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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】感光性ポリイミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/008 20060101AFI20250213BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20250213BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
G03F7/008
G03F7/004 503Z
H05K3/28 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021102474
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001636
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2024-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】397025417
【氏名又は名称】株式会社ピーアイ技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 鉄秋
(72)【発明者】
【氏名】寺岬 仁志
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/023276(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/246565(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/246349(WO,A1)
【文献】特開昭60-155277(JP,A)
【文献】米国特許第04656116(US,A)
【文献】国際公開第2010/047271(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102186904(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/008
G03F 7/004
G03F 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤可溶性ポリイミド及びジアジド化合物を必須成分として含有する感光性ポリイミド樹脂組成物であって、前記溶剤可溶性ポリイミドが、(a)脂環式酸二無水物残基と、(b)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン及びインダン構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンの残基を同一の繰り返し単位中に有するブロック共重合体であることを特徴とする感光性ポリイミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記溶剤可溶性ポリイミドが(b)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミンの残基を有し、該芳香族ジアミンの2つのアミノ基が互いにベンゼン環のパラ位に存在する、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記溶剤可溶性ポリイミドが(b)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミンの残基を有し、該芳香族ジアミンが連結基により連結された2つのベンゼン環を有し、芳香族ジアミンの2つのアミノ基が、該連結基に対しパラ位に存在する、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(a)脂環式酸二無水物残基が、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の残基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(b)少なくとも1種のジアミンの残基が、3,7-ジアミノ-2,8-ジメチルジベンゾチオフェンスルホンの残基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ジアジド化合物が、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノンである、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記ジアジド化合物の含有量が、前記溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し5.0~100重量部である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記感光性ポリイミド樹脂組成物の熱膨張係数が20ppm/℃以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記感光性ポリイミド樹脂組成物が、更にエポキシ樹脂及び光塩基発生剤を含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記感光性ポリイミド樹脂組成物が、ネガ型溶剤現像組成物である、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物で被覆した基板を紫外線照射により露光し、未露光部を現像除去することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて形成された層間絶縁膜、パッシベーション膜又は表面保護膜を有する半導体パッケージ、磁気素子、表示素子又は有機多層配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ポリイミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージ基板においては、FC-CSPやFC-BGAから、低背化、電気特性(R,L,C)の向上、反りの低減化が可能なFan-out Wafer Level Package(FO-WLP)への移行が盛んに検討されており、FO-WLPの一部は量産化されている。さらには、パネルサイズの材料を用いるFan-out Panel Level Package(FO-PLP)も盛んに検討されている。これらFO-WLPやFO-PLPに使用される有機材料でキー材料となるのが封止材料と各種の保護膜材料であり、この保護膜材料として感光性ポリイミドが使用されている。
【0003】
感光性ポリイミドの感光性付与方式はポジ型とネガ型に大別される。ネガ型の感光性付与方式は、露光部分が光架橋反応を起こし現像処理後に残存するため、耐薬品性や耐熱性が向上し易く、信頼性に優れた材料を提供することができる。ネガ型感光性ポリイミドは、ポリアミック酸等の前駆体に感光性基を導入し、光反応後に加熱イミド化を行う方法と、閉環されたポリイミド自体に感光性を持たせる方法に大別される。
【0004】
当該分野で実用化されている代表的な方法は、ポリアミック酸等の前駆体を用いる方法であり、ポリアミック酸のヒドロキシアクリレートとエステル結合されたもの(特許文献1)や、ポリアミック酸にアミノアクリレート等を配合して感光性基を塩結合で導入するもの(特許文献2)である。
【0005】
また、熱膨張係数の低減化を目指したネガ型感光性組成物として、主鎖にベンゾオキサゾール骨格を有するポリイミド前駆体を含有する組成物が報告されている(特許文献3及び4)。
【0006】
また、残留応力の低減化を目指した感光性組成物として、感光性基を有するポリイミド前駆体と光開始剤と溶媒からなる樹脂組成物が報告されており、ポリイミド前駆体としては、種々の芳香族テトラカルボン酸二無水物及びジアミン類から合成されたものが使用されている(特許文献5)。
【0007】
