(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】コンデンサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/008 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
H01G9/008 303
(21)【出願番号】P 2021068646
(22)【出願日】2021-04-14
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】595122132
【氏名又は名称】サン電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 達也
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-133178(JP,A)
【文献】特開昭56-012722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して陰極箔及び陽極箔から成る一対の電極箔を巻回して前記電極箔にそれぞれ引出端子を接続したコンデンサ素子と、上面に閉塞面を有して前記コンデンサ素子を収納する筒状の本体ケースと、前記本体ケースの下面を封止して前記引出端子を挿通する一対の貫通孔を有した封口体とを備えたコンデンサにおいて、前記引出端子が第1部材及び第2部材により形成され、
前記第1部材が、前記貫通孔に挿通される柱状部と、厚み方向に対向する第1面と第2面とを有して前記第2面が前記電極箔に接合される薄板状の平板部と、周面を前記柱状部の軸方向に対して傾斜して前記柱状部と前記平板部とを連結する傾斜部とを有するとともに、前記平板部の前記第1面の幅方向の両端部にエッジを除去されたエッジ除去部が上下方向に延びて設けられ、前記平板部の幅方向の両側面が切断面により形成され、前記エッジ除去部の上端が前記平板部の前記閉塞面側の端面に到達するとともに下端が前記電極箔よりも下方且つ前記傾斜部の上端よりも上方に配され、
前記第2部材が、前記柱状部に接続され、前記本体ケースの外側に引き出されて実装時の接続端子部を形成
し、
前記傾斜部が前記平板部の両面にそれぞれ形成される第1傾斜部と第2傾斜部とを有し、前記第1傾斜部の前記平板部側の先端が前記第2傾斜部の前記平板部側の先端よりも前記電極箔側に配され、前記エッジ除去部の下端が前記第1傾斜部の上端よりも上方に配されることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記エッジ除去部が前記平板部の前記第1面上から前記第2面側に窪む凹部により形成されることを特徴とする請求項
1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
上下方向において、前記エッジ除去部の下端と前記傾斜部の前記平板部側の先端との距離が0.1mm以上であることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
セパレータを介して陰極箔及び陽極箔から成る一対の電極箔を巻回して前記電極箔にそれぞれ引出端子を接続したコンデンサ素子と、上面に閉塞面を有して前記コンデンサ素子を収納する筒状の本体ケースと、前記本体ケースの下面を封止して前記引出端子を挿通する一対の貫通孔を有した封口体とを備えたコンデンサの製造方法において、
前記引出端子が第1部材及び第2部材により形成され、
前記第1部材が、前記貫通孔に挿通される柱状部と、厚み方向に対向する第1面と第2面とを有して前記第2面が前記電極箔に接合される薄板状の平板部と、周面を前記柱状部の軸方向に対して傾斜して前記柱状部と前記平板部とを連結する傾斜部とを有し、
前記第2部材が、前記柱状部に接続され、前記本体ケースの外側に引き出されて実装時の接続端子部を形成し、
前記平板部の幅方向の両端部を前記第1面側から前記第2面側に向けて切断して前記平板部を所定の幅に形成する工程と、前記平板部の前記第1面の幅方向の両端部のエッジを除去したエッジ除去部を形成する工程と、前記平板部を前記電極箔に取り付ける工程と、を有し、
前記エッジ除去部が上下方向に延びて設けられ、前記平板部の幅方向の両側面が切断面により形成され、前記エッジ除去部の上端が前記平板部の前記閉塞面側の端面に到達するとともに下端が前記電極箔よりも下方且つ前記傾斜部の上端よりも上方に配され
