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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】基礎断熱構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/72 20060101AFI20250213BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20250213BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
E04B1/72
E04B1/80 100A
E02D27/01 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021075124
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022169229
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】下川床 和尊
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-007183(JP,A)
【文献】特開2007-247313(JP,A)
【文献】特開2011-226248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E02D 27/00 -27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床下空間を区画する布基礎と、前記布基礎を断熱する断熱材とを具えた基礎断熱構造であって、
前記布基礎は、前記建物の地盤面よりも下方で水平に延びるベース部と、前記ベース部の幅方向の中央から上方に延び、かつ、前記地盤面から突出する立上り部とを含み、
前記立上り部は、前記床下空間側を向く内周面に、前記断熱材が配されており、
前記断熱材は、
防蟻機能を有する第1断熱材と、
前記第1断熱材の上端側で固定され、かつ、防蟻機能を有さない第2断熱材とを含み、
前記建物は、前記床下空間の底面を構成する土間コンクリートが敷設されており、
前記第1断熱材と前記第2断熱材との間には、防蟻機能を有する接着剤の硬化物からなる接着層を具え、
前記接着層は、前記断熱材の前記床下空間側を向く内周面から、前記土間コンクリートまでを少なくとも延びる第2はみ出し部を含む、
基礎断熱構造。
【請求項2】
前記接着層は、前記断熱材の前記立上り部側を向く外周面から、前記立上り部の前記内周面までを少なくとも延びる第1はみ出し部を含む、請求項1に記載の基礎断熱構造。
【請求項3】
建物の床下空間を区画する布基礎と、前記布基礎を断熱する断熱材とを具えた基礎断熱構造であって、
前記布基礎は、前記建物の地盤面よりも下方で水平に延びるベース部と、前記ベース部の幅方向の中央から上方に延び、かつ、前記地盤面から突出する立上り部とを含み、
前記立上り部は、前記床下空間側を向く内周面に、前記断熱材が配されており、
前記断熱材は、
防蟻機能を有する第1断熱材と、
前記第1断熱材の上端側で固定され、かつ、防蟻機能を有さない第2断熱材とを含み、
前記断熱材の前記立上り部側を向く外周面と、前記立上り部の前記内周面との間の隙間に配され、かつ、防蟻機能を有する第1部材を具える、
基礎断熱構造。
【請求項4】
前記布基礎及び前記断熱材は、前記建物の外周に沿って配されており、
前記第1部材は、前記外周に沿って連続して延びる、請求項3に記載の基礎断熱構造。
【請求項5】
前記第1部材は、吸水性を有する基部と、前記基部に吸収された防蟻液剤とを含む、請求項3又は4に記載の基礎断熱構造。
【請求項6】
建物の床下空間を区画する布基礎と、前記布基礎を断熱する断熱材とを具えた基礎断熱構造であって、
前記布基礎は、前記建物の地盤面よりも下方で水平に延びるベース部と、前記ベース部の幅方向の中央から上方に延び、かつ、前記地盤面から突出する立上り部とを含み、
前記立上り部は、前記床下空間側を向く内周面に、前記断熱材が配されており、
