に沿った断面図であり、図4(b)は図3に示すB-B線に沿った断面図であり、図4(c)は図3に示すC-C線に沿った断面図である。
図5図5(a)は実施形態における接続部の模式図であり、図5(b)は図5(a)の部分拡大図である。
図6図3に示すA部の部分拡大図である。
図7】実施形態に係るステントの横断面図であり、生体管腔内に留置された状態を示す。
図8】変形例1における接続部及びその周辺構造の部分拡大図であり、ステントを平坦に展開した状態、且つ、ステントが拡径した状態を示す。
図9図9(a)は図8に示すA-A線に沿った断面図であり、図9(b)は図8に示すB-B線に沿った断面図であり、図9(c)は図8に示すC-C線に沿った断面図である。
図10】変形例2における接続部及びその周辺構造の部分拡大図であり、ステントを平坦に展開した状態、且つ、ステントが拡径した状態を示す。
図11図11(a)は図10に示すA-A線に沿った断面図であり、図11(b)は図10に示すB-B線に沿った断面図であり、図11(c)は図10に示すC-C線に沿った断面図である。
図12】変形例3における接続部及びその周辺構造の部分拡大図であり、ステントを平坦に展開した状態、且つ、ステントが拡径した状態を示す。
図13図13(a)は図12に示すA-A線に沿った断面図であり、図13(b)は図12に示すB-B線に沿った断面図であり、図13(c)は図12に示すC-C線に沿った断面図である。
図14】変形例4における接続部及びその周辺構造の部分拡大図であり、ステントを平坦に展開した状態、且つ、ステントが拡径した状態を示す。
図15】変形例5における接続部及びその周辺構造の部分拡大図であり、ステントを平坦に展開した状態、且つ、ステントが拡径した状態を示す。
図16図16(a)は図15に示すA-A線に沿った断面図であり、図16(b)は図15に示すB-B線に沿った断面図であり、図16(c)は図15に示すC-C線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図1から図7を用いて説明する。
なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
ステント100の軸方向は、図1における上下方向である。図3は、ステント100を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し平坦に展開した状態を示す図であり、図3における左右方向は、ステント100の周方向と対応している。また、図1においては、複数のジグザグ延在部20の形状を簡略化して示している。図7は、ステント100を、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面で示している。
【0009】
本実施形態に係るステント100は、筒状部10を有するステントである。
筒状部10は、当該筒状部10の軸方向にジグザグに振れつつ周方向に延在している環状の複数のジグザグ延在部20を、軸方向において互いにずれた配置で複数有するとともに、軸方向に隣り合うジグザグ延在部20どうしを接続している接続部30を有する。
図4(b)に示すように、筒状部10の周方向において、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも、接続部30の曲率半径の方が小さい。
ここで、「接続部30の曲率半径」についてより詳細に説明する。まず、筒状部10を軸方向に視たときに、周方向における接続部30の外周面の一端30aから他端30bに亘って等間隔でプロットされる複数の点(例えば、10点)をP1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10とする(図5(a)及び図5(b)参照)。なお、図5(a)及び図5(b)においては、便宜的に、軸方向に視た接続部30の形状を模式的且つ簡略化して図示している。
次に、P1~P3から等距離の点をC1(図5(b)参照)とし、P1~P3とC1との径方向における離間距離をR1とする。同様に、P2~P4から等距離の点をC2とし、P2~P4とC2との径方向における離間距離をR2とする。P3~P5から等距離の点をC3とし、P3~P5とC3との径方向における離間距離をR3とする。P4~P6から等距離の点をC4とし、P4~P6とC4との径方向における離間距離をR4とする。P5~P7から等距離の点をC5とし、P5~P7とC5との径方向における離間距離をR5とする。P6~P8から等距離の点をC6とし、P6~P8とC6との径方向における離間距離をR6とする。P7~P9から等距離の点をC7とし、P7~P9とC7との径方向における離間距離をR7とする。P8~P10から等距離の点をC8とし、P8~P10とC8との径方向における離間距離をR8とする。このようにして求められた離間距離R1~R8の平均値を「接続部30の曲率半径」とする。
同様に、「ジグザグ延在部20の曲率半径」とは、周方向において、筒状部10を軸方向に視たときに、ジグザグ延在部20の外周面の一端から他端に亘って等間隔でプロットされる複数の点P1~P10と対応するC1~C8との径方向における離間距離R1~R8の平均値である。
本発明において、「筒状部10の周方向において、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも、接続部30の曲率半径の方が小さい」とは、上記のようにして算出されるジグザグ延在部20の曲率半径が、少なくとも接続部30の曲率半径の1.1倍以上であることであり、好ましくは接続部30の曲率半径の1.2倍以上であり、より好ましくは接続部30の曲率半径の1.5倍以上であり、更に好ましくは接続部30の曲率半径の3倍以上であることを意味している。このため、この条件を満たしている限りにおいて、接続部30の一部分の曲率半径が、筒状部10の周方向において、ジグザグ延在部20の曲率半径と等しくなっていてもよいし、又はジグザグ延在部20の曲率半径よりも大きくなっていてもよい。
また、ここでいう「軸方向において互いにずれた配置」とは、ステント100の拡径状態において、1つのジグザグ延在部20の配置領域401(図1参照)と、当該ジグザグ延在部20に隣接する他のジグザグ延在部20の配置領域402(図1参照)とは、軸方向において、互いに重複していてもよいし互いに重複していなくてもよい。ただし、1つのジグザグ延在部20の配置領域401と、他のジグザグ延在部20の配置領域402とが、互いに重複している場合、これらジグザグ延在部20が有するジグザグ形状どうしが互いに交差しない位置に配置されている。
【0010】
ステント100は、不図示のステント留置装置を用いて生体管腔内に留置される。
ステント100は、ステント留置装置のアウターシース(不図示)内に収容されている間は縮径状態となっている。ステント100を収容しているアウターシースの先端部を生体管腔300(図7参照)の留置箇所に送達し、アウターシースからステント100を離脱させると、ステント100は縮径状態から拡径状態へと弾性復元する。こうして、ステント100を生体管腔300の留置箇所に搬送及び留置することができる。
