(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/00 20060101AFI20250213BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20250213BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20250213BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
B60C15/00 K
B60C13/00 E
B60C15/00 B
B60C13/00 H
B60C3/04 B
B60C9/18 N
(21)【出願番号】P 2022546900
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2021023082
(87)【国際公開番号】W WO2022049866
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2020150131
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020150132
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 圭佑
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-127173(JP,A)
【文献】特開2019-98976(JP,A)
【文献】特許第6418339(JP,B1)
【文献】特開2014-54967(JP,A)
【文献】特開平5-155209(JP,A)
【文献】特開2019-182071(JP,A)
【文献】特開2003-205702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0025998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/00
B60C 13/00
B60C 3/04
B60C 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードコアと、前記一対のビードコアに架け渡されたカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されたトレッドゴムと、前記カーカス層のタイヤ幅方向外側に配置された一対のサイドウォールゴムと、前記一対のビードコアのタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在するリムクッションゴムとを備えるタイヤであって、
前記カーカス層が、前記ビードコアを包み込みつつタイヤ幅方向外側に巻き返され、
タイヤ最大幅位置におけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GDと、タイヤ断面高さの30[%]の位置におけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GEと、前記カーカス層の前記巻き返し部の自己接触開始点におけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GFとが、GE≦GF、1.00≦GE/GD≦1.10および1.00≦GF/GD≦1.40の条件を満たすことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記カーカス層の前記巻き返し部の終端位置の高さHUが、タイヤ断面高さSHに対して0.10≦HU/SH≦0.40の関係を有する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記カーカス層の本体部と巻き返し部との接触開始点の高さHFが、前記カーカス層の前記巻き返し部の終端位置の高さHUおよびタイヤ断面高さSHに対して0.15≦(HU-HF)/SHおよびHF/SH≦0.30の関係を有する請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
タイヤ断面高さの70[%]の位置におけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GCが、タイヤ最大幅位置における距離GDに対して1.00≦GC/GD≦1.10の関係を有する請求項1~3のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項5】
距離GDが、2.0[mm]≦GD≦5.0[mm]の範囲にある請求項1~4のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項6】
タイヤ断面高さの30[%]の位置におけるトレッドプロファイルの幅WEが、タイヤ断面幅SWに対して0.95≦WE/SW≦1.00の関係を有する請求項1~5のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項7】
タイヤ断面高さの70[%]の位置におけるトレッドプロファイルの幅WCが、タイヤ断面幅SWに対して0.90≦WC/SW≦1.00の関係を有する請求項1~6のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項8】
タイヤ断面幅SWが、前記一対のビードコアの距離Wcoに対して1.20≦SW/Wco≦1.40の関係を有する請求項1~7のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項9】
