(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】海上工事の玉掛装置、浮体物及び吊り上げる方法
(51)【国際特許分類】
B66C 1/66 20060101AFI20250213BHJP
F16L 1/225 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
B66C1/66 P
F16L1/225
(21)【出願番号】P 2020169844
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】玉田 和也
(72)【発明者】
【氏名】加賀美 暢一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】岸本 宏司
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-190791(JP,U)
【文献】特開2006-214210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-25/00
F16L 1/00- 1/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊対象物に取り付けられ、上方に開口し、索状体の先端に設けられる環状部を有する吊具を挿通可能な挿通口を有し、前記挿通口に連なる前記挿通口より大きな導入口を上部に有し、前記吊具を水平方向から囲むことが可能な箱状部と、
前記環状部に挿通自在で前記吊具を係止可能なピンと、を備え、
前記箱状部は、
略水平方向に貫通し、前記ピンを挿通自在なピン孔と、
前記ピン孔の孔軸の下方に
設けられる台座を有
し、
前記台座は、前記環状部を載置した状態で、前記ピンを前記環状部に貫通可能な位置に配置される
ことを特徴とする玉掛装置。
【請求項2】
前記箱状部は、前記導入口から前記挿通口まで連なるテーパ面を有するガイド部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の玉掛装置。
【請求項3】
前記ピンは、前記孔軸に沿って移動自在に支持される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の玉掛装置。
【請求項4】
前記台座は、前記孔軸を含む鉛直面に対して傾斜する傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の玉掛装置。
【請求項5】
前記傾斜面は、前記鉛直面に対して対称に配置される第1傾斜面及び第2傾斜面を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の玉掛装置。
【請求項6】
前記
ピンは、シンブルで保護される
前記吊具を係止可能である
ことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の玉掛装置。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の前記玉掛装置が取り付けられた浮体物。
【請求項8】
前記浮体物は、スティンガーである
ことを特徴とする請求項
7に記載の浮体物。
【請求項9】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の前記玉掛装置に前記吊具を取り付け、前記吊具を海上で吊り上げる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上工事の玉掛装置、浮体物及び吊り上げる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海上工事において、作業船から吊対象物となる構造物を吊る作業がある。このような作業では、構造物に、作業船の吊具を取り付ける玉掛け作業の必要がある。
【0003】
しかしながら、海上では、波風の作用により、構造物及び吊具は動揺するため、構造物と吊具との位置関係は不安定であるので、構造物に、作業船に支持された吊具を取り付ける玉掛け作業の作業性には、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑み、玉掛け作業の作業性を向上できる玉掛装置、浮体物及び吊り上げる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