なお、ステント100の縮径状態とは、ステント100がアウターシース内に存在しうる程度に径方向に圧縮されている状態を意味している。また、ステント100の拡径状態とは、少なくとも縮径状態よりも拡径した状態を意味しており、例えば、ステント100の自然状態である。なお、図1から図7においては、ステント100を拡径状態(自然状態)で図示している。
【0011】
本実施形態の場合、筒状部10の周方向において、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも、接続部30の曲率半径の方が小さい。
このような構成によれば、接続部30の周方向における両端部が、生体管腔300の内壁面などに引っ掛かってしまうことを抑制できる。また、ステント100の拡径に伴って接続部30が伸縮する際に、当該接続部30が生体管腔300の内壁面と接触し難くなるので、ステント100の伸縮性及び柔軟性を確保することができる。
よって、ステント100を生体管腔300内により容易に留置することができる。
【0012】
以下の説明において、筒状部10の周方向を単に周方向と称し、筒状部10の軸方向を単に軸方向と称し、筒状部10の径方向を単に径方向と称する場合がある。また、便宜的に、軸方向における一方側(一端側(図1における上方向))を先端側、軸方向における他方側(他端側(図1における下方向))を基端側と称する。
また、ステント100の各部の位置関係及び形状は、特に断りが無い限り、ステント100の拡径状態での位置関係及び形状を説明したものである。
【0013】
複数のジグザグ延在部20及び接続部30を含む筒状部10は、例えば、1本のパイプ(例えば、金属材料又はプラスチック材料によって構成されているパイプ)を切削加工(例えば、レーザー加工(レーザーカット))して形成することができる。筒状部10を形成する際には、複数のジグザグ延在部20及び接続部30の各々の曲率半径が上記の大小関係となるように賦形する。
切削加工によって形成された筒状部10の線材の断面形状(延在方向に対して直交する方向に沿った断面形状)は、略矩形状であり、4つの面を含む。
筒状部10における各部位の境界部には実質的に段差が形成されておらず、各部位は互いに滑らかに連なっている。
筒状部10(1本のパイプ)の材料としては、特に限定されないが、Ni-Ti合金やポリ乳酸等が挙げられる。
【0014】
複数のジグザグ延在部20の各々は、例えば、360度周回状に延在している略円環状に形成されている。複数のジグザグ延在部20は、例えば、互いに同径に形成されているとともに、互いに同軸に配置されている。
複数のジグザグ延在部20の各々は、例えば、軸方向に対して傾斜する方向(例えば、図1における右下がり方向)に延在する第1延在部22と、第1延在部22の傾斜方向とは逆向きの方向(図1における右上がり方向)に傾斜する第2延在部23と、が交互に繰り返し連なったジグザグ形状である。図4(c)に示すように、第1延在部22の外周面及び第2延在部23の外周面は、例えば、筒形状405と接している。
個々のジグザグ延在部20において、第1延在部22の一端部(延在方向における一端部)と当該第1延在部22に隣接する第2延在部23の一端部(同上)との境界の角部(第1頂部25)は先端側に向けて凸の形状となっており、第1延在部22の他端部(延在方向における他端部)と当該第1延在部22に隣接する第2延在部23の他端部(同上)との境界の角部(第2頂部27)が基端側に向けて凸の形状となっている。
第1頂部25と第2頂部27とは、例えば、互いに同一形状となっており、軸方向において対称に配置されている。
より詳細には、図3に示すように、第1頂部25は、円弧(例えば、中心角が約180度の円弧)を含む形状となっており、径方向に視た形状は略U字を上下反転した形状となっている。第1頂部25の一端と第1延在部22の一端部とが接続されており、第1頂部25の他端と第2延在部23の一端部とが接続されている。
同様に、第2頂部27は、略円弧状(例えば、中心角が約180度の円弧)を含む形状となっており、径方向に視た形状は略U字形状となっている。第2頂部27の一端と第1延在部22の他端部とが接続されており、第1頂部25の他端と第2延在部23の他端部とが接続されている。
ただし、本発明において、第1頂部25及び第2頂部27の各々の形状はこの例に限定されない。第1頂部25及び第2頂部27の各々は、例えば、径方向に視て円形状に形成されていてもよいし、2本の直線が交差して形成された角状であってもよい。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の場合、1つのジグザグ延在部20の第1頂部25と、当該ジグザグ延在部20に隣接する他のジグザグ延在部20の第2頂部27とが、軸方向において互いに近接するように複数のジグザグ延在部20は配置されている。
なお、ここでいう「互いに近接する」とは、軸方向における第1頂部25の頂点25aと第2頂部27の頂点27aとの離間距離が、ジグザグ延在部20の長さ寸法(軸方向における寸法)以下であるとともに、周方向における第1頂部25と第2頂部27との離間距離が、第1延在部22の周方向における幅寸法以下であることを意味している。
ただし、本発明はこの例に限定されず、1つのジグザグ延在部20の第1頂部25と、当該ジグザグ延在部20に隣接する他のジグザグ延在部20の第1頂部25とが、軸方向において互いに近接するとともに、1つのジグザグ延在部20の第2頂部27と、当該ジグザグ延在部20に隣接する他のジグザグ延在部20の第2頂部27とが、軸方向において互いに近接するように複数のジグザグ延在部20は配置されていてもよい。
【0016】
本実施形態の場合、複数のジグザグ延在部20において、各第1延在部22の長さ寸法(延在方向における寸法)と、各第2延在部23の長さ寸法(同上)とは、例えば、互いに同等の長さ寸法に設定されている。
また、各第1延在部22は、互いに同等の長さ寸法に設定されており、各第2延在部23も、互いに同等の長さ寸法に設定されている。
また、複数のジグザグ延在部20において、筒状部10の軸心に対する第1延在部22の傾斜角度と、当該軸心に対する第2延在部23の傾斜角度とは、互いに同等の寸法に設定されている。
また、各第1延在部22の傾斜角度は、互いに同等の傾斜角度に設定されており、各第2延在部23も、互いに同等の傾斜角度に設定されている。
第1頂部25と第2頂部27とは、例えば、互いに同一形状及び同一寸法に形成されている。すなわち、第1頂部25と第2頂部27とは、例えば、円弧の長さが互いに同等となっているとともに、中心角が互いに同等となっている。
ただし、本発明において、例えば、複数のジグザグ延在部20において、第1延在部22と第2延在部23とは、互いに同等の長さ寸法(延在方向における寸法)や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。また、各第1延在部22は、互いに同等の長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。同様に、各第2延在部23は、互いに同等の長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよいし、互いに異なる長さ寸法や傾斜角度に設定されていてもよい。
また、本発明において、第1頂部25と第2頂部27とは、例えば、互いに異なる形状及び異なる寸法に形成されていてもよい。すなわち、第1頂部25と第2頂部27とは、例えば、円弧の長さが互いに異なっていたり、中心角が互いに異なっていたりしてもよい。