タイヤ接地幅TWが、前記一対のビードコアの距離Wcoに対して0.90≦TW/Wco≦1.00の関係を有する請求項1~8のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ベルト層が、一対の交差ベルトを有し、且つ、前記一対の交差ベルトのうち幅広な交差ベルトの幅Wbeが、タイヤ接地幅TWに対して1.05≦Wbe/TW≦1.30の関係を有する請求項1~9のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項11】
前記タイヤ最大幅位置の高さHDが、タイヤ断面高さSHに対して0.50≦HD/SH≦0.60の関係を有する請求項1~10のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項12】
タイヤ断面高さSHおよびタイヤ接地幅TWが、タイヤ断面幅SWに対して0.55≦SH/SW≦0.65および0.60≦TW/SW≦0.90の条件を満たす請求項1~11のいずれか一つに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤの低転がり抵抗性能および乗心地性能を向上できるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のタイヤでは、タイヤの転がり抵抗を低減するために、平坦なトレッドプロファイルを採用しつつタイヤ接地幅を広く確保している。かかる構造を採用する従来のタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、特に乗用車用タイヤでは、タイヤの乗心地性能を向上すべき課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤの低転がり抵抗性能および乗心地性能を向上できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかるタイヤは、一対のビードコアと、前記一対のビードコアに架け渡されたカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層と、前記ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されたトレッドゴムと、前記カーカス層のタイヤ幅方向外側に配置された一対のサイドウォールゴムと、前記一対のビードコアのタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在するリムクッションゴムとを備えるタイヤであって、前記カーカス層が、前記ビードコアを包み込みつつタイヤ幅方向外側に巻き返され、タイヤ最大幅位置におけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GDと、タイヤ断面高さの30[%]の位置におけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GEと、前記カーカス層の前記巻き返し部の自己接触開始点におけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GFとが、GE≦GF、1.00≦GE/GD≦1.10および1.00≦GF/GD≦1.40の条件を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかるタイヤでは、(1)比GE/GDおよび比GF/GDが上記の範囲にあることにより、タイヤ最大幅位置からビード部に至るゴムボリュームが低減される。これにより、タイヤの縦弾性係数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する利点がある。また、(2)比GF/GDの上記上限により、ビード部のゴムボリュームが過大となることに起因するビード部の発熱が抑制されて、タイヤの転がり抵抗が低減される利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に記載したタイヤのタイヤ径方向外側領域を示す拡大図である。
【
図3】
図3は、
図1に記載したタイヤのタイヤ径方向内側領域を示す拡大図である。
【
図4】
図4は、
図1に記載したタイヤの変形例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【
図6】
図6は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
[タイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。この実施の形態では、タイヤの一例として、乗用車用空気入りラジアルタイヤについて説明する。
【0011】
同図において、タイヤ子午線方向の断面は、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。また、タイヤ赤道面CLは、JATMAに規定されたタイヤ断面幅の測定点の中点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面として定義される。また、タイヤ幅方向は、タイヤ回転軸に平行な方向として定義され、タイヤ径方向は、タイヤ回転軸に垂直な方向として定義される。また、点Tは、タイヤ接地端であり、点Dは、タイヤ最大幅位置である。
【0012】
タイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(
図1参照)。
【0013】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。また、ビードフィラーのゴム硬さが、65以上99以下の範囲にある。
【0014】