さらに、金属基板、ポリイミド系樹脂層及び導電性金属配線層を有するパワーモジュール用金属配線付基板であって、絶縁性と熱伝導性の双方が確保され、パワーモジュールの放熱性と信頼性が向上した基板が報告されている(特許文献6)。ここで、ポリイミド系樹脂としては、耐熱性や低い線熱膨張係数を達成する観点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて合成された熱可塑性及び非熱可塑性ポリイミド系樹脂が好ましく使用できることが記載されている。
【0008】
一方、閉環されたポリイミド自体に感光性を持たせる方法としては、ベンゾフェノン構造を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重縮合反応によって得られるポリイミド共重合体を用いる方法(特許文献7)、二段階重縮合により合成した溶剤可溶性のポリイミドブロック共重合体の側鎖にアクリロイル基を付加させる方法(特許文献8)が報告されている。
【0009】
また、芳香族又は脂環式のテトラカルボン酸二無水物残基と芳香族ジアミン残基を有する溶剤可溶ポリイミドと光ラジカル発生剤を含むネガ型感光性ポリイミド組成物は、画像解像能が高く、接着性、耐熱性、機械的特性及びフレキシブル性に優れることが開示されている(特許文献9)。
【0010】
さらに、ベンゾフェノン構造を有する芳香族テトラカルボン酸二無水物残基と、アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミンやインダン構造を有する芳香族ジアミンの残基を主鎖中に有する溶剤可溶性ポリイミドと特定量のジアジド化合物を含む感光性ポリイミド樹脂組成物は、現像時の溶剤可溶性と光架橋後の溶剤不溶性の両方を備え、良好な膜物性と高い感度を達成できることが報告されている(特許文献10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特公昭55-41422号公報
【文献】特開昭54-145794号公報
【文献】特開2005-321648号公報
【文献】特開2005-321650号公報
【文献】特開2001-110898号公報
【文献】特開2015-97258号公報
【文献】特開平5-39281号公報
【文献】特開2000-147768号公報
【文献】国際公開公報第2002/023276号公報
【文献】国際公開公報第2020/246565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
半導体パッケージ基板等への要求は年々厳しさを増しており、FO-WLPやFO-PLPにおいても例外ではなく、パターンの細線化、接続ビアの小径化、多層化等が要求されている。これらの要求に対応するため、感光性ポリイミドについても、感度の向上や薄膜の信頼性に加え、FO-WLPやFO-PLPの最大の課題であるコストの低減に深く関与する、大パネルサイズでの反りの減少や寸法安定性の向上が求められている。そしてその要素の一つが低熱膨張率化である。
【0013】
従来の感光性ポリイミド樹脂は、金属や無機材料と比べると、熱膨張係数が大きい。樹脂の熱膨張係数が大きい場合、金属や無機材料の基材に塗布して樹脂被膜を形成すると、熱膨張係数差に起因する熱応力によって、形成された樹脂被膜にクラックが発生したり、樹脂被膜が基材から剥離したり、基材に反りが発生したり、基材が破壊されたりする等が起こる可能性がある。さらに、基材に大きな反りを生じた状態で、パターニングのためのリソグラフィーを行うと、パターニングの解像度が悪くなる可能性がある。特に、大パネルサイズの基材を使用した場合や、基材上に厚く樹脂を塗布する場合に、この問題は顕著になる。そのため、熱膨張係数の小さい感光性ポリイミド樹脂の開発が望まれている。特にシリコンウエハーを基材として用いる場合は、その熱膨張係数が3ppm/℃と非常に小さく、ポリイミド樹脂との熱膨張差からウエハーの反りが生じる場合があり、製造工程での不良、搬送不良、割れの要因、あるいはデバイス特性(電気特性、解像度)への影響等を考えると好ましくない。
【0014】
これらの要求に応えるために、上記特許文献3~6のようなポリアミック酸タイプの感光性ポリイミド樹脂組成物が検討されているが、まだ十分な性能が達成されていない。また、ポリアミック酸タイプの感光性組成物を用いる方法は、基板に塗布及び乾燥した後、又は露光及び現像を行った後に、イミド化のための高温処理(例えば、350~450℃)を行う工程を必須としており、その際に脱水収縮や感光性基の脱離又は揮散が起こり、大きな膜ベリが発生する。これは、半導体パッケージや電子素子の製造プロセスにおいて、基板の反りや寸法安定性に大きな影響を与え、保存安定性も低下する要因となっていた。
【0015】
また、閉環したポリイミドを用いる上記特許文献7~10の感光性組成物でも、低熱膨張率化という点ではまだ不十分であった。
【0016】
このように半導体パッケージ基板等の保護膜材料としては、イミド化のための高温処理や、ポリイミド樹脂と基板の熱膨張係数差に起因する樹脂被膜の膜ベリやクラック、基板の反りや破壊が生じることのない感光性ポリイミド樹脂組成物が求められていた。
【0017】
本発明は、現像時の現像液可溶性と光架橋後の現像液不溶性を備え、良好な膜物性と高い感度を達成し得るとともに、樹脂被膜の膜ベリやクラック、基板の反りや破壊が生じることがない感光性ポリイミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、閉環された溶剤可溶性ポリイミドとして、(a)脂環式酸二無水物残基と、(b)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン又はインダン構造を有する芳香族ジアミンの残基を同一の繰り返し単位中に有するブロック共重合体を用い、この溶剤可溶性ポリイミドとジアジド化合物を含有する樹脂組成物を用いることにより、熱膨張係数が著しく低下する樹脂組成物が得られることを見出した。そしてこのような樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決することができ、現像時の現像液可溶性と光架橋後の現像液不溶性を備え、良好な膜物性と高い感度を達成し得るとともに、樹脂被膜の膜ベリやクラック、基板の反りや破壊が生じることがない感光性ポリイミド樹脂組成物を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、本発明は、溶剤可溶性ポリイミド及びジアジド化合物を必須成分として含有する感光性ポリイミド樹脂組成物であって、前記溶剤可溶性ポリイミドが、(a)脂環式酸二無水物残基と、(b)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン及びインダン構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンの残基を同一の繰り返し単位中に有するブロック共重合体であることを特徴とする感光性ポリイミド樹脂組成物、を提供する。
また、本発明は、前記本発明の樹脂組成物で被覆した基板を紫外線照射により露光し、未露光部を現像除去することを特徴とするパターン形成方法、を提供する。
さらに、本発明は、前記本発明の樹脂組成物を用いて形成された層間絶縁膜、パッシベーション膜又は表面保護膜を有する半導体パッケージ、磁気素子、表示素子又は有機多層配線基板を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、高温でのイミド化が必要なポリアミック酸を用いなくても、現像時の現像液可溶性と光架橋後の現像液不溶性を備え、良好な膜物性と高い感度を達成し得るとともに、樹脂被膜の膜ベリやクラック、基板の反りや破壊が生じることがなく、熱膨張係数の低い感光性ポリイミド樹脂組成物を提供することができる。
また、ポリイミド樹脂組成物を用いて形成される膜の厚みが大きい場合、例えば、10μm以上の場合には、本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物にさらに光塩基発生剤とエポキシ樹脂を含有させ、光塩基発生剤によりエポキシ樹脂を光架橋させることにより、十分な架橋構造を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、(A)溶剤可溶性ポリイミド及び(B)ジアジド化合物を必須成分として含有する樹脂組成物である。
