(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/08 20060101AFI20250213BHJP
C08L 101/06 20060101ALI20250213BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20250213BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20250213BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20250213BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20250213BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
C08L101/08
C08L101/06
C08K5/3445
C08K3/24
C08K5/42
C08K3/22
C08L33/14
(21)【出願番号】P 2023558087
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2022041303
(87)【国際公開番号】W WO2023080228
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2024-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2021181702
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】森脇 佑也
(72)【発明者】
【氏名】松田 知也
(72)【発明者】
【氏名】浅田 耕資
(72)【発明者】
【氏名】呑海 克
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩気
(72)【発明者】
【氏名】吉田 成寿
(72)【発明者】
【氏名】竹中 直巳
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/157524(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/069783(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/172307(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3336123(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/142028(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141970(WO,A1)
【文献】A highly stable but highly reactive zinc catalyst for transesterification supported by a bis(imidazo,Green Chemistry,ROYAL SOCIETY OF CHEMISTRY,2016年,Vol.18, No.6,p.1524-1530
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-COOR(Rは、炭素数50以下のアルキル基)、及び、水酸基を有する樹脂成分(A)及びエステル交換触媒(B)
を含有し、
エステル交換触媒(B)は、亜鉛を含む化合物とイミダゾール化合物とを含有するものであることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
亜鉛化合物が、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1の亜鉛化合物である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
イミダゾール化合物が、下記一般式にて表されるものである、請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
1は枝分かれ構造もしくは環構造を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基、アルケニル基または芳香族置換基であり、水酸基、アミノ基、カルボニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、エーテル基及びニトロ基からなる群から選択される少なくとも1つを有していてもよい。R
2~R
4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数10以下のアルキル基、アルケニル基または芳香族置換基であり、水酸基、アミノ基、カルボニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、エーテル基及びニトロ基からなる群から選択される少なくとも1つを有していてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物についての検討を行っている(特許文献1~3)。このような検討によって、周知の硬化剤であるメラミン樹脂やイソシアネート化合物を利用した硬化と同等又はそれ以上の性能を有する熱硬化性樹脂組成物を提供できることが明らかとなりつつある。
【0003】
このようなエステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物にあたっては、更に、反応性が高い組成物が求められる。すなわち、系中に硬化反応を阻害する成分が存在したり、低温で硬化が必要であったり、短時間での硬化が必要であったりするような場合にも対応することが求められる場合がある。
そこで、本発明者らは、比較的低温での硬化が可能な熱硬化性樹脂組成物と、広範囲で反応を促進させることが可能な触媒を提案している(特許文献4)。
【0004】
更に、このような硬化性樹脂組成物については、様々な用途への展開が期待されており、塗膜を形成する際に加熱が困難な大型構造物等の基材に用いることができ、また、このような基材に、安価かつ容易に、塗膜を形成することができる、常乾タイプの硬化性樹脂組成物といった、より低温・短時間での硬化が可能な硬化性樹脂組成物への適用の検討も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6398026号公報
【文献】国際公開第2019/069783号
【文献】国際公開第2019/139069号
【文献】国際公開第2021/172307号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑み、反応性が高く、低温での硬化が可能な硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、-COOR(Rは、炭素数50以下のアルキル基)、及び、水酸基を有する樹脂成分(A)及びエステル交換触媒(B)
を含有し、
エステル交換触媒(B)は、亜鉛を含む化合物とイミダゾール化合物とを含有するものであることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
【0008】
上記亜鉛化合物が、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、酸化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1の亜鉛化合物であるとことが好ましい。
上記イミダゾール化合物が、下記一般式にて表されるものであることが好ましい。
【化1】
(式中、R
1は枝分かれ構造もしくは環構造を有していてもよい、炭素数10以下のアルキル基、アルケニル基または芳香族置換基であり、水酸基、アミノ基、カルボニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、エーテル基及びニトロ基からなる群から選択される少なくとも1つを有していてもよい。R
2~R
4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数10以下のアルキル基、アルケニル基または芳香族置換基であり、水酸基、アミノ基、カルボニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、エーテル基及びニトロ基からなる群から選択される少なくとも1つを有していてもよい。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物は、反応性が高く、低温での硬化が可能で、常乾タイプにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図17】本明細書における剛体振り子試験における硬化開始温度の読み取り方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物において、特定のエステル交換触媒を用いることにより、硬化開始温度を、より低温とすることができ、常乾タイプへの適用をも可能とするものである。また、硬化させた後においても、強度等において充分な物性を得ることができる熱硬化性樹脂組成物である。
【0012】
本発明においては、エステル交換触媒(B)として、亜鉛を含む化合物とイミダゾール化合物とを含有するものを使用することが重要である。これらを組みわせた触媒を用いることで、これまでより反応性を高めることができ、より低温でのエステル交換反応が達成される。
このような効果が得られる作用は明らかではないが、イミダゾール化合物が亜鉛に配位することにより、触媒活性を向上させているものと推測される。
【0013】
本発明の硬化樹脂物の硬化開始温度は、80℃以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましい。
上記値が70℃以下である硬化性樹脂組成物は、反応性が高く、低温での硬化を行うことができるだけではなく、短時間硬化が必要な用途で使用したり、常乾の硬化性樹脂組成物としたりする場合等においても好適な硬化反応性を得ることができる。
【0014】
上記硬化開始温度は、3℃/minの昇温条件で剛体振り子試験を実施した際の周期の減少開始温度を指し、
図17のようにして硬化開始点を測定することにより求めた値である。
【0015】
上述した性能を満たす硬化性樹脂組成物を得るためには、使用するエステル交換触媒(B)の選択が重要である。すなわち、特に反応性を促進する効果が高い触媒として、上記の亜鉛を含む化合物とイミダゾール化合物とを含有するものを選択し、これによって、上述した性能を有する硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0016】
また、エステル交換触媒(B)の選択に加えて、更に、樹脂成分(A)においても、硬化反応性を生じやすい樹脂組成を選択し、これらを適宜組み合わせることによって、より低温での硬化を実現し得る硬化性樹脂組成物としてもよい。
【0017】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物を得る上で重要となる、エステル交換触媒(B)の選定及び樹脂組成の選定について、以下、それぞれ詳述する。
【0018】
(エステル交換触媒(B))
本発明の硬化性樹脂組成物においては、上述の通り、エステル交換触媒(B)として、亜鉛を含む化合物とイミダゾール化合物とを組合せることが重要である。
【0019】
上記亜鉛を含む化合物としては、例えば、酢酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、酸化亜鉛などを挙げることができる。更に、亜鉛クラスター触媒(例えば、東京化成工業株式会社製のZnTAC24(商品名)等を使用することもできる。
更に、上述した化合物のうち、2種以上を併用して使用するものであってもよい。
【0020】
上記亜鉛を含む化合物としては、塩化合物が特に好ましく、アニオン成分として、亜鉛アセチルアセトネートを使用すると、同種金属化合物よりも優れたエステル交換能が得られる傾向がある点で好ましい。
【0021】
また、酸化亜鉛を用いる場合には、アセチルアセトンに分散させたものを用いるようにすることが好適である。酸化亜鉛をアセチルアセトンに分散させることで、亜鉛アセチルアセトネートが生成すると考えられる。
上記酸化亜鉛とアセチルアセトンとは、1:0.5~1:10(重量比)の割合で含有することが好ましい。このような割合で配合することで、特に好適な結果を得ることができる。
