(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 7/12 20060101AFI20250213BHJP
【FI】
F16K7/12 B
(21)【出願番号】P 2022509414
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006213
(87)【国際公開番号】W WO2021192753
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-05-09
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020055686
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020055687
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】中田 知宏
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】北村 亮
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/193978パンフレット(WO,A1)
【文献】特開平6-193747(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084744パンフレット(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路、前記流路が開口される凹部、及び前記凹部にて前記流路が連通される弁室を有するボディと、
前記凹部に収容されるとともに、内側周縁部及び外側周縁部により前記流路を前記弁室に至るまで区画するインナーディスクと、
前記弁室にて前記流路を遮断又は連通するダイヤフラムと、
前記内側周縁部の前記弁室に面する側に形成される第1環状面と、
前記内側周縁部の前記第1環状面と反対側に形成されるとともに、前記凹部の底面に支持される第2環状面と、
前記第1環状面に保持されるとともに、前記流路の遮断又は連通に伴い前記ダイヤフラムが当離座する第1シール部と、
前記第2環状面と前記凹部の底面との間に配置される第2シール部と
を備え、
前記第1シール部及び前記第2シール部は、環状のシート形状をなす、バルブ装置。
【請求項2】
流路、前記流路が開口される凹部、及び前記凹部にて前記流路が連通される弁室を有するボディと、
前記凹部に収容されるとともに、内側周縁部及び外側周縁部により前記流路を前記弁室に至るまで区画する
第1インナーディスクと、前記内側周縁部の径方向内側にて前記第1インナーディスクの厚み方向に可動に且つ着脱可能に配置される第2インナーディスクとから構成されるインナーディスクと、
前記弁室にて前記流路を遮断又は連通するダイヤフラムと、
前記第2インナーディスクの前記弁室に面する側に形成される第1環状面と、
前記第2インナーディスクの前記第1環状面と反対側に形成されるとともに、前記凹部の底面に支持される第2環状面と、
前記第1環状面に保持されるとともに、前記流路の遮断又は連通に伴い前記ダイヤフラムが当離座する第1シール部と、
前記第2環状面と前記凹部の底面との間に配置される第2シール部と
を備え
、
前記内側周縁部の内周面と前記第2インナーディスクの外周面とに形成され、互いに当接することにより前記厚み方向における前記第2インナーディスクの前記弁室の側への移動を規制する一対の規制部をさらに備える、バルブ装置。
【請求項3】
前記第1シール部及び前記第2シール部は、それぞれ前記第1環状面、前記第2環状面から突出した突条をなす、請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記第1インナーディスクは、前記内側周縁部の前記弁室に面する側に形成された第3環状面を備え、
前記第3環状面は、前記一対の規制部が互いに当接した状態で、前記第1環状面と径方向において実質的に面一である、請求項2又は3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記第1インナーディスクは、前記内側周縁部の前記第1環状面と反対側に形成されるとともに前記凹部の底面に対向する第4環状面を備え、