前記断熱材は、
防蟻機能を有する第1断熱材と、
前記第1断熱材の上端側で固定され、かつ、防蟻機能を有さない第2断熱材とを含み、
前記建物は、前記床下空間の底面を構成する土間コンクリートが敷設されており、
前記断熱材と前記土間コンクリートとの間のコーナ部に配され、かつ、防蟻機能を有する第2部材を具える、
基礎断熱構造。
【請求項7】
前記第2部材は、複数の粒状体からなる、請求項6に記載の基礎断熱構造。
【請求項8】
前記第1断熱材の下端は、前記ベース部の上端と当接する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の基礎断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、断熱床下構造が記載されている。この断熱床下構造は、外周基礎の内側面を覆うように取り付けられた断熱材と、上記断熱材の下方に位置する下側部材の上面と上記外周基礎の内側面とが交差する内角部を少なくとも含む箇所に配置された防蟻機能を有する防蟻剤とを備えている。
【0003】
さらに、断熱床下構造は、上記断熱材を外周基礎に取り付けた状態のままで補充されるメンテナンス用防蟻剤を、上記防蟻剤の位置へと導く案内手段を備えている。この案内手段は、上記断熱材を厚み方向に貫通するガイド孔と、上記断熱材の裏面に開口する上記ガイド孔の出口から上記断熱材の裏面に沿って延び、上記断熱材の底面まで達するガイド溝とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6130664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の断熱床下構造を施工するには、外周基礎に断熱材を取り付ける前に、上記の箇所に防蟻剤を配置し、さらに、その防蟻剤と地盤とを覆うように防蟻シートが配置される。さらに、断熱材には、外周基礎への取り付けに先立って、ガイド孔及びガイド溝が形成される。このように、断熱床下構造は、多くの部材や工程が必要であり、施工性の向上が求められていた。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、防蟻性能と施工性とを両立することが可能な基礎断熱構造を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、建物の床下空間を区画する布基礎と、前記布基礎を断熱する断熱材とを具えた基礎断熱構造であって、前記布基礎は、前記建物の地盤面よりも下方で水平に延びるベース部と、前記ベース部の幅方向の中央から上方に延び、かつ、前記地盤面から突出する立上り部とを含み、前記立上り部は、前記床下空間側を向く内周面に、前記断熱材が配されており、前記断熱材は、防蟻機能を有する第1断熱材と、前記第1断熱材の上端側で固定され、かつ、防蟻機能を有さない第2断熱材とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る前記基礎断熱構造において、前記第1断熱材の下端は、前記ベース部の上端と当接してもよい。
【0009】
本発明に係る前記基礎断熱構造において、前記第1断熱材と前記第2断熱材との間に、防蟻機能を有する接着剤の硬化物からなる接着層がさらに具えられてもよい。
【0010】
本発明に係る前記基礎断熱構造において、前記接着層は、前記断熱材の前記立上り部側を向く外周面から、前記立上り部の前記内周面までを少なくとも延びる第1はみ出し部を含んでもよい。
【0011】
本発明に係る前記基礎断熱構造において、前記建物は、前記床下空間の底面を構成する土間コンクリートが敷設されており、前記接着層は、前記断熱材の前記床下空間側を向く内周面から、前記土間コンクリートまでを少なくとも延びる第2はみ出し部を含んでもよい。
【0012】
本発明に係る前記基礎断熱構造において、前記断熱材の前記立上り部側を向く外周面と、前記立上り部の前記内周面との間の隙間に配され、かつ、防蟻機能を有する第1部材がさらに具えられてもよい。
【0013】
