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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】位相差層付偏光板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20250213BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020171083
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062897
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(72)【発明者】
【氏名】小島 理
(72)【発明者】
【氏名】益永 昇明
(72)【発明者】
【氏名】南原 拓弥
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/022156(WO,A1)
【文献】特開2010-134440(JP,A)
【文献】特開2019-069865(JP,A)
【文献】国際公開第2017/111048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一保護フィルムと、偏光子と前記偏光子の少なくとも片側に配置された保護層とを含む偏光板と、位相差層と、第二保護フィルムとをこの順に有し、前記偏光板の厚みと前記位相差層の厚みとの合計が50μm以下であり、前記位相差層の厚みに対する前記偏光板の厚みの比が5以上である積層体を準備すること、および、
前記積層体を載置面に載置させた状態で、前記積層体を水蒸気量が10.5g/m以上の環境下に置いて加湿処理すること、を含み、
前記積層体を準備することは、前記偏光板と前記位相差層とを活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて積層することを含み、
前記載置面に対し、前記積層体の主面が角度を有する状態で載置
前記加湿処理を複数の前記積層体を重なるように並べた状態で行う、
位相差層付偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記偏光板と前記位相差層とを積層して積層体前駆体を得ることを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記積層体前駆体を切断して枚葉状にすることを含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第一保護フィルムの40℃および92%RHにおける透湿度が30g/m・24h以下である、請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記第二保護フィルムの40℃および92%RHにおける透湿度が30g/m・24h以下である、請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記偏光板と前記位相差層とをロール搬送しながら積層することを含む、請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化後の厚みが0.4μm以上である、請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記積層体は、前記位相差層の前記偏光板が配置されていない側に配置された粘着剤層を有し、
前記加湿処理による前記偏光板と前記位相差層と前記粘着剤層との積層部分の単位面積当たりの重量増加が0.1%以上である、請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記加湿処理の時間が6時間以上である、請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記加湿処理時の水蒸気量が10.5g/m~30g/mである、請求項1からのいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記偏光板と前記位相差層とを水蒸気量が10.2g/m以下の環境下で積層することを含む、請求項1から10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記加湿処理時の水蒸気量が、前記偏光板と前記位相差層との積層時の水蒸気量よりも0.5g/m以上多い、請求項1から11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
前記位相差層または前記保護層の40℃および92%RHにおける透湿度が300g/m・24h以上である、請求項1から12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記偏光板には、前記偏光子の前記位相差層が配置されていない側にのみ保護層が配置されている、請求項1から13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記偏光子の厚み方向の重心が、前記偏光板と前記位相差層との積層部分の厚み方向の重心よりも前記位相差層側に位置している、請求項1から14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
前記位相差層が液晶化合物の配向固化層である、請求項1から15のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差層付偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、代表的には偏光板および位相差板が用いられている。実用的には、偏光板と位相差板とを一体化した位相差層付偏光板が広く用いられている(例えば、特許文献1)。近年、可撓性基板(例えば、樹脂基板)を用いて、画像表示装置の湾曲、屈曲、折り畳み、巻き取りの可能性が検討されている。このような画像表示装置に用いられる位相差層付偏光板として、薄型の位相差層付偏光板が要望されている。しかし、薄型の位相差層付偏光板には、反りが発生しやすいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3325560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、反りが抑制された位相差層付偏光板を歩留まりよく提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、位相差層付偏光板の製造方法が提供される。当該製造方法は、第一保護フィルムと、偏光子と前記偏光子の少なくとも片側に配置された保護層とを含む偏光板と、位相差層と、第二保護フィルムとをこの順に有し、前記偏光板の厚みと前記位相差層の厚みとの合計が50μm以下であり、前記位相差層の厚みに対する前記偏光板の厚みの比が5以上である積層体を準備すること、および、前記積層体を載置面に載置させた状態で、前記積層体を水蒸気量が10.5g/m以上の環境下に置いて加湿処理すること、を含み、前記載置面に対し、前記積層体の主面が角度を有する状態で載置する。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記偏光板と上記位相差層とを積層して積層体前駆体を得ることを含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記積層体前駆体を切断して枚葉状にすることを含む。