前記第2シール部は、前記一対の規制部が互いに当接した状態で、前記第4環状面と径方向に面一となる高さよりも大となる突出高さで前記凹部の底面に向けて突出する、請求項2から4の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記第1シール部及び前記第2シール部は、フッ素ゴムからなる、請求項1から5の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項7】
前記外側周縁部は、前記インナーディスクの厚み方向において前記凹部の底面に向けて突出する突起部を有する、請求項1から6の何れか一項に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ装置に関し、詳しくはダイヤフラムを弁体に有するバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体の入口流路、出口流路、及び上方開口の凹部を有するボディと、ボディに形成された流路の周縁に着脱可能に配置されたバルブシートと、ボディに着脱可能に配置されてバルブシートを保持するシートホルダ(インナーディスクともいう)と、バルブシートに当離座することで流路の遮断又は連通を行うダイヤフラムとを備えたダイヤフラム弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のバルブシートは、環状をなした弁座体であって、インナーディスクの内側周縁部の内周面に装着され、例えばPCTFE(耐熱温度:約120℃)などの樹脂から形成される。従って、バルブを流れる流体温度が例えば300℃以上の高温に達する場合、この高温流体に接するバルブシートも同程度の耐熱性を確保する必要がある。
【0005】
また、バルブシートは、高温流体に接して熱膨張した後に収縮すると、バルブシートのインナーディスクの内側周縁部に装着される鍔状の装着部に応力集中が生じ得る。この応力集中は、バルブシートに変形を生じさせ、また、材質によってはバルブシートに割れ、千切れなどを生じさせ、バルブのシール性を損なうおそれがある。
【0006】
さらに、特許文献1に記載のバルブシートは、閉弁時にダイヤフラムが当接する突出した弁座部、インナーディスクの内側周縁部に装着される鍔状の装着部、バルブのボディのインナーディスクが収容される凹部の底面に当接される当接部を有する。これらの各部位を備えたバルブシートは、その体積が大きくならざるを得ない。従って、このような体積が大きなバルブシートが高温に曝されると、熱膨張による影響がさらに顕著となり、バルブのシール性を確保するのがさらに困難となるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、流路に高温流体が流れる場合であっても、熱膨張の影響を抑制することにより、シール性を確保することができるバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、本発明のバルブ装置は、流路、流路が開口される凹部、及び凹部にて流路が連通される弁室を有するボディと、凹部に収容されるとともに、内側周縁部及び外側周縁部により流路を弁室に至るまで区画するインナーディスクと、弁室にて流路を遮断又は連通するダイヤフラムと、内側周縁部の弁室に面する側に形成される第1環状面と、内側周縁部の第1環状面と反対側に形成されるとともに、凹部の底面に支持される第2環状面と、第1環状面に保持されるとともに、流路の遮断又は連通に伴いダイヤフラムが当離座する第1シール部と、第2環状面と凹部の底面との間に配置される第2シール部とを備え、第1シール部及び第2シール部は、環状のシート形状をなす。
また、本発明の別のバルブ装置は、流路、流路が開口される凹部、及び凹部にて流路が連通される弁室を有するボディと、凹部に収容されるとともに、内側周縁部及び外側周縁部により流路を弁室に至るまで区画する第1インナーディスクと、内側周縁部の径方向内側にて第1インナーディスクの厚み方向に可動に且つ着脱可能に配置される第2インナーディスクとから構成されるインナーディスクと、弁室にて流路を遮断又は連通するダイヤフラムと、第2インナーディスクの弁室に面する側に形成される第1環状面と、第2インナーディスクの第1環状面と反対側に形成されるとともに、凹部の底面に支持される第2環状面と、第1環状面に保持されるとともに、流路の遮断又は連通に伴いダイヤフラムが当離座する第1シール部と、第2環状面