(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】車両の運転制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/09 20120101AFI20250213BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20250213BHJP
B60W 30/18 20120101ALI20250213BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20250213BHJP
B60W 40/10 20120101ALI20250213BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250213BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
B60W30/09
B60W30/095
B60W30/18
B60W40/02
B60W40/10
G08G1/16 C
G08G1/09 H
(21)【出願番号】P 2020219595
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 亮介
(72)【発明者】
【氏名】小山 哉
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-172113(JP,A)
【文献】特開2019-142318(JP,A)
【文献】特開2020-154748(JP,A)
【文献】特開2017-207954(JP,A)
【文献】特開2019-142303(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042498(WO,A2)
【文献】特開2019-142428(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220717(WO,A2)
【文献】特開2007-323117(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0121362(US,A1)
【文献】特開2020-154532(JP,A)
【文献】特開2018-108768(JP,A)
【文献】特開2020-135320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
G08G 1/00 ~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により移動体から収集した道路交通情報及びまたは移動体情報に基づいて道路地図情報をリアルタイムに更新する道路地図情報更新手段と、
前記道路地図情報に基づいて車両の制御情報を演算する制御情報演算手段と、
前記制御情報に基づいて前記車両の運転制御を行う運転制御実行手段と、を備えた車両の運転制御システムであって、
前記制御情報演算手段は、前記道路地図情報に基づいて、対象車両の前方の設定距離以内に停止車両が存在し且つ前記対象車両が前記停止車両の周辺を通過可能であることを判定したとき、前記対象車両が前記停止車両の周辺を通過するまでの間の車速を第1の設定車速以下に制限するための前記制御情報を演算し、さらに、前記停止車両のドアが開扉されている場合には、前記開扉から設定時間が経過するまでの
間の車速を前記第1の設定車速よりも遅い第2の設定車速以下に制限するための前記制御情報を演算することを特徴とする車両の運転制御システム。
【請求項2】
前記制御情報演算手段は、前記対象車両の走行車線が前記停止車両と同一車線であり且つ前記対象車両が走行可能な隣接車線が前記走行車線に併設されているとき、前記対象車両を前記隣接車線に車線変更するための前記制御情報を演算することを特徴とする請求項1に記載の車両の運転制御システム。
【請求項3】
前記移動体に設けられ道路交通検出情報及び移動体検出情報を取得する情報取得手段と、
前記移動体に設けられた移動体側通信機と、
管制エリア毎に配置された管制装置に設けられた管制側通信機と、を備え、
前記道路地図情報更新手段及び前記制御情報演算手段は、前記管制装置に設けられ、
前記道路地図情報更新手段は、前記移動体側通信機を通じて前記管制側通信機が受信した前記道路交通検出情報及びまたは前記移動体検出情報に基づいて前記道路交通情報及び前記移動体情報を認識することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の運転制御システム。
【請求項4】
前記移動体である前記車両に設けられ道路交通検出情報及び移動体検出情報を取得する情報取得手段と、
前記移動体に設けられた移動体側通信機と、
管制エリア毎に配置された管制装置に設けられた管制側通信機と、を備え、
前記道路地図情報更新手段は、前記管制装置に設けられ、前記移動体側通信機を通じて前記管制側通信機が受信した前記道路交通検出情報及びまたは前記移動体検出情報に基づいて前記道路交通情報及びまたは前記移動体情報を認識し、
前記制御情報演算手段は、前記管制装置に設けられ、前記道路交通情報及びまたは前記移動体情報に基づいて前記制御情報を演算する管制側制御情報演算手段、或いは、前記対象車両に設けられ、前記管制側通信機を通じて前記移動体側通信機が受信した前記道路交通情報及びまたは前記移動体情報に基づいて前記制御情報を演算する移動体側制御情報演算手段のうちの少なくとも何れか一方と、を備え、
前記運転制御実行手段は、前記管制側制御情報演算手段において演算した前記制御情報、或いは、前記移動体側制御情報演算手段において演算した前記制御情報のうちの少なくとも何れか一方に基づいて前記運転制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の運転制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停止車両の周辺を通過する際の運転制御機能を備えた車両の運転制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、ドライバの運転操作の負担を軽減するとともに、安全性の向上を実現することを目的として、ドライバの運転操作を支援するための運転制御装置が実用化されている。この種の運転制御装置では、ドライバによる主体的な運転操作を前提として操舵支援制御や加減速制御を行う走行制御モードや、ドライバの運転操作を必要とすることなく車両を走行させるための走行制御モード(所謂、自動運転モード)についての各種技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
運転制御装置による走行制御は、基本的には、追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)機能と車線中央維持(ALKC:Active Lane Keep Centering)制御機能等とを備えることによって実現される。そして、このような走行制御により、先行車との車間を維持しつつ走行車線に沿って車両を自動走行させることができる。
【0004】
また、運転制御装置においては、カメラやレーダ等の自律センサを用いた走行環境認識装置によって自車両の前方に車両や歩行者等の障害物を認識したとき、当該障害物に対する緊急ブレーキ(AEB(Autonomous Emergency Braking):衝突被害軽減ブレーキ)制御を行い、自車両と障害物との相対速度が零になるまで減速を行う技術が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような緊急ブレーキ制御は、車両に搭載した自律センサ等からの情報に基づいて障害物を実際に認識した後に開始されるものである。従って、例えば、停止車両の周辺を通過する際に当該停止車両から降車した乗員が歩行者として自車両の前方に飛び出してきた場合には、緊急ブレーキ制御による衝突回避を適切に行うことが困難となる虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、停止車両からの歩行者の飛び出しに対しても適切な衝突回避制御を行うことができる車両の運転制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による車両の運転制御システムは、無線通信により移動体から収集した道路交通情報及び車両情報に基づいて道路地図情報をリアルタイムに更新する道路地図情報更新手段と、前記道路地図情報に基づいて車両の制御情報を演算する制御情報演算手段と、前記制御情報に基づいて前記車両の運転制御を行う運転制御実行手段と、を備えた車両の運転制御システムであって、前記制御情報演算手段は、前記道路地図情報に基づいて、対象車両の前方の設定距離以内に停止車両が存在し且つ前記対象車両が前記停止車両の周辺を通過可能であることを判定したとき、前記対象車両が前記停止車両の周辺を通過するまでの間の車速を第1の設定車速以下に制限するための前記制御情報を演算し、さらに、前記停止車両のドアが開扉されている場合には、前記開扉から設定時間が経過するまでの間の車速を前記第1の設定車速よりも遅い第2の設定車速以下に制限するための前記制御情報を演算するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両の運転制御システムによれば、停止車両からの歩行者の飛び出しに対しても適切な衝突回避制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係り、車両の運転制御システムを示す概略構成図
【
図2】同上、高速無線通信により管制装置に接続された車両の運転制御装置及び監視装置を示す説明図
【
図3】同上、ステレオカメラの監視領域を示す説明図
【
図4】同上、車両の運転制御装置から送信される道路交通検出情報及び車両検出情報を示す説明図
【
図5】同上、監視装置から送信される道路交通検出情報を示す説明図
【
図6】同上、運転制御装置の通信制御ユニットにおける通信制御ルーチンを示すフローチャート
【
図7】同上、管制装置の通信制御ユニットにおける通信制御ルーチンを示すフローチャート
【
図8】同上、管制装置の情報認識制御ユニットにおける道路地図情報認識ルーチンを示すフローチャート
【
図9】同上、管制装置の走行制御ユニットにおける目標操舵量演算ルーチンを示すフローチャート
【
図10】同上、管制装置の走行制御ユニットにおける開扉フラグ設定ルーチンを示すフローチャート
【
図11】同上、管制装置の走行制御ユニットにおける目標加減速度演算ルーチンを示すフローチャート(その1)