1つの実施形態においては、上記加湿処理を複数の上記積層体を並べた状態で行う。
1つの実施形態においては、上記第一保護フィルムの40℃および92%RHにおける透湿度は30g/m・24h以下である。
1つの実施形態においては、上記第二保護フィルムの40℃および92%RHにおける透湿度は30g/m・24h以下である。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記偏光板と上記位相差層とをロール搬送しながら積層することを含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記偏光板と上記位相差層とを活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて積層することを含む。
1つの実施形態においては、上記活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化後の厚みは0.4μm以上である。
1つの実施形態においては、上記積層体は、上記位相差層の上記偏光板が配置されていない側に配置された粘着剤層を有し、上記加湿処理による上記偏光板と上記位相差層と上記粘着剤層との積層部分の単位面積当たりの重量増加は0.1%以上である。
1つの実施形態においては、上記加湿処理の時間は6時間以上である。
1つの実施形態においては、上記加湿処理時の水蒸気量は10.5g/m~30g/mである。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記偏光板と上記位相差層とを水蒸気量が10.2g/m以下の環境下で積層することを含む。
1つの実施形態においては、上記加湿処理時の水蒸気量は、上記偏光板と上記位相差層との積層時の水蒸気量よりも0.5g/m以上多い。
1つの実施形態においては、上記位相差層または上記保護層の40℃および92%RHにおける透湿度は300g/m・24h以上である。
1つの実施形態においては、上記偏光板には、上記偏光子の上記位相差層が配置されていない側にのみ保護層が配置されている。
1つの実施形態においては、上記偏光子の厚み方向の重心は、上記偏光板と上記位相差層との積層部分の厚み方向の重心よりも上記位相差層側に位置している。
1つの実施形態においては、上記位相差層は液晶化合物の配向固化層である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、第一保護フィルムと、偏光板と、位相差層と、第二保護フィルムとをこの順に有する積層体に対し、所定の条件において加湿処理を施すことにより、偏光板および位相差層が所定の厚みを有していても、反りが抑制された位相差層付偏光板を歩留まりよく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第一実施形態に係る積層体の概略の構成を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の第二実施形態に係る積層体の概略の構成を示す模式的な断面図である。
図3】積層体前駆体の反りの状態の一例を示す断面図である。
図4】偏光板から粘着剤層までの積層部分の一例を示す断面図である。
図5】積層体を載置面に載置させた状態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0010】
本発明の1つの実施形態に係る位相差層付偏光板の製造方法は、偏光子を含む偏光板と位相差層とを有する積層体を準備すること、および、積層体を載置面に載置させた状態で所定の環境下に置くことを含む。
【0011】
A.積層体
図1は、本発明の第一実施形態に係る積層体の概略の構成を示す模式的な断面図である。積層体100は、第一保護フィルム31、偏光板10、位相差層20および第二保護フィルム32を視認側からこの順に有する。図示例においては、偏光板10は、偏光子11と、偏光子11の視認側(位相差層20が配置されていない側)に配置された保護層12とを含み、偏光子11と位相差層20との間には保護層は配置されていない。このような形態によれば、例えば、後述の偏光板の厚み、総厚み、厚み比、透湿度を良好に達成し得る。代表的には、上記偏光子の厚み方向の重心は、偏光板と位相差層との積層部分の厚み方向の重心よりも位相差層側に位置している。
【0012】
図示しないが、偏光子11のもう片側(偏光子11と位相差層20との間)に保護層をさらに含んでいてもよい。
【0013】
図2は、本発明の第二実施形態に係る積層体の概略の構成を示す模式的な断面図である。上記第一実施形態では、位相差層20は単一層とされているのに対し、第二実施形態では、位相差層20が第一位相差層21および第二位相差層22を含む積層構造を有している。図示例とは異なり、位相差層20は三層以上の積層構造を有していてもよい。
【0014】
図示しないが、積層体は、その他の機能層をさらに有していてもよい。積層体が有し得る機能層の種類、特性、数、組み合わせ、配置等は、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、積層体は、導電層または導電層付等方性基材をさらに有していてもよい。導電層または導電層付等方性基材は、代表的には、位相差層20と第二保護フィルム32との間に配置される。なお、導電層または導電層付等方性基材を有する積層体(位相差層付偏光板)は、例えば、画像表示パネル内部にタッチセンサが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル型入力表示装置に適用される。別の例としては、積層体は、その他の位相差層をさらに有していてもよい。その他の位相差層の光学的特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数、光弾性係数)、厚み、配置位置等は、目的に応じて適切に設定され得る。具体例として、偏光子11の視認側には、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善するその他の位相差層(代表的には、(楕)円偏光機能を付与する層、超高位相差を付与する層)が設けられていてもよい。このような層を有することにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、得られる位相差層付偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0015】