ゴム硬さHsは、JIS K6253に準拠して測定される。
【0015】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、80[deg]以上100[deg]以下のコード角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0016】
なお、
図1の構成では、カーカス層13が単一のカーカスプライから成る単層構造を有している。しかし、これに限らず、カーカス層13が複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有しても良い(図示省略)。
【0017】
ベルト層14は、複数のベルトプライ141~144を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。ベルトプライ141~144は、一対の交差ベルト141、142と、ベルトカバー143および一対のベルトエッジカバー144とを含む。
【0018】
一対の交差ベルト141、142は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で15[deg]以上55[deg]以下のコード角度を有する。また、一対の交差ベルト141、142は、相互に異符号のコード角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。また、一対の交差ベルト141、142は、カーカス層13のタイヤ径方向外側に積層されて配置される。
【0019】
ベルトカバー143およびベルトエッジカバー144は、スチールあるいは有機繊維材から成るベルトカバーコードをコートゴムで被覆して構成され、絶対値で0[deg]以上10[deg]以下のコード角度を有する。また、ベルトカバー143およびベルトエッジカバー144は、例えば、1本あるいは複数本のベルトカバーコードをコートゴムで被覆して成るストリップ材であり、このストリップ材を交差ベルト141、142の外周面に対してタイヤ周方向に複数回かつ螺旋状に巻き付けて構成される。また、ベルトカバー143が交差ベルト141、142の全域を覆って配置され、一対のベルトエッジカバー144が交差ベルト141、142の左右のエッジ部をタイヤ径方向外側から覆って配置される。
【0020】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤのトレッド部を構成する。また、トレッドゴム15は、キャップトレッドおよびアンダートレッド(図中の符号省略)を積層して成る。キャップトレッドは、接地特性および耐候性に優れるゴム材料から成り、タイヤ接地面の全域に渡ってトレッド面に露出して、トレッド部の外表面を構成する。また、キャップトレッドのゴム硬さが、60以上80以下の範囲にある。アンダートレッドは、キャップゴムよりも耐熱性に優れるゴム材料から成り、キャップトレッドとベルト層との間に挟み込まれて配置されて、トレッドゴムのベース部分を構成する。また、アンダートレッドのゴム硬さが、50以上65以下の範囲にある。
【0021】
一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。例えば、
図1の構成では、サイドウォールゴム16のタイヤ径方向外側の端部が、トレッドゴム15の下層に配置されてベルト層14とカーカス層13との間に挟み込まれている。しかし、これに限らず、サイドウォールゴム16のタイヤ径方向外側の端部が、トレッドゴム15の外層に配置されてタイヤのバットレス部に露出しても良い(図示省略)。また、サイドウォールゴム16のゴム硬さが、40以上70以下の範囲にある。また、サイドウォールゴム16の損失正接tanδが、0.20以下の範囲にある。
【0022】
損失正接tanδは、(株)東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度60[℃]、剪断歪み10[%]、振幅±0.5[%]および周波数20[Hz]の条件で測定される。
【0023】
一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。例えば、
図1の構成では、リムクッションゴム17のタイヤ径方向外側の端部が、サイドウォールゴム16の下層に挿入されて、サイドウォールゴム16とカーカス層13との間に挟み込まれて配置されている。また、リムクッションゴム17のゴム硬さが、50以上80以下の範囲にある。また、リムクッションゴム17の破断伸びが、150[%]以上450[%]以下の範囲にある。
【0024】
また、
図1において、タイヤ最大幅位置Dの高さHDが、タイヤ断面高さSHに対して0.50≦HD/SH≦0.60の関係を有し、好ましくは0.52≦HD/SH≦0.56の関係を有する。したがって、タイヤ最大幅位置Dがタイヤ断面高さSHの測定点の中央部からタイヤ径方向外側に配置される。
【0025】
タイヤ最大幅位置Dは、JATMAに規定されるタイヤ断面幅SWの最大幅位置として定義される。
【0026】
タイヤ最大幅位置Dの高さHDは、タイヤ内径の測定点からタイヤ最大幅位置Dまでのタイヤ径方向の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態とて測定される。
【0027】
タイヤ断面幅SWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのサイドウォール間の(タイヤ側面の模様、文字などを除いた)直線距離として測定される。より具体的には、タイヤ断面幅SWが、タイヤのサイドウォール部のトレッドプロファイル上の点を測定点として測定される。
【0028】
規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が最大負荷能力の88[%]である。