また、本発明において、筒状部10が有する複数のジグザグ延在部20の数は特に限定されず、ステント100の各部位の所望の寸法や用途に応じて適宜変更することができる。
【0017】
ここで、上述のように、軸方向に隣り合うジグザグ延在部20どうしは、接続部30によって接続されている。
本実施形態の場合、図7に示すように、接続部30は、複数のジグザグ延在部20の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状405の内側に収まっている。なお、図7において、便宜的に、接続部30の軸方向に視た形状を模式的且つ簡略化して図示している。
なお、ここで言う「内側に収まっている」とは、接続部30の全体が、複数のジグザグ延在部20の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状405の径方向内側に実質的に収まっていることを意味している。更に「実質的に収まっている」とは、少なくとも接続部30の内周面の全体が仮想の筒形状405の径方向内側に収まっていることを意味している。本実施形態の場合、例えば、図7に示すように接続部30の外周面が筒形状405に接している。ただし、本発明において、例えば、接続部30の肉厚の一部が筒形状405と重複していてもよい。
このような構成によれば、接続部30が仮想の筒形状405よりも径方向外側に張り出している場合と比べて、接続部30が生体管腔300の内壁面などに引っ掛かってしまうことをより確実に抑制できる。
より詳細には、本実施形態の場合、筒状部10において、1つのジグザグ延在部20と、当該ジグザグ延在部20に隣接する他のジグザグ延在部20と、は複数(例えば、3つ)の接続部30によって互いに接続されている。各接続部30は、複数のジグザグ延在部20の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状405の内側に収まっている。
図7に示すように、隣接するジグザグ延在部20どうしを接続する複数の接続部30は、筒状部10の中心を基準として、径方向において互いにオフセットされた位置に配置されている。また、各接続部30は、互いに同一形状に形成されており、筒状部10の中心を基準として互いに回転対称に配置されている。
このようにして、筒状部10が含む複数のジグザグ延在部20の各々が接続部30によって互いに接続されている。
なお、本発明において、筒状部10が有する接続部30の数は特に限定されず、隣接するジグザグ延在部20どうしが少なくとも1つの接続部30によって互いに接続されていればよい。
【0018】
本実施形態の場合、接続部30は、1つのジグザグ延在部20の第1延在部22と、当該第1延在部22と軸方向において対向している他のジグザグ延在部20の第1延在部22と、を互いに接続している。
ただし、本発明はこの例に限定されず、例えば、接続部30は、1つのジグザグ延在部20の第2延在部23と、当該第2延在部23と軸方向において対向している他のジグザグ延在部20の第2延在部23と、を互いに接続していてもよいし、1つのジグザグ延在部20の第1延在部22と、当該第1延在部22に近接する他のジグザグ延在部20の第2延在部23と、を互いに接続していてもよい。また、後述する変形例2のように、接続部30は、1つのジグザグ延在部20の第1頂部25と、当該第1頂部25と軸方向において対向している他のジグザグ延在部20の第2頂部27と、を互いに接続していてもよい。
【0019】
接続部30の一端部31及び他端部32(延在方向における一端部及び他端部)は、それぞれ軸方向に沿って直線状に延在している。一端部31及び他端部32は、周方向において互いにずれた位置に配置されている。
接続部30の中間部33(延在方向における中間部)は、一端部31及び他端部32の各々に対して交差する方向(例えば、図3における右上がり方向)に直線状に延在している。中間部33の一端(周方向における一端)は、一端部31の基端と接続されており、中間部33の他端(周方向における他端)は、他端部32の先端と接続されている。このようにして、中間部33は、一端部31の基端と他端部32の先端とを互いに接続している。
一端部31及び他端部32は、例えば、互いに同等の長さ寸法に設定されている。一端部31及び他端部32の各々の長さ寸法は、中間部33の長さ寸法よりも大きい。
軸方向に視たときに、中間部33の全体形状は、径方向外方に向けて凸の略円弧状に形成されている。筒状部10の周方向において、中間部33の両端の各々は、中間部33の中央部よりも、筒形状405の内寄りに配置されている。
一端部31は、対応する第1延在部22から中間部33の一端(周方向における一端)に向けて、径方向内方に徐々に変位しつつ延在している。同様に、他端部32は、対応する第1延在部22から中間部33の他端(周方向における他端)に向けて、径方向内方に徐々に変位しつつ延在している。このようにして、接続部30の全体が、複数のジグザグ延在部20の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状405の内側に収まっている。
【0020】
本実施形態の場合、ジグザグ延在部20において、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径が最も小さくなっており、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径は、例えば、接続部30の曲率半径と等しい。
なお、ここで「等しい」とは、接続部30の曲率半径が、第1頂部25(又は第2頂部27)の曲率半径が、少なくとも0.9倍以上1.1倍以下であることとする。
また、ジグザグ延在部20において、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径が最も大きい。
より詳細には、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面(図4(b))において、中間部33の曲率半径は、ジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。なお、図4(b)では、一例として、中間部33のB-B線に沿った切断面を示しているが、接続部30におけるその他の部位においても、その曲率半径が、ジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。
また、図4(c)に示すように、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第1延在部22の曲率半径と、第2延在部23の曲率半径とは、それぞれ接続部30の曲率半径よりも大きい。なお、図4(c)では、一例として、第1延在部22及び第2延在部23のC-C線に沿った切断面を示しているが、第1延在部22及び第2延在部23におけるその他の部位においても、その曲率半径が、接続部30の曲率半径よりも大きい。
なお、ここで「大きい」とは、筒状部10の周方向において、第1延在部22(又は第2延在部23)の曲率半径が、少なくとも中間部33の曲率半径の1.1倍以上であることとする。