、
前記傾斜部が前記平板部の両面にそれぞれ形成される第1傾斜部と第2傾斜部とを有し、前記第1傾斜部の前記平板部側の先端が前記第2傾斜部の前記平板部側の先端よりも前記電極箔側に配され、前記エッジ除去部の下端が前記第1傾斜部の上端よりも上方に配されることを特徴とするコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体ケースに収納されるコンデンサ素子の陽極箔及び陰極箔に引出端子を接続したコンデンサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンデンサは、一端側に開口が設けられた筒状の本体ケースと、この本体ケース内に設けられたコンデンサ素子と、本体ケースの開口部に装着された封口体と、を備える。
【0003】
コンデンサ素子は、陰極箔と陽極箔とをセパレータを介して巻回するとともに、陰極箔と陽極箔にはそれぞれ引出端子が接続されている。各々の引出端子は、第1部材と第2部材を含む。第1部材は、本体ケースの内側に配置されている。第2部材は、第1部材に接続されるとともに本体ケース外へと引き出されている。
【0004】
引出端子の第1部材の一端側は細長い平板部になっている。陰極箔または陽極箔が、平板部の一方の面に接続される。このとき、セパレータが、平板部の他方の面に面して配される。第1部材の他端側は柱状部になっている。柱状部が、封口体の貫通孔内へ挿入される。
【0005】
平板部は、柱状の部材の一部を平板状に押しつぶし、その一部を切断して形成したものである。平板部の両側端を切断して、平板部の幅寸法が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来のコンデンサにおいて、引出端子の平板部を切断する際に、切断のための刃が平板部の第1面側から第2面側に向けて厚さ方向に平板部を切断すると、第2面側にバリが形成される。このため、第1面を陰極箔または陽極箔に接続するとバリによりセパレータが損傷し、陰極箔と陽極箔のショートの問題が発生する可能性がある。
【0008】
一方で、平板部の第2面を陰極箔または陽極箔に接続すると、平板部の切断によって第1面の両側端部形成されたエッジがセパレータに当接する。このため、コンデンサに振動が繰り返して加わる使用状態においては、エッジでセパレータが損傷し、陰極箔と陽極箔のショートの問題が発生する可能性がある。
【0009】
そこで、セパレータが平板部のエッジで損傷することを防止するため、平板部の第1面側のエッジ部に加工を施すことが考えられる。すなわち、エッジ部を削ること、またはエッジ部を窪ませたることによりエッジ部を除去したエッジ除去部を設けることでセパレータの損傷を防止できる。
【0010】
しかしながら、平板部のエッジ部にエッジ除去部を設けると、平板部の長手方向に垂直な幅方向の両側が加工硬化を起こす。引出端子は柱状の部材を押しつぶして平板部を形成するため、柱状部と平板部との間に周面を傾斜して厚みが徐々に小さくなる傾斜部が形成される。エッジ除去部の加工による加工硬化の位置は、傾斜部を形成することで生じる加工硬化の位置と近いと、ひずみが大きくなる。
【0011】
このため、コンデンサに振動が加わった際に引出端子にストレスが加わることで傾斜部の先端に亀裂が発生すると、亀裂がエッジ除去部の端面側に進行して、平板部が破断する新たな問題が生じる。
【0012】
そこで、本発明のコンデンサは、陰極箔と陽極箔のショートを防止するとともに、引出端子の損傷を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、セパレータを介して陰極箔及び陽極箔から成る一対の電極箔を巻回して前記電極箔にそれぞれ引出端子を接続したコンデンサ素子と、上面に閉塞面を有して前記コンデンサ素子を収納する筒状の本体ケースと、前記本体ケースの下面を封止して前記引出端子を挿通する一対の貫通孔を有した封口体とを備えたコンデンサにおいて、前記引出端子が第1部材及び第2部材により形成され、前記第1部材が、前記貫通孔に挿通される柱状部と、厚み方向に対向する第1面と第2面とを有して前記第2面が前記電極箔に接合される薄板状の平板部と、周面を前記柱状部の軸方向に対して傾斜して前記柱状部と前記平板部とを連結する傾斜部とを有するとともに、前記平板部の前記第1面の幅方向の両端部にエッジを除去されたエッジ除去部が上下方向に延びて設けられ、前記平板部の幅方向