【0029】
また、タイヤ断面高さSHが、タイヤ断面幅SWに対して0.55≦SH/SW≦0.65の関係を有し、好ましくは0.58≦SH/SW≦0.60の関係を有する。同時に、タイヤ接地幅TWが、タイヤ断面幅SWに対して0.60≦TW/SW≦0.90の関係を有し、好ましくは0.70≦TW/SW≦0.72の関係を有する。かかる構成では、平均的な乗用車用タイヤと比較して、タイヤ1が高い偏平率SH/SWおよび広い接地幅比TW/SWを有することにより、タイヤ1の転がり抵抗が低減される。
【0030】
タイヤ断面高さSHは、タイヤ外径とリム径との差の1/2の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
【0031】
タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
【0032】
また、タイヤ接地領域におけるトレッドプロファイルのラジアス(図中の寸法記号省略)が、600[mm]以上1700[mm]以下の範囲にあり、好ましくは800[mm]以上1500[mm]以下の範囲にある。上記下限により、タイヤ1の接地面積が確保され、上記上限により、トレッド部センター領域の接地特性が確保されてタイヤの制動性能が確保される。
【0033】
タイヤの接地領域は、左右のタイヤ接地端Tの間の領域として定義される。
【0034】
また、タイヤ断面幅SWが、一対のビードコア11、11の距離Wcoに対して1.20≦SW/Wco≦1.40の関係を有し、好ましくは1.25≦SW/Wco≦1.35の関係を有する。したがって、平均的な乗用車用タイヤと比較して、タイヤ断面幅SWがビードコア11、11の距離Wcoに対して狭く設定される。かかる構成では、タイヤサイド部がフラットな壁面を有するので、タイヤの縦弾性定数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する。
【0035】
一対のビードコア11、11の距離Wcoは、タイヤ子午線方向の断面視におけるビードコア11、11の重心間の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
【0036】
また、タイヤ接地幅TWが、一対のビードコア11、11の距離Wcoに対して0.90≦TW/Wco<1.00の関係を有し、好ましくは0.95≦TW/Wco≦0.98の関係を有する。したがって、タイヤ接地端Tが、ビードコア11の重心よりもタイヤ赤道面CL側にある。上記下限により、タイヤ接地幅TWが確保されて、タイヤの走行性能が確保される。また、上記上限により、タイヤ接地幅TWが過大となることに起因するタイヤの乗心地性能の悪化が抑制される。
【0037】
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0038】
また、
図1において、一対の交差ベルト141、142のうち幅広な交差ベルト141の幅Wbeが、タイヤ接地幅TWに対して1.05≦Wbe/TW≦1.30の関係を有し、好ましくは1.10≦Wbe/TW≦1.15の関係を有する。したがって、幅広な交差ベルト142の端部が、タイヤ接地幅TWよりもタイヤ幅方向外側に位置する。
【0039】
交差ベルト141、142の幅Wbeは、交差ベルト141、142の左右の端点B(より詳細には、タイヤ幅方向の最も外側にあるベルトコードの重心)のタイヤ幅方向の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態にて測定される。
【0040】
[タイヤ径方向外側領域]
図2は、
図1に記載したタイヤのタイヤ径方向外側領域を示す拡大図である。
【0041】
図2において、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのタイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤ赤道面CLとトレッドプロファイルとの交点A、および、タイヤ内径の測定点からタイヤ断面高さSHの70[%]の位置におけるトレッドプロファイル上の点Cを定義する。
【0042】
タイヤ内径の測定点は、JATMAに規定されたリム径の測定点に一致する。
【0043】
このとき、
図2において、タイヤ断面高さSHの70[%]の位置Cにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GCと、タイヤ最大幅位置Dにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GDとが、1.00≦GC/GD≦1.20の関係を有し、好ましくは1.00≦GC/GD≦1.10の関係を有する。したがって、タイヤ断面高さSHの70[%]の位置におけるトータルゲージ(距離GC)が、タイヤ最大幅位置Dにおけるトータルゲージ(距離GD)に対して略同一に設定される。これにより、タイヤの縦弾性係数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する。例えば、
図2の構成では、タイヤ1のバットレス部が薄肉構造を有することにより、上記の比GC/GDが実現されている。また、距離GDが、2.0[mm]≦GD≦5.0[mm]の範囲にあり、好ましくは3.0[mm]≦GD≦4.0[mm]の範囲にある。
【0044】
トレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離は、所定のトレッドプロファイル上の点からタイヤ内面に引いた垂線の長さとして測定される。
【0045】
また、