また、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面(図4(a))において、第1頂部25の曲率半径は、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。なお、図4(a)では、一例として、第1頂部25のA-A線に沿った切断面を示しているが、第1頂部25におけるその他の部位においても、その曲率半径が、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。
同様に、図示は省略しているが、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第2頂部27の曲率半径は、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。
更に、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、接続部30の中間部33の曲率半径は、第1頂部25の曲率半径、及び、第2頂部27の曲率半径と互いに等しい。
【0021】
ただし、本発明において、ジグザグ延在部20及び接続部30の各部位における、曲率半径の大小関係は上記の例に限定されず、少なくとも、筒状部10の周方向において、ジグザグ延在部20の曲率半径よりも、接続部30の曲率半径の方が小さくなるように設定されていればよい。
【0022】
また、本実施形態の場合、筒状部10は、上述の複数のジグザグ延在部20に加えて、軸方向における一方の端(本実施形態の場合、先端)に位置する端部巻回部40を有する。
図1に示すように、端部巻回部40は、複数の山部42と、複数の谷部44と、を含み、山部42と谷部44とが周方向において交互に配置されたジグザグ状の形状に形成されている。
複数の山部42の各々は、先端側に向けて凸のV字状に形成されている。複数の谷部44の各々は、基端側に向けて凸のV字状に形成されている。
更に、図1に示すように、端部巻回部40は、例えば、山部42と当該山部42に隣接する谷部44とを相互に繋いでいるストラット部46を含む。
端部巻回部40と、当該端部巻回部40に隣接するジグザグ延在部20とは、接続部30によって互いに接続されている。
【0023】
ここで、ステント100は、一例として、ステント100に沿って取り付けられた筒状の樹脂膜50を備えているカバードステントである。
樹脂膜50は、軸方向において筒状部10よりも長尺に形成されている。樹脂膜50の先端部は、筒状部10の先端側から突出しており、この突出した部位が逆止弁部52を構成している。逆止弁部52は、ステント100内における、筒状部10の軸方向における一方側(例えば、基端側)への流れを許容しつつ、一方側とは反対側(例えば、先端側)への流れを規制する。
また、樹脂膜50には、マーカー部54が設けられている。マーカー部54は、樹脂膜50の中間(軸方向における中間)よりも先端側且つ端部巻回部40よりも基端側に配置されている。ステント100を留置する際には、マーカー部54を指標として、ステント100の先端部を生体管腔に対して位置決め(例えば、ステント100の先端部が生体管腔から所望の長さ分はみ出るように)することができる。図1において、マーカー部54の配置領域を複数のドットの網掛けで表している。
樹脂膜50は、例えば、シリコーンゴム等の樹脂材料によって構成されている。樹脂膜50は、一例として、筒状部10を樹脂材料に含浸させることにより形成され、当該筒状部10と同層の筒形状の膜である。
マーカー部54は、例えば、液状のエラストマーを樹脂膜50に塗布し乾燥させることによって形成されている。ただし、本発明はこの例に限定されず、マーカー部54は、樹脂材料によって構成されており粘着層を有する補強テープであってもよいし、金属や樹脂で形成されたリングであってもよい。
なお、本発明において、ステント100は、必ずしも樹脂膜50を備えていなくてもよく、例えば、ベアーステントであってもよい。
【0024】
更に、本実施形態の場合、ステント100は、筒状部10を覆う被覆部を有する。
上述のように、筒状部10の周方向において、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも、接続部30の曲率半径の方が小さいので、被覆部に対する接続部30の干渉を抑制できる。更には、被覆部を筒状部10に被せる際における、被覆部に対する接続部30の引っ掛かりも抑制できるので、ステント100の製造容易性を向上させることができる。
本実施形態の場合、被覆部は、円筒状に形成されており、筒状部10に外装されている被覆フィルム60である。被覆フィルム60は筒状部10と同軸に配置されている。また、被覆フィルム60は、ステント100の縮径に伴って縮径することができるように構成されているとともに、ステント100の拡径に伴って拡径することができるように構成されている。
被覆フィルム60の内径と筒状部10の外径とは、互いに等しい。
被覆フィルム60を構成する材料は、特に限定されないが、一例として、シリコーンゴム、ウレタン、ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0025】
また、図6に示すように、接続部30の外周面には、例えば、軸方向の成分を含む方向に延在している複数の細溝部29が形成されていてもよい。
このような構成によれば、接続部30の外周面が、軸方向の成分を含む方向に延在している凹凸を含むので、当該接続部30の外周面に対する被覆フィルム60の密着性を確保することができる。
複数の細溝部29は、例えば、互いに同一方向に延在していてもよいし、互いに異なる方向に延在していてもよい。また、複数の細溝部は、例えば、互いに同一寸法に設定されてもよいし、互いに異なる寸法に設定されていてもよい。
複数の細溝部29の幅寸法(延在方向に対して直交する方向における寸法)は、例えば、1μm以上150μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以上100μm以下である。
複数の細溝部29の長さ寸法は、例えば、10μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは50μm以上150μm以下である。
【0026】
<変形例1>
次に、図8から図9(c)を用いて変形例1に係るステント100を説明する。
本変形例に係るステント100は、以下に説明する点で、上記の実施形態に係るステント100と相違しており、その他の点では、上記の実施形態に係るステント100と同様に構成されている。図8は、ステント100を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し平坦に展開した状態を示す図であり、図8における左右方向は、ステント100の周方向と対応している。
【0027】
本変形例の場合、接続部30は、周方向における当該接続部30の両端どうしを繋ぐ両端接続部35を有する。
両端接続部35は、径方向に視た形状が直線状の直線部36と、直線部36の両端(一端36a、他端36bにそれぞれ連なっている屈曲形状の屈曲部38と、を有する。