積層体を構成する各部材は、任意の適切な接着層(図示せず)を介して積層され得る。接着層の具体例としては、接着剤層、粘着剤層が挙げられる。例えば、第一保護フィルム31は、粘着剤層を介して偏光板10に貼り合わせられている。第一保護フィルム31は、本発明の実施形態により得られる位相差層付偏光板が使用に供されるまで(画像表示パネルに積層されるまで)に、もしくは、最終製品(画像表示装置)の製造過程において剥離されてもよいし、最終製品にそのまま搭載されてもよい。
【0016】
例えば、第二保護フィルム32は粘着剤層を介して位相差層20に貼り合わせられている。実用的には、第二保護フィルム32は、本発明の実施形態により得られる位相差層付偏光板が使用に供されるまで仮着される剥離フィルム(セパレーター)として機能し得る。剥離フィルムを仮着することにより、例えば、粘着剤層を保護するとともに、積層体のロール形成が可能となる。
【0017】
例えば、位相差層20は、接着剤層を介して(好ましくは、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて)偏光板10に貼り合わせられている。位相差層20が二層以上の積層構造を有する場合、それぞれの位相差層は、接着剤層を介して(好ましくは、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて)貼り合わせられている。
【0018】
A-1.偏光板
上記偏光板は、偏光子と保護層とを含む。偏光板の厚みは、含まれる保護層の数にもよるが、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは25μm以上である。一方、偏光板の厚みは、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは36μm以下であり、さらに好ましくは33μm以下である。なお、偏光板の厚みには、偏光子と保護層とを積層する際に接着層を用いる場合、その厚みは含まれない。
【0019】
上記偏光子は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含む樹脂フィルムである。樹脂フィルムとしては、上記のとおり、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムが挙げられる。
【0020】
偏光子の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは12μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。一方、偏光子の厚みは、好ましくは1μm以上である。
【0021】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、例えば41.5%~46.0%であり、好ましくは42.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0022】
上記保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成され得る。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂が挙げられる。
【0023】
本発明の実施形態により得られる位相差層付偏光板は、代表的には、画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、視認側に配置される。したがって、保護層12には、必要に応じて、ハードコート(HC)処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0024】
保護層12の厚みは、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは10μm~40μm、さらに好ましくは10μm~30μmである。なお、上記表面処理が施されている場合、保護層12の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0025】
偏光子11と位相差層20との間に配置される保護層(図示せず)は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。偏光子11と位相差層20との間に配置される保護層の厚みは、好ましくは5μm~80μm、より好ましくは10μm~40μm、さらに好ましくは10μm~30μmである。
【0026】
偏光板は、任意の適切な方法で作製され得る。具体的には、偏光板は、単層の樹脂フィルムから作製した偏光子を含んでいてもよく、二層以上の積層体を用いて得られる偏光子を含んでいてもよい。
【0027】
上記単層の樹脂フィルムから偏光子を製造する方法は、代表的には、樹脂フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理と延伸処理とを施すことを含む。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムが用いられる。当該方法は、不溶化処理、膨潤処理、架橋処理等をさらに含んでいてもよい。得られた偏光子の少なくとも一方に保護層を積層することにより、偏光板が得られ得る。このような製造方法は、当業界で周知慣用であるので、詳細な説明は省略する。
【0028】
上記積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性を向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0029】
A-2.位相差層
上記位相差層の厚みは、その構成(単一層であるか積層構造を有するか)にもよるが、好ましくは8μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。一方、位相差層の厚みは、例えば1μm以上である。なお、位相差層が積層構造である場合、「位相差層の厚み」は、各位相差層の厚みの合計を意味する。具体的には、「位相差層の厚み」には接着層の厚みは含まれない。
【0030】