(1)本発明の一態様に係る玉掛装置は、吊対象物に取り付けられ、上方に開口し、索状体の先端に設けられる環状部を有する吊具を挿通可能な挿通口を有し、前記挿通口に連なる前記挿通口より大きな導入口を上部に有し、前記吊具を水平方向から囲むことが可能な箱状部と、前記環状部に挿通自在で前記吊具を係止可能なピンと、を備え、前記箱状部は、略水平方向に貫通し、前記ピンを挿通自在なピン孔と、前記ピン孔の孔軸の下方において鉛直下向きに窪む台座を有する。
(2)上記(1)において、前記箱状部は、前記導入口から前記挿通口まで連なるテーパ面を有するガイド部を備えてよい。
(3)上記(1)又は(2)において、前記ピンは、前記孔軸に沿って移動自在に支持されてよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記台座は、前記孔軸を含む鉛直面に対して傾斜する傾斜面を有してよい。
(5)上記(4)において、前記傾斜面は、前記鉛直面に対して対称に配置される第1傾斜面及び第2傾斜面を有してよい。
(6)上記(5)において、前記台座は、前記環状部を載置した状態で、前記ピンを前記環状部に貫通可能な位置に配置されてよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記吊具は、シンブルで保護されてよい。
(8)本発明の一態様に係る浮体物は、上記(1)から(7)のいずれかの前記玉掛装置が取り付けられた浮体物であってよい。
(9)上記(8)において、前記浮体物は、スティンガーであってよい。
(10)本発明の一態様に係る方法は、上記(1)から(9)のいずれかの前記玉掛装置に前記吊具を取り付け、前記吊具を海上で吊り上げる方法であってよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、玉掛け作業の作業性を向上できる玉掛装置、浮体物及び吊り上げる方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】支持体から吊対象物を吊る状況の説明図である。
【
図2】吊具を玉掛装置に誘導する際の説明図である。
【
図3】吊具が取り付けられた玉掛装置を側方から見た説明図である。
【
図4】吊具が取り付けられた玉掛装置を上方から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
図1は、支持体Fから吊対象物Sを吊る状況の説明図である。
図2は、吊具Whを玉掛装置1に誘導する際の説明図である。
図3は、吊具Whが取り付けられた玉掛装置1を側方から見た説明図である。
図4は、吊具Whが取り付けられた玉掛装置1を上方から見た説明図である。
図5は、玉掛装置1の平面図である。
図6は、
図5におけるA矢視断面図である。
図7は、
図5におけるB矢視断面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る玉掛装置1は、例えば、海上工事において、作業船等の不安定な支持体Fに支持された不図示のクレーンから、スティンガー等の構造物のような、姿勢の不安定な吊対象物Sを、吊具Whで吊る際の玉掛け作業で用いることができる。
吊対象物Sは、玉掛装置1が取り付けられたスティンガー等の浮体物であってよい。なお、スティンガーとは、浮力をもった剛体枠のことであり、船上から海底に繰り出すパイプを安全に撓ませるために、そのパイプを中に通した状態で支持するものである。スティンガーの構造、寸法等の規格は、水深、パイプサイズ等によって選定され、25mから120m程度までの長さを有する。スティンガーは、一般的に、長手方向を水平にした状態で保管又は移設され、長手方向を鉛直にした状態で海底に支持される。スティンガーは、海中において、作用する重力より大きな浮力が作用する構造物である。
【0012】
吊具Whは、玉掛装置1と連結する部位である。吊具Whは、例えば、鋼製のワイヤーロープ等の索状体Wの先端に設けられた、鋼製のフック、アイ等の環状部(
図2、
図7等参照)を有している。これにより、吊具Whを玉掛装置1のピン30に係止しやすくできる。
【0013】
また、吊具Whはシンブルで保護されてよい。具体的には、シンブルは、環状部とピン30とが直接接触しないように、吊具Whの環状部の内側に沿って、吊具Whに取り付けられる。シンブルは、吊具Whにピン30を通した状態で索状体Wを引っ張ったときに、吊具Whの環状部の形状を維持できるように、所定の剛性を有している。また、適宜、環状部又はピン30の硬度(強度)より低い硬度(強度)となっている。このように、シンブルは、吊具Whの環状部とピン30との間に介在するので、吊具Wh又はピン30の損傷を抑制できる。