【0022】
(A)溶剤可溶性ポリイミド
本発明における(A)溶剤可溶性ポリイミドは、(a)脂環式酸二無水物残基と、(b)特定の構造を有するジアミン残基を同一の繰り返し単位中に有するブロック共重合体である。(b)特定の構造を有するジアミン残基は、(b-1)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン、及び(b-2)インダン構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンの残基である。
【0023】
具体的には、本発明の(A)溶剤可溶性ポリイミドは、下記一般式[I]及び[II]で表される繰返し単位のうちの少なくとも1つを有するブロック共重合体である。
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、Zは脂環式酸二無水物残基であり、Arはアミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン残基である)
【0026】
【化2】
【0027】
(式中、Zは脂環式酸二無水物残基であり、Arはインダン構造を有する芳香族ジアミン残基である)
【0028】
(a)脂環式酸二無水物残基
(a)脂環式酸二無水物残基を提供する脂環式酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸 二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4 ,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチニリ デン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プ ロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1, 1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロ ヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2- ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ〔2,2,2〕オクト-7-エン-2,3,5,6-テト ラカルボン酸二無水物、1-カルボキシメチル-2,3,5-シクロペンタントリカルボ ン酸-2,6:3,5-二無水物、3-カルボキシメチル-1,2,4-シクロペンタント リカルボン酸1,4:2,3-二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いることもできる。中でも、低熱膨張率化を達成するためには、炭素数4~7のシクロアルカンのテトラカルボン酸二無水物が好ましく、更には1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物又は1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0029】
脂環式酸二無水物である、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)系のポリイミドは、300nmから800nmの可視光領域に殆ど吸収がなく、g-線(436nm)、i-線(365nm)といった露光波長をほとんど透過する。このCBDA系ポリイミドのような感光性ポリイミドをベースポリマーとして用いれば、露光波長を有効に利用することが可能であり、高感度及び高解像度の感光性ポリイミドを得ることができる。
【0030】
本発明において、可視光領域での透過性を増大させ、高感度及び高解像度とともに低い熱膨張率を溶剤可溶性と両立して達成するためには、(a)脂環式酸二無水物残基(Z及びZ)は、(A)溶剤可溶性ポリイミドを構成する全ての酸二無水物残基の5mol%以上、10mol%以上、15mol%以上、更には20mol%以上、また、65mol%以下、60mol%以下、更には55mol%以下含有させることが好ましい。
【0031】
また、低熱膨張率化と溶剤可溶性を両立させるために、他の芳香族酸二無水物を併用することができる。他の芳香族酸二無水物としては、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-[プロパン-2,2-ジイルビス(1,4-フェニレンオキシ)]ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、及びピロメリット酸二無水物等が挙げられる。
【0032】
さらに、可視光領域での透過性を更に増大させつつ、ポリイミドの溶剤可溶性を維持するために、フッ素系酸二無水物を併用することができる。フッ素系酸二無水物としては、フッ素原子(またはフッ素原子を含有する置換基)を有する芳香族酸二無水物があり、その代表例として、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、及び2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0033】
(b)特定の構造を有するジアミン残基
(b-1)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミンの残基
アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン残基(一般式[I]中のAr)としては、アミノ基のオルト位に炭素数1~12、好ましくは炭素数1~5、更に好ましくは炭素数1~3の直鎖又は分岐のアルキル基を有する芳香族ジアミンの残基が挙げられ、具体的には下記式(1)~(3)で表される構造の芳香族ジアミンや、ジベンゾチオフェンスルホン構造等を有する複素環式ジアミンの残基が挙げられる。
【0034】
【化3】
【0035】
上記式(1)において、遊離結合(アミノ基が結合する2つの結合位置)は互いに相対的にメタ位またはパラ位に存在するが、中でも低熱膨張係数化を図るため、主鎖骨格の直線性が高いポリイミドを得るという観点から、パラ位に存在することが好ましい。RとRは遊離結合の2つのオルト位に結合している。
上記式(2)において、遊離結合(アミノ基が結合する2つの結合位置)は、好ましくはR11(連結基)に対してメタ位またはパラ位に存在するが、中でも低熱膨張係数化を図るため、主鎖骨格の直線性が高いポリイミドを得るという観点から、パラ位に存在することが好ましい。RとRは遊離結合の2つのオルト位に結合している。R11は単結合,-アルキル基(アルキル基の炭素数nは1~6)-,-フルオレン基―,-O-,-S-,-SS-,-SO-,-SO-,-CO-,-COO-,-NH-,-CONH-,-CON-アルキル基-(アルキル基の炭素数nは1~6),及び-CON-ベンジル基-から選ばれる基を表す。
上記式(3)において、遊離結合(アミノ基が結合する2つの結合位置)は2-,3-,6-または7-位に存在し、RとRは遊離結合の2つのオルト位に結合している。
上記式(1)~(3)において、R~R10は炭素数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、アルコキシ基(Cはn=1~12)又はアルコキシアルキル基(Cはn=2~12)、好ましくは炭素数1~5のアルキル基、更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
【0036】
ジベンゾチオフェンスルホン構造を有するジアミンとしては、例えば、アミノ基のオルト位に炭素数1~5、好ましくは炭素数1~3のアルキル基を有するジアミンが好ましく、中でも下記式(4)の構造のジアミンが好ましい。
【0037】
【化4】
【0038】
