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特許7633661電動格納ユニットを備えた車両用視認装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】電動格納ユニットを備えた車両用視認装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/074 20060101AFI20250213BHJP
   B60R 1/06 20060101ALI20250213BHJP
   B60R 1/076 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
B60R1/074
B60R1/06 D
B60R1/076
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021091658
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022184040
(43)【公開日】2022-12-13
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000147660
【氏名又は名称】株式会社ペンストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴行
(72)【発明者】
【氏名】三牧 淳司
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-091075(JP,A)
【文献】国際公開第2020/022515(WO,A1)
【文献】特開2012-020609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/06- 1/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側方に設置されて、展開位置と折畳位置との間を回動するように構成された電動格納ユニットを備えた車両用視認装置であって、
前記電動格納ユニットは、内部にクラッチ機構を備えたケースと、車両側に固定されるシャフトとを備えており、
前記クラッチ機構は、所定荷重が作用した際には、前記ケースを持ち上げ、シャフト回りを回動するように構成しており、
前記ケースには、下方に延びる垂下壁を前記シャフトの周囲に全周に亘って設けて、
前記シャフトには、上方に延びる立壁を前記垂下壁の径内方側に重合するように設けると共に、該立壁に、径内方側のを外部に排水する排水口を設けた
ことを特徴とする電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【請求項2】
前記立壁に設ける排水口を、車両内方側位置に形成した
ことを特徴とする請求項1記載の電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【請求項3】
前記排水口の径内方側に、該排水口にを集中させる排水溝を形成している
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電動格納ユニットを備えた車両用視認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のサイドミラーのような電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動格納ユニットの可動部分の排水性能を高めた車両用視認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両のサイドミラーのように、車両の側方に設置された車両用視認装置においては、不使用時等に、電動格納ユニットを使って回動して、車両側方で折畳まれるように構成することが知られている。
【0003】
この電動格納ユニットは、ケース内部に設けた電動モータの回転力を、駆動機構を使って、車両側のシャフト回りを回動するように構成されている。
【0004】
ところで、この電動格納ユニットでは、車両用視認装置が外部からの衝撃を受けた場合などにおいて、電動モータや駆動機構等が破損しないように、車両側のシャフト回りを自由に回動するように、クラッチ機構を設けている。
【0005】
このクラッチ機構は、車両用視認装置にある所定荷重が作用すると、スプリング力に抗してケース等が持ち上がって、車両用視認装置がシャフト回りを回動するように構成されている。
【0006】
このため、クラッチ機構によってケース等が持ち上がると、電動格納ユニットのケースとシャフトとの間の可動部分に隙間が生じて、この隙間から可動部分に雨水等が侵入する恐れがあった。
【0007】