と凹部の底面との間に配置される第2シール部とを備え、内側周縁部の内周面と第2インナーディスクの外周面とに形成され、互いに当接することにより厚み方向における第2インナーディスクの弁室の側への移動を規制する一対の規制部をさらに備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバルブ装置によれば、流路に高温流体が流れる場合であっても、熱膨張の影響を抑制することにより、シール性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るバルブ装置を備えたバルブの一部縦断面図である。
【
図2】バルブ装置の
図1の領域Aを拡大した縦断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るバルブ装置を備えたバルブの一部縦断面図である。
【
図6】バルブ装置の
図5の領域Bを拡大した縦断面図である。
【
図7】第2インナーディスクを組付けた第1インナーディスクの縦断面図である。
【
図8】第2インナーディスクを組付けた第1インナーディスクの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係るバルブ装置について図面を参照して説明する。なお、
図1~
図3及び
図5~
図7の説明においては各図の上側を上方として説明している。
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係るバルブ装置1を備えたバルブ2の一部縦断面図を示す。バルブ2は、弁体としてダイヤフラム4を有し、プロセス流体の微小流量を高精度で制御可能なダイレクトタッチ型のメタルダイヤフラム弁である。
【0012】
バルブ2は、ボディ6、バルブ本体8、ボンネット10、ボンネットナット12、ステム14、アクチュエータ16等を備えている。ボディ6は、ステンレス鋼等の金属材により形成され、入口流路18及び出口流路20と、上側開口の凹部22とが形成されている。凹部22には、その底面22aに入口流路18及び出口流路20が開口され、バルブ本体8が収容されている。バルブ装置1は、ボディ6と、ボディ6の凹部22に収容されるバルブ本体8とにより構成される。
【0013】
図2は、バルブ装置1の
図1の領域Aを拡大した縦断面図を示す。バルブ本体8は、ダイヤフラム4、インナーディスク24、ボンネット10の下端部10a、ステム14の下拡径部14a、スプリング26(
図1参照)、ダイヤフラム押え28、押さえアダプタ30等から構成されている。
【0014】
ダイヤフラム4は、1枚、又は、互いに分離可能な複数の薄板を積層して形成され、これら薄板はダイヤフラム4の中央部4aが上方へ膨出した皿状に形成されている。薄板は、例えば0.1mm~0.2mm程度の極薄の厚みを有し、ステンレス鋼や 、その他の形状記憶合金等の金属材から形成されている。
【0015】
インナーディスク24は、ステンレス鋼等の金属材により形成され、内側周縁部32及び外側周縁部34を備え、凹部22の底面22aに載置される。外側周縁部34の上には、順にダイヤフラム4、押さえアダプタ30が配置されている。ボンネット10は、筒状をなしており、凹部22に挿入され、ボンネットナット12を締め込むことにより、ボンネット10の下端部10aが押さえアダプタ30に押し付けられる。これにより、ダイヤフラム4の周縁部4bが押さえアダプタ30によりインナーディスク24の外側周縁部34に押し付けられて保持される。
【0016】
ステム14は、ボンネット10内に上下動可能に挿入され、その下拡径部14aには樹脂材等から形成されたダイヤフラム押え28が嵌着されている。ダイヤフラム押え28は、ダイヤフラム4の径方向の中央部4aの上面に当接し、
図1の開弁状態においては、ダイヤフラム4を上方から押さえ、その過度な湾曲を抑制する。ステム14の上部はボンネット10の上部から突出され、アクチュエータ16内に挿入されている。
【0017】
アクチュエータ16は、例えばエア作動式の駆動機構であり、凹部22内に配置されたコイル状のスプリング26の弾性力と、アクチュエータ16に供給される作動エアの圧力とによりステム14を上下動させる。例えば、アクチュエータ16への作動エアの供給を遮断すると、スプリング26の弾性力が下拡径部14aに作用してステム14が下降し、下拡径部14aが下降してダイヤフラム4の中央部4aがダイヤフラム押え28により押し付けられ、ダイヤフラム4が入口流路18の開口を閉塞して閉弁状態となる。
