(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】放射素子の配置を備えた車両用アンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20250213BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20250213BHJP
H01Q 1/32 20060101ALI20250213BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
H01Q1/22 B
B60R11/02 A
H01Q1/32 Z
H01Q21/28
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021082108
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】102020000011089
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517164914
【氏名又は名称】アスク インダストリーズ ソシエイタ´ パー アゾーニ
【氏名又は名称原語表記】ASK INDUSTRIES SOCIETA‘ PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ノタリ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】チェッレテッリ マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ラ コーノ,ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】ファッキーニ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ロンカーリャ,マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】カメリーニ,ジャンルカ
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0093026(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0154890(US,A1)
【文献】特表2009-514253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
B60R 11/02
H01Q 1/32
H01Q 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用アンテナモジュール(100)であって、
水平面に沿って車両本体の一部に固定するのに適しており、長さ(L)及び幅(W)を有する細長い形状を有するベース(1)であって、前記長さ(L)は前記幅(W)の3倍より長く、前記ベースの長手方向中心ラインに沿って延びる長手方向軸(X)、及び前記ベースの前記水平面に対して直交して延びる垂直軸(Z)を有する、ベース(1)と、
前記ベース(1)上に水平方向に配設され、前記ベースの前記長さ(L)未満の長さ(L1)及び前記ベースの前記幅(W)未満の幅(W1)を有するメインボード(2)であって、前記メインボード(2)の前記長さ(L1)は、前記メインボード(2)の前記幅(W1)の2.5倍よりも長い、メインボード(2)と、
第1の放射素子(3)及び第2の放射素子(4)を含んだ、放射素子の第1の対と、
第3の放射素子(5)及び第4の放射素子(6)を含んだ、放射素子の第2の対と
を備え、
前記放射素子(3、4、5、6)は、前記垂直軸(Z)の方向に沿って前記メインボード(2)から上方位置に突出し、各放射素子は、他の放射素子と協働することなく独立したアンテナの機能を実装し、
前記放射素子(3、4、5、6)は、それぞれ中心軸(a3、a4、a5、a6)を有し、前記中心軸(a3、a4、a5、a6)は、前記垂直軸(Z)に沿って延び、かつそれぞれの交差箇所(P1、P2、P3、P4)において前記ベース(1)の前記水平面と交差し、
前記第1及び第2の放射素子(3、4)の前記中心軸(a3、a4)における前記交差箇所(P1、P2)は、前記ベースの前記長手方向軸(X)に対して両側に配設され、前記ベースの前記長手方向軸(X)から距離(d1、d2)だけ離隔され、
