(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】操作レバーおよび操作レバーを備えたシート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20250213BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20250213BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/20
B60N2/06
(21)【出願番号】P 2020208886
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】會田 真也
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-248631(JP,A)
【文献】特開2019-001259(JP,A)
【文献】特開2018-114931(JP,A)
【文献】特開2014-83952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
E05B 5/00-04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、前記シートの少なくとも一部を動かすための駆動機構
と、前記駆動機構を作動させるための操作レバー
とを備えた車両であって、
前記操作レバーは、
第1操作部と、当該第1操作部を操作可能にするための第2操作部とを有するレバー部材であって、回動軸を中心に、非使用時の第1位置と、前記第1位置から回動した第2位置と、前記第2位置から前記第1位置とは反対側に回動した第3位置との間で回動させることが可能であり、前記第1位置から前記第3位置まで回動する過程で前記駆動機構の被操作部と係合して前記駆動機構を作動させるレバー部材と、
前記レバー部材を回動可能に支持する支持部材とを備え、
前記レバー部材は、前記第1位置にある場合に、前記第1操作部の先端が、当該先端と隣接して配置された他の部材の対向部と対向しており、かつ、前記第2位置にある場合に前記第1操作部の先端と前記対向部との間に、前記第1位置にある場合よりも大きな隙間が形成され、
前記第2操作部は、押されて操作されるように配置され、レバー部材を前記第1位置から前記第2位置へ回動させるように操作することが可能であ
り、
前記回動軸は、前記シートの前後方向に延び、
前記操作レバーは、前記シートの後側に位置する荷室のフロアに上を向いた状態で、前記操作レバーの長手方向が左右方向を向くように、かつ、前記荷室のフロア部材の前縁部に沿って配置されていることを特徴とする
車両。
【請求項2】
前記第1操作部は、前記回動軸から離れる方向に延び、
前記第2操作部は、前記回動軸から前記第1操作部とは反対側に延び、
前記回動軸から前記第1操作部の先端までの距離は、前記回動軸から前記第2操作部の先端までの距離よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の
車両。
【請求項3】
前記レバー部材は、前記第1操作部の露出する上面である第1上面と前記第2操作部の露出する上面である第2上面とが一の平面上に位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の
車両。
【請求項4】
前記第1上面および前記第2上面は、前記
フロア部材の表面と面一であるか、または、前記
フロア部材の表面よりも突出していないことを特徴とする請求項3に記載の
車両。
【請求項5】
前記レバー部材は、前記第1位置から前記第2位置の間で前記駆動機構を作動させず、前記第2位置から前記第3位置の間で前記被操作部と係合して前記駆動機構を作動させることで、前記第2位置から前記第3位置まで回動させるのに必要なトルクよりも前記第1位置から前記第2位置まで回動させるのに必要なトルクの方が小さいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに1項に記載の
車両。
【請求項6】
前記支持部材は、前記対向部を有しており、
前記レバー部材が前記第1位置にある場合において、前記第1操作部の先端と前記対向部との距離は、前記第1操作部の最も薄い部分の厚み寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の
車両。
【請求項7】
前記第1操作部の露出する上面である第1上面には、シートの図が表示されていることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の
車両。
【請求項8】
シートの少なくとも一部を動かすための駆動機構を作動させるための操作レバーであって、