このような構成によれば、接続部30の適度な伸縮性と保形性とを両立できるので、当該接続部30は、複数のジグザグ延在部20どうしを接続した状態を維持しつつ、ステント100の縮径又は拡径に良好に追従することができる。
【0028】
本変形例の場合、中間部33が両端接続部35を構成している。したがって、両端接続部35は、一端部31の基端と他端部32の先端とを相互に接続している。
一端部31及び他端部32の各々は、例えば、軸方向に対して交差する方向(例えば、図8における左下がり方向)に傾斜している。一端部31と他端部32とは、互いに同一直線上に配置されている。
直線部36は、例えば、一端部31及び他端部32の各々に対して交差する方向(例えば、図8における右上がり方向)に傾斜している。
直線部36の一端36aは屈曲部38aと連なっており、直線部36の他端36bは屈曲部38bと連なっている。更に、屈曲部38aは、一端部31の基端と連なっており、屈曲部38bは、他端部32の先端と連なっている。
屈曲部38aと屈曲部38bとは、例えば、直線部36を基準として互いに軸方向において対称形状となっている。
より詳細には、直線部36の一端36aと屈曲部38aとの境界部は、例えば、周方向における他方(例えば、図8における右方)の成分を含む方向に向けて凸の円弧状となっている。直線部36の他端36bと屈曲部38bとの境界部は、例えば、周方向における一方(例えば、図8における左方)の成分を含む方向に向けて凸の円弧状となっている。
一端部31の基端と屈曲部38aとの境界部は、例えば、周方向における一方の成分を含む方向(例えば、図8における左斜め下)に向けて凸の円弧状となっている。他端部32の先端と屈曲部38bとの境界部は、例えば、周方向における他方の成分を含む方向(例えば、図8における右斜め上)に向けて凸の円弧状となっている。
【0029】
図9(b)に示すように、本変形例の場合も、接続部30は、複数のジグザグ延在部20の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状405の内側に収まっている。
また、本変形例の場合も、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面(図9(b))において、接続部30の曲率半径は、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。
【0030】
本変形例の場合も、ジグザグ延在部20において、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径が最も小さくなっており、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径は、例えば、接続部30の曲率半径と等しい。
また、ジグザグ延在部20において、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径が最も大きい。
より詳細には、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面(図9(b))において、中間部33(両端接続部35)の曲率半径は、ジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。なお、図9(b)では、一例として、中間部33のB-B線に沿った切断面を示しているが、接続部30におけるその他の部位においても、その曲率半径が、ジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。
また、図9(c)に示す筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第1延在部22の曲率半径と、第2延在部23の曲率半径とは、それぞれ接続部30の曲率半径よりも大きい。
また、図9(a)に示す筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面(例えば、図8に示すA-A線)において、第1頂部25の曲率半径は、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。同様に、図示は省略しているが、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第2頂部27の曲率半径は、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。
更に、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、接続部30の中間部33の曲率半径は、第1頂部25の曲率半径、及び、第2頂部27の曲率半径と互いに等しい。
【0031】
<変形例2>
次に、図10から図11(c)を用いて変形例2に係るステント100を説明する。
本変形例に係るステント100は、以下に説明する点で、上記の実施形態に係るステント100と相違しており、その他の点では、上記の実施形態に係るステント100と同様に構成されている。図10は、ステント100を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し平坦に展開した状態を示す図であり、図10における左右方向は、ステント100の周方向と対応している。
【0032】
本変形例の場合、接続部30は、複数のジグザグ延在部20の互いに近接する頂点部分どうしを互いに接続している。より詳細には、接続部30は、1つのジグザグ延在部20の第1頂部25と、当該第1頂部25と軸方向において対向している他のジグザグ延在部20の第2頂部27と、を互いに接続している。
本変形例の場合も、筒状部10の周方向において、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも、接続部30の曲率半径の方が小さい。
このような構成によれば、接続部30における周方向の両端部が、生体管腔300の内壁面などに引っ掛かってしまうことを抑制できる。また、ステント100の拡径に伴って接続部30が伸縮する際に、当該接続部30が生体管腔300の内壁面と接触し難くなるので、ステント100の伸縮性及び柔軟性を確保することができる。
よって、ステント100をより低侵襲に生体管腔300内の所望の部位に留置することができる。
なお、本発明はこの例に限定されず、接続部30は、例えば、1つのジグザグ延在部20の第1頂部25と、当該第1頂部25と軸方向において対向している他のジグザグ延在部20の第1頂部25と、を互いに接続していてもよいし、1つのジグザグ延在部20の第2頂部27と、当該第2頂部27と軸方向において対向している他のジグザグ延在部20の第2頂部27と、を互いに接続していてもよい。
【0033】
図11(b)に示すように、本変形例の場合も、接続部30は、複数のジグザグ延在部20の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状405の内側に収まっている。
また、本変形例の場合、図10及び図11(b)に示すように、筒状部10の周方向において、接続部30の両端(一端30a及び他端30b)の各々は、接続部30の中央部30cよりも、筒形状405の内寄りに配置されている。なお、図11(b)においては、便宜的に、筒状部10の周方向における、接続部30の両端(本変形例の場合、両端接続部35の両端)の各々の切断面(筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面)を破線で図示している。