【
図12】同上、管制装置の走行制御ユニットにおける目標加減速度演算ルーチンを示すフローチャート(その2)
【
図13】同上、停止車両に対する対象車両の挙動を示す説明図
【
図14】同上、停止車両に対する対象車両の挙動を示す説明図
【
図15】同上、停止車両に対する対象車両の挙動を示す説明図
【
図16】変形例に係り、通信端末の要部を示す構成図
【
図17】同上、高速無線通信により管制装置に接続された車両の運転制御装置、通信端末、及び監視装置を示す説明図
【
図18】同上、通信端末を用いた車両の運転制御システムを示す概略構成図
【
図19】同上、駐車場における停止車両に対する対象車両の挙動を示す説明図
【
図20】本発明の第2の実施形態に係り、管制装置の走行制御ユニットにおける目標加減速度演算ルーチンを示すフローチャート(その1)
【
図21】同上、管制装置の走行制御ユニットにおける目標加減速度演算ルーチンを示すフローチャート(その2)
【
図22】本発明の第2の実施形態に係り、車両の運転制御システムを示す概略構成図
【
図23】同上、管制装置の通信制御ユニットにおける通信制御ルーチンを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。
図1~
図15は本発明の第1の実施形態に係り、
図1は車両の運転制御システムを示す概略構成図、
図2は高速無線通信により管制装置に接続された車両の運転制御装置及び監視装置を示す説明図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態における運転制御システム1は、移動体である車両5に搭載された運転制御装置10と、道路沿いに設けられた監視装置50と、ネットワーク環境NWに設けられる狭域サーバからなる複数の管制装置70と、を備えて構成されている。
【0013】
運転制御装置10は、車外の走行環境を検出するための自律センサとして、例えば、カメラユニット11を有する。また、運転制御装置10は、通信制御ユニット(以下、「通信_ECU」と称す)21と、走行制御ユニット(以下、「走行_ECU」と称す)22と、エンジン制御ユニット(以下、「E/G_ECU」と称す)23と、パワーステアリング制御ユニット(以下、「PS_ECU」と称す)24と、ブレーキ制御ユニット(以下、「BK_ECU」と称す)25と、警報制御ユニット(以下、「警報_ECU」と称す)26と、を備える。これら各制御ユニット21~26は、CAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を介して接続されている。
【0014】
カメラユニット11は、例えば、車室内前部の上部中央に固定されている。このカメラユニット11は、例えば、メインカメラ11a及びサブカメラ11bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)11cと、を有している。
【0015】
メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、例えば、車両5の前方の実空間をセンシングする。すなわち、メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、例えば、車両5の車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配置され、車両5の前方領域Af(
図3参照)を異なる視点からステレオ撮像する。
【0016】
IPU11cは、両カメラ11a,11bでステレオ撮像した車両5の前方走行環境の画像情報を所定に処理し、対応する対象の位置ズレ量から求めた距離情報を含む画像情報(距離画像情報)を生成する。
【0017】
通信_ECU21には、管制装置70及び他車両5の運転制御装置10との間で無線通信を行うための送受信機として、高信頼・低遅延通信システム(例えば、第5世代移動通信システム)に適合した送受信機19が接続されている。
【0018】
また、通信_ECU21の入力側には、カメラユニット11が接続されるとともに、加速度センサ14、速度センサ15、ジャイロセンサ16、及び、GNSS受信機17など、車両5の位置(自車位置)を推定するに際して必要とする各種スイッチ・センサ類が接続されている。さらに、通信_ECU21の入力側には、移動体情報としての車両情報を検出するためのスイッチ・センサ類として、ドアスイッチ18が接続されている。ここで、加速度センサ14は、車両5の前後加速度及び横加速度を検出する。また、速度センサ15は、例えば、前後左右各車輪の回転速度を検出する。また、ジャイロセンサ16は、車両5の角速度または角加速度を検出する。また、GNSS受信機17は、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。また、ドアスイッチ18は、例えば、車体のドアが開扉された際にドアスイッチ信号(ON信号)を出力する。
【0019】
通信_ECU21は、上述のカメラユニット11、加速度センサ14、速度センサ15、ジャイロセンサ16、及び、GNSS受信機17などから入力された各種情報を含む道路交通検出情報(第1の道路交通検出情報)を生成する。また、通信_ECU21は、ドアスイッチ18などから入力された各種情報を含む移動体検出情報としての車両検出情報を生成する。通信_ECU21は、これらの検出情報を、予め設定された制御周期毎に、管制装置70に対して送信する。
【0020】
具体的には、通信_ECU23は、例えば、
図4に示すように、車両5の車両ID、送信日時、距離画像、車両5の位置(緯度、経度)、車両5の加速度、車両5の速度、及び、車両5の進行方向等を含む道路交通検出情報(第1の道路交通検出情報)を生成する。また、通信_ECU21は、例えば、道路交通情報に付帯する情報として、ドアスイッチ信号のON/OFF状態を含む車両検出情報を生成する。なお、通信_ECU21は、車両検出情報を道路交通情報とは独立して生成することも可能である。そして、通信_ECU21は、生成した第1の道路交通検出情報及び車両検出情報を、送受信機19を通じて管制装置70に送信する。
【0021】
また、通信_ECU21は、管制装置70から適宜送信される道路地図情報(後述する)を、送受信機19を通じて受信する。
【0022】
ここで、管制装置70から送信される道路地図情報とは、所定の管制エリア内に存在する各車両5及び各監視装置50等から収集した情報に基づき、時々刻々と変化する道路交通情報をリアルタイムで反映させた地図情報である。
【0023】
さらに、通信_ECU21は、管制装置70から適宜送信される制御情報(後述する)を、送受信機19を通じて受信する。
【0024】
この制御情報には、例えば、自車両(対象車両5)が停止車両(他車両5)の周辺を通過する際に自車速度を所定の設定速度以下に制限するための目標加減速度、及び、障害物と衝突する可能性のある緊急時に車両5の減速制御を行うための目標減速度が含まれている。目標加減速度(目標減速度)を受信すると、通信_ECU21は、受信した目標減速度をE/G_ECU23及びBK_ECU25に出力する。これにより、E/G_ECU23及びBK_ECU25は、目標加減速度に基づく車両5(自車両)の速度制御を割り込み制御として実行することが可能となっている。
【0025】
また、制御情報には、例えば、自車走行車線の前方に停止車両(他車両5)が存在する場合に隣接車線に車両5(自車両)を車線変更させるための目標舵角、及び、緊急時に車両5の操舵制御を行うための目標舵角が含まれている。目標舵角を受信すると、通信_ECU21は、受信した目標舵角をPS_ECU24に出力する。これにより、PS_ECU24は、目標舵角に基づく操舵制御を割り込み制御として実行することが可能となっている。
【0026】
すなわち、本実施形態において、管制装置70から送信される各制御情報は、車両5側の走行_ECU23において演算された制御情報(後述する)よりも優先される。
【0027】
このように、本実施形態において、カメラユニット11、加速度センサ14、車速センサ15、ジャイロセンサ16、及び、GNSS受信機17等は第1の道路交通検出情報取得手段として機能する。また、ドアスイッチ18は、車両検出情報取得手段(移動体検出情報取得手段)として機能する。なお、これら、第1の道路交通検出情報取得手段、及び、車両検出情報取得手段を総称して情報取得手段(移動体側情報取得手段)と称する。また、送受信機19は、移動体側通信機(第1の通信機)として機能する。なお、通信_ECU21は、第1の道路交通検出情報及び車両検出情報等の検出情報を、送受信機19を通じて車両5の周辺に存在する他車両5に対して送信することも可能である(
図2参照)。
【0028】
走行_ECU22は、管制装置70から受信された道路地図情報に基づいて、車両5(自車両)に対する制御情報を演算する。ここで、本実施形態において、走行_ECU22は、主として、ドライバの利便性向上に係る制御情報を演算する。
【0029】
例えば、走行_ECU22は、道路地図情報に基づき、追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)のための制御情報として、目標加減速度を演算する。すなわち、走行_ECU22は、道路地図情報に基づいて自車走行車線の前方に先行車が存在することを認識した場合、当該先行車に対して所定の車間距離を維持しつつ自車両を追従走行させるための目標加減速度を演算する。また、走行_ECU22は、道路地図情報に基づいて自車走行車線の前方に先行車が存在しないことを認識した場合、自車両を設定車速で定速走行させるための目標加減速度を演算する。そして、走行_ECU22は、演算した目標加減速度をE/G_ECU23及びBK_ECU25に出力する。これにより、E/G_ECU23及びBK_ECU25は、目標加減速度に基づく車速制御を実行することが可能となっている。
【0030】
また、走行_ECU22は、例えば、道路地図情報に基づき、車線中央維持(ALKC:Active Lane Keep Centering)制御のための制御情報として、目標舵角を演算する。すなわち、走行_ECU22は、道路地図情報に基づいて、自車両を自車走行車線の中央に維持するための目標舵角を演算する。そして、走行_ECU22は、演算した目標舵角をPS_ECU24に出力する。これにより、PS_ECU24は、目標舵角に基づく操舵制御を実行することが可能となっている。
【0031】