本発明において、(b-1)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン残基(Ar)は、架橋密度の向上と低い熱膨張率を達成するためには、(A)溶剤可溶性ポリイミドを構成する全てのジアミンの20mol%以上、25mol%以上、30mol%以上、35mol%以上、更には40mol%以上、また、90mol%以下、85mol%以下、更には80mol%以下含有させることが好ましい。含有させることが好ましい。(b-1)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン残基(Ar)が全てのジアミンの20mol%未満では架橋密度が低下する場合がある。
【0039】
(b-2)インダン構造を有する芳香族ジアミンの残基
本発明において、インダン構造を有する芳香族ジアミン残基(一般式[II]中のAr)とは、下記式(5)又は(6)で表される構造を有するアミンの残基が挙げられる。
【0040】
【化5】
【0041】
上記式(5)において、RとRは炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基又は炭素数2~12のアルコキシアルキル基を表し、RとRは遊離結合(アミノ基の結合位置)の2つのオルト位に結合していることが好ましい。
【0042】
【化6】
【0043】
上記式(6)において、R,R及びRは独立して水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、中でも炭素数1~3のアルキル基が好ましい。Rの各々及びRの各々は独立して水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、中でも水素原子またはメチル基が好ましい。式(6)のジアミンの具体例としては、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダンが挙げられる。
(b-2)インダン構造を有する芳香族ジアミンの残基としては、上記式(6)で表されるフェニルインダン構造を有する芳香族ジアミンの残基であるのが好ましい。
【0044】
本発明において、(b-2)インダン構造を有する芳香族ジアミン残基(Ar)は、架橋密度の向上と低い熱膨張率を達成するためには、(A)溶剤可溶性ポリイミドを構成する全てのジアミンの10mol%以上、15mol%以上、20mol%以上、25mol%以上、更には30mol%以上、また、95mol%以下、90mol%以下、更には85mol%以下含有させることが好ましい。含有させることが好ましい。10mol%未満では架橋密度が低下する傾向がある。
【0045】
上述した(b-1)アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン、及び(b-2)インダン構造を有する芳香族ジアミンを含む全ジアミンは、低熱膨張率化を図るためには、芳香環に置換している2つのアミノ基は互いに相対的にパラ位に置換していることが望ましい。2つのアミノ基が互いに相対的にパラ位に置換している芳香族ジアミンは、全芳香族ジアミンの30mol%以上、40mol%以上、更には50mol%以上、また、90mol%以下、80mol%以下、更には70mol%以下含有させることが好ましい。
【0046】
可視光領域での透過性を増大させ、低熱膨張率化と溶剤可溶化を両立させるためには、その他のジアミンを併用することができる。そのような芳香族ジアミンとしては、フッ素原子又はフッ素原子を含む置換基を有する芳香族ジアミンが挙げられる。その代表例としては、例えば、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0047】
(A)溶剤可溶性ポリイミドは、上記一般式[I]及び[II]以外の、芳香族テトラカルボン酸二無水物残基とジアミン残基からなる繰返し単位を有していてもよい。
【0048】
(A)溶剤可溶性ポリイミドの合成方法
溶剤可溶性ポリイミドの合成方法は公知の方法を用いればよく、特に制限されないが、上述した(a)脂環式酸二無水物と(b)ジアミンをほぼ等量用いて、有機極性溶媒中、触媒及び脱水剤の存在下、160~200℃で数時間反応させることにより、溶剤可溶性のポリイミドを合成できる。有機極性溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、N,N’-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、テトラヒドロチオフェン-1,1-オキシド等が用いられる。
【0049】
本発明における(A)溶剤可溶性ポリイミドは、ブロック共重合体であり、必要に応じてブロック共重合反応を行うことにより合成することができる。例えば、二段階の逐次添加反応によって製造することができ、第一段階で上述した(a)脂環式酸二無水物と(b)ジアミンからポリイミドオリゴマーを合成し、次いで第二段階で、更にテトラカルボン酸ジ無水物及び/又は芳香族ジアミンを添加して、重縮合させてブロック共重合ポリイミドとすることができる。
【0050】
ブロック共重合反応の触媒としては、ラクトンの平衡反応を利用した二成分系の酸-塩基触媒を用いることにより、脱水イミド化反応を促進することができる。具体的には、γ-バレロラクトンとピリジン又はN-メチルモルホリンの二成分系触媒を用いる。下記式に示すように、イミド化が進むにつれて水が生成し、生成した水がラクトンの平衡に関与して、酸-塩基触媒となり触媒作用を示す。
【0051】
【化7】
【0052】
イミド化反応によって生成する水は、極性溶媒中に共存するトルエン又はキシレン等の脱水剤と共沸によって系外に除かれる。反応が完結すると溶液中の水が除去され、酸-塩基触媒はγ-バレロラクトンとピリジン又はN-メチルモルホリンとなり系外に除去される。このようにして高純度のポリイミド溶液を得ることができる。
【0053】
他の二成分系触媒としては、シュウ酸又はマロン酸とピリジン又はN-メチルモルホリンを用いることができる。160~200℃の反応溶液中で、シュウ酸塩又はマロン酸塩は酸触媒としてイミド化反応を促進する。生成したポリイミド溶媒中には触媒量のシュウ酸又はマロン酸が残留する。このポリイミド溶液を基材に塗布した後に200℃以上に加熱し、脱溶媒を行って製膜をする時に、ポリイミド中に残存するシュウ酸又はマロン酸は、下記式に示すように熱分解し、ガスとして系外に除かれる。
【0054】
【化8】
【0055】
以上の方法により、高純度の(A)溶剤可溶性ポリイミドを得ることができる。シュウ酸-ピリジン系触媒は、バレロラクトン-ピリジン系触媒に比べて活性が強く、短時間で高分子量のポリイミドを生成することができる。
【0056】
本発明における「溶剤可溶性」なる用語は、ポリイミドの合成において使用する有機極性溶媒と、後述する膜に使用する溶剤に対して使用する用語であり、100gの溶剤中に5g以上溶解するポリイミドであることを意味する。ここで、溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素等の極性溶媒が挙げられる。
【0057】
上記のように合成された(A)溶剤可溶性ポリイミドは、上記有機極性溶媒又は後述する膜に使用する溶剤に、例えば、固形分が10~30重量%となるよう溶解させた溶液の状態で用いることができる。(A)溶剤可溶性ポリイミドの分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量として1万~40万が好ましい。この範囲であると良好な溶剤可溶性と膜物性及び絶縁性を達成できる。(A)溶剤可溶性ポリイミドの適正な粘度は、固形分が20~40重量%の場合で、好ましくは2~10Pa・s/25℃である。また、溶剤可溶性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)(TMA測定法による)は200℃以上が好ましく、250℃以上が更に好ましい。
【0058】
溶液中の(A)溶剤可溶性ポリイミドの濃度は5~50重量%が好ましく、さらに好ましくは10~40重量%である。なお、上記のラクトンと塩基から成る触媒系を用いた直接イミド化反応により得られるポリイミドは、極性溶媒中に溶解した溶液の形態で得ることができ、しかも、ポリイミドの濃度も上記の好ましい範囲内とすることができるので、製造されたポリイミド溶液をそのままの状態で好ましく用いることができる。
【0059】
