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  • 特許-カーボン材料造粒物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】カーボン材料造粒物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/14 20060101AFI20250213BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20250213BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20250213BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20250213BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20250213BHJP
   H01M 4/62 20060101ALN20250213BHJP
【FI】
C08L101/14
C08K3/04
C08K7/06
C01B32/05
C01B32/168
H01M4/62 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024008979
(22)【出願日】2024-01-24
【審査請求日】2024-06-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075186
【氏名又は名称】株式会社DR.GOO
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】久 英之
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-177722(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114142029(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112750627(CN,A)
【文献】特開2020-079342(JP,A)
【文献】国際公開第2023/149136(WO,A1)
【文献】特開2007-090827(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115991523(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K-6219-4に記載の方法による粒径が500μm以下であるカーボンブラックと、下記条件1および下記条件2のいずれか一方を満たすカーボンナノチューブと、前記カーボンブラックおよび前記カーボンナノチューブに添着した水溶性ポリマーと、を含有するカーボン材料造粒物を製造する方法であって、
JIS K-6219-4に記載の方法による粒径が500μm以下であるカーボンブラックと、前記条件1および前記条件2のいずれか一方を満たすカーボンナノチューブと、を混合して、混合物を得る工程と、
前記水溶性ポリマーを水に溶解させて、バインダー溶液を調製する工程と、
前記混合物に、前記バインダー溶液を少量ずつ添加しながら混合し、造粒して、カーボン材料造粒物を得る工程と、を備える、
カーボン材料造粒物の製造方法。
(条件1)
黒鉛化処理が施された後に、粉砕処理が施されたカーボンナノチューブであって、前記カーボンナノチューブの粒径D50が100μm以下である。
(条件2)
カーボンナノチューブ粉末、或いは、カーボンナノチューブ粒状物に粉砕処理が施されたカーボンナノチューブに、黒鉛化処理が施されている。
【請求項2】
JIS K-6219-4に記載の方法による粒径が500μm以下であるカーボンブラックと、下記条件1および下記条件2のいずれか一方を満たすカーボンナノチューブと、前記カーボンブラックおよび前記カーボンナノチューブに添着した水溶性ポリマーと、を含有するカーボン材料造粒物を製造する方法であって、
JIS K-6219-4に記載の方法による粒径が500μm以下であるカーボンブラックと、前記条件1および前記条件2のいずれか一方を満たすカーボンナノチューブと、を混合して、混合物を得る工程と、
前記水溶性ポリマーを水に溶解させて、バインダー溶液を調製する工程と、
前記混合物に、前記バインダー溶液を混合し、湿潤状混合物を得る工程と、
前記湿潤状混合物を、造粒して、カーボン材料造粒物を得る工程と、を備える、
カーボン材料造粒物の製造方法。
(条件1)
黒鉛化処理が施された後に、粉砕処理が施されたカーボンナノチューブであって、前記カーボンナノチューブの粒径D50が100μm以下である。
(条件2)
カーボンナノチューブ粉末、或いは、カーボンナノチューブ粒状物に粉砕処理が施されたカーボンナノチューブに、黒鉛化処理が施されている。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカーボン材料造粒物の製造方法において、
前記水溶性ポリマーが、ポリマー系の界面活性剤、および高分子ポリマーからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、および両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記高分子ポリマーが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリブチレンイミン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化澱粉、およびゼラチンからなる群から選択される少なくとも1つである、