E/G_ECU23の出力側には、スロットルアクチュエータ27が接続されている。このスロットルアクチュエータ27は、エンジンのスロットルボディに設けられている電子制御スロットルのスロットル弁を開閉動作させるものである。すなわち、スロットルアクチュエータ27は、E/G_ECU23からの駆動信号によりスロットル弁を開閉動作させて吸入空気流量を調整することで、所望のエンジン出力を発生させる。
【0032】
PS_ECU24の出力側には、電動パワステモータ28が接続されている。この電動パワステモータ28はステアリング機構にモータの回転力で操舵トルクを付与するものである。すなわち、電動パワステモータ28は、PS_ECU24からの駆動信号により所望の舵角を発生させる。
【0033】
BK_ECU25の出力側には、ブレーキアクチュエータ29が接続されている。このブレーキアクチュエータ29は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整するものある。すなわち、ブレーキアクチュエータ29は、BK_ECU25からの駆動信号により駆動されると、ブレーキホイールシリンダを通じて各車輪に対してブレーキ力を発生させ、車両5を強制的に減速させる。
【0034】
警報_ECU26の出力側には、警報装置30が接続されている。この警報装置30は、ドライバに対し、所定の警報を発するものである。ここで、警報装置30としては、例えば、インストルメントパネルに設けられたマルチインフォメーションディスプレイやスピーカ等によって構成されている。すなわち、警報装置30は、警報_ECU26からの駆動信号により、ドライバに対して所定の警告表示或いは警報音を発生させる。
【0035】
このように、本実施形態において、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25は、運転制御実行手段としての機能を実現する。
【0036】
監視装置50は、例えば、走行環境を観察するための路側インフラであり、路側に沿って所定の間隔毎に定点配置されている。この監視装置50は、例えば、カメラユニット51と、通信_ECU52と、を備えて構成されている。
【0037】
カメラユニット51は、例えば、単眼カメラによって構成されている。このカメラユニット51は、例えば、路側の上方から路面に向けて光軸が所定の俯角にて傾斜するように配置されている。これにより、カメラユニット51は、道路上を走行する車両等を含む画像情報を検出する。
【0038】
通信_ECU52には、管制装置70との間で無線通信を行うための送受信機として、高信頼・低遅延通信システム(例えば、第5世代移動通信システム)に適合した送受信機53が接続されている。また、通信_ECU52の入力側には、カメラユニット51が接続されている。
【0039】
通信_ECU52は、上述のカメラユニット51から入力された画像情報を含む道路交通検出情報(第2の道路交通検出情報)を生成し、予め設定された制御周期毎に、管制装置70に対して送信する。
【0040】
具体的には、通信_ECU52は、例えば、
図5に示すように、監視装置50のID、送信日時、画像、監視装置50の位置(緯度、経度)等を含む道路交通検出情報を生成する。そして、通信_ECU52は、生成した道路交通検出情報を、送受信機53を通じて管制装置70に送信する。
【0041】
このように、本実施形態において、カメラユニット51は第2の道路交通検出情報取得手段として機能し、送受信機53は路側通信機(第3の通信機)として機能する。
【0042】
管制装置70は、例えば、エッジコンピューティングによるネットワーク環境のエッジサーバ(所謂MECサーバ)であり、所定の管制エリア毎に配置されている。この管制装置70は、例えば、通信_ECU71と、情報認識制御ユニット(以下、情報認識_ECU」と称す)72と、走行制御ユニット(以下、「走行_ECU」と称す)73と、を備えて構成されている。これら各制御ユニット71~73は、所定の通信回線を介して接続されている。ここで、各制御ユニット71~73は、車両5に搭載される各制御ユニットよりも高性能なスペックを有する。なお、各制御ユニット71~73は、単一の制御ユニットによって構成することも可能である。
【0043】
通信_ECU71には、各車両の運転制御装置10及び各監視装置50との間で無線通信を行うための送受信機として、高信頼・低遅延通信システム(例えば、第5世代移動通信システム)に適合した送受信機74が接続されている。
【0044】
通信_ECU71は、送受信機74が各車両5の運転制御装置10及び各監視装置50から道路交通検出情報を受信すると、受信した道路交通検出情報を情報認識_ECU72に出力する。
【0045】
また、通信_ECU71は、走行_ECU73から車両の制御情報(後述する)が入力されると、入力された制御情報を、送受信機74を通じて該当する車両5に送信する。
【0046】
さらに、通信_ECU71は、情報認識_ECU72から道路地図情報が入力されると、入力された道路地図情報を、送受信機74を通じて各車両5に送信する。
【0047】
このように、本実施形態において、送受信機74は、管制側通信機(第2の通信機)として機能する。
【0048】
情報認識_ECU72には、高精度道路地図データベース75が接続されている。高精度道路地図データベース75は、HDDなどの大容量記憶媒体であり、道路上を走行する各車両5の走行制御を行う際に必要とする情報として、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。高精度道路地図情報は、主として道路情報を構成する静的情報と、主として交通情報を構成する準動的情報、及び動的情報と、からなる3層の情報を有する。
【0049】
静的情報は、例えば、道路や道路上の構造物、車線情報、路面情報、恒久的な規制情報等、1ヶ月以内での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0050】
準動的情報は、例えば、観測時点における実際の渋滞状況や走行規制、落下物や障害物等、一時的な走行障害状況、実際の事故状態、狭域気象情報など、1分以内での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
【0051】
動的情報は、例えば、移動体の間で送信・交換される情報や現在示されている信号の情報、交差点内の歩行者・二輪車情報、交差点を直進する車両情報等、1秒以内での更新頻度が求められる情報によって構成されている。さらに、本実施形態において、動的情報には、ドアの開閉情報等の車両5の状態に係る各種車両情報が含まれる。
【0052】
このような道路地図情報は、各車両5の運転制御装置10及び各監視装置50から次の情報を受信するまでの周期で維持・更新され、更新された情報は、通信_ECU71及び走行_ECU73に適宜出力される。なお、通信_ECU71に出力する道路地図情報としては、管制エリア内の道路地図情報の全てを出力することも可能であるが、車両5側の通信_ECU21との間の通信負荷を考慮し、各車両5が走行_ECU23において制御情報を演算するために必要な道路地図情報のみを抽出し、各車両5のIDに対応付けた個別の道路地図情報としてそれぞれ出力することが望ましい。
【0053】
この道路地図情報の更新に際し、情報認識_ECU72は、各車両5の運転制御装置10及び各監視装置50から受信した道路交通検出情報を解析し、道路交通情報の認識処理を行う。
【0054】
例えば、運転制御装置10からの道路交通検出情報を受信すると、情報認識_ECU72は、道路地図上における車両5の現在位置を認識するとともに、車両5の移動方向及び移動速度等を認識する。
【0055】
また、情報認識_ECU72は、受信した距離画像情報などに基づき、該当車両5の周辺の道路を区画する車線区画線を求める。また、情報認識_ECU72は、走行路の左右を区画する各区画線の道路曲率[1/m]、および各区画線間の幅(車線幅)を求める。
【0056】
さらに、情報認識_ECU72は、距離画像情報に対して所定のパターンマッチング等を行い、道路に沿って存在するガードレール、縁石、及び、道路上に存在する歩行者、二輪車、二輪車以外の車両等の立体物認識を行う。ここで、情報認識_ECU72における立体物認識では、例えば、立体物の種別、立体物までの距離、立体物の速度等の認識が行われる。
【0057】
同様に、監視装置50からの道路交通検出情報を受信すると、情報認識_ECU72は、受信した画像情報などに基づき、周知の画像認識処理等を行うことにより、道路交通情報の認識処理を行う。
【0058】
また、情報認識_ECU72は、運転制御装置10から受信した車両検出情報を解析し、車両情報の認識処理を行う。
【0059】
例えば、情報認識_ECU72は、受信した車両検出情報にドアスイッチ信号(ON信号)が含まれているとき、車両情報として、当該車両5のドアの開扉状態を認識する。
【0060】
このようにして運転制御装置10及び監視装置50からの道路交通検出情報及び車両検出情報に基づいて道路交通情報及び車両情報を認識すると、情報認識_ECU72は、認識した道路交通情報及び車両情報に基づいて、高精度道路地図データベース75に格納されている道路地図情報を随時更新する。この情報更新は、静的情報のみならず、準動的情報、及び、動的情報についても行われる。これにより、道路地図情報は、管制装置70の外部との通信により取得した最新の道路交通情報を含んで構成され、道路上を走行する車両等移動体の情報がリアルタイムで更新される。
【0061】
このように、本実施形態において、情報認識_ECU72は、道路地図情報更新手段としての機能を実現する。
【0062】
走行_ECU73は、管制装置70の管制エリア内に存在する各車両5に対する制御情報を演算する。この制御情報として、走行_ECU73は、例えば、管制エリア内の道路上に停止車両が存在するとき、当該停止車両に対して接近する方向に走行する他の車両5が停止車両を避けて安全に走行するための制御情報を演算する。また、走行_ECU73は、例えば、各車両5が障害物との衝突を緊急回避するための制御情報を演算する。ここで、走行_ECU73において制御情報等を演算するための各種プログラムは、例えば、ネットワーク環境NWを通じて、随時、最新のプログラムに更新することが可能となっている。
【0063】
具体的に説明すると、走行_ECU73は、道路交通情報及び車両情報が反映された道路地図情報に基づいて停止車両を検出した際には、同一の道路上において停止車両に接近する方向に走行する車両5を対象車両として抽出する。そして、走行_ECU73は、各対象車両が停止車両を避けて設定車速以下の車速にて通過するための制御情報をそれぞれ演算する。
【0064】
例えば、対象車両の走行車線が停止車両と同一車線であり且つ対象車両が走行可能な隣接車線が対象車両の走行車線に併設されているとき、走行_ECU73は、停止車両の手前において対象車両を隣接車線に車線変更させるための目標舵角を演算する。
