(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F01P 1/02 20060101AFI20250213BHJP
F02F 1/04 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
F01P1/02 E
F02F1/04
(21)【出願番号】P 2024207661
(22)【出願日】2024-11-28
【審査請求日】2024-11-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日:2024年10月16日、17日、18日、19日 展示会名:2024国際航空宇宙展
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011199
【氏名又は名称】株式会社石川エナジーリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】石川 満
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直己
(72)【発明者】
【氏名】中 陽一
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193994(JP,A)
【文献】実開昭51-32309(JP,U)
【文献】特開2006-250128(JP,A)
【文献】特開昭63-227911(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02410164(EP,A2)
【文献】特開2007-2727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 1/02
F02F 1/04
F02B 75/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部にシリンダボアが構成されるエンジンブロックと、
前記シリンダボアの側面に接続し、その内部にバルブが配置されるバルブ配設孔と、
前記シリンダボアの側面に接続し、その内部にスパークプラグが配設されるプラグ配設孔と、
前記バルブ配設孔の近傍で、前記エンジンブロックを貫通する通気孔と、を具備
し、
前記通気孔は、バルブ通気孔を有し、
前記バルブ通気孔は、第1バルブ通気孔と、前記第1バルブ通気孔とは連通しない別体の前記通気孔である第2バルブ通気孔と、を有し、
前記第1バルブ通気孔は、前記バルブ配設孔と前記シリンダボアとの間において、前記エンジンブロックを貫通するように形成され、
前記第2バルブ通気孔は、前記バルブ配設孔と前記エンジンブロックの外面との間において、前記エンジンブロックを貫通するように形成されることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記バルブ通気孔の内部に突出部を形成することを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記バルブ配設孔を外側から囲む内側壁部と、前記内側壁部の外側に形成された外側壁部と、を有し、
前記第2バルブ通気孔は、前記内側壁部と前記外側壁部との間に形成されることを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記シリンダボアの中心軸に沿う方向を第1方向とし、
前記第1方向に直交する方向を第2方向とした場合、
前記第1方向における前記シリンダボアの略中央部から、前記第2方向に沿って連続して伸びる延出空間を更に具備し、
前記バルブ配設孔は前記延出空間の側面に接続するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、特に、空冷型のエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンは、空冷型エンジンと水冷型エンジンに大別できる。空冷型エンジンは、運転時のエンジンから発生する熱を、空気を介して外部に伝播させることで、エンジンの過熱を防止する。一方、水冷型エンジンは、エンジンの動作熱を水で吸熱し、吸熱後の水をラジエタにより大気に放熱させることで、エンジンの過熱を防止する。
【0003】
近年においては、空冷型エンジンよりも水冷型エンジンの方が効果的にエンジンを冷却できることから、水冷型エンジンが多用される傾向にある。
【0004】
一方、ドローンとも称される飛行装置においては、駆動源として空冷型エンジンが採用されることもある。空冷型エンジンが搭載されるドローンは、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したエンジンにおいては、エンジン全体としての構成およびその適用分野特有の観点から改善の余地があった。
【0007】
空冷型エンジンにおいては、熱媒体である空気の比熱が小さいことから、エンジンの放熱性の観点から課題があった。一方、水冷型エンジンは、ラジエタ、接続パイプ、ポンプ、冷却水等を必要とすることから、水冷型エンジン全体が大型となり重量が大きくなる課題があった。
【0008】
特に、エンジンがドローン等の飛行装置に採用された場合、ドローンは重量制限が厳しいことから、エンジンとして水冷型エンジンを採用すると、大型化等の課題が顕著となることが考えられる。
【0009】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、コンパクトであり且つ冷却効率が高められた空冷型のエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエンジンは、その内部にシリンダボアが構成されるエンジンブロックと、前記シリンダボアの側面に接続し、その内部にバルブが配置されるバルブ配設孔と、前記シリンダボアの側面に接続し、その内部にスパークプラグが配設されるプラグ配設孔と、前記バルブ配設孔の近傍で、前記エンジンブロックを貫通する通気孔と、を具備し、前記通気孔は、バルブ通気孔を有し、前記バルブ通気孔は、第1バルブ通気孔と、前記第1バルブ通気孔とは連通しない別体の前記通気孔である第2バルブ通気孔と、を有し、前記第1バルブ通気孔は、前記バルブ配設孔と前記シリンダボアとの間において、前記エンジンブロックを貫通するように形成され、前記第2バルブ通気孔は、前記バルブ配設孔と前記エンジンブロックの外面との間において、前記エンジンブロックを貫通するように形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンパクトであり且つ冷却効率が高められた空冷型のエンジンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係るエンジンを示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るエンジンを別の角度から示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るエンジンのエンジンブロックを示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るエンジンのエンジンブロックを別の角度から示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るエンジンの内部構成を示す断面図である。