上記位相差層としては、好ましくは、液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)が用いられる。液晶化合物を用いることにより、得られる位相差層のnxとnyとの差を非液晶材料に比べて格段に大きくすることができるので、所望の面内位相差を得るための位相差層の厚みを格段に小さくすることができる。したがって、位相差層付偏光板の顕著な薄型化を実現することができる。本明細書において「配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。位相差層においては、代表的には、棒状の液晶化合物が位相差層の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。
【0031】
上記液晶配向固化層は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0032】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0033】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性モノマーまたは架橋性モノマーである場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0034】
液晶化合物の具体例および配向固化層の形成方法の詳細は、特開2006-163343号公報に記載されている。当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0035】
位相差層20は、上述のとおり、単一層であってもよいし、二層以上の積層構造を有していてもよい。
【0036】
図1に示すように、位相差層20が単一層である場合の1つの実施形態においては、位相差層20は、λ/4板として機能し得る。具体的には、位相差層のRe(550)は、好ましくは100nm~180nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは110nm~160nmである。位相差層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。位相差層が上述の液晶配向固化層である場合、その厚みは、例えば1.0μm~2.5μmである。本実施形態においては、位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは40°~50°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは44°~46°である。本実施形態では、位相差層は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。なお、この実施形態においては、積層体は、位相差層20と第二保護フィルム32との間に配置されるnz>nx=nyの屈折率特性を示す層(その他の位相差層、図示せず)をさらに有し得る。
【0037】
位相差層20が単一層である場合の別の実施形態においては、位相差層20は、λ/2板として機能し得る。具体的には、位相差層のRe(550)は、好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは230nm~290nmであり、さらに好ましくは230nm~280nmである。位相差層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。位相差層が上述の液晶配向固化層である場合、その厚みは、例えば2.0μm~4.0μmである。本実施形態においては、位相差層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは12°~16°である。
【0038】
図2に示すように、位相差層20が積層構造を有する場合、位相差層20は、例えば、偏光板側から順に第一位相差層(H層)21と第二位相差層(Q層)22とが配置された、二層の積層構造を有する。H層は、代表的にはλ/2板として機能し得、Q層は、代表的にはλ/4板として機能し得る。具体的には、H層のRe(550)は好ましくは200nm~300nmであり、より好ましくは220nm~290nmであり、さらに好ましくは230nm~280nmであり;Q層のRe(550)は、好ましくは100nm~180nmであり、より好ましくは110nm~170nmであり、さらに好ましくは110nm~150nmである。H層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。H層が上述の液晶配向固化層である場合、その厚みは、例えば2.0μm~4.0μmである。Q層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。Q層が上述の液晶配向固化層である場合、その厚みは、例えば1.0μm~2.5μmである。本実施形態においては、H層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは12°~16°であり;Q層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度は、好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは72°~76°である。位相差層20が積層構造を有する場合、それぞれの層(例えば、H層およびQ層)は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0039】
位相差層20(積層構造を有する場合にはそれぞれの層)は、代表的には、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す。なお、「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny>nzまたはny<nzとなる場合があり得る。位相差層のNz係数は、好ましくは0.9~1.5であり、より好ましくは0.9~1.3である。
【0040】
上述のとおり、位相差層は、好ましくは液晶配向固化層である。上記液晶化合物としては、例えば、液晶相がネマチック相である液晶化合物(ネマチック液晶)が挙げられる。このような液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーや液晶モノマーが使用可能である。液晶化合物の液晶性の発現機構は、リオトロピックでもサーモトロピックでもどちらでもよい。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。
【0041】