前記第3及び第4の放射素子(3、4、5、6)における中心軸(a5、a6)の前記交差箇所(P3、P4)は、前記ベースの前記長手方向軸(X)に対して両側に配設され、前記ベースの前記長手方向軸(X)から距離(d3、d4)だけ離隔され、
前記長手方向軸(X)に直交する投影軸(J1、J2、J3、J4)は、前記放射素子(3、4、5、6)の前記中心軸(a3、a4、a5、a6)の前記交差箇所(P1、P2、P3、P4)を通り過ぎ、前記長手方向軸の異なる高さ(Q1、Q2、Q3、A4)において前記長手方向軸(X)と交差する、アンテナモジュール(100)。
【請求項2】
前記第1及び第2の放射素子(3、4)は、実質的に平坦な形状を有し、横断方向すなわち前記長手方向軸(X)に対して直交する面に配設される、請求項1に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項3】
前記第1の放射素子(3)は、前記メインボードの後端部(20)の近くに配設され、前記第2の放射素子(4)は、前記メインボードの中心軸と一致する横断方向軸(Y1)の近くに配設される、請求項1に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項4】
前記第1の放射素子(3)は、後ろに傾斜した方向に配置され、すなわち前記放射素子の前記中心軸(a3)は、前記ベースの前記水平面に直交する前記垂直軸(Z)に対して、後ろに傾斜している、請求項3に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項5】
前記第3及び第4の放射素子(5、6)は、平坦な形状を有し、長手方向に配設され、すなわち前記ベースの前記長手方向軸(X)に対して平行である、請求項1~4のうちいずれか一項に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項6】
前記第3及び第4の放射素子(5、6)は、平坦な形状を有し、前記第3及び第4の放射素子(5、6)のうち少なくとも一方は、斜め方向、すなわち前記ベースの前記長手方向軸(X)に対して斜め方向に配設されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項7】
前記第1の放射素子(3)は、前記メインボードの後端部(20)の近くに配設され、前記第2の放射素子(4)は、前記メインボードの中心軸と一致した横断方向軸(Y1)の近くに配設され、前記第3の放射素子(5)は、前記第1及び第2の放射素子(3、4)間に配設され、前記第4の放射素子(6)は、前記第2の放射素子(4)の前に配設される、請求項6に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項8】
前記第3の放射素子(5)は、後部が突出した上部(50)を有するPCBであり、前記第1の放射素子(3)と接触しない、請求項7に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項9】
前記第4の放射素子(6)は、後部が突出した上部(60)を有するPCBであり、前記第2の放射素子(4)と接触しない、請求項7または8に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項10】
前記放射素子(3、4、5、6)は接触せず、かつ交差しない、請求項6~9のうちいずれか一項に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項11】
GNSS/GPSアンテナを実装した集積回路(7)をさらに備え、前記集積回路(7)は、水平方向に前記メインボード(2)の前部に配設される、請求項1~10のうちいずれか一項に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項12】
前記第1の放射素子(3)は、LTEまたは5G電話通信のための第1のアンテナを実装し、前記第2の放射素子(4)は、LTEまたは5G電話通信のための第2のアンテナを実装する、請求項1~11のうちいずれか一項に記載のアンテナモジュール(100)。
【請求項13】