図2において、タイヤ接地端Tにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GTと、タイヤ断面高さSHの70[%]の位置Cにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GCとが、3.00≦GT/GC≦4.00の関係を有し、好ましくは3.10≦GT/GC≦3.50の関係を有し、より好ましくは3.15≦GT/GC≦3.25の関係を有する。上記下限により、バットレス部のゴムボリュームが確保されて、タイヤの乗心地性能が確保される。また、上記上限により、バットレス部のゴムボリュームが過大となることに起因するバットレス部の発熱が抑制されて、タイヤの転がり抵抗が低減される。
【0046】
また、タイヤ赤道面CLにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GAが、タイヤ接地端Tにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GTに対して1.00≦GA/GT≦1.10の関係を有し、好ましくは1.00≦GA/GT≦1.10の関係を有する。したがって、タイヤ赤道面CLにおけるトータルゲージ(距離GA)が、タイヤ接地端Tにおけるトータルゲージ(距離GT)に対して略同一に設定される。かかる構成では、タイヤ接地領域におけるトータルゲージが均一化されるので、タイヤ転動時における発熱が抑制されて、タイヤの転がり抵抗が低減される。例えば、
図2の構成では、タイヤ1のショルダー部がラウンド形状を有することにより、上記の比GA/GTが実現されている。
【0047】
また、
図2において、タイヤ赤道面CLにおけるトレッドゴム15のゲージG1が、タイヤ赤道面CLにおける距離GAに対して0.50≦G1/GA≦0.70の関係を有し、好ましくは0.60≦G1/GA≦0.65の関係を有する。上記下限により、トレッドゴム15のゲージG1が確保されて、タイヤの乗心地性能が確保される。また、上記上限により、トレッドゴム15のゲージG1が過大となることに起因するヒステリシスロスが低減されて、タイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される。
【0048】
トレッドゴム15のゲージは、タイヤ子午線方向の断面視にて、トレッドプロファイルからベルト層の最外層のベルトコード面に下ろした垂線の長さとして測定される。ベルトコード面は、ベルトプライを構成する複数のベルトコードのタイヤ径方向外側の端部を接続した面として定義される。
【0049】
また、
図2において、幅広な交差ベルト141の端点Bにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GBが、タイヤ接地端Tにおける距離GTおよびタイヤ断面高さSHの70[%]の位置Cにおける距離GCに対してGC≦GB≦GTの関係を有する。また、タイヤ1のバットレス部のトータルゲージが、タイヤ断面高さSHの70[%]の位置Cからタイヤ接地端Tに向かって単調減少することが好ましい。これにより、幅広な交差ベルト141の端点Bにおける距離GBが適正化されて、タイヤの乗心地性能が確保される。
【0050】
また、
図2において、タイヤ接地端Tにおけるトレッドプロファイルの肩落ち量ΔTが、タイヤ接地幅TWに対して0<ΔT/(TW/2)≦0.06の関係を有し、好ましくは0.03≦ΔT/(TW/2)≦0.04の関係を有する。上記下限により、トレッドプロファイルが、いわゆる逆R形状となる事態が防止されて、タイヤの接地特性が確保される。また、上記上限により、タイヤ接地領域のフラットな形状が確保されて、タイヤの転がり抵抗が適正に低減される。
【0051】
トレッドプロファイルの肩落ち量ΔTは、タイヤ子午線方向の断面視におけるタイヤ赤道面CLとトレッドプロファイルとの交点Aからタイヤ接地端Tまでのタイヤ径方向の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
【0052】
また、タイヤ断面高さSHの70[%]の位置Cにおけるトレッドプロファイルの幅WCが、タイヤ断面幅SWに対して0.90≦WC/SW≦1.00の関係を有し、好ましくは0.95≦WC/SW≦1.00の関係を有する。したがって、タイヤ断面高さSHの70[%]の位置Cが、タイヤ最大幅位置Dに対してタイヤ幅方向の略同位置にある。かかる構成では、タイヤサイド部がタイヤ最大幅位置Dの近傍でフラット(すなわちタイヤ径方向に略平行)な壁面を有するので、タイヤの縦弾性定数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する。
【0053】
トレッドプロファイルの幅は、所定の位置におけるトレッドプロファイルのタイヤ幅方向の幅であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのタイヤ子午線方向の断面視にて測定される。
【0054】
[タイヤ径方向内側領域]
図3は、
図1に記載したタイヤのタイヤ径方向内側領域を示す拡大図である。
【0055】
図3において、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときのタイヤ子午線方向の断面視にて、タイヤ断面高さSHの30[%]の位置におけるトレッドプロファイル上の点E、カーカス層13の巻き返し部132の自己接触の開始点F、および、カーカス層13の巻き返し部132の終端位置の点Uを定義する。
【0056】
カーカス層13の本体部131は、ビードコア11からタイヤ幅方向内側に延在するカーカス層13の部分として定義され、カーカス層13の巻き返し部132は、ビードコア11からタイヤ幅方向外側に延在するカーカス層13の部分として定義される。また、カーカス層13の巻き返し部132の自己接触の開始点Fは、カーカス層13の本体部131と巻き返し部132との接触領域におけるタイヤ径方向の最内側の点として定義される。また、カーカス層13の巻き返し部132の終端位置の点Uは、巻き返し部132のタイヤ径方向の最外点として定義される。