【0065】
すなわち、走行_ECU73は、例えば、道路地図情報に基づいて、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth1以下となった時点の対象車両の位置を制御開始位置として設定するとともに、隣接車線の車線中央を目標横位置に設定する。また、走行_ECU73は、対象車両の車速に応じて許容される横ジャークを用い、制御開始位置から当該制御開始位置と目標横位置との中間位置までの第1の目標経路、及び、中間位置から目標横位置までの第2の目標経路を算出する。そして、走行_ECU73は、対象車両を目標経路に沿って走行させるための目標舵角を制御情報として設定する。なお、この場合の設定距離Dth1は、予め設定されたマップ等に基づいて、対象車両の車速Vが大きいほど大きくなるように可変設定することが可能である。
【0066】
また、対象車両が停止車両と同一の道路上において停止車両と異なる車線を走行中であり、対象車両が停止車両の周辺(例えば、停止車両の側方)を通過可能であるとき、走行_ECU73は、対象車両の車速Vを設定車速以下に制限するための制御情報を演算する。
【0067】
すなわち、走行_ECU73は、例えば、道路地図情報に基づいて、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth2(Dth2<Dth1)以下となったとき、対象車両の車速Vを第1の設定車速V1(例えば、30km/h)以下に制限するための目標加減速度を制御情報として設定する。この目標加減速度は、例えば、停止車両までの距離Dが設定距離Dth2以下となってから、対象車両が停止車両の手前の設定距離D0に到達するまでの間に、対象車両の車速Vを第1の設定車速V1とするための目標加減速度である。また、走行_ECU73は、対象車両の車速Vを第1の設定車速V1とした後は、対象車両が停止車両の周辺を通過するまでの間、第1の設定車速V1を維持するための目標加減速度を制御情報として設定する。
【0068】
さらに、走行_ECU73は、停止車両のドアが開扉されている場合において、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth2以下となったとき、対象車両の車速Vを第1の設定車速V1よりも遅い第2の設定車速V2(例えば、10km/h)以下に制限するための目標加減速度を制御情報として設定する。この目標加減速度は、例えば、停止車両までの距離Dが設定距離Dth2以下となってから、対象車両が停止車両の手前の設定距離D0に到達するまでの間に、対象車両の車速を第2の設定車速V2とするための目標加減速度である。また、走行_ECU73は、対象車両の車速Vを第2の設定車速V1とした後は、ドアが開扉されてから設定時間が経過するまでの間或いは対象車両が停止車両の周辺を通過するまでの間のうちの何れか短い期間、第2の設定車速V2を維持するための目標加減速度を制御情報として設定する。
【0069】
ここで、車速Vを第2の設定車速V2以下に制限するための制御情報は、車速Vを第1の設定車速V1以下に制限するための制御情報よりも優先される。
【0070】
また、走行_ECU73は、道路地図情報に基づき、当該車両5の走行路前方に当該車両5と衝突する可能性の高い障害物を検出した際には、当該障害物の手前に車両を停車させるための緊急ブレーキ(AEB(Autonomous Emergency Braking):衝突被害軽減ブレーキ)制御のための制御情報を演算する。
【0071】
ここで、本実施形態における障害物とは、当該車両5と衝突の可能性がある立体物であり、具体的には、当該車両5の走行路前方において、少なくとも一部が車両5とラップ(Rap)している立体物をいう。この障害物には、路肩付近に停車している他車両5等は勿論のこと、当該車両5の前方で急減速或いは急停車した先行車両5、及び、走行路を横切る歩行者等も含まれる。本実施形態において、歩行者には、停止車両から降車した乗員も含まれることは勿論である。
【0072】
この緊急ブレーキ制御のための制御情報は、情報認識_ECU72で認識した障害物に基づいて行われるものであり、例えば、一次ブレーキ制御用の制御情報と二次ブレーキ制御用の制御情報とが順次段階的に設定される。
【0073】
一次ブレーキ制御は、ドライバに対して障害物との衝突回避操作を促すための警報ブレーキ制御であり、比較的小さい減速度a0を用いて車両5を減速させる緩ブレーキ制御である。
【0074】
二次ブレーキ制御は、一次ブレーキ制御に対してドライバが適切な衝突回避操作を行わなかった場合に行われる本ブレーキ制御であり、一次ブレーキ制御よりも大きな減速度apを用いて障害物との相対速度が「0」となるまで車両5を減速させる強ブレーキ制御である。
【0075】
これらのブレーキ制御のための制御情報は、車両5と障害物との相対速度Vrelと相対距離Dとの関係が閾値以下となったとき設定される。
【0076】
本実施形態において、具体的には、走行_ECU73は、車両5と障害物との相対速度Vrelとラップ率Rapとの関係から距離閾値であるブレーキ制御開始距離Dth3,Dth4を算出する。これらの距離閾値Dth3、Dth4を算出するため、走行_ECU73には、一次ブレーキ制御開始距離設定用のマップと二次ブレーキ制御開始距離設定用のマップが、実験やシミュレーション等に基づいて予め設定され格納されている。これらのマップは、基本的には、相対速度Vrelが低くなるほど距離閾値を小さな値に設定して減速開始タイミングを遅らせ、且つ、ラップ率Rが低くなるほど距離閾値を小さな値に設定して減速開始タイミングを遅らせるように設定されている。すなわち、各マップは、相対速度Vrelが低く、且つ、ラップ率Rが低くなるほど、ドライバ自らの運転操作によって障害物との衝突回避を行う余地を残す設定となっている。
【0077】
そして、相対距離Dが一次ブレーキ制御開始距離Dth3以下となったとき、走行_ECU73は、当該車両5に対する制御情報として目標減速度a0を設定する。
【0078】
さらに、一次ブレーキ制御中にドライバによる適切な回避操作等が行われず、相対距離Dが二次ブレーキ制御開始距離Dth4以下となったとき、走行_ECU73は、当該車両5に対する制御情報として目標減速度apを設定する。
【0079】
なお、後述する衝突余裕時間TTC(Time To Collision)は、ブレーキ制御において実質的に相対距離Dと同義のパラメータである。従って、相対速度Vrelと相対距離Dとの関係を示すパラメータとして衝突余裕時間TTCを用いることも可能である。
【0080】
また、二次ブレーキ制御の実行中において、走行_ECU73は、車両5が障害物に衝突するまでの時間である衝突余裕時間TTC(Time To Collision)を算出する。この衝突余裕時間TTCとしては、例えば、車両5と前方障害物との相対距離Dを、車両5と前方障害物との相対速度Vrelにより除算した値((相対距離D)/(相対速度Vrel))が算出される。
【0081】
そして、衝突余裕時間TTCが予め設定された閾値Tth以下であるとき、走行_ECU73は、制動制御によって障害物との衝突を回避することが困難であると判断し、操舵による障害物に対する緊急衝突回避を行うべく、緊急操舵(AES(Autonomous Emergency Steering):自動操舵回避)制御に対する制御情報の演算を行う。ここで、閾値Tthは、車両5と障害物との衝突を緊急ブレーキ制御によって回避するための時間的余裕があるか否かを、衝突余裕時間TTCとの関係において判定するための閾値である。
【0082】
この操舵制御に際し、走行_ECU73は、車両5が障害物との衝突を回避するための目標横位置を算出する。また、走行_ECU73は、例えば、衝突余裕時間TTCが設定閾値Tth以下となった時点の車両位置を制御開始位置とし、車速に応じて許容される横ジャークを用い、緊急操舵制御のための目標経路として、制御開始位置から当該制御開始位置と目標横位置との中間位置までの第1の目標経路、及び中間位置から目標横位置までの第2の目標経路を算出する。そして、走行_ECU73は、車両5を目標経路に沿って車両を走行させるための目標舵角を制御情報として設定する。
【0083】
さらに、走行_ECU73は、制御情報を設定した車両5の挙動によって他の車両5が影響を受ける場合、当該他の車両5に対しても、必要に応じて適宜、衝突回避のための制御情報(緊急ブレーキ制御/緊急操舵制御のための制御情報)を演算する。
【0084】
このようにして演算された各制御情報は走行_ECU73から通信_ECU71に出力され、通信_ECU71は、送受信機74を通じて該当車両5に対する各制御情報の送信を行う。このように、本実施形態において、走行_ECU73は、制御情報演算手段としての機能を実現する。
【0085】
次に、運転制御装置10の通信_ECU21における通信制御について、
図6に示す通信制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、通信_ECU21において、設定周期毎に繰り返し実行されるものである。
【0086】
ルーチンがスタートすると、通信_ECU21は、ステップS101において、当該車両5が管制装置70の通信圏(管制エリア)内に存在するか否かを調べる。
【0087】
そして、ステップS101において、当該車両5が通信圏外に存在すると判定した場合、通信_ECU21は、そのままルーチンを抜ける。
【0088】
一方、ステップS101において、当該車両5が通信圏内に存在すると判定した場合、通信_ECU21は、ステップS102に進み、第1の道路交通検出情報及び車両検出情報を前回送信してから設定時間(例えば、200msec)が経過しているか否かを調べる。
【0089】
そして、ステップS102において、設定時間が経過していると判定した場合、通信_ECU21は、ステップS103に進み、送受信機19を通じて第1の道路交通検出情報及び車両検出情報を送信した後、ステップS104に進む。
【0090】
一方、ステップS102において、設定時間が経過していないと判定した場合、通信_ECU21は、そのままステップS104に進む。
【0091】
ステップS102或いはステップS103からステップS104に進むと、通信_ECU21は、現在車両5が存在する管制エリアに対応する管制装置70から、送受信機19を通じて制御情報を受信しているか否かを調べる。
【0092】
そして、ステップS104において、制御情報を受信していないと判定した場合、通信_ECU21は、ステップS109に進む。
【0093】