第1操作部と、当該第1操作部を操作可能にするための第2操作部とを有するレバー部材であって、回動軸を中心に、非使用時の第1位置と、前記第1位置から回動した第2位置と、前記第2位置から前記第1位置とは反対側に回動した第3位置との間で回動させることが可能であり、前記第1位置から前記第3位置まで回動する過程で前記駆動機構の被操作部と係合して前記駆動機構を作動させるレバー部材と、
前記レバー部材を回動可能に支持する支持部材とを備え、
前記レバー部材は、前記第1位置にある場合に、前記第1操作部の先端が、当該先端と隣接して配置された他の部材の対向部と対向しており、かつ、前記第2位置にある場合に前記第1操作部の先端と前記対向部との間に、前記第1位置にある場合よりも大きな隙間が形成され、
前記第2操作部は、押されて操作されるように配置され、レバー部材を前記第1位置から前記第2位置へ回動させるように操作することが可能であ
り、
前記回動軸は、前記シートの前後方向に延び、
前記操作レバーは、前記シートの後側に位置する荷室のフロアに上を向いた状態で、前記操作レバーの長手方向が左右方向を向くように、かつ、前記荷室のフロア部材の前縁部に沿って配置されることを特徴とする操作レバー。
【請求項9】
請求項
8に記載の操作レバーを備えたシート装置であって、
前記シートと、前記駆動機構と、前記シートを前後に移動可能に案内するスライド機構と、前記スライド機構を操作するためのスライド操作部とを備え、
前記スライド操作部と前記レバー部材とは、左右に並んで配置されていることを特徴とするシート装置。
【請求項10】
請求項
8に記載の操作レバーを備えたシート装置であって、
前記シートと、前記駆動機構と、チャイルドシートを固定するためのテザーアンカーとを備え、
前記テザーアンカーは、左右方向において、前記操作レバーが配置された範囲と重ならない位置に配置されたことを特徴とするシート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの少なくとも一部を操作するための操作レバーおよび当該操作レバーを備えたシート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のシートは、背もたれを倒したり、前後にスライドさせたりして、車内のレイアウトを変更することができるように構成されている。このため、車両のシートには、シートを動かす操作をするためのレバーが設けられる。そして、レバーの周囲には、レバーを操作可能にするための隙間が設けられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レバーの周囲に隙間があると、隙間に物が入ることがある。一方で、レバーの周囲に隙間がない場合には、レバーを手で操作することができない。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、周囲との隙間を小さくしたとしても操作を容易に行うことができる操作レバー、および、操作レバーを備えたシート装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、操作レバーを小型化することを目的とする。
【0007】
また、シート装置を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を達成するための操作レバーは、シートの少なくとも一部を動かすための駆動機構を作動させるための操作レバーであって、レバー部材と、支持部材とを備える。
レバー部材は、第1操作部と、当該第1操作部を操作可能にするための第2操作部とを有するレバー部材であって、回動軸を中心に、非使用時の第1位置と、第1位置から回動した第2位置と、第2位置から第1位置とは反対側に回動した第3位置との間で回動させることが可能であり、第1位置から第3位置まで回動する過程で駆動機構の被操作部と係合して駆動機構を作動させる。
支持部材は、レバー部材を回動可能に支持する。
レバー部材は、第1位置にある場合に、第1操作部の先端が、当該先端と隣接して配置された他の部材の対向部と対向しており、かつ、第2位置にある場合に第1操作部の先端と対向部との間に、第1位置にある場合よりも大きな隙間が形成される。
そして、第2操作部は、押されて操作されるように配置され、レバー部材を第1位置から第2位置へ回動させるように操作することが可能である。
【0009】
このような構成によれば、レバー部材が第1位置にある場合に第1操作部を手で操作することが不可能であっても、第2操作部を押してレバー部材を第1位置から第2位置に回動させて、第1操作部と対向部との間に隙間を作ることで、この隙間に指を入れて第1操作部を操作することが可能になる。このため、レバー部材と周囲の部材との隙間を小さくしたとしても、レバー部材の操作が容易である。
【0010】
前記した操作レバーにおいて、第1操作部は、回動軸から離れる方向に延び、第2操作部は、回動軸から第1操作部とは反対側に延び、回動軸から第1操作部の先端までの距離は、回動軸から第2操作部の先端までの距離よりも大きい構成であってもよい。
【0011】
