IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西松建設株式会社の特許一覧 ▶ 独立行政法人国立高等専門学校機構の特許一覧

<>
  • 特許-光電変換素子、発電装置 図1
  • 特許-光電変換素子、発電装置 図2
  • 特許-光電変換素子、発電装置 図3
  • 特許-光電変換素子、発電装置 図4
  • 特許-光電変換素子、発電装置 図5
  • 特許-光電変換素子、発電装置 図6
  • 特許-光電変換素子、発電装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】光電変換素子、発電装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 39/10 20230101AFI20250213BHJP
   H10K 30/82 20230101ALI20250213BHJP
【FI】
H10K39/10
H10K30/82
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021010279
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114123
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128141
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】福本 正
(72)【発明者】
【氏名】加藤 岳仁
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-082832(JP,A)
【文献】特表2010-507199(JP,A)
【文献】国際公開第2010/044364(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0264478(US,A1)
【文献】特表2020-504456(JP,A)
【文献】特開2004-179560(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0317305(US,A1)
【文献】特開2010-087504(JP,A)
【文献】特表2014-519718(JP,A)
【文献】特開2010-114181(JP,A)
【文献】特開2013-171864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-99/00
H10F 10/00-99/00
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する第一電極材料で構成される第一電極と、
導電性を有するナノ構造体を含有し、光透過性を有する第二電極材料で構成される第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極の間に位置する光電変換層と、
を有し、
前記第一電極、前記光電変換層、前記第二電極が積層される方向を積層方向と定義した際、
前記第一電極と前記第二電極は、前記積層方向に直交する直交方向にずれて配置され、
前記積層方向から見て前記光電変換層と前記第一電極と前記第二電極が重畳する第一領域と、
前記積層方向から見て前記光電変換層と前記第一電極は重畳するが、前記光電変換層と前記第二電極は重畳しない第二領域と、
前記積層方向から見て前記光電変換層と前記第二電極は重畳するが、前記光電変換層と前記第一電極は重畳しない第三領域と、
を有する複数の光電変換素子と、
複数の前記光電変換素子の配列方向において隣接する一方の前記光電変換素子の前記光電変換層と、隣接する他方の前記光電変換素子の前記第二領域及び前記第三領域の少なくとも一方が、前記配列方向において重畳するように複数の前記光電変換素子を保持する保持部と、
前記保持部により複数の前記光電変換素子それぞれが保持される位置を保持位置と定義した際、前記保持位置それぞれに配置され、前記保持位置に位置する前記光電変換素子の前記第一電極に接触して、外部回路と前記光電変換素子を電気的に接続する複数の第一接続部と、
前記保持位置それぞれに配置され、前記保持位置に位置する前記光電変換素子の前記第二電極に接触して、前記外部回路と前記光電変換素子を電気的に接続する複数の第二接続部と、
を備えることを特徴とする、
発電装置。
【請求項2】
複数の前記光電変換素子は、光の照射方向に対して、前記第二電極が前記第一電極よりも奥側に位置するように配置されることを特徴とする、
請求項に記載の発電装置。
【請求項3】
複数の前記光電変換素子のそれぞれは、それぞれの前記積層方向が平行となるように配置されることを特徴とする、
請求項に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、及び光電変換素子を用いた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光電変換素子では、電極の一方を、スズドープ酸化インジウム(ITO)を用いた透明電極とし、電極の他方を、Al、Au、Ag、Cu、Ni、Pt、Mg合金等の金属材料を用いた不透明電極としていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-218924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透明電極を通じて照射された光は、光電変換層を透過するが、不透明電極で吸収、又は反射されてしまう。