【
図6A】本発明の実施形態に係るエンジンの内部構成を示す側面図である。
【
図6B】本発明の実施形態に係るエンジンの内部構成を示す斜視図である。
【
図7A】本発明の実施形態に係るエンジンの第2エンジンブロックを示す斜視図である。
【
図7B】本発明の実施形態に係るエンジンの第2エンジンブロックを示す側面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るエンジンの第1バルブ通気孔を示す切断斜視図である。
【
図9A】本発明の実施形態に係るエンジンの第1エンジンブロックを示す斜視図である。
【
図9B】本発明の実施形態に係るエンジンの第1エンジンブロックを示す分解斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るエンジンを示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るエンジンを示す分解斜視図である。
【
図12A】本発明の実施形態に係るエンジンの導風部を示す分解斜視図である。
【
図12B】本発明の実施形態に係るエンジンの導風部を別の角度から示す分解斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るエンジンを備えた飛行装置を示す斜視図である。
【
図14】本発明の実施形態に係るエンジンを備えた飛行装置を示す平面図である。
【
図15】本発明の実施形態に係るエンジンを備えた飛行装置を示す側面図である。
【
図16】本発明の他形態に係るエンジンを示す斜視図である。
【
図17A】本発明の他形態に係るエンジンを部分的に示す斜視図である。
【
図17B】本発明の他形態に係るエンジンを示す切断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るエンジン10を、図面に基づき詳細に説明する。以下の説明に於いて、前後方向とは、後述する第1クランクシャフト143および第2クランクシャフト153が伸びる方向である。また、前後方向は、エンジン10を冷却するための空気が流れる方向でもある。左右方向とは、前後方向に直交する方向であり、後述する第1ピストン141および第2ピストン151が往復運動する方向である。以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。更に、本実施形態では、特許請求の範囲に記載された構成を主に図示して説明する。よって、エンジン10の当該構成以外の部分、例えば、潤滑油供給機構、燃料供給機構、各種電装品等は図示しないものの、これらはエンジン10に備えられている。
【0026】
図1は、エンジン10を示す斜視図である。
図2は、エンジン10を別の角度から示す斜視図である。
【0027】
図1および
図2を参照して、エンジン10は、対向配置された複数のピストンを有する対向ピストン型エンジンである。エンジン10の内部構成および動作は、
図3以降の各図を参照して後述する。
【0028】
エンジン10は、ガソリン、軽油、水素等を燃料として運転されるように構成される。エンジン10は、様々な機器の駆動源として用いることができる。エンジン10は、車両、発電機、給湯器、飛行装置、ドローン、シリーズハイブリッドドローン、パラレルハイブリッドドローン等の駆動源として用いられる。シリーズハイブリッドドローンとは、エンジン10により発電機を運転し、当該発電機から発生する電力によりモータを回転させ、当該モータによりロータを回転させ、当該ロータが回転することで発生する揚力により機体を空中に浮遊させるドローンである。パラレルハイブリッドドローンとは、エンジン10により機械的にメインロータを回転させ、当該メインロータが回転することにより発生する揚力により機体を浮遊させるドローンである。また、パラレルハイブリッドドローンは、エンジン10により機械的に駆動されるメインロータとは別に、機体の姿勢制御を行うためにモータにより回転するサブロータも有する。本実施形態のエンジン10は、対向ピストン型エンジンであり、軽量且つ低振動である為、シリーズハイブリッドドローン、パラレルハイブリッドドローン等の駆動源として好適である。
【0029】
本実施形態において、エンジン10は、エンジンブロック11と、バルブ配設孔21(
図7A参照)と、プラグ配設孔23(
図9B参照)と、通気孔30(
図1参照)と、を主要に有する。
図5に示す様に、エンジンブロック11は、その内部にシリンダボア12が構成される。
図7Aに示す様に、バルブ配設孔21は、シリンダボア12の側面に接続し、その内部にバルブ25(
図6A)が配置される。
図9Bに示す様に、プラグ配設孔23は、シリンダボア12の側面に接続し、その内部にスパークプラグ22が配設される。
図7Aないし
図9A等に示すように、通気孔30は、バルブ配設孔21またはプラグ配設孔23の近傍で、エンジンブロック11を貫通する風洞である。本実施形態のエンジン10によれば、エンジンブロック11のバルブ配設孔21またはプラグ配設孔23が形成される部分を、特に積極的に冷却することができる。
【0030】
具体的には、エンジン10は、本体部であるエンジンブロック11を有する。エンジンブロック11は、例えば、鋳造されたアルミニウム合金等から成る。後述する様に、エンジンブロック11は、複数のエンジンブロックから成る。これらの各部位は、例えばボルトである締結部材により相互に締結される。
【0031】
エンジンブロック11の前側面には、第1クランクシャフト143および第2クランクシャフト153が導出している。第1クランクシャフト143および第2クランクシャフト153から、回転駆動力を外部に取り出すことができる。また、
図2に示す様に、第1クランクシャフト143および第2クランクシャフト153は、エンジンブロック11の後側面からも後方に向かって導出する。第1クランクシャフト143および第2クランクシャフト153には、各ギヤおよびベルトからなる反転同期機構が備えられる。この反転同期機構は、第1クランクシャフト143に対して第2クランクシャフト153を反転させると共に、第1クランクシャフト143と第2クランクシャフト153との回転速度を等しくする機構である。また、第1クランクシャフト143および第2クランクシャフト153の回転駆動力により、後述するバルブ25の往復運動が司られる。