本発明に係る前記基礎断熱構造において、前記布基礎及び前記断熱材は、前記建物の外周に沿って配されており、前記第1部材は、前記外周に沿って連続して延びていてもよい。
【0014】
本発明に係る前記基礎断熱構造において、前記第1部材は、吸水性を有する基部と、前記基部に吸収された防蟻液剤とを含んでもよい。
【0015】
本発明に係る前記基礎断熱構造において、前記建物は、前記床下空間の底面を構成する土間コンクリートが敷設されており、前記断熱材と前記土間コンクリートとの間のコーナ部に配され、かつ、防蟻機能を有する第2部材をさらに具えてもよい。
【0016】
本発明に係る前記基礎断熱構造において、前記第2部材は、複数の粒状体であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の基礎断熱構造は、上記の構成を採用することにより、防蟻性能と、施工性とを両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の建物の基礎断熱構造を示す部分断面図である。
図2図1の拡大図である。
図3】本発明の他の実施形態の建物の基礎断熱構造の一例を示す部分断面図である。
図4】布基礎を設置する工程を説明する断面図である。
図5】第1断熱材を固定する工程を説明する断面図である。
図6】土間コンクリートを打設する工程を説明する断面図である。
図7】第2断熱材を固定する工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0020】
[基礎断熱構造]
図1は、本実施形態の建物Bの基礎断熱構造1を示す部分断面図である。本実施形態の基礎断熱構造1は、建物Bの床下空間4を区画する布基礎2と、布基礎2を断熱する断熱材3とを具えている。建物Bは、住宅やビル等である場合が例示されるが、特に限定されない。また、本実施形態の建物Bには、床下空間4の底面4bを構成する土間コンクリート5が敷設されている。
【0021】
[布基礎]
本実施形態の布基礎2は、ベース部6と、立上り部7とを含んで構成されている。本実施形態の布基礎2は、建物Bの外周に沿って配されており、鉄筋コンクリートで形成されている。
【0022】
[ベース部]
ベース部6は、建物Bの地盤面GLよりも下方(本例では、地中8内)で、水平に延びている。地盤面GLとは、建物Bの垂直高さの基準となるグランドラインである。
【0023】
[立上り部]
立上り部7は、ベース部6の幅方向の中央から上方へ延びており、地盤面GLから突出している。本実施形態の立上り部7は、床下空間4側を向く内周面7iに、断熱材3が配されている。
【0024】
[土間コンクリート]
本実施形態の土間コンクリート5は、立上り部7で囲まれた地盤10の上に敷設されている。これにより、土間コンクリート5の床下空間4側を向く上面5u(床下空間4の底面4b)は、地盤10(地盤面GL)よりも上方に配されている。
【0025】
本実施形態の土間コンクリート5は、立上り部7側を向く外端面5oが、断熱材3の床下空間4側を向く内周面3iに当接している。これにより、土間コンクリート5は、地盤10を床下空間4に露出させることなく、床下空間4の底面4bを形成することができる。
【0026】
本実施形態の土間コンクリート5には、その外端面5o側に、厚さW1が徐々に大きくなる漸増部5Gが設けられているが、厚さW1を一定に形成することで、漸増部5Gが省略されてもよい。本実施形態の土間コンクリート5と、地盤10との間には、防湿シート9が敷設されている。本実施形態の防湿シート9は、土間コンクリート5の漸増部5Gの下面に沿って傾斜している。
【0027】
[断熱材]
断熱材3は、立上り部7の内周面7iに配されている。本実施形態の断熱材3は、布基礎2の断熱性を高めるために、建物Bの外周に沿って配されている。
【0028】
本実施形態の断熱材3は、パネル状に形成されており、その内周面3i、及び、立上り部7側を向く外周面3oが、平滑な面として形成される。本実施形態の断熱材3の外周面3oは、立上り部7の内周面7iに当接している。
【0029】