このような構成によれば、第2操作部をコンパクトにして、操作レバーを小型化することができる。また、第1操作部が回動軸から長く延びることで、レバー部材にトルクをかけやすく、駆動機構を作動させやすい。
【0012】
レバー部材は、第1操作部の露出する上面である第1上面と第2操作部の露出する上面である第2上面とが一の平面上に位置する構成であってもよい。
【0013】
このように、レバー部材の上面が平面形状であることで、レバー部材をすっきりとしたデザインにすることができる。
【0014】
第1上面および第2上面は、レバー部材の周囲の部材の表面と面一であるか、または、レバー部材の周囲の部材の表面よりも突出していないことが望ましい。
【0015】
このような構成によれば、レバー部材が突出しないので、レバー部材が他の物と干渉せず、邪魔にならない。
【0016】
レバー部材は、第1位置から第2位置の間で駆動機構を作動させず、第2位置から第3位置の間で被操作部と係合して駆動機構を作動させることで、第2位置から第3位置まで回動させるのに必要なトルクよりも第1位置から第2位置まで回動させるのに必要なトルクの方が小さい構成であってもよい。
【0017】
このような構成によれば、第2操作部により第1位置から第2位置までレバー部材を回動させるのには、大きなトルクを必要としないので、第2操作部を操作しやすい。
【0018】
回動軸は、シートの前後方向に延びていてもよい。
【0019】
このような構成によれば、レバー部材が前後に出っ張らず、操作レバーを小型化することができる。
【0020】
支持部材は、前記した対向部を有していてもよい。レバー部材が第1位置にある場合において、第1操作部の先端と対向部との距離は、第1操作部の最も薄い部分の厚み寸法よりも小さい構成であってもよい。
【0021】
このように、第1操作部の先端と対向部との距離が小さいことで、第1操作部と対向部の隙間に物が入りにくい。
【0022】
第1操作部の露出する上面である第1上面には、シートの図が表示されていることが望ましい。
【0023】
このような構成によれば、第1操作部によりシートを動かすことができることをユーザが理解しやすい。
【0024】
前記した課題を解決するシート装置は、前記した操作レバーを備えたシート装置であって、シートと、駆動機構と、シートを前後に移動可能に案内するスライド機構と、スライド機構を操作するためのスライド操作部とを備える。
そして、スライド操作部とレバー部材とは、左右に並んで配置されている。
【0025】
このような構成によれば、スライド操作部とレバー部材とをコンパクトに配置して、シート装置を小型化することができる。
【0026】
また、前記した課題を解決するシート装置は、前記した操作レバーを備えたシート装置であって、シートと、駆動機構と、チャイルドシートを固定するためのテザーアンカーとを備える。
テザーアンカーは、左右方向において、操作レバーが配置された範囲と重ならない位置に配置されていてもよい。
【0027】
このような構成によれば、テザーアンカーと操作レバーの前後方向の位置を近づけたり、前後方向において、操作レバーの位置がテザーアンカーの配置された範囲と重なるようにしたりすることで、シート装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の操作レバーおよび操作レバーを備えたシート装置によれば、レバー部材と周囲の部材との隙間を小さくしたとしても、レバー部材の操作が容易である。
また、操作レバーを小型化することができる。
また、シート装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】車両用のシート装置を後から見た斜視図である。
【
図2】バネによるリクライニング動作の補助を説明する図(a)~(c)である。
【
図3】リクライニング機構の構成を説明する図であり、ロック状態(a)と、アンロック状態(b)を示す。
【
図4】後部フレームの一部と操作レバーを前側から見た斜視図である。
【
図5】後部フレームの一部と操作レバーを上から見た図である。
【
図7】レバー部材が第1位置にある場合の操作レバーの断面図である。
【
図8】レバー部材が第2位置にある場合の操作レバーの断面図である。
【
図9】レバー部材が第3位置にある場合の操作レバーの断面図である。
【
図10】テザーアンカーの固定方法の変形例に係る他の後部フレームを上から見た図である。
【
図11】操作レバーをより前に配置した例に係る後部フレームの(a)平面図と、(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る操作レバーLVを備えるシート装置1は、一例として、自動車の車両に設けられるシート装置である。より具体的には、シート装置1は、車両後部の荷室71の前に配置されるシート装置である。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートSを基準とする。
【0031】
シート装置1は、シートSと、リクライニング機構30と、スライド機構40と、操作レバーLVと、スライド操作部の一例としての操作ベルト45とを備えて構成されている。シートSは、着座部S1と、背もたれS2と、ヘッドレストS3とを備えてなる。