【0032】
エンジン10は、運転時の冷却を空気により行う所謂空冷エンジンである。エンジン10は、空気による冷却を促進するべく、表面積を拡大するために、多数のリブ115を有する。リブ115は、冷却用の空気が流通する方向に対して平行な方向である前後方向に沿って伸びる。リブ115は、エンジンブロック11の上面、下面、前面および後面に形成される。
【0033】
エンジン10は、空冷による冷却効率を更に向上するために、通気孔30を有する。
図1および
図2に示す様に、通気孔30は、バルブ通気孔31およびプラグ通気孔34を有する。更に、バルブ通気孔31は、第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33を有する。バルブ通気孔31ないしプラグ通気孔34は、前後方向に沿って、エンジンブロック11を貫通する風路である。エンジン10が運転される際に、バルブ通気孔31ないしプラグ通気孔34の内部を、空気が高速で通過することにより、エンジン10の運転時に発生する動作熱を空気により吸熱させ、エンジン10の過熱を防止できる。通気孔30を構成する各部位は、
図7A以降の図を参照して後述する。
【0034】
図3は、エンジン10のエンジンブロック11を示す分解斜視図である。
図4は、エンジン10のエンジンブロック11を別の角度から示す分解斜視図である。
【0035】
図3および
図4を参照して、エンジンブロック11は、右方側から、第3エンジンブロック113、第1エンジンブロック111、第2エンジンブロック112および第4エンジンブロック114を有する。第1エンジンブロック111ないし第4エンジンブロック114は、例えばボルトである締結部材により相互に締結される。
【0036】
第1エンジンブロック111は、その内部に、シリンダボア12の一部である第1シリンダボア121が形成される。
図3に示す様に、第1シリンダボア121の上端部から第1延出形成面171が形成される。第1延出形成面171は、後述する延出空間24を構成する壁状部位である。また、プラグ通気孔34は、第1エンジンブロック111を前後方向に沿って貫通するように構成される。
【0037】
図4を参照して、第2エンジンブロック112は、その内部に、シリンダボア12の一部である第2シリンダボア122が形成される。第2シリンダボア122の上端部から第2延出形成面172が形成される。第2延出形成面172は、後述する延出空間24を構成する壁状部位である。また、第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33は、第2エンジンブロック112を前後方向に沿って貫通するように形成される。
【0038】
第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112の詳細な構成は、
図7A以降の図を参照して後述する。
【0039】
第3エンジンブロック113は、後述する第1クランクシャフト143等が内蔵される。第3エンジンブロック113の左方部分に形成された半円形状のクランク保持部164と、第1エンジンブロック111の右方部分に形成された半円形状のクランク保持部163により、第1クランクシャフト143が回転可能な状態で保持される。また、両者の間には、ベアリングが配設される。
【0040】
第4エンジンブロック114は、後述する第2クランクシャフト153等が内蔵される。第4エンジンブロック114の右方部分に形成された半円形状のクランク保持部161と、第2エンジンブロック112の左方部分に形成された半円形状のクランク保持部162により、第2クランクシャフト153等が回転可能な状態で保持される。また、両者の間には、ベアリングが配設される。
【0041】
図5は、
図1のA-A切断面線における断面図であり、シリンダボア12および延出空間24を形成するエンジンブロック11の壁部を示す。A-A切断面線は、上下方向および左右方向を含む断面である。
【0042】
シリンダボア12は、略円筒状を呈する空間である。シリンダボア12は、右方側の第1シリンダボア121と、第1シリンダボア121の左端と繋がる第2シリンダボア122と、を有する。シリンダボア12の前後方向における略中央部において、シリンダボア12の上面から、延出空間24が上方に向かって突出する。第1シリンダボア121、第2シリンダボア122および延出空間24は、連通する。後述する様に、延出空間24は、バルブ25およびスパークプラグ22の先端部が配設される空間である。よって、吸気、排気および点火は、延出空間24を介して行われる。
【0043】
係る構成のシリンダボア12および延出空間24は、エンジンブロック11の内部に形成された壁部により囲まれる空間である。
【0044】
具体的には、第1シリンダボア121は、第1シリンダ壁部181により囲まれる略円筒状の空間である。第1シリンダ壁部181は、第1エンジンブロック111の内部に形成された、筒状を呈する壁である。第1シリンダ壁部181の右端および左端は開放状態とされる。
【0045】
第2シリンダボア122は、第2シリンダ壁部191により囲まれる略円筒状の空間である。第2シリンダ壁部191は、第2エンジンブロック112の内部に形成された、筒状を呈する壁である。第2シリンダ壁部191の右端および左端は開放状態とされる。
【0046】
延出空間24は、第1延出壁部182および第2延出壁部192により囲まれる空間である。第1延出壁部182は、第1シリンダ壁部181の右端において、第1シリンダ壁部181の上端部から、上方に向かって伸びる略舌状の部位である。第2延出壁部192は、第2シリンダ壁部191の左端において、第2シリンダ壁部191の上端部から、上方に向かって伸びる略舌状の部位である。
【0047】
シリンダボア12は、左右方向に沿って伸びる中心軸20を有する、略円筒状の空間である。シリンダボア12は、内側面28を有する。内側面28は、第1シリンダ壁部181および第2シリンダ壁部191の、内面により構成される面である。内側面28から、延出空間24が延出する。具体的には、延出空間24は、シリンダボア12の中心軸20に対して直交する方向である、上方に向かって延出する空間である。延出空間24は、シリンダボア12と連通する。
【0048】
エンジン10は、第1エンジン部14と、第2エンジン部15と、を有する。
【0049】
第1エンジン部14は、第1ピストン141と、第1コネクティングロッド142と、第1クランクシャフト143と、を有する。第1コネクティングロッド142は、第1ピストン141と第1クランクシャフト143とを、回転可能に接続する。
【0050】