液晶化合物が液晶モノマーである場合、当該液晶モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーであることが好ましい。液晶モノマーを重合または架橋(すなわち、硬化)させることにより、液晶モノマーの配向状態を固定できるからである。液晶モノマーを配向させた後に、例えば、液晶モノマー同士を重合または架橋させれば、それによって上記配向状態を固定することができる。ここで、重合によりポリマーが形成され、架橋により3次元網目構造が形成されることとなるが、これらは非液晶性である。したがって、形成された位相差層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、位相差層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
【0042】
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、さらに好ましくは50℃~100℃であり、最も好ましくは60℃~90℃である。
【0043】
上記液晶モノマーとしては、任意の適切な液晶モノマーが採用され得る。例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。液晶モノマーとしては、ネマチック性液晶モノマーが好ましい。
【0044】
A-3.偏光板と位相差層との厚みの関係
上記偏光板の厚みと上記位相差層の厚みとの合計(以下、単に「総厚み」と称する場合がある)は、50μm以下であり、好ましくは45μm以下であり、より好ましくは40μm以下である。一方、総厚みは、例えば25μm以上である。
【0045】
上記位相差層の厚みに対する上記偏光板の厚みの比(偏光板の厚み/位相差層の厚み、以下、単に「厚み比」と称する場合がある)は、5以上であり、好ましくは8以上であり、より好ましくは10以上である。一方、厚み比は、好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下である。
【0046】
本発明の実施形態による製造方法に用いられる積層体は、総厚みが薄く、かつ、総厚みに対する偏光板の厚みの割合が大きい(位相差層の厚みの割合が小さい)といえる。本発明者らは、総厚みおよび厚み比が上記所定範囲である場合において、上記反りの問題が発生しやすいことを見出した。より詳細には、偏光板の厚みと位相差層の厚みとの差が大きくない場合、および、偏光板の厚みが過度に大きい場合には、位相差層付偏光板に反りの問題は生じにくい。本発明者らは、このような新たな知見に基づいて反りの抑制について鋭意検討した結果、本発明の実施形態の製造方法により反りを効率的に抑制できることを見出した。
【0047】
A-4.第一保護フィルム
第一保護フィルム31は、任意の適切な材料で形成され得る。形成材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー;ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系ポリマー;が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
第一保護フィルムは、40℃および92%RHにおける透湿度が30g/m・24h以下であることが好ましく、より好ましくは20g/m・24h以下である。このような第一保護フィルムによれば、後述の加湿処理において、適切に積層体(好ましくは、偏光子)に水分が付与され、反りが抑制された位相差層付偏光板を得ることができる。一方、第一保護フィルムの40℃および92%RHにおける透湿度は、例えば5g/m・24h以上である。
【0049】
第一保護フィルムの厚みは、好ましくは15μm~50μmであり、より好ましくは25μm~40μmである。
【0050】
上述のとおり、第一保護フィルム31は、粘着剤層を介して偏光板10に貼り合わせられ得る。粘着剤層としては、任意の適切な構成が採用され得る。具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベース樹脂を形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベース樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ベース樹脂は、好ましくはアクリル樹脂である(具体的には、粘着剤層は、好ましくはアクリル系粘着剤で構成される)。粘着剤層の厚みは、例えば5μm~15μmである。粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率は、例えば1.0×10Pa~1.0×10Paである。
【0051】
1つの実施形態においては、第一保護フィルム上に、予め、上記粘着剤層が形成された積層物(以下、「表面保護フィルム」と称する)が用いられる。表面保護フィルムの厚みは、好ましくは30μm~60μmであり、より好ましくは30μm~50μmである。なお、上述のように、第一保護フィルムが剥離される場合、粘着剤層とともに(表面保護フィルムごと)剥離され得る。
【0052】
A-5.第二保護フィルム
第二保護フィルム32は、任意の適切なプラスチックフィルムで構成され得る。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが挙げられる。上述のとおり、第二保護フィルム32は、セパレーターとして機能し得る。具体的には、第二保護フィルム32として、表面が剥離剤でコートされたプラスチックフィルムが好ましく用いられる。剥離剤の具体例としては、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤が挙げられる。
【0053】
第二保護フィルムは、40℃および92%RHにおける透湿度が30g/m・24h以下であることが好ましく、より好ましくは20g/m・24h以下である。このような第二保護フィルムによれば、後述の加湿処理において、適切に積層体(好ましくは、偏光子)に水分が付与され、反りが抑制された位相差層付偏光板を得ることができる。一方、第二保護フィルムの40℃および92%RHにおける透湿度は、例えば5g/m・24h以上である。
【0054】
第二保護フィルムの厚みは、好ましくは20μm~80μmであり、より好ましくは35μm~55μmである。
【0055】
A-6.積層体の作製
積層体100は、例えば、偏光板10と位相差層20とを積層して積層体前駆体を作製し、得られた積層体前駆体に第一保護フィルム31および第二保護フィルム32を積層することにより得ることができる。
【0056】
偏光板10と位相差層20との積層は、例えば、これらをロール搬送しながら(いわゆるロールトゥロールにより)行われる。積層は、代表的には、基材に形成された液晶配向固化層を転写することにより行われる。図2に示すように、位相差層が積層構造を有する場合には、それぞれの位相差層を偏光板に順次積層(転写)してもよく、位相差層の積層物を偏光板に積層(転写)してもよい。