【0018】
一方、アクチュエータ16に作動エアを供給することにより、ステム14が上昇し、下拡径部14aがスプリング26の弾性力に抗して上昇する。これにより、
図2に示すように、ダイヤフラム押え28も上昇し、ダイヤフラム4が上方湾曲の自然状態に戻り、入口流路18が開口され、バルブ2が開弁状態となる。
【0019】
凹部22には、入口流路18及び出口流路20が連通される弁室36が形成されている。弁室36は、押さえアダプタ30、ダイヤフラム押え28、及びインナーディスク24により囲まれ、入口流路18から流体が流れ込む領域である。ダイヤフラム4は、弁室36にて湾曲変形することにより、入口及び出口流路18、20を遮断又は連通する。
【0020】
図3は、インナーディスク24の縦断面図を示し、
図4は、インナーディスク24の上面図を示す。インナーディスク24は、
図2に示したように、凹部22に収容されるとともに、内側周縁部32及び外側周縁部34により入口及び出口流路18、20を弁室36に至るまで区画する。
【0021】
詳しくは、
図4に示すように、インナーディスク24には、内側周縁部32の内側に入口流路18と連通する貫通孔38が形成され、内側周縁部32と外側周縁部34との間に中間環状部40が形成されている。中間環状部40には、その周方向に沿って複数の貫通孔42が形成され、各貫通孔42は出口流路20と連通している。これにより、入口及び出口流路18、20が弁室36に至るまでインナーディスク24において区画される。
【0022】
内側周縁部32には、弁室36に面する側、つまり
図3で見て内側周縁部32の上面に第1環状面44が形成されている。また、第1環状面44と反対側、つまり
図3で見て内側周縁部32の下面に第2環状面46が形成されている。第2環状面46は、
図2に示すように、凹部22の底面22aに後述する第2シール部50を介して支持される。
【0023】
第1及び第2環状面44、46は、環状をなす平坦面であり、第1環状面44には、第1シール部48が接着等により貼り付けられて保持されている。第1シール部48は、入口及び出口流路18、20の遮断又は連通に伴いダイヤフラム4が当離座する。また、第2環状面46と凹部22の底面22aとの間には第2シール部50が配置されている。なお、第2シール部50を第2環状面46又は底面22aに接着等により貼り付けて保持しても良い。
【0024】
第1及び第2シール部48、50は、環状のシート形状をなし、また、双方ともフッ素ゴムから形成されている。より好ましくは、第1及び第2シール部48、50は、入口及び出口流路18、20を流れる流体の温度が例えば300℃以上の高温に達する場合でも耐え得るフッ素ゴム(例えば、デュポン社製のフッ素ゴム材料「カルレッツ(登録商標)」)から形成されている。
【0025】
図3に示すように、外側周縁部34には、凹部22の底面22aに向けて、つまり
図3の下側に向けて環状の突起部52が突出して形成されている。この突起部52は、インナーディスク24の厚み方向Yにおいて突出高さHで形成されている。ボンネットナット12を締め込み、ボンネット10の下端部10aが押さえアダプタ30に押し付けられると、突起部52の先端が対向する凹部22の底面22aに当接する。
【0026】
この突起部52の当接により、外側周縁部34が凹部22の底面22aに保持されるとともに外側周縁部34におけるシールが行われる。さらには、第2環状面46と凹部22の底面22aとの間にて第2シール部50が適度に押し潰される。
【0027】
以上のように、本実施形態では、第1シール部48は、入口及び出口流路18、20の遮断又は連通に伴いダイヤフラム4が当離座し、従来におけるバルブシートの弁座部としての機能を有する。一方、第2シール部50は、従来におけるバルブシートの凹部22の底面22aに当接される当接部としての機能を有する。
【0028】
このように、本実施形態では、バルブ装置1におけるバルブシートを第1及び第2環状面44、46という離れた部位にそれぞれ配置した第1及び第2シール部48、50という2つの異なる部材から形成する。これにより、従来におけるバルブシートの鍔状の装着部が不要となる。
【0029】