第2エンジン部15は、第1エンジン部14に対向するように配置される。第2エンジン部15は、第2ピストン151と、第2コネクティングロッド152と、第2クランクシャフト153と、を有する。第2コネクティングロッド152は、第2ピストン151と第2クランクシャフト153とを回転可能に接続する。
【0051】
上記した構成のエンジン部13の第1エンジン部14および第2エンジン部15は、次のように動作する。先ず、吸込行程では、第1ピストン141および第2ピストン151がシリンダボア12の内部で中央部から外側に向かって移動することで、燃料と空気との混合物である混合気がシリンダボア12の内部に導入される。混合気は、延出空間24を経由して導入される。次に、圧縮行程では、回転する第1クランクシャフト143および第2クランクシャフト153の慣性により、第1ピストン141および第2ピストン151が中央部に向かって押し出され、シリンダボア12の内部で混合気が圧縮される。次に、燃焼行程では、後述する点火プラグが延出空間24で点火することで、シリンダボア12の内部で混合気が燃焼し、これにより第1ピストン141および第2ピストン151が、下死点である外側の端部まで押し出される。その後、排気行程では、回転する第1クランクシャフト143および第2クランクシャフト153の慣性により、第1ピストン141および第2ピストン151が内側に押し出され、シリンダボア12の内部に存在する燃焼後のガスは、延出空間24を経由して外部に排出される。
【0052】
図6Aは、エンジン10の内部構成を示す側面図である。
図6Bは、エンジン10の内部構成を示す斜視図である。
【0053】
図6Aおよび
図6Bに示す様に、バルブ25は、左方側から、延出空間24に対して進退可能に備えられる。
【0054】
バルブ25は、ここでは2つが設けられ、吸気バルブ251および排気バルブ252を有する。
【0055】
吸気バルブ251は、
図7A等を参照して後述する、吸気バルブ配設孔211に配設される。排気バルブ252は、
図7A等を参照して後述する排気バルブ配設孔212に配設される。吸気バルブ251および排気バルブ252は、夫々、図示しないバネにより、左方に向かって付勢される。
【0056】
各々のバルブ25を進退させるための機構として、カムシャフト27、吸気カム261および排気カム262が配設される。
【0057】
カムシャフト27は、前後方向に沿って伸びる鋼棒である。カムシャフト27には、吸気カム261および排気カム262が、相対回転不能に備えられる。
【0058】
吸気カム261は、吸気バルブ251の左方側端部の直近に配設され、吸気バルブ251を進退させるように構成される。吸気カム261が吸気バルブ251を右方に向かって押すことにより、
図7Aに示す吸気バルブ配設孔211と吸気カム261との間に間隙が形成され、この間隙を経由して、混合気が延出空間24およびシリンダボア12に供給される。
【0059】
排気カム262は、排気バルブ252の左方側端部の直近に配設され、排気バルブ252を進退させるように構成される。排気カム262は、カムシャフト27の軸周りにおいて、吸気カム261に対して所定の位相差を持って配設される。排気カム262が排気バルブ252を右方に向かって押すことにより、
図7Aに示す排気バルブ配設孔212と排気カム262との間に間隙が形成され、この間隙を経由して、燃焼後のガスが延出空間24およびシリンダボア12から外部に排出される。
【0060】
吸気バルブ251および排気バルブ252は、押圧力が与えられていない場合は、図示しないバネによる付勢力により延出空間24を閉鎖している。即ち、吸気バルブ251は、吸気カム261に押されていない間は、図示しないバネの付勢力により延出空間24を閉鎖する。排気バルブ252は、排気カム262により押されていない間は、図示しないバネの付勢力により、延出空間24を閉鎖する。
【0061】
スパークプラグ22は、延出空間24の右方側に配設される。スパークプラグ22は、その先端が延出空間24の内部に配設される。また、スパークプラグ22の先端部は、
図9Bを参照して後述するプラグ配設孔23に挿入される。
【0062】
図7Aは、エンジン10の第2エンジンブロック112を示す斜視図である。
図7Bは、エンジン10の第2エンジンブロック112を示す側面図である。
【0063】
前述したように、第2エンジンブロック112には、吸気バルブ配設孔211および排気バルブ配設孔212が形成される。吸気バルブ配設孔211は、第2エンジンブロック112の上面の前方側から、第2延出形成面172の前方側まで連通する空間である。排気バルブ配設孔212は、第2エンジンブロック112の上面の後方側から、第2延出形成面172の後方側まで連通する空間である。
【0064】
前述したように、第2エンジンブロック112には、第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33が形成される。第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33は、エンジンブロック11の第2シリンダボア122と外皮との間、即ち肉厚部分を、前後方向に沿って貫通する風路である。
図7Aを参照して、第2エンジンブロック112の右端部分の上方部分は、内側壁部1121と、外側壁部1122と、を有する。内側壁部1121は、その内部に第2シリンダボア122および第2延出形成面172が形成される壁である。外側壁部1122は、内側壁部1121の外側に配設されて意匠面を形成する面である。内側壁部1121と外側壁部1122との間に、第2バルブ通気孔33の一部が形成される。
【0065】
図7Bを参照して、第2バルブ通気孔33は、バルブ配設孔21とエンジンブロック11の外面との間の、エンジンブロック11に形成される。換言すると、吸気バルブ配設孔211および排気バルブ配設孔212は、内側壁部1121により区画されており、第2バルブ通気孔33は、内側壁部1121の外側に形成される。具体的には、第2バルブ通気孔33は、前方側から、第2前方開口部331、第2内部通路332および第2後方開口部333を有する。エンジン10の運転時においては、空気は、第2前方開口部331、第2内部通路332および第2後方開口部333の順番で流れる。
【0066】
第2前方開口部331は、第2バルブ通気孔33の前端であり、外側壁部1122の前面に形成された略円形の開口である。
【0067】
第2内部通路332は、第2バルブ通気孔33の中間部であり、内側壁部1121と外側壁部1122との間に形成される空洞である。第2内部通路332は、第2延出形成面172を形成する内側壁部1121を外部から包み込むように形成される。第2内部通路332は、第2エンジンブロック112の前端から後端に至るまで連続して形成される。換言すると、第2内部通路332は、吸気バルブ配設孔211および排気バルブ配設孔212を、外部から冷却するための冷却路である。特に、排気バルブ配設孔212は、燃焼後の高温排気が流通する経路である。よって、排気バルブ配設孔212の近傍に第2内部通路332を形成することで、排気バルブ配設孔212およびその近傍の過熱を抑制できる。第2内部通路332において、第2内部通路332を流れる空気が内側壁部1121を経由して受熱する。ここでは、吸気バルブ配設孔211および排気バルブ配設孔212から発生する熱が、第2内部通路332を流通する空気に伝導する。