前記第3の放射素子(5)は、AM/FMアンテナを実装し、前記第4の放射素子(6)は、DABアンテナを実装する、請求項6~12のうちいずれか一項に記載のアンテナモジュール(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減少した空間で、車両の空気力学的特性に影響を及ぼすことなく、アンテナの種々の機能を実装するための、放射素子の特定の配置を備えた車両用アンテナモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部門において、アンテナは一般的に車両のルーフに配設される。空気摩擦を軽減させるために、構成要素がシャークフィン状に形状付けられた、空気力学的な箱の中に配設されたアンテナが公知である。
【0003】
しかし、AM及びFM周波数のラジオ受信器の機能に加えて、近年アンテナには、携帯電話通信用信号、及びGPS信号、ならびにデジタルラジオの受信器など、追加の機能が提供される。その結果、アンテナモジュールは、規格化された寸法のシャークフィン形状の箱に包含できない放射素子で構成された、追加の構成要素を必要とする。さらに、それらが互いに対してあまりにも近くに配設された場合、放射素子は信号カップリングによる干渉を生じさせる。
【0004】
中国特許出願公開第107181047号明細書は、PCB上に二重螺旋で作られた第1の放射素子、及び容量負荷素子を有する第2の放射素子、を備えた車両用アンテナを開示している。第2の放射素子は三角形状で、第1の放射素子に対して直交するよう配設され、かつ第3の放射素子が挿入される切断部が設けられる。放射素子は、アンテナの中心長手方向軸に対して整合される。放射素子間の交差部、及びそれらの整合は、様々な放射素子間の信号のカップリングを生じさせる。
【0005】
中国特許出願公開第106099322号明細書は、AM/FM用の第1のPCB、高周波数DAB用の第2のPCB、及び低周波数DAB用の第3のPCBで構成された、3つの放射素子を備えたアンテナを開示している。様々なPCB及びアンテナの構成要素は整合され、アンテナの中心長手方向軸に対して対称に配置される。様々な放射素子が長手方向軸に沿って1列に配置された幾何学的配分は、通常、放射の1つの方向を他よりも優勢とするか、または最悪の事例において、近接した放射素子から派生した遮蔽のために、特定の方向の放射を全く無効にする傾向がある。
【0006】
中国実用新案第204885432号明細書は、複数の独立した放射素子を有するアンテナアセンブリを開示している。全ての放射素子は、アンテナの長手方向軸に対して整合される。1つの放射素子のみが、アンテナの横断方向軸に沿って延び、それはいかなる場合も、アンテナの長手方向軸に対して中央かつ対称にされ、それは前述の欠点をもたらす。
【0007】
欧州特許出願公開第2622682号明細書は、GNSS及びSDARS機能のための2つのパッチアンテナ、ならびに垂直位置に配設されたPCBによって得られたLTE及びAM-FM機能のための2つのアンテナの、複数の放射素子から構成された、多機能アンテナを開示している。AM-FMアンテナは、長手方向軸に沿って配置された中央PCBと、横断方向に配置され、中央PCBの端部で係合された2つの端部PCBとの、3つの垂直PCB上に分配する方法で実現される。これら3つのPCBのアセンブリは、各PCBにおける導体トラックの実現によって、2つの端部PCB間に配設された導体格子を有する、包括的アンテナ構造を再構築する。2つの端部PCBは、アンテナのための誘導負荷機能も実施する。このようなアンテナは、いくつかの欠点によって損なわれる。なぜなら、分配されたAM/FMアンテナはかさばり、製造が複雑であるためである。さらに、垂直LTE PCBを有する放射素子は、分配されたAM-FMアンテナの端部PCBの1つに対して完全に平行で非常に接近しており、LTEアンテナ及びAM-FMアンテナ間に低レベルのアンカップリングを生じさせる。
【0008】
国際公開第2017076750号は、ベースとして作用する、水平位置に配設されたメインPCBと、PCBで構成された2つのLTEアンテナと、モノポールアンテナで構成された2つのWi-Fiアンテナと、2つのパッチアンテナと、を備えたアンテナユニットを開示している。このベースは、矩形かつ非伸長形状で、長辺に対する短辺の比率は、概ね7/11である。ベースのこの形状のため、これらのアンテナは、干渉を避けるために十分な距離をとって配設することができる。実際、2つのLTEアンテナは、ベースの短辺側の縁部近くに配設され、中心線軸に対して対称である。2つのWi-Fiアンテナは、ベースの長辺側の縁部近くでオフセット位置に配設され、2つのパッチアンテナは、ベースの中央位置に配設される。非伸長で平行六面体のカバーは、アンテナを覆うためにベースに連結される。車両のルーフに配設されたとき、このようなカバーは明らかに、空気力学的ではない。