【0032】
背もたれS2は、リクライニング機構30を介して着座部S1に連結されている。
操作レバーLVは、レバー部材10と、レバー部材10を回動可能に支持する支持部材20と、を有している。レバー部材10は、ワイヤW1によってリクライニング機構30と接続されている。なお、リクライニング機構30およびワイヤW1は、駆動機構の一例である。
【0033】
操作ベルト45は、スライド機構40を操作するための部材であり、ワイヤW2によってスライド機構40と接続されている。スライド機構40は、シートSを前後に移動可能に案内する機構であり、公知のように、車両のフロアに固定されるロアレールと、ロアレールに対してスライド移動可能なアッパーレールと、アッパーレールのロアレールに対する移動をロックし、または、ロック解除するロック部材とを含んでなる。そして、ワイヤW2は、ロック部材を操作可能に操作ベルトとロック部材を接続している。
【0034】
図2(a)~(c)に示すように、リクライニング機構30は、背もたれS2を起こす動作を補助するスプリングSP1を有している。
スプリングSP1は渦巻ばねであり、着座部S1のフレームF1に固定されている。スプリングSP1は、外周の端部に径方向に延びるアームSP11を有している。背もたれS2のフレームF2は、左右に突出する突出部F21を有しており、スプリングSP1のアームSP11は、背もたれS2が前に倒されている場合(
図2(a)参照)に、突出部F21と係合する。着座部S1のフレームF1は、上部に、左右に突出する突出部F11を有している。
【0035】
シートSは、
図2(a)に示すような背もたれS2が前に倒された状態において、背もたれS2がスプリングSP1によって起こす方向に付勢され、背もたれS2を持ち上げる動作をスプリングSP1によって補助される。そして、
図2(b)に示すように、背もたれS2を完全に起こす前に、スプリングSP1のアームSP11が突出部F11に係合する。さらに、背もたれS2が、
図2(b)から
図2(c)まで回動する間は、アームSP11が突出部F11に係合して、突出部F21からは離れるので、背もたれS2を動かす動作は、スプリングSP1によって補助されない。
【0036】
図3に示すように、リクライニング機構30は、ベース部材31と、回動プレート32と、カム33と、シャフト34と、ロック部材36と、レバー37と、スプリングSP2とを備えてなる。
【0037】
ベース部材31は、着座部S1に固定される部材である。ベース部材31は、内歯車31Gとを有する。
【0038】
回動プレート32は、ベース部材31に対して回動可能な部材である。回動プレート32は、ロック部材36の移動をガイドするガイド部32Aを有する。回動プレート32は、背もたれS2に固定される。
【0039】
シャフト34は、ベース部材31および回動プレート32に対してリクライニング軸34Xを中心に回動可能である。
【0040】
ロック部材36は、シャフト34を挟んで両側に2つ設けられている。ロック部材36は、シャフト34に近づく方向と離れる方向(以下、「径方向」という。)にスライド移動可能である。具体的には、ロック部材36は、ガイド部32Aによって、径方向へのスライド移動をガイドされている。ロック部材36は、径方向外側の外周縁に、内歯車31Gと噛み合い可能なギヤ36Gを有している。ロック部材36は、図示しないスプリングによって径方向内側へ付勢されている。
【0041】
カム33は、2つのロック部材36の間に位置するおよそ楕円形の部材である。カム33は、回動プレート32に固定された2つのスプリングSP2によって、図における反時計回りに付勢されている。カム33とレバー37は、シャフト34に固定されており、カム33、シャフト34およびレバー37は、ベース部材31および回動プレート32に対して一体に回動するようになっている。
【0042】
レバー37は、ワイヤW1の端部の係合部D1と係合しており、ワイヤW1が引かれることによって図の時計回りに回動する。なお、ワイヤW1は、筒状のアウターケーブル63を通っている。
【0043】
このような構成により、
図3(a)に示すようなギヤ36Gが内歯車31Gに噛み合ったロック状態においてレバー37を引くと、カム33が時計回りに回動することで、ロック部材36が径方向内側へ移動するのが許容され、
図3(b)のようにギヤ36Gが内歯車31Gから離脱してシャフト34が回動可能となる。これにより、リクライニング機構30は、背もたれS2を着座部S1に対して回動可能なアンロック状態となる。
【0044】
図3(b)に示すアンロック状態から、レバー37を引くのを止めると、スプリングSP2の付勢力により、カム33が反時計回りに回動することでカム33がロック部材36を径方向外側へ押し出す。これにより、
図3(a)のようにギヤ36Gが内歯車31Gに係合して背もたれS2が着座部S1に対して回動不能となるロック状態となる。
【0045】