【0068】
第2後方開口部333は、外側壁部1122から後方に向かって略円筒状に突出する部位である。第2後方開口部333の内部は、第2内部通路332と繋がっている。第2エンジンブロック112を冷却した空気は、第2後方開口部333から後方に向かって排出される。
【0069】
ここで、
図7Aおよび
図7Bを参照して、第2内部通路332に面する第2エンジンブロック112の側面に、略円柱状に突出する突出部41を設けることもできる。また、突出部41は複数を形成することもできる。更に、突出部41は、排気バルブ配設孔212の上方側およびその近傍であって、第2内部通路332に面する部分の第2エンジンブロック112に形成することもできる。このようにすることで、排気バルブ配設孔212の近傍において、第2内部通路332に面する第2エンジンブロック112の表面積を増大できる。よって、エンジン10の運転時、排気バルブ配設孔212を経由して発せられる熱を、第2内部通路332の内部において、突出部41を経由して良好に放熱できる。
【0070】
図8は、エンジン10の第1バルブ通気孔32を示す切断斜視図である。
図8は、
図7AのB-B切断面線における断面である。B-B切断面線は、上下方向および前後方向を含む断面である。
【0071】
第1バルブ通気孔32は、第2エンジンブロック112の前面側から第2エンジンブロック112の後面側まで連続して形成される風路である。また、第1バルブ通気孔32は、バルブ配設孔21と第2シリンダボア122との間に形成される。具体的には、第1バルブ通気孔32は、第2シリンダボア122の直近上方に形成される。また、第1バルブ通気孔32は、吸気バルブ配設孔211および排気バルブ配設孔212の下方側に形成される。このようにすることで、第1バルブ通気孔32の内部を通過する空気は、第2シリンダボア122側から受熱する。また、第1バルブ通気孔32の内部を通過する空気は、プラグ保護部221および排気バルブ配設孔212から受熱する。特に、排気バルブ配設孔212は、燃焼後の空気が通過することから、排気バルブ配設孔212から発生する熱を、第1バルブ通気孔32を通過する空気が受熱することで、排気バルブ配設孔212の過熱を防止できる。
【0072】
図7Aを参照して、本実施形態では、吸気バルブ配設孔211および排気バルブ配設孔212を第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33により挟み込んでいる。即ち、第1バルブ通気孔32は、吸気バルブ配設孔211および排気バルブ配設孔212の左方側に配設される。第2バルブ通気孔33は、吸気バルブ配設孔211および排気バルブ配設孔212の左方側に配設される。かかる構成により、第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33の内部を流れる空気により、吸気バルブ配設孔211および排気バルブ配設孔212を効果的に冷却できる。
【0073】
図9Aは、エンジン10の第1エンジンブロック111を示す斜視図である。
図9Bは、エンジン10の第1エンジンブロック111を示す分解斜視図である。
【0074】
図9Aを参照して、第1エンジンブロック111には、プラグ通気孔34が形成される。プラグ通気孔34は、第1エンジンブロック111を前後方向に沿って貫通するように形成された風路である。プラグ通気孔34は、第1エンジンブロック111の上面部の近傍に形成される。プラグ通気孔34は、第1エンジンブロック111の前面部および後面部に開口する。
【0075】
前後方向におけるプラグ通気孔34の中間部は、金属板等から成る通気孔保護部35により覆われる。また、スパークプラグ22は、前後方向におけるプラグ通気孔34の中間部に配設される。スパークプラグ22は、通気孔保護部35に形成された切欠部351から、エンジンブロック11に向かって挿入されている。
【0076】
図9Bを参照して、プラグ通気孔34は、前方側から、通気孔前部341と、通気孔中間部342と、通気孔後部343と、を有する。エンジン10の運転時において、空気は、通気孔前部341、通気孔中間部342および通気孔後部343の順番で流通する。プラグ通気孔34は、スパークプラグ22の近傍に形成される風路である。プラグ通気孔34を流通する空気は、プラグ配設孔23の近傍およびスパークプラグ22を効果的に冷却する。
【0077】
通気孔前部341は、前方に配設された管路である。前方から見た場合、通気孔前部341は、左右方向に長手方向を有する略矩形を呈する。
【0078】
通気孔中間部342は、プラグ通気孔34の中間部であり、開放状態を呈する部位である。また、通気孔中間部342は、第1エンジンブロック111において、プラグ配設孔23が配設される部位である。
【0079】
通気孔後部343は、後方に配設された管路である。前方から見た場合、通気孔後部343は、左右方向に長手方向を有する略矩形を呈する。
【0080】
通気孔保護部35は、通気孔中間部342を覆うように配設される。通気孔保護部35が通気孔中間部342を覆うことで、通気孔中間部342は、閉管路の如く作用する。また、切欠部351には、スパークプラグ22を被覆する樹脂から成る略筒状体のプラグ保護部221が配設される。
【0081】
プラグ配設孔23は、エンジンブロック11の肉厚部分を貫通する貫通孔であり、
図5に示した延出空間24と、第1エンジンブロック111の外部とをつなぐ貫通孔である。プラグ配設孔23には、スパークプラグ22の先端部が挿入される。スパークプラグ22の先端部は、
図5に示した延出空間24に配設される。
【0082】
図10は、エンジン10を示す斜視図である。
図11は、エンジン10を示す分解斜視図である。
【0083】
エンジン10は、エンジンブロック11を有し、エンジンブロック11には、エンジン10の運転時における冷却を高効率とする為の、各種機器が取り付けられている。
【0084】
ここでは、エンジンブロック11には、第1送風ファン361、第2送風ファン362、第1導風部371、第2導風部372、上側カバー391および下側カバー392、が取り付けられている。
【0085】
ここで、
図11を参照して、第1送風ファン361とエンジンブロック11との間には、
図1に示した第1クランクシャフト143の回転駆動力を用いて発電する、図示しない発電機が取り付けられても良い。同様に、第2送風ファン362とエンジンブロック11との間には、