上記下限は、1:0.8であることがより好ましく、1:1であることが更に好ましい。上記上限は、1:5であることがより好ましく、1:3であることが更に好ましい。
【0022】
上記亜鉛を含む化合物と共に併用するイミダゾール化合物としては、下記一般式で表される化合物が好適である。
【化2】
(式中、R
1は枝分かれ構造もしくは環構造を有していてもよい炭素数10以下のアルキル基、アルケニル基または芳香族置換基であり、水酸基、アミノ基、カルボニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、エーテル基及びニトロ基からなる群から選択される少なくとも1つを有していてもよい。R
2~R
4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数10以下のアルキル基、アルケニル基または芳香族置換基であり、水酸基、アミノ基、カルボニル基、シアノ基、エステル基、アミド基、エーテル基及びニトロ基からなる群から選択される少なくとも1つを有していてもよい。)
【0023】
上記一般式で表される化合物として、具体的には、1-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、1-プロピルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール、1-アリルイミダゾール、1-アセチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、1-ベンジルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、メトロニダゾール、1-メチルベンズイミダゾール等が挙げられる。
中でも、1-メチルイミダゾールが、製造コストの点で好ましい。
【0024】
また、上記一般式で表される化合物として、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチル-イミダゾール、ベンズイミダゾール等のイミダゾール類と、(メタ)アクリル酸エステルとの付加反応によって得られる化合物が挙げられる。
【0025】
上記付加反応に用いる(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、アクリル酸メチルが反応性の点で好ましい。
また、上記イミダゾール類のうち、イミダゾール、2-メチルイミダゾールが、反応性の点で好ましい。
【0026】
上記化合物の製造は、公知の製造方法により行えばよく、上記のようなイミダゾール類と、(メタ)アクリル酸エステルとは、それぞれ単独または互いに混合して使用すればよい。例えば、上記のようなイミダゾール類と、(メタ)アクリル酸エステルとを混合し、30~90℃に加熱するようにしてもよい。また、イミダゾールを、場合によっては溶剤の共用下に、30~90℃に加熱し、前記温度で(メタ)アクリル酸エステルを徐々に滴下するようにしてもよい。
この反応において、反応性アミン水素原子および二重結合物の量比は、当量であればよい。
【0027】
また、本発明において使用するイミダゾール化合物の分子量は、例えば、500以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましい。上記分子量の範囲内のイミダゾール化合物であれば、高い触媒活性が得られる。
また、イミダゾール化合物の分子量は、80以上であることが好ましい。
なお、イミダゾール化合物は、単量体であり、組成を分析することで分子量は算出される。
【0028】
本発明は、エステル交換反応の触媒作用が向上することで、エステル交換反応をより低温で行うことができるようになる。よって、エネルギー効率を改善することができる。更に、耐熱性の低い化合物のエステル交換反応を行う場合にも使用することができる。
【0029】
また、上記エステル交換触媒(B)は、例えば、カルボキシル基が存在する系においても、反応を進行させられる点で好ましい。よって、水系硬化性樹脂組成物におけるエステル交換反応の触媒としても好適に使用することができる。
【0030】
また、上記エステル交換触媒(B)においては、塩基性化合物を添加した硬化性樹脂組成物とすることができる点でも好ましい。例えば、顔料分散剤等の添加剤としてアミン化合物が使用される場合や、更に、塗料を水性化する場合は、樹脂中にカルボン酸基、スルホン酸基等の酸基を導入し、これをアミン化合物等で中和して水溶化することが広く行われている。この場合、酸性触媒と併用することは困難であり、エステル交換を硬化反応とする硬化性樹脂組成物の水性化の妨げとなる問題であった。エステル交換触媒(B)は、酸触媒を使用しなくても良好な硬化反応を生じさせることができるものであるから、塩基性化合物を添加した硬化性樹脂組成物とすることができる点でも好ましい。
【0031】
また、本発明の硬化性樹脂組成物を溶剤系塗料組成物として使用する場合であっても、多層塗膜のうちの一部の層として水性塗料を組み合わせて使用する場合がある。この場合、多層塗膜を同時に加熱硬化する場合、多層塗膜を形成するその他の層からアミンやアンモニア等が発生する場合がある。このような場合であっても、良好な硬化を行うことができるという点で、上記触媒は好ましいものである。
【0032】
エステル交換触媒は、亜鉛を含む化合物(B-1)とイミダゾール化合物(B-2)とを、(B-1):(B-2)=100:1~1:100(重量比)の割合で含有することが好ましい。このような割合で配合することで、特に好適な結果を得ることができる。上記下限は、50:1であることがより好ましく、10:1であることが更に好ましい。上記上限は、1:50であることがより好ましく、1:10であることが更に好ましい。
【0033】
上記亜鉛を含む化合物(B-1)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01~50重量%の割合で含有させることが好ましい。
上記イミダゾール化合物(B-2)は、反応を生じさせる際の反応系中の反応に関与する化合物の量に対して、0.01~50重量%の割合で含有させることが好ましい。
【0034】
また、本発明においては、上記エステル交換触媒と共に、ジアザビシクロウンデセン(DBU)やジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性化合物を併用してもよい。
【0035】
(樹脂組成)
以下、本発明の硬化性樹脂組成物に使用することができる樹脂組成について詳述する。なお、硬化性樹脂組成物の組成は以下に例示したものに限定されない。さらに、本発明における硬化性樹脂組成物は、硬化させることによって、樹脂となるものも包含する。すなわち、組成物自体は低分子量化合物しか含まれていないものであっても、反応によって樹脂に変化するものを包含する。
【0036】
本発明において使用する樹脂成分(A)は、-COOR(Rは、炭素数50以下のアルキル基)、及び、水酸基を有するものである。
すなわち、本発明においては、任意の公知の化合物又は新規の化合物であってこれらの官能基を有するものを使用することができる。
このような樹脂成分としては、必要な官能基を含むアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂等の混合物であってもよい。更に、成分のうち少なくとも一部が低分子量化合物であってもよい。
【0037】
樹脂成分は、2以上の-COOR(Rは、炭素数50以下のアルキル基)基を有する化合物(A-1)、及び、水酸基を有する化合物(A-2)の混合物であってもよいし、樹脂成分は、1以上の-COOR(Rは、炭素数50以下のアルキル基)基及び1以上の水酸基を有する化合物(A-3)を一部又は全部とするものであってもよい。更に、(A-3)を必須とする樹脂組成物に加えて、(A-1)及び/又は(A-2)を含有するものであってもよい。
【0038】
本発明の樹脂におけるRは、炭素数50以下であれば、1級、2級、3級のいずれであってもよい。但し、1級又は2級であることがより好ましく、1級であることが最も好ましい。
より具体的には、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基、t-ブチル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。上記Rは、エステル交換反応中にアルコールとして生成され、揮散することが好ましいため、アルキル基としては炭素数が20以下のものであることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、硬化反応において揮発するアルコールの沸点が300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
【0039】
以下、本発明において使用できる樹脂、低分子量化合物を例示する。本発明は、以下の樹脂、低分子量化合物を使用するものに限定されるものではなく、以下に例示したもの及び上記官能基を有する化合物を適宜必要に応じて組み合わせて使用することができる。
【0040】
(1)不飽和結合の重合によって得られた重合体
アクリル樹脂のような、不飽和結合の重合によって得られた重合体は、塗料や接着剤等の熱硬化性樹脂の分野において汎用される樹脂であり、水酸基やアルキルエステル基を有する単量体を使用すれば、使用した単量体の割合で樹脂中にこれらの官能基が存在するものとなる。このため、樹脂中の官能基量のコントロールや樹脂物性の調整も容易であり、本発明の目的に容易に使用することができる。
特に、水酸基・アルキルエステル基を導入する場合、以下のような単量体(1-1)、(1-2)によって導入することができる。
【0041】
(1-1)水酸基含有単量体
水酸基含有単量体としては、特に限定されず、以下のものを挙げることができる。
2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルのような、種々の水酸基含有ビニルエーテル類;またはこれら上掲の各種のビニルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、3-ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アリルエーテル、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アリルエーテルもしくは6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテルのような、種々の水酸基含有アリルエーテル;またはこれら上掲の各種のアリルエーテルと、ε-カプロラクトンとの付加反応生成物;
あるいは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートもしくはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートのような、種々の水酸基含有(メタ)アクリレート類;またはこれら上掲の各種の(メタ)アクリレートと、ε-カプロラクトンの付加反応主成分;
N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミドのような、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドなどである。
【0042】
また、単量体としての水酸基含有単量体は、直接水酸基を有するものではなく、分子数5以上の連結鎖を介して水酸基を有するものとした場合には、水酸基が樹脂中で動きやすくなるため、反応を生じやすいという点で好ましい。
【0043】
(1-2)アルキルエステル基含有単量体
上記アルキルエステル基含有単量体としては、非常に多くの種類のアルキルエステル基及び重合性不飽和結合を有する単量体が知られているが、典型的には、下記一般式で表される化合物を挙げることができる。
【0044】
(1-2-a)
下記一般式(1)で表される化合物
【化3】
(式中、R
4,R
5,R
6は、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基を表す
R
7は、炭素数50以下の炭化水素基を表す)
【0045】
このような一般式(1)で表される化合物は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸等の公知の不飽和カルボン酸のエステル誘導体を挙げることができる。
【0046】
上記一般式(1)で表されるアルキルエステル基及び重合性不飽和結合を有する単量体として最も代表的なものは、(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0047】
上記t-ブチル(メタ)アクリレートは、3級アルキルのエステルであることから、エステル交換反応速度が速く、このため硬化反応が効率よく進行する。このため、1級アルキルエステルや2級アルキルエステルよりも架橋反応性に優れ、本発明の目的を達成するエステル基を供与する上で非常に好ましい原料である。