【0014】
玉掛装置1は、吊り作業の際に、吊対象物Sと吊具Whとの間に作用する荷重に対して損傷しないように、所望の剛性及び強度を有している。玉掛装置1は、例えば、鋼製である。玉掛装置1は、例えば、溶接、ボルト等の適宜の固定手段により、吊対象物Sに取り付けられている。玉掛装置1は、一つの吊対象物Sに対して、複数取り付けられていてよい。
【0015】
図2から
図7に示すように、玉掛装置1は、索状体Wの先端に設けられる環状部を有する吊具Whを挿通可能な挿通口11を有する箱状部10を備えている。また、玉掛装置1は、挿通口11に連なる挿通口11より大きな導入口21を上部に有している。さらに、玉掛装置1は、吊具Whを係止可能なピン30を備えている。
【0016】
(箱状部)
箱状部10は、上方に開口し、索状体Wの先端に設けられる吊具Whを挿通可能な挿通口11を有している。箱状部10は、下部を、溶接、ボルト等の適宜の手段で、吊対象物Sに固定されている。箱状部10は、吊具Whを水平方向から囲むことができる内寸法を有する内面を備えている。
【0017】
箱状部10は、
図5に示すように、例えば、吊具Whにおける軸方向(ピン30の移動軸又はピン孔12の孔軸13方向)で互いに対向する第1側板11A及び第2側板11B、並びに、第1側板11Aと第2側板11Bとを繋ぎ、吊具Whにおける軸方向に垂直な方向で互いに対向する第3側板11C及び第4側板11Dで形成されている。第1側板11A及び第2側板11Bにより、平面視において、箱状部10に収容された吊具Whの軸方向への移動を規制できる。また、第3側板11C及び第4側板11Dにより、平面視において、箱状部10に収容された吊具Whの軸直角方向への移動を規制できる。
【0018】
挿通口11は、平面視において、吊具Whを上方から降ろして収容できるように、平面に投影した吊具Whの外形寸法に応じて、その寸法に若干の遊間を有した内寸法を有する形状(例えば、長方形状)となっている。
【0019】
箱状部10は、略水平方向に貫通し、ピン30を挿通自在なピン孔12を備えている。また、箱状部10は、ピン孔12の孔軸13の下方において鉛直下向きに窪む台座50を備えている。このように、玉掛装置1は、ピン孔12の孔軸13の下方において鉛直下向きに窪む台座50を備える箱状部10を備えているので、吊具Whを、箱状部10の挿通口11から降ろす(落とし込む)だけで、吊具Whを、箱状部10の内側で、ピン30を挿通できる姿勢及び位置に保持できる。よって、吊具Whとピン30とを繋げるために両者の姿勢を調節する必要がないので、作業者は、吊具Whとピン30との接触領域に直接触れなくてよい。したがって、海上工事のように、波風の作用によって吊具Whと吊対象物Sとの姿勢関係及び位置関係が不安定な状況であっても、安全に、簡単に、玉掛け作業ができる。よって、玉掛け作業の作業性を向上できる。
【0020】
また、台座50は、吊具Whの環状部を載置した状態で、ピン30を環状部に貫通可能な位置に配置されていてよい。これにより、吊具Whを台座50に載置するだけで、吊具Whを、ピン30が貫通可能な姿勢にできる。
台座50は、孔軸13を含む鉛直面14(
図7参照)に対して傾斜する傾斜面51を有していてよい。これにより、吊具Whを傾斜面51に沿ってスライドさせることができる。このように、台座50は、傾斜面51を有しているので、箱状部10の内側において、重力の作用だけで、吊具Whを、ピン30を挿通しやすい姿勢及び位置まで移動させることができる。なお、傾斜面51は、水平方向に対して傾斜しており、吊具Whと傾斜面51との間の静止摩擦係数に対応する摩擦角以上傾斜していることが好ましい。
【0021】
傾斜面51は、鉛直面14に対して対称に配置される第1傾斜面51A及び第2傾斜面51Bを有していてよい。このように、傾斜面51は、第1傾斜面51A及び第2傾斜面51Bを有しているので、箱状部10の内側において、重力の作用だけで、吊具Whを、ピン30を挿通しやすい姿勢及び位置まで移動させて、台座50に載置でき、その姿勢及び位置で静止させることができる。
【0022】