一方、ステップS104において、制御情報を受信していると判定した場合、通信_ECU21は、ステップS105に進み、受信した制御情報に目標加減速度が含まれているか否かを調べる。
【0094】
そして、ステップS105において、受信した制御情報に目標加減速度が含まれていると判定した場合、通信_ECU21は、ステップS106に進み、E/G_ECU23、BK_ECU25、及び、警報_ECU26に対して目標減速度を出力した後、ステップS107に進む。これにより、E/G_ECU23及びBK_ECU25では、入力された目標加減速度に基づき、停止車両の周辺を通過時の車速制御、或いは、障害物に対する緊急ブレーキ制御等が行われる。また、警報_ECU26では、目標減速度に応じた所定の警報制御が適宜行われる。
【0095】
一方、ステップS105において、受信した制御情報に目標加減速度が含まれていないと判定した場合、通信_ECU21は、そのままステップS107に進む。
【0096】
ステップS105或いはステップS106からステップS107に進むと、通信_ECU21は、受信した制御情報に目標舵角が含まれているか否かを調べる。
【0097】
そして、ステップS107において、受信した制御情報に目標舵角が含まれていると判定した場合、通信_ECU21は、ステップS108に進み、PS_ECU24、及び、警報_ECU26に対して目標舵角を出力した後、ステップS109に進む。これにより、SP_ECU24では、入力された目標舵角に基づき、停止車両を回避するための車線変更制御、或いは、障害物に対する緊急操舵制御等が行われる。また、警報_ECU26では、目標舵角に応じた所定の警報制御が適宜行われる。
【0098】
一方、ステップS107において、受信した制御情報に目標舵角が含まれていないと判定した場合、通信_ECU21は、そのままステップS109に進む。
【0099】
ステップS107或いはステップS108からステップS109に進むと、通信_ECU21は、現在車両5が存在する管制エリアに対応する管制装置70から、送受信機19を通じて道路地図情報を受信しているか否かを調べる。
【0100】
そして、ステップS109において、道路地図情報を受信していないと判定した場合、通信_ECU21は、そのままルーチンを抜ける。
【0101】
一方、ステップS109において、道路地図情報を受信していると判定した場合、通信_ECU21は、ステップS110に進み、受信した道路地図情報を走行_ECU22に出力した後、ルーチンを抜ける。
【0102】
なお、詳細な説明は省略するが、監視装置50の通信_ECU52においても、上述のステップS102及びステップS103と同様の処理が行われ、管制装置70に対して、第2の道路交通検出情報の送信が行われる。
【0103】
次に、管制装置70の通信_ECU71において実行される通信制御について、
図7の通信制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、通信_ECU71において、設定周期毎に繰り返し実行されるものである。
【0104】
ルーチンがスタートすると、通信_ECU71は、ステップS201において、外部からの情報を受信したか否かを調べる。すなわち、通信_ECU71は、管制エリア内に存在する車両5の運転制御装置10からの第1の道路交通検出情報及び車両検出情報、或いは、監視装置50からの第2の道路交通検出情報の少なくとも何れか一方を受信したか否かを調べる。
【0105】
そして、ステップS201において、外部からの情報を受信したと判定した場合、通信_ECU71は、ステップS202に進み、受信情報を情報認識_ECU72に出力した後、ステップS203に進む。
【0106】
一方、ステップS201において、外部からの情報を受信していないと判定した場合、通信_ECU71は、そのままステップS203に進む。
【0107】
ステップS201或いはステップS202からステップS203に進むと、通信_ECU71は、走行_ECU73から制御情報が入力されたか否かを調べる。
【0108】
そして、ステップS203において、制御情報が入力されたと判定した場合、通信_ECU71は、ステップS204に進み、入力された制御情報に該当するIDの車両5に対し、送受信機74を通じて制御情報を送信した後、ステップS205に進む。
【0109】
一方、ステップS204において、制御情報が入力されていないと判定した場合、通信_ECU71は、そのままステップS205に進む。
【0110】
ステップS203或いはステップS204からステップS205に進むと、通信_ECU71は、情報認識_ECU72から新たに更新された道路地図情報が入力されたか否かを調べる。
【0111】
そして、ステップS205において、道路地図情報が入力されたと判定した場合、通信_ECU71は、ステップS206に進み、入力された道路地図情報を管制エリア内の各車両5に送信した後、ルーチンを抜ける。
【0112】
一方、ステップS205において、道路地図情報が入力されていないと判定した場合、通信_ECU71は、そのままルーチンを抜ける。
【0113】
次に、情報認識_ECU72において実行される情報認識処理について、
図8に示す情報認識ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、情報認識_ECU72において、設定時間毎に繰り返し実行されるものである。
【0114】
ルーチンがスタートすると、情報認識_ECU72は、通信_ECU71を通じて外部からの情報が入力されたか否かを調べる。
【0115】
そして、ステップS301において、外部からの情報が入力されていないと判定した場合、情報認識_ECU72は、そのままルーチンを抜ける。
【0116】
一方、ステップS301において、外部からの情報が入力されたと判定した場合、情報認識_ECU72は、ステップS302に進み、入力された情報が車両5からの情報であるか否か、すなわち、入力された情報が第1の道路交通検出情報及び車両検出情報であるか否かを調べる。
【0117】
そして、ステップS302において、入力された情報が車両5からの情報でないと判定した場合、すなわち、入力された情報が第2の道路交通検出情報であると判定した場合、情報認識_ECU72は、そのままステップS305に進む。
【0118】
一方、ステップS302において、入力された情報が車両5からの情報であると判定した場合、情報認識_ECU72は、ステップS303進む。そして、情報認識_ECU72は、ステップS303において、第1の道路交通検出情報に基づき、道路地図上における車両5の現在位置、車両5の進行方向、及び、車両5の速度等を認識した後、ステップS304に進む。
【0119】
ステップS303からステップS304に進むと、情報認識_ECU72は、車両検出情報に基づき、車両情報の認識を行った後、ステップS305に進む。すなわち、情報認識_ECU72は、例えば、車両検出情報にドアスイッチ信号が含まれている場合、当該車両5の車両情報として、ドアが開扉状態にあることを認識する。
【0120】
ステップS302或いはステップS304からステップS305に進むと、情報認識_ECU72は、入力された道路交通検出情報に基づく道路交通情報の認識を行う。
【0121】
例えば、第1の道路交通検出情報に基づく道路交通情報の認識を行う場合、情報認識_ECU72は、ステップS303において認識した車両位置及び進行方向等を基準として、道路上の車線区画線、車線間幅、他車両や歩行者等の立体物等の各種情報の認識を行う。さらに、情報認識_ECU72は、車両5との相対速度に基づいて各種立体物の移動速度等を認識する。
【0122】
また、例えば、第2の道路交通検出情報に基づく道路交通情報の認識を行う場合、情報認識_ECU72は、監視装置50の座標及びカメラユニット51の光軸方向を基準として、道路上の車線区画線、車線間幅、他車両や歩行者等の立体物等の各種情報の認識を行う。さらに、情報認識_ECU72は、各種立体物の移動速度等の認識を行う。
【0123】
そして、ステップS305からステップS306に進むと、情報認識_ECU72は、ステップS304及びステップS305等において認識した車両情報及び道路交通情報を用いて道路地図情報を更新した後、ステップS307に進む。
【0124】
そして、ステップS306からステップS307に進むと、情報認識_ECU72は、ステップS306において更新した道路地図情報を、通信_ECU71及び走行_ECU73に出力した後、ルーチンを抜ける。
【0125】
次に、走行_ECU73における目標操舵量演算について、
図9に示す目標操舵量演算ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、走行_ECU73において、管制エリア内に存在する各車両5を対象車両として順次抽出し、設定周期毎に繰り返し実行されるものである。
【0126】
ルーチンがスタートすると、走行_ECU73は、ステップS401において、道路地図情報に基づき、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在するか否かを調べる。ここで、対象車両が走行する道路とは、対象車両の走行車線は勿論のこと、対向車線の走行車線と同一の進行方向の他車線、対向車線、及び路肩等を含む概念である。
【0127】
そして、ステップS401において、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在しないと判定した場合、走行_ECU73は、そのままルーチンを抜ける。
【0128】
一方、ステップS401において、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在すると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS402に進み、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth1以下であるか否かを調べる。
【0129】
そして、ステップS402において、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth1よりも大きいと判定した場合、走行_ECU73は、そのままルーチンを抜ける。
【0130】
一方、ステップS402において、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth1以下であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS403に進み、対象車両が停止車両と同一の車線を走行中であるか否かを調べる。