図4および
図5に示すように、操作レバーLVは、着座部S1のフレームF1に支持されている。具体的には、フレームF1は、後部に配置された後部フレーム50を有する。後部フレーム50は、左右に離間して配置されたサイドフレーム51,52と、サイドフレーム51の後部とサイドフレーム52の後部を連結するリアクロスメンバ53と、サイドフレーム51の前部とサイドフレーム52の前部を連結するフロントクロスメンバ54とを有する。
【0046】
リアクロスメンバ53には、第1ブラケット55と、第2ブラケット56が溶接により固定されている。第2ブラケット56は、第1ブラケット55に対して左に離れて配置されている。また、リアクロスメンバ53には、チャイルドシートを固定するためのテザーアンカー58が溶接により固定されている。
【0047】
操作レバーLVは、支持部材20の右端部が第1ブラケット55に固定され、支持部材20の左端部が第2ブラケット56に固定されている。そして、
図5に示すように、テザーアンカー58は、左右方向において、操作レバーLVが配置された範囲と重ならない位置に配置されている。
【0048】
図6に示すように、操作レバーLVは、レバー部材10と、支持部材20と、シャフト61と、トーションバネ62とを備えてなる。操作レバーLVは、シートSの少なくとも一部を動かすための駆動機構を作動させるための装置である。本実施形態においては、操作レバーLVは、シートSの一部である背もたれS2を動かすための駆動機構(リクライニング機構30およびワイヤW1)を作動させる。
【0049】
レバー部材10は、回動軸10Xを中心に、
図7に示す、非使用時の第1位置と、
図8に示す、第1位置から回動した第2位置と、
図9に示す、第2位置から第1位置とは反対側に回動した第3位置との間で回動させることが可能である。ワイヤW1は、先端に、駆動機構の被操作部である円柱形状の係合部D2を有する。レバー部材10は、第1位置から第3位置まで回動する過程で係合部D2と係合して駆動機構を作動させる。
【0050】
図6に戻り、レバー部材10は、第1操作部11と、第2操作部12と、軸受部13と、ワイヤ掛け部14と、を有している。
軸受部13は、シャフト61が入る貫通孔13Aを有しており、シャフト61に対して回動可能である。シャフト61の中心軸は、レバー部材10の回動軸10Xとなる。
第1操作部11および第2操作部12は、軸受部13から左右方向に延びている。具体的には、第1操作部11は、引いて操作されるように構成された部分であり、レバー部材10の回動軸10Xから右に離れる方向に延びている。第2操作部12は、押して操作されるように構成された部分であり、回動軸10Xから第1操作部11とは反対側、つまり、左に延びている。第2操作部12は、第1操作部11を操作可能にするための操作部である。
【0051】
第1操作部11は、露出する上面である第1上面11Uを有する。また、第2操作部12は、露出する上面である第2上面12Uを有する。第1上面11Uと第2上面12Uとは、一の平面上に位置する。つまり、第1操作部11の第1上面11Uと第2操作部12の第2上面12Uとは、連続した平面形状となっている。
【0052】
第1上面11Uには、凹み形状により、シートの図からなる第1操作マーク11Fが表示されている。第1操作マーク11Fは、ユーザに対して、第1操作部11が背もたれS1の移動に用いる部分であることを示すものである。
第2上面12Uは、平面視で長円形の凹み形状を有し、凹み形状の底には、複数の凸部が形成されている。この凹み形状および凸部は、押して操作される部分であることを示す第2操作マーク12Fである。第2操作マーク12Fは、ユーザに対して、第2操作部12が押して使われる部分であることを示すものである。
【0053】
図7に示すように、回動軸10Xから第1操作部11の先端11Tまでの距離L3は、回動軸10Xから第2操作部12の先端12Tまでの距離L4よりも大きい。このため、第1操作部11は、レバー部材10を大きなトルクで回動させるのに好都合である一方、第2操作部12は、レバー部材10に大きなトルクを掛けることはできないが、適度に小さいことで、レバー部材10の小型化に寄与している。なお、距離L3は、回動軸10Xから第1操作部11の最も遠い先端11Tまで距離であり、距離L4は、回動軸10Xから第2操作部12の最も遠い先端12Tまで距離である。
【0054】
図6に示すように、ワイヤ掛け部14は、軸受部13から下方に延びている。ワイヤ掛け部14は、ワイヤW1の端部の円柱状の係合部D2が係合する穴14Aを有する。穴14Aは、回動軸10Xに沿って見た場合に、係合部D2が移動可能な長円形状を有している。
【0055】
支持部材20は、本体部21と、対向部22と、取付脚23とを有している。
【0056】
本体部21は、回動軸10Xの延びる方向で対向する一対の側壁21Pと、一対の側壁21Pの下端を接続する底壁21Qと、一対の側壁21Pの各端部と底壁21Qを接続する接続壁21Rを有している。本体部21は、上方が開いている。