製造されたポリイミド溶液は、所望により、希釈剤を用いてさらに希釈することができる。希釈剤としては、溶解性を著しく損なわないような溶剤、例えば、ジオキサン、ジオキソラン、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、アニソール、安息香酸メチル、酢酸エチル等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0060】
(B)ジアジド化合物
本発明においては、感光性ポリイミド樹脂組成物にもう1つの必須成分として(B)ジアジド化合物を添加する。(B)ジアジド化合物は、(A)溶剤可溶性ポリイミドをポリマー間架橋させるための光架橋剤であり、(B)ジアジド化合物を本発明の特定の構造を有する(A)溶剤可溶性ポリイミドと組み合わせて使用することにより、露光・現像性が顕著に向上するという効果がある。
【0061】
(B)ジアジド化合物としては、4,4’-ジアジドベンザルアセトフェノン、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノン、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-t-アミルシクロヘキサノン、4,4’-ジアジドジフェニルスルホン、4,4’-ジアジドジフェニルエーテル、4,4’-ジアジドフェニルスルフィド、4,4’-ジアジドジフェニルメタン等が挙げられる。これらの中でもジアジドベンザルシクロヘキサノン構造を有するものが好ましく、架橋性及び保存安定性の観点から、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノンが特に優れる。
【0062】
(B)ジアジド化合物は、感光性ポリイミド樹脂組成物中に、(A)溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し2.0~150重量部、更には5.0~100重量部、特には10.0~80重量部含有させることが好ましい。2.0重量部未満では架橋密度が低下する傾向があり、150重量部を超えると膜物性が低下する傾向がある。架橋性を補完するために、ジアジリン化合物やマレイミド又はビスマレイミド化合物を併用しても良い。
【0063】
上記(A)溶剤可溶性ポリイミドと上記(B)ジアジド化合物を含む本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、露光することにより露光部分の(A)溶剤可溶性ポリイミドが光架橋反応を起こし、現像処理を行っても露光部分が残存するため、ネガ型の感光性ポリイミド樹脂組成物として用いることができる。
【0064】
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は低波長側では光透過性に劣るため、特に厚膜仕様の場合、パターン形状がネガ型溶剤現像で見られる逆テーパーになり易い。これを改善するために、異なる感光架橋長方式の感光性モノマー又はポリマーを併用することも効果があることを見出した。その中でも、本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物の成分として特に効果があるのは、感光性ポリイミド樹脂組成物との相溶性に優れる(C)エポキシ樹脂と(D)光塩基発生剤の組み合わせであることを見出した。
【0065】
(C)エポキシ樹脂
(C)エポキシ樹脂としては、特に限定されることはなく、光塩基発生剤との反応性や感光性ポリイミド樹脂組成物との相溶性により選択することができ、エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラツク型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、結晶性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を用いることができ、それらの高分子エポキシ樹脂を用いることもできる。感光性ポリイミド樹脂組成物中の(C)エポキシ樹脂の含有量は、(A)溶剤可溶性ポリイミド100重量部に対し2~50重量部が好ましく、2~20部が最も好ましい。
【0066】
(D)光塩基発生剤
(D)光塩基発生剤は、紫外線の照射によってアニオン(塩基)を発生する成分であり、非イオン型とイオン型に大別される。非イオン型としては、光吸収して第1級アミンや第2級アミン、イミダゾール等を発生するものがあり、イオン型にはアミジン、グアニジン、ホスファゼン等の有機強塩基を発生するものがある。
(D)光塩基発生剤は、(C)エポキシ樹脂との反応において第1級アミンや第2級アミンを発生するものは連鎖的な反応が起こりにくいため、非イオン型ではイミダゾール、イオン型ではアミジン、グアニジン等を発生するものが好適である。
【0067】
本発明における(D)光塩基発生剤としては市販品を使用することができる。例えば、WPBG-018、WPBG-140、WPBG-266、WPBG-300、WPBG-345、WPBG-027、WPBG-165(以上、富士フィルム和光純薬社製)等が挙げられる。
感光性ポリイミド樹脂組成物中の(D)光塩基発生剤の含有量は、(C)エポキシ樹脂に対し0.1~3重量%が好ましい。
【0068】
(光増感剤)
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物には、それぞれの最終用途に適合させるために光増感剤を含有させてパターン解像の感度を高めることができる。光増感剤としては、特に長波長(>350nm)側に作用するものが好ましい。光増感剤としては、例えば、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等が挙げられる。光増感剤の含有量は感光性ポリイミド樹脂組成物に対し0.05~2重量%程度が好ましい。
【0069】
アントラセン系増感剤の具体例としては、例えば、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジイソプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジペンチルオキシアントラセン、9,10-ジヘキシルオキシアントラセン、9,10-ビス(2-メトキシエトキシ)アントラセン、9,10-ビス(2-エトキシエトキシ)アントラセン、9,10-ビス(2-ブトキシエトキシ)アントラセン、9,10-ビス(3-ブトキシプロポキシ)アントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10ジメトキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジプロポキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジイソプロポキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジブトキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジペンチルオキシアントラセン、2-メチル-または2-エチル-9,10-ジヘキシルオキシアントラセン、等が挙げられる。
アントラセン系増感剤としては市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、「アントラキュアー UVS-1331」、「アントラキュアー UVS-1101」「アントラキュアー UVS-1221」(以上、川崎化成工業社製)等が挙げられる。
【0070】
また、チオキサントン系増感剤としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、クロロプロポキシチオキサントン等が挙げられる。チオキサントン系増感剤としては市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、「KAYACURE DETX-S」(日本化薬社製)、「Speedcure ITX」、「Speedcure DETX」、「Speedcure CPTX」(以上、LAMBSON社製)等が挙げられる。
【0071】
(その他の添加剤)