の両側面が切断面により形成され、前記エッジ除去部の上端が前記平板部の前記閉塞面側の端面に到達するとともに下端が前記電極箔よりも下方且つ前記傾斜部の上端よりも上方に配され、前記第2部材が、前記柱状部に接続され、前記本体ケースの外側に引き出されて実装時の接続端子部を形成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は上記構成のコンデンサにおいて、前記傾斜部が前記平板部の両面にそれぞれ形成される第1傾斜部と第2傾斜部とを有し、前記第1傾斜部の前記平板部側の先端が前記第2傾斜部の前記平板部側の先端よりも前記電極箔側に配され、前記エッジ除去部の下端が前記第1傾斜部よりも上方に配されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は上記構成のコンデンサにおいて、前記エッジ除去部が前記平板部の前記裏面上から前記表面側に窪む凹部により形成されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は上記構成のコンデンサにおいて、上下方向において、前記エッジ除去部の下端と前記傾斜部の前記平板部側の先端との距離が0.1mm以上であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、セパレータを介して陰極箔及び陽極箔から成る一対の電極箔を巻回して前記電極箔にそれぞれ引出端子を接続したコンデンサ素子と、上面に閉塞面を有して前記コンデンサ素子を収納する筒状の本体ケースと、前記本体ケースの下面を封止して前記引出端子を挿通する一対の貫通孔を有した封口体とを備えたコンデンサの製造方法において、前記引出端子が第1部材及び第2部材により形成され、前記第1部材が、前記貫通孔に挿通される柱状部と、厚み方向に対向する第1面と第2面とを有して前記第2面が前記電極箔に接合される薄板状の平板部と、周面を前記柱状部の軸方向に対して傾斜して前記柱状部と前記平板部とを連結する傾斜部とを有し、前記第2部材が、前記柱状部に接続され、前記本体ケースの外側に引き出されて実装時の接続端子部を形成し、前記平板部の幅方向の両端部を前記第1面側から前記第2面側に向けて切断して前記平板部を所定の幅に形成する工程と、前記平板部の前記第1面の幅方向の両端部のエッジを除去したエッジ除去部を形成する工程と、前記平板部を前記電極箔に取り付ける工程と、を有し、前記エッジ除去部が上下方向に延びて設けられ、前記平板部の幅方向の両側面が切断面により形成され、前記エッジ除去部の上端が前記平板部の前記閉塞面側の端面に到達するとともに下端が前記電極箔よりも下方且つ前記傾斜部の上端よりも上方に配されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明のコンデンサは、エッジ除去部の上端が平板部の閉塞面側の端面に到達するとともに下端が電極箔よりも下方且つ傾斜部よりも上方に配されるので、陰極箔と陽極箔のショートを防止するとともに、傾斜部と平板部との境界の亀裂を防止し、引出端子の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるコンデンサの断面図
【
図2】本発明の一実施形態にかかるコンデンサのコンデンサ素子の一部を示す斜視図
【
図3】本発明の一実施形態にかかるコンデンサの引出端子を示す正面図
【
図4】本発明の一実施形態にかかるコンデンサの引出端子を示す背面図
【
図5】本発明の一実施形態にかかるコンデンサの引出端子を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
図1はコンデンサ100の断面図を示している。コンデンサ100は、本体ケース1と、コンデンサ素子2と、封口体8と、を備えている。
【0021】
本体ケース1は、アルミニウム等の金属により有蓋円筒状に形成される。本体ケース1の一端(下端)側に開口部1aが設けられ、他端(上端)側が閉塞面1bとなっている。
【0022】
コンデンサ素子2は本体ケース1内に収納されている。
図2は、コンデンサ素子2の一部を示す斜視図である。
【0023】
コンデンサ素子2は、陰極箔3と、陽極箔4と、セパレータ5と、引出端子6とを有する。陰極箔3、陽極箔4及びセパレータ5は、それぞれ、帯状に長い形状を有する。