【0057】
上記転写は、例えば、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて行われる。活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化後の厚み(接着剤層の厚み)は、好ましくは0.4μm以上であり、より好ましくは0.4μm~3.0μmであり、さらに好ましくは0.6μm~1.5μmである。上述の所定の総厚みおよび厚み比を有する位相差層付偏光板の反りは、主として、偏光板と位相差層との積層に用いられる接着剤(具体的には、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化時の収縮)に起因し、偏光板10と位相差層20とを積層して得られる積層体前駆体には反りが生じ得る。
【0058】
図3は、積層体前駆体の反りの状態の一例を示す断面図である。なお、図3では、図を見やすくするために積層体前駆体の断面は、ハッチングを省略している。図3に示す例では、積層体前駆体90には、偏光板10側に凸の反りが生じている。反りは、偏光板10(偏光子11)の吸収軸方向に沿って発生する傾向にある。
【0059】
偏光板10と位相差層20との積層は、水蒸気量(A1)が10.2g/m以下の環境下で行われることが好ましい。積層における水蒸気量(A1)は、より好ましくは6.0g/m~10.0g/mであり、さらに好ましくは8.0g/m~9.5g/mである。水蒸気量(A1)がこのような範囲である環境下で積層を行うことにより、例えば、後述の加湿処理による効果が顕著なものとなる。積層におけるこのような水蒸気量(A1)は、例えば、温度18℃~25℃の範囲で相対湿度を温度に応じて変化させることにより実現され得る。水蒸気量(A1)は、例えば、温度が18℃である場合には、相対湿度を65%RH以下とすることにより実現され得;また例えば、温度が20℃である場合には、相対湿度を55%RH以下とすることにより実現され得;また例えば、温度が23℃である場合には、相対湿度を45%RH以下とすることにより実現され得る。なお、相対湿度の下限は、例えば30%RHであり得る。
【0060】
1つの実施形態においては、保護層12および位相差層20のいずれかの40℃および92%RHにおける透湿度は、好ましくは300g/m2・24h以上であり、より好ましくは400g/m2・24h~1000g/m2・24hであり、さらに好ましくは400g/m2・24h~800g/m2・24hである。保護層12および位相差層20のいずれかがこのような透湿度であれば、後述の加湿処理による効果が顕著に得られ得る。
【0061】
上述のとおり、積層体がその他の機能層(例えば、導電層、その他の位相差層)をさらに有する場合、機能層は、所定の位置に、任意の適切な方法で、積層または形成され得る。
【0062】
少なくとも偏光板10および位相差層20を有する積層体前駆体と第一保護フィルム31との積層は、例えば、上記表面保護フィルムを貼り合わせることにより行われる。積層体前駆体と第二保護フィルム32との積層は、例えば、粘着剤を用いて行われる。粘着剤の厚み(位相差層20と第二保護フィルム32との間に配置される粘着剤層の厚み)は、例えば10μm~20μmである。
【0063】
B.加湿処理
上記積層体は、加湿処理に供される。積層体に加湿処理を施すことにより、積層体(好ましくは、偏光子)に水分が付与され、反りが抑制された位相差層付偏光板を得ることができる。例えば、積層体を水蒸気量が10.5g/m以上の環境下に置くことにより、加湿処理を行う。加湿処理時の水蒸気量(A2)は、好ましくは10.5g/m~30g/mであり、より好ましくは11g/m~20g/mである。
【0064】
上記加湿処理時の水蒸気量(A2)は、例えば、温度が18℃である場合には、相対湿度を80%RH以上とすることにより実現され得;また例えば、温度が20℃である場合には、相対湿度を60%RH以上とすることにより実現され得;また例えば、温度が23℃である場合には、相対湿度を50%RH以上とすることにより実現され得る。なお、相対湿度の上限は、例えば100%RHであり得る。
【0065】
1つの実施形態においては、上記水蒸気量(A1)よりも多い水蒸気量を満足する環境下で積層体に加湿処理を施す。より詳細には、加湿処理時の水蒸気量(A2)と上記水蒸気量(A1)との差は、0.5g/m以上であることが好ましく、より好ましくは1.0g/m~28g/mであり、さらに好ましくは1.0g/m~12g/mであり、特に好ましくは1.5g/m~10g/mであり、最も好ましくは1.5g/m~8g/mである。このような条件で加湿することにより、積層体に適切な量の水分を付与することができる。より詳細には、積層体を収縮させることなく積層体に水分を付与することができる。加湿処理において、積層体に付与される水分量が多すぎると、例えば、初期の反りと凸の向きが逆の反りおよび/または面内において初期の反りの方向と直交する方向の反りが発生する場合がある。
【0066】
1つの実施形態においては、積層体に対し、偏光板から粘着剤層までの積層部分の単位面積当たりの重量が0.1%以上増加するように加湿処理を施すのが好ましい。加湿処理による偏光板から粘着剤層までの積層部分の単位面積当たりの重量増加は、より好ましくは0.1%~2.0%であり、さらに好ましくは0.1%~1.0%であり、特に好ましくは0.1%~0.5%である。重量増加をこのような範囲とすることにより、偏光子に所望量の水分を吸収させることができる。その結果、得られる位相差層付偏光板の反りを効果的に抑制することができる。ここで、偏光板から粘着剤層までの積層部分は、例えば、図4に示すように、偏光板10、接着剤層40、位相差層20(積層構造を有する場合は接着剤層を含む)および粘着剤層50の積層部分80をいう。なお、図4では、積層部分の断面は、ハッチングを省略している。
【0067】
加湿処理の時間は、好ましくは6時間以上であり、より好ましくは12時間以上であり、さらに好ましくは24時間以上である。このような処理時間によれば、例えば、上記所望の重量増加(水分吸収)を良好に達成し得る。一方、加湿処理の時間は、例えば150時間以下である。加湿処理の時間が過度に長くなっても効果は変わらないので、加湿処理の時間の上限は所望される重量増加量と製造効率とのバランスで決定され得る。
【0068】
加湿処理の際、上記積層体は、その主面が載置面に対して角度を有する状態で載置される。図5は、積層体を載置面に載置させた状態の一例を示す断面図である。なお、図5では、図を見やすくするために積層体の断面は、ハッチングを省略している。図示例では、積層体100が、載置面Sに、積層体100の主面100aが載置面Sに対して角度θを有するように載置されている。角度θは、0°を超え90°以下であり、好ましくは70°~90°であり、より好ましくは80°~90°である。