カーボン材料造粒物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン材料造粒物、およびカーボン材料造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池(以下Libと記すことがある)は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、または、自動車(例えば、EV、HEV、P-HEV)などに用いられ、各種産業の生産性向上または生活の質的改善などに多大な貢献をしている。Libの電極としては、リチウムイオンを含む正極活物質、導電助剤、および有機バインダーなどからなる電極合材を金属箔の集電体に固着させた正極、並びに、リチウムイオンの脱挿入可能な負極物質、導電助剤、および有機バインダーなどからなる電極合材を金属箔の集合体の表面に固着させた負極から形成されている。
【0003】
通常、正極材料としては、コバルト酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられているが、これらは電子伝導性が低く、単独での使用では、十分な電池性能が得られない。そこで、カーボンブラック(以下CBと記すことがある)、中でもアセチレンブラックまたはケッチェンブラックなどを導電助剤として添加することで、導電性を改善し電極の内部抵抗の低減を図っている。
しかしながら、Lib業界またはそれのユーザーサイドからは、さらなる高容量化と高安全性、さらには、充放電を繰り返すことによるサイクル劣化の低減化といった一段高い性能品を求められている。
【0004】
そして、この要望に応える対策の一つとしては、特に正極の導電助剤として従来のCBにカーボンナノチューブ(以下CNTと記すことがある)をブレンドしたり、CNTを単独で使用するといった手段に加え、CBとCNTを均一ブレンド後、ポリマーを添加しながら造粒した造粒物を使用するなどの改善も試みられている。
【0005】
CB粒状物とCNT粒状物とを、所定条件を満たすように、乾式粉砕し、混合して混合物を得る工程と、特定の溶媒可溶性ポリマーを溶媒に溶解させて、バインダー溶液を調製する工程と、前記混合物に、所定量の前記バインダー溶液を添加しながら混合し、造粒して、カーボン材料造粒物を得る工程と、を備えるカーボン材料造粒物の製造方法(特許文献1参照)がある。
【0006】
金属不純物が混在するCNTを正極の導電助剤として用いた場合、正極は酸化雰囲気であるため、鉄またはコバルトなどの遷移金属は酸化されて溶出する可能性がある。また、金属不純物が混在するCNTを負極に用いた場合も、金属析出が起きる可能性がある。最悪は、溶出した金属または析出した金属によりセパレーターの隔膜が破れ、結果として、内部短絡が起きることである。さらに、これらの金属不純物は、最初は微小な物であっても、電池を使用しているうちにその析出物が大きく成長し、セパレーターを破ることもある。内部短絡の無い、また、部分的な発熱または劣化もない安全性に優れたLibを作るには、導電助剤に用いるCNTの金属不純物を可能な限り低減するとともに、分散性に優れたCNTの使用が重要になってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第7126666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金属不純物を低減でき、かつ、分散性に優れているカーボン材料造粒物、並びに、カーボン材料造粒物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示すカーボン材料造粒物、および、カーボン材料造粒物の製造方法が提供される。
[1] JIS K-6219-4に記載の方法による粒径が500μm以下であるカーボンブラックと、下記条件1および下記条件2のいずれか一方を満たすカーボンナノチューブと、前記カーボンブラックおよび前記カーボンナノチューブに添着した溶媒可溶性ポリマーと、を含有する、
カーボン材料造粒物。
(条件1)
黒鉛化処理が施された後に、粉砕処理が施されたカーボンナノチューブであって、前記カーボンナノチューブの粒径D50が100μm以下である。
(条件2)
カーボンナノチューブ粉末、或いは、カーボンナノチューブ粒状物に粉砕処理が施されたカーボンナノチューブに、黒鉛化処理が施されている。
[2] [1]に記載のカーボン材料造粒物において、
前記溶媒可溶性ポリマーは、水溶性ポリマーであり、
前記溶媒は、水である、
カーボン材料造粒物。
[3] [1]または[2]に記載のカーボン材料造粒物を製造する方法であって、
JIS K-6219-4に記載の方法による粒径が500μm以下であるカーボンブラックと、前記条件1および前記条件2のいずれか一方を満たすカーボンナノチューブと、を混合して、混合物を得る工程と、
前記溶媒可溶性ポリマーを溶媒に溶解させて、バインダー溶液を調製する工程と、
前記混合物に、前記バインダー溶液を少量ずつ添加しながら混合し、造粒して、カーボン材料造粒物を得る工程と、を備える、
カーボン材料造粒物の製造方法。
[4] [1]または[2]に記載のカーボン材料造粒物を製造する方法であって、
JIS K-6219-4に記載の方法による粒径が500μm以下であるカーボンブラックと、前記条件1および前記条件2のいずれか一方を満たすカーボンナノチューブと、を混合して、混合物を得る工程と、
前記溶媒可溶性ポリマーを溶媒に溶解させて、バインダー溶液を調製する工程と、
前記混合物に、前記バインダー溶液を混合し、湿潤状混合物を得る工程と、
前記湿潤状混合物を、造粒して、カーボン材料造粒物を得る工程と、を備える、