【0048】
(1-2-b)
下記一般式(4)で表される化合物
【化4】
n
1:1~10
(式中、R
4、R
5,R
6は、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R
7-[COOR
8]n
1で表される構造。
R
7は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
R
8は、炭素数50以下のアルキル基。
上記一般式(4)で表される化合物は、R
7-[COOR
8]n
1基が下記一般式(4-1)のラクトン構造であってもよい。)
【0049】
【化5】
(Rxは、分岐鎖を有していてもよい炭素数2~10の炭化水素基)
【0050】
上記一般式(4)で表される単量体を使用して得られる重合体は、エステル交換反応性において特に優れるものとすることができる。このため、硬化開始温度が130℃以下であり、150℃30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上という樹脂組成物を得る上では、特に好ましいものである。
【0051】
上記一般式(4)で表される単量体は、R8が1級又は2級アルキルエステルを有するものであることがより好ましい。このような単量体に由来する1級又は2級アルキルエステル基は、水酸基との反応を生じやすく、このため本発明の目的を充分に達成することができる。
【0052】
このような化合物は、不飽和結合による重合反応によって重合体を得ることができる。このようにして得られた重合体は、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化型樹脂組成物に使用した場合、不飽和結合の重合に基づいて形成された主鎖と、アルキルエステル基とが連結基を介して離れて存在している。このため、アルキルエステル基が比較的自由に動くことができる。このため、アルキルエステル基と水酸基とが近づきやすくなり、エステル交換の反応性が向上することが本発明者らによって見いだされた。このようにエステル交換反応の反応性が向上することで、短時間硬化や硬化温度の低下を実現することができ、エステル交換反応による熱硬化型樹脂組成物の有用性を高めることができる。
【0053】
上記アルキルエステル基としては特に限定されず、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。なお、アルキル基は炭素数50以下のものとすることが好ましい。上記アルキル基は、エステル交換反応中にアルコールとして生成され、揮散することが好ましいため、アルキル基としては炭素数が20以下のものであることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、硬化反応において揮発するアルコールの沸点が300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
【0054】
上記アルキルエステル基におけるアルキル基(すなわち、上記一般式(4)におけるR8)は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0055】
また、上記アルキルエステル基がラクトン基となる場合も本発明に包含される。このようなラクトン基のエステル基も本発明のエステル交換反応を生じることができ、硬化反応に利用することができる。このような化合物は上記(4-1)の化学構造を有するものである。
【0056】
上記一般式(4)で表される構造としてより具体的には、例えば、
【0057】
【化6】
n
2:1~10
(式中、R
9は、H又はメチル基。
R
10は、主鎖の原子数が48以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。
R
11は、炭素数50以下のアルキル基。)
で表されるものが例示できる。このような化合物は(メタ)アクリル酸の誘導体であり、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を原料として使用する公知の合成方法によって得ることができる。
【0058】
上記R10の主鎖の原子数は、40以下であることがより好ましく、30以下であることが更に好ましく、20以下であることが更に好ましい。R10の主鎖に含まれてもよい原子としては特に限定されず、炭素原子のほかに酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等を有するものであってもよい。更に具体的には、R10の主鎖中には、アルキル基のほかに、エーテル基、エステル基、アミノ基、アミド基、チオエーテル基、スルホン酸エステル基、チオエステル基、シロキサン基等を有するものであってもよい。
【0059】
上記一般式(5)で表される構造として更に具体的には、例えば、下記一般式(12)で表される化合物等を挙げることができる。
【0060】
【化7】
(式中、R
20は、炭素数1~50のアルキル基。
R
21は、主鎖の原子数が44以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基及び/又はアミド基を有していてもよく、側鎖を有していてもよいアルキレン基。
R
22は、H又はメチル基。
R
23は、炭素数50以下のアルキル基。
R
24は、H又はメチル基。
n
7は、0又は1。
n
8は、1又は2。)
【0061】
上記一般式(12)で表される化合物は、分子中に不飽和結合を有するマロン酸エステルやアセト酢酸エステル等の活性アニオンを生じる化合物と、アルキルエステル基を有する不飽和化合物との反応によって合成された化合物である。
【0062】
すなわち、マロン酸エステルやアセト酢酸エステルは、カルボキシ炭素に挟まれたメチレン基を有しており、このメチレン基はアニオン化されやすく、アニオン反応を容易に生じるものとして広く知られている。このようなマロン酸エステルやアセト酢酸エステルのアルキル基中に不飽和結合を有する化合物(例えば、マロン酸やアセト酢酸と、以下で「水酸基含有単量体」として詳述する水酸基を有する不飽和単量体とのエステル化合物)を、不飽和基を有するアルキルエステル化合物と反応させることによって、不飽和基とアルキルエステル基の両方を有する化合物を合成することができる。
【0063】
このような構造を有する化合物は、広く汎用される原料を用いてアルキルエステル基のみを容易に変更でき、結果、硬化反応性を容易に調整できる。また、活性メチレン基への反応率を変えることでも硬化反応性を調整できるという点で特に好ましいものである。
【0064】
上記反応で使用する「不飽和基を有するアルキルエステル化合物」として使用できる化合物は特に限定されず、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、メチレンマロン酸アルキルエステル、不飽和基を有するラクトン化合物(例えば、γ-クロトノラクトン、5,6-ジヒドロ-2H-ピラン-2-オン)等を使用することができる。
【0065】
当該反応は、塩基性条件下で行うことができ、例えば、アルカリ金属塩とクラウンテーテル存在下での有機溶媒中での反応等によって行うことができる。
このような合成反応の一例を以下に示す。
【0066】
【0067】
また、上記一般式(4)で表されるアルキルエステル化合物は、この化合物に対応したカルボン酸のエステル化によって得ることもできる。
すなわち、下記一般式(4-2)で表されるような化合物は、上記一般式(4)で表されるアルキルエステル化合物に対応したカルボン酸である。
【0068】
【化9】
n
1:1~10
(式中、R
4、R
5,R
6は、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R
7-[COOH]n
1で表される構造。
R
7は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。)
【0069】
上記一般式(4-2)で表される化合物として、公知の化合物が存在している。このような公知の化合物を通常のエステル化反応(例えば、目的とするアルキルエステルのアルキル基に対応したアルコールとの反応)を行うことによって、本発明において用いる不飽和基含有エステル化合物とすることもできる。
【0070】
(1-2-b-X)
上記一般式(4)で表される化合物は、下記一般式(31)で表される官能基及び不飽和基を有する化合物であってもよい。
【0071】
【0072】
n=0~20
R1は、炭素数50以下のアルキル基。
R3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
【0073】
すなわち、一般式(4)で表される化合物において、COOR8基が上記一般式(31)で表されるような構造を有するものであってもよい。
【0074】
上記一般式(31)で表されるエステル基は、理由は不明であるが、エステル交換反応の反応性が高い。このため、当該官能基を有するエステル化合物を樹脂成分の一部又は全部として使用することで、従来以上に優れた硬化性能を有する熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
このため、硬化開始温度が130℃以下であり、150℃30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上を満たす熱硬化性樹脂組成物を得るための樹脂として好適に使用することができる。
【0075】
(一般式(31)の構造について)
上記一般式(31)の構造は、α置換カルボン酸エステル骨格を基本とするものである。
一般式(31)において、nは0~20である。
nの下限は、0であることがより好ましい。nの上限は5であることがより好ましい。
更に、上記一般式(31)においてnの値が異なる複数の成分の混合物であってもよい。この場合nの平均値navは、0~5であることが好ましい。navの下限は、1であることがより好ましい。navの上限は3であることがより好ましい。navの測定は、NMR分析によって行うことができる。さらに、nの値についてもNMR分析によって測定することができる。
【0076】
上記一般式(31)において、R1としては炭素数50以下の任意のアルキル基を使用することができ、1級、2級、3級のいずれであってもよい。
【0077】
上記アルキルエステル基におけるアルキル基(すなわち、上記一般式におけるR1)は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0078】
上記アルキルエステル基として具体的には、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基、t-ブチルアルキル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。
【0079】
上記官能基(31)を有する化合物は、目的とする化合物の構造に対応したカルボン酸又はカルボン酸塩化合物に、下記一般式(32)
【0080】
【0081】
(Xは、ハロゲン又は水酸基を表す)
の構造を有するカルボニル基のα位に活性基Xが導入されたエステル化合物を、反応させることで得ることができる。これを一般式で表すと以下のようになる。
【0082】
【0083】
上記一般式において、一般式(33)で表される原料として使用することができる化合物は、上述した反応を生じることができるカルボン酸又はカルボン酸誘導体であれば任意のカルボン酸に対して行うことができる。カルボン酸誘導体としては、YがOM(カルボン酸塩)、OC=OR(酸無水物)、Cl(酸塩化物)等を挙げることができる。上記Y=OMのカルボン酸塩である場合、カルボン酸塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、亜鉛塩等を挙げることができる。なお、重合体の単量体として使用する場合は、不飽和基を有する化合物を一般式(33)で表される化合物として使用することができる。
【0084】
上記一般式(32)で表される化合物としては、目的とする一般式(31)で表される構造に対応した骨格を有する化合物とすることができる。
【0085】
また、上記一般式(32)で表される化合物は、その製造方法を特に限定されるものではない。上記一般式(32)で表される化合物のうち、n=0の化合物は、α位にXで表される活性基を有する化合物であり、各種αヒドロキシ酸、αハロゲン化カルボン酸を挙げることができる。具体的には、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸t-ブチル、2-クロロプロピオン酸メチル、グリコール酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等を挙げることができる。