このような構成によれば、接続部30の周方向における両端(一端30a及び他端30b)が生体管腔300の内壁面などに引っ掛かってしまうことをより確実に抑制できる。
なお、ここで、「内寄りに配置されている」とは、少なくとも、接続部30の一端30a及び他端30bの各々の外周面が、中央部30cの外周面よりも筒形状405の内寄り(径方向内側)に配置されていることを意味している。
【0034】
また、本変形例の場合、周方向において、接続部30の寸法(図10に示す寸法L2)は、当該接続部30を介して接続されているジグザグ延在部20の互いに近接する頂点25a、27aどうしの距離(図10に示すL1)よりも大きい。
このような構成によれば、周方向における接続部30の寸法を十分に確保することができるので、筒状部10の周方向において、接続部30の両端(一端30a及び他端30b)の各々は、接続部30の中央部30cよりも、筒形状405の内寄りに配置されている状態を容易に実現できる。
本変形例の場合、接続部30の寸法L2は、例えば、上記頂点25a、27aどうしの距離L1の1.1倍以上5倍以下であることが好ましく、より好ましくは距離L1の1.5倍以上3倍以下である。
【0035】
また、本変形例の場合、図11(a)及び図11(b)に示すように、筒状部10の周方向において、ジグザグ延在部20の互いに近接する頂点部分の曲率半径と、両端接続部35の曲率半径と、が互いに等しい。
なお、ここでいう「ジグザグ延在部20の互いに近接する頂点部分」とは、接続部30によって互いに接続されているジグザグ延在部20の頂部を意味しており、本変形例の場合、接続部30を介して互いに接続されている第1頂部25及び第2頂部27である。
また、ここで「等しい」とは、ジグザグ延在部20の互いに近接する頂点部分の曲率半径が、両端接続部35の曲率半径の0.9倍以上1.1倍以下であることとする。
このような構成によれば、接続部30及びその近傍において曲率半径の変化点がない構成とし、ステント100が縮径又は拡径する際に、接続部30及びその近傍において応力が均等に分布するようにできる。よって、当該接続部30及びその近傍の形状を良好に保つことができる(意図しない変形を抑制することができる)。
【0036】
より詳細には、図10に示すように、本変形例の場合、接続部30において、一端部31は第1頂部25と連なっており、他端部32は第2頂部27と連なっている。
本変形例の場合、中間部33が両端接続部35を構成している。したがって、両端接続部35は、一端部31の基端と他端部32の先端とを相互に接続している。
中間部33は、例えば、直線状に形成されており、軸方向に対して交差する方向(例えば、図10における右上がり方向)に傾斜している。
一端部31及び他端部32の各々は、直線状に形成されており、中間部33に対して交差する方向(例えば、図10における左上がり方向)に傾斜している。
一端部31と中間部33との境界部は、例えば、周方向における他方(例えば、図10における右方)の成分を含む方向に向けて凸の円弧状となっている。他端部32と中間部33との境界部は、例えば、周方向における一方(例えば、図8における左方)の成分を含む方向に向けて凸の円弧状となっている。
一端部31及び他端部32の各々の長さ寸法は、例えば、中間部33の長さ寸法よりも小さい。
図11(b)に示すように、筒状部10の周方向において、両端接続部35の両端(一端36a、36b)の各々は、接続部30の中央部30cよりも、筒形状405の内寄りに配置されている。
より詳細には、両端接続部35の一端36aと一端部31の基端との境界部は、対応する第2頂部27よりも周方向における一方(例えば、図10における右方)に張り出しており、周方向における接続部30の一端30aを構成している。同様に、両端接続部35の他端36bと他端部32の先端との境界部は、対応する第1頂部25よりも周方向における他方(例えば、図10における左方)に張り出しており、周方向における接続部30の他端30bを構成している。
本変形例の場合、軸方向に視たときに、接続部30の全体は、径方向外方に向けて凸の円弧状となっている。
【0037】
本変形例の場合も、ジグザグ延在部20において、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径が最も小さくなっており、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径は、例えば、接続部30の曲率半径と等しい。
また、ジグザグ延在部20において、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径が最も大きい。
より詳細には、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面(図11(b)参照)において、接続部30の曲率半径は、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。なお、図11(b)では、一例として、直線部36のB-B線に沿った切断面を示しているが、接続部30におけるその他の部位においても、外周面の曲率半径が、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。
また、図11(c)に示す筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第1延在部22の曲率半径と、第2延在部23の曲率半径とは、それぞれ接続部30の曲率半径よりも大きい。
また、図11(a)に示す筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第1頂部25の曲率半径は、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。同様に、図示は省略しているが、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第2頂部27の曲率半径は、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。
更に、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、接続部30の曲率半径は、第1頂部25の曲率半径、及び、第2頂部27の曲率半径と互いに等しい。
【0038】
<変形例3>
次に、図12から図13(c)を用いて変形例3に係るステント100を説明する。
本変形例に係るステント100は、以下に説明する点で、上記の変形例2に係るステント100と相違しており、その他の点では、上記の変形例2に係るステント100と同様に構成されている。図12は、ステント100を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し平坦に展開した状態を示す図であり、図12における左右方向は、ステント100の周方向と対応している。
【0039】