カーボン材料造粒物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、金属不純物を低減でき、かつ、分散性に優れているカーボン材料造粒物、並びに、カーボン材料造粒物の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に用いる押し出し造粒機の一例を示す概念図である。
図2】実施例1、比較例1および2、並びに、参考例1~4で得られた樹脂組成物における分散性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。以下、カーボン材料造粒物を、単に「造粒物」とも記す場合がある。
【0013】
[カーボン材料造粒物]
まず、本実施形態に係るカーボン材料造粒物について説明する。
本実施形態に係る造粒物は、特定の粒径以下のCBと、特定の条件を満たすCNTと、前記CBおよび前記CNTに添着した溶媒可溶性ポリマーと、を含有するものである。
本実施形態により、金属不純物を低減でき、かつ、分散性に優れているカーボン材料造粒物が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
【0014】
まず、金属不純物を低減できる理由は、CNTに黒鉛化処理が施されていることである。黒鉛化処理は、例えば2000℃以上の高温での加熱処理であり、この黒鉛化処理により、CNTに混在する触媒由来の金属不純物(触媒金属)を除去できる。これに対し、CNTに混在する触媒由来の金属不純物を除去する別の方法としては、(i)硫酸、塩酸、およびフッ化水素酸などの少なくとも一種を含む酸性溶液中にCNTを浸漬し、金属を溶解除去する方法、或いは、(ii)CNTにマイクロウエーブを照射して金属不純物を金属酸化物に転換することで、二次電池の作動電圧において非活性でかつ電解液に溶出されない金属酸化物に転換させる方法などがある。このうち、前記(i)の酸処理方法は、酸洗後に熱処理(600℃未満)を施しても、CNT表面に酸イオンが残留するので、正極物質が腐食するおそれがあり、また、CNTに損傷を与えて格子欠陥を生じさせることもある。また、触媒金属は、表面がグラファイト層で覆われているので、酸溶液を用いる処理のみでは、グラファイト層に邪魔されて触媒金属に酸溶液が到達せず触媒金属を完全に溶出除去することができない。さらに、前記(ii)のマイクロウエーブ照射法では、CNTが酸化され、CNTの導電性が低下するという問題がある。
このように、CNTに黒鉛化処理を施す方法は、CNTに混在する触媒由来の金属不純物(触媒金属)を除去する方法として、最適である。
【0015】
一方で、CNTに黒鉛化処理が施されている場合には、CNTの結晶化が進み、樹脂への分散性が低下してしまうという問題がある。しかしながら、本実施形態においては、黒鉛化処理の前後に、粉砕処理が施されていて、微粉末となっているか、或いは、予め微粉末となっているCNTに黒鉛化処理が施されている。そして、このように微粉末にされていることにより、CNTの樹脂への分散性を向上させている。そのため、本実施形態に係る造粒物は、金属不純物を低減でき、かつ、分散性に優れているものと本発明者は推察している。
【0016】
(カーボンブラック)
本実施形態に用いるCBは、JIS K-6219-4に記載の方法による粒径が500μm以下であるものである。
CNTの粒度分布の測定は、JIS K-6219-4の「造粒粒子の大きさの分布の求め方」で測定する。測定器としては、網ふるいを重ねて使う分級方式であり、振動の与えかたの違いで、音波振動式、ロータップ式、または電磁式などがある。音波振動式のメーカーとしては、(株)はつらつ、または(株)セイシン企業がある。また、ロータップのメーカーとしては、前述の2社に加え、(株)シー・エム・テイ、またはアズワン(株)などがある。電磁式振とうふるい機のメーカーとしては、筒井理化学品(株)などがある。具体的な測定方式としては、(株)シー・エム・テイ製のロータップ式を例にとると、直径200mmの網ふるいを4段から6段重ねロータップにセットする。網の種類としては、通常、10メッシュ(目開き1000μm)、30メッシュ(500μm)、60メッシュ(250μm)、100メッシュ(150μm)の組み合わせが一般的であるが、これに86メッシュ(2000μm)と149メッシュ(100μm)を追加し測定する場合もある。測定においては、最下部に受け皿を取り付けた後、最上部の網ふるいに造粒品100gを入れ、蓋をセットした後、振とう数290rpm、振幅28mm、打数156t.p.mの条件で1分間振とうした後、各ふるいの上部と目開きに詰まっている造粒物を掻き落とし、それらの重量を測定し、粒度分布を算出する。なお、全通したメッシュのうち、目開きが最も小さいメッシュでの目開きの値が、粉砕品の粒径である。
粉砕後の好適粒径は、ロータップ式分級方式で見た場合、10μm以上500μm以下であることが好ましく、25μm以上250μm以下であることがさらに好ましい。500μmより大きくなると凝集塊が多くなり分散性が悪くなるだけでなく、CBとCNTの均一混合性も悪くなる。また、10μmより細かくする処理は、工業的規模の生産になるため容易では無く、処理できたとしても処理に長時間を要し現実的でない。また、CNTの繊維が切断する処理でもあり、導電性が悪くなるので好ましくない。さらに、CBとCNTをブレンドした後で粉砕する場合の粒径は、CNTと同程度にすることが好ましい。
【0017】
CBとしては、サーマル法またはアセチレン分解法などの熱分解法、オイルファーネス法など不完全燃焼法で得られるもの、および、テキサス法、ファーザー法、またはシェル法など重質油のガス化プロセスで得られるものなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