結果、上記光電変換素子では、光の照射方向において自身の背後にあるものに対して光を遮断してしまい、光エネルギーを有効に活用することができなかった。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、自身の背後にも光を透過させる光電変換素子、及び、その光電変換素子を用いた発電装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の光電変換素子は、光透過性を有する第一電極材料で構成される第一電極と、導電性を有するナノ構造体を含有し、光透過性を有する第二電極材料で構成される第二電極と、前記第一電極と前記第二電極の間に位置する光電変換層と、を備え、前記第一電極、前記光電変換層、及び前記第二電極が積層される方向を積層方向と定義した際、前記第一電極と前記第二電極は、前記積層方向に直交する直交方向にずれて配置され、前記積層方向から見て前記光電変換層と前記第一電極と前記第二電極が重畳する第一領域と、前記積層方向から見て前記光電変換層と前記第一電極は重畳するが、前記光電変換層と前記第二電極は重畳しない第二領域と、前記積層方向から見て前記光電変換層と前記第二電極は重畳するが、前記光電変換層と前記第一電極は重畳しない第三領域と、をすることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の光電変換素子は、前記第二電極材料には、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT-PSS)、又は、ポリアニリンが含まれることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の光電変換素子は、前記ナノ構造体には、金属ナノワイヤが含まれることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の発電装置は、光透過性を有する第一電極材料で構成される第一電極と、
導電性を有するナノ構造体を含有し、光透過性を有する第二電極材料で構成される第二電極と、前記第一電極と前記第二電極の間に位置する光電変換層と、を有する光電変換素子を複数備え、前記光電変換素子は、前記第一電極、前記光電変換層、前記第二電極が積層される方向を積層方向と定義した際、前記光電変換素子の前記第一電極と前記第二電極は、前記積層方向に直交する直交方向にずれて配置され、前記積層方向から見て前記光電変換層と前記第一電極と前記第二電極が重畳する第一領域と、前記積層方向から見て前記光電変換層と前記第一電極は重畳するが、前記光電変換層と前記第二電極は重畳しない第二領域と、前記積層方向から見て前記光電変換層と前記第二電極は重畳するが、前記光電変換層と前記第一電極は重畳しない第三領域と、を有することを特徴とする。また、本発明の発電装置において、複数の前記光電変換素子のそれぞれは、それぞれの前記積層方向が平行となるように配置され、複数の前記光電変換素子は、複数の前記光電変換素子の配列方向において隣接する一方の前記光電変換素子の前記光電変換層と、隣接する他方の前記光電変換素子の前記第二領域及び前記第三領域の少なくとも一方が、前記配列方向において重畳するように配置されることを特徴とする
【0010】
また、本発明の発電装置において、複数の前記光電変換素子は、光の照射方向に対して、前記第二電極が前記第一電極よりも奥側に位置するように配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の発電装置は、更に、複数の前記光電変換素子の配列方向において隣接する一方の前記光電変換素子の前記光電変換層と、隣接する他方の前記光電変換素子の前記第二領域及び前記第三領域の少なくとも一方が、前記配列方向において重畳するように複数の前記光電変換素子を保持する保持部と、前記保持部により複数の前記光電変換素子それぞれが保持される位置を保持位置と定義した際、前記保持位置それぞれに配置され、前記保持位置に位置する前記光電変換素子の前記第一電極に接触して、外部回路と前記光電変換素子を電気的に接続する複数の第一接続部と、前記保持位置それぞれに配置され、前記保持位置に位置する前記光電変換素子の前記第二電極に接触して、前記外部回路と前記光電変換素子を電気的に接続する複数の第二接続部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の発電装置において、前記第一電極及び前記第二電極は、前記積層方向において、前記光電変換層に重畳しない非重畳領域を有し、複数の前記第一接続部及び複数の前記第二接続部は、前記非重畳領域に電気的に接続されるように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光電変換素子によれば、2つの電極が光透過性を有するため、照射光を透過させることができる。結果、背後にある光電変換素子は、その透過光により発電することができるため、単位面積当たりの発電量を増大させることができる。また、本発明の発電装置によれば、光透過性を有する2つの電極を有する光電変換素子を重畳させることにより、単位面積当たりの発電量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態における光電変換素子を並列接続した発電装置の断面図である。
図2】(A)は、本発明の実施形態における光電変換素子の変形例の断面図である。(B)は、本発明の実施形態における光電変換素子の別の変形例を直列接続した発電装置の断面図である。
図3】本発明の実施形態における光電変換素子を直列接続した発電装置の断面図である。
図4】本発明の実施形態における発電装置の出力装置の斜視図である。