断熱材3には、例えば、耐熱性及び耐衝撃性に優れるポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム、又は、フェノールフォーム等が採用されうる。本実施形態の断熱材3は、第1断熱材11と、第2断熱材12とを含んで構成されている。
【0030】
[第1断熱材]
本実施形態の第1断熱材11は、防蟻機能を有している。この防蟻機能は、例えば、第1断熱材11に含有される防蟻剤(図示省略)によって発揮される。
【0031】
防蟻剤(図示省略)は、防蟻機能を発揮可能なものであれば、適宜採用でき、例えば、特許文献1に記載の防蟻薬剤などが採用されうる。本実施形態の防蟻剤には、チアメトキサムが採用されている。また、第1断熱材11が発泡樹脂系である場合には、例えば、その原料となる発泡ビーズ毎に、防蟻剤がコーティングされることによって、防蟻剤が含有されてもよい。なお、第1断熱材11には、例えば、ダイナガ株式会社製の防蟻断熱材「オプティフォーム(オプティフォームは、登録商標)」が採用されうる。
【0032】
本実施形態の第1断熱材11は、防蟻剤(図示省略)の含有により、基礎断熱構造1に求められる断熱性能を維持しつつ、防蟻機能を長期間に亘って発揮することができる。
【0033】
図2は、図1の拡大図である。本実施形態の第1断熱材11の下端11dは、地盤面GLよりも下方に配されている。さらに、第1断熱材11の上端11uは、地盤面GLよりも上方に配されている。これにより、第1断熱材11は、その下端11d側の一部を地中8に埋設しつつ、その上端11u側を地盤10(地盤面GL)から突出させることができるため、地中8からの白蟻の侵入を防ぐことができる。本実施形態の上端11uは、水平方向と平行に延びているが、水平方向に対して傾斜していてもよい。
【0034】
[第2断熱材]
図1に示されるように、本実施形態の第2断熱材12は、第1断熱材11とは異なり、防蟻機能を有していない。本実施形態において、防蟻機能を有さないとは、上述の防蟻剤が含有されていないことを意味している。したがって、第2断熱材12は、第1断熱材11に比べて、コストを低減できる。
【0035】
図2に示されるように、本実施形態の第2断熱材12は、その下端12dが、第1断熱材11の上端11u側で固定される。これにより、第1断熱材11と第2断熱材12とを一体とした断熱材3が構成されうる。なお、第2断熱材12の固定には、適宜実施することができ、例えば、接着剤が用いられうる。
【0036】
本実施形態の第2断熱材12の厚さW2は、第1断熱材11の厚さW3と同一に設定される。これにより、断熱材3は、第1断熱材11と第2断熱材12とを一体としたパネル状に形成されうる。本明細書において、寸法等の「同一」には、製造上の軽微なバラツキ(誤差)等が許容されるものとする。
【0037】
[基礎断熱構造の作用]
図1に示されるように、本実施形態の基礎断熱構造1は、白蟻が侵入しやすい立上り部7の下方側に、第1断熱材11が設けられているため、地中8からの白蟻の侵入を防ぐことができ、防蟻性能を発揮することができる。図2に示されるように、本実施形態の第1断熱材11は、その下端11d側の一部を地中8に埋設しつつ、その上端11u側を地盤面GLから突出させているため、その上端11u側に固定される第2断熱材12が地中8に配置されるのを防ぐことができる。したがって、本実施形態の基礎断熱構造1は、第2断熱材12が白蟻の食害を受けるのを抑制できる。
【0038】
本実施形態の基礎断熱構造1は、上述の第1断熱材11により、特許文献1のような防蟻剤や防蟻シートを配置する必要がなく、また、断熱材にガイド孔及びガイド溝を形成する必要もない。したがって、基礎断熱構造1は、防蟻に必要な部材や工程を少なくできるため、防蟻性能と、施工性とを両立させることが可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態の基礎断熱構造1は、土間コンクリート5の下方への防蟻シートの取り回しが不要となるため、漸増部5G(図1に示す)を省略して、土間コンクリート5の厚さW1を一定にすることができる。これにより、基礎断熱構造1は、施工性を向上させることができる。
【0040】