バルブシートの装着部が存在しないことにより、装着部の応力集中により生じるバルブシートの変形、割れ、千切れなどの発生が抑制される。また、バルブシートを装着部がない状態の小さな体積に形成可能となるため、バルブ装置1に高温流体が流れる場合であっても、熱膨張の影響を抑制することができる。従って、バルブ装置1のシール性を確保することができる。
【0030】
また、凹部22の底面22aに当接される当接部としての機能を有する第2シール部50を設けたことにより、インナーディスク24とボディ6の凹部22の底面22aとのメタルタッチを回避することができる。これにより、第2環状面46において、メタルタッチによるパーティクルの発生を抑制することができるため、例えば半導体製造装置にバルブ2を適用することにより、パーティクルの混入による半導体の不良品率を極力低下することができる。
【0031】
また、第1及び第2シール部48、50が環状のシート形状をなすことにより、第1及び第2シール部48、50の前述した各機能を発揮できる範囲で、バルブシートを必要最低限の体積に形成可能となる。従って、バルブ装置1に高温流体が流れる場合であっても、熱膨張の影響をさらに効果的に抑制することができ、バルブ装置1のシール性をさらに効果的に維持することができる。
【0032】
また、第1及び第2シール部48、50がフッ素ゴムから形成されることにより、樹脂製である場合に比してバルブシートの耐熱性を向上することができる。ここで、ゴム製のバルブシートは、一般に樹脂と比べて熱膨張率が高いため、高温流体に接して熱膨張した後に収縮すると、従来においては、インナーディスクの内側周縁部に対するバルブシートの装着部に応力集中が生じ易い。
【0033】
しかし、本実施形態においては、このような装着部が存在しないことにより、応力集中の発生は抑制される。特に、前述した「カルレッツ(登録商標)」などのフッ素ゴム材料から第1及び第2シール部48、50を形成することにより、入口及び出口流路18、20に300℃以上の高温流体が流れる場合であっても耐え得る第1及び第2シール部48、50を実現可能である。従って、この場合には、熱膨張の影響を抑制しつつ、シール性を確保し、さらに300℃以上の耐熱性を有するバルブ装置1を実現することができる。
【0034】
また、外側周縁部34に形成した突起部52が厚み方向Yにおいて突出高さHを有して形成されている。これにより、ボンネットナット12を締め込み、ボンネット10の下端部10aが押さえアダプタ30に押し付けられると、突起部52の先端が対向する凹部22の底面22aに当接する。
【0035】
この突起部52の当接により、外側周縁部34が凹部22の底面22aに保持されるとともに外側周縁部34におけるシールが行われる。この際、突出高さHを予め調整することにより、凹部22の底面22aとの間にて第2シール部50が適度に押し潰され、第2環状面46において、第2環状面46と対向するボディ6の凹部22の底面22aとの間のシール性が確保される。さらには、第2環状面46と凹部22の底面22aとの間のメタルタッチによるパーティクルの発生を抑制することができる。
【0036】
<第2実施形態>
図5は本発明の第2実施形態に係るバルブ装置1を備えたバルブ2の一部縦断面図を示す。なお、以下の説明においては、主として第2実施形態の特徴部分を説明し、第1実施形態と同様の構成については図面において同一の符号を付すとともに、説明を省略することがある。
【0037】
バルブ2は、ダイヤフラム4、ボディ6、バルブ本体8、ボンネット10、ボンネットナット12、ステム14、アクチュエータ16等を備えたダイレクトタッチ型のメタルダイヤフラム弁である。ボディ6には、入口流路18、出口流路20、及び凹部22が形成され、凹部22の底面22aに入口流路18及び出口流路20が開口されてバルブ本体8が収容されている。バルブ装置1は、ボディ6と、ボディ6の凹部22に収容されるバルブ本体8とにより構成される。
【0038】
図6は、バルブ装置1の
図5の領域Bを拡大した縦断面図を示す。バルブ本体8は、ダイヤフラム4、第1インナーディスク60、第2インナーディスク62、ボンネット10の下端部10a、ステム14の下拡径部14a、スプリング26(
図5参照)、ダイヤフラム押え28、押さえアダプタ30等から構成されている。すなわち、本実施形態のインナーディスクは、第1インナーディスク60と第2インナーディスク62との2部材から構成されている。
【0039】