そこで、下記特許文献1の車両用視認装置では、電動格納ユニットのケース側に下方に延びる垂下壁30Cを設けて、シャフト側(スタンド側22)にもその垂下壁30Cと径方向内側で重合する立壁64を設けて、クラッチ機構の働きでケース等が持ち上がったとしても、隙間が生じないようにしたものが提案されている。
【0008】
このように構成する事で、電動格納ユニットのケースとシャフトとの間には、隙間が生じないため、可動部分に雨水等が侵入する恐れをなくすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-91075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、車両用視認装置は、車室外に設けられているため、ケース内部等に水や水分が長期間滞留していると、錆び等の劣化が生じることになる。そこで、車両用視認装置では、防水性能だけでなく、排水性能も高めることが求められる。
【0011】
前述の特許文献1の車両用視認装置の場合、確かに、垂下壁30Cと立壁64を設けることで、シャフトとケースとの間の隙間をなくし、外部からの雨水等に対して防水性能を高めることができている。しかし、この垂下壁30Cと立壁64は、共にシャフトの周囲を、全周に亘って設けられているため(特許文献1の図2参照)、仮に、この立壁64の
径内方側に水や水滴が侵入してしまうと、これらの水等が長期間に亘って内部に滞留し、外部に排水されず、錆び等の劣化が生じてしまういう問題が生じる。
【0012】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、クラッチ機構によってケース等が持ち上がった場合でも、ケースとシャフトの間の可動部分に隙間が生じないように構成しつつも、仮に、可動部分に水等が侵入した場合には、その水等を外部に排水して、錆び等の劣化が生じないようにできる車両用視認装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その目的を達成するために、この発明では、車両の側方に設置されて、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、電動格納ユニットのケースに下方に延びる垂下壁を設けて、車体側のシャフトに該垂下壁と径方向内側で重合する立壁を設けつつも、該立壁に径内方側のを外部に排水する排水口を設けたことを特徴とするものである。
【0014】
具体的に、第1の発明では、車両の側方に設置されて、展開位置と折畳位置との間を回動するように構成された電動格納ユニットを備えた車両用視認装置であって、前記電動格納ユニットは、内部にクラッチ機構を備えたケースと、車両側に固定されるシャフトとを備えており、前記クラッチ機構は、所定荷重が作用した際には、前記ケースを持ち上げ、シャフト回りを回動するように構成しており、前記ケースには、下方に延びる垂下壁を前記シャフトの周囲に全周に亘って設けて、前記シャフトには、上方に延びる立壁を前記垂下壁の径内方側に重合するように設けると共に、該立壁に、径内方側のを外部に排水する排水口を設けたことを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、ケースに下方に延びる垂下壁を設けて、シャフトに上方に延びる立壁を前記垂下壁の径内方側に重合するように設けることで、クラッチ機構によりケース等が持ち上がっても、ケースとシャフトとの間には隙間が生じない。また、シャフトの立壁に、径内方側のを外部に排水する排水口を設けたことで、仮に立壁の径内方側にが溜まっても、外部に排水されることになる。
【0016】
このため、クラッチ機構によりケース等が持ち上がった際の防水性能を確保しつつも、立壁の径内方側のも排水口により外部に排水されるため、排水性能も高めることができる。
【0017】
なお、立壁に設けられる排水口は、立壁の一部を切り欠いたものや、立壁の一部に開口した穴や、立壁を互い違い設けてラビリンス状にしたもの等、を外部に排水できる構造であればどのようなものであっても良い。
【0018】
また、排水口は、1つに限定されず、複数であっても良い。
【0019】
第2の発明では、前記立壁に設ける排水口を、車両内方側位置に形成したことを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、立壁に設ける排水口を、車両内方側位置に形成することで、洗車などの際に、車両外方側から高圧な水流が作用しても、排水口にその影響を受けないようにできる。
【0021】
このため、洗車等で車両外方側から車両用視認装置に水を掛けても、立壁の径内方側にが浸入することを防ぐことができる。
【0022】
よって、洗車等の利便性を損なくことなく、排水口による排水性能の向上を図ることができる。
【0023】