本変形例の場合も、変形例2と同様に、接続部30は、1つのジグザグ延在部20の第1頂部25と、当該第1頂部25と軸方向において対向する他のジグザグ延在部20の第2頂部27と、を互いに接続している。ただし、本変形例の場合、接続部30の全体が屈曲しており、その径方向に視た形状は略S字状になっている。
図12に示すように、接続部30の一端部31は、第2頂部27の突出方向(図12における下方)とは反対方向(図12における上方)の成分を含む方向(図12における左斜め上)に当該第1頂部25から延出しており、接続部30の他端部32は、第1頂部25の突出方向(図12における上方)とは反対方向(図12における下方)の成分を含む方向(図12における右斜め下)に当該第2頂部27から延出している。
このような構成によれば、ステント100の拡径状態において、隣接するジグザグ延在部20どうしの軸方向における相対的な変位を接続部30によって適度に規制し、より確実に、ステント100の軸方向のおける長さ寸法を意図した寸法に維持することができる。
【0040】
より詳細には、接続部30は、例えば、周方向における一方(例えば、図12における左方)に向けて凸の円弧状となっている第1部分39aと、周方向における他方(例えば、図12における右方)に向けて凸の円弧状となっている第2部分39bと、を含む。
第1部分39aの一端は第1頂部25と連なっており、第1部分39aの他端は第2部分39bの一端と連なっている。第2部分39bの他端は第2頂部27と連なっている。本変形例の場合、接続部30の一端部31は、第1部分39aの一端部によって構成されており、接続部30の他端部32は、第2部分39bの他端部によって構成されている。接続部30の中間部33は、第1部分39aと第2部分39bとの境界部によって構成されている。
第1部分39aと第2部分39bとは、互いに同一形状に形成されており、周方向において対称に配置されている。
第1部分39a及び第2部分39bの各々の曲率半径(円弧状の部分の曲率半径)は、例えば、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径(円弧状の部分の曲率半径)よりも大きい。
本変形例の場合、筒状部10を軸方向に視たときに、接続部30の全体は、径方向外方に向けて凸の円弧状となっている。また、接続部30の全体が、筒形状405の内側に収まっている。
【0041】
図13(b)に示すように、本変形例の場合も、接続部30は、複数のジグザグ延在部20の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状405の内側に収まっている。筒状部10の周方向において、接続部30の両端(一端30a、他端30b)の各々は、接続部30の中央部30cよりも、筒形状の内寄りに配置されている。なお、図13(b)においては、便宜的に接続部30の両端の各々の切断面(筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面)を破線で図示している。
【0042】
本変形例の場合も、ジグザグ延在部20において、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径が最も小さくなっており、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径は、例えば、接続部30の曲率半径と等しい。
また、ジグザグ延在部20において、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径が最も大きい。
より詳細には、図13(b)に示すように、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、接続部30の曲率半径は、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。なお、図13(b)では、一例として、中間部33のB-B線に沿った切断面を示しているが、接続部30におけるその他の部位においても、外周面の曲率半径が、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。
また、図13(a)に示す筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第1頂部25の曲率半径は、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。同様に、図示は省略しているが、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第2頂部27の曲率半径は、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。
更に、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、接続部30の曲率半径は、第1頂部25の曲率半径、及び、第2頂部27の曲率半径と互いに等しい。
また、図13(c)に示す筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第1延在部22の曲率半径と、第2延在部23の曲率半径とは、それぞれ接続部30の曲率半径よりも大きい。
【0043】
また、本変形例の場合も、周方向において、接続部30の寸法(図12に示すL2)は、当該接続部30を介して接続されているジグザグ延在部20の互いに近接する頂点どうしの距離(図12に示すL1)よりも大きい。
【0044】
<変形例4>
次に、図14を用いて実施形態の変形例4に係るステント100を説明する。
本変形例に係るステント100は、以下に説明する点で、上記の変形例3に係るステント100と相違しており、その他の点では、上記の変形例3に係るステント100と同様に構成されている。図12は、ステント100を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し平坦に展開した状態を示す図であり、図12における上下方向は、ステント100の周方向と対応している。
【0045】
本変形例の場合も、変形例3と同様に、接続部30の全体が屈曲しており、その径方向に視た形状は略S字状となっている。
ただし、本変形例の場合、接続部30は、1つのジグザグ延在部20の第1延在部22と、当該第1延在部22に近接する他のジグザグ延在部20の第2延在部23と、を互いに接続している。
また、第1部分39aの曲率半径は、変形例3の第1部分39aの曲率半径より大きく、第2部分39bの曲率半径は、変形例3の第2部分39bの曲率半径より大きい。
本変形例の場合も、ステント100が拡径する際に、隣接するジグザグ延在部20どうしの軸方向における相対的な変位を接続部30によって適度に規制し、より確実に、意図した変位量でステント100が伸長するようにできる。
【0046】
<変形例5>
次に、図15から図16(c)を用いて実施形態の変形例5に係るステント100を説明する。
本変形例に係るステント100は、以下に説明する点で、上記の実施形態及び変形例1~4に係るステント100と相違しており、その他の点では、上記の実施形態及び変形例1~4に係るステント100と同様に構成されている。図15は、ステント100を周方向における一箇所において、その軸方向に沿って切断し平坦に展開した状態を示す図であり、図15における左右方向は、ステント100の周方向と対応している。