第1インナーディスク60は、ステンレス鋼等の金属材により形成され、内側周縁部64及び外側周縁部66を備え、凹部22の底面22aに載置される。第2インナーディスク62は、第1インナーディスク60と同様の金属材により形成され、内側周縁部64の径方向内側に配置され、第1インナーディスク60の外側周縁部66の上には、順にダイヤフラム4、押さえアダプタ30が配置されている。
【0040】
ボンネット10を凹部22に挿入し、ボンネットナット12を締め込むことにより、ボンネット10の下端部10aが押さえアダプタ30に押し付けられる。これにより、ダイヤフラム4の周縁部4bが押さえアダプタ30により第1インナーディスク60の外側周縁部66に押し付けられて保持される。
【0041】
図7は、第2インナーディスク62を組付けた第1インナーディスク60の縦断面図を示し、
図8は、第2インナーディスク62を組付けた第1インナーディスク60の上面図を示す。第1インナーディスク60は、
図6に示したように、凹部22に収容されるとともに、内側周縁部64及び外側周縁部66により入口及び出口流路18、20を弁室36に至るまで区画する。
【0042】
第2インナーディスク62は、貫通孔68が形成された環状をなし、第1インナーディスク60の内側周縁部64の径方向Xの内側にて第1インナーディスク60の厚み方向Yに可動に、且つ第1インナーディスク60から着脱可能に配置されている。内側周縁部64の内周面と第2インナーディスク62の外周面とには、それぞれ規制部70、72が径方向Xに突出して形成されている。一対の規制部70、72が互いに当接することにより、厚み方向Yにおける第2インナーディスク62の弁室36の側への移動が規制される。
【0043】
図9は、第1インナーディスク60の上面図を示す。第1インナーディスク60には、内側周縁部64の内側に貫通孔74が形成されている。貫通孔74は、第2インナーディスク62の貫通孔68を介して入口流路18と連通する。また、内側周縁部64と外側周縁部66との間に中間環状部76が形成されている。中間環状部76には、その周方向に沿って複数の貫通孔78が形成され、各貫通孔78は出口流路20と連通している。これにより、入口及び出口流路18、20が弁室36に至るまで第1インナーディスク60において区画される。
【0044】
図10は、第2インナーディスク62の上面図を示す。第2インナーディスク62には、その弁室36に面する側、つまり
図7で見て第2インナーディスク62の上面に第1環状面80が形成されている。また、第1環状面80と反対側、つまり
図7で見て第2インナーディスク62の下面に第2環状面82が形成されている。第2環状面82は、
図6に示すように、凹部22の底面22aに後述する第2シール部86を介して支持される。
【0045】
第1及び第2環状面80、82は、環状をなす平坦面であり、第1環状面80には、第1シール部84が接着等により貼り付けられて保持されている。第1シール部84は、入口及び出口流路18、20の遮断又は連通に伴いダイヤフラム4が当離座する。また、第2環状面82と凹部22の底面22aとの間には第2シール部86が配置されている。第2シール部86は第2環状面82に接着等により貼り付けて保持される。
【0046】
第1及び第2シール部84、86は、それぞれ第1環状面80、第2環状面82から突出した環状の突起形状、すなわち突条をなし、また、双方ともフッ素ゴムから形成されている。より好ましくは、第1及び第2シール部84、86は、入口及び出口流路18、20を流れる流体の温度が例えば300℃以上の高温に達する場合でも耐え得るフッ素ゴム(例えば、デュポン社製のフッ素ゴム材料「カルレッツ(登録商標)」)から形成されている。
【0047】
また、第1インナーディスク60には、内側周縁部64の弁室36に面する側、つまり
図7で見て第1インナーディスク60の上面に第3環状面88が形成されている。また、第3環状面88と反対側、つまり
図7で見て第1インナーディスク60の下面に第4環状面90が形成されている。
【0048】
また、
図6に示すように、第3環状面88は、一対の規制部70、72が互いに当接した状態で、第1環状面80と径方向Xにおいて実質的に面一である。また、
図7に示すように、第2シール部86は、一対の規制部70、72が互いに当接した状態で、第4環状面90と径方向Xに面一となる高さよりも大となる突出高さHで凹部22の底面22aに向けて突出する。これにより、第4環状面90は、
図6に示すように、凹部22の底面22aに対して離間される。
【0049】