【0009】
米国特許出願公開第018109006号明細書は、水平位置に配設されてベースとして作用するメインPCBと、複数のWi-Fi、LTE、及びパッチアンテナと、を備えたアンテナアセンブリを開示している。このベースは円形状である。この場合、アンテナ間の干渉を避けるために、Wi-Fi及びLTEアンテナは、周辺位置でベースの円形縁部に近接して配設され、パッチアンテナはベースの中央位置に配設される。球体のセグメントのような形状のカバーは、アンテナを覆うためにベースに連結される。このようなカバーは明らかに、細長いカバーのような空気力学的ではない。
【0010】
米国特許出願公開第2013082890号明細書は、互いから等間隔で、アンテナとして働くために協働するグリッドの交差箇所に従って配設された、複数の放射素子(ノッチアンテナ)を備えた、アレイアンテナを開示している。このような場合、放射素子の電力を制御して、各放射素子に送信される信号の振幅及び位相を確立するために、制御ユニットを設けなければならない。このタイプの適用は、高い指向性のアンテナに対するものであり、車両用アンテナなどの全方向性アンテナのために使用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】中国特許出願公開第107181047号明細書
【文献】中国特許出願公開第106099322号明細書
【文献】中国実用新案第204885432号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2622682号明細書
【文献】国際公開第2017076750号
【文献】米国特許出願公開第018109006号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013082890号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、細長い空気力学的形状を有し、車両のルーフに配設するのに適しており、ボリュームを最適化するため、及び同時に放射素子間の適切なアンカップリングを保証するための、放射素子の特定の配置が提供された、車両用アンテナモジュールを開示することによって、先行技術の欠点を排除することである。
【0013】
本発明の別の目的は、異なる機能を有し、同時に減少した寸法を有する細長い空気力学的な形状を有し、実現及び設定が簡単である車両用アンテナモジュールを開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、独立請求項1の特性を備えた本発明によって実現される。
【0015】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0016】
本発明による車両用アンテナモジュールは、請求項1に定義される。
【0017】
本発明によるアンテナモジュールは、少なくとも4つの放射素子を備え、これら放射素子は、アンテナモジュールの長辺に延びたアンテナモジュールの軸に対して、実質的に横断方向及び長手方向、ならびに/または斜め方向の空間に分配される。アンテナモジュールの長辺は、車両の移動方向と一致する。これらの放射素子は、アンテナモジュールの長手方向軸及び横断方向軸に対して、両側においてオフセットされた放射素子の第1の対と、アンテナモジュールの長手方向軸及び横断方向軸に対して、両側にオフセットされた放射素子の第2の対と、を備える
【0018】
これらの放射素子は、個々の全方向性アンテナとして働く。
【0019】
このように、放射素子の共通の影響、及び個々の素子の放射図を最適化することができる。実際、アンテナモジュールの長手方向軸及び横断方向軸における放射素子の位置ずれを変化させることによって、放射の最大及び最小方位角の分配は、全ての放射素子について可能な限り等方性(全方向性)である放射図を得るために、最適化することができる。
【0020】
本発明は、必然的に存在する共通の相互作用を、最小またはいずれの場合も最適化するため、さらには様々な放射素子が種々の機能に特化され、かつ異なる作動周波数を有する場合に、制御された方法で、可能な限り放射素子の位置ずれ、すなわちアンテナモジュールの長手方向軸及び横断方向軸に対して位置をずらされた、少なくとも2つの放射素子をもたらす。