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物には、通常の感光性ポリイミド樹脂組成物中に添加される改質剤、例えば、カップリング剤、可塑剤、膜形成樹脂、界面活性剤、安定剤、スペクトル感度調節剤等を添加してもよい。とりわけ、基板に対するポリイミドの密着性がよくない場合には、カップリング剤、特に例えばビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸、7-オクテニルトリメトキシシラン、8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-(1-フェニルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロピルアミン、 N-(1-フェニルエチリデン)-3-(トリメトキシシリル)-1-プロピルアミン等のシランカップリング剤を添加することにより基板への密着性を良好にすることができる。この場合、シランカップリング剤の添加量は、感光性ポリイミド樹脂組成物の0.1~5重量%が好ましい。シランカップリング剤を添加しても密着性が良くない場合には、これらのカップリング剤を用いて基板の表面処理を行うことが効果的である。
【0072】
また、銅又は銅合金からなる基板を用いる場合には、基板変色を抑制するために、感光性ポリイミド樹脂組成物にアゾール化合物を配合することができる。アゾール化合物としては、例えば、1H-ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアール、4-メチル-1H-ベンゾトリアール、5-カルボキシ-1H-ベンゾトリアール及び4-カルボキシ-1H-ベンゾトリアール等が挙げられる。この場合、アゾール化合物の添加量は、感光性ポリイミド樹脂組成物の0.1~1重量%が好ましい。
【0073】
更に、銅上の変色を抑制するために、感光性ポリイミド樹脂組成物にヒンダードフェノール化合物を配合することができる。
ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5-エチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン及び、1,3,5-トリス(4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられる。
この場合、ヒンダードフェノール化合物の添加量は、感光性ポリイミド樹脂組成物の0.1~2重量%が好ましい。また、その他の併用可能な樹脂としては、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。
【0074】
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、基材上への適用に適した溶液の形態とすることができる。この場合、溶剤としては、イミド化反応の溶媒として用いられる、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、テトラメチル尿素等の極性溶媒を用いることができる。
【0075】
[感光性ポリイミドパターンの製造方法]
上述した成分を含有する感光性ポリイミド樹脂組成物を用いて、基板上に感光性ポリイミドパターンを製造することができる。具体的には、(1)上述した本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物を基板上に塗布することによって樹脂層を該基板上に形成する工程と、(2)該樹脂層を露光する工程と、(3)該露光後の樹脂層を現像して、電子部品の絶縁材料、並びに半導体パッケージにおけるパッシベーション膜、バッファーコート膜及び層間絶縁膜等の感光性ポリイミドパターンを形成する工程と、(4)該感光性ポリイミドパターンを加熱処理することによって永久絶縁膜として完成させる工程とを含む方法により、感光性ポリイミドパターンを製造することができる。
【0076】
以下、各工程の典型的な態様について説明する。
(1)感光性樹脂組成物を基板上に塗布することによって樹脂層を該基板上に形成する工程:
本工程では、本発明の感光性樹脂組成物をシリコンウェハー、金属基板、セラミック基板、有機基板等の基材上に塗布し、必要に応じてその後乾燥させて樹脂層を形成する。塗布方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
【0077】
必要に応じて、感光性樹脂組成物から成る塗膜を乾燥させることができる。乾燥方法としては、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。具体的には、風乾又は加熱乾燥を行う場合、20~140℃で1~30分間の条件で乾燥を行うことができる。本発明の感光性樹脂組成物の諸特性を阻害するものでない限り、この範囲に限定されない。
【0078】
(2)樹脂層を露光する工程:
本工程では、上記工程(1)で形成した樹脂層を、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等の露光装置を用いて、パターンを有するフォトマスク若しくはレチクルを介して又は直接に、紫外線光源等により露光する。この後、光感度の向上等の目的で、必要に応じて、任意の温度及び時間の組合せによる露光後ベーク及び/又は現像前ベークを施してもよい。ベーク条件の範囲は、温度は40~120℃であり、時間は10~240秒間が好ましいが、本発明の感光性樹脂組成物の諸特性を阻害するものでない限り、この範囲に限定されない。
【0079】
(3)露光後の樹脂層を現像して感光性ポリイミドパターンを形成する工程:
本工程においては、露光後の感光性樹脂層の未露光部を現像除去する。現像方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸漬法等の中から任意の方法を選択して使用することができる。また、現像の後、感光性ポリイミドパターンの形状を調整する等の目的で、必要に応じて任意の温度及び時間の組合せによる現像後ベークを施してもよい。
【0080】
現像に使用される現像液としては、感光性樹脂組成物に対する良溶媒、又は該良溶媒と貧溶媒との組合せが好ましい。例えば、良溶媒としては、N-メチルピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン等が好ましい。貧溶媒としてはトルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、乳酸エチル及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好ましい。良溶媒と貧溶媒とを混合して用いる場合には、感光性樹脂組成物中のポリマーの溶解性によって良溶媒に対する貧溶媒の割合を調整することが好ましい。また、良溶媒と貧溶媒のそれぞれについて、2種以上の溶媒、例えば数種類を組合せて用いることもできる。
【0081】
(4)感光性ポリイミドパターンを加熱処理することによって、永久絶縁膜として完成させる工程:
本工程では、上記現像により得られた感光性ポリイミドパターンを加熱することによって、永久絶縁膜として完成させる。即ち、ポリアミック酸タイプと違い、既にイミド化が終了しているため、溶剤等の残留物を取り除くことにより永久絶縁膜として完成できる。加熱硬化の方法としては、ホットプレートによるもの、オーブンを用いるもの、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いるもの等種々の方法を選ぶことができる。加熱は、含有溶剤等を蒸発させる十分な条件であり、例えば150~300℃で30分~2時間程度の条件で行うことができる。加熱の際の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
【0082】
以上のようにして形成された感光性ポリイミドパターンは、半導体パッケージ、電子素子、表示素子又は有機多層配線基板の層間絶縁膜、パッシベーション膜又は表面保護膜として使用することができる。
【実施例
【0083】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