【0086】
上記一般式(32)で表される化合物のうち、n=1以上の化合物については、以下にその製造方法の一例を示す。
なお、以下に示す内容は製造方法の一例であり、本発明においては以下の製造方法によって得られた化合物に限定されるものではない。
【0087】
例えば、α位にハロゲンを有するカルボン酸、その塩又はその誘導体と、α位にハロゲン又は水酸基を有するカルボン酸アルキルエステルとの反応によって得ることができる。これを一般式で表すと、下記のようなものとなる。
【0088】
【0089】
α位にハロゲンを有するカルボン酸、その塩又はその誘導体としては、カルボン酸のアルカリ金属塩(カリウム塩、ナトリウム塩等)、酸無水物、酸クロライド等を挙げることができる。上記一般式(34)であらわされる化合物として具体的には、クロロ酢酸ナトリウム等を使用することができる。
【0090】
α位にハロゲン又は水酸基を有するカルボン酸アルキルエステルとしては、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、乳酸、等のα置換カルボン酸化合物のアルキルエステルを挙げることができる。上記アルキルエステルのアルキル基は特に限定されず、炭素数1~50のアルキル基であればよい。
このようなアルキル基は、1~3級のいずれであってもよく、具体的にはメチル基、エチル基、ベンジル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等を挙げることができる。
【0091】
上記反応においては、X1とX2とを別種のものとすることが好ましい。これらを別種の官能基として反応性が相違するものとし、X1が未反応で残存するよう官能基の組み合わせを選択することが好ましい。具体的には、X1がクロロ基、X2がブロモ基の組み合わせが特に好ましい。
【0092】
また、上記反応において2種の原料の混合比を調整することで,nの値を調整することができる。上記反応においては、一般に相違するnを有する複数種の化合物の混合物として得られる。上記一般式(4)で表される化合物は精製することで、nが特定の値を有するもののみを使用してもよいし、nの値が相違する複数種の化合物の混合物であってもよい。
【0093】
上記一般式(31)で表される化学構造は、上記一般式(32)で表される化合物を、各種カルボン酸化合物と反応させることで形成させることができる。したがって、「カルボン酸基を有する化合物」として、不飽和基を有するカルボン酸を使用すれば、上記一般式(31)で表される官能基及び重合性不飽和基を有する化合物を得ることができる。
【0094】
具体的には例えば、上記一般式(32)で表される化合物を(メタ)アクリル酸と反応させると、下記一般式(36)で表される化合物が得られる。
【化14】
(式中、R
1は、炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、水素又はメチル基。
R
3は、水素又は炭素数10以下のアルキル基。
nは、1~20)
【0095】
上記一般式(36)で表される化合物におけるR1は、炭素数50以下であれば、1級、2級、3級のいずれであってもよい。但し、1級又は2級であることがより好ましく、1級であることが最も好ましい。
また、n=0であることがもっとも好ましい。
【0096】
(1-2-b-Y)
上記一般式(4)で表される化合物は、下記一般式(41)で表される官能基及び/又は下記一般式(42)で表される官能基、並びに、不飽和基を有する化合物であってもよい。
【0097】
【0098】
【化16】
(上記一般式(41)、一般式(42)のいずれにおいても、R
1は炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基)
【0099】
すなわち、一般式(4)で表される化合物において、COOR8基が上記一般式(41)で表されるような構造及び/又は一般式(42)で表されるような構造を有するものであってもよい。
このため、硬化開始温度が130℃以下であり、150℃30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上を満たす熱硬化性樹脂組成物を得るための樹脂として好適に使用することができる。
【0100】
上記アルキルエステル基におけるアルキル基(すなわち、上記一般式におけるR1)は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0101】
上記アルキル基として具体的には、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基、t-ブチルアルキル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。
【0102】
上記一般式(41)におけるR2基は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、i-プロピレン基、n-ブチレン基、またはベンゼン環、シクロへキシル環のような環状構造を含んでいてもよい(炭素鎖1~50)。なかでも、原料が安価であり、反応性において優れる点でエチレン基であることが特に好ましい。
【0103】
上記一般式(41)で表される構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(43)で表される化合物を挙げることができる。
【0104】
【化17】
(式中、R
1は炭素数50以下のアルキル基。
R
2は、一部に、酸素原子、窒素原子を含んでいてもよい炭素数50以下のアルキレン基。
R
3は、水素又はメチル基。)
【0105】
上記一般式(43)で表されるエステル化合物のうち、下記一般式(45)で表されるエステル化合物がより好ましい。
【0106】
【0107】
上記一般式(41)で表される官能基を有するエステル化合物の製造方法としては特に限定されないが、アルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物に対して、エポキシ化合物を反応させる方法を挙げることができる。これを一般式で表すと下記のような反応となる。
【0108】
【0109】
上記反応において、使用するアルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物は、例えば、下記反応のような、酸無水物とアルコールとの反応で製造することができる。
【0110】
【0111】
上記一般式(52)で表される反応における原料である酸無水物としては特に限定されず、例えば、環状構造を持つコハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、安息香酸無水物、イタコン酸無水物等の各種二塩基酸の無水物を使用することができる。上記一般式(52)で表される反応は周知の一般的な反応であり、その反応条件などは一般的な条件によって行うことができる。
【0112】
なお、上記一般式(51)で表される合成方法において使用されるアルキルエステル基とカルボキシル基とを有する化合物は、上記一般式(52)の方法で得られたものに限定されず、その他の方法で得られたものであっても差し支えない。
【0113】
上記一般式(51)で表される合成方法においては、エポキシ化合物を必須成分として使用する。上記エポキシ化合物は、不飽和二重結合及びエポキシ基を有するものであれば、特に限定されず、任意のものを使用することができる。
【0114】
上述した反応で使用することができるエポキシ化合物としては、公知の任意のものを挙げることができ、例えば、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0115】
例えば、エピクロルヒドリンを使用すれば、これをフェノール化合物、カルボン酸化合物、水酸基含有化合物等と反応させることで、種々の骨格を有する化合物に対してエポキシ基を導入することができる。このような任意のエポキシ化合物に対して、上述した反応を行うことで、上述した一般式(41)で表される官能基を有する化合物を得ることができる。このような反応の一般式を以下に示す。
【0116】
【0117】
上記カルボキシル基及び不飽和基を有するヒドロキシカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0118】
更に、上述したエポキシ化合物は、環状エポキシ化合物であってもよい。
すなわち、環状エポキシ化合物をエポキシ化合物として使用した場合、下記反応によって、一般式(42)で表される構造を有する化合物を得ることができる。
【0119】
【0120】
上述した一般式に使用することができる脂環式エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、3´,4´-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等を挙げることができる。
【0121】
上述した一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される化合物、並びに、不飽和基を有する化合物の具体的なものとしては、以下の一般式で表される化合物などを挙げることができる。
【0122】
【0123】
以上に例示した方法で合成することができる一般式(4)で表される化合物の具体的な化学構造の例を以下に示す。なお、本発明は以下で例示する化合物に限定されるものではない。
【0124】
【化24】
(上記一般式中、Rは、炭素数50以下のアルキル基を表す)
【0125】
上記一般式で表される化合物においても、一般式におけるRは、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0126】
(1-3)その他の単量体
本発明において使用される重合体は、上記(1-1)、(1-2)に示した単量体のみからなるホモポリマー、共重合体とすることもできるし、その他の単量体を使用した共重合体とすることもできる。
上記重合体において使用可能なその他のモノマーとしては特に限定されず、重合可能な不飽和基を有する単量体であれば任意のものを使用することができる。使用できる単量体を以下に例示する。
【0127】
エチレン、プロピレンもしくはブテン-1のような、種々のα-オレフィン類;
塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンのような、フルオロオレフィンを除く、種々のハロゲン化オレフィン類;
スチレン、α-メチルスチレンもしくはビニルトルエンのような、種々の芳香族ビニル化合物;
N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはN-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのような、種々のアミノ基含有アミド系不飽和単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートのような、種々のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;
tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アジリジニルエチル(メタ)アクリレート、ピロリジニルエチル(メタ)アクリレートもしくはピペリジニルエチル(メタ)アクリレートのような、種々のアミノ基含有単量体;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸もしくはフマル酸のような、種々のカルボキシル基含有単量体類;
グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アリルグリシジルエーテルのような、種々のエポキシ基含有単量体;
マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸のような、各種のα、β-不飽和ジカルボン酸と、炭素数が1~18である一価アルコールとのモノ-ないしはジエステル類;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、メチルジエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくはγ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランのような、種々の加水分解性シリル基を含有する単量体;
ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレンもしくは、ヘキサフルオロプロピレンのような、種々のふっ素含有α-オレフィン類;またはトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテルもしくはヘプタフルオロプロピルトリフルオロビニルエーテルのような、各種のパーフルオロアルキル・パーフルオロビニルエーテルないしは(パー)フルオロアルキルビニルエーテル(ただし、アルキル基の炭素数は1~18の範囲内であるものとする。)などのような種々のフッ素原子含有単量体;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、n-ペンチルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテルもしくはフェニルエチルビニルエーテルのような、種々のアルキルビニルエーテルないしは置換アルキルビニルエーテル類;
シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルもしくはメチルシクロヘキシルビニルエーテルのような、種々のシクロアルキルビニルエーテル類;ビニル-2,2-ジメチルプロパノエート、ビニル-2,2-ジメチルブタノエート、ビニル-2,2-ジメチルペンタノエート、ビニル-2,2-ジメチルヘキサノエート、ビニル-2-エチル-2-メチルブタノエート、ビニル-2-エチル-2-メチルペンタノエート、ビニル-3-クロロ-2,2-ジメチルプロパノエートなどをはじめ、さらには、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニルもしくはラウリン酸ビニル、C9である分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C10である分岐脂肪族カルボン酸ビニル、C11である分岐脂肪族カルボン酸ビニルまたはステアリン酸ビニルのような、種々の脂肪族カルボン酸ビニル;あるいはシクロヘキサンカルボン酸ビニル、メチルシクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルもしくはp-tert-ブチル安息香酸ビニルのような、環状構造を有するカルボン酸のビニルエステル類などを挙げることができる。
【0128】
本発明においては、上述した(1-1)~(1-3)の各種単量体を必要に応じて組み合わせ、重合させることによって、アルキルエステル基と水酸基の両方を有する化合物、アルキルエステル基を有する化合物、水酸基を有する化合物とすることができる。更に、水溶化するために必要とされる上述した官能基も、目的に応じて必要な割合で組み合わせて樹脂中に導入することができる。
【0129】
上記重合体は、その製造方法を特に限定されるものではなく、公知の方法により重合することによって製造することができる。より具体的には、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法、水溶液重合法、懸濁重合法、UV硬化法等の重合方法を挙げることができる。
【0130】
また有機溶媒中での溶液重合を行った場合、その後、公知の操作を行って水性化することによって、本発明の熱硬化性樹脂組成物に使用できる形態としたものであってもよい。
【0131】
また、上述した単量体を含む組成物を重合させることによって得られた重合体の側鎖官能基を反応させることによって、側鎖に水酸基及び/又はアルキルエステル基を導入したものであってもよい。側鎖への反応としては特に限定されず、エステル交換、イシアネートとの反応、エポキシとの反応、シランとの反応、メラミン樹脂との反応、付加反応、加水分解、脱水縮合、置換反応等を挙げることができる。
【0132】
上記重合体の分子量は特に限定されるものではなく、例えば、重量平均分子量が3,000~1,000,000とすることができる。上記重量平均分子量の上限は、300,000であることがより好ましく、100,000であることが更に好ましく、50,000であることが更に好ましい。上記重量平均分子量の下限は、3,000であることがより好ましく、4,000であることが更に好ましい。
重量平均分子量が通常5,000~100,000、好ましくは5,000~50,000の範囲内の水溶性アクリル樹脂、或いは重量平均分子量が50,000以上、好ましくは100,000以上のアクリル樹脂エマルションの分散質であるアクリル樹脂粒子を挙げることができる。
水性アクリル樹脂は、水酸基を含有することが望ましく、水分散性又は他成分との相溶性、形成される塗膜の硬化性等の観点から、一般に20~200mgKOH/g、特に20~150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。また、水性アクリル樹脂は、一般に1~100mgKOH/g、特に10~70mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0133】
さらに、アルキルエステル基は、各単量体の混合割合として5~95重量%含まれることが好ましい。
【0134】
(2)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物が挙げられる。上記酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等、並びにそれらの無水物及びエステル化物を挙げることができる。
【0135】
また、ポリエステル樹脂としては、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等のα-オレフィンエポキシド、カージュラE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物等をポリエステル樹脂の酸基と反応させたものであってもよい。
【0136】
また、水性ポリエステル樹脂は、ウレタン変性されたものであってもよい。
【0137】
該ポリエステル樹脂は、2,000~100,000、好ましくは3,000~30,000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。かかるポリエステル樹脂の重量平均分子量は、上記アクリル樹脂の重量平均分子量と同様の方法にて測定することができる。
【0138】
上記脂肪族多塩基酸並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、上記脂肪族化合物の酸無水物及び上記脂肪族化合物のエステル化物、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;上記脂肪族多価カルボン酸の無水物;上記脂肪族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物であることが好ましい。
【0139】
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基とを有する化合物、上記化合物の酸無水物及び上記化合物のエステル化物が挙げられる。脂環式構造は、主として4~6員環構造である。上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;上記脂環族多価カルボン酸の無水物;上記脂環族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0140】
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物が好ましく、そして1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物がより好ましい。
【0141】
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、上記芳香族化合物の酸無水物及び上記芳香族化合物のエステル化物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;上記芳香族多価カルボン酸の無水物;上記芳香族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、及び無水トリメリット酸が好ましい。
【0142】
また、上記酸成分として、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0143】
上記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;上記3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0144】
また、上記アルコール成分として、上記多価アルコール以外のアルコール成分、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXIONSpecialtyChemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0145】
ポリエステルポリオールは、特に限定されず、通常の方法に従って製造されうる。例えば、上記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、約150~約250℃で、約5~約10時間加熱し、上記酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応を実施することにより、ポリエステルポリオールを製造することができる。
【0146】
上記ポリエステル樹脂のカルボキシル基は、必要に応じて前述の塩基性物質を用いて中和することができる。
【0147】
水性ポリエステル樹脂は、水酸基を含有することが望ましく、水分散性又は他成分との相溶性、形成される塗膜の硬化性等の観点から、一般に20~200mgKOH/g、特に20~150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。また、水性ポリエステル樹脂は、一般に1~100mgKOH/g、特に10~70mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
【0148】
(3)エステル化合物
本発明において使用される樹脂成分(A)としては、アルキルエステル基を有するエステル化合物を使用することもできる。上記エステル化合物としては、例えば、以下に例示したものを挙げることができる。
【0149】
(3-1)(活性メチレン基を有する化合物と、ビニル基との付加反応によって得られる化合物)
下記一般式(61)で表される活性メチレン基を有する化合物は、ビニル基との付加反応を生じる。
【0150】
【化25】
(式中、R
14は、炭素数50以下のアルキル基を表す。
Xは、OR
14基又は炭素数5以下の炭化水素基を表す)
【0151】
上記アルキルエステル基はその構造を特に限定されるものではないが、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。
【0152】
このような活性メチレン基を有する化合物として具体的には、マロン酸エステル及びアセト酢酸エステル等を挙げることができる。これらの化合物をビニル化合物に付加させて得られた化合物を使用することができる。
【0153】
活性メチレン基を有する化合物は、マイケル付加反応によって二重結合に付加することができる。このような活性メチレン基を有する化合物による一般的なマイケル付加反応を下記式で示す。
【0154】
【0155】
このような反応によって得られた化合物は、一般式(61)で表される構造を有するものであり、これは2以上のアルキルエステル基を有する化合物であることから、本発明の目的において特に好適に使用することができる。特に、上記一般式のビニル化合物として、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を使用した場合は、
【0156】
【化27】
との反応を生じることとなる。
上記一般式中、R
14は、炭素数50以下のアルキル基を示す。
R
20は、水素又はメチル基を示す。
R
19は、特に限定されず、目的に応じて任意の官能基とすることができる。
このような反応によって得られたエステル化合物は、
【0157】
【化28】
の構造で表される構成単位を分子中に有することとなる。
【0158】
上述した反応において、原料として、2以上の不飽和結合を有するアクリル酸誘導体を使用することで、上述した一般式(64)で表される構造を分子中に2以上有するエステル化合物とすることもできる。
すなわち、当該官能基を有する、
【0159】
【化29】
の一般式で表される構造を有する化合物を本発明において好適に使用することができる。このような化合物は、エステル交換反応性が高く、多くのCOOR基を分子中に有するために良好な硬化性を得ることができる点で好ましいものである。