具体的には、例えば、東海カーボン社製の#4000および#5000シリーズ、三菱ケミカル社製の#3000シリーズ、デンカ社製のFX、HS、デンカブラックなど、ビルラカーボン社製のConductexシリーズ、キャボット社製のVulcanシリーズやLITXシリーズ、イメリス・ジーシー社製のENSACOシリーズ、および、SuperP-Liシリーズ、オリオン・エンジニアカーボンズ社製のプリンテックスLなどが挙げられる。
【0018】
(カーボンナノチューブ)
本実施形態に用いるCNTは、下記条件1および下記条件2のいずれか一方を満たすものである。
(条件1)
黒鉛化処理が施された後に、粉砕処理が施されたカーボンナノチューブであって、前記カーボンナノチューブの粒径D50が100μm以下である。
(条件2)
カーボンナノチューブ粉末、或いは、カーボンナノチューブ粒状物に粉砕処理が施されたカーボンナノチューブに、黒鉛化処理が施されている。
【0019】
(黒鉛化処理)
本実施形態における黒鉛化処理は、非酸化性の雰囲気下にて、2000℃以上3000℃以下の温度で加熱処理を行うことである。
黒鉛化処理をより具体的に述べると、酸素を断った雰囲気下(例えば窒素気流中、真空中、または炭素紛(別名つめ粉とも呼び、通常コークス紛またはCBが使用される)の中)で、CNTを2000℃以上に、加熱保持することにより行われる。この場合、酸素が雰囲気中に存在すると得られるCNTの収量が減少するので、雰囲気中の酸素濃度は1容量%以下とすることが望ましい。この黒鉛化処理を大規模に行う場合には、アチソン式電気炉を用いることが有利である。他方、小規模で行う場合には、黒鉛パイプ中に所定量のCNTを充填し、これを炭素紛中に埋没させたのち、パイプの両端に交流電流を通せばよい。
このように、黒鉛化処理においては、CNTを、2000℃以上3000℃以下に加熱することが好ましく、2500℃以上2900℃以下に加熱することがより好ましく、2700℃以上2900℃以下に加熱することが特に好ましい。このような温度範囲で加熱すると、CNTの結晶子が再配列されて形状が変化し、線径はやや小さくなるが、結晶性は成長する。また、処理温度が高くなるほど、表面の官能基または金属不純物を低減化できる。ただし、処理温度が高くなるほど、黒鉛化前のCNTにあった一次凝集体または二次凝集体の絡みが熱処理によって強固になり、樹脂などに配合した際の分散性が悪くなると考えられている。
【0020】
(粉砕処理)
本実施形態における粉砕処理としては、乾式粉砕および湿式粉砕があり、その目的に応じ使い分けることができる。なお、黒鉛化処理が施されたCNTの分散性が低下する理由は、CNT繊維の複雑で強固な絡みが、通常の分散機または分散手法では、解せなかったためと考えている。この強固な絡みを解すには、強力な粉砕手段を用いることが好ましい。
また、本実施形態においては、乾式粉砕を用いることが好ましい。乾式粉砕の場合、目的とする粒度や粒度分布などにより用いる粉砕機が異なる。例えば、数十μm以下の微粉砕を目的とした場合は、ジェットミル、ピンミル、振動ボールミル、または遊星ミルなどが使用される。粉砕機メーカーのうち、ジェットミルタイプの粉砕機メーカーとしては、(株)セイシン企業、(株)アイシンナノテクノロジーズ、または(株)アーステクニカなどが挙げられる。また、ピンミルのメーカーとしては、槙野産業(株)、(株)西村機械製作所、またはホソカワミクロン(株)などが挙げられる。さらに、インペラ―ミルのメーカーとしては、(株)セイシン企業、または(株)アーステクニカなどが挙げられる。
【0021】
(CNTの粒径)
前記条件1を満たすCNTの粒径D50は、100μm以下であることが必要である。また、前記条件2を満たすCNTの粒径D50は、100μm以下であることが好ましい。
CNTの粒度分布の測定は、ISO13320に定められているレーザー回析・散乱法で求める。測定器としては、レーザーマイクロンサイザーLMS-3000(セイシン企業社製)を用いて行った。この装置の測定可能範囲は、0.01~3500μmである。水分散媒は、純水50mLに界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製の商品名エマルゲン705)を0.05g添加して作製した。測定は、内容積20mLのバイアル瓶にCNTを10mg秤量し、水分散媒10mLを入れた後、超音波分散機で約10分間分散させた。測定器の光学モデルをCNTは1.520と、また、水は1.333と、それぞれの屈折率に設定して測定した。
CNTの好適粒径D50は、10μm以上100μm以下であり、好ましくは、10μm以上50μm以下である。50μmよりも大きくなると凝集塊が多く存在し、分散性が悪くなる。また、10μmよりも細かくする処理はCNTの繊維が切断する処理でもあり、導電性が悪くなるので好ましくない。
【0022】
(原料CNT)
原料としてのCNTとしては、繊維径は、現在の技術で製造可能な0.3nmであるが、0.3nmより細くてもよい。また、繊維径が50nmよりも大きくなるにつれ電気的、機械的物性が低下する傾向があり、100nmよりも大きくなるとCBまたはカーボンナノファイバーなどとの優位性がなくなる傾向がある。
また、本実施形態においては、CNTが立体構造的ネットワークを効率的に形成するという観点から、CNTの繊維径は、3nm以上50nm以下であることがより好ましく、5nm以上40nm以下であることがさらに好ましく、10nm以上30nm以下であることが特に好ましい。