(ブロック共重合ポリイミドの合成)
合成実施例1
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。4,4-オキシジフタル酸無水物(以下ODPAという)14.39g(0.046モル)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下CBDAという)9.10g(0.046モル)、3,7-ジアミノ-2,8-ジメチルジベンゾチオフェンスルホン(以下TSNという)(アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン)21.64g(0.079モル)、バレロラクトン1.9g(0.019モル)、ピリジン3.0g(0.04モル)、NMP125g、トルエン50gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、180rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1.5時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却して、ピロメリット酸無水物(以下PMDAという)21.32g(0.098モル)、2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下TFMBという)34.17g(0.107モル)、NMP400g、を加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で5時間加熱撹拌して反応を終了した。固形分15重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0085】
合成実施例2
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。4,4-オキシジフタル酸無水物(以下ODPAという)14.39g(0.046モル)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下CBDAという)9.10g(0.046モル)、3,7-ジアミノ-2,8-ジメチルジベンゾチオフェンスルホン(以下TSNという)(アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン)21.64g(0.079モル)、バレロラクトン1.9g(0.019モル)、ピリジン3.0g(0.04モル)、NMP125g、トルエン50gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、180rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1.5時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却して、ODPA15.33g(0.049モル)、CBDA9.69g(0.049モル)、2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下TFMBという)34.17g(0.107モル)、NMP420g、を加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で5時間加熱撹拌して反応を終了した。固形分15重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0086】
合成実施例3
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。4,4-オキシジフタル酸無水物(以下ODPAという)14.39g(0.046モル)、trans-1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸2無水物9.75g(0.046モル)、3,7-ジアミノ-2,8-ジメチルジベンゾチオフェンスルホン(以下TSNという)(アミノ基のオルト位にアルキル基を有する芳香族ジアミン)21.64g(0.079モル)、バレロラクトン1.9g(0.019モル)、ピリジン3.0g(0.04モル)、NMP130g、トルエン50gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、180rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1.5時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却して、ピロメリット酸無水物(以下PMDAという)21.32g(0.098モル)、2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下TFMBという)34.17g(0.107モル)、NMP400g、を加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で5時間加熱撹拌して反応を終了した。固形分15重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0087】
合成実施例4
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。4,4-オキシジフタル酸無水物(以下ODPAという)14.39g(0.046モル)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下CBDAという)9.10g(0.046モル)、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン21.04g(0.079モル)(フェニルインダン構造含有芳香族ジアミン)、バレロラクトン1.9g(0.019モル)、ピリジン3.0g(0.04モル)、NMP125g、トルエン50gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、180rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1.5時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却して、ピロメリット酸無水物(以下PMDAという)21.32g(0.098モル)、2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下TFMBという)34.17g(0.107モル)、NMP400g、を加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で5時間加熱撹拌して反応を終了した。固形分15重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0088】
合成比較例1
ガラス製のセパラブル三つ口フラスコに、撹拌機、チッ素導入管、及び水分受容器を備えた冷却管を取り付けた。3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジ無水物(以下BTDAという)64.45g(0.2モル)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン29.23g(0.1モル)、バレロラクトン1.5g(0.015モル)、ピリジン2.4g(0.03モル)、NMP200g、トルエン30gを仕込み、室温で、窒素雰囲気下、200rpmで30分撹拌した後、180℃に昇温して1時間加熱撹拌した。反応中、トルエン-水の共沸分を除いた。
室温に冷却して、BTDA48.33g(0.15モル)、2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-ベンゼンジアミン44.57g(0.25モル)(N-に対しオルソ位にアルキル基を有する芳香族ジアミン)、NMP360g、トルエン90gを加え、室温で30分撹拌した後、180℃に昇温して、1時間加熱撹拌した。水-トルエンの共沸の還流物を系外に除きながら、180℃で2時間30分加熱撹拌して反応を終了した。得られた生成物にNMPを加えて希釈し、固形分20重量%のブロック共重合ポリイミド溶液を得た。