一方、本実施形態の基礎断熱構造1は、断熱材3に、防蟻機能を有さない第2断熱材12が含まれるため、例えば、第1断熱材11のみで断熱材3が形成される場合に比べて、断熱材3の製造コスト(施工コスト)を低減することができる。
【0041】
図2に示されるように、本実施形態の第1断熱材11の下端11dは、ベース部6の上端6uと当接するのが望ましい。これにより、第1断熱材11は、ベース部6の上端6uと、立上り部7の内周面7iとで形成されるコーナ部13に配されるため、コーナ部13からの白蟻の侵入を効果的に防ぐことができる。
【0042】
[接着層]
第1断熱材11と第2断熱材12との間には、防蟻機能を有する接着剤の硬化物からなる接着層14が設けられるのが望ましい。このような接着層14は、第1断熱材11と第2断熱材12との間の隙間を埋めつつ、その防蟻機能によって白蟻の侵入を効果的に防ぐことができるため、基礎断熱構造1の防蟻性能を高めることができる。このような作用を効果的に発揮させるために、接着層14は、建物Bの外周に沿って配されるのが望ましい。
【0043】
接着層14を形成するための接着剤は、防蟻機能を有するものであれば、適宜採用されうる。本実施形態の接着剤には、上記の防蟻剤が配合されたもの(例えば、ダイナガ株式会社製の防蟻接着剤「オプティSボンド」)が用いられる。
【0044】
[第1はみ出し部]
接着層14には、断熱材3の外周面3oから、立上り部7の内周面7iまでを少なくとも延びる第1はみ出し部15が含まれてもよい。このような第1はみ出し部15は、立上り部7の内周面7iに接着されることにより、断熱材3の外周面3oと、立上り部7の内周面7iとの間に形成されがちな白蟻の侵入経路を遮断することができる。さらに、第1はみ出し部15は、防蟻機能によって、白蟻の侵入を効果的に防ぐことができる。したがって、第1はみ出し部15は、基礎断熱構造1の防蟻性能を高めるのに役立つ。
【0045】
[第2はみ出し部]
接着層14は、断熱材3の内周面3iから、土間コンクリート5までを少なくとも延びる第2はみ出し部16が含まれてもよい。このような第2はみ出し部16は、土間コンクリート5に接着されることにより、断熱材3(第1断熱材11)の内周面3iと、土間コンクリート5の外端面5oとの間で形成されがちな白蟻の侵入経路を遮断することができる。さらに、第2はみ出し部16は、防蟻機能によって、白蟻の侵入を効果的に防ぐことができる。したがって、第2はみ出し部16は、基礎断熱構造1の防蟻機能を高めるのに役立つ。
【0046】
本実施形態の第1断熱材11の上端11uと、土間コンクリート5の上面5u(図1に示した床下空間4の底面4b)との垂直方向の離間距離(図示省略)は、20mm以下に設定されてもよい。これにより、第2はみ出し部16は、第1断熱材11の上端11uから断熱材3の内周面3iを経て、土間コンクリート5までの長さが大きくなるのを防ぐことができるため、施工性の低下や、接着剤のコストの増大を防ぐことができる。このような作用を効果的に高めるために、離間距離は、10mm以下に設定されてもよい。
【0047】
[基礎断熱構造(第2実施形態)]
図3は、本発明の他の実施形態の建物Bの基礎断熱構造1の一例を示す部分断面図である。この実施形態において、これまでの実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0048】
[第1部材]
基礎断熱構造1には、断熱材3の外周面3oと、立上り部7の内周面7iとの間の隙間(図示省略)に配され、かつ、防蟻機能を有する第1部材21が設けられている。このような第1部材21は、上記隙間に形成されがちな白蟻の侵入経路を、第1はみ出し部15とともに遮断することができる。さらに、第1部材21は、その防蟻機能によって、第1はみ出し部15とともに、白蟻の侵入を効果的に防ぐことができる。したがって、第1部材21は、基礎断熱構造1の防蟻性能を高めるのに役立つ。このような作用を効果的に発揮させるために、第1部材21は、建物Bの外周に沿って連続して延びるのが望ましい。
【0049】
第1部材21は、上述の隙間に配置可能であり、かつ、防蟻機能を有するものであれば、適宜採用されうる。この実施形態の第1部材21は、吸水性を有する基部23と、基部23に吸収された防蟻液剤(図示省略)とを含んで構成される。