【0057】
このとき、タイヤ断面高さSHの30[%]の位置Eにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GEと、タイヤ最大幅位置Dにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GDとが、1.00≦GE/GD≦1.10の関係を有し、好ましくは1.00≦GE/GD≦1.05の関係を有する。したがって、タイヤ断面高さSHの30[%]の位置Eにおけるトータルゲージ(距離GE)が、タイヤ最大幅位置Dにおけるトータルゲージ(距離GD)に対して略同一に設定される。かかる構成では、比GE/GDが上記の範囲にあることにより、タイヤ最大幅位置Dからビード部に至るゴムボリュームが低減される。これにより、タイヤの縦弾性係数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する。例えば
図2の構成では、サイドウォールゴム16がタイヤ最大幅位置Dからビード部に至る領域で薄肉構造を有することにより、上記の比GE/GDが実現されている。
【0058】
また、
図3において、カーカス層13の巻き返し部132の自己接触の開始点Fにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GFと、タイヤ最大幅位置Dにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GDとが、1.00≦GF/GD≦1.40の関係を有し、好ましくは1.10≦GF/GD≦1.30の関係を有する。
図3の構成では、また、巻き返し部132の自己接触の開始点Fにおける距離GFが、タイヤ断面高さSHの30[%]の位置Eにおける距離GEに対してGE≦GFの関係を有する。比GF/GDの上記上限により、ビード部のゴムボリュームが過大となることに起因するビード部の発熱が抑制されて、タイヤの転がり抵抗が低減される。例えば
図2の構成では、タイヤサイド部のトータルゲージがタイヤ最大幅位置Dからタイヤ径方向内側に向かって単調増加することにより、上記の比GF/GDが実現されている。
【0059】
また、
図3において、カーカス層13の巻き返し部132の終端位置Uの高さHUが、タイヤ断面高さSHに対して0.10≦HU/SH≦0.40の関係を有し、好ましくは0.20≦HU/SH≦0.30の関係を有する。
【0060】
巻き返し部132の終端位置Uの高さHUは、タイヤ内径の測定点からカーカス層13の巻き返し部132の終端位置Uまでのタイヤ径方向の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態とて測定される。
【0061】
また、
図3において、カーカス層13の本体部131と巻き返し部132との接触開始点Fの高さHFが、カーカス層13の巻き返し部132の終端位置Uの高さHUおよびタイヤ断面高さSHに対して0.15≦(HU-HF)/SHおよびHF/SH≦0.30の関係を有する。また、差HU-HFが、15.0[mm]≦HU-HFの範囲にあることが好ましい。これにより、カーカス層13の自己接触長さ(HU-HF)が確保されて、ビード部の強度が確保される。また、カーカス層13の自己接触の開始点Fの高さHFが低めに設定されて、タイヤ1のサイド部のフレキシブルな領域が確保される。比HF/SHの下限は、特に限定がないが、例えば
図3のようにビードフィラー12を備える構成では、高さHFの測定点がビードフィラー12の径方向外側端部の近傍に位置する。また、ビードフィラー12を省略した構造(いわゆるフィラーレス構造。後述する
図4参照。)では、高さHFの測定点がビードコア11の径方向外側の頂面の近傍に位置する。
【0062】
また、
図3において、タイヤ断面高さSHの30[%]の位置Eにおけるトレッドプロファイルの幅WEが、タイヤ断面幅SWに対して0.90≦WE/SW≦1.00の関係を有し、好ましくは0.95≦WE/SW≦1.00の関係を有する。したがって、タイヤ断面高さSHの30[%]の位置Eが、タイヤ最大幅位置Dに対してタイヤ幅方向の略同位置にある。かかる構成では、タイヤサイド部がタイヤ最大幅位置Dの近傍でフラット(すなわちタイヤ径方向に略平行)な壁面を有するので、タイヤの縦弾性定数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する。
【0063】
[変形例]
図4は、
図1に記載したタイヤの変形例を示す説明図である。同図は、タイヤ1のビード部の拡大図を示している。同図において、
図1に記載した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
図1の構成では、タイヤ1がビードフィラー12を備え、また、ビードコア11が矩形状を有している。
【0065】
しかし、これに限らず、
図4に示すように、ビードフィラー12が省略されても良い。あるいは、非常に小さいビードフィラー12が配置されても良い(図示省略)。これにより、タイヤが軽量化される。例えば、
図4の構成では、ビードフィラー12が省略され、カーカス層13の巻き返し部132がビードコア11のみを包み込み巻き返されて本体部131に自己接触している。このため、カーカス層13の巻き返し部132の自己接触の開始点Fが、ビードコア11の近傍にあり、非常に小さい高さHFを有している。
【0066】
また、
図4の構成では、ビードコア11が、タイヤ径方向外側に向かって凸となる楔形状を有する。具体的には、ビードコア11の径方向断面視にて、ビードワイヤの断面の配列数が最大である層(