【0021】
本発明のアンテナモジュールは複数の放射素子を備え、通常は声及びデータ接続に使用され、単一または二重の放射素子を有するバージョンの電話機能、ならびにAM、FM、DAB、V2X、Wi-Fi、Bluetoothなど、他の典型的な車両用機能の実装など、車両用アンテナの多機能をサポートする。
【0022】
本発明のアンテナモジュールにおいて、全体的に、放射素子は二重螺旋を有さず、互いに交差も接触もしない。その代わりに、本発明のアンテナモジュールは、単一の螺旋または非螺旋形状を有する。さらに、放射素子の各タイプは、単一のPCB、または単一の金属プレートから構成されるかに関わらず、独立した放射素子であり、独立したアンテナとして働き、他の放射素子と協働しない。換言すると、放射素子は、例えばアンテナ機能を実行するために協働する複数の放射素子を備えたアレイなど、分配された構造の一部ではない。有利には、ボリューム及び複雑性は各機能について軽減され、放射素子は、カップリングを最小にするために正確に配設することができる。
【0023】
本発明のさらなる特徴は、添付の図に示される、単に例示であり非限定の実施形態を参照した以下の詳細な説明から、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明によるアンテナモジュールの斜視図である。
【
図3A】放射素子の中心軸の、ベースの水平面との交差箇所、及びこの交差箇所の、ベースの長手方向軸への投射を示す、線図である。
【
図5】導体トラックを有するPCBで構成された放射素子を示す、
図1と同じ図である。
【
図6】放射素子のPCBにおけるトラックを示す、
図4と同じ図である。
【
図7】2つの放射素子が導体プレートである、アンテナモジュールの第2の実施形態における斜視図である。
【
図10】本発明によるアンテナモジュールの、カバーの例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照すると、全体的に参照番号100で表わされた、本発明によるアンテナモジュールが開示される。
【0026】
アンテナモジュール(100)は、車両本体の一部、例えばルーフなどに固定するのに適したベース(1)を備える。
【0027】
以下の説明において、用語「前」及び「後」は車両の移動方向を指し、アンテナが車両上の反対方向に取り付けることができるという事実には拘らない。
【0028】
ベース(1)は、矩形または細長いプレートのように形状付けられ、前に向かって減少する寸法でテーパーが付けられた形状で、後端部(10)及び前端部(11)が設けられる。ベース(1)は、長手方向軸(X)及び横断方向軸(Y)を有し、それらはベースの中央(O)で交差する(
図3)。ベースの長手方向軸及び横断方向軸は、ベースの中心長手方向ライン及び横断方向ラインと一致する。ベースの垂直軸(Z)は、ベースのX軸及びY軸によって形成される面に対して直交し、かつ中央(O)を通過するものと定義することができる。
【0029】
図3を参照すると、ベース(10)は、長さ(L)及び最大幅として考慮される幅(W)を有し、長さ(L)は幅(W)の3倍より長い。
【0030】
シャンク(12)は、ベース(1)の側縁部近くで、ベースから上方に突出する。シャンク(12)は、シャークフィンのような空気力学的な細長い形状のカバー(200)(
図10に示される)を固定するための、ネジなどの固定手段を受け入れるのに適している。このようなカバー(200)は、最大高を有する後部(201)と、前に向かって高さが減少するテーパーが付いた前部(202)と、を有する。
【0031】
隆起した支持部(13)は、ベース(1)から上方に突出し、ベースの後端部(10)から前部(11)へ延びる。ベースの前部(11)には、台形形状の貫通スロット(14)が設けられる。
【0032】
隆起した支持部(13)は、ベース(1)よりも僅かに高い厚さを有するプレートのように、形状付けられる。隆起した支持部(13)は、シャンク(12)にアクセスを提供するために、シャンク(12)の周りの湾曲部(15)を有する側縁部を有する。隆起した支持部(13)は、ベースと共に1つの片として作ることができる。有利には、ベース(1)及び隆起した支持部(13)は、亜鉛、アルミニウム、及び商品名がZAMA(ZAMACまたはZAMAK)として知られているマグネシウム合金で作られる。