図2に示すように、陰極箔3及び陽極箔4はセパレータ5を介して巻回される。すなわち、陰極箔3及び陽極箔4から成る一対の電極箔がセパレータ5を介して巻回される。また、陰極箔3及び陽極箔4には、それぞれ引出端子6(
図1参照)が接続される。
【0024】
巻回したコンデンサ素子2には、良く知られているように、電解液が保持されている。なお、巻止テープ7は、円筒状に巻回したコンデンサ素子2の最外周に巻き付けられるが、
図2では各部の状態が理解しやすいように、展開状態としている。
【0025】
図2に示すように、セパレータ5の幅(長手方向に直交する方向の寸法)は、陰極箔3、陽極箔4の幅(長手方向に直交する方向の寸法)よりも大きい。これにより、陰極箔3と陽極箔4との間のショートを防止している。
【0026】
図1に示すように、封口体8は、開口部1aを封口する。まず、封口体8は、本体ケース1の開口部1aに装着される。この状態で、本体ケース1の開口端を、封口体8の下面側に折り曲げ加工する。また、本体ケース1の封口体8の側面に対応する部分の外面を内側に絞り加工する。このようにして、封口体8は、本体ケース1の開口部1aに固定されている。
【0027】
引出端子6は、第1部材9と第2部材10を有する。第1部材9は、例えば、アルミニウムより形成される。第2部材10は、例えば、鉄線の外周面に銅層を設けたCP線により形成される。第2部材10は、第1部材9に溶接等により固定されている。
【0028】
第1部材9の一端側には細長い平板部9aが設けられる。平板部9aは、円柱状の部材(例えば円柱状アルミニウム材)の一端側をプレス加工して形成される。平板部9aは薄板状である。陰極箔3または陽極箔4が、平板部9aにカシメにより機械的、電気的に固定されている。
【0029】
第1部材9の他端側(封口体8側)には柱状部9bが設けられる。柱状部9bは、円柱状の部材(例えば円柱状アルミニウム材)を、その形状のまま活用したものである。
図1に示すように、柱状部9bが封口体8の貫通孔8a内へと挿入(圧入)される。これにより、引出端子6の一部が本体ケース1の外に引き出された状態となる。
【0030】
柱状部9bの本体ケース1の外側部分には、穴(図示せず)が設けられる。この穴に、第2部材10の一端側が挿入される。この状態で、溶接により、第1部材9と第2部材10が機械的、電気的に固定されている。
【0031】
さらに、第2部材10の他端は、本体ケース1を受ける座板11の底面部分で折り曲げられている。これにより、第2部材10の他端は、接続端子部10aとなっている。また、折り曲げずに端子部とすることもできる。
【0032】
次に、第1部材9について、
図3~
図6を用いて詳細に説明する。
【0033】
図3は、引出端子6を示す正面図である。
図4は、引出端子6を示す背面図である。
図5は、引出端子6を示す側面図である。
図5では、引出端子6が示されるだけでなく、陰極箔3の一部も示されている。
図6は、
図3のA-A線断面図である。
図7は、
図6のC部拡大図である。なお、
図3、
図4、
図5では、第2部材10の一部を省略した状態で、引出端子6を図示している。
【0034】
矢印Lの方向は、上下方向である。上下方向Lは、柱状部9bの軸方向であるとともに、平板部9aにおける長手方向である。矢印Wの方向は、上下方向Lに直交する幅方向である。この幅方向Wは、平板部9aの厚み方向に対向する第1面9g及び第2面9hとは平行である。
【0035】
上述したように、第1部材9の平板部9aは、円柱状の部材をプレス成形して薄板状に形成される。第1部材9の柱状部9bと平板部9aとの間には、傾斜部が形成される。傾斜部は平板部9aの両面にそれぞれ形成される第1傾斜部9d及び第2傾斜部9eを有している。
図3、
図4、
図5に示すように、第1傾斜部9d及び第2傾斜部9eの各々の周面は、上下方向Lに対して傾斜するとともに柱状部9bと平板部9aとを連結する。
【0036】
なお、第1傾斜部9dの平板部9a側の先端9jと、第2傾斜部9eの平板部9a側の先端9pは、上下方向Lにずらしている。すなわち、第1傾斜部9dの平板部9a側の先端9jが、第2傾斜部9eの平板部9a側の先端9pよりも電極箔側に配置される。これにより、振動時の応力が集中しないようにしている。
【0037】
ここでは、先端9jを有した第1傾斜部9dが平板部9aの第1面9g側に設けられ、先端9jよりも下方の先端9pを有した第2傾斜部9eが平板部9aの第2面9h側に設けられる。第1傾斜部9dが平板部9aの第2面9h側に設けられ、第2傾斜部9eが平板部9aの第1面9g側に設けられてもよい。尚、第1傾斜部9d及び第2傾斜部9eの形状は、図示されたもの以外の形状でもよい。