具体的には、吊具Whが挿通口11から箱状部10の内側に挿入されると、吊具Whは、箱状部10の内面で水平方向への移動が規制された状態となる。そして、吊具Whが下方に降ろされていくときに、先に、第1傾斜面51A及び第2傾斜面51Bのうちの一方の傾斜面51に接触する。吊具Whは、下方に更に降ろされていくと、一方の傾斜面51に接したまま、一方の傾斜面51に沿って、第1傾斜面51A及び第2傾斜面51Bのうちの他方の傾斜面51に接するまで、斜め下方に移動する。このとき、吊具Whは、第1傾斜面51A及び第2傾斜面51Bの2箇所で支持されるため、下方への移動が規制される。そして、吊具Whは、箱状部10の内面で水平方向への移動が規制された状態で、傾斜面51に載置された状態となる。よって、吊具Whを、挿通口11から箱状部10の内側に挿入して降ろすだけで、箱状部10の内側において、吊具Whを、ピン30を挿通しやすい姿勢に簡単に維持できる。
【0023】
孔軸13から傾斜面51までの距離dは、環状部の外半径R以上の寸法である。ピン30から傾斜面51までの距離dは、吊具Whの環状部が台座50に載置された際に、環状部にピン30を挿通できる寸法となっている。環状部が円環形状である場合、ピン30から台座50の傾斜面51までの距離(例えば、10cm)は、吊具Whの環状部の外半径(例えば、30cm)から内半径(例えば、22cm)を差し引いた寸法(例えば、8cm)に隙間(例えば、2cm)を加えた寸法となっている。これにより、吊具Whを箱状部10に収容して台座50に載置して自然な状態で重力に任せるだけで、吊具Whの環状部の中心を、ピン30の移動軸(ピン30の軸の延長線)に近づけることができる。よって、吊具Whの環状部の内側にピン30を挿通できる姿勢及び位置にできる。
【0024】
(ガイド部)
箱状部は、導入口21から挿通口11まで連なるテーパ面20aを有するガイド部20を備えている。ガイド部20は、挿通口11に連なり、挿通口11より大きな導入口21を上部に有している。具体的には、ガイド部20は、下部に、箱状部10の挿通口11と同じ大きさの開口を有しており、上部に、挿通口11より大きな導入口21を有している。すなわち、導入口21の外形状は、平面視において、挿通口11の外形状を完全に囲む大きさである。
導入口21の形状は、平面視において、挿通口11の形状と同形状(例えば、いずれも長方形、いずれも楕円形等)であってよく、相似であってもよい。また、ガイド部20は、上方から下方に窄まる内腔を形成する内面を有している。ガイド部20の内面は、例えば、内腔を錘台状に形成している。すなわち、ガイド部20の内面は、導入口21から挿通口11に向けて傾斜している。
【0025】
ガイド部20の内面は、挿通口11の形状に応じて、複数の平坦なテーパ面20aで構成されていてよい。例えば、
図5に示すように、挿通口11の形状が長方形状である場合、導入口21の形状を挿通口11の形状より大きな相似の長方形状とし、挿通口11の形状を構成する辺の数に応じて、内面を4つの平坦なテーパ面20aとしてよい。テーパ面20aは、鉛直方向に対して傾斜している。このように、ガイド部20の内腔は、下方から上方に向けて拡がっているので、比較的大きな導入口21に入れて下降させるだけで、姿勢及び位置の不安定な吊具Whであっても、吊具Whを鉛直に投影した輪郭に対して小さい隙間しか有していない挿通口11に、確実に誘導できる。
【0026】
(ピン)
ピン30は、例えば、軸方向に沿って同じ断面形状を有する円筒状の棒状体である。ピン30は、例えば、鋼製である。
ピン30は、例えば、アイスプライスのような、吊具Whの環状部に挿通自在となっている。すなわち、ピン30は、吊具Whの環状部の内寸法(例えば、内径)より小さい外形寸法(例えば、外径)を有している。
【0027】
ピン30は、ピン孔12の孔軸13に沿って移動自在に支持されている。具体的には、ピン30は、
図5及び
図6に示すように、吊具Whを係止できるように箱状部10のピン孔12を貫通した状態となる貫通位置P1と、吊具Whを収容したり取り出したりできるように箱状部10のピン孔12から退避した状態となる退避位置P2との間を、移動自在に支持されている。これにより、ピン30を押したり引いたりするだけで、箱状部10に収容された吊具Whを係止したり、係止を解除したりすることができる。なお、ピン30は、吊対象物Sに固定されたブラケットBに支持されていてよく、玉掛装置1の、例えば、箱状部10に支持されていてもよい。
【0028】
ピン30は、吊具Whを係止し、箱状部10のピン孔12を貫通した状態で、第1側板11A及び第2側板11Bに単純支持される。これにより、吊具Whに作用する吊荷重を、ピン30を介して、箱状部10を通じて、吊対象物Sに伝達できる。
【0029】
(作用)