第3の発明では、前記排水口の径内方側には、該排水口にを集中させる排水溝を形成していることを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、排水口の径内方側に、を集中させる排水溝を形成したことで、立壁の径内方側のを、確実に排水口に集中させ、案内することができる。
【0025】
このため、立壁の径内方側のが確実に排水口に案内されることになり、排水口の排水性能を高めることができる。
【0026】
よって、排水口の排水性能がより高まることになり、防水性能を維持しつつ、より排水性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上、説明したように、本発明によれば、クラッチ機構によりケース等が持ち上がった際の防水性能を確保しつつも、立壁の径内方側のも排水口により外部に排水されるため、排水性能も高めることができる。
【0028】
よって、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において、クラッチ機構によってケース等が持ち上がった場合でも、ケースとシャフトの間の可動部分に隙間が生じないように構成しつつも、仮に、可動部分にが侵入した場合には、そのを外部に排水して、錆び等の劣化が生じないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態1に係る電動格納ユニットを備えた車両用視認装置の展開状態と折畳状態を説明する全体平面図である。
図2】実施形態1に係る車両用視認装置に内蔵された電動格納ユニットの平面図である。
図3】実施形態1に係る車両用視認装置に内蔵された電動格納ユニットの後面図である。
図4】実施形態1に係る車両用視認装置に内蔵された電動格納ユニットの分解斜視図である。
図5図2のX-X線矢視断面図である。
図6】カバーとホルダーを取り除いた状態の電動格納ユニットの平面図である。
図7】電動格納ユニットの駆動機構を説明する斜視図である。
図8】電動格納ユニットのシャフトの詳細斜視図である。
図9】シャフトの平面図である。
図10】プレートシャフトを除いたシャフトの平面図である。
図11図5のA部詳細図である。
図12】ケース等が持ち上がった時(異常時)の図5のA部詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0031】
(実施形態1)
まず、図1乃至図4を使って、本実施形態1の電動格納ユニットを備えた車両用視認装
置の構造について説明する。なお、各図に示す各矢印の方向によって各方角を示す。
【0032】
本実施形態の車両用視認装置1は、例えば、図1に示すような車両のサイドドア2に立設されるサイドミラー装置1であり、このサイドミラー装置1は、車両から車両側方(右側)に突出するように設けられている。このサイドミラー装置1は、鏡面3を設けたサイドミラー本体4と、ミラーベース5と、を備えており、ミラーベース5を、固定ボルト6によってサイドドア2に固設することで、サイドドア2に立設している。なお、図示しないが、車両の反対側のサイドドアにも、同様に車両から車両側方(左側)に突出するようにサイドミラー装置1を立設している。
【0033】
また、サイドミラー本体4は、このサイドミラー本体4の内部に内蔵した電動格納ユニットUを介してミラーベース5に設置されており、この電動格納ユニットUの作動によって、実線で示した展開状態と、一点鎖線で示した折畳状態の間を回動するように構成している。
【0034】
図2は、前述の電動格納ユニットUを上方から見た平面図で、図3は、その電動格納ユニットUを車両後方からから見た後面図で、図4は、その電動格納ユニットUを分解した斜視図ある。
【0035】
前述の電動格納ユニットUは、ミラーベース5に固定されるシャフト10と、そのシャフト10回りで回動するケース20と、そのケース20の上部でケース20の内部空間を覆うカバー30と、ケース20内部でその内部空間を上下に仕切るホルダー40と、を備えている。
【0036】
前述のシャフト10は、下部に、ミラーベース5にボルト締結される締結固定部11を設けており、中間部に、ケース20等を支持する支持受け部12を設けており、その上部に上方に伸びてケース20等の回転中心となるシャフト本体部13を設けている。
【0037】
前述のケース20は、異形の箱型形状で内部が空洞となった上方が開放したケース本体21と、そのケース本体21の下部前方と下部後方と下部側方にそれぞれ設けた3つの下部ケーシング固定部22…と、ケース本体21の車両側方の上部位置と下部位置に設けた2つの側部ケーシング固定部23,23と、ケース本体21の上部の周囲に設けた複数のカバー係止部24…とを、備えている。
【0038】