CNTの繊維長は、導電性、機械的物性、または分散性に関係する。CNTの繊維長は、0.1μm以上2000μm以下であることが好ましく、1μm以上1000μm以下であることがより好ましい。繊維長が小さくなるにつれ、導電性または機械的物性が発現し難くなる傾向がみられる、繊維長が大きくなるにつれ、繊維の絡み合いが強くなるため分散不良塊が多くなるだけでなく混練分散時に繊維の切断が多くなり好ましくない傾向がみられる。
CNTのアスペクト比としては、10~10000程度である。また、CNTとしては、六角網目状のグラファイトシートが円筒状をなした構造物が好適に用いられる。CNTは、単層のCNT、多層のCNTいずれでもよく、最終の目的に応じて選択できる。また、CNTの製造方法に関しても制限されるものではない。CNTの製造方法としては、炭素含有ガスを触媒と接触させる熱分解法、炭素棒間にてアーク放電を発生させるアーク放電法、カーボンターゲットにレーザーを照射するレーザー蒸発法、金属微粒子の存在下で炭素源のガスを高温で反応させるCVD法、および、一酸化炭素を高圧下で分解するHiPco法などが挙げられる。また、CNTに、金属原子をドープしてもよい。
【0023】
(CNTの配合量)
本実施形態に係る造粒物において、CNTの配合量は、CBおよびCNTの合計配合量100質量%に対して、5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
CNTの配合量が前記上限以下であれば、CNTの分散性をさらに向上できる。CNTの配合量が前記下限以上であれば、導電性をさらに向上できる。
【0024】
(溶媒可溶性ポリマー)
本実施形態に用いる溶媒可溶性ポリマーは、CBおよびCNTに添着されている。
カーボンナノチューブは、嵩密度が低いことによる作業性の悪さ、また飛散性による環境汚染が発生するため、安全性面でも問題があると言われている。この問題を解決するため、本実施形態においては、溶媒可溶性ポリマーをCNTとCBに添着させている。
【0025】
溶媒可溶性ポリマーとしては、水、有機溶剤、およびそれらの混合物である溶媒に溶解するものであれば使用できる。溶媒としては、水、有機溶剤、およびそれらの混合物であるが、中でも最も好ましいのは水である。また、溶媒として水を用いる場合、溶媒可溶性ポリマーは、水溶性ポリマーである。溶媒可溶性ポリマーとしては、ポリマー系の界面活性剤、および高分子ポリマーなどが挙げられる。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、および両性界面活性剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
高分子ポリマーとしては、エーテル系ポリマー(ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシド)、およびポリプロピレングリコールなど)、ビニル系ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、およびポリビニルピロリドンなど)、アクリルアミド系ポリマー(ポリアクリルアミドなど)、アミン系ポリマー(ポリエチレンイミン、およびポリブチレンイミンなど)、セルロース系ポリマー(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)および澱粉系ポリマー(酸化澱粉、およびゼラチンなど)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、飛散性の低減、または分散性向上の観点から、グリコール系ポリマーを使用することがさらに好ましく、ポリエチレンオキシドを使用することが特に好ましい。
【0026】
本実施形態に係る造粒物において、溶媒可溶性ポリマーの配合量は、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブの合計配合量100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、3質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。
【0027】
[カーボン材料造粒物の製造方法]
次に、本実施形態に係る造粒物の製造方法について説明する。
本実施形態に係る造粒物の製造方法としては、以下に示す第一の製造方法、および第二の製造方法などが挙げられる。
【0028】
(カーボン材料造粒物の第一の製造方法)
本実施形態に係る造粒物の第一の製造方法は、CNTとCB粒状物を、必要に応じて粉砕して、混合する工程(粉砕混合工程)と、溶媒可溶性ポリマーを溶媒に溶解させて、バインダー溶液を調製する工程(溶液調製工程)と、CBおよびCNTの混合物に、前記バインダー溶液を少量ずつ添加しながら混合し、造粒して、カーボン材料造粒物を得る工程(造粒物調製工程)と、を備える方法である。
本実施形態に係る造粒物の第一の製造方法により、前述の本実施形態に係る造粒物を作製できる。ただし、前述の本実施形態に係る造粒物の製造方法は、本実施形態に係る造粒物の製造方法に限定されない。例えば、粉砕混合工程では、CNT粒状物とCBを用いて、これらに粉砕処理を行うが、粉砕処理後の同等のCNTまたはCBを用い、粉砕処理を省略してもよい。
【0029】
(粉砕混合工程)
粉砕混合工程においては、CB粒状物を特定の粒径以下に粉砕し、CNTを、前記条件1または前記条件2を満たすように、必要に応じて粉砕するとともに、これらを混合して、混合物を得る。ここで、乾式粉砕と混合の順序は、特に限定されない。(1)CB粒状物およびCNTをそれぞれ乾式粉砕し、その後、混合してもよく、(2)CB粒状物およびCNTを混合し、その後、乾式粉砕してもよい。