【0033】
メインボード(2)は、隆起した支持部(13)上に配設される。メインボード(2)は、1つのPCB上に実現できるか、またはベース(1)に対して平行な水平面に沿って配設された、複数のPCBに分割することができる。メインボード(2)は、後端部(20)、前端部(21)、右側縁部(21)、及び左側縁部(22)が設けられた、実質的に矩形形状を有する。
【0034】
図3を参照すると、メインボード(2)は、ベースの長さ(L)よりも短い長さ(L1)と、最大幅として考慮され、ベースの幅(W)よりも短い幅(W1)と、を有する。いずれの場合でも、メインボード(2)の長さ(L1)は、メインボード(2)の幅(W1)の2.5倍よりも長い。
【0035】
メインボード(2)は、長手方向軸(X1)及び横断方向軸(Y1)を有し、それらはメインボードの中央(O1)で交差する(
図3)。メインボードの長手方向軸及び横断方向軸は、メインボードの中心長手方向ライン及び横断方向ラインと一致する。明らかに、メインボードの中央(O1)は、ベースの中央(O)に対して後の位置に配設される。
【0036】
メインボードの垂直軸(Z1)は、メインボードに直交し、かつメインボードの中央(O1)を通過するものと、定義することができる。
【0037】
アンテナモジュール(100)は、第1の放射素子(3)及び第2の放射素子(4)を含んだ、放射素子の第1の対を備え、放射素子の第1の対は、分離独立した2つのアンテナの機能を実装する。
【0038】
第1及び第2の放射素子(3、4)は、メインボード(2)上に取り付けられる。各放射素子(3、4)は、垂直軸(Z)に沿って延びる寸法である、長手方向寸法を有する。放射素子(3、4)は、メインボード(2)上で実質的に垂直位置に配設され、放射素子の長手方向寸法に沿ってメインボードから上方に突出する。
【0039】
各放射素子(3、4)は、PCBまたは適切な形状の導体プレート(
図7~
図9)とすることができる。このような場合、放射素子(3、4)は実質的に平坦な形状を有する。
【0040】
図3は、第1及び第2の放射素子(3、4)が横断方向に、すなわち放射素子の面が長手方向軸(X)に対して直交するよう配設された構成を示す。
【0041】
図7は、第1の放射素子(3)が横断方向に配設され、かつベースの垂直軸(Z)に対して傾斜し、及び、第2の放射素子(4)が、ベース(1)に対して横断直交方向に配設された構成を示す。
【0042】
第1及び第2の放射素子(3、4)は、それぞれ中心軸(a3、a4)を有する。中心軸は、放射素子の中央を通過し、かつベース(1)を通過する長手方向軸である。
【0043】
図3Aを参照すると、ベース(1)は水平面を有し、その上にベースの長手方向軸(X)が位置する。
【0044】
第1及び第2の放射素子の中心軸(a3、a4)は、
図3Aに示されるそれぞれの交差箇所(P1、P2)において、ベースの水平面と交差する。
【0045】
本発明によると、交差箇所(P1、P2)は、ベースの長手方向軸(X)に対して両側に配設され、ベースの長手方向軸(X)から距離(d1、d2)だけ離隔される。
【0046】
さらに、投影軸(J1、J2)は、長手方向軸(X)に対して直交方向に、交差箇所(P1、P2)を通り過ぎ、長手方向軸の異なる高さ(Q1、Q2)において長手方向軸(X)と交差する。
【0047】
したがって、第1の放射素子(3)及び第2の放射素子(4)は、ベースの長手方向軸(X)に対して位置をずらされる。すなわちそれらは、ベースの長手方向軸(X)に対して非対称に配設される。
【0048】
図面を参照すると、第1の放射素子(3)は、メインボードの左側縁部(22)により近く、第2の放射素子(4)は、メインボードの右側縁部(23)により近い。
【0049】
前述のように、2つの放射素子(3、4)は、ベースの長手方向軸(X)に対して、距離(d1、d2)だけオフセットされる。距離(d1、d2)を変化させることによって、アンカップリングならびに放射図の均一性及び等方性を最大化するための正しい距離に設定するように、放射素子(3、4)で構成された2つのアンテナ間のアンカップリングを変化させることが可能である。
【0050】
カバー(200)のボリュームのために、長手方向軸(X)からの第1及び第2の放射素子の最大距離(d1、d2)は、ベース(1)の幅(W)の概ね1/3~1/4とすることができることを、考慮しなければならない。
【0051】