図5】(A)は、本発明の実施形態における発電装置の光電変換素子を並列に接続する出力回路である。(B)は、本発明の実施形態における発電装置の光電変換素子を直列に接続する出力回路である。(C)は、本発明の実施形態における発電装置の光電変換素子を直列及び並列に接続する出力回路である。
図6】(A)は、光電変換素子に関する実験で用いた光電変換素子の斜視図である。(B)は、光電変換素子に関する実験で用いた光電変換素子の平面図である。(C)は、光電変換素子に関する実験で用いる2つの光電変換素子を積み重ねた際の平面図である。
図7】第二電極材料A~Dの透過率に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1図6は発明を実施する形態の一例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わす。
【0016】
<全体構成>
図1を参照して、本発明の実施形態における発電装置1について説明する。本実施形態における発電装置1は、複数の光電変換素子2と、出力装置3と、を備える。
【0017】
<光電変換素子>
図1を参照して、本発明の実施形態における光電変換素子2について説明する。本実施形態において光電変換素子2は、シート状に構成され、可撓性を有するように構成される。その光電変換素子2は、第一電極10と、第二電極11と、光電変換層12と、機能層(金属アルコキシド含有層)13と、基板14と、封止部15と、基板16を備える。光電変換素子2は、図1に示すように、第一電極10、機能層13、光電変換層12、第二電極11の順に基板14上に積層される。なお、光電変換素子2の各層の積層方向(以下、層積層方向と呼ぶ。)Aは、シート状の光電変換素子2の厚み方向、又は、シート状の光電変換素子2の平面の面垂直方向に一致するものとして以下、説明する。
【0018】
なお、光電変換素子2は、シート状に構成されていなくてもよく、更には、可撓性を有しなくてもよい。
【0019】
<第一電極及び第二電極>
第一電極10及び第二電極11の一方は、陽極で、他方が陰極に相当する。第一電極10は、導電性および光透過性を有する第一電極材料により構成される。第一電極材料は、例えば、導電性を有する透明な材料が挙げられる。より具体的に第一電極材料としては、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)、IGZO(In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、O(酸素)で構成)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)等の導電性金属酸化物が一例として挙げられる。本実施形態において第一電極10は、第一電極材料により透明な電極(第一透明電極)として構成される。
【0020】
そして、第一電極10は、図1に示すように、例えば、絶縁体で構成される基板14上に、単層、または、複数の材料が積層されて構成される。本実施形態では、第一電極10は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等の成膜方法により基板14上に第一電極材料が成膜されることにより構成されてもよいし、所定の溶媒に第一電極材料を溶かした第一電極材料溶液をインク溶液として、基板14上に塗布、又は、インクジェット式プリンタで基板14上に印刷することにより構成されてもよい。
【0021】
基板14は、ポリカーボネート等の光透過性を有する材料により構成され、特に、高い光透過性を有する透明な材料で構成されることが好ましい。また、本実施形態において光電変換素子2は、フレキシブルに構成される。このため、基板14は、ポリカーボネート等の可撓性及び絶縁性を有する材料によりシート状に構成されることが好ましい。なお、基板14は、可撓性を有しないガラス等の材料でシート状に構成されてもよい。
【0022】
第二電極11は、導電性および光透過性を有する第二電極材料により構成される。そして、第二電極材料には、ナノ構造体が含まれる。具体的に第二電極材料は、導電性高分子化合物とナノ構造体で構成される。本実施形態において第二電極11は、第二電極材料により透明な電極(第二透明電極)として構成される。
【0023】
導電性高分子化合物として、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸)(以下、PEDOT-PSSと呼ぶ。)、又はポリアニリン(polyaniline)が挙げられる。ナノ構造体とは、ナノロッド、ナノワイヤ、ナノ粒子、ナノ立体構造体(テトラポット型やマキビシ型)などのナノスケールの構造体を指す。具体的にナノ構造体として、例えば、銀ナノワイヤ(AgNW)等の金属ナノワイヤが挙げられる。
【0024】
PEDOT-PSS溶液に金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ)を所定の質量比(例えば、質量比1:1)で混合して、所定の処理を加えて、金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ)をPEDOT-PSS溶液中に適度に分散させてPEDOT-PSS溶液と金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ)の混合溶液を作成する。その混合溶液を光電変換層12上に塗布して乾燥させると、高い光透過性を有する第二電極11の層が形成される。また、ポリアニリンに溶液に金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ)を混合しても同様である。なお、第二電極11は、高い光透過性を確保できるなら、光電変換層12上に、複数の材料が積層されて構成されてもよい。
【0025】
なお、第二電極11は、スパッタリング法、真空蒸着法等の成膜方法により光電変換層12上に成膜されることにより構成されてもよいし、第二電極材料を含む第二電極材料溶液をインク溶液として、光電変換層12上に塗布、又は、インクジェット式プリンタで光電変換層12上に印刷することにより構成されてもよい。
【0026】
封止部15は、基板14上に積層された第一電極10、機能層13、光電変換層12、第二電極11を、例えば、樹脂等により封止して光電変換素子2を保護するものである。封止部15は、光透過性を有する材料により構成され、特に、高い光透過性を有する透明な材料で構成されることが好ましい。また、封止部15は、可撓性を有する材料により構成されることが好ましい。
【0027】
また、機能層13とは反対側の光電変換層12上に、例えば、別途、別の層(例えば、正孔輸送層等)が積層される場合、第二電極11は、その別の層上に積層される。
【0028】
<光電変換層>
光電変換層12は、外部から入射する光に起因して電子と正孔とを発生させるものである。そして、光電変換層12は、第一電極10および第二電極11の間に形成される。光が入射すると、光電変換層12において励起子が生成され、電子と正孔とが発生する。そして、例えば、第一電極10が陰極として機能し、第二電極11が陽極として機能する場合、電子は、電子輸送層として機能する機能層13を介して第一電極10側へ、正孔は第二電極11側へ移動する。その結果、第二電極11および第一電極10に接続された(図示しない)外部回路に、電流(光励起電流)が流れる。
【0029】
光電変換層12は、n型半導体材料およびp型半導体材料を含有している。光電変換層12においてn型半導体材料とp型半導体材料との接合は、平面的な接合界面を有する平面へテロ接合であってもよいし、三次元的に混合させたバルクへテロ接合であってもよい。
【0030】
本実施形態における光電変換層12には、金属アルコキシドが含有される。金属アルコキシドは、n型半導体として作用する。光電変換素子2の出力電圧は、n型半導体のLUMOとp型半導体のHOMOの値の差で決定される。LUMOとHOMOの値がバンドギャップエネルギーとなるため、n型半導体としての金属アルコキシドのバンドギャップエネルギーが大きい場合、n型半導体のLUMOが大きくなり、高い出力電圧を得ることが可能となる。高い出力電圧を得るため、光電変換層12で用いられる金属アルコキシドは、バンドギャップエネルギーが3.5eV以上あることが好ましい。
【0031】
また、光電変換層12で用いられる金属アルコキシドとして、例えば、チタンアルコキシド(一般式Ti(OR))、亜鉛系の亜鉛アルコキシド、ジエチルジンク、チタニアや酸化亜鉛の微粒子が好ましい。また、チタンアルコキシドとして、例えば、チタンイソプロポキシドが好ましい。
【0032】
また、光電変換層12におけるn型半導体には、金属アルコキシドの他に、例えば、フラーレン、フラーレン誘導体、酸化物半導体、及び、その他の電子受容性化合物のうち少なくとも1つが含有されていてもよい。すなわち、光電変換層12におけるn型半導体は、金属アルコキシドのみで構成されてもよいし、金属アルコキシドおよび上記上げた電子受容性化合物の混合体により構成されてもよい。なお、n型半導体が金属アルコキシドのみで構成される場合には、製造の過程で意図せずに含まれてしまう他のn型半導体が含有される場合も含む。また、上記酸化物半導体として、例えば、酸化亜鉛や酸化チタンの無機化合物粒子が一例として挙げられる。また、光電変換層12におけるn型半導体は、金属アルコキシドではなく、フラーレン、フラーレン誘導体、酸化物半導体、及び、その他の電子受容性化合物のうち少なくとも1つが含有されたものであってもよい。上記酸化物半導体は、例えば酸化亜鉛や酸化チタンの無機化合物粒子が一例として挙げられるが、これに限るものではない。
【0033】
p型有機半導体として、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリシラン及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリフェニレンビニレン及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が一例として挙げられる。
【0034】
<機能層(金属アルコキシド含有層)>
機能層13は、第一電極10および第二電極11の間に形成される。特に、機能層13は、光電変換層12と第一電極10の間において双方の層に隣接するように形成されることが好ましい。そして、機能層13は、例えば、第一電極10が陰極である場合、光電変換層12で発生する電子を効率良く第一電極10へと輸送する電子輸送層としての機能を担う。この場合、機能層13は、電子の移動度が高い材料で形成されることが好ましい。電子の移動度が高い材料として、例えば、金属アルコキシド(例えば、チタンアルコキシド)、ポリチオフェン誘導体の一つであるポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)等が挙げられる。また、機能層13は、光電変換層12で発生する正孔を第一電極10に流さない整流作用を奏する。なお、機能層13は、例えば、第一電極10が陽極である場合、光電変換層12で発生する正孔を効率良く第一電極10へと輸送する電子輸送層としての機能を担う。この場合、機能層13は、正孔の移動度が高い材料で形成されることが好ましい。
【0035】
電子輸送機能を担う機能層13には、金属アルコキシド(例えば、チタンアルコキシド)が含有されることが好ましい。機能層13中の金属アルコキシドは、n型半導体としての役割を果たし、電子を速やかに第一電極10へ移動させる。また、機能層13と光電変換層12とは、共通成分として金属アルコキシドを有する。結果、機能層13および光電変換層12の層間において金属アルコキシド同士が接触する割合が高くなるため、上記層間における接触抵抗が低減される。機能層13および光電変換層12における金属アルコキシドの含有比率が高ければ高いほど接触抵抗が低減される。また、上記層間で、金属アルコキシドの相互浸透が起こるため、光電変換層12および機能層13の機械的強度が向上する。結果、光電変換層12と機能層13との間で剥離が起こりにくくなる。この観点からすると、機能層13は、主成分が金属アルコキシドで構成されたり、または金属アルコキシドのみ(製造の過程で意図せずに含まれてしまう不可避成分も含む)で構成されたりするようにすることが好ましい。また、機能層13では、金属アルコキシドの結晶体ではなく、非結晶の金属アルコキシドを用いることが好ましい。結晶体が有する靱性の低さの問題点を解消するためである。また、機能層13の膜厚は、略100nm以下であることが好ましい。機能層13の膜厚が過度に厚い膜厚にされると、電子が第一電極10に到達することができず、失活してしまう。また、機能層13の膜厚が過度に薄い膜厚にされると、第一電極10の面を覆う事ができない。このため、第一電極10への速やかな電子の到達を可能にさせて、高い出力電流を得るために、機能層13の膜厚は略100nm以下が適当である。なお、光電変換層12におけるn型半導体が金属アルコキシドではなく、フラーレン、フラーレン誘導体、酸化物半導体、及び、その他の電子受容性化合物のうち少なくとも1つが含有された材料で構成される場合、電子輸送機能を担う機能層13は、金属アルコキシドではなく、その他の材料で構成されてもよい。
【0036】
<光電変換素子の構成>
光電変換素子2は、基板14上に、第一電極10、機能層13、光電変換層12、第二電極11の順に積層される。そして、第二電極11側から封止部15で封止されつつ、基板16で覆われる。基板16は、基板14と同様の材料で構成されることが好ましい。
【0037】
また、光電変換素子2は、図1に示すように、光電変換素子2の層積層方向Aにおいて、第一電極10が光電変換層12と重畳する第一電極側重畳領域21と、第二電極11が光電変換層12と重畳する第二電極側重畳領域22と、を有する。本実施形態において第一電極側重畳領域21では、更に、層積層方向Aにおいて第一電極10が機能層13とも重畳する。また、本実施形態において第二電極側重畳領域22では、更に、層積層方向Aにおいて第二電極11の一部領域が機能層13とも重畳する。
【0038】
本実施形態において第一電極10は、層積層方向Aにおいて光電変換層12と重畳しない第一電極側非重畳領域23を有する。また、本実施形態において第二電極11は、層積層方向Aにおいて光電変換層12と重畳しない第二電極側非重畳領域24を有する。
【0039】
図1において層積層方向Aに直交しつつ、第二電極11と第一電極10がずれている方向を光電変換素子2の幅方向(以下、素子幅方向と呼ぶ。)Wと定義した場合、第一電極側非重畳領域23、第一電極側重畳領域21、第二電極側重畳領域22、及び第二電極側非重畳領域24は、順に素子幅方向Wに並ぶ。そして、第一電極側非重畳領域23及び第二電極側非重畳領域24は、素子幅方向Wに沿って第一電極側重畳領域21及び第二電極側重畳領域22の端部を起点として、それぞれ第一電極側重畳領域21及び第二電極側重畳領域22から離れる方向に凸となっている。また、第一電極側重畳領域21、及び第二電極側重畳領域22は、層積層方向Aにおいて一部領域が重畳している。
【0040】
なお、図2(A)に示すように、光電変換素子2は、図1に示す光電変換素子が複数あって、それらが直列接続された態様であってもよい。また、本実施形態における第一電極側非重畳領域23の第一電極10、第二電極側非重畳領域24の第二電極11は、それぞれ第一接続部18、第二接続部19を第一電極10、第二電極11のみに接続させつつ、光電変換層12、機能層13を確実に第一電極10、第二電極11に接触させないようにするために設けられたものである。このため、第一接続部18、第二接続部19に第一電極10、第二電極11のみを接続させるように構成されていれば、光電変換素子2は、図2(B)に示すように、第二電極側非重畳領域24及び第一電極側非重畳領域23を設けず、第一電極10、第二電極11、光電変換層12、機能層13は、全体が重畳していてもよい。このようなものも本発明の範囲に含まれる。つまり、第一電極10、第二電極11と第一接続部18、第二接続部19それぞれの接続が可能なら、光電変換素子2は、どのような構造であってもよい。
【0041】
<光電変換素子の配置>
従来の光電変換素子では、陰極又は陽極の一方側の電極のみを光透過性が高い透明な材料で構成し、他方側の電極を光透過性が低い金属材料で構成していた。このため、基準となる光電変換素子の層積層方向に沿って、複数の光電変換素子が積み重なるように配置されると、光は、最前列の光電変換素子でほとんど吸収又は反射され、2番目以降に配置された光電変換素子には光はほとんど届かない。結果、2番目以降に配置された光電変換素子では、発電がほとんど行われなかった。
【0042】
本実施形態における光電変換素子2は、第一電極10のみならず、第二電極11をも光透過性が高い透明な材料で構成している。このため、図1に示すように、基準となる光電変換素子2の層積層方向Aに沿って、複数の光電変換素子2が積み重なるように配置された結果、隣接する光電変換素子2同士の第一電極側重畳領域21、第二電極側重畳領域22が層積層方向Aにおいて重畳しても、照射光は、手前側の光電変換素子2で一部だけ吸収されるが、残りは透過し、奥側に配置された光電変換素子2にも到達する。結果、層積層方向Aから見て単位面積当たりの発電量が向上する。つまり、限られた設置面積しかない場所であっても、その場所で本実施形態における光電変換素子2を上下方向に積み重ねれれば、その場所で発電量を増大させることができる。従って、本実施形態における複数の光電変換素子2は、基準となる光電変換素子2の層積層方向Aに沿って積み重なるように配置されることにより、その効果が向上する。
【0043】
また、一般的に、農作物を育成する畑等は、太陽光の照射が十分に行われる場所にある。このため、本実施形態における光電変換素子2を畑の上方側に位置させると、十分な太陽光を受けつつ、一定量の太陽光を透過させることができる。結果、農作物へ十分な量の太陽光の照射が確保されて、光電変換素子2は十分な発電量を確保しつつ、農作物の育成も促進することができる。
【0044】
<出力装置の構成>
本実施形態における出力装置3は、複数の光電変換素子2で発電された電力を外部に出力する際に用いられるものである。光電変換素子2は、着脱自在に出力装置3で保持される。出力装置3は、図1に示すように、保持部17と、複数の第一接続部18と、複数の第二接続部19と、出力回路20と、を有する。
【0045】
<保持部>
保持部17は、図1に示すように、基準となる光電変換素子2の層積層方向A(以下、基準層積層方向CAと呼ぶ。)に、他の光電変換素子2の層積層方向Aが平行となりつつ、複数の光電変換素子2が積み重なるように複数の光電変換素子2を保持する。そして、保持部17は、光電変換素子2を着脱自在に構成される。このため、一部の光電変換素子2に不具合があっても、その部分だけを交換すれば足りる。
【0046】
本実施形態では、基準層積層方向CAと各光電変換素子2の層積層方向Aが略平行となるような姿勢で複数の光電変換素子2は配置される。この際、図1に示すように、各光電変換素子2が並列に接続される場合、各光電変換素子2の第一電極10と第二電極11が同じ側に位置するような姿勢で各光電変換素子2は配置される。一方、図3に示すように、各光電変換素子2が直列に接続される場合、層積層方向Aにおいて隣接する光電変換素子2の第一電極10と第二電極11が相互に反対に位置するような姿勢で各光電変換素子2は配置される。また、光の照射方向に対して、第二電極11は、第一電極10よりも奥側に配置されるような姿勢で、光電変換素子2は配置される方が好ましい。光電変換層12に照射光が到達する前に、ナノ構造体により照射光を反射させないようにするためである。
【0047】
本実施形態において保持部17は、図4に示すように、内部に複数の支持部171を有する筐体170により構成される。筐体170は、例えば、開口170Aを有する中空の直方体形状をしている。筐体170は、直方体形状の面のうち、所定の一つの面が無く、その部分が開口170Aとなり、筐体170の内部を外部に開放している。
【0048】
支持部171は、光電変換素子2を筐体170内で支持するためのものである。そして、複数の支持部171は、筐体170の延在方向D(例えば、高さ方向)に沿って等間隔に設けられる。
【0049】
また、筐体170の延在方向Dにおいて隣接する2つの支持部171の間には、光電変換素子2を収容するための収容空間Sが形成される。収容空間Sは、筐体170の延在方向Dに延在する筐体170の中心軸J周りの周方向に沿って閉じず延在する筐体170の内壁面170Bと、筐体170の延在方向Dにおいて隣接する2つの支持部171それぞれの延在方向Dで対向する対向面171Aに取り囲まれた状態になる。内壁面170Bの閉じていない部分が筐体170の上記開口170Aとなる。
【0050】
光電変換素子2は、開口170Aを通じて収容空間Sに挿入可能に構成される。この際、光電変換素子2は、自身の層積層方向Aが、筐体170の延在方向Dと平行になりつつ、自身の素子幅方向Wが筐体170の幅方向(以下、筐体幅方向と呼ぶ。)Eに平行となるような姿勢で収容空間Sに挿入される。この際、出力回路20が並列回路を構成する場合、第一電極側非重畳領域23の第一電極10、第二電極側非重畳領域24の第二電極11が他の光電変換素子2のものと同じ側になるような姿勢で光電変換素子2は配置される。また、出力回路20が直列回路を構成する場合、隣接する光電変換素子2同士の第一電極側非重畳領域23の第一電極10、第二電極側非重畳領域24の第二電極11が反対になるような姿勢で光電変換素子2は配置される。
【0051】
支持部171は、図4に示すように、光電変換素子2の素子幅方向Wの両端で光電変換素子2を支持する一対の支持体172により構成される。支持体172は、例えば、筐体170の内壁面170Bの一部を構成すると共に、筐体幅方向Eで対向する一対の対向面170Cに接触しつつ、筐体170の開口170Aを起点として筐体170の奥行方向Fに沿って延在する棒状の板材で構成される。支持体172は、光電変換素子2の第二電極側非重畳領域24及び第一電極側非重畳領域23(図1では、光電変換素子2の素子幅方向Wの両端部及びその近傍)において光電変換素子2に接触して光電変換素子2を支持する。
【0052】
以上のように構成される支持部171において、筐体幅方向Eにおいて一対の支持体172それぞれが対向する対向面172Aの間の空間は、図1及ぶ図4に示すように、何も配置されない空き空間Tとなる。筐体170の延在方向Dの一方側から光が照射されると、図1に示すように、光は光電変換素子2の第二電極側重畳領域22及び第一電極側重畳領域21を透過して、次の光電変換素子2に進む。この際、空き空間Tに相当する位置に何か配置させると、そこで、光が吸収又は反射されてしまう。このことを防ぐために、空き空間Tは設けられている。
【0053】
<第一接続部及び第二接続部>
複数の第一接続部18は、収容空間Sに挿入された光電変換素子2の第一電極10に接触して、出力回路20と光電変換素子2の第一電極10を電気的に接続するものである。複数の第二接続部19は、収容空間Sに挿入された光電変換素子2の第二電極11に接触して、出力回路20と光電変換素子2の第二電極11を電気的に接続するものである。
【0054】
収容空間Sに光電変換素子2を挿入した際、筐体170及び支持部171(保持部17)により光電変換素子2が保持される位置を保持位置と定義した際、第一接続部18は、保持位置において光電変換素子2の第一電極10が第一接続部18に接触する位置に配置される。また、第二接続部19は、保持位置において光電変換素子2の第二電極11が第二接続部19に接触する位置に配置される。また、第一接続部18及び第二接続部19は、出力回路20に接続される。つまり、第一接続部18及び第二接続部19は、光電変換素子2と出力回路20を電気的に接続する。
【0055】
本実施形態において第一接続部18及び第二接続部19は、図4に示すように、収容空間S毎に設けられ、両者が筐体幅方向Eにおいて対向するように設けられる。具体的に第一接続部18及び第二接続部19は、筐体幅方向Eにおいて対向する筐体170の内壁面170B又はその近傍に設けられる。なお、第一接続部18及び第二接続部19は、筐体幅方向Eにおいて対向せずに、筐体170の奥行方向Fに相互にずれた位置に位置してもよい。
【0056】
<出力回路>
出力回路20は、各光電変換素子2に接続される外部回路の一例であり、各光電変換素子2で発電された電力を外部に出力するものである。出力回路20は、図5(A)に示すように、各光電変換素子2を並列に接続してもよいし、図5(B)に示すように、各光電変換素子2を直列に接続してもよいし、図5(C)に示すように、各光電変換素子2を直列、及び並列が混在するように接続してもよい。なお、図5(C)に示す出力回路20では、直列接続された光電変換素子2の2つの列を、並列接続している。また、図1に示す出力回路20では、各光電変換素子2を並列に接続している。また、図2(B)及び図3に示す出力回路20では、各光電変換素子2を直列に接続している。また、図5(A)~(C)において光電変換素子2の「-」は、第一電極10を表し、光電変換素子2の「+」は、第二電極11を表している。
【0057】
各光電変換素子2を並列に接続した場合、図5(A)に示すように、各光電変換素子2と直列に逆流防止ダイオード190を設けることが好ましい。電流が逆流することを防止するためである。なお、図1に示す出力回路20では、逆流防止ダイオード190を省略している。
【0058】
各光電変換素子2を直列に接続した場合、図5(B)に示すように、各光電変換素子2それぞれに対してバイパスダイオード191を並列に接続させるようすることが好ましい。バイパスダイオード191は、例えば、障害物が光電変換素子2への光を遮った場合や、光電変換素子2に不具合が生じた場合等に、不具合箇所の電流をバイパスさせるからである。また、各光電変換素子2を直列に接続した場合、各光電変換素子2と直列に逆流防止ダイオード190を設けることが好ましい。電流が逆流することを防止するためである。なお、図2(B)及び図3に示す出力回路20では、バイパスダイオード191を省略している。
【0059】
各光電変換素子2を直列、及び並列が混在するように接続した場合、図5(C)に示すように、直列接続の部分には、バイパスダイオード191を並列に接続し、並列接続の部分には逆流防止ダイオード190を直列に接続することが好ましい。
【0060】
以上の出力回路20を通じて各光電変換素子2で発電された電力は、外部に出力される。そして、出力回路20の下流側には、必要に応じて、例えば、電圧を昇圧する(図示しない)昇圧回路、又は直流―交流変換を行う(図示しない)インバータ回路等が設けられて、所定の電力が外部に供給される。なお、出力回路20の下流側には、上記以外の回路が含まれていてもよい。
【0061】
<光電変換素子A,Bに関する実験>
本願発明者は、図6(A),(B)に示す構造の光電変換素子A,Bを作成して、光電変換素子A,Bの吸光特性及び発電特性に関する実験を行った。光電変換素子Aは、本発明の実施形態に含まれるものであり、ITO(インジウムドープ酸化錫透明導電膜)付ガラス基板(第一電極10付きの基板14)の上に機能層13、光電変換層12、第二電極11が順に成膜されたものである。光電変換素子Aにおける機能層13は、イソプロピルアルコールに2wt%のチタンイソプロポキシドを溶解させた塗布液をITO付ガラス基板に滴下してスピンコート法により成膜して作成した。そして、成膜後、120℃の大気中で10分乾燥させた。
【0062】
光電変換素子Aにおける光電変換層12は、光電変換層形成材料をクロロベンゼンに溶解させた塗布液を機能層の上に滴下してスピンコート法により成膜して作成した。そして、成膜後、120℃の大気中で10分乾燥させた。なお、光電変換層形成材料として、ポリチオフェン誘導体(p型半導体高分子化合物)、フラーレン誘導体(PCBM)、チタンアルコキシドTiOxを混合したものが挙げられる。ポリチオフェン誘導体として、Poly(3-hexylthiophene)-regio-regular(Sigma-Aldrich社で購入)を用いた。また、チタンアルコキシドとして、チタンイソプロポキシドを用いた。
【0063】
光電変換素子Aにおける第二電極11は、PEDOT-PSS(Heraeus社で購入)に銀ナノワイヤ(Sigma-Aldrich社で購入)を、質量比1:1で混合して分散させた混合溶液を第二電極材料に用い、その第二電極材料を光電変換層12滴下してスピンコート法により成膜して作成した。そして、成膜後、120℃の大気中で10分乾燥させた。
【0064】
光電変換素子Bは、比較例として作成したものであり、光電変換素子Aと同様に、ITO(インジウムドープ酸化錫透明導電膜)付ガラス基板(第一電極10付きの基板14)の上に機能層13、光電変換層12、第二電極11が順に成膜されたものである。なお、機能層13、光電変換層12は、同じ材料、製造方法で作成した。一方、第二電極11は、PEDOT-PSS(Heraeus社で購入)のみを第二電極材料に用い、その第二電極材料を光電変換層12滴下してスピンコート法により成膜して作成した。
【0065】
<光電変換素子A,Bの吸光度について>
分光光度計(株式会社島津製作所製UV-1800)により波長が500nmの光における光電変換素子A,Bの吸光度を測定した。この際、光電変換素子Aの吸光度をC(Abs)とし、光電変換素子Bの吸光度をD(Abs)とした場合、C/Dは59(%)となった。つまり、本実施形態に準じて作成された光電変換素子Aの方が、吸光度が低く、光電変換素子Bと比較して41(%)もの光を透過させたことがわかる。
【0066】
<光電変換素子A,Bの発電特性について>
また、図6(C)に示すように、光電変換素子A及び光電変換素子Bを、それぞれの第二電極側重畳領域22が重畳するように積み重ねて、基板14側から(図6の紙面奥側から手前側に向かって)光を照射した際、直列接続をした場合における電流値と、並列接続をした場合における電圧値を測定した。直列接続をした場合における光電変換素子Aの電流値をE(A)とし、光電変換素子Bの電流値をF(A)とした場合、E/Fは、136(%)となった。光電変換素子Bに比べて、本実施形態に準じて作成された光電変換素子Aの方が多くの光を透過させるため、多く発電していることがこの結果から明らかになった。
【0067】
また、並列接続をした場合における光電変換素子Aの電圧値をG(A)とし、光電変換素子Bの電圧値をH(A)とした場合、G/Hは、104(%)となった。光電変換素子Bに比べて、本実施形態に準じて作成された光電変換素子Aの方が多くの光を透過させるため、光電変換素子Aの方が多く発電していることがこの結果から明らかになった。なお、図6(C)に示すように、層積層方向Aから平面視した際、光電変換素子A及び光電変換素子Bそれぞれの光電変換層12が重畳するように積み重ねることは、単位面積当たりの発電量を向上させる観点から好ましい。このように光電変換素子A及び光電変換素子Bを配置させた場合、従来、第二電極11と光電変換層12が重畳する重畳領域では、第二電極11により多くの光が吸収、又は、反射されていたため、重畳領域では、発電効率が低くなっていた。しかし、光電変換素子A,Bにおいて第二電極11は、高い光透過率を有するため、重畳領域においても、高い発電効率を維持することができる。
【0068】
<第二電極材料A~Dの透過率について>
本願発明者は、PEDOT-PSSと銀ナノワイヤの混合比(質量比)を変えた第二電極材料A~Dを作成した。第二電極材料Aは、PEDOT-PSSと銀ナノワイヤの混合比を質量比1:1にしたものである。第二電極材料Bは、PEDOT-PSSと銀ナノワイヤの混合比を質量比1.5:1にしたものである。第二電極材料Cは、PEDOT-PSSと銀ナノワイヤの混合比を質量比2:1にしたものである。第二電極材料Dは、PEDOT-PSSのみであり、銀ナノワイヤは含まれていない。なお、第二電極材料Aは、光電変換素子Aの第二電極材料に対応し、第二電極材料Dは、光電変換素子Bの第二電極材料に対応する。
【0069】
本願発明者は、分光光度計(株式会社島津製作所製UV-1800)を用いて、第二電極材料A~Dの透過率(%)を測定した。その結果を図7のグラフに示す。なお、図7のグラフでは、横軸に分光光度計からの照射光の波長を取り、縦軸に透過率(%)を取った。図7のグラフによると、第二電極材料A、第二電極材料B、第二電極材料C、第二電極材料Dの順に、概ね透過率が高くなっている。そして、第二電極材料Dに比べて光電変換素子A~Cは、透過率が大幅に上がっている。従って、PEDOT-PSSに銀ナノワイヤを混合した方が、透過率が明らかに良くなることがわかる。
【0070】
また、図7のグラフから明らかなように、銀ナノワイヤに対してPEDOT-PSSの質量比を小さく方が、透過率が明らかに良くなっている。そして、第二電極材料Bと第二電極材料Cを比較すると、照射光の波長が400(nm)くらいまでは両者の透過率は略同じであるが、照射光の波長が400(nm)を超えると、第二電極材料Cに比べて第二電極材料Bの方が、わずかに透過率が大きくなっている。また、第二電極材料Aと第二電極材料Bを比較すると、照射光の波長が300(nm)~1000(nm)の範囲において、第二電極材料Bに比べて第二電極材料Aの方が、透過率が大幅に大きくなっている。
【0071】
尚、本発明の光電変換素子及び発電装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
1 発電装置
2 光電変換素子
3 出力装置
10 第一電極
11 第二電極
12 光電変換層
13 機能層
14,16 基板
15 封止部
17 保持部
18 第一接続部
19 第二接続部
20 出力回路
21 第一電極側重畳領域
22 第二電極側重畳領域
23 第一電極側非重畳領域
24 第二電極側非重畳領域
170 筐体
171 支持部
172 支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7