次に、本実施形態に係る玉掛装置1の作用を、海上工事において、支持体Fとなる作業船から、先端に吊具Whを設けた索状体Wによって、吊対象物Sとなるスティンガーを吊る作業の状況に沿って説明する。また、上述の玉掛装置1に吊具Whを取り付け、吊具Whを海上で吊り上げる方法を説明する。
【0030】
(1)
図1に示すように、あらかじめ、吊対象物Sにおける、吊対象物Sと索状体Wの吊具Whとを連結する適宜の箇所に、適宜、複数(ここでは4つ)の玉掛装置1を取り付けておく。ここで、玉掛装置1のガイド部20の導入口21は、吊具Whを誘うべく、上方に開口している。
(2)玉掛装置1のピン30を、退避位置P2に退避させておく。
(3)吊具Whを下降させて、ガイド部20の導入口21に入れる。
(4)続いて、そのまま吊具Whを下降させていくと、吊具Whは、挿通口を通過して、箱状部10の内腔に至る。さらに吊具Whを下降させていくと、吊具Whは、台座50に接する。そこからさらに吊具Whを下降させていくと、吊具Whは、台座50の傾斜面51に沿って斜め下方にスライドし、箱状部10の内腔に収容された状態で、台座の窪みに嵌っている状態になる。ここで、吊具Whは、箱状部10の内面で水平方向の移動を規制され、台座50の傾斜面51で下方への移動を規制されるので、箱状部10を基準とする吊具Whの位置が決まる。なお、箱状部10とピン30の移動範囲との位置関係は決まっているので、箱状部10を基準とする吊具Whの位置が決まれば、ピン30の移動範囲と、吊具Whとの位置関係が決まる。
(5)吊具Whが箱状部10の内腔に収容されて台座50に載置された状態で、ピン30を、退避位置P2から貫通位置P1に移動する。すなわち、ピン30を箱状部10に貫通させる。すると、ピン30は、吊具Whの環状部を貫き、ピン30と吊具Whの環状部が係止した状態になる。この結果、ピン30は、吊具Whの環状部を貫いた状態で、箱状部10の第1側板11A及び第2側板11Bに単純支持される。
(6)作業船のクレーンにより、索状体Wに引張荷重を作用させ、スティンガーを吊り上げる。
このように、吊具Whと玉掛装置1とを簡単に安全に連結でき、スティンガーを吊り上げることができる。
(7)スティンガーを吊り上げて、所望の位置に据え付けた後、玉掛装置1から吊具Whを外す際は、まず、索状体Wに引張荷重が作用していない状態にする。
(8)そして、ピン30を、貫通位置P1から退避位置P2に退避させる。すると、ピン30と吊具Whとの係止が解除される。
(9)吊具Whを上昇させ、箱状部10から取り出す。
このようにして、吊具Whを玉掛装置1から簡単に外すことができる。
【0031】
(その他の実施形態)
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。
【0032】
本実施形態の玉掛装置1は、吊対象物Sに取り付けられ、上方に開口し、索状体Wの先端に設けられる環状部を有する吊具Whを挿通可能な挿通口11を有し、挿通口11に連なる挿通口11より大きな導入口21を上部に有し、吊具Whを水平方向から囲むことが可能な箱状部10を備えている。玉掛装置1は、環状部に挿通自在で吊具Whを係止可能なピン30を備えている。そして、箱状部10は、略水平方向に貫通し、ピン30を挿通自在なピン孔12と、ピン孔12の孔軸13の下方において鉛直下向きに窪む台座50を有している。これにより、吊具Whをガイド部20の導入口21に落とし込み、ピン30を移動させるだけで、吊具Whと玉掛装置1とを連結できるので、簡単に玉掛け作業ができる。よって、玉掛け作業の作業性を向上できる玉掛装置を提供できる。
【0033】
本実施形態の浮体物は、上述の玉掛装置1が取り付けられている。これにより、動揺する浮体物に対しても、簡単に玉掛け作業ができる。
【0034】
本実施形態の浮体物は、スティンガーである。これにより、浮体物が動揺するスティンガーであっても、簡単に玉掛け作用ができ、海上でのスティンガーの施工を容易にできる。
【0035】
本実施形態の方法は、上述の玉掛装置1に吊具Whを取り付け、吊具Whを海上で吊り上げるものである。これにより、海上での玉掛け作業を簡単にできる。
【符号の説明】
【0036】
1 玉掛装置
10 箱状部
11 挿通口
11A 第1側板
11B 第2側板
11C 第3側板
11D 第4側板
12 ピン孔
13 孔軸
14 鉛直面
20 ガイド部
20a テーパ面
21 導入口
30 ピン
50 台座
51 傾斜面
51A 第1傾斜面
51B 第2傾斜面
B ブラケット
d 距離
F 支持体
P1 貫通位置
P2 退避位置
R 外半径
S 吊対象物
W 索状体
Wh 吊具