【0038】
また、
図3、
図6に示すように、平板部9aの第1面9gには、エッジを除去した部分であるエッジ除去部9fが幅方向Wの両端部に形成される。エッジ除去部9fは、側面9cに沿って形成されている。
【0039】
このエッジ除去部9fは、平板部9aの第1面9g側から第2面9h側へと窪ませた形状(凹部)になっている。エッジ除去部9fの断面形状は、
図6に示したものに限定されず、他の形状でもよい。
【0040】
図5に示すように、平板部9aの上下方向Lにおいて、エッジ除去部9fの上端9nは、平板部9aの閉塞面1a側の端面9mに達している。また、端面9mの端部全体にエッジ除去部9fを形成してもよい。エッジ除去部9fの下端9iは、陰極箔3よりも下方且つ第1、第2傾斜部9d、9eの上端よりも上方に配される。
【0041】
さらに、エッジ除去部9fの下端9iは、第1傾斜部9dの先端9jよりも上方に配される。すなわち、エッジ除去部9fの下端9iは、先端9jと陰極箔3の下端3aとの間(
図5の矢印Sで示す範囲)に配される。
【0042】
エッジ除去部9fの上端9nが平板部9aの閉塞面1a側の端面9mに達し、下端9iが電極箔よりも下方に配されるため、平板部9aの幅方向Wの両側端のエッジがセパレータ5に接触しない。このため、コンデンサ100に対して振動が繰り返し加えられても、平板部9aのエッジによるセパレータ5の損傷を防止し、陰極箔3と陽極箔4とのショートを防止することができる。
【0043】
特に、コンデンサ100の容量増大等の目的でセパレータ5の厚みが40μm以下の場合にショート防止に対して大きな効果を奏することができる。
【0044】
また、エッジ除去部9fの下端9iが第1、第2傾斜部9d、9eの上端よりも上方に配されるため、第1、第2傾斜部9d、9eの側方にはエッジ除去部9fが形成されない。このため、エッジ除去部9fの形成によるひずみが第1、第2傾斜部9d、9eの側方に発生しない。さらに、エッジ除去部9fの下端9iと第1、第2傾斜部9d、9eの上端との間にはエッジ除去部9fの形成による加工硬化を起こしている領域がない。このため、コンデンサ100に対して振動が繰り返し加えられた際に第1、第2傾斜部9d、9eと平板部9aとの境界に集中するストレスは平板部9aの両側の広い部分に分散して広がる。これにより、第1、第2傾斜部9d、9eと平板部9aとの境界の亀裂を防止し、引出端子6の損傷を防止することができる。
【0045】
振動による引出端子6の損傷はコンデンサ100の直径D(本体ケース1の直径、
図1参照)に対して高さH(本体ケース1の上端から引出端子6の下端までの長さ、
図1参照)が大きいと発生し易い。このため、高さHが直径D以上のコンデンサ100の場合に引出端子6の損傷に対して大きな効果を奏することができる。
【0046】
なお、上下方向Lにおいて、エッジ除去部の下端9iと第1傾斜部9dの先端9jとの距離(
図5で矢印Tで示す長さ)は、0.1mm以上が好ましく、また、第1傾斜部9dの先端9jと陰極箔3の下端3aとの距離(
図5の矢印Sで示す長さ)の半分以上の長さが好ましい。矢印Sで示す長さは0.2~1mmが好ましく、1mmよりも大きいと耐振性が弱くなり、0.2mm未満であると、傾斜部と箔が接触しやすくなるため、ショートになりやすくなる。
【0047】
なお、
図5は、平板部9aに陰極箔3が接続された場合を示しているが、平板部9aに陽極箔4が接続された場合も同様である。
【0048】
第1部材9はプレス工程、切断工程、エッジ除去工程により形成される。プレス工程は、上述したように、円柱状の部材(例えば円柱状アルミニウム材)の一端部をプレス成形して薄板状の平板部9aを形成する。このとき、平板状の部分は、元々の円柱状の部材により形成される柱状部9bよりも横幅寸法が大きくなる。
【0049】
同時に、第1部材9の柱状部9bと平板部9aとの間には、第1傾斜部9d及び第2傾斜部9eが形成される。
【0050】
次に、切断工程は平板部9aの幅方向Wの寸法を調整するため、平板状の部分の幅方向Wの両側を切断する。この切断は、切断用の刃を平板部9aの第1面9g側から第2面9h側へ厚さ方向に押圧して行われる。その結果、平板部9aの側面9cが形成される。側面9cは切断によって生じた切断面である。このとき、