【0089】
(感光性ポリイミド樹脂組成物の調製)
以下の実施例及び比較例において、「部」は「重量部」を意味する。
【0090】
実施例1~4
合成実施例1~4のブロック共重合ポリイミド溶液(固形分15重量%)500部に2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノン40部、9,10-ジブトキシアントラセン0.06部を加え、NMPにて溶解させて固形分20wt%の感光性樹脂組成とした。
【0091】
実施例5~8
合成実施例1~4のブロック共重合ポリイミド溶液(固形分15重量%)500部に、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノン40部、9,10-ジブトキシアントラセン0.06部、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン0.75部、5-メチル-1H-ベンゾトリアール0.075部、1,3,5-トリス(4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン0.75部を加え、NMPに溶解して固形分20%の感光性樹脂組成物とした。
【0092】
実施例9
合成実施例1のブロック共重合ポリイミド溶液(固形分15重量%)500部に、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノン40部、9,10-ジブトキシアントラセン0.06部、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン0.75部、5-メチル-1H-ベンゾトリアール0.075部、1,3,5-トリス(4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン0.75部、TEPIC-VL(3官能エポキシ:日産化学工業社製)4部、WPBG(光塩基発生剤:富士フィルム和光純薬社製)0.075部を加え、NMPに溶解して固形分20%の感光性樹脂組成物とした。
【0093】
比較例1
合成比較例1のブロック共重合ポリイミド溶液(固形分20重量%)500部に、2,6-ジ(4’-アジドベンザル)-4-エチルシクロヘキサノン20部、9,10-ジブトキシアントラセン1部、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン1部、5-メチル-1H-ベンゾトリアール0.1部、1,3,5-トリス(4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン1部を加え、安息香酸メチルに溶解して固形分25%の感光性樹脂組成物とした。
【0094】
(ポリイミド樹脂組成物の性能評価)
1.機械的強度、熱膨張係数及び5%熱重量減少温度
前記各実施例及び比較例の樹脂組成物(実施例1~3は、事前にシランカップリング剤処理した樹脂組成物)を、6インチシリコンウェハーに最終乾燥後の膜厚さが15~17μmとなるようにスピンコートし、90℃360秒間プリベークを行った後、高圧水銀灯を用いて、i線換算で2,500mJ/cm全波長露光を行い、NMP溶液(比較例はシクロペンタノン溶液)に120秒浸漬後に、250℃(又は200℃)90分加熱乾燥を行い、乾燥樹脂膜を作製した。
この樹脂乾燥膜をフッ化水素酸等によりウェハーから剥離して、機械的強度、熱膨張係数及び5%熱重量減少温度測定用の試験サンプルとした。
【0095】
2.密着強度
上記で作製したシリコンウェハー上に形成した乾燥樹脂膜を用いる。
(1)試験面にカッターナイフを用いて、素地に達する11本の切り傷をつけ100個の碁盤目を作る。カッターガイドを使用し、切り傷の間隔は1mmとする。
(2)碁盤目部分にセロテープ(登録商標)を強く圧着させ、テープの端を45°の角度で一気に引き剥がし、碁盤目の状態を標準図と比較して評価する。常態とHAST(80℃×85%RH)における240時間後の密着強度を判定する。
【0096】
3.残膜率
前記各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物(実施例1~3は、事前にシランカップリング剤処理した樹脂組成物)を、6インチシリコンウェハーに最終乾燥後の膜厚さが5~7μm及び10~12μmとなるようにスピンコートし、90℃で240秒間及び90℃で300秒間プリベークを行った後に膜厚計で厚さ(t)を測定する。次に高圧水銀灯を用いて、i線換算で1,000(又は2,500)mJ/cm全波長露光を行い、NMP溶液(比較例はシクロペンタノン溶液)に120秒浸漬後に膜厚計で厚さ(t)を測定する。更に250℃(又は200℃)90分加熱乾燥を行い、その後に膜厚計で厚さ(t)を測定する。この値から、t/t1、/t及びt/tを計算し残膜率とした。
【0097】
4.露光・現像性
パターン評価は以下の方法により行った。
(1)解像度
前記各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物(実施例1~3は、事前にシランカップリング剤処理した樹脂組成物)を6インチのシリコンウェハー上に滴下して30秒間回転塗布し、次いで、90℃のホットプレートで240秒間プリベークした。この時、ベーク後の膜厚が約6~8μmとなるよう塗布回転を調節した。次いで、高圧水銀灯を用いて露光した。i線にて測定した露光量は1,000mJ/cmであった。その後、NMP溶液(比較例はシクロペンタノン溶液)で現像し、次いでリンスしてから250℃(又は200℃)90分加熱乾燥した。L/S=5/5,10/10,15/15,20/20,30/30,50/50μm、正方形ビアホールパターン10,15,20,30,40,50μmのうち解像している最小のものを解像度とした。
【0098】
(2)パターンエッジ残渣、クラック
上記(1)と同様の方法でパターン加工を行い、まず、現像後の膜表面に異常がないかを目視で観察した。次に、光学顕微鏡で15μmの正方形ビアホールパターンを観察し、パターンのコーナーにひびが入っている場合をクラックありとした。更に、L/S=15/15のパターンエッジを観察し、現像残りが発生している場合を残渣ありとした。
【0099】
前記各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の評価結果を下記表1及び表2に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
上記表1及び表2の結果から、酸二無水物残基として、(a)脂環式酸二無水物残基を有さず、芳香族酸二無水物残基のみを有するポリイミドを用いた比較例1の組成物では、熱膨張係数が56ppm/℃であり、弾性率が2.5GPa、破断強度が115MPaであるのに対し、(a)脂環式酸二無水物残基を有するポリイミドを用いた実施例1~9の組成物では、熱膨張係数18~30ppm/℃、弾性率4.0~4.7GPa、破断強度140~173MPaが達成されたことが分かる。また、実施例1~9の組成物は、高い密着強度、高い残膜率及び良好な露光現像性を維持していることが分かる。この結果から、(a)脂環式酸二無水物残基と(b)特定のジアミン残基を同一の繰り返し単位中に有する溶剤可溶性ポリイミドとジアジド化合物を含む組成物は、現像時の現像液可溶性と光架橋後の現像液不溶性を備え、良好な膜物性と高い感度を達成し得るとともに、熱膨張係数が低く、機械強度にも優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の感光性ポリイミド樹脂組成物は、現像時の現像液可溶性と光架橋後の現像液不溶性を備え、良好な膜物性と高い感度を達成し得るとともに、熱膨張係数が低く、機械強度にも優れることから、例えば、FO-WLP,FO-PLP,WLP等の半導体パッケージ、薄膜磁気ヘッド,薄膜インダクタ,コモンモードチョークコイル等の薄膜磁気素子等の電子素子、TFT液晶素子,カラーフィルター素子,有機EL素子等の表示素子及び有機多層配線基板等の製造に有用であり、感光性材料の分野で好適に利用することができる。