図1に示した第2クランクシャフト153の回転駆動力を用いて発電する、図示しない発電機が取り付けられても良い。
【0086】
第1送風ファン361は、
図1に示した第1クランクシャフト143により回転される送風手段である。
図11に示す様に、第1送風ファン361は、複数の回転羽根を備えている。第2送風ファン362が回転することにより、前方から見た場合に、反時計回りに沿う気流が発生する。
【0087】
第2送風ファン362は、
図1に示した第2クランクシャフト153により回転される送風手段である。
図11に示す様に、第2送風ファン362は、複数の回転羽根を備えている。第2送風ファン362が回転することにより、前方から見た場合に、時計回りに沿う気流が発生する。
【0088】
第1導風部371は、第1送風ファン361を覆うように、エンジンブロック11に取り付けられるカバーである。第1導風部371は、第1送風ファン361が回転することで発生する気流を、プラグ通気孔34に対して導く風洞を構成する部材である。第1導風部371の端部開口には、第1接続部381が嵌め込まれる。第1接続部381は、第1導風部371の左端に配設される開口と、プラグ通気孔34とを繋ぐ中継部材である。
【0089】
第2導風部372は、第2送風ファン362を覆うように、エンジンブロック11に取り付けられるカバーである。第2導風部372は、第2送風ファン362が回転することで発生する気流を、第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33に対して導く風洞を構成する部材である。第2導風部372の端部開口には、第2接続部382が嵌め込まれる。第2接続部382は、第2導風部372の右端に配設される開口と、第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33とを繋ぐ中継部材である。
【0090】
上側カバー391は、エンジンブロック11の上面、具体的には前述した第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112が配設された部分の、上面を被覆する部材である。後述する様に、エンジン10が飛行装置50に搭載された場合、飛行装置50が前方に向かって飛行することで、エンジン10に対して前方から後方に向かって流動する飛行風が発生する。その飛行風の一部は、上側カバー391とエンジンブロック11の下面との間を通過する。第1エンジンブロック111の上面には、前後方向に沿って伸びるリブ115が多数形成される。よって、飛行風の一部は、上側カバー391とエンジンブロック11との間を通過することにより、エンジンブロック11の上方部分を効果的に冷却できる。
【0091】
下側カバー392は、エンジンブロック11の下面、具体的には前述した第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112が配設された部分の下面を被覆する部材である。前述したように、飛行装置50が飛行する際に発生する飛行風の一部は、下側カバー392とエンジンブロック11の下面との間を通過する。第1エンジンブロック111の下面には、前後方向に沿って伸びるリブ115が多数形成される。よって、飛行風の一部は、下側カバー392とエンジンブロック11の下面との間を通過することにより、エンジンブロック11の下方部分を効果的に冷却できる。
【0092】
図12Aは、第2導風部372を示す分解斜視図である。
図12Bは、第2導風部372を別の角度から示す分解斜視図である。
【0093】
図12Aを参照して、第2導風部372は、前方導風部3721、後方導風部3722および接続口3723を有する。第2導風部372は、前述した第2送風ファン362が回転することで発生する気流を、第1バルブ通気孔32に導く風路構成部材である。第2導風部372は、その中央部に前方からの空気を取り入れる開口を有する。また、第2導風部372の周辺部に、前述した第2送風ファン362が回転することで発生する気流を所定方向に向かって流す風路が形成される。
【0094】
前方導風部3721は、第2導風部372の前方部分を構成する部材である。
図12Bに示す様に、外周凹状部3724の周縁部を前方に向かって窪ませることで、外周凹状部3724が形成される。外周凹状部3724は、後方から見た場合、時計回りに向かって徐々に深くなる凹状の溝である。外周凹状部3724が係る形状を呈することにより、第2送風ファン362が回転することで発生する気流を、更に効果的に接続口3723に向かって流動させることができる。
【0095】
第1導風部371の構成は、前述した第2導風部372と同様である。
【0096】
第2接続部382は、略筒状を呈する部材である。
図12Aに示す様に、第2接続部382の前端部は、後方導風部3722の風路端部に形成された接続口3723に挿入されることで接続される。一方、第2接続部382の後端部は、
図11に示した、エンジンブロック11の第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33に接続される。よって、第2送風ファン362が回転することにより発生した気流は、第2導風部372および第2接続部382を経由して、第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33に送風され、エンジンブロック11を冷却する。
【0097】
同様に、
図11を参照して、第1送風ファン361が回転することにより発生した気流は、第1導風部371および第1接続部381を経由してプラグ通気孔34に送風され、エンジンブロック11を冷却する。
【0098】
前述した構成により、エンジンブロック11の外部および内部が効果的に冷却されることから、運転時におけるエンジン10の過熱を効果的に防止できる。具体的には、
図3を参照して、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112は、その内部で爆発行程が行われることから、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112は運転時に特に高温となる。よって、エンジン10の過熱防止のためには、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112を冷却することが肝要である。
【0099】
そのため、本実施形態では、
図7A等に示すように、第2エンジンブロック112に第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33を形成する。また、