上記一般式におけるnは、2~12であることが最も好ましい。また、Yは、当該化合物の分子量が3000以下となるような構造であれば特に限定されず、水酸基、エステル基、エーテル基、等の任意の官能基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0160】
活性メチレン基を有する化合物エステルに由来する構造を有する化合物は、多く知られているが、上記構造を有する化合物は、マロン酸エステルとビニル基の付加反応が進行し易く、合成が容易であり、出発原料を選ぶことでエステル基の数を調整できるため、硬化性能や硬化後の樹脂の性能を容易に調整できるという点で特に好ましい。
具体的には、マロン酸ジメチル、マロン酸ジn-ブチル等を好適に使用することができる。
【0161】
このような化合物は、各種の1以上の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体を原料として、活性メチレン基を有する化合物とのマイケル付加反応を行うことで得られるものである。上記「1以上の不飽和結合を有する(メタ)アクリル酸誘導体」としては特に限定されるものではないが、例えば、以下のようなものを挙げることができる。
【0162】
官能基数1の(メタ)アクリレートの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0163】
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;ライトアクリレートBP-4EA、BP-10EA)ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA、BP-10PA等)を含む。なかでも、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA)、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)等を好ましく用いることができる。
【0164】
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
【0165】
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
【0166】
官能基数4以上の(メタ)アクリレートの例は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0167】
上述したような化合物(3)に該当する化合物の具体例を以下に示す。
【0168】
【化30】
式中Rは、炭素数50以下のアルキル基を表す。
【0169】
上記化合物(3)は、架橋点となるアルキルエステルが分子中に3以上存在するものであることが好ましい。すなわち、分子中のアルキルエステル基の数が多いほど、硬化後の樹脂の架橋密度が高いものとなるため、硬化物の硬度が良好となり、優れた物性の硬化物が得られる点で好ましい。
アルキルエステルは、分子中に5以上あることがより好ましい。
【0170】
このような化合物の水性媒体への溶解又は分散は、水溶性溶剤に希釈して加える方法や、乳化剤を使用した乳化、分散によって行うことができる。この場合、併用するその他の成分と混合した後で、乳化剤によって乳化分散する方法や、上記化合物のみを乳化剤によって乳化分散させた分散体を調製し、これをその他の成分と混合する方法等を挙げることができる。また、乳化分散に使用する設備としては、ホモミキサー、高圧ホモジナイザー、ディスパーミキサー、リボンミキサー、プロペラミキサー、高圧乳化などの方法がある。
【0171】
(3-2)多官能カルボン酸のアルキルエステル化物
多官能カルボン酸と、アルコールとの反応によって得られる化合物も本発明のアルキルエステル基を有する化合物として使用することができる。このような反応は、下記一般式で表すことができる。
【0172】
【0173】
なお、同様の反応をカルボン酸誘導体に対して行うことで得られたアルキルエステル基を有する化合物も同様に本発明の目的に使用することができる。
【0174】
各種の多官能カルボン酸は、ポリエステル原料、ポリアミド原料、中和剤、合成原料その他の多くの用途において幅広く安価に提供される汎用原料である。このような多官能カルボン酸を公知の方法によってアルキルエステル化した化合物も本発明において使用することができる。
【0175】
このような化合物を、アルキルエステル基を有する化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。また、エステル化することで有機溶剤への相溶性が良くなり好適に使用することができるという点で好ましい。
【0176】
ここで使用する多官能カルボン酸としては特に限定されず、例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;
ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;
等を挙げることができる。
【0177】
本発明においては、上述した多官能カルボン酸のアルキルエステル化の方法は特に限定されるものではなく、アルコールとの脱水縮合等の公知の方法を適用することができる。また、多官能カルボン酸の誘導体をアルキルエステル化する方法も挙げることができる。
【0178】
上記多官能カルボン酸のアルキルエステル化物は、分子量が10,000以下であることが好ましい。このようなものとすることで、分子が動きやすく硬化が進行する点で好ましいものである。分子量は6,000以下、4,000以下、2,000以下といった、より低分子量のものとすることもできる。
【0179】
(3-3)一般式(31)で表される官能基を2以上有する化合物
上述した一般式(31)で表される官能基を2以上有する化合物も本発明において使用することができる。
【0180】
一般式(31)で表される官能基については、詳細に上述した。このような官能基は、一般式(32)で表される化合物を、カルボン酸と反応させることによって形成される。したがって、各種の公知のポリカルボン酸を上述した一般式(32)で表される化合物と反応させると、上記一般式(31)で表される官能基を2以上有する化合物を得ることができる。さらに、水酸基を有するヒドロキシカルボン酸と反応させると、水酸基及び一般式(32)を有する化合物となり、これもまた、エステル交換による硬化反応を行う熱硬化性樹脂組成物の成分として使用することができる。
【0181】
上記化合物は、本発明の熱硬化性樹脂組成物において使用するには、2以上の官能基を有する化合物であることが好ましく、2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸、カルボキシル基及び水酸基とを有するヒドロキシカルボン酸等を使用することができる。
【0182】
各種のポリカルボン酸は、ポリエステル原料、ポリアミド原料、中和剤、合成原料その他の多くの用途において幅広く安価に提供される汎用原料である。このようなポリカルボン酸を公知の方法によって上述した一般式(32)で表される官能基に変換した化合物も本発明において使用することができる。
【0183】
このような化合物を一般式(32)で表される官能基を有する化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。また、エステル化することで有機溶剤への相溶性が良くなり好適に使用することができるという点で好ましい。
【0184】
ここで使用するポリカルボン酸としては特に限定されず、例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;
ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;
等を挙げることができる。
【0185】
上記ポリカルボン酸のカルボン酸基を上記一般式(31)で表される構造に置換した化合物は、分子量が10,000以下であることが好ましい。このようなものとすることで、分子が動きやすく硬化が進行する点で好ましいものである。分子量は6,000以下、4,000以下、2,000以下といった、より低分子量のものとすることもできる。
【0186】
なお、このような化合物の一例として、ポリカルボン酸としてクエン酸を使用して、上述した反応を行った場合の化合物の一般構造を以下に示す。
【0187】
【0188】
(3-4)一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を2以上有する化合物
一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物は、上述したような製造方法によって得ることができる。
このような官能基を2以上有する化合物や、このような官能基及び水酸基を有する化合物は、エステル交換反応を硬化反応とする樹脂組成物の成分として好適に使用することができる。
【0189】
一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物は、硬化性樹脂組成物における硬化性官能基として使用するものである。したがって、2以上の官能基を有する化合物であることが好ましい。より具体的には、上記一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を2以上有するものであってもよいし、上述した一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基で表される官能基に加えて、更に、水酸基等を有するものであってもよい。
【0190】
上述したように、各種エポキシ化合物に対して、一般式(51)で表される反応又は一般式(54)で表される反応を行うことによって、上記一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を導入することができる。
したがって、公知のエポキシ化合物に対して、上記一般式(54)で表される反応を行うことで得られた化合物も、本発明において使用することができる。
このような反応に使用することができるエポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族系多官能液状エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールの誘導体エポキシ樹脂、ナフタレン骨格又は脂環式骨格含有ノボラック系エポキシ樹脂等が挙げられ、オキシラン環がグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂などを挙げることができる。
上記エポキシ化合物は、1分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物であることが好ましい。
【0191】
更に、上述したようにカルボン酸又はその誘導体に対して一般式(53)で表される反応を行うことによって、エポキシ化合物を得ることができる。
そして、当該エポキシ化合物に対して、上記一般式(51)及び/又は一般式(54)で表される反応を行うことで、一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物を得ることができる。
したがって、各種のポリカルボン酸やヒドロキシカルボン酸に対して上述した反応を行うことによって、このような官能基を2以上有する化合物や、このような官能基及び水酸基を有する化合物を得ることができる。
【0192】
上記反応によって一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物とする際の原料とすることができるポリカルボン酸としては、特に限定されず例えば、炭素数が50以下のものを使用することができる。
より具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;
1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;
ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;等を挙げることができる。
【0193】
上記反応によって一般式(41)で表される官能基及び/又は一般式(42)で表される官能基を有する化合物とする際の原料とすることができるカルボキシル基及び水酸基を有するヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、クエン酸、乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸;
等を挙げることができる。
【0194】
このような化合物の具定例として、例えば、以下に表すような構造を有する化合物を挙げることができる。
【0195】
【0196】
(3-5)シアヌル酸系エステル化合物