粉砕方法としては、乾式粉砕と湿式粉砕が有りその目的に応じ使い分けている。本発明では、乾式粉砕を用いるが、乾式の場合、目的とする粒度や粒度分布などにより用いる粉砕機が異なる。例えば、(1)中粉砕(10mm以下)を目的とした場合は、インペラーミル、ピンミル、またはローラーミルなどが使用され、(2)微粉砕(数十μm以下)を目的とした場合は、ジェットミル、ボールミル、振動ボールミル、または遊星ミルなどが使用される。
粉砕機のメーカーのうち、ジェットミルタイプの粉砕機のメーカーとしては、(株)セイシン企業、(株)アイシンナノテクノロジーズ、または(株)アーステクニカなどがある。また、ピンミルのメーカーとしては、槙野産業(株)、(株)西村機械製作所、またはホソカワミクロン(株)などがある。また、インペラーミルのメーカーとしては、(株)セイシン企業、または(株)アーステクニカなどがある。さらに、サニタリーロータリー方式解砕機のメーカーとしては、アイシン産業(株)、または(株)徳寿工作所などがある。中でも、原料ホッパーから混合機、または二軸押し出し機などへ密閉状態で粉砕しながら直接挿入できるものが、アイシン産業(株)製のサニタリータイプ解砕機、または(株)徳寿工作所製のランデルミル(RM-1N型)などである。
【0030】
(溶液調製工程)
溶液調製工程においては、溶媒可溶性ポリマーを溶媒に溶解させて、バインダー溶液を調製する。
溶媒可溶性ポリマーおよび溶媒は、前述のとおりである。
バインダー溶媒中の溶媒可溶性ポリマーの濃度は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
溶媒可溶性ポリマーの濃度が前記下限以上であれば、溶媒可溶性ポリマーをカーボン材料をより効率よく、添着させることができる。他方、溶媒可溶性ポリマーの濃度が前記上限を超える場合には、カーボン材料に対して充分に浸透せず、導電性能に弊害となる表面または孔に存在する空気を追い出すという効果が低下し、結果として導電性の低下を招いてしまう傾向がある。
溶媒可溶性ポリマーは、可能な限り薄い濃度で添加することにより、カーボン材料の空隙に溶媒可溶性ポリマーがより浸透しやすくなり、カーボン材料全体に均一コーティングが可能となる。また、バインダー溶液に界面活性剤を添加することにより、カーボン材料にバインダー溶液を浸透し易くすることができる。
【0031】
(造粒物調製工程)
造粒物調製工程においては、CBおよびCNTの混合物に、バインダー溶液を少量ずつ添加しながら混合して、カーボン材料造粒物を得る。
ここで用いる混合装置としては、バッチ式と連続式に大別できる。バッチ式の代表としては、ヘンシェル型撹拌混合機やバッチ式レーディゲミキサーなどが挙げられる。また、連続式としては、二軸スクリューの回転により混合する二軸ピン式混合機が挙げられる。
【0032】
ヘンシェル型としては、アーステクニカ社製「ハイスピードミキサー」シリーズ、テクノパウダル社製「SPG」シリーズ、日本コークス工業社製「FMミキサー」、カワタ社製「SMB」または「SM」シリーズ、および、パウレックス社製の「VG」シリーズなどが挙げられる。レーディゲミキサーは、(株)マツボー社が販売しているM20からM8000Dまで、色々の型式の物がある。
二軸ピン式としては、新日南社製「ダウ・ペレタイザー」などが挙げられる。
【0033】
造粒物調製工程において、連続式の混合を行う場合、ピン型混合機を例にとると、次のような工程となる。すなわち、回転体が作動している装置に、CNTとCBの混合物を投入口から定量装入し、投入口後段にある注入口からバインダー溶液を添加して混合し、排出口から造粒物を取り出し、後述する乾燥工程で乾燥させる。混合性能は、装置内での滞留時間で調整される。滞留時間を長くするほど、球状に近い混合物が得られる。所望の造粒物が得られない場合は、ピン型混合機を直列2段に増やして造粒する場合もある。回転体の回転速度は、500rpm以上3000rpm以下であることが好ましく、1000rpm以上2000rpm以下であることがより好ましい。
【0034】
一方、造粒物調製工程において、バッチ式の混合を行う場合、ヘンシェル型混合機を例にとると、次のような工程となる。すなわち、連続式の場合と同様に粉砕したカーボンナノチューブとカーボンブラックの粉体を混合機に所定量投入した後、回転翼で撹拌し、そこにバインダー溶液を少量ずつ添加し、混合状態を確認しながら溶媒を追加していき、所望の造粒物粒度になったところを見計らい、造粒物を取り出し、後述する乾燥工程で乾燥させる。回転翼の回転速度は、300rpm以上2500rpm以下であることが好ましく、500rpm以上2000rpm以下であることがより好ましい。
【0035】
造粒物調製工程の後に、カーボン材料造粒物を乾燥する工程(乾燥工程)を行う。乾燥には、真空乾燥および熱風乾燥などが用いられる。熱風乾燥機としては、振動/流動乾燥機、流動乾燥機、箱型乾燥機、およびドライヤー式乾燥機などが使用できる。一方、真空(減圧)乾燥機としては、真空棚段式乾燥機、減圧アウターミキサー型乾燥機、および箱型乾燥機などが使用できる。
【0036】
乾燥温度としては、溶媒可溶性ポリマーが劣化しない温度が好ましいことから、溶媒可溶性ポリマーの種類により最適温度または最高温度が存在するが、一般的には、40℃以上200℃以下であることが好ましく、50℃以上150℃以下であることがより好ましく、60℃以上100℃以下であることが特に好ましい。また、乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、通常、1時間以上20時間以下であり、2時間以上10時間以下であることが好ましい。
【0037】
(カーボン材料造粒物の第二の製造方法)
本実施形態に係る造粒物の第二の製造方法は、CNTとCB粒状物を、必要に応じて粉砕して、混合する工程(粉砕混合工程)と、溶媒可溶性ポリマーを溶媒に溶解させて、バインダー溶液を調製する工程(溶液調製工程)と、CBとCNTを混合しながら前記バインダー溶液を添加し、湿潤状混合物(造粒先駆体)を得る工程(湿潤状混合物調製工程)と、前記湿潤状混合物を、造粒して、カーボン材料造粒物を得る工程(造粒物調製工程)と、を備える方法である。