図8等に示すように、第1エンジンブロック111にプラグ通気孔34を形成する。これにより、第1バルブ通気孔32、第2バルブ通気孔33およびプラグ通気孔34に空気を送風することで、エンジン10の運転時において発熱量が多い、バルブ配設孔21の近傍およびプラグ配設孔23の近傍を積極的に冷却できる。ここで、空気は、後述する飛行装置50が飛行することで発生する飛行風でも良いし、前述した第1送風ファン361等が回転することで発生する送風でも良い。
【0100】
図11を参照して、かかるバルブ通気孔31およびプラグ通気孔34に対して積極的に送風するために、第1送風ファン361等および第1導風部371を有する。第1送風ファン361が回転することで発生する気流を、第1導風部371を経由してプラグ通気孔34に送風する。また、第2送風ファン362が回転することで発生する気流を、第2導風部372を経由して、第1バルブ通気孔32および第2バルブ通気孔33に流す。このようにすることで、第1バルブ通気孔32、第2バルブ通気孔33およびプラグ通気孔34に対して、大きな流量の空気を送風することができ、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112をより積極的に冷却できる。更に、第1導風部371および第2導風部372は、その中央部に前方から空気を取り込む略円形の開口を有する。後述する飛行装置50の飛行時においては、当該開口に飛行風が送りこまれる。このことによっても、プラグ配設孔23、第2バルブ通気孔33およびプラグ通気孔34に送風される空気の風速を高速化でき、エンジンブロック11の冷却効率を高めることができる。
【0101】
更に、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112の表面(前面、後面、下面および上面)には、前後方向に沿って伸びるようにリブ115が形成される。また、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112の上面は、上側カバー391で覆われる。後述する飛行装置50の飛行時には、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112の上面と、上側カバー391との間には、飛行風が流通する。また、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112の下面は、下側カバー392で覆われる。後述する飛行装置50の飛行時には、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112の下面と、下側カバー392との間には、飛行風が流通する。このようにすることで、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112は、外側からも冷却される。
【0102】
上記のことから、エンジン10では、内部および外部の両方から、第1エンジンブロック111および第2エンジンブロック112を効果的に冷却することで、エンジン10の運転時における過熱を効果的に防止できる。
【0103】
図13は、エンジン10を備えた飛行装置50を示す斜視図である。
図14は、エンジン10を備えた飛行装置50を示す平面図である。
図15は、エンジン10を備えた飛行装置50を示す側面図である。ここで、
図1等に示した上下前後左右の各方向は、リブ115以降の図における上下前後左右の各方向と一致している。
【0104】
飛行装置50は、前述したエンジン10を備えたものである。詳しくは、飛行装置50は、エンジン10で発電した電力によりロータ54を回転させることで飛行する、シリーズハイブリッドドローンである。
【0105】
具体的には、エンジン10は、エンジン10と、本体部53と、アーム51と、モータ55と、ロータ54と、スキッド52と、を有する。
【0106】
エンジン10は、飛行装置50が飛行するための駆動力を発生させる駆動源である。エンジン10の構成は前述した通りである。
【0107】
本体部53は、棒状の部材を略直方体に組んだものであり、飛行装置50を構成する各構成機器を収容するものである。本体部53には、例えば、エンジン10、各種電装機器、燃料タンク等が収納される。
【0108】
アーム51は、本体部53の角部から外側に向かって伸びる略棒状の部材である。ここでは、4つのアーム51が、本体部53の角部から外側に向かって伸びている。
【0109】
モータ55は、アーム51の外側端部に備えられる。モータ55は、エンジン10により駆動される発電機から電力が供給される。モータ55は、ロータ54が回転するための駆動力を発生する。
【0110】
ロータ54は、アーム51の外側端部に配設され、モータ55により回転される。ロータ54が回転することにより、飛行装置50の全体が浮遊し、空中において位置姿勢を制御できる。
【0111】
スキッド52は、本体部53の下端から下方に向かって伸びる部材である。飛行装置50の着陸時において、スキッド52が着地面に接する。これにより、着陸時において、本体部53等は着地面から上方に離れた位置で支持される。
【0112】
飛行装置50が、空中において前方に向かって進行することで飛行風が発生する。かかる飛行風により、エンジン10を効果的に冷却できる。
【0113】
図16ないし
図17Bを参照して、他形態に係るエンジン10の構成を説明する。他形態に係るエンジン10の構成および動作は、
図1等を参照して上述したエンジン10と原則的には同様である。以下に示すエンジン10では、第1エンジンブロック111に形成されるプラグ通気孔34およびその周辺部の構成が、
図1等に示した構成と異なる。以下では、その相違点を中心に説明する。
【0114】
図16は、他形態に係るエンジン10を示す斜視図である。
【0115】
図16を参照して、エンジン10のエンジンブロック11には、通気孔30が形成される。前述したように、通気孔30は、エンジンブロック11を冷却するための空気が通過する貫通孔である。通気孔30は、バルブ通気孔31、第1バルブ通気孔32、第2バルブ通気孔33およびプラグ通気孔34を有する。
【0116】
他の形態に示すプラグ通気孔34は、前述したものとは形状が異なる。具体的には、前面視におけるプラグ通気孔34の形状は、上下方向に沿って長手方向を有する略矩形形状である。また、プラグ通気孔34は、第1エンジンブロック111を、前面から後面に至るまで連続して貫通する貫通孔である。
【0117】
図17Aは、他形態に係るエンジン10を部分的に示す斜視図である。
図17Bは、他形態に係るエンジン10を示す切断斜視図である。
図17Bは、
図17AのC-C切断面線における断面である。C-C切断面は、上下方向および前後方向を含む断面である。
【0118】
図17Aを参照して、プラグ配設孔23は、プラグ通気孔34の下端部を貫通するように構成される。プラグ配設孔23は、前述したスパークプラグ22の先端部近傍部分が挿入される孔部である。
【0119】