図7に示すように、第2面9hにはバリ9kが形成される。前述したように、平板部9aの第2面9hは陰極箔3または陽極箔4にカシメにより固着されるため、バリ9kによるセパレータ5の損傷が防止される。
【0051】
次に、エッジ除去工程は平板部9aの第1面9g側の両側端部のエッジを除去してエッジ除去部9fを形成する。エッジ除去工程は平板部9aの第1面9gの両側端部をプレス加工することや、長手方向(L)に沿って切削すること等により行われる。
【0052】
尚、切断工程とエッジ除去工程とを同時に行ってもよい。例えば、
図8に示すように、平板部9aの側面を切断する一対の刃20の内側(平板部9aの中心側)に凸部20aが設けられる。このような刃20を用いて平板部9aを第1面9g側から第2面9h側に切断することにより、平板部9aの側面9cとエッジ除去部9fとが同時に形成される。
【0053】
また、プレス工程、切断工程及びエッジ除去工程を同時に行ってもよい。例えば、
図9示すように、プレス成形で使用される金型21の一部に凹部21aを設ける。凹部21aは、平板部9aの長手方向(L)に延びている。また、金型21の幅は、平板部9aの幅方向Wの両方の側面9cの間隔に対応するように設けられる。この金型21で円柱状の部材(例えば円柱状アルミニウム材)をプレスし、側面9cを形成するための刃20を金型21に沿って降下させて切断する。これにより、薄板状の平板部9aを形成するとともに、平板部9aの側面9cとエッジ除去部9fとが同時に形成される。
【0054】
本実施形態によると、平板部9aの第2面9hが電極箔(陽極箔3及び陰極箔4)に接続されるので、平板部9aの両側面の切断面により第2面9h側にバリが形成されても第1面9g側に配されるセパレータ5のバリによる損傷が防止される。また、第1面9g側ではエッジ除去部9fが設けられ、エッジ除去部9fの下端9iが電極箔よりも下方に配されるため、平板部9aの幅方向の両側端のエッジがセパレータ5に接触しない。このため、コンデンサ100に対して振動が繰り返し加えられても、平板部9aのエッジによるセパレータ5の損傷を防止し、陰極箔3と陽極箔4とのショートを防止することができる。
【0055】
また、エッジ除去部9fの下端9iが第1、第2傾斜部9d、9eよりも上方に配されるので、第1、第2傾斜部9d、9eの側方にはエッジ除去部9fが形成されない。このため、エッジ除去部9fの形成によるひずみが第1、第2傾斜部9d、9eの側方に発生しない。さらに、エッジ除去部9fの下端と第1、第2傾斜部9d、9eの上端との間にはエッジ除去部9fの形成による加工硬化を起こしている領域がない。このため、コンデンサ100に対して振動が繰り返し加えられた際に第1、第2傾斜部9d、9eと平板部9aとの境界に集中するストレスは平板部9aの両側の広い部分に分散して広がる。これにより、第1、第2傾斜部9d、9eと平板部9aとの境界の亀裂を防止し、引出端子6の損傷を防止することができる。
【0056】
また、平板部9aの一面に形成される第1傾斜部9dの先端が他面に形成される第2傾斜部よりも9e電極箔側に配され、エッジ除去部9fの下端が第1傾斜部9dの上端よりも上方に配される。これにより、第1、第2傾斜部9d、9eと平板部9aとの境界の亀裂を確実に防止することができる。
【0057】
また、エッジ除去部9fが平板部9aの第1面9g上から第2面9h側に窪む凹部により形成されるので、エッジ除去部9fを容易に形成できるとともに、平板部9aの側面とエッジ除去部9fとを同時に形成することができる。
【0058】
また、上下方向において、エッジ除去部9fの下端と第1、第2傾斜部9d、9eの平板部9a側の先端との距離が0.1mm以上であるので、第1、第2傾斜部9d、9eと平板部9aとの境界の亀裂を確実に防止することができる。
【0059】
尚、本実施形態では、平板部9aの第1面9g側にだけエッジ除去部9fを設けたが、このエッジ除去部9fは平板部9aの第2面9h側にも設けても良い。これにより、バリ9kが除去され、より安全性が高くなる。
【0060】
本発明は、各種電子機器に活用されるコンデンサに活用される。
【符号の説明】
【0061】
1 本体ケース
2 コンデンサ素子
3 陰極箔
4 陽極箔
5 セパレータ
6 引出端子
7 巻止テープ
8 封口体
8a 貫通孔
9 第1部材
9a 平板部
9b 柱状部
9c 側面(切断部)
9d 第1傾斜部
9e 第2傾斜部
9f エッジ除去部
10 第2部材
10a 接続端子部
100 コンデンサ