【0057】
各側壁21Pには、軸支部21Aが設けられている。軸支部21Aは、シャフト61を軸支するために設けられた2つの孔である。軸支部21Aがシャフト61を軸支することによって、支持部材20は、レバー部材10を回動軸10Xの周りに回動可能に支持する。各側壁21Pの上縁は、軸支部21Aの右側の、第1操作部11の下に位置する部分が水平に延びる係止部21Sとなっている。一方、各側壁21Pの上縁は、軸支部21Aの左側の、第2操作部12の下に位置する部分が斜め下方に延びる逃げ部21Tとなっている。
【0058】
底壁21Qには、バネ掛け部21Bと、底孔21Cと、固定部21Dとが形成されている。
バネ掛け部21Bは、トーションバネ62の第1アーム62Bを引っ掛ける部分である。ここで、トーションバネ62は、コイル部62Aと、コイル部62Aから延びる第1アーム62Bおよび第2アーム62Cを有している。トーションバネ62の第2アーム62Cは、第2操作部12の下面に当接し、レバー部材10を、常時、第1位置へ向けて付勢している。
底孔21Cは、底壁21Qに形成された貫通孔であり、レバー部材10の第1操作部11を引き上げるように回動させたときに、ワイヤ掛け部14の一部が入ることによってレバー部材10の回動量を確保する。
固定部21Dは、ネジなどの締結部材により、支持部材20を第1ブラケット55に固定するための部分であり、締結部材が通る孔である。
【0059】
接続壁21Rには、ワイヤ固定部21Eが形成されている。ワイヤ固定部21Eは、ワイヤW1のアウターケーブル63の端部部材63A(
図7参照)を引っ掛けて固定する部分である。
【0060】
対向部22は、本体部の左右方向の一端に設けられた、上方に突出する部分である。
図7に示すように、対向部22は、レバー部材10が第1位置にある場合に、第1操作部11の先端11Tに隣接して配置され、先端11Tに対向する。レバー部材10が第1位置にある場合において、第1操作部11の先端11Tと対向部22との距離L1は、第1操作部11の最も薄い部分の厚み寸法L2よりも小さい。つまり、対向部22と第1操作部11の先端11Tとの距離L1は、非常に小さい。なお、第1操作部11の最も薄い部分の厚み寸法L2とは、第1操作マーク11Fの形状を考慮しない寸法である。
【0061】
対向部22の上面22Uは、平面状に形成され、レバー部材10が第1位置にある場合に、第1上面11Uおよび第2上面12Uと面一に配置される。
【0062】
レバー部材10が第1位置にある場合に、第1操作部11のすぐ下には、本体部21の側壁21Pの係止部21Sが配置されている。そのため、第1操作部11は、下に押そうとしても、係止部21Sに当たるため、下に押すことはできず、上に引いて操作される。
一方、第2操作部12の下には、軸支部21Aの上縁から斜め下方に延びる逃げ部21Tが配置されている。レバー部材10が第1位置にある場合に、第2操作部12を下に押した場合、第2操作部12は、すぐには逃げ部21Tに当たらないので、下に押されて操作することができる。これにより、レバー部材10を第1位置から第2位置へ回動させるように操作することが可能である。
【0063】
図6に戻り、取付脚23は、本体部21の、底壁21Qのうち、対向部22に近い端部から下方に延びている。取付脚23は、凹部23Aを有する。凹部23Aは、第1ブラケット55に係合することで、支持部材20を第1ブラケット55に取り付ける際に使用される。
【0064】
このような構成の操作レバーLVは、
図1に示すように、操作レバーLVの長手方向が左右方向を向くように配置される。つまり、回動軸10XがシートSの前後方向に延びるように配置される。
一例として、シートSのすぐ後には、車両の荷室71があり、背もたれS2の下端の後方には、荷室71のフロア部材8が配置される。フロア部材8の前端部は、操作レバーLVに対応した形状の切欠き8Aがあり、操作レバーLVは、この切欠き8Aに嵌まるように配置されている。そして、第1上面11Uおよび第2上面12Uが、レバー部材10の周囲の部材の表面と面一であるか、または、レバー部材10の周囲の部材の表面よりも突出していない。ここで、実施形態においては、レバー部材10の周囲の部材は、支持部材20の対向部22と、フロア部材8である。
【0065】
フロア部材8には、操作レバーLVの左側に、上下に貫通する孔が形成されている。そして、操作ベルト45がフロア部材8を下から上に貫通して配置されている。すなわち、操作ベルト45とレバー部材10とは、左右に並んで配置されている。
【0066】
次に、このように構成されたレバー部材10の動作について説明する。
図7に示すように、非使用時において、レバー部材10は、トーションバネ62に時計回りに付勢されることにより、第1位置に位置する。なお、
図7~
図9においては、便宜上、手前側にあるトーションバネ62を図示している。このとき、第1操作部11の先端11Tと対向部22との距離L1は小さいので、第1操作部11を手で引き上げるように操作することはできない。このため、レバー部材10と対向部22の隙間に物が入ることが抑制される。また、ワイヤW1の係合部D2は、長円形状の穴14Aのうち、一方の端部(