【0050】
基部23は、吸水性を有するものであれば、特に限定されない。この実施形態の基部23は、棒状に形成された不織布で構成されている。このような不織布は、柔軟に変形できるため、断熱材3の外周面3oと、立上り部7の内周面7iとの間に、隙間なく配されうる。この実施形態の基部23は、建物Bの外周に沿って延びている。
【0051】
防蟻液剤は、防蟻性能を有する液体であれば、特に限定されない。防蟻液剤(図示省略)には、例えば、水又は溶剤に、上述の防蟻剤を溶かしたものが採用されうる。なお、防蟻剤が流動性を有している場合には、その防蟻剤が防蟻液剤としてそのまま用いられてもよい。このような防蟻液剤は、吸水性を有する基部23に吸収され、基部23に保持されうる。
【0052】
この実施形態の第1部材21は、防蟻液剤(図示省略)を吸収した基部23により、上述のような防蟻機能を発揮することができる。さらに、この実施形態の第1部材21は、第1はみ出し部15よりも上方に設けられている。これにより、例えば、注射器の針(図示省略)を、断熱材3の内周面3iから外周面3o側へと貫通させて、防蟻液剤が注入されることにより、基部23に防蟻液剤を容易に補給することができるため、メンテナンス性を向上させることができる。第1部材21は、防蟻液剤の補充により、防蟻機能を長期間に亘って発揮することができる。
【0053】
[第2部材]
この実施形態の基礎断熱構造1には、断熱材3と土間コンクリート5との間のコーナ部25に配され、かつ、防蟻機能を有する第2部材22が設けられている。このような第2部材22は、断熱材3の内周面3iと、土間コンクリート5の外端面5oとの間で形成されがちな白蟻の侵入経路を、第2はみ出し部16とともに遮断することができる。さらに、第2部材22は、その防蟻機能によって、第2はみ出し部16とともに、白蟻の侵入を防ぐことができる。したがって、第2部材22は、基礎断熱構造1の防蟻性能を高めるのに役立つ。このような作用を効果的に発揮させるために、第2部材22は、外周に沿って連続して延びるのが望ましい。
【0054】
第2部材22は、コーナ部25に配置可能であり、かつ、防蟻機能を有するものであれば、適宜採用されうる。この実施形態の第2部材22は、複数の粒状体26で構成されている。この実施形態の粒状体26には、例えば、上述の防蟻剤が配合されたもの(株式会社コシイプレザービング製の防蟻薬剤(コシペレットB10))が用いられる。
【0055】
第2部材22は、複数の粒状体26で形成されているため、コーナ部25に、容易に配置(散布)することができる。したがって、第2部材22は、施工性及びメンテナンス性の向上に役立つ。この実施形態の第2部材22は、建物Bの外周に沿って、帯状に散布されるのが望ましい。
【0056】
[基礎断熱構造の施工方法]
次に、基礎断熱構造の施工方法が説明される。図4は、布基礎2を設置する工程S1を説明する断面図である。
【0057】
[布基礎を設置]
本実施形態の施工方法では、先ず、布基礎2が設置される(工程S1)。工程S1では、従来と同様の手順に基づいて、ベース部6と、立上り部7の一部とが、建物Bの地中内(地盤面GLよりも下方)に埋設される。これにより、工程S1では、建物Bの地盤面GLよりも下方で水平に延びるベース部6と、地盤面GLから突出する立上り部7とを含む布基礎2が設置される。
【0058】
本実施形態の工程S1では、建物Bの外周に沿って、布基礎2が配される。また、工程S1では、ベース部6の上端6uと、立上り部7の内周面7iとで形成されるコーナ部13が露出するように、立上り部7で囲まれた地盤10に、凹部27が形成される。
【0059】
[第1断熱材を固定]
次に、本実施形態の施工方法では、布基礎2に、第1断熱材11が固定される(工程S2)。図5は、第1断熱材11を固定する工程S2を説明する断面図である。
【0060】
本実施形態の工程S2では、地盤10に形成された凹部27において、ベース部6の上端6uと、立上り部7の内周面7iとで形成されるコーナ部13(図4に示す)に、第1断熱材11が固定される。これにより、第1断熱材11の下端11dは、地盤面GLよりも下方に配される。さらに、第1断熱材11の上端11u側は、地盤面GLから突出している。