本発明において使用されるアルキルエステル基を有するエステル化合物として、例えば、以下に例示したシアヌル酸系エステル化合物を挙げることができる。
【0197】
その1つは、下記一般式(71)で表されるイソシアヌル酸環を有するエステル化合物である。
【0198】
【化34】
(式中、R
1は、水素又はR
2-COOR
3で表される構造。
R
2は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい炭化水素基。
R
3は、炭素数50以下のアルキル基。)
【0199】
上記一般式(71)で表されるエステル化合物は、2又は3のアルキルエステル基を有するものであり、エステル交換反応性において特に優れるものとすることができる。このため、硬化開始温度が130℃以下であり、150℃30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上という樹脂組成物を得る上では、特に好ましいものである。
【0200】
上記一般式(71)で表される単量体は、R3が1級又は2級アルキルエステル基を有するものであることがより好ましい。このような単量体に由来する1級又は2級アルキルエステル基は、水酸基との反応を生じやすく、このため本発明の目的を充分に達成することができる。
【0201】
上記アルキルエステル基としては特に限定されず、メチルエステル基、エチルエステル基、ベンジルエステル基、n-プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基等の、公知のエステル基を有するものを使用することができる。なお、アルキル基は炭素数50以下のものとすることが好ましい。上記アルキル基は、エステル交換反応中にアルコールとして生成され、揮散することが好ましいため、アルキル基としては炭素数が20以下のものであることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、硬化反応において揮発するアルコールの沸点が300℃以下であることが好ましく、200℃以下であることが更に好ましい。
【0202】
上記一般式(71)で表されるエステル化合物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、その1つとして、シアヌル酸に対して、ハロゲン化カルボン酸エステルを反応させる方法を挙げることができる。これを一般式で表すと下記のような反応となる。
【0203】
【化35】
(式中、R
3は、炭素数50以下のアルキル基。
R
4は、炭素数50以下のアルキレン基。
Xは、ハロゲン元素)
【0204】
上述した反応で使用するハロゲン化カルボン酸エステルとしては、公知の任意のものを挙げることができ、例えば、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸プロピル、クロロ酢酸イソプロピル、2-クロロプロピオン酸メチル、2-クロロプロピオン酸エチル、2-クロロプロピオン酸プロピル、2-クロロプロピオン酸イソプロピル、2-クロロ酪酸メチル、2-クロロ酪酸エチル、2-クロロ酪酸プロピル、2-クロロ酪酸イソプロピル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸プロピル、ブロモ酢酸イソプロピル、2-ブロモプロピオン酸メチル、2-ブロモプロピオン酸エチル、2-ブロモプロピオン酸プロピル、2-ブロモプロピオン酸イソプロピル、2-ブロモ酪酸メチル、2-ブロモ酪酸エチル、2-ブロモ酪酸プロピル、2-ブロモ酪酸イソプロピル、ヨード酢酸エチル、ヨード酢酸プロピル、ヨード酢酸イソプロピル、2-ヨードプロピオン酸メチル、2-ヨードプロピオン酸エチル、2-ヨードプロピオン酸プロピル、2-ヨードプロピオン酸イソプロピル、2-ヨードブタン酸メチル、2-ヨードブタン酸エチル、2-ヨードブタン酸プロピル、2-ヨードブタン酸イソプロピル等が挙げられる。
上記反応は周知の一般的な反応であり、その反応条件などは一般的な条件によって行うことができる。
【0205】
また、上記一般式(71)で表されるエステル化合物の他の製造方法としては、イソシアヌル酸環を有するカルボン酸に対して、オルトギ酸エステルを反応させる方法を挙げることができる。これを一般式で表すと下記のような反応となる。
【0206】
【化36】
(式中、R
5は、水素又はR
4-COOHで表される構造。
R
4は、炭素数50以下のアルキレン基。
R
6は、水素又はR
4-COOR
3で表される構造。)
【0207】
上述した反応で使用するイソシアヌル酸環を有するカルボン酸としては、イソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)、イソシアヌル酸ビス(2-カルボキシエチル)等が挙げられる。
また、上述した反応で使用するオルトギ酸エステルとしては、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等が挙げられる。
上記反応は周知の一般的な反応であり、その反応条件などは一般的な条件によって行うことができる。
【0208】
上述した一般式(71)で表されるイソシアヌル酸環を有するエステル化合物の具体的な化学構造の例を以下に示す。なお、本発明は以下で例示する化合物に限定されるものではない。
【0209】
【0210】
本発明において使用されるシアヌル酸系エステル化合物として、上記の他に、例えば、以下に例示したシアヌル酸系エステル化合物を挙げることができる。
【0211】
【化38】
(式中、R
11は、炭素数50以下のアルキレン基。
R
12は、炭素数50以下のアルキル基。)
【0212】
上記一般式(72)で表されるエステル化合物も、エステル交換反応性において特に優れるものとすることができる。このため、硬化開始温度が130℃以下であり、150℃30分焼付という条件で硬化させたときのゲル分率が80%以上という樹脂組成物を得る上では、特に好ましいものである。
【0213】
上記一般式(72)で表されるエステル化合物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、シアヌル酸クロリドに対して、ヒドロキシカルボン酸エステルを反応させる方法を挙げることができる。これを一般式で表すと下記のような反応となる。
【0214】
【0215】
また、上述した反応で使用するヒドロキシ酸エステルとしては、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、ヒドロキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシプロピオン酸エチル、ヒドロキシプロピオン酸ブチル、ヒドロキシ酪酸メチル、ヒドロキシ酪酸エチル、ヒドロキシ酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
【0216】
各種のシアヌル酸系化合物は、本発明において使用した場合、低温硬化においても高架橋密度の優れた膜物性を示す塗膜が得られるという利点を有する。
このような化合物を、アルキルエステル基を有する化合物として使用すると、公知の方法で安価にエステル化することができ、比較的低分子量で多価エステル基を導入することができる。
【0217】
(4)低分子量ポリオール
また、分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物として低分子量ポリオール(具体的には分子量2,000以下)を使用してもよい。
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール等を挙げることができる。
【0218】
このような低分子量ポリオールは、汎用品として知られているものであり、安価で入手することができる。更に低分子ポリオールは水溶性が高く、水系での硬化を目的とする場合は架橋剤として好適に使用できる。
【0219】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低温で硬化可能であることを特徴とするものであるが、このような性能を有する樹脂組成物とするうえで、特に好ましい樹脂は、以下に示すものである。
一般式(12)、(31)、(64)で表わされる構造を有するものであり、特に一般式(31)の構造を有することが好ましい。
【0220】
本発明の硬化性組成物は、上述した樹脂成分に加えて、更に、塗料や接着剤の分野において一般的に使用されるその他の架橋剤を併用して使用するものであってもよい。使用できる架橋剤としては特に限定されず、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シラン化合物等を挙げることができる。また、ビニルエーテル、アニオン重合性単量体、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体等を併用するものであってもよい。これらの併用した架橋剤の反応を促進させるための硬化剤を併用するものであってもよい。
【0221】
なお、上述したその他架橋剤は必須ではなく、本発明の硬化性樹脂組成物はこれを含有しないものであっても、良好な硬化性を得ることができる点で好ましいものである。
【0222】
上記架橋剤がポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂である場合、樹脂成分(A)と架橋剤との合計量に対する配合量(すなわち、(架橋剤量)/(架橋剤量+樹脂成分量)が0.01~50重量%であることが好ましい。このような配合量の範囲であることで、エステル交換反応による硬化反応と他の硬化剤による硬化反応とを同時に生じさせるという点で好ましい。
上記下限は、0.01重量%であることがより好ましく、1重量%であることが更に好ましい。上記上限は、30重量%であることがより好ましく、20重量%であることが更に好ましい。
【0223】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性塗料、硬化性接着剤等の分野において好適に使用することができる。特に、常乾型の硬化性樹脂組成物として使用することもできる。
【0224】
熱硬化性塗料として使用する場合は、上述した各成分以外に、塗料分野において一般的に使用される添加剤を併用するものであってもよい。例えば、レベリング剤、消泡剤、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等、顔料分散剤、レオロジーコントロール剤、UV吸収剤、並びにそれらの任意の組み合わせを併用してもよい。
【0225】
顔料を使用する場合、樹脂成分の合計固形分100重量%を基準として、好ましくは合計で1~500重量%の範囲で含むことが好ましい。上記下限はより好ましくは3重量%であり、更に好ましくは5重量部である。上記上限はより好ましくは400重量%であり、更に好ましくは300重量%である。
【0226】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0227】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、硫酸バリウム及び/又はタルクが好ましく、そして硫酸バリウムがより好ましい。
【0228】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム及びリーフィング型アルミニウムが含まれる。
【0229】
上記着色顔料は、顔料分散樹脂により分散された状態で、硬化性樹脂組成物に配合されることが好ましい。着色顔料の量は、顔料の種類等によって変化しうるが、一般には、顔料分散樹脂中に含まれる樹脂成分の固形分100重量部に対して、好ましくは約0.1~約300重量部、そしてより好ましくは約1~約150重量部の範囲内である。
【0230】
上記硬化性塗料は、所望により、有機溶剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤、分散剤、色分かれ防止剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、基材湿潤剤、スリップ剤等の塗料用添加剤をさらに含有するものであってもよい。
【0231】
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、上記疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着する、上記疎水性部分同士が会合する等により増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニック(登録商標)ポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0232】