プラグ通気孔34には締結孔40が形成される。締結孔40は、プラグ通気孔34を左右方向に沿って貫通する貫通孔である。締結孔40は、略円筒形状を呈する。締結孔40は、前述した、エンジンブロック11を構成する第1エンジンブロック111ないし第4エンジンブロック114を互いに締結するためのボルトが通過する貫通孔である。締結孔40は、プラグ通気孔34に対して複数が形成される。
【0120】
図17Bを参照して、プラグ通気孔34の内部には突出部41が形成される。突出部41は、プラグ通気孔34の左方側側面から、略円柱状に右方に向かって突出する部位である。突出部41は、第1エンジンブロック111の本体部と共に、鋳造により一括して成形される。突出部41は、プラグ配設孔23を取り囲むように複数が配設される。突出部41を形成することで、プラグ配設孔23の周囲において放熱する部位の表面積を増大できる。よって、プラグ通気孔34の内部を通過する空気が、突出部41と積極的に熱交換することで、プラグ配設孔23の周辺部を効果的に冷却できる。また、プラグ通気孔34の内部には締結孔40も露出する。締結孔40も第1エンジンブロック111の一部であることから、締結孔40がプラグ通気孔34の内部に露出することにより、プラグ通気孔34を前方から後方に向かって流通する空気が締結孔40から吸熱することで、第1エンジンブロック111を効果的に冷却できる。
【0121】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
前述した実施形態から把握できる発明を、その効果と共に下記する。
本発明の実施形態にかかるエンジンは、その内部にシリンダボアが構成されるエンジンブロックと、前記シリンダボアの側面に接続し、その内部にバルブが配置されるバルブ配設孔と、前記シリンダボアの側面に接続し、その内部にスパークプラグが配設されるプラグ配設孔と、前記バルブ配設孔または前記プラグ配設孔の近傍で、前記エンジンブロックを貫通する通気孔と、を具備することを特徴とする。本発明のエンジンによれば、エンジンブロックのバルブ配設孔またはプラグ配設孔が形成される部分を、積極的に冷却することができる。
また、本発明の実施形態にかかるエンジンでは、前記通気孔は、バルブ通気孔を有し、前記バルブ通気孔は、前記バルブ配設孔の近傍の、前記エンジンブロックに形成されることを特徴とする。本発明のエンジンによれば、エンジンブロックのバルブ配設孔が形成される部分を積極的に冷却することができる。
また、本発明の実施形態にかかるエンジンでは、前記バルブ通気孔は、第1バルブ通気孔を有し、前記第1バルブ通気孔は、前記バルブ配設孔と前記シリンダボアとの間の、前記エンジンブロックに形成されることを特徴とする。本発明のエンジンによれば、バルブ配設孔とシリンダボアとの間を効果的に冷却できる。
また、本発明の実施形態にかかるエンジンでは、前記バルブ通気孔は、第2バルブ通気孔を有し、前記第2バルブ通気孔は、前記バルブ配設孔と前記エンジンブロックの外面との間の、前記エンジンブロックに形成されることを特徴とする。本発明のエンジンによれば、バルブ配設孔と前記エンジンブロックの外面との間を効果的に冷却できる。
また、本発明の実施形態にかかるエンジンでは、前記通気孔は、プラグ通気孔を有し、前記プラグ通気孔は、前記プラグ通気孔の近傍の前記エンジンブロックに形成されることを特徴とする。本発明のエンジンによれば、プラグ配設孔およびその近傍を効果的に冷却できる。
また、本発明の実施形態にかかるエンジンでは、前記プラグ通気孔は、その中間部に開放状態である通気孔中間部を有し、前記通気孔中間部が配設された部分の前記エンジンブロックに、前記スパークプラグが配設され、前記通気孔中間部は、通気孔保護部により覆われることを特徴とする。本発明のエンジンによれば、プラグ通気孔の途中部分である通気孔中間部にスパークプラグを配設することができる。また、通気孔中間部を通気孔保護部で覆うことにより、プラグ通気孔が、全体として閉管路として機能する。これにより、エンジンの運転時において、プラグ通気孔の内部を空気が良好に流通し、スパークプラグの近傍のエンジンブロックを効果的に冷却できる。
また、本発明の実施形態にかかるエンジンでは、前記通気孔の内部に突出部を形成することを特徴とする。本発明のエンジンによれば、通気孔の内部における放熱の効果を顕著にできる。
【符号の説明】
【0122】
10 エンジン
11 エンジンブロック
111 第1エンジンブロック
112 第2エンジンブロック
113 第3エンジンブロック
114 第4エンジンブロック
115 リブ
1121 内側壁部
1122 外側壁部
12 シリンダボア
121 第1シリンダボア
122 第2シリンダボア
13 エンジン部
14 第1エンジン部
141 第1ピストン
142 第1コネクティングロッド
143 第1クランクシャフト
15 第2エンジン部
151 第2ピストン
152 第2コネクティングロッド
153 第2クランクシャフト
161 クランク保持部
162 クランク保持部
163 クランク保持部
164 クランク保持部
171 第1延出形成面
172 第2延出形成面
181 第1シリンダ壁部
182 第1延出壁部
191 第2シリンダ壁部
192 第2延出壁部
20 中心軸
21 バルブ配設孔
211 吸気バルブ配設孔
212 排気バルブ配設孔
22 スパークプラグ
221 プラグ保護部
23 プラグ配設孔
24 延出空間
25 バルブ
251 吸気バルブ
252 排気バルブ
261 吸気カム
262 排気カム
27 カムシャフト
28 内側面
30 通気孔
31 バルブ通気孔
32 第1バルブ通気孔
33 第2バルブ通気孔
331 第2前方開口部
332 第2内部通路
333 第2後方開口部
34 プラグ通気孔
341 通気孔前部
342 通気孔中間部
343 通気孔後部
35 通気孔保護部
351 切欠部
361 第1送風ファン
362 第2送風ファン
371 第1導風部
372 第2導風部
3721 前方導風部
3722 後方導風部
3723 接続口
3724 外周凹状部
381 第1接続部
382 第2接続部
391 上側カバー
392 下側カバー
40 締結孔
41 突出部
50 飛行装置
51 アーム
52 スキッド
53 本体部
54 ロータ
55 モータ
【要約】
【課題】冷却効率が高められた空冷型のエンジンを提供する。
【解決手段】エンジン10は、エンジンブロック11と、バルブ配設孔21と、プラグ配設孔23と、通気孔30と、を有する。エンジンブロック11は、その内部にシリンダボア12が構成される。バルブ配設孔21は、シリンダボア12の側面に接続し、その内部にバルブ25が配置される。プラグ配設孔23は、シリンダボア12の側面に接続し、その内部にスパークプラグ22が配設される。通気孔30は、バルブ配設孔21またはプラグ配設孔23の近傍で、エンジンブロック11を貫通する。
【選択図】
図7A