図4では、最内層から2番目の層)を最大配列層として定義する。このとき、最大配列層よりもタイヤ径方向外側にあるワイヤ断面の層数(
図4では、3層)が、最大配列層よりもタイヤ径方向内側にあるワイヤ断面の層数(
図4では、1層)よりも多い。また、最大配列層よりもタイヤ径方向外側の各層におけるワイヤ断面の配列数が、最大配列層からタイヤ径方向外側に向かって単調減少する。また、ワイヤ断面の層数が4以上6以下の範囲にあることが好ましい。また、ワイヤ配列構造のタイヤ径方向の最内層におけるワイヤ断面の配列数が、3または4(
図4では、3)であり、また、最大配列層のワイヤ断面の配列数に対して同一あるいは少ないことが好ましい。また、ワイヤ配列構造の最大配列層におけるワイヤ断面の配列数が4または5(
図4では、4)であり、タイヤ径方向の最外層のワイヤ断面の配列数が1または2(
図4では、1)であることが好ましい。
【0067】
また、ワイヤ断面が、最大配列層からタイヤ径方向外側の領域にて、最密充填構造で配列されることが好ましい。最密充填構造とは、タイヤ子午線方向の断面視にて、隣り合う3つのワイヤ断面の中心が略正三角形となるように配列された状態をいう。かかる最密充填構造では、ワイヤ断面の列が縦横に直交する格子配列構造と比較して、ビードコア11のワイヤ断面の配置密度が高まり、ビードコア11の耐コア崩れ性が向上する。なお、上記最密状態において、隣り合うワイヤ断面のすべての組が相互に接触する必要はなく、一部の組が微少な隙間を空けて配置されても良い(図示省略)。
【0068】
なお、ビードコア11の製造工程では、例えばコア成形治具(図示省略)が用いられ、1本あるいは複数本のビードワイヤ111が所定のワイヤ配列構造でコア成形治具に巻き付けられて、未加硫のビードコア11が成形される。そして、成形されたビードコア11がグリーンタイヤの加硫成形工程の前にプレ加硫される。
【0069】
[効果]
以上説明したように、このタイヤ1は、一対のビードコア11、11と、一対のビードコア11、11に架け渡されたカーカス層13と、カーカス層13のタイヤ径方向外側に配置されたベルト層14と、ベルト層14のタイヤ径方向外側に配置されたトレッドゴム15と、カーカス層13のタイヤ幅方向外側に配置された一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在するリムクッションゴム17とを備える(
図1参照)。また、カーカス層13が、ビードコア11を包み込みつつタイヤ幅方向外側に巻き返される。また、タイヤ最大幅位置Dにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GDと、タイヤ断面高さSHの30[%]の位置におけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GEと、カーカス層13の巻き返し部312の自己接触開始点Fにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GFとが、GE≦GF、1.00≦GE/GD≦1.10および1.00≦GF/GD≦1.40の条件を満たす(
図3参照)。
【0070】
かかる構成では、(1)比GE/GDおよび比GF/GDが上記の範囲にあることにより、タイヤ最大幅位置Dからビード部に至るゴムボリュームが低減される。これにより、タイヤの縦弾性係数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する利点がある。また、(2)比GF/GDの上記上限により、ビード部のゴムボリュームが過大となることに起因するビード部の発熱が抑制されて、タイヤの転がり抵抗が低減される利点がある。
【0071】
また、このタイヤ1では、カーカス層13の巻き返し部132の終端位置Uの高さHUが、タイヤ断面高さSHに対して0.10≦HU/SH≦0.40の関係を有する(
図3参照)。上記下限により、カーカス層13の巻き上げ高さHUが確保されて、カーカス層13によるタイヤ形状の保持能力が確保される利点がある。また、上記上限により、カーカス層13の巻き返し部132が過大となることに起因するタイヤ重量の増加が抑制される利点がある。
【0072】
また、このタイヤ1では、カーカス層13の本体部131と巻き返し部132との接触開始点Fの高さHFが、カーカス層13の巻き返し部132の終端位置Uの高さHUおよびタイヤ断面高さSHに対して0.15≦(HU-HF)/SHおよびHF/SH≦0.30の関係を有する(
図3参照)。これにより、カーカス層13の自己接触長さ(HU-HF)が確保されて、ビード部の強度が確保される。また、カーカス層13の自己接触の開始点Fの高さHFが低めに設定されて、タイヤ1のサイド部のフレキシブルな領域が確保される利点がある。
【0073】
また、このタイヤ1では、タイヤ断面高さSHの70[%]の位置Cにおけるトレッドプロファイルからタイヤ内面までの距離GCが、タイヤ最大幅位置Dにおける距離GDに対して1.00≦GC/GD≦1.10の関係を有する(
図3参照)。かかる構成では、タイヤ最大幅位置Dからバットレス部に至るゴムボリュームが低減され、タイヤの縦弾性係数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する利点がある。
【0074】
また、このタイヤ1では、タイヤ最大幅位置Dにおける距離GDが、2.0[mm]≦GD≦5.0[mm]の範囲にある(
図3参照)。これにより、タイヤ最大幅位置Dにおけるトータルゲージが適正化される利点がある。
【0075】
また、このタイヤ1では、タイヤ断面高さSHの30[%]の位置Eにおけるトレッドプロファイルの幅WEが、タイヤ断面幅SWに対して0.90≦WE/SW≦1.00の関係を有する(