上記ポリアクリル酸系増粘剤は市販されており、例えば、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLASE-60」、「ACRYSOLTT-615」、「ACRYSOLRM-5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0233】
また、上記会合型増粘剤は市販されており、例えば、ADEKA社製の「UH-420」、「UH-450」、「UH-462」、「UH-472」、「UH-540」、「UH-752」、「UH-756VF」、「UH-814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLRM-8W」、「ACRYSOLRM-825」、「ACRYSOLRM-2020NPR」、「ACRYSOLRM-12W」、「ACRYSOLSCT-275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0234】
上記顔料分散樹脂としては、アクリル系顔料分散樹脂を使用することが好ましい。より具体的には、例えば、重合性不飽和モノマーを、親水性有機溶剤の存在下で、重合開始剤により重合することにより得られたアクリル樹脂を挙げることができる。
【0235】
上記重合性不飽和モノマーとしては、上述した樹脂の合成において例示した化合物を挙げることができ、適宜組み合わせて用いられうる。
上記顔料分散樹脂は、水に溶解するか、又は分散できる樹脂であることが好ましく、具体的には、好ましくは10~100mgKOH/g、そしてより好ましくは20~70mgKOH/gの水酸基価と、好ましくは10~80mgKOH/g、そしてより好ましくは20~60mgKOH/gの酸価とを有する。
【0236】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記樹脂及び顔料分散樹脂の固形分質量の合計を基準として、顔料分散樹脂を、固形分で、好ましくは5~70質量%、そしてより好ましくは7~61質量%含むことが好ましい。上記範囲は、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性と、本発明の着色塗料組成物を用いて形成される着色塗膜の仕上がり性、耐水性、中研ぎ性等との観点から好ましい。
【0237】
本発明の硬化性樹脂組成物は、水性組成物とすることもできる。水性とする方法は特に限定されず、上述した成分を使用して一般的な方法によって水性化することができる。水性化した場合でも、本発明のエステル交換触媒を使用することで好適にエステル交換反応を進行させることができる。
【0238】
上記硬化性樹脂組成物を適用することができる被塗物としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品、建築材料、家具、接着剤、フィルムやガラスのコーティング剤等、様々な例を挙げることができる。
【0239】
上記硬化性樹脂組成物は、大型構造物のため、塗膜を形成する際に加熱が困難である、船舶、橋梁、これら以外の大型構造物等の基材への適用が期待できる。
また、プラスチック製品など、焼付塗装等の加熱による樹脂硬化ができない製品に色付けしたい、光沢を出したい、高級感を出したいとき等の樹脂塗装にも好適で使用することができる。
【0240】
上記被塗物は、上記プラスチック材料、それから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望により、表面処理、プライマー塗装等がなされたものであってもよい。また、上記プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0241】
上記硬化性樹脂組成物の塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等が好ましい。塗装に際して、所望により、静電印加してもよい。上記塗装方法により、上記水性塗料組成物からウェット塗膜を形成することができる。
【0242】
上記ウェット塗膜は、80~140℃での低温硬化にも対応することができ、好ましくは約10~約60分間、そしてより好ましくは約15~約40分間加熱することにより硬化させることができる。
【0243】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ウェットオンウェットでの複層塗膜形成方法に使用することもできる。この場合、本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる塗料を塗装した後、硬化を行わない状態でその上に別の塗料組成物を塗装し、これらの2層の塗膜を同時に焼き付けることによって複層塗膜を形成する方法等を挙げることができる。また、このような塗装方法においては、3層以上の複層塗膜として、そのうち少なくとも1の層を本発明の硬化性樹脂組成物によって形成するものであってもよい。
【0244】
このような複層塗膜の形成に本発明の硬化性樹脂組成物を使用する場合、組み合わせて使用する塗料は、水系であってもよいし、溶媒系であってもよい。更に、その硬化系は、上述したようなエステル交換反応による硬化系であってもよいし、メラミン硬化、イソシアネート硬化等のその他の硬化系であってもよい。
【0245】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、塗料分野において使用する場合は平滑性や耐水性・耐酸性等の性能を有する充分な硬化性能が必要とされる。
一方、接着剤や粘着剤等の分野において使用する場合は、塗料において要求されるほどの高い硬化性能は必要とされない。本発明の硬化性樹脂組成物は、塗料として使用できるレベルのものとすることが可能であるが、このような水準に到達しない組成物であっても、接着剤や粘着剤等の分野においては使用できる場合がある。
【0246】
本発明の硬化型樹脂組成物を三次元架橋することによって硬化膜が得られる。
このような硬化膜は、塗料・接着剤として使用することができるような充分な性能を有したものである。
上記硬化膜は、上述した複層塗膜の形成方法によって形成された硬化膜も包含するものである。
【実施例】
【0247】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお文中、部は重量部を表す。
【0248】
合成例1
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)35部、メトキシカルボニルメチルメタクリレート30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート25部、スチレン10部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN5部を芳香族炭化水素(T-SOL100)20部に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコに芳香族炭化水素(T-SOL 100)80部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量9400、分散度1.80のポリマー溶液Aを得た。
【0249】
合成例2
n-ブチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)200部、メトキシカルボニルメチルメタクリレート150部、4-ヒドロキシブチルアクリレート25部、スチレン125部をモノマー混合液とし、開始剤として4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(富士フィルム和光純薬(株) V-501)15部、アデカリアソープSR-3025 60部(ADEKA(株))、イオン交換水140部を加え、ホモミキサーを用いて室温で1時間乳化後、イオン交換水を140部加え、モノマー乳化液を調整した。攪拌可能なフラスコにイオン交換水を440部及びモノマー乳化液の内50部を入れ、窒素封入しながら、残りのモノマー乳化液を滴下し重合を行った。この時の重合温度は75℃とした。滴下は3時間で行い、更に75℃で熟成を5時間行い、エマルションAを得た。
【0250】
合成例3
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)40部、4-ヒドロキシブチルアクリレート50部、スチレン10部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)5部を酢酸ブチルに溶解し、開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに酢酸ブチルを100部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、重量平均分子量は11,000、分散度は2.2のポリマー溶液Bを得た。
【0251】
合成例4
n-ブチルメタアクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)30部、メトキシカルボニルメチルメタクリレート30部、4-ヒドロキシブチルアクリレート25部、スチレン10部、メタクリル酸5部をモノマー混合液とし、開始剤としてAIBN2.5部をブチルグリコール20部に溶解し開始剤溶液とした。
撹拌可能なフラスコにブチルグリコール80部を入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下は2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Cを得た。
【0252】
合成例5
トリメチロールプロパントリアクリレート40部、マロン酸ジメチル55部、炭酸カリウム56部、18-クラウン-6エーテル1.5部、テトラヒドロフラン95部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Aを得た。
【0253】
合成例6
撹拌可能なフラスコにイソシアヌル酸トリス(2-カルボキシエチル)25部、メタノール100部、オルトギ酸トリメチル100部、パラトルエンスルホン酸0.8部を投入し、80℃で5時間反応させた。反応終了後、トルエン200部と水100部投入し水洗後、有機層を3%重曹水100部で一回、水100部で二回水洗した。得られた有機層を減圧下濃縮しエステル化合物Bを得た。
【0254】
なお、本実施例中、重量平均分子量、分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した面積比並びにポリスチレン換算分子量の値である。カラムはGPC KF-804L、溶剤はテトラヒドロフランを使用した。
【0255】
合成例7
2-メチルイミダゾール49部とアクリル酸メチル51部を混合し、60℃で2時間撹拌し、下記反応によるイミダゾール化合物Aを得た。
【化40】
【0256】
合成例8
2-メチルイミダゾール42部とアクリル酸2-ヒドロキシエチル58部を混合し、60℃で2時間撹拌し、下記反応によるイミダゾール化合物Bを得た。
【化41】
【0257】
実施例1~12、比較例1~4
表1に示した各成分を混合し、PETフィルム上にアプリケーターを用いてWETで400μmの塗膜を作成し、表中に記載の温度で30分乾燥させた。その後、22℃で72時間静置した後ゲル分率測定、鉛筆硬度、及び調整液にて剛体振り子試験を行った。
なお、表1において、DABCO(登録商標)は、トリエチレンジアミンである。
各評価は以下のように実施した。その結果を、表1、2に示す。
【0258】
ゲル分率は、実施例で得られた皮膜を、ソックスレーを用いてアセトン還流中で30分間溶解を行い、皮膜の残存重量%として測定した。
ゲル分率は0~40%を実用に耐えられないものとして×とした。
ゲル分率は40~60%を一定の硬化が認められるものとして△とした。
ゲル分率は60~80%を実用に耐えるものとして○とした。
ゲル分率は80~100%を性能が優れているものとして◎とした。
【0259】
鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4に準じ、硬化後の塗膜に対し、荷重750gで測定し、5回の試験中4回以上傷なしの評価となった結果を記載した。
【0260】
剛体振り子試験は、エーアンドディ社製剛体振り子試験器(型番 RPT-3000W)を用いて、昇温温度3℃/分で実施した。
振り子:FRB-100
膜厚(WET):100μm
【0261】
【0262】
【0263】
表1の結果より、本発明に係るエステル交換触媒(B)を用いることで、低温硬化反応を示す硬化性樹脂組成物が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0264】
本発明の硬化性樹脂組成物は、低温での硬化を必要とする分野において好適に使用できる硬化性樹脂組成物である。