【0069】
また、図示例では、n枚の枚葉状の積層体100が、隣り合う積層体100の主面が重なるように並べられている。代表的には、加湿処理に先立って、積層体は所定のサイズの枚葉状にされる。枚葉状の積層体は、長尺状の積層体前駆体を切断することにより得ることが好ましい。具体的には、長尺状の積層体前駆体を切断することにより枚葉状の積層体前駆体を得た後、この枚葉状の積層体前駆体に第一保護フィルムおよび第二保護フィルムを積層して、枚葉状の積層体を得ることが好ましい。このような形態によれば、例えば、大がかりなロール搬送(ロールトゥロール)設備を必要としないことから、製造効率を向上させることができる。なお、切断は、反りが生じている積層体前駆体に対し、図5に示すように、得られる枚葉状の積層体が重ね合わせられるように行うことが好ましい。1つの実施形態においては、長尺状の積層体前駆体の長手方向に対して45°の方向に沿って切断する。別の実施形態においては、長尺状の積層体前駆体の長手方向および幅方向(長手方向と直交する方向)に沿って切断する。
【0070】
このような形態によれば、水分を効率的に積層体(偏光子)に吸収させて、反りが抑制された位相差層付偏光板を歩留まりよく製造することができる。具体的には、積層体の主面が載置面に対して角度を有する状態を採用することにより、図5に示すように、複数の積層体に対して一度に均一な状態(例えば、積層体にかかる力が均一な状態)で加湿処理を施すことができる。その結果、複数の積層体に対し、均一に水分を付与することができ(例えば、一度の加湿処理により、複数の積層体において、上記偏光板と位相差層との積層部分の重量増加を良好に達成し得)、反りが抑制された位相差層付偏光板を歩留まりよく製造することができる。また、得られる位相差層付偏光板は外観にも優れ得る。
【実施例
【0071】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚みおよび透湿度は下記の測定方法により測定した値である。また、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
<透湿度>
透湿度を、カップ法(JIS Z 0208)により求めた。
【0072】
[実施例1]
(偏光板の作製)
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、この樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成し、樹脂基材/偏光子の構成を有する積層物を得た。
【0073】
得られた積層物の偏光子側に、紫外線硬化型接着剤を介して、HC-COPフィルム(厚み27μm)を保護層として貼り合わせた。なお、HC-COPフィルムは、シクロオレフィン系樹脂(COP)フィルム(厚み25μm)にHC層(厚み2μm)が形成されたフィルムであり、COPフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。次いで、偏光子から樹脂基材を剥離してHC-COPフィルム(保護層)/偏光子の構成を有する偏光板を得た。
【0074】
(位相差層の作製)
ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名「Paliocolor LC242」、下記式で表される)10gと、当該重合性液晶化合物に対する光重合開始剤(BASF社製:商品名「イルガキュア907」)3gとを、トルエン40gに溶解して、液晶組成物(塗工液)を調製した。
【化1】
【0075】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚み38μm)表面を、ラビング布を用いてラビングし、配向処理を施した。配向処理の方向は、偏光板に貼り合わせる際に偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て15°方向となるようにした。この配向処理表面に、上記液晶塗工液をバーコーターにより塗工し、90℃で2分間加熱乾燥することによって液晶化合物を配向させた。このようにして形成された液晶層に、メタルハライドランプを用いて1mJ/cmの光を照射し、当該液晶層を硬化させることによって、PETフィルム上に液晶配向固化層A(H層)を形成した。液晶配向固化層Aの厚みは2.5μm、面内位相差Re(550)は270nmであった。さらに、液晶配向固化層Aは、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。
【0076】
塗工厚みを変更したこと、および、配向処理方向を偏光子の吸収軸の方向に対して視認側から見て75°方向となるようにしたこと以外は上記と同様にして、PETフィルム上に液晶配向固化層B(Q層)を形成した。液晶配向固化層Bの厚みは1.5μm、面内位相差Re(550)は140nmであった。さらに、液晶配向固化層Bは、nx>ny=nzの屈折率特性を示した。
【0077】
(積層体の作製)
得られた偏光板の偏光子側に、得られた液晶配向固化層A(H層)および液晶配向固化層B(Q層)をこの順に転写した。このとき、偏光子の吸収軸と配向固化層Aの遅相軸とのなす角度が15°、偏光子の吸収軸と配向固化層Bの遅相軸とのなす角度が75°になるようにして転写(貼り合わせ)を行った。それぞれの転写は、紫外線硬化型接着剤(厚み1.0μm)を介して行った。こうして、積層体前駆体を得た。なお、転写(貼り合わせ)は、ロール搬送しながら行った。さらに、転写(貼り合わせ)は、水蒸気量が9.3g/mの環境下(23℃および45%RH)で行った。
得られた積層体前駆体の総厚みは36μmであり、厚み比は8であった。
【0078】
得られた長尺状の積層体前駆体を、長手方向および幅方向(長手方向と直交する方向)に対して45°の方向に沿って切断し、165mm×80mmの枚葉状の積層体前駆体を得た。なお、長手方向は、偏光子の吸収軸方向に相当する。
【0079】
次いで、積層体前駆体の偏光板の保護層側に、表面保護フィルム(厚み48μm)を貼り合わせた。なお、表面保護フィルムは、PET系フィルム(厚み38μm、透湿度18g/m・24h)に粘着剤層(厚み10μm)が形成されたフィルムである。
さらに、積層体前駆体の液晶配向固化層B(Q層)側に、セパレーター(厚み38μm、透湿度18g/m・24h)を、粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合わせ、165mm×80mmの枚葉状の積層体を得た。
同様に、165mm×80mmの枚葉状の積層体を計500枚作製した。
【0080】
(加湿処理)
得られた枚葉状の積層体500枚を重ね合わせて積層体集合体とし、図5に示すように、載置面に対して各積層体の主面が90°の角度をなすように載置させた状態で、積層体に加湿処理を施した。具体的には、所定のサイズを有するケース内に積層体500枚(積層体集合体)を収容し、ケースの内側底面(載置面)に対して各積層体の主面が90°の角度をなすように載置させた状態で加湿処理を行った。ここで、各積層体の長辺がケースの内側底面に接し、ケース内の空いたスペース(積層体集合体の前端と後端に位置する積層体の主面とケースの内側側面との間のスペース)に未発泡のポリスチレン(PS)シートを埋めた状態で加湿処理を行った。加湿処理は、23℃および60%RH(水蒸気量が12.4g/m)で24時間行った。
こうして、位相差層付偏光板を得た。
【0081】
[実施例2]
偏光板の作製において、保護層としてHC-COPフィルムを用いるかわりに、TACフィルム(厚み27μm)の用いたこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
【0082】
[比較例1]
長尺状の積層体前駆体を切断しなかったこと、および、長尺状の積層体を作製してロール状の巻き取った状態で加湿処理に供したこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
【0083】
[比較例2]
加湿処理において、積層体集合体を載置面に対して各積層体の主面が0°の角度をなすように載置させた(載置面に積層体500枚を重ねて載置した)こと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
【0084】
[比較例3]
加湿処理を23℃および45%RH(水蒸気量が9.3g/m)で24時間行ったこと以外は実施例1と同様にして、位相差層付偏光板を得た。
【0085】
[参考例1]
厚み60μmのPVA系樹脂フィルムの長尺ロールを、ロール延伸機により総延伸倍率が6.0倍になるようにして長手方向に一軸延伸しながら、同時に膨潤、染色、架橋および洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み22μmの偏光子を作製した。得られた偏光子の一方の面にHC層付TACフィルム(厚み71μm)を貼り合わせた。さらに、偏光子のもう一方の面に、逆分散波長依存性を示し、Re(550)が140nmであるポリカーボネート樹脂位相差フィルム(厚み58μm)を貼り合わせた。ここで、位相差フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が45°となるよう貼り合わせた。このようにして、位相差層付偏光板を得た。位相差層付偏光板の総厚みは151μmであり、厚み比は1.6であった。この位相差層付偏光板を165mm×80mmサイズに切り出し、平面上に静置したところ、反りは認められなかった。
【0086】
[参考例2]
参考例1と同様にして厚み22μmの偏光子を作製した。得られた偏光子の一方の面にHC層付TACフィルム(厚み91μm)を貼り合わせ、もう一方の面にTACフィルム(厚み80μm)を貼り合わせ、偏光板を得た。この偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして、HC層付TACフィルム/偏光子/TACフィルム/接着剤層/位相差層(H層)/接着剤層/位相差層(Q層)の構成を有する位相差層付偏光板を得た。位相差層付偏光板の総厚みは197μmであり、厚み比は48であった。この位相差層付偏光板を165mm×80mmサイズに切り出し、平面上に静置したところ、反りは認められなかった。
【0087】
実施例および比較例について、下記の評価を行った。評価結果を表1および表2にまとめる。
<評価>
1.単位面積当たりの重量変化
電子天秤を用いて、加湿前後の偏光板から粘着剤層までの積層部分(図4に示す積層部分80)の重量を測定し、得られた測定値から算出した。
2.反り量
平面上に、枚葉状の積層体前駆体および位相差層付偏光板を、その位相差層側が平面側となるように静置した時の、平面から最も高い部分の高さを測定し、反り量を求めた。
なお、反りが静置面側に凸である場合を「正(+)」、静置面と反対側に凸である場合を「負(-)」で表す。また、表中の「(MD)」は上記ロール搬送の搬送方向に相当し、偏光子の吸収軸方向に相当する。
3.外観
得られた位相差層付偏光板の外観を目視により観察した。なお、評価基準は下記のとおりである。
(評価基準)
良好:打痕は確認されない
不良:打痕が確認される
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
表1から明らかなように、実施例1,2では、加湿処理による重量変化は0.1%から0.4%の範囲内で確認でき、得られた位相差層付偏光板の反りは-20mmから+20mmの範囲内におさまっていた(-ではMD方向の反りが、+ではMD方向と直交するTD方向の反りが確認された)。このように、実施例1,2では、複数の積層体に対して均一に水分を付与することができ、積層体前駆体に生じた反りの矯正具合についても均一性が高かった。
これに対し、載置面に積層体を重ねて載置した比較例2では、加湿処理による重量変化にばらつきが確認された。具体的には、積層体集合体の上の方に位置する積層体は下の方に位置する積層体に比べてかかる力が小さく、上の方に位置する積層体の方が下の方に位置する積層体よりも水分を多く吸収し、上の方に位置する積層体では積層体前駆体に生じた反りと凸の向きが逆の反り確認された。一方で、下の方に位置する積層体では積層体前駆体に生じた反りは改善されていた。このように、積層体前駆体に生じた反りの矯正具合にもばらつきが確認された。また、得られた位相差層付偏光板には打痕も確認された。
【0091】
ロール状の状態で加湿処理した比較例1では、ロール状に巻かれた内側部分において単位面積当たりの重量は変化せず、反りも改善されなかった。
なお、参考例から明らかなように、このような反りは、総厚みが薄く、かつ、総厚みに対する偏光板の厚みの割合が大きい位相差層付偏光板に特有の課題であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の1つの実施形態に係る位相差層付偏光板は、画像表示装置の位相差層付偏光板として用いられ、特に、湾曲した、あるいは、屈曲、折り畳み、または巻き取り可能な画像表示装置に好適に用いられ得る。画像表示装置としては、代表的には、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置が挙げられる。
【符号の説明】
【0093】
10 偏光板
11 偏光子
12 保護層
20 位相差層
21 第一位相差層(H層)
22 第二位相差層(Q層)
90 積層体前駆体
100 積層体
図1
図2
図3
図4
図5