前述のカバー30は、前記ケース20の上方に位置する略蓋状のカバー本体31と、そのカバー本体21の車両内方側でシャフト10上端を支持する円形開口状のシャフト受け部32と、そのカバー本体30の車両側方側(右側)で電源ハーネス(図示せず)を接続する接続口33と、そのカバー本体30の周囲で前記ケース20のカバー係止部24…に係合する複数のケース係合部34…とを、備えている。
【0039】
前述のホルダー40は、ケース20の内部空間に設置されて、電動モータMを包囲して保持する略矩形形状のモータ保持部41と、ケース20の内部空間を上下に仕切る水平方向延びる平板状の仕切り部42とを、備えている。また、このホルダー40には、電動モータMの回転駆動状態を制御する回路基板Bを支持する基板支持部43が設けられている。また、前記仕切り部42にはシャフト10の上端を保持する円形開口状のシャフト保持部44を設けている。そして、このホルダー40は、その周縁で3本のスクリュー部材45…によって上方からケース20に対して固定されている。
【0040】
一方、前述のシャフト10には、支持受け部12の上方に、下から順に、プレートシャフト51、シャフトワッシャー52、そして、プレートケース53が組み付けられている
。このうち、前述のプレートシャフト51がシャフト10の支持受け部12に固定されて、前述のプレートケース53がケース20の底面に固定されて、これらプレートシャフト51とプレートケース53で、ケース20、すなわち電動格納ユニットUの回動範囲を規定するように構成されている。また、前述のシャフトワッシャー52によって、ケース20とシャフト10の間の摩擦抵抗を低減するようにしている。
【0041】
さらに、前述のシャフト10には、ケース20に組み込んだ後に、下から順に、ケースワッシャー61、サンギア62、アッパークラッチ63、スプリング64、スプリングストッパー65が組み付けられている。前述のケースワッシャー61は、サンギア62とケース20との間に位置して、サンギア62とケース20との間の摩擦抵抗を低減するようにしている。
【0042】
前述のサンギア62は、後述するドライブウォーム71と噛合して電動モータMからの回転駆動力を受けて、シャフト10回りにケース20が回動するように構成している。もっとも、このサンギア62は、シャフト10に固定されておらず、シャフト10に対して遊嵌状態とされている。
【0043】
前述のアッパークラッチ63は、サンギア62の内周に設けた複数のクラッチ突起62a…と嵌合する複数のクラッチ受け部63a…を下面部に設けており、内周面にシャフト10のシャフト本体部13に設けた複数の凹状溝部13a…に嵌合する複数の凸条部63b…を設けている。
【0044】
前述のスプリング64は、螺旋形状のコイルスプリング部材で構成されており、下方のアッパークラッチ63に対して下方へ付勢力を付与するようにしている。
【0045】
前述のスプリングストッパー65は、内周に設けた係合部65aを、シャフト10のシャフト本体13に形成した環状の係止凹部13bに嵌め込むことで、シャフト本体13に固定されており、シャフト本体13からスプリング64が抜け落ちるのを防止している。
【0046】
そして、このように、アッパークラッチ63とスプリング64とスプリングストッパー65が構成されることで、アッパークラッチ63には、サンギア62を下方に押し込む力が付与されて、サンギア62がアッパークラッチ63を介してシャフト10と一体的になるように固定されている。
【0047】
このようにして、電動格納ユニットUのクラッチ機構が構成されている。そして、このようにクラッチ機構が構成されているため、通常時には、サンギア62とシャフト10が一体となって、電動モータMからの回転駆動力をサンギア62が受けると、ケース20等がシャフト10回りに回動して、ドアミラー本体4が展開状態と折畳状態との間を回動するものの、サイドミラー本体4が衝撃等を受けた異常時には、サンギア62のクラッチ突起62aがアッパークラッチ63を押し上げて、クラッチが解除されるため、サンギア62とシャフト10が分離して、ケース20等がシャフト10回りを回動して、ドアミラー本体4が回動することになる。
【0048】
このように、サイドミラー本体4が衝撃等を受けた異常時には、サンギア62とシャフト10を分離させることができるため、電動モータMや後述する駆動機構Kの故障や破損を防止することができる。
【0049】
次に、図5乃至図7を使って、本実施形態1の電動格納ユニットUの駆動機構Kの構造について説明する。
【0050】
図5に示すように、ホルダー40のモータ保持部41に保持された電動モータMは、モータ軸Maが下方に延びるように配置されている。このモータ軸Maには、円筒状のウォーム72が嵌め込まれており、このウォーム72に対して、図7に示すように円板状のウォームホイール73が噛合している。そして、このウォームホイール73の同軸上に前述のドライブウォーム71が設けられており、このウォームホイール73と一体的に回転するように構成されている。そして、このドライブウォーム71が前述のサンギア62と噛合するように構成されている。