図7における反時計回り側の端部)に位置している
なお、本実施形態において、手で操作することはできないとは、道具を使わずに、手の指だけで第1操作部11を容易には操作することはできない意味であり、道具を使ったり、長く延ばした爪を使って操作したりする場合は除く意味である。
【0067】
ワイヤW1を引いて背もたれS2を動かせるようにしようとする場合、まず、第2操作部12の第2上面12Uを上から押して、
図8のように、レバー部材10を第1位置から第2位置まで回動させる。すると、ワイヤW1の係合部D2は、長円形状の穴14Aのうち他方の端部(時計回り側の端部)に位置する。係合部D2が、穴14Aの他方の端部に接触し始めた状態を、レバー部材10の第2位置とする。
レバー部材10を第1位置から第2位置まで回動させる間には、レバー部材10は、ワイヤW1を引っ張らず、リクライニング機構30を作動させない。このため、第1位置から第2位置の間では、ワイヤW1を引っ張るための負荷がレバー部材10にかからないので、レバー部材10を回動させるために必要なトルクは、トーションバネ62の負荷だけであり、小さい。
【0068】
レバー部材10が第2位置に位置すると、
図8のように、第1操作部11が支持部材20の側壁21Pおよび対向部22から上に離れ、第1操作部11の先端11Tと対向部22との間に、第1位置にある場合よりも大きな隙間が形成される。このため、ユーザは、第1操作部11の先端11Tから第1操作部11の下面にかけて指を引っ掛けることができ、第1操作部11をさらに上に引っ張り上げることが可能になる。そこで、ユーザは、指で第1操作部11を引っ張り上げることで、レバー部材10を第2位置から第3位置まで回動させることができる。
【0069】
図9に示すように、レバー部材10が第2位置から第3位置に回動すると、ワイヤ掛け部14がワイヤW1の係合部D2を引っ張る。これにより、リクライニング機構30のカム33が回動し、リクライニング機構30をアンロック状態にして、背もたれS2を回動可能にすることができる。この際、レバー部材10は、第2位置から第3位置の間で係合部D2と係合してリクライニング機構30を作動させるため、トーションバネ62の負荷に加えて、スプリングSP2を変形させるための負荷がかかる。このため、レバー部材10を、第2位置から第3位置まで回動させるのに必要なトルクは、第1位置から第2位置まで回動させるのに必要なトルクより大きい。
【0070】
レバー部材10を第3位置から第1位置へ戻す場合には、レバー部材10に掛けた指を離せばよい。第3位置から第2位置の間では、スプリングSP2の付勢力がワイヤW1を介してレバー部材10に伝わるので、スプリングSP2の付勢力とトーションバネ62の付勢力により、レバー部材10は、第3位置から第2位置へ向けて移動する。また、トーションバネ62の付勢力により、レバー部材10は、第2位置から第1位置へ移動する。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態の操作レバーLVおよびシート装置1によれば、次の効果を奏することができる。
【0072】
本実施形態のレバー部材10は、第2操作部12を押してレバー部材10を第1位置から第2位置に回動させて、第1操作部11と対向部22との間に隙間を作ることができる。このため、レバー部材10が第1位置にある場合に第1操作部11を引っ張るように操作することが不可能であっても、第2位置に位置したときにできる隙間に指を入れて第1操作部11を操作することが可能である。したがって、レバー部材10と周囲の部材、例えばレバー部材10と対向部22の隙間を小さくすることで、レバー部材10と対向部22の間に物が入りにくくしたとしても、レバー部材10を容易に操作することができる。
【0073】
また、レバー部材10は、回動軸10Xから第1操作部11の先端11Tまでの距離L3が、回動軸10Xから第2操作部12の先端12Tまでの距離L4よりも大きい。このため、第2操作部12をコンパクトにして、操作レバーLVを小型化することができる。また、第1操作部11が回動軸10Xから長く延びることで、レバー部材10にトルクをかけやすく、リクライニング機構30を作動させやすい。
【0074】
また、レバー部材10の上面は平面形状であるので、レバー部材10をすっきりとしたデザインにすることができる。また、荷室71に収納する物が、レバー部材10に引っ掛かりにくい。
【0075】
また、第1上面11Uおよび第2上面12Uは、レバー部材10の周囲の部材の表面と面一であるか、または、レバー部材10の周囲の部材の表面よりも突出していないので、レバー部材10が他の物と干渉せず、邪魔にならない。
【0076】