また、
図7に示すように、外側周縁部66には、凹部22の底面22aに向けて、つまり
図7の下側に向けて環状の突起部92が突出して形成されている。この突起部92は、厚み方向Yにおいて突出高さH1で形成されている。ボンネットナット12を締め込み、ボンネット10の下端部10aが押さえアダプタ30に押し付けられると、突起部92の先端が対向する凹部22の底面22aに当接する。
【0050】
この突起部92の当接により、外側周縁部66が凹部22の底面22aに保持されるとともに外側周縁部66におけるシールが行われる。さらには、第2環状面82と凹部22の底面22aとの間にて第2シール部86が適度に押し潰される。
【0051】
以上のように、本実施形態のバルブ装置1は、第1インナーディスク60の内側周縁部64の径方向Xの内側にて第1インナーディスク60の厚み方向Yに可動に配置された第2インナーディスク62を備える。そして、第2インナーディスク62の第1及び第2環状面80、82に、それぞれ第1シール部84、第2シール部86が保持されている。
【0052】
第1シール部84は、入口及び出口流路18、20の遮断又は連通に伴いダイヤフラム4が当離座し、従来におけるバルブシートの弁座部としての機能を有する。一方、第2シール部86は、従来におけるバルブシートの凹部22の底面22aに当接される当接部としての機能を有する。
【0053】
このように、本実施形態では、バルブ装置1におけるバルブシートを第1及び第2環状面80、82という離れた部位にそれぞれ設けた第1及び第2シール部84、86という2つの異なる部材から形成する。これにより、従来におけるバルブシートの鍔状の装着部が不要となる。
【0054】
バルブシートの装着部が存在しないことにより、装着部の応力集中により生じるバルブシートの変形、割れ、千切れなどの発生が抑制される。また、バルブシートを装着部がない状態の小さな体積に形成可能となるため、バルブ装置1に高温流体が流れる場合であっても、熱膨張の影響を抑制することができる。従って、バルブ装置1のシール性を確保することができる。
【0055】
また、凹部22の底面22aに当接される当接部としての機能を有する第2シール部86を設けたことにより、第2インナーディスク62とボディ6の凹部22の底面22aとのメタルタッチを回避することができる。これにより、第2環状面82において、メタルタッチによるパーティクルの発生を抑制することができるため、例えば半導体製造装置にバルブ2を適用することにより、パーティクルの混入による半導体の不良品率を極力低下することができる。
【0056】
さらに、第2インナーディスク62は、第1インナーディスク60に対して、厚み方向Yに一対の規制部70、72に規制される範囲において可動である。これにより、第1シール部84にダイヤフラム4が当接している閉弁状態においては、第2シール部86が凹部22の底面22aに押し付けられ、第2シール部86にて確実にシールして出口流路20への流体の流出を防止することができる。
【0057】
また、第2インナーディスク62は、第1インナーディスク60に対して着脱可能である。これにより、第1及び第2シール部84、86が経年劣化した場合などにおいては、新たな第1及び第2シール部84、86を備えた第2インナーディスク62ごと新品に交換することができる。従って、経年使用によってもシール性を維持可能なバルブ装置1を提供することができる。
【0058】
また、第1及び第2シール部84、86は、それぞれ第1環状面80、第2環状面82から突出した突条をなすことにより、第1及び第2シール部84、86の前述した各機能を発揮できる範囲で、バルブシートを必要最低限の体積に形成可能となる。従って、バルブ装置1に高温流体が流れる場合であっても、熱膨張の影響をさらに効果的に抑制することができ、バルブ装置1のシール性をさらに効果的に維持することができる。
【0059】
特に、第1シール部84を突条としたことにより、閉弁時にダイヤフラム4が当接し易くなるため、バルブ2の閉め切り性を向上することができる。また、第1及び第2シール部84、86がフッ素ゴムから形成されることにより、樹脂製である場合に比してバルブシートの耐熱性を向上することができる。ここで、ゴム製のバルブシートは、一般に樹脂と比べて熱膨張率が高いため、高温流体に接して熱膨張した後に収縮すると、従来においては、インナーディスクの内側周縁部に対するバルブシートの装着部に応力集中が生じ易い。