第二の製造方法においては、造粒物を調製する調製工程の点で、第一の製造方法とは異なっている。
以下の説明では、第一の製造方法との相違に係る部分を主に説明し、重複する説明については省略または簡略化する。
【0038】
(粉砕混合工程)
粉砕混合工程については、概ね前述のとおりである。
ただし、CBとCNTの混合は、粉砕品をヘンシェルミキサーやレーディゲミキサーなどの混合造粒機に投入し、さらにポリマーを溶解した水を添加させながら混合する方式でも良いが、粉砕無しで直接ヘンシェルミキサーなどの混合造粒機に投入し、ポリマー溶解水を加えず高速撹拌することで、造粒機内で粉砕し、その後ポリマー溶解水を加え、造粒先駆体である湿潤状混合物を作る方式でもよい。
【0039】
(溶液調製工程)
溶液調製工程については、前述のとおりである。
【0040】
(湿潤状混合物調製工程)
混合物調製工程においては、粉砕混合工程で得られた混合物に、溶液調製工程で得られたバインダー溶液を混合し、湿潤状混合物を得る。
ここで、バインダー溶液の配合量については、溶媒可溶性ポリマーの配合量に応じて調整することが好ましい。すなわち、溶媒可溶性ポリマーの配合量は、カーボンブラックおよびカーボンナノチューブの合計配合量100質量部に対して、0.01質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上12質量部以下であることがより好ましく、2質量部以上10質量部以下であることが特に好ましい。
【0041】
本実施形態においては、湿潤状混合物調製工程中、或いは、湿潤状混合物調製工程の後で、CBおよびCNTを剪断する剪断処理を行ってもよい。なお、本実施形態においては、前述の粉砕混合工程にて、CBおよびCNTは、十分に粉砕されているため、この剪断処理は必ずしも必要なわけではない。
【0042】
(造粒物調製工程)
造粒物調製工程においては、湿潤状混合物調製工程で得られた湿潤状混合物を、造粒して、カーボン材料造粒物を得る。なお、湿潤状混合物を造粒することで、連続造粒が可能となり、造粒物の生産効率を向上できる。
ここで用いる造粒機としては、押し出し造粒機、およびせん断破砕造粒機などが挙げられる。これらの中でも、生産効率の観点から、押し出し造粒機(図1参照、なお、図1は、押し出し造粒機の内部をモデル化したものである。)を使用することが特に好ましい。図1に示すように、押し出し造粒機は、スクリューケース1と、スクリュー2と、エクストラクト羽根3と、スクリーン4と、スクリーンホルダ5とを備えている。押し出し造粒機の主流は、スクリュー型押し出し造粒機であり、1軸と2軸の物がある。また、押し出すスクリーンダイの設置位置によりフロント押し出し機とサイド押し出し機の2種類に大別され、1軸スクリューの場合は、殆どが造粒室前端にスクリーンダイを装着する方式である。一方、2軸の場合は、造粒室両側にスクリーンダイを装着する物が多い。1軸と2軸の特徴を比較すると、押し出し圧力は、1軸の方が強いので、造粒品は比較的大粒径の物も可能であり、硬度も高い物ができる。2軸は、小さい粒径品が得意で、粒子の強度も弱いが、生産効率的には優れている。スクリュー型押し出し造粒機の機器やそれのメーカーとしては、(株)ダルトン製のペレッターダブルEXD型またはファインリューザーEXR型、(株)大川原製作所製のグラニュマスター、およびホソカワミクロン(株)製のエクストルードミックスEMなどがある。
せん断破砕造粒機としては、(株)富士薬品機械製のスピードミルHMシリーズ、または日本ニューマチック工業(株)製のチョッパーミルなどがある。
【0043】
造粒物調製工程の後には、必要に応じて、カーボン材料造粒物を乾燥する工程(乾燥工程)を行ってもよい。乾燥工程については、前述のとおりである。
【0044】
[カーボン材料造粒物の使用方法]
次に、本実施形態に係る造粒物の使用方法について説明する。
本実施形態に係る造粒物は、金属不純物を低減でき、かつ、分散性に優れているので、本実施形態に係る造粒物を用いて、リチウムイオン二次電池の構成材料として有用なカーボン材料含有樹脂組成物を作製できる。
【0045】
樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリフェノール樹脂、ポリウレア樹脂、およびポリエーテルスルフォン樹脂などが挙げられる。
【実施例
【0046】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例などの中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0047】
[調製例1]
内径4cm、長さ100cmの中空黒鉛パイプの両端に、電極を取り付け、交流を通電してパイプを直接加熱できる黒鉛化処理装置を準備した。この黒鉛化処理装置に、クムホペトロケミカル社製のペレット化したCNT粒状物(原料CNT)である「K-Nanos-100T」約15gを内径3cm、外径3.5cm、長さ10cmの円筒形黒鉛製容器に詰めた後、これを上記黒鉛パイプのほぼ中央に挿入したのち、黒鉛パイプの内部に窒素ガスを導入した。その後、黒鉛パイプに交流電流を通電し、温度2900℃にて、30分間の加熱処理(黒鉛化処理)を施して、黒鉛化CNTを作製した。
【0048】
[調製例2]
クムホペトロケミカル社製のペレット化したCNT粒状物(原料CNT)である「K-Nanos-100T」を、日本ニューマチック(株)製のジェットミル「PJM-80」を用いて、粉砕処理して、原料CNTの粉砕品を作製した。