【0131】
そして、ステップS403において、対象車両が停止車両と異なる車線を走行中であると判定した場合、走行_ECU73は、そのままルーチンを抜ける。
【0132】
一方、ステップS403において、対象車両が停止車両と同一の車線を走行中であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS404に進み、対象車両が走行可能な隣接車線が存在するか否かを調べる。
【0133】
そして、ステップS404において、対象車両が走行可能な隣接車線が存在しないと判定した場合、走行_ECU73は、そのままルーチンを抜ける。
【0134】
一方、ステップS404において、対象車両が走行可能な隣接車線が存在すると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS405に進み、対象車両が車線変更可能なタイミングであるか否かを調べる。すなわち、走行_ECU73は、道路地図情報に基づき、対象車両の車線変更を阻害する並走車両や後続車両が隣接車線上に存在しないか否かを調べる。
【0135】
そして、ステップS405において、対象車両が車線変更可能なタイミングでないと判定した場合、走行_ECU73は、そのままルーチンを抜ける。
【0136】
一方、ステップS405において、対象車両が車線変更可能なタイミングであると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS406に進み、隣接車線に車線変更するための目標舵角を算出する。
【0137】
そして、ステップS406からステップS407に進むと、走行_ECU73は、算出した目標舵角を通信_ECU71に出力した後、ルーチンを抜ける。
【0138】
次に、走行_ECU73における開扉フラグ設定について、
図10に示す開扉フラグ設定ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、走行_ECU73において、設定周期毎に繰り返し実行されるものである。
【0139】
ルーチンがスタートすると、走行_ECU73は、ステップS501において、道路地図情報に基づき、対象車両が走行中の道路上の前方に停止車両が存在するか否かを調べる。
【0140】
そして、ステップS501において、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在すると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS503に進む。
【0141】
一方、ステップS501において、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在しないと判定した場合、走行_ECU73は、ステップS502に進み、対象車両が停止車両の周辺(例えば、側方)を走行中であるか否かを調べる。
【0142】
そして、ステップS502において、対象車両が停止車両の周辺を走行中でないと判定した場合、すなわち、対象車両が走行する道路上の前方にそもそも停止車両が存在しない場合、或いは、停止車両が停止車両の周辺を通過したと判定した場合、走行_ECU73は、ステップS509に進む。
【0143】
一方、ステップS502において、対象車両が停止車両の周辺を走行中であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS503に進む。
【0144】
ステップS501或いはステップS502からステップS503に進むと、走行_ECU73は、停止車両のドアが開扉直後であるか否かを調べる。
【0145】
そして、ステップS503において、停止車両のドアが開扉直後でないと判定した場合、或いは、停止車両のドアがそもそも開扉されていないと判定した場合、走行_ECU73は、ステップS505に進む。
【0146】
一方、ステップS503において、停止車両のドアが開扉直後であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS504に進み、停止車両のドアが開扉されたことを示す開扉フラグFを「1」にセットした後、ステップS505に進む。
【0147】
ステップS503或いはステップS504からステップS505に進むと、走行_ECU73は、開扉フラグFが「1」にセットされているか否かを調べる。
【0148】
そして、ステップS505において、開扉フラグFが「0」にクリアされていると判定した場合、走行_ECU73は、そのままルーチンを抜ける。
【0149】
一方、ステップS505において、開扉フラグFが「1」にセットされていると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS506に進み、停止車両のドアが開扉されてからの経過時間を示すカウンタTをインクリメント(T←T+1)した後、ステップS507に進む。
【0150】
ステップS506からステップS507に進むと、走行_ECU73は、経過時間を示すカウンタTが、予め設定されたカウンタ閾値Tth(例えば、3分程度に相当するカウンタ閾値)以上であるか否かを調べる。
【0151】
そして、ステップS507において、カウンタTがカウンタ閾値Tth以上であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS509に進む。
【0152】
一方、ステップS507において、カウンタTがカウンタ閾値Tth未満である判定した場合、走行_ECU73は、ステップS508に進み、停止車両のドアが閉扉されたか否かを調べる。
【0153】
そして、ステップS508において、ドアが開扉されたままである判定した場合、走行_ECU73は、開扉フラグを「1」に維持したままルーチンを抜ける。
【0154】
一方、ステップS508において、ドアが閉扉されていると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS509に進む。
【0155】
ステップS502或いはステップS508からステップS509に進むと、走行_ECU73は、開扉フラグFを「0」にクリアし、続くステップS510においてカウンタTを「0」にクリアした後、ルーチンを抜ける。
【0156】
次に、走行_ECU73における目標加減速度演算について、
図11,12に示す目標加減速度演算ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、設定周期毎に繰り返し実行されるものである。
【0157】
ルーチンがスタートすると、走行_ECU73は、ステップS601において、道路地図情報に基づき、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在するか否かを調べる。
【0158】
そして、ステップS601において、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在しないと判定した場合、走行_ECU73は、ステップS610に進む。
【0159】
一方、ステップS601において、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在すると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS602に進み、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth2(Dth2<Dth1)以下であるか否かを調べる。
【0160】
そして、ステップS602において、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth2よりも大きいと判定した場合、走行_ECU73は、そのままルーチンを抜ける。
【0161】
一方、ステップS602において、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth2以下であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS603に進み、対象車両が停止車両と同一車線を走行中であるか否かを調べる。
【0162】
そして、ステップS603において、対象車両が停止車両と同一車線を走行中であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS605に進み、対象車両の目標車速Vtを「0」に設定した後、ステップS608に進む。
【0163】
一方、ステップS603において、対象車両が停止車両と同一車線上を走行中でないと判定した場合、走行_ECU73は、ステップS604に進み、開扉フラグFが「1」にセットされているか否かを調べる。
【0164】
そして、ステップS604において、開扉フラグFが「0」にクリアされていると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS606に進み、目標車速Vtを第1の設定車速V1に設定した後、ステップS608に進む。
【0165】
一方、ステップS604において、開扉フラグFが「1」にセットされていると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS607に進み、目標車速Vtを第2の設定車速V2に設定した後、ステップS608に進む。
【0166】
ステップS605、ステップS606、或いは、ステップS607からステップS608に進むと、走行_ECU73は、対象車両と停止車両との距離Dが設定距離D0となるまでの間に対象車両の車速Vを目標車速Vtとするための目標加減速度を算出した後、ステップS609に進む。
【0167】
ステップS608からステップS609に進むと、走行_ECU73は、算出した目標加減速度を通信_ECU71に出力した後、ルーチンを抜ける。
【0168】
また、ステップS601からステップS610に進むと。走行_ECU73は、対象車両が停止車両の周辺(例えば、側方)を走行中であるか否かを調べる。
【0169】
そして、ステップS610において、対象車両が停止車両の周辺を走行中でないと判定した場合、すなわち、対象車両が走行する道路上の前方にそもそも停止車両が存在しない場合、或いは、停止車両が停止車両の周辺を通過したと判定した場合、走行_ECU73は、そのままルーチンを抜ける。
【0170】
一方、ステップS610において、対象車両が停止車両の周辺を走行中であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS611に進み、開扉フラグFが「1」にセットされているか否かを調べる。
【0171】
そして、ステップS611において、開扉フラグFが「0」にクリアされていると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS612に進み、目標車速Vtを第1の設定車速V1に設定した後、ステップS614に進む。
【0172】
一方、ステップS611において、開扉フラグFが「1」にセットされていると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS613に進み、目標車速Vtを第2の設定車速V2に設定した後、ステップS614に進む。
【0173】
ステップS612或いは、ステップS613からステップS614に進むと、走行_ECU73は、対象車両の車速Vを目標車速Vtとするための目標加減速度を算出した後、ステップS615に進む。
【0174】
ステップS614からステップS615に進むと、走行_ECU73は、算出した目標加減速度を通信_ECU71に出力した後、ルーチンを抜ける。
【0175】
このような実施形態によれば、無線通信により複数の車両5から収集した道路交通情報及び車両情報に基づいて道路地図情報をリアルタイムに更新する情報認識_ECU72と、道路地図情報に基づいて車両5の制御情報を演算する走行_ECU73と、を有して管制装置70を構成するとともに、制御情報に基づいて車両5のE/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25が運転制御を実行する車両の運転制御システム1であって、管制装置70の走行_ECU73は、道路地図情報に基づいて、対象車両の前方の設定距離(第2の設定距離Dth2)以内に停止車両が存在し且つ対象車両が停止車両の周辺を通過可能であることを判定したとき、対象車両の車速Vを第1の設定車速V1以下に制限するための制御情報を演算し、さらに、停止車両のドアが開扉されている場合には、開扉から設定時間が経過するまでの間或いは対象車両が停止車両の周辺を通過するまでの間、対象車両の車速を第1の設定車速V1よりも遅い第2の設定車速V2以下に制限するための制御情報を演算することにより、停止車両からの歩行者の飛び出しに対しても適切な緊急ブレーキ制御を行うことができる。
【0176】
すなわち、例えば、
図13に示すように、対象車両が停止車両の周辺を通過する際には、対象車両と停止車両との距離Dが設定距離Dth2以下となってから設定距離D0となるまでの間に対象車両の車速Vを第1の設定車速V1以下に制限し、対象車両が停止車両の周辺を通過するまでの間(
図13中のハッチングされた領域参照)は車速Vを第1の設定車速V1以下に維持することにより、停止車両の陰から歩行者等が飛び出した場合にも歩行者等との衝突を緊急ブレーキ制御によって適切に回避することができる。
【0177】
加えて、例えば、
図14に示すように、停止車両のドアが開扉されている場合には、停止車両から降車した乗員が歩行者として対象車両の前方に急に飛び出す可能性が高いことを予測し、対象車両の車速Vを第1の設定車速V1よりも遅い第2の設定車速V2以下に制限することにより、停止車両から乗員が飛び出した場合にも、歩行者等との衝突を緊急ブレーキによってより効果的に回避することができる。この場合において、停止車両のドアの開扉から設定時間が経過した場合には停止車両から乗員が降車する可能性が低いと判断して第2の設定車速V2以下での走行をキャンセルする(すなわち、第1の設定車速V1まで加速とする)ことにより、必要以上に車速Vを制限することを防止でき、乗員の違和感を低減することができる。
【0178】
また、例えば、
図13,14に示すように、対象車両が停止車両と同一の車線を走行している場合には、対象車両と停止車両との距離Dが設定距離Dth1以下となった際に対象車両を車線変更させることにより、対象車両の走行を継続させることができる。
【0179】
これらの場合において、管制エリア内に存在する各車両5及び監視装置50等から収集した情報に基づいて、管制装置70の情報認識_ECU72が道路地図情報をリアルタイムで更新することにより、個々の車両5に設けられた自律センサのみでは認識することが困難な情報についても速やかに認識することができる。そして、更新された道路地図情報に基づいて、管制装置70の走行_ECU73が各車両5の制御情報を演算することにより、見通しの悪い道路を走行中の車両5に対する制御情報についても適切なタイミングにて設定することができる。従って、例えば、
図15に示すように、見通しの悪いカーブ等に停止車両が存在する場合であっても、対象車両に対する車線変更や車速制限等の制御を適切なタイミングにて実行することができる。
【0180】
ここで、上述の実施形態において、通信_ECU21、走行_ECU22、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25、警報_ECU26、通信_ECU52、通信_ECU71、情報認識_ECU72、走行_ECU73等は、CPU,RAM,ROM、不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。なお、プロセッサの全部若しくは一部の機能は、論理回路あるいはアナログ回路で構成してもよく、また各種プログラムの処理を、FPGAなどの電子回路により実現するようにしてもよい。
【0181】
以上の実施の形態に記載した発明は、その形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。
【0182】
例えば、上述の実施の形態においては、車両5にステレオカメラからなるカメラユニット11を搭載した一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ステレオカメラからなるカメラユニットに代えて、単眼カメラからなるカメラユニット、ミリ波レーダ、ライダー(Lidar:light detection and ranging)等を適用することも可能である。同様に、監視装置50においても、単眼カメラからなるカメラユニット51に代えて、ステレオカメラからなるカメラユニット、ミリ波レーダ、ライダー等を適用することも可能である。
【0183】
さらに、例えば、
図16に示すように、管制装置70に対して第1の道路交通検出情報を提供するための移動体としては、スマートフォンや携帯電話機等の通信端末80を採用することが可能である。
【0184】
この場合、通信端末80は、第1の道路交通検出取得手段として、通信_ECU82に接続された、カメラユニット81、加速度センサ84、速度センサ85、ジャイロセンサ86、及び、GNSS受信機87等を有する。また、通信端末80は、第1の通信機として、通信_ECU82に接続された送受信機88を有する。
【0185】
なお、カメラユニット81、加速度センサ84、速度センサ85、ジャイロセンサ86、及び、GNSS受信機87等は、上述の実施形態におけるカメラユニット11、加速度センサ14、速度センサ15、ジャイロセンサ16、及び、GNSS受信機17等に対応する構成である。また、通信_ECU82は、上述の実施形態における通信_ECU21に対応する構成である。さらに、送受信機88は、上述の実施形態における送受信機19に対応する構成である。従って、これらの各構成については、詳細な説明を省略する。
【0186】
このような通信端末80は、例えば、
図17に示すように、管制エリア内において歩行者100等が保持することにより、第1の道路交通検出情報を取得し、取得した第1の道路交通検出情報を管制装置70に送信することが可能である。
【0187】
また、例えば、
図18に示すように、通信端末80は、カメラユニットや送受信機等を備えていない運転制御装置10を搭載した車両5に適用することが可能である。この場合、車両5のダッシュボード等に固定した通信端末80を、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等の通信ケーブルを介して、運転制御装置10に接続することが可能である。これにより、通信端末80は、第1の道路交通検出情報を取得し、取得した第1の道路交通検出情報を管制装置70に送信することが可能である。その際、通信端末80は、車両5に設けられたドアスイッチ(図示せず)等から、通信ケーブルを介して、車両検出情報を取得することも可能である。さらに、通信端末80は、管制装置70から受信した制御情報を、各ECU23~26に出力することが可能である。
【0188】
また、上述の実施形態においては、各車両の安全に係る制御情報のみを管制装置において演算し、クルーズコントロール等の利便性のための制御の制御情報については、各車両に別途設けた走行_ECUにおいて演算する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、利便性のための制御情報等を管制装置において演算するようにしてもよい。この場合、各車両の運転制御装置に設けられた走行_ECU等については、適宜省略することが可能である。
【0189】
逆に、管制装置70から送信される道路地図情報に基づいて、利便性のための制御の制御情報、及び、各車両の安全に係る制御の制御情報、及び、利便性のための制御の制御情報を、各車両に設けた走行_ECUにおいて演算することも可能である。この場合、上述したように、管制装置70から各車両に送信される道路地図情報は、各車両が走行_ECUにおいて制御情報を演算するために必要な道路地図情報のみに限定されることが望ましいが、このように限定された道路地図情報にはドアの開閉状態を示す車両情報が含まれる。
【0190】
このように、本実施形態において、車両5の運転制御装置10に設けられた走行_ECU22は、移動体側制御情報演算手段として機能することが可能であり、管制装置70に設けられた走行_ECU73は管制側制御情報演算手段として機能することが可能である。
【0191】
また、運転制御システム1による停止車両に対する通過制御は、道路上における制御に限定されるものではなく、例えば、
図19に示すように、駐車場内(広義の意味での道路上)において、対象車両が停止車両の周辺(前方等)を通過する場合等にも適用が可能である。このことからも明らかな通り、停止車両に対する車線変更制御(操舵制御)は、必ずしも必須ではない。
【0192】
次に、
図20,21を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同符号を付し
て適宜説明を省略する
。
【0193】
本実施形態は、停止車両のドアが開扉されているとき、対象車両が停止車両と同一車線を走行中であるか、或いは、他車線を走行中であるかにかかわらず、対象車両を停止させるための実施形態である。
【0194】
このような制御について、例えば、
図20,21に示す目標加減速度演算ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、設定周期毎に繰り返し実行されるものである。
【0195】
ルーチンがスタートすると、走行_ECU73は、ステップS601において、道路地図情報に基づき、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在するか否かを調べる。
【0196】
そして、ステップS601において、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在しないと判定した場合、走行_ECU73は、ステップS610に進む。
【0197】
一方、ステップS601において、対象車両が走行する道路上の前方に停止車両が存在すると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS602に進み、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth2(Dth2<Dth1)以下であるか否かを調べる。
【0198】
そして、ステップS602において、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth2よりも大きいと判定した場合、走行_ECU73は、そのままルーチンを抜ける。
【0199】
一方、ステップS602において、対象車両から停止車両までの距離Dが設定距離Dth2以下であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS603に進み、対象車両が停止車両と同一車線を走行中であるか否かを調べる。
【0200】
そして、ステップS603において、対象車両が停止車両と同一車線を走行中であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS607に進む。
【0201】
一方、ステップS603において、対象車両が停止車両と同一車線上を走行中でないと判定した場合、走行_ECU73は、ステップS604に進み、開扉フラグFが「1」にセットされているか否かを調べる。
【0202】
そして、ステップS604において、開扉フラグFが「0」にクリアされていると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS606に進み、目標車速Vtを第1の設定車速V1に設定した後、ステップS608に進む。
【0203】
一方、ステップS604において、開扉フラグFが「1」にセットされていると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS607に進む。
【0204】
ステップS603或いはステップS604からステップS607に進むと、走行_ECU73は、目標車速Vtを第2の設定車速V2に設定した後、ステップS608に進む。ここで、本実施形態において、第2の設定車速V2は、「0」に設定されている。
【0205】
ステップS606、或いは、ステップS607からステップS608に進むと、走行_ECU73は、対象車両と停止車両との距離Dが設定距離D0となるまでの間に対象車両の車速Vを目標車速Vtとするための目標加減速度を算出した後、ステップS609に進む。
【0206】
すなわち、本実施形態において、対象車両が停止車線と同一車線を走行中である場合、及び、開扉フラグFが「1」にセットされている場合には、対象車両と停止車両との距離Dが設定距離D0となるまでの間に対象車両を停止させるための目標加減速度を算出する。
【0207】
ステップS608からステップS609に進むと、走行_ECU73は、算出した目標加減速度を通信_ECU71に出力した後、ルーチンを抜ける。
【0208】
また、ステップS601からステップS610に進むと。走行_ECU73は、対象車両が停止車両の周辺(例えば、側方)を走行中であるか否かを調べる。
【0209】
そして、ステップS610において、対象車両が停止車両の周辺を走行中でないと判定した場合、すなわち、対象車両が走行する道路上の前方にそもそも停止車両が存在しない場合、或いは、停止車両が停止車両の周辺を通過したと判定した場合、走行_ECU73は、そのままルーチンを抜ける。
【0210】
一方、ステップS610において、対象車両が停止車両の周辺を走行中であると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS611に進み、開扉フラグFが「1」にセットされているか否かを調べる。
【0211】
そして、ステップS611において、開扉フラグFが「0」にクリアされていると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS612に進み、目標車速Vtを第1の設定車速V1に設定した後、ステップS614に進む。
【0212】
一方、ステップS611において、開扉フラグFが「1」にセットされていると判定した場合、走行_ECU73は、ステップS613に進み、目標車速Vtを第2の設定車速V2に設定した後、ステップS614に進む。ここで、本実施形態において、第2の設定車速V2は、「0」に設定されている。
【0213】
ステップS612或いは、ステップS613からステップS614に進むと、走行_ECU73は、対象車両の車速Vを目標車速Vtとするための目標加減速度を算出した後、ステップS615に進む。
【0214】
ステップS614からステップS615に進むと、走行_ECU73は、算出した目標加減速度を通信_ECU71に出力した後、ルーチンを抜ける。
【0215】
このような実施形態によれば、停止車両のドアが開扉された場合には、対象車両が停止車両と同一車線を走行中であるか、或いは、他車線を走行中であるかにかかわらず、開扉から設定時間が経過するまでは対象車両を停止させるための制御が介入される。
【0216】
従って、停止車両からの歩行者の飛び出しに対して、より適切な衝突回避を実現することができる。
【0217】
次に、
図22,23を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、上述の第1の実施形態と同様の構成については、同符号を付して適宜説明を省略する。
【0218】
本実施形態は、管制装置70の送受信機74から運転制御装置10の送受信機19に送信される情報を削減するための実施形態である。
【0219】
具体的には、本実施形態において、管制装置70の送受信機74から運転制御装置10の送受信機19に送信される情報は、車両5の安全性確保に関する制御情報のみとなっている。
【0220】
すなわち、本実施形態において、送受信機74から送受信機
19に対する道路地図情報の送信は、基本的には行われない。例えば、
図23に示すように、管制装置70の通信_ECU71は、上述の第1の実施形態におけるステップS201~ステップS204の処理のみを行う。
【0221】
このため、例えば、利便性向上のための運転支援制御機能を備えた車両5では、カメラユニット11には、IPU11cにおいて生成した距離画像情報に基づいて道路交通情報を認識するための情報認識部11dが設けられている。
【0222】
情報認識部11dは、例えば、距離画像情報等に基づき、車両5の周辺の道路を区画する車線区画線の算出、走行路の左右を区画する各区画線の道路曲率、及び、車線幅の算出等を行う。また、情報認識部11dは、例えば、距離画像情報に対して所定のパターンマッチング等を行うことにより各種立体物の認識処理を行う。
【0223】
このように情報認識部11dにおいて認識された道路交通情報は、走行_ECU22に出力される。そして、走行_ECU22は、情報認識部11dから入力された道路交通情報に基づき、例えば、追従者間距離制御、及び、車線中央維持制御等のための制御情報を演算する。
【0224】
なお、管制装置70からの道路交通情報が送信されない本実施形態においては、道路交通情報を認識するための構成として、カメラユニット11に加えて或いはカメラユニット11に代えて、ミリ波レーダやレーザレーダ等の自律センサ、及び、管制装置72の道路地図情報とは独立した道路地図情報を備えたロケータユニット等を適宜設けることも可能である。
【0225】
このような実施形態によれば、管制装置70の送受信機74から車両5の送受信機19に送信する情報を、車両5の安全性確保のための制御情報に限定することにより、送受信機74から送受信機19への通信負荷を大幅に軽減することができる。従って、管制装置70の走行_ECU73において高精度に演算された制御情報を対象車両5に対して瞬時に送信することができ、車両5の安全性確保のための制御をより高いレベルで実現することができる。
【0226】
すなわち、例えば、運転制御装置10の走行_ECU22において演算された制御情報に基づく走行制御が実行されている場合にも、管制装置70から送信された制御情報に基づく停止車両に対する走行制御や障害物に対する衝突回避制御を割り込み制御として速やかに実行することができる。
【0227】
なお、上述の各実施形態及び変形例に示した構成については、適宜組み合わせることが可能であり、また、上述の各実施の形態及び変形例に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0228】
1 … 運転制御システム
5 … 車両
10 … 運転制御装置
11 … カメラユニット
11a … メインカメラ
11b … サブカメラ
11c … IPU
11d … 情報認識部
14 … 加速度センサ
15 … 速度センサ
16 … ジャイロセンサ
17 … GNSS受信機
18 … ドアスイッチ
19 … 送受信機
21 … 通信_ECU
22 … 走行_ECU
23 … E/G_ECU
24 … PS_ECU
25 … BK_ECU
27 … スロットルアクチュエータ
28 … 電動パワステモータ
29 … ブレーキアクチュエータ
30 … 警報装置
50 … 監視装置
51 … カメラユニット
52 … 通信_ECU
53 … 送受信機
70 … 管制装置
71 … 通信_ECU
72 … 情報認識_ECU
73 … 走行_ECU
74 … 送受信機
75 … 高精度道路地図データベース
80 … 通信端末
81 … カメラユニット
82 … 通信_ECU
84 … 加速度センサ
85 … 速度センサ
86 … ジャイロセンサ
87 … GNSS受信機
88 … 送受信機
100 … 歩行者
NW … ネットワーク環境