【0051】
すなわち、図6に示すように、駆動機構Kは、上下方向に延びる電動モータMのモータ軸Maの回転駆動力を、水平方向且つ斜め前方向きに配置したドライブウォーム71の軸を介して、サンギア62に伝達するように構成しているのである。
【0052】
そして、このドライブウォーム71の軸は、両端の軸部71a,71aが共にケース20に設けた軸受部25,25で軸支されており、両持ち支持でケース20に強固に支持されている。
【0053】
このように、電動格納ユニットUの駆動機構Kが構成されているため、電動モータMの回転方向に応じて、サンギア62回りにドライブウォーム71等が回動し、ケース20が回動する。そして、このようにケース20が回動することにより、ケース20に固定されたサイドミラー本体4が、展開状態の位置と折畳状態の位置との間を回動するのである。
【0054】
次に、図8乃至図10を使って、本実施形態1のシャフト10の構造について詳細に説明する。
【0055】
前述のように、シャフト10は、下部から、締結固定部11と、支持受け部12と、シャフト本体部13とから構成されているが、このうち、支持受け部12の上面にはケース20等を支持する円形の支持台面14が形成されている。
【0056】
そして、この支持台面14には、上方に延びる立壁15が、シャフト本体部13を中心として円環状に形成されている。前記立壁15の高さは、後述するように、サイドミラー本体4が衝撃等を受け、アッパークラッチ63が押し上げられて、ケース20等が持ち上げられる異常時に、シャフト10とケース20の間に隙間が生じない高さに形成されている。
【0057】
また、この立壁13の径内方側の支持台面14には、前述のプレートシャフト51が載置されている。このプレートシャフト51は、前述したように、電動格納ユニットの回動範囲を決めるべく、一対の隆起部51a,51a(図4参照)を、車両内方側位置を0°とすると、約135°と約315°の位置に形成している。そして、そのプレートシャフト51の位置がズレないように、プレートシャフト51の2つの差込片51b、51bが、支持台面14に形成した2つの係止凹部14a、14aに係合するように構成している。
【0058】
また、前述の立壁15の車両内方側位置には、立壁15を一部切り欠いた排水口16を設けている。この排水口16は、後述するように、立壁15の径内方側に侵入した水や水滴を外部に排出するために設けている。
【0059】
そして、この排水口16の径内方側の支持台面14には、一段凹んだ排水溝17を形成していている。この排水溝17を設けることで、立壁15の径内方側の支持台面14に落ち込んだ水や水滴を、排水溝17に集中させることができ、円滑に水等を排水口16に案内することができる。
【0060】
次に、図11図12を使って、このシャフト10の立壁15や排水口16や排水溝17等の作用について、説明する。
【0061】
まず、図11に示すように、シャフト10の立壁15の径外方側には、ケース20から下方に延びる垂下壁27を、立壁15と径外方側で重合するように設けている。この垂下壁27も、シャフト本体部13を中心とした円環状に形成されている。
【0062】
そして、この垂下壁27の長さLaは、ケース20の円筒座部28がシャフトワッシャー52を介してシャフト10の支持台面14に載置された通常時において、ケース20とシャフト10の間の可動部分が全て隠れる程度に長く形成されている。
【0063】
このため、通常においては、ケース20とシャフト10の間の可動部分、すなわち、シャフト10の支持台面14の上方空間Sに存在する、プレートシャフト51、シャフトワッシャー52、そして、プレートケース53等の部材が、外部に露出するのを防いでいる。
【0064】
一方、図12に示すように、サイドミラー本体4(図1参照)が衝撃等を受けた異常時には、前述のようにアッパークラッチ63(図4参照)等のクラッチ機構の働きにより、上方にケース20が押し上げられるが、シャフト10に立壁15が形成され、その立壁15の高さHaが、押し上げられる量hよりも高く形成されているため、ケース20とシャフト10の間の可動部分(上方空間S)が外部に露出するのを防いでいる。
【0065】
このため、このように、サイドミラー本体部4が衝撃等を受けた異常時にケース20が上方に持ち上げられても、ケース20とシャフト10の間の可動部分(上方空間S)には、外部から水等が侵入せず、防水性を高めることができる。
【0066】
もっとも、この立壁15等があることで、仮に、何らかの理由で、ケース20とシャフト10の間の可動部分(上方空間S)に水等が一旦浸入した場合には、この水等を外部に排水することができない。そこで、本実施形態1では、前述の排水口16と排水溝17とを設けている。