【0061】
第1断熱材11は、適宜固定することができ、例えば、上述の防蟻機能を有する接着剤(図示省略)が用いられてもよい。本実施形態の工程S2では、建物Bの外周に沿って、第1断熱材11が配される。
【0062】
[土間コンクリートの打設]
図6は、土間コンクリート5を打設する工程S3を説明する断面図である。次に、本実施形態の施工方法では、土間コンクリート5が敷設される(工程S3)。本実施形態の工程S3では、先ず、立上り部7で囲まれた地盤10の上に、防湿シート9が配置される。次に、工程S3では、防湿シート9の上に、土間コンクリート5が打設される。本実施形態の土間コンクリート5の外端面5oは、第1断熱材11の内周面3iに当接している。
【0063】
本実施形態では、第1断熱材11による防蟻性能により、防蟻シート(図示省略)の取り回しの必要がないため、土間コンクリート5の漸増部5Gが省略されてもよい。これにより、図4に示した凹部27の形成と、土間コンクリート5の体積等を最小限に抑えることができるため、施工コストを低減することが可能となる。
【0064】
[第2断熱材を固定]
図7は、第2断熱材12を固定する工程S4を説明する断面図である。次に、本実施形態の施工方法では、第1断熱材11の上端11u側に、第2断熱材12が固定される(工程S4)。
【0065】
本実施形態の工程S4では、先ず、第1断熱材11の上端11uに、防蟻機能を有する接着剤18が塗布される。本実施形態の工程S4では、第1断熱材11の外周面3oから立上り部7の内周面7iまではみ出すように、接着剤18が塗布される。さらに、本実施形態の工程S4では、第1断熱材11の内周面3iから、土間コンクリート5までを少なくとも延びるように、接着剤18が塗布される。そして、本実施形態の工程S4では、第1断熱材11の上端11uに、接着剤18を介して、第2断熱材12の下端12dが固定される。
【0066】
本実施形態の施工方法では、接着剤18の硬化により、防蟻性能を具えた基礎断熱構造1(図1及び図2に示す)が形成される。このように、本実施形態の施工方法では、特許文献1のような防蟻剤や防蟻シートを配置する必要がなく、また、断熱材にガイド孔及びガイド溝を形成する必要もないため、施工性を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態の施工方法では、第1断熱材11の外周面3oから立上り部7の内周面7iまではみ出すように塗布された接着剤18の硬化により、図2に示した第1はみ出し部15が形成される。さらに、第1断熱材11の内周面3iから、土間コンクリート5までを少なくとも延びるように塗布された接着剤18の硬化により、図2に示した第2はみ出し部16が形成される。したがって、本実施形態の施工方法は、高い防蟻性能を有する基礎断熱構造1を、容易に施工することができる。
【0068】
図3に示した第1部材21を形成する場合には、図7に示した第2断熱材12を固定する工程S4において、第1部材21を介して、第2断熱材12が固定されるのが望ましい。さらに、図3に示した第2部材22を形成する場合には、第2断熱材12を固定した後に、図3に示したコーナ部25に第2部材22が配置(散布)されるのが望ましい。
【0069】
これまでの実施形態の基礎断熱構造1では、床下空間4の底面4bを構成する土間コンクリート5が敷設されたが、このような態様に限定されない。例えば、土間コンクリート5に代えて、防蟻シート(図示省略)が敷設されてもよいし、防蟻薬剤(図示省略)が土壌に散布されてもよい。これにより、基礎断熱構造1は、防蟻性能を発揮することができる。
【0070】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0071】
1 基礎断熱構造
2 布基礎
3 断熱材
4 床下空間
6 ベース部
7 立上り部
11 第1断熱材
12 第2断熱材
B 建物
GL 地盤面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7