図3参照)。かかる構成では、タイヤサイド部がタイヤ最大幅位置Dの近傍でフラット(すなわちタイヤ径方向に略平行)な壁面を有するので、タイヤの縦弾性定数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する利点がある。
【0076】
また、このタイヤ1では、タイヤ断面高さSHの70[%]の位置におけるトレッドプロファイルの幅WCが、タイヤ断面幅SWに対して0.90≦WC/SW≦1.00の関係を有する(
図2参照)。かかる構成では、タイヤサイド部がタイヤ最大幅位置Dの近傍でフラット(すなわちタイヤ径方向に略平行)な壁面を有するので、タイヤの縦弾性定数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する利点がある。
【0077】
また、このタイヤ1では、タイヤ断面幅SWが、一対のビードコア11、11の距離Wcoに対して1.20≦SW/Wco≦1.40の関係を有する(
図1参照)。かかる構成では、タイヤサイド部がフラットな壁面を有するので、タイヤの縦弾性定数が低減されて、タイヤの乗心地性能が向上する利点がある。
【0078】
また、このタイヤ1では、タイヤ接地幅TWが、一対のビードコア11、11の距離Wcoに対して0.90≦TW/Wco≦1.00の関係を有する(
図1参照)。上記下限により、タイヤ接地幅TWが確保されて、タイヤの走行性能が確保される利点がある。また、上記上限により、タイヤ接地幅TWが過大となることに起因するタイヤの乗心地性能の悪化が抑制される利点がある。
【0079】
また、このタイヤ1では、ベルト層14が、一対の交差ベルト141、142を有し、且つ、一対の交差ベルト141、142のうち幅広な交差ベルト141の幅Wbeが、タイヤ接地幅TWに対して1.05≦Wbe/TW≦1.30の関係を有する。上記下限により、幅広な交差ベルト141の幅Wbeが確保され、タイヤ転動時におけるヒステリシスロスが低減されて、タイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される利点がある。また、上記上限により、交差ベルト141の幅Wbeが過大となることに起因するタイヤ重量の増加が抑制されて、タイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される利点がある。
【0080】
また、このタイヤ1では、タイヤ最大幅位置Dの高さHDが、タイヤ断面高さSHに対して0.50≦HD/SH≦0.60の関係を有する(
図1参照)。かかる構成では、タイヤ最大幅位置Dがタイヤ断面高さSHの中央からタイヤ径方向外側に配置されるので、タイヤの縦弾性定数が低減されて、タイヤの転がり抵抗が低減される利点があり、また、規定内圧よりも高圧でのインフレート状態におけるタイヤの乗心地性能が向上する利点がある。
【0081】
また、このタイヤ1では、タイヤ断面高さSHおよびタイヤ接地幅TWが、タイヤ断面幅SWに対して0.55≦SH/SW≦0.65および0.60≦TW/SW≦0.90の条件を満たす(
図1参照)。かかる構成では、平均的な乗用車用タイヤと比較して、タイヤ1が高い偏平率SH/SWおよび広い接地幅比TW/SWを有することにより、タイヤ1の転がり抵抗が低減される利点がある。
【実施例】
【0082】
図5および
図6は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0083】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)低転がり抵抗性能および(2)乗心地性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ205/60R16 92Vの試験タイヤがリムサイズ16×6.0Jのリムに組み付けられ、この試験タイヤに250[kPa]の内圧および乗員2名相当の時の荷重が付与される。
【0084】
(1)低転がり抵抗性能に関する評価では、ドラム径1707[mm]のドラム試験機が用いられ、ISO28580に準拠して速度80[km/h]の条件にて試験タイヤの転がり抵抗係数が算出された。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
【0085】
(2)乗心地性能に関する評価では、試験タイヤを総輪に装着した乗用車である試験車両がドライ路面のテストコースを走行して、専門のテストドライバーが乗り心地の硬さと振動の減衰性についてフィーリング評価を行う。この評価は、従来例を基準100とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
【0086】
実施例の試験タイヤは、
図1~
図3の構成を備える。また、トレッドプロファイルにより定義されたタイヤ断面幅SWが220[mm]であり、タイヤ断面高さSHが125[mm]である。また、タイヤ最大幅位置Dにおける距離GDが3.5[mm]である。
【0087】
従来例の試験タイヤは、実施例1の試験タイヤにおいて、タイヤ最大幅位置Dからビード部に至るトータルゲージ(距離GD、GE、GF)が比較的厚く設定されている。
【0088】
試験結果に示すように、実施例の試験タイヤでは、タイヤの低転がり抵抗性能および乗心地性能が向上することが分かる。
【符号の説明】
【0089】
1 タイヤ;11 ビードコア;111 ビードワイヤ;12 ビードフィラー;13 カーカス層;131 本体部;132 巻き返し部;14 ベルト層;141、142 交差ベルト;143 ベルトカバー;144 ベルトエッジカバー;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム