IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ファンくるの特許一覧

<>
  • 特許-情報提供装置、方法およびプログラム 図1
  • 特許-情報提供装置、方法およびプログラム 図2
  • 特許-情報提供装置、方法およびプログラム 図3
  • 特許-情報提供装置、方法およびプログラム 図4
  • 特許-情報提供装置、方法およびプログラム 図5
  • 特許-情報提供装置、方法およびプログラム 図6
  • 特許-情報提供装置、方法およびプログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】情報提供装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0201 20230101AFI20250213BHJP
【FI】
G06Q30/0201
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024062208
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2023146430の分割
【原出願日】2023-09-08
【審査請求日】2024-04-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507027896
【氏名又は名称】株式会社ファンくる
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 敬人
(72)【発明者】
【氏名】徳田 修治
(72)【発明者】
【氏名】黒木 勝巳
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-007659(JP,A)
【文献】末吉 正成 他,EXCELマーケティング リサーチ&データ分析 [ビジテク],初版,株式会社翔泳社,2014年01月24日,p.256~261、308~321
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、契約意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する調査データ取得手段と、
前記評価データに基づいて契約意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数として多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、
前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、
を備え、
前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、
前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記分析結果出力手段が、前記寄与度に対応する大きさの図形により前記複数の説明変数を前記情報端末に表示させることを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
さらに、前記複数の説明変数間の関連性を算出する相関分析手段を備え、
前記分析結果出力手段が、前記説明変数のペアを接続する線であって、前記関連性の強さに応じた太さおよび/または種類の線を前記情報端末に表示させることを特徴とする請求項1記載の情報提供装置。
【請求項4】
さらに、前記複数の説明変数のそれぞれについての基準値を設定する基準値設定手段を備え、
前記分析結果出力手段が、前記説明変数を前記基準値との差に応じて異なる色で着色して表示させることを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記基準値設定手段が、前記複数の説明変数のそれぞれについて算出した同一または類似の業種・業態における評点の平均値を算出し、前記基準値に設定する機能を備えることを特徴とする請求項4に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記分析結果出力手段が、前記説明変数が前記基準値よりも高い値の場合は第1の色で着色し、前記説明変数が前記基準値よりも低い値の場合は第1の色と異なる第2の色で着色することを特徴とする請求項4に記載の情報提供装置。
【請求項7】
前記分析結果出力手段が、前記図形を放射状に配置して表示させることを特徴とする請求項に記載の情報提供装置。
【請求項8】
前記レベル3の評価項目が、前記レベル2の評価項目の下位概念の評価項目である、請求項1ないし7のいずれかに記載の情報提供装置。
【請求項9】
対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、契約意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する工程、
前記評価データに基づいて契約意思または他者推奨意思の評価値を算出する工程、
前記契約意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析工程、および、
前記多変量解析工程における分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力工程、をコンピューターが実行する情報提供方法であって、
前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、
前記多変量解析工程において、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする情報提供方法。
【請求項10】
コンピューターに、
対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、契約意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する手段と、
前記評価データに基づいて契約意思または他者推奨意思の評価値を算出する手段と、
前記契約意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、
前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を実行させるプログラムであって、
前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、
前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客の契約意思または他者推奨意思に寄与する情報を提供するための情報提供装置、方法およびプログラムに関する。なお、本明細書における「顧客」には見込み顧客も含まれ、「セールス」にはフィールドセールスおよびインサイドセールが含まれる。また、本明細書では、「契約意思」の用語を、プロダクトを導入する前の顧客の導入意思、および、プロダクトを導入済みの顧客の継続利用意思(または契約更新意思)を含む意味で用いるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、アンケートを集計することで、商品またはサービスの属性と販売実績との相関を分析し、分析結果を商品またはサービスの開発に反映することが行われている。
また、顧客による商品またはサービスの購入行動に対する障壁を分析することも行われている。たとえば、特許文献1では、顧客による商品またはサービスの購入意向または購入見込の程度を示す期待値を取得する期待値取得手段と、商品またはサービスの販売に影響する要素を示す関連値を取得する関連値取得手段と、商品またはサービスの販売の程度を示す販売値を取得する販売値取得手段と、商品またはサービスの販売に対する購入意向または購入見込の影響の程度を示す期待値係数を、販売値が、期待値係数によって重み付けされた期待値および関連値に従属することを示す式を演算することで算出する、係数算出手段と、を備える情報処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-215673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法では、調査結果やアンケート結果を単に集計したものを表示しており、どの要因が、顧客の契約意思または他者推奨意思にどの程度寄与しているかを把握することはできなかった。また、評価因子の寄与度を高精度に算出するだけではなく、容易に把握するための表示手段が求められている。
【0005】
本発明は、顧客の契約意思または他者推奨意思に対する評価因子の寄与度を視覚的に把握することを可能とする情報提供装置、方法およびプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は、顧客の契約意思または他者推奨意思に効果があると期待される評価要素を因子分析した上で、顧客の評価を統計的に有意になる数を収集し、統計分析することにより、顧客の導入意思または推奨意思を向上させるために有効な打ち手を容易に把握することを可能とする情報提供装置およびプログラムを発明した。
【0007】
本発明の情報提供装置は、対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、契約意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する調査データ取得手段と、前記評価データに基づいて契約意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数として多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を備え、前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行する構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記分析結果出力手段が、前記寄与度に対応する大きさの図形により前記複数の説明変数を前記情報端末に表示させる構成とすることができる。
上記情報提供装置において、さらに、前記複数の説明変数間の関連性を算出する相関分析手段を備え、前記分析結果出力手段が、前記説明変数のペアを接続する線であって、前記関連性の強さに応じた太さおよび/または種類の線を前記情報端末に表示させる構成とすることができる。
上記情報提供装置において、さらに、前記複数の説明変数のそれぞれについての基準値を設定する基準値設定手段を備え、前記分析結果出力手段が、前記説明変数を前記基準値との差に応じて異なる色で着色して表示させる構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記基準値設定手段が、前記複数の説明変数のそれぞれについて算出した同一または類似の業種・業態における評点の平均値を算出し、前記基準値に設定する機能を備える構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記分析結果出力手段が、前記説明変数が前記基準値よりも高い値の場合は第1の色で着色し、前記説明変数が前記基準値よりも低い値の場合は第1の色と異なる第2の色で着色する構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記分析結果出力手段が、前記図形を放射状に配置して表示させる構成とすることができる。
上記情報提供装置において、前記レベル3の評価項目が、前記レベル2の評価項目の下位概念の評価項目である構成とすることができる。
【0008】
本発明の情報提供方法は、対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、契約意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する工程、前記評価データに基づいて契約意思または他者推奨意思の評価値を算出する工程、前記契約意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析工程、および、前記多変量解析工程における分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力工程、をコンピューターが実行する情報提供方法であって、前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、前記多変量解析工程において、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする。
本発明のプログラムは、コンピューターに、対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、契約意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する手段と、前記評価データに基づいて契約意思または他者推奨意思の評価値を算出する手段と、前記契約意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数とした多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、を実行させるプログラムであって、前記評価データが、前記目的変数に対応するレベル1の評価項目の評価値と、前記目的変数を説明するレベル2の評価項目の評価値と、前記レベル2の評価項目を説明するレベル3の評価項目の評価値を含み、前記多変量解析手段が、前記レベル2の評価項目の評価値を中間目的変数とし、前記レベル3の評価項目の評価値を説明変数とする第1の多変量解析と、前記レベル1の評価項目の評価値を目的変数とし、前記レベル2の評価項目の評価値を説明変数とする第2の多変量解析と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顧客の契約意思または他者推奨意思に対する各評価因子の寄与度を容易に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る情報提供システムの構成図である。
図2】第1実施形態に係る情報提供装置の機能を説明する図である。
図3】第1実施形態のアンケート調査に係る調査票の設問構造を説明する図である。
図4】第1実施形態のアンケート調査に係る調査票の一例を示す図である。
図5図4の調査票に係る調査結果における「導入意向」に対する各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。
図6図4の各説明変数間の相関係数を示す図である。
図7図4の各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を第1実施形態に係る分析結果出力手段によりグラフィカルに放射状に表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
第1実施形態の情報提供システム1は、特定の企業からセールスを受けた顧客にアンケート調査の結果を用いて多変量解析を行い、顧客の契約意思または他者推奨意思に影響を及ぼす評価因子を数値またはグラフィカルな図形で表示することで容易に把握することを可能とするものである。第1実施形態の情報提供システム1は、以下に説明する構成を備えている。
【0012】
図1は、本実施形態に係る情報提供システムの構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る情報提供システム1は、サーバーとして機能する情報提供装置10と、管理用クライアントとして機能する管理用情報端末20と、アンケート回答者が利用する情報端末30と、調査データ収集装置40と、インターネット50とから構成されている。なお、図1に示す例では、情報提供装置10、管理用情報端末20および調査データ収集装置40を各1台例示しているが、この構成に限定されず、各2台以上の構成とすることができる。
【0013】
情報提供装置10は、たとえばPCサーバーであり、演算部11と、分析プログラム121を記憶している記憶部12と、情報端末30および調査データ収集装置40との通信を可能とする通信部13とを有している。
【0014】
管理用情報端末20は、情報提供装置10および調査データ収集装置40へのデータ入力操作や分析プログラム121および調査データ収集プログラム141の実行操作をするための情報端末であり、たとえばパーソナルコンピュータである。ユーザは、管理用情報端末20から後述の分析プログラム121を実行することにより、管理用情報端末20の表示装置に各種分析結果(たとえば、図5~7)を出力することが可能である。
【0015】
情報端末30は、アンケート回答者が利用する情報端末であり、調査データをデータベース122に入力するために利用される。図1の例では、スマートフォンである情報端末30を開示しているがこれに限定されず、パソコンやタブレット等のウェブブラウザが起動する任意の情報端末により構成することができる。
【0016】
調査データ収集装置40は、たとえばPCサーバーであり、演算部41と、データベース122および入力プログラム123を記憶している記憶部42と、情報提供装置10および情報端末30との通信を可能とする通信部13とを有している。入力プログラム123は、データベース122に、情報端末30から調査データを入力することを可能とするためのウェブページを提供する調査データ入力手段を備えている。
本実施形態では、調査データの取得は、入力プログラム123により情報端末30からウェブブラウザを用いてアンケートに回答する形態で入力する構成を採用したが、紙媒体などの別の手段により収集した調査データを加工して管理用情報端末20からデータベース122にアップロードする構成を採用してもよい。
【0017】
図2に示すように、情報提供装置10の演算部11は、記憶部12に記憶した分析プログラム121を実行することで、(1)調査データ取得手段と、(2)多変量解析手段と、(3)分析結果出力手段と、を実現する。以下、これらの各手段について説明する。
【0018】
(1)調査データ取得手段
調査データ取得手段は、多変量解析手段で用いる調査データを記憶部12に記憶するための手段である。本実施形態においては、データベース122から調査データを取得するためのクエリを入力する画面を管理用情報端末20に提供する。本実施形態における調査データは、顧客の導入意思に関するアンケートの調査データからなる。
【0019】
本実施形態におけるアンケート調査は、所定の評価項目を有する顧客向けアンケートであり、多変量解析を行うのに適した質問で構成されている。アンケート調査は、対象商品のセールスを受けた会社に所属する複数名(契約締結権限を有しない者も含む)を対象に行う。
【0020】
図3は、本実施形態のアンケート調査の調査票の設問構造を説明する図である。
レベル1評価項目は、セールスを受けたことにより契約意思が生じたかを問うものであり、重回帰分析の目的変数のスコアを算出するための質問である。ここで、レベル1評価項目は、対象プロダクト導入前の企業を対象とする場合もあれば、対象プロダクト導入後の企業を対象とする場合もある。レベル1評価項目の契約意思は、前者の場合は導入意思を意味し、後者の場合は契約継続意思(契約更新意思)を意味することになる。また、レベル1評価項目として、対象プロダクトの導入を他者に推奨する意思(他者推奨意思)があるかを問う質問を設けてもよい。
レベル2評価項目は、レベル1評価項目の評価因子であり、レベル1評価項目を従属変数として重回帰分析をする場合の説明変数となる。たとえば、課題の納得感を評価するためには、回答者が所属する会社の課題の本質が(改めて)示されたと感じるかを問う設問が設けられ、打ち手の納得感を評価するためには、提示された打ち手は、状況を抜本的に変えられそうと感じるかを問う設問が設けられる。
レベル3評価項目は、レベル2評価項目の評価因子である。レベル2質問とレベル3質問は、上位概念と下位概念の関係となるように設定される。図3中、実線で囲んだ質問は、たとえばネガティブ要素を複数選択回答(MA)するものであり、点線で囲んだ質問は、たとえばポジティブ要素を複数選択回答(MA)するものである。ここで、レベル3質問は図3の例示に限定されるものではなく、任意のネガティブ要素およびポジティブ要素を評価するための質問の組み合わせとすることができる。
【0021】
図4は、アンケート調査の調査票の一例を示す図である。
アンケート調査票の冒頭には、回答内容は営業活動およびサービスの改善の目的で使用される旨の説明文が記載されている。
項番2~3の質問は、顧客属性要素を問う質問であり、顧客セグメント別の分析を行う際に利用される場合もある。ここで、質問形式SAとは、回答欄から一つの選択肢のみを選択して回答する形式であることを意味する。
【0022】
レベル1質問(項番4)は、対象プロダクトの導入意向(契約意思)を問うものであり、多段階評価としている。本実施形態に係るプロダクトは、プロジェクトマネージメント用のソフトウェアである。
レベル2質問(項番5~10)は、レベル1質問の説明変数となる設問であり、いずれも多段階評価としている。たとえば、コストパフォーマンスの質問は、価格に性能等が見合っているかを問う質問であり、フィット感の質問は、アンケート回答者の会社に合っていると感じるかを問う質問である。
本実施形態におけるフィット感とは、回答者の対象への選好、ある回答者がある選択肢 a よりも選択肢 b をより好ましく感じている、効用 a よりも効用 b が大きいといった、回答者が持つ選好構造を変数化したものである。回答者の趣向性を汲みしたフィット感を評価項目に含めることにより、フィット感とクラスター化された回答者属性との相関関係を出力可能とする機能を後述の多変量解析手段に設けてもよい。
【0023】
レベル3質問(項番11~14)は、レベル2質問の評価因子となる設問である。図4中、質問形式MAとは、回答欄から一または複数の選択肢を選択して回答する形式であることを意味する。レベル3質問は、レベル2質問の下位概念に当たる質問を設定することが好ましい。たとえば、打ち手の納得感の質問としては、説明が分かりづらい、課題と打ち手に論理飛躍がある、事例の不足などを選択肢とすること、商品の質問としては、信頼性、処理速度、操作性など選択肢とすることができる。
【0024】
(2)多変量解析手段
本実施形態の多変量解析手段は、契約意思のスコアに各評価項目がどのように影響を与えているかを重回帰分析により分析する。ここで、回帰分析とは、結果を示す数値(目的変数)と要因になる数値(説明変数)の関係を明らかにする統計手法であり、重回帰分析では、目的変数を説明する際に、どの説明変数が、どの程度結果を左右しているのかを数値化して将来の予測を行う統計手法のことをいう。
重回帰分析により説明変数の影響の大きさを数値化することにより、サービスの改善方法の立案がしやすくなる。また、予想される説明変数の変化に伴う目的変数の変化の未来予測をすることが可能となる。
【0025】
図5は、図4の調査票に係る調査データにおける目的変数に対する各説明変数の寄与度を示す分析結果を示す図である。図5における目的変数は導入意向(導入意思)であり、説明変数はレベル2の各質問である。図5に示す例においては、「商品」が最も導入意思に対する寄与度が高いことがわかり、次に「打ち手の納得感」の寄与度が高いことがわかる。また、各説明変数のVIFも大きな数値となっていないことから、多重共線性の問題は生じていないことがわかる。ここで、VIF(Variance Inflation Factor:分散拡大要因)とは、重回帰分析における多重共線性を評価する際の指標である。多重共線性とは、説明変数間に高い関連性があることであり、VIFの値が大きい場合には、その変数を分析から除いた方がよいと考えられている。
また、図5において、決定係数Rは.646であるため、十分な説明力がある分析であることがわかる。ここで、決定係数(R)とは、重回帰分析によって求められた目的変数の予測値が、実際の目的変数の値とどのくらい一致しているかを表している指標である。一般には、決定係数が1に近いほど説明力が高いとされる。
さらに、多変量解析手段は、各説明変数について基準評点との差分値を算出する機能も備えている。図5では、各説明変数について全顧客の平均評点との差分値を算出している。この差分値を見ることで、分析対象の顧客の各評価項目のスコアが、全顧客と比べて低いものであるか高いものであるかが分かる。なお、基準評点としては、選択した任意のグループの平均評点を採点することができ、たとえば、同業種における平均評点を基準評点として採用してもよい。
【0026】
図6は、図5のレベル2の評価因子間の相関関係数を示す図である。たとえば、打ち手の納得感と課題の納得感との間の相関係数は.648であり、両者は高い相関関係があることが分かる。従って、一方の評価が上がると他方の評価も上がり、逆に一方の評価が下がると他方の評価も下がるという関係にある。このように、レベル2の評価因子間の相関関係数を算出することで、導入意思を高めるために必要な打ち手の検討が容易となる。
【0027】
(3)分析結果出力手段
本実施形態の分析結果出力手段は、図5~6のような表形式で分析結果を出力することに加え、顧客の契約意思に対する説明変数の寄与度をグラフィカルに表示することで視覚的に把握することを可能とする。
図7は、図5に示した導入意向(導入意思)に対する各説明変数の寄与度と各説明変数の相関係数を分析結果出力手段によりグラフィカルに表示した図である。契約意思の下方に位置する正六角形の頂点に各説明変数に対応する円を配置している。図7では、導入意思への寄与度が高い説明変数を大きい円で表示し、寄与度が低い説明変数を小さい円で表示している。本実施形態では、円の大きさは寄与度と比例した大きさとしているが、寄与度が一定以下の場合には予め定めた最小半径で描画し、最小半径以下の大きさにはならないようにしている。もっとも、円の大きさは寄与度の数値と必ずしも比例関係となるようにする必要はなく、強調表示(たとえば、最上位の2つの説明変数を寄与度の数値に係数をかけて大きく表示)してもよい。
【0028】
図7中、斜線は第1の色である緑色を示し、ドットは第2の色である赤色を示している。本実施形態においては、説明変数の評点と基準評点との差が大きくなるほど着色が濃く描画される仕様となっている。図7では、「課題の納得感」、「商品」および「コストパフォーマンス」が緑色で着色されているので、基準評点よりも高い評点であることを瞬時に看取することができる。また、目的変数である「契約意思」並びに説明変数である「打ち手の納得感」、「担当者」および「フィット感」が赤く着色されているので、基準評点よりも低い評点であること、特に濃い赤色で着色されている「フィット感」の評点がひときわ低いことを瞬時に看取することができる。
【0029】
また、特定の相関係数を有する説明変数同士を、相関度表示線により接続して表示している。本実施形態の相関度表示線は、有効数字の最小桁を四捨五入して0.7以上となるものを二重線、0.7未満~0.6以上となるものを太い実線、0.6未満~0.5以上となるものを通常の太さの実線、0.5未満~0.4以上となるものを細い点線で表示し、0.4未満は表示しないルールを採用している。このように、各説明変数の相関係数を太さや種類が異なる相関度表示線でグラフィカルに表示することで、各説明変数の相関係数を視覚的に容易に把握することが可能である。たとえば、打ち手の納得感とは課題の納得感との間に特に強い相関があり、次いで商品との間に特に強い相関があり、次いで担当者との間に比較的強い相関があることを太さや種類が異なる相関度表示線から容易に把握することが可能である。
【0030】
このように、分析結果出力手段は、改善の取り組みに伴い変化する各評価因子の契約意思スコアに対する寄与度の大小および各説明変数の相関度をグラフィカルに可視化して提供することで、改善の取り組みを効率的に行うための知見を与えることができる。なお、本実施形態では、説明変数を寄与度と比例する大きさの円により表現したが、寄与度を示す図形はこれに限定されず任意の図形を用いることができ、たとえば、多角形であってもよいし、食べ物やキャラクターのイラストであってもよい。また、説明変数を示す図形の配置順序を、ドラッグ操作により入れ替え可能に構成してもよい。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る情報提供システム1によれば、目的変数および説明変数(評価因子)を多変量解析することで、導入意思に影響を及ぼした因子を適切かつ容易に把握することが可能となる。
また、多変量解析で得られた分析結果をグラフィカルに可視化して提供することで、改善の取り組みを効率的に行うための目的変数を瞬時に把握することが可能である。
また、相関係数の高い説明変数をグラフィカルに可視化して提供することで、説明変数を改善した際の影響度を容易に予測することが可能となる。
【0032】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0033】
たとえば、上述した実施形態では、多変量解析のうち重回帰分析を用いて、各評価因子の、契約意思スコアに対する寄与度を求める構成を例示したが、この構成に限定されず、主成分分析、因子分析、コレスポンデンス分析、多次元尺度構成法、クラスター分析、パス解析、分散分析、コンジョイント分析、回帰分析、ロジスティクス回帰分析などを用いてもよい。
また、上述した実施形態に加えて、情報提供装置10は、顧客セグメントや利用シーン(日常利用や記念日利用など)、季節、天候などの条件情報も収集することで、これら条件情報を加味として、契約意思または他者推奨意思に寄与する評価因子を分析する構成とすることもできる。また、アンケートにグラフィック属性やサイコグラフィック属性を加えることにより、顧客セグメント別の分析も可能である。また、POS(Point of Sales)や購買履歴を管理するシステムと連携することにより、注文商品別の評価傾向を把握することも可能である。
【0034】
また、上述した実施形態では、レベル1の評価因子を目的変数とし、レベル2の評価因子を説明変数とする多変量解析のみを行うことにより、契約意思または他者推奨意思に与える評価因子の影響(寄与度)の説明力を高める例を説明したが、本発明の技術思想は階層化された評価因子を用いた多変量解析にも適用可能である。たとえば、(a)レベル2の評価因子とレベル3の評価因子の重回帰分析、(b)レベル2の評価因子とレベル3の評価因子の相関分析、(c)レベル1の評価因子とレベル2の評価因子の重回帰分析、および、(d)レベル2の評価因子間の相関分析、をする多変量解析手段を構築してもよい。このような多変量解析は、階層化されていない多変量解析だけではどの評価因子が支配的であるかを正確に把握できない場合にも、支配的な評価因子を把握することができることがあるので有用である。
【0035】
なお、上述した実施形態では、コンピュータソフトウエアを対象とした調査データを用いた例を説明したが、本発明はそれ以外の商品または役務を取り扱う業種に適用することも可能であり、たとえば、宿泊業、飲食サービス業、娯楽業、理美容や公衆浴場など生活関連サービス業、教養・技能教授業、金融業、保険業、小売業、情報通信業、物品賃貸業、専門サービス業(士業等)、広告業、不動産業、運輸業などに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…情報提供システム
10…情報提供装置
20…管理用情報端末
30…情報端末
40…調査データ収集装置
50…インターネット
【要約】
【課題】顧客の契約意思または他者推奨意思に対する評価因子の寄与度を視覚的に把握することを可能とする情報提供装置、方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 対象商品またはサービスについての評価項目の評価値を含む評価データであって、契約意思または他者推奨意思に関する複数の評価項目の評価値を含む評価データを取得する調査データ取得手段と、前記評価データに基づいて契約意思または他者推奨意思の評価値を目的変数とし、前記評価データにおける複数の評価項目の評価値を複数の説明変数として多変量解析を行うことで、前記説明変数の前記目的変数に対する寄与度を算出する多変量解析手段と、前記多変量解析手段による分析結果を、ネットワークを介して通信可能な情報端末に表示させる分析結果出力手段と、複数の説明変数間の関連性を算出する相関分析手段と、を備える情報提供装置。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7