【0060】
しかし、本実施形態においては、このような装着部が存在しないことにより、応力集中の発生は抑制される。特に、第1及び第2シール部84、86を前述した「カルレッツ(登録商標)」などのフッ素ゴム材料から形成することにより、入口及び出口流路18、20に300℃以上の高温流体が流れる場合であっても耐え得る第1及び第2シール部84、86を実現可能である。従って、この場合には、熱膨張の影響を抑制しつつ、シール性を確保し、さらに300℃以上の耐熱性を有するバルブ装置1を実現することができる。
【0061】
また、第1インナーディスク60の内側周縁部64の第3環状面88は、一対の規制部70、72が互いに当接した状態で、第1環状面80と径方向Xにおいて実質的に面一である。これにより、弁室36における第2インナーディスク62の過剰な突出が防止され、弁室36の容積が確保されるとともに、弁室36における流体の流れが第2インナーディスク62により阻害されることはない。
【0062】
また、第2シール部86は、一対の規制部70、72が互いに当接した状態で、第4環状面90と径方向Xに面一となる高さよりも大となる突出高さHで凹部22の底面22aに向けて突出する。これにより、第4環状面90は、
図6に示すように、凹部22の底面22aに対して離間されるため、第4環状面90と凹部22の底面22aとのメタルタッチによるパーティクルの発生を抑制することができる。
【0063】
また、外側周縁部66に形成した突起部92が厚み方向Yにおいて突出高さH1を有して形成されている。これにより、ボンネットナット12を締め込み、ボンネット10の下端部10aが押さえアダプタ30に押し付けられると、突起部92の先端が対向する凹部22の底面22aに当接する。
【0064】
この突起部92の当接により、外側周縁部66が凹部22の底面22aに保持されるとともに外側周縁部66におけるシールが行われる。この際、突出高さH1を予め調整することにより、凹部22の底面22aとの間にて第2シール部86が適度に押し潰され、第2環状面82において、第2環状面82と、対向するボディ6の凹部22の底面22aとの間のシール性が確保される。さらには、第2環状面82と凹部22の底面22aとの間のメタルタッチによるパーティクルの発生を抑制することができる。
【0065】
以上で本発明の各実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、第1実施形態において、第1及び第2シール部48、50に比較的小さな体積で必要な機能を持たせつつ、弁室36の流体の流量を確保可能であれば、第1及び第2シール部48、50の形状はシート形状に限定されない。例えば、少なくとも第1シール部48は第1環状面44から突出した突条に形成しても良い。これにより、閉弁時にダイヤフラム4を第1シール部48のみに確実に当接させることができる。
【0066】
また、第2実施形態においても同様に、第1及び第2シール部84、86に比較的小さな体積で必要な機能を持たせつつ、弁室36の流体の流量を確保可能であれば、第1及び第2シール部84、86の形状は突条に限定されない。例えば、第1及び第2シール部84、86は、環状のシート形状であっても良いし、環状のシート形状の上に断面半円形状の突条が段差を存して設けられた形状であっても良い。
【0067】
また、各実施形態において、バルブ装置1ひいてはバルブ2を構成する部材は、インナーディスク24、第1及び第2インナーディスク60、62、第1シール部48、84、及び第2シール部50、86を除き、前述した材質に限定されない。また、バルブ装置1は、エア作動式の駆動機構であるアクチュエータ16により駆動されるが、これに限定されず、バルブ装置1は種々の駆動機構のバルブ2に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 バルブ装置
4 ダイヤフラム
4b 周縁部
6 ボディ
18 入口流路(流路)
20 出口流路(流路)
22 凹部
22a 底面
24 インナーディスク
32、64 内側周縁部
34、66 外側周縁部
36 弁室
44、80 第1環状面
46、82 第2環状面
48、84 第1シール部
50、86 第2シール部
52、92 突起部
60 第1インナーディスク(インナーディスク)
62 第2インナーディスク(インナーディスク)
70、72 規制部
88 第3環状面
90 第4環状面