また、レバー部材10を第2位置から第3位置まで回動させるのに必要なトルクよりも第1位置から第2位置まで回動させるのに必要なトルクの方が小さいので、第2操作部12により第1位置から第2位置までレバー部材10を回動させるのには、大きなトルクを必要としない。したがって、先端12Tまでの長さが短い第2操作部12であっても、レバー部材10を第1位置から第2位置まで回動させやすい。また、第2操作部12が短いことで、荷室71に置いた物や、ユーザの手によって、誤って第2操作部12を押した場合に、シートSが動いてしまうことを抑制できる。
【0077】
また、回動軸10XがシートSの前後方向に延びていることで、レバー部材10が前後に出っ張らず、操作レバーLVを小型化することができる。
【0078】
また、レバー部材10が第1位置にある場合において、第1操作部11の先端11Tと対向部22との距離L1は、第1操作部11の最も薄い部分の厚み寸法L2よりも小さい。このように、第1操作部11の先端11Tと対向部22との距離L1が小さいことで、第1操作部11と対向部22の隙間に物が入りにくい。
【0079】
また、第1操作部11の第1上面11Uには、第1操作マーク11Fが表示されていることで、第1操作部11によりシートSを動かすことができることをユーザが理解しやすい。
【0080】
また、操作ベルト45とレバー部材10とが左右に並んで配置されていることで、操作ベルト45とレバー部材10とをコンパクトに配置して、シート装置1を小型化することができる。
【0081】
また、テザーアンカー58は、左右方向において、操作レバーLVが配置された範囲と重ならない位置に配置されているので、テザーアンカー58と操作レバーLVの前後方向の位置を近づけたり、操作レバーLVの位置を、テザーアンカー58が配置された範囲と重なるようにすることで、シート装置1を小型化することができる。
【0082】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。
例えば、
図10に示すように、テザーアンカー158は、リアクロスメンバに直接固定されるのではなく、第2ブラケット156に固定されていてもよい。
図10に示す操作レバーLVは、前記実施形態とは左右対称に構成され、シートフレームF2に固定されている。シートフレームF2は、サイドフレーム151,152と、サイドフレーム151の後部とサイドフレーム152の後部を連結するリアクロスメンバ153とを有している。シートフレームF2は、スライドレール機構140に固定されている。具体的には、スライドレール機構140は、ロアレール141と、ロアレール141に対してスライド移動可能なアッパーレール142とを有し、アッパーレール142にサイドフレーム151,152が固定されている。つまり、サイドフレーム151,152は、スライドレール機構140に接続される部品であり、レールブラケットとも呼ばれる。この形態において、第1ブラケット155は、サイドフレーム152と一体に構成されている。このため、部品点数を少なくすることができる。
【0083】
また、
図11(a),(b)に示す形態のように、操作レバーLVを、より前方に配置してもよい。この形態のフレームF3は、
図10の形態に対して、第1ブラケット155Bと第2ブラケット156Bが、リアクロスメンバ153を中心に前方に回ったような位置に位置している。そして、テザーアンカー158は、前後方向において、操作レバーLVが配置された範囲と重なる位置に配置されている。テザーアンカー158は、リアクロスメンバ153に直接固定されていてもよいし、第2ブラケット156Bに固定されていてもよい。このように、本発明によれば、操作レバーLVを前後方向においてコンパクトに配置することができる。
【0084】
また、本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
前記実施形態においては、駆動機構としてリクライニング機構30およびワイヤW1を例示し、レバー部材10の操作によりシートSの一部である背もたれS2を動かす場合について説明したが、駆動機構はスライド機構40とワイヤW2であってもよく、レバー部材の操作により、スライド機構40によってシートSの全体を動かしてもよい。
【0085】
また、前記実施形態においては、車両用のシートに操作レバーを適用する場合について説明したが、車両以外の乗物のシートに操作レバーを適用してもよいし、乗物以外のシートに操作レバーを適用してもよい。
【0086】
また、前記実施形態においては、レバー部材10は、右に第1操作部11、左に第2操作部12が位置する向きで設けられていたが、左右逆に配置してもよい。
【0087】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 シート装置
8 フロア部材
10 レバー部材
10X 回動軸
11 第1操作部
11F 第1操作マーク
11T 先端
11U 第1上面
12 第2操作部
12T 先端
12U 第2上面
20 支持部材
22 対向部
30 リクライニング機構
40 スライド機構
45 操作ベルト
50 後部フレーム
58 テザーアンカー
D2 係合部
LV 操作レバー
S シート
W1 ワイヤ