【0049】
[調製例3]
調製例1で得られた黒鉛化CNTを、日本ニューマチック(株)製のジェットミル「PJM-80」を用いて、粉砕処理して、黒鉛化CNTの粉砕品を作製した。
黒鉛化CNTの粉砕品の粒度分布の測定は、ISO13320に定められているレーザー回析・散乱法で求めた。測定器としては、レーザーマイクロンサイザーLMS-3000(セイシン企業社製)を用いて行った。得られた粒度分布から、粒径D50の値を得た。黒鉛化CNTの粒径D50は、35μmであった。
【0050】
[参考例1~4]
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製の「J229E」)に、下記の各種CNTを2%配合し、プラストミルを用いて、210℃、100rpmで4分間混合することで、樹脂組成物を作成した。
参考例1:原料CNT
参考例2:調製例1で得られた黒鉛化CNT
参考例3:調製例2で得られた原料CNTの粉砕品
参考例4:調製例3で得られた黒鉛化CNTの粉砕品
【0051】
[実施例1、および比較例1~2]
(カーボン材料造粒物の作製)
まず、下記に示すカーボン材料、およびバインダー溶液の材料を準備した。バインダー溶液の製造は、具体的には、水3480gに溶媒可溶性ポリマー(ポリエチレンオキシド(PEO):分子量10万~20万、商品名「アルコックスR-150」、明成化学社製)120gを投入し、高速ホモミキサー(中央理化社製、LZB14-HM-1)を用い、3000rpmで5分間混合し、バインダー溶液を得た。
次に、カーボン材料造粒物の製造を行った。具体的には、レーディゲミキサー(レーディゲ社製、型式M20、容積20L)に、セイシン企業社製のピンミル(DD-2-3.7)で粉砕(粉砕後粒径40μm)したCB(デンカ社製、Li435)と各種CNTを360g投入し、250rpmで撹拌しながら、上部投入孔から3600gのポリマー水溶液を噴霧し15分間混合した後、水溶液の噴霧を止め15分間撹拌させ整粒を行い、湿潤状態のカーボン材料造粒物を得た。その後、熱風乾燥機にて乾燥を行い、カーボン材料造粒物を得た。
実施例1:黒鉛化CNTの粉砕品30%/CBの粉砕品70%
比較例1:黒鉛化CNT30%/CBの粉砕品70%
比較例2:原料CNTの粉砕品30%/CBの粉砕品70%
【0052】
(樹脂組成物の作製)
ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製の「J229E」)に、下記の各種CNTを2%配合し、プラストミルを用いて、210℃、100rpmで4分間混合することで、樹脂組成物を作成した。
【0053】
[CNT、カーボン材料造粒物および樹脂組成物の評価]
CNT、カーボン材料造粒物および樹脂組成物の特性(灰分、分散性、体積抵抗率)を以下のような方法で評価した。得られた結果を表1に示す。
(1)灰分
CNTまたはカーボン材料造粒物の灰分の測定は、JIS K-6218-2(ASTM D-1506)に準じて測定した。具体的には、サンプルを磁製坩堝に入れ、750℃または825℃で完全に灰化した後の残分量から、灰分(単位:%)を求めた。なお、灰分から、黒鉛化処理の進捗度合いが分かり、灰分が少ないほど、黒鉛化処理の進捗していることが分かる。また、灰分が少ないほど、CNTまたはカーボン材料造粒物中の金属不純物が少ないといえる。
(2)分散性
樹脂組成物の分散性の評価は、樹脂組成物を溶融プレスして薄片を作成し、その薄片を顕微鏡(拡大倍率50倍と200倍)の透過光を用いて、観察することで評価した。分散の度合いを、0~10の範囲で、評価した。なお、この数値が大きいほど、分散性が優れている。また、観察した写真(拡大倍率50倍)は、図2に示す。
(3)体積抵抗率
ラボプラストミルを用い、ポリカーボネート樹脂(帝人社製の「パンライトL-1225WP」)に、カーボン材料造粒物の配合量を、1.5%、1.7%、および、2%として混合した3点を、280℃、100rpmで4分間混練し、樹脂組成物を作製した。そして、樹脂組成物の体積抵抗率を測定した。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示す結果から、以下のことが分かった。
すなわち、黒鉛化CNTの粉砕品とCBとのブレンド造粒品(実施例1)は、黒鉛化CNTの未粉砕品とCBによる造粒品(比較例1)に比べ、分散性と体積抵抗率が大幅に向上しており、黒鉛化処理により触媒金属を大幅に低減したにも関わらず、分散性と体積抵抗率の観点でも、黒鉛化処理を施していないCNTとCBのブレンド造粒品(比較例2)に近似した性能を示すことが分かった。
以上のことから、本発明に係るカーボン材料造粒物は、金属不純物を低減でき、かつ、分散性に優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0056】
1…スクリューケース、2…スクリュー、3…エクストラクト羽根、4…スクリーン、5…スクリーンホルダ。
【要約】
【課題】金属不純物を低減でき、かつ、分散性に優れているカーボン材料造粒物を提供すること。
【解決手段】JIS K-6219-4に記載の方法による粒径が500μm以下であるカーボンブラックと、下記条件1および下記条件2のいずれか一方を満たすカーボンナノチューブと、前記カーボンブラックおよび前記カーボンナノチューブに添着した溶媒可溶性ポリマーと、を含有する、
カーボン材料造粒物。
(条件1)
黒鉛化処理が施された後に、粉砕処理が施されたカーボンナノチューブであって、前記カーボンナノチューブの粒径D50が100μm以下である。
(条件2)
カーボンナノチューブ粉末、或いは、カーボンナノチューブ粒状物に粉砕処理が施されたカーボンナノチューブに、黒鉛化処理が施されている。
【選択図】なし
図1
図2