【0067】
具体的には、図11の矢印に示すように、シャフト10の支持台面14の上方空間Sに、水Wが浸入した場合には、排水溝17によって集められて、径外方側に案内される。そして、その水Wは排水口16によって、外部(径外方側)に排水される。
【0068】
このように、排水口16と排水溝17とを設けていることで、ケース20とシャフト10の間の可動部分(上方空間S)に侵入した水Wを外部に排水することができる。このように、可動部分(上方空間S)に侵入した水Wが外部に排水されることで、上方空間Sに存在するプレートシャフト51、シャフトワッシャー52、そして、プレートケース53等の部材に錆び等が生じることを防ぐことができる。
【0069】
以上のように、本実施形態では、車両の側方に設置されて、展開位置と折畳位置との間を回動するように構成された電動格納ユニットUを備えたサイドミラー装置1であって、その電動格納ユニットUは、内部にクラッチ機構を備えたケース20と、車両側に固定されるシャフト10とを備えており、そのクラッチ機構は、所定荷重が作用した際には、ケース20を持ち上げ、シャフト10回りを回動するように構成しており、そのケース20には、下方に延びる垂下壁27をシャフト10の周囲に全周に亘って設けて、そのシャフト10には、上方に延びる立壁15を垂下壁27の径内方側に重合するように設けると共に、その立壁15に、径内方側の水等を外部に排水する排水口16を設けている。
【0070】
これにより、クラッチ機構によりケース20等が持ち上がることになっても、ケース20とシャフト10との間に隙間が生じない。また、シャフト10の立壁15に、径内方側(上方空間S)の水等を外部に排水する排水口16を設けたことで、仮に、立壁15の径内方側の上方空間Sに水等が溜まっても、外部に排水されることになる。
【0071】
このため、クラッチ機構によりケース20等が持ち上がった際の防水性能を確保しつつも、立壁15の径内方側の上方空間Sの水等も排水口16により外部に排水されるため排水性能も高めることができる。
【0072】
よって、電動格納ユニットUを備えたサイドミラー装置1において、クラッチ機構によってケース20等が持ち上がった場合でも、ケース20とシャフト10の間の可動部分に隙間が生じないように構成しつつも、仮に、可動部分(上方空間S)に水等が侵入した場合には、外部に排水して、錆び等の劣化が生じないようにできる。
【0073】
また、本実施形態では、立壁15に設ける排水口16を、車両内方側位置に形成している。
【0074】
これにより、車両外方側から洗車などの際に高圧な水流が作用しても、排水口16にその影響を受けないようにできる。
【0075】
このため、洗車等で車両外方側からサイドミラー装置1に水を掛けても、立壁15の内側(上方空間S)に水が浸入することを防ぐことができる。
【0076】
よって、洗車等の利便性を損なくことなく、排水口16による排水性能の向上を図ることができる。
【0077】
また、本実施形態では、排水口16の径内方側に、その排水口16に水等を集中させる排水溝17を形成している。
【0078】
これにより、立壁15の径内方側(上方空間S)の水等を、確実に排水口16に集中させ、案内することができる。
【0079】
このため、立壁15の径内方側(上方空間S)の水等が確実に排水口16に案内されることになり、排水口16の排水性能を高めることができる。
【0080】
よって、排水口16の排水性能がより高まることになり、防水性能を維持しつつ、より排水性能を向上することができる。
【0081】
(その他の実施形態)
次に、その他の実施形態について説明する。
【0082】
まず、前述の実施形態では、排水口16を、立壁15の一部切り欠いたもので構成したが、排水口の構造は、この構造に限定されず、水を外部に排水できる構造であれば、立壁の一部を開口させた穴や、立壁を互い違いに配置したラビリンス状に形成したもの等々、どのようなものであっても良い。
【0083】
また、排水口は、1つに限定されず、複数であっても良い。
【0084】
さらに、車両用視認装置の視認構造についても、前述の実施形態のミラーに限定されず
、車両後方を確認できるものであれば、カメラ等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明は、電動格納ユニットを備えた車両用視認装置において有用である。
【符号の説明】
【0086】
1…サイドミラー装置(車両用視認装置)
U…電動格納ユニット
W…水
10…シャフト
15…立壁
16…排水口
17…排水溝
20…ケース
27…垂下壁
図1
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