【0047】
本変形例の場合、接続部30は、上記の実施形態及び変形例1、4と同様に、1つのジグザグ延在部20の第2延在部23と、当該第2延在部23に近接する他のジグザグ延在部20の第2延在部23と、を互いに接続している。ただし、中間部33の全体は、変形例3の接続部30のように、その全体が屈曲しており、その径方向に視た形状は略S字を斜めに配置した形状になっている。
【0048】
中間部33は、例えば、周方向における一方(例えば、図15における左方)に向けて凸の円弧状となっている第1部分39aと、周方向における他方(例えば、図15における右方)に向けて凸の円弧状となっている第2部分39bと、を含む。
第1部分39aと第2部分39bとは、互いに同一形状に形成されており、周方向において対称に配置されている。
第1部分39a及び第2部分39bの各々の曲率半径(円弧状の部分の曲率半径)は、例えば、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径(円弧状の部分の曲率半径)よりも大きい。
一端部31及び他端部32の各々は、直線状に延在しており、軸方向に対して交差する方向(例えば、図15における右上がり方向)に傾斜している。
【0049】
本変形例の場合も、接続部30は、複数のジグザグ延在部20の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状405の内側に収まっている。
【0050】
本変形例の場合も、ジグザグ延在部20において、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径が最も小さくなっており、第1頂部25及び第2頂部27の各々の曲率半径は、例えば、接続部30の曲率半径と等しい。
また、ジグザグ延在部20において、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径が最も大きい。
より詳細には、図16(b)に示すように、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、接続部30の曲率半径は、ジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。なお、図16(b)では、一例として、中間部33のB-B線に沿った切断面を示しているが、接続部30におけるその他の部位においても、外周面の曲率半径が、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも小さい。
また、図16(c)に示すように、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第1延在部22の曲率半径と、第2延在部23の曲率半径とは、それぞれ接続部30の曲率半径よりも大きい。
また、図16(a)に示すように、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第1頂部25の曲率半径は、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。同様に、図示は省略しているが、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、第2頂部27の曲率半径は、第1延在部22及び第2延在部23の各々の曲率半径よりも小さい。
更に、筒状部10の軸心に対して直交する方向に沿った切断面において、接続部30の曲率半径は、第1頂部25の曲率半径、及び、第2頂部27の曲率半径と互いに等しい。
【0051】
以上、図面を参照して実施形態及び各変形例を説明したが、これらは本発明の例示であり、本発明は上記の実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0052】
また、ステント100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等が許容される。
【0053】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)筒状部を有するステントであって、
前記筒状部は、
当該筒状部の軸方向にジグザグに振れつつ周方向に延在している環状の複数のジグザグ延在部を、前記軸方向において互いにずれた配置で複数有するとともに、
前記軸方向に隣り合う前記ジグザグ延在部どうしを接続している接続部を有し、
前記筒状部の周方向において、環状の前記ジグザグ延在部の曲率半径よりも、前記接続部の曲率半径の方が小さいステント。
(2)前記接続部は、前記複数のジグザグ延在部の集合体を最小径で包絡する仮想の筒形状の内側に収まっている(1)に記載のステント。
(3)前記筒状部の周方向において、前記接続部の両端の各々は、前記接続部の中央部よりも、前記筒形状の内寄りに配置されている(2)に記載のステント。
(4)前記接続部は、前記周方向における当該接続部の両端どうしを繋ぐ両端接続部を有し、
前記両端接続部は、
径方向に視た形状が直線状の直線部と、
前記直線部の両端にそれぞれ連なっている屈曲形状の屈曲部と、
を有する(1)から(3)のいずれか一項に記載のステント。
(5)前記筒状部の周方向において、前記ジグザグ延在部の互いに近接する頂点部分の曲率半径と、前記両端接続部の曲率半径と、が互いに等しい(4)に記載のステント。
(6)前記周方向において、前記接続部の寸法は、当該接続部を介して接続されている前記ジグザグ延在部の互いに近接する頂点どうしの距離よりも大きい(1)から(5)のいずれか一項に記載のステント。
(7)前記筒状部を覆う被覆部を有する(1)から(6)のいずれか一項に記載のステント。
【符号の説明】
【0054】
10 筒状部
20 複数のジグザグ延在部
22 第1延在部
23 第2延在部
25 第1頂部
25a 頂点
27 第2頂部
27a 頂点
29 細溝部
30 接続部
30a 一端
30b 他端
30c 中央部
31 一端部
32 他端部
33 中間部
35 両端接続部
36 直線部
36a 一端
36b 他端
38 屈曲部
39a 第1部分
39b 第2部分
40 端部巻回部
42 山部
44 谷部
46 ストラット部
50 樹脂膜
52 逆止弁部
54 マーカー部
60 被覆フィルム(被覆部)
100 ステント(カバードステント)
300 生体管腔
401、402 ジグザグ延在部の配置領域
405 仮想の筒形状
【要約】
【課題】ステントを生体管腔内により容易に留置することが可能なステントを提供する。
【解決手段】ステント100は、筒状部10を有するステントであり、筒状部10は、当該筒状部10の軸方向にジグザグに振れつつ周方向に延在している環状の複数のジグザグ延在部20を、軸方向において互いにずれた配置で複数有するとともに、軸方向に隣り合うジグザグ延在部20どうしを接続している接続部30を有し、筒状部10の周方向において、環状のジグザグ延在部20の曲率半径よりも、接続部30の曲率半径の方が小さい。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16