図3に示される構成において、第1及び第2の放射素子(3、4)は、メインボード(2)に対して横断方向に配置される。アンテナモジュールは、物理的に分離されかつ別個の機能を実装する2つの追加のアンテナを構築する、第3の放射素子(5)及び第4の放射素子(6)を含んだ、放射素子の第2の対も備える。放射素子の第2の対は、第1及び第2の放射素子(3、4)によって実装される機能とは分離され、かつ別個である。
【0052】
第3及び第4の放射素子(5、6)は、メインボード(2)上で長手方向に垂直に配置される。すなわち、これら放射素子の表面は、ベースの長手方向軸(X)に対して平行である。
【0053】
第3の放射素子(5)及び第4の放射素子(6)は、ベースの長手方向軸(X)に対して位置がずらされる。換言すると、第3の放射素子(5)及び第4の放射素子(6)は平行位置に配設され、ベースの長手方向軸(X)から離隔される。
【0054】
さらに、第3の放射素子(5)及び第4の放射素子(6)は、ベースの長手方向軸(X)に対して位置をずらされ、すなわちベースの長手方向軸(X)に対して非対称に配設される。
【0055】
第3及び第4の放射素子(5、6)は、それぞれ中心軸(a5、a6)を有する。第3及び第4の放射素子の中心軸(a5、a6)は、
図3Aに示されるそれぞれの交差箇所(P3、P4)において、ベース(1)の水平面と交差する。
【0056】
図3Aを参照すると、第3及び第4の放射素子における中心軸(a5、a6)の交差箇所(P3、P4)は、ベースの長手方向軸(X)に対して両側に配設され、ベースの長手方向軸(X)からそれぞれ距離(d3、d4)だけ離隔される。
【0057】
さらに、長手方向軸(X)に直交する投影軸(J3、J4)は、交差箇所(P3、P4)を通り過ぎ、長手方向軸の異なる高さ(Q3、Q4)において長手方向軸(X)と交差する。
【0058】
この場合も、長手方向軸(X)からの第1及び第2の放射素子の最大距離(d3、d4)は、ベース(1)の幅(W)の概ね1/3~1/4とすることができることを、考慮しなければならない。
【0059】
ベースの長手方向軸(X)に対する、第3及び第4の放射素子の中心軸における交差箇所(P3、P4)の距離(d3、d4)を変化させることによって、アンカップリングならびに放射図の均等性及び等方性を最大にするための、正確な距離に設定するよう、第3及び第4の放射素子で構成された2つのアンテナ間のアンカップリングを変化させることを可能にする。
【0060】
さらに、アンテナモジュール(100)が、(第1及び第2の放射素子(3、4)で構成された)位置をずらされた放射素子の第1の対、及び(第3及び第4の放射素子(5、6)で構成された)位置をずらされた放射素子の第2の対、を備えた場合、個々の放射素子の位置ずれを変化させることによって、それら個々の放射素子の放射図を、最適化するのを可能にする。
【0061】
さらに、各放射素子(3、4、5、6)の高さ(Q1、Q2、Q3、Q4)を、長手方向軸(X)に沿って変化させることによって、放射素子の放射図を最適化することが可能である。カバー(202)は、テーパーが付けられた前部(201)を有するので、各放射素子(3、4、5、6)の、長手方向軸(X)に沿った高さ(Q1、Q2、Q3、Q4)は、ベース(1)の前端部において第4の放射素子(6)を有するようにはできない。その一方で、第1の放射素子(3)の高さ(Q1)は、ベースの後端部の近くにあり、第4の放射素子(6)の高さ(Q4)は、ベースの中心ライン(Y)の近くにある。
【0062】
図1~
図3を参照すると、第3の放射素子(5)は、メインボードの右側縁部(23)により近く、第4の放射素子(6)は、メインボードの左側縁部(22)により近い。
【0063】
有利には、第1の放射素子(3)は、メインボードの後端部(20)に近い。第2の放射素子(4)は、メインボードの中心ラインと一致した横断方向軸(Y1)の近くに配設される。第3の放射素子(5)は、第1と第2の放射素子(3、4)間に配設される。第4の放射素子(6)は、第2の放射素子(4)に対して前に配設され、ベース(1)の前部に空間を残す。
【0064】
図3は、垂直に延びた4つの放射素子(3、4、5、6)を備えたアンテナモジュールを示すが、アンテナモジュールは、垂直に延びた5つ以上の放射要素を備え得る。
【0065】
さらに、第3及び第4の放射要素(5、6)のうち少なくとも一方は、斜め方向に配設することができる。すなわち、放射素子の面は、ベースの長手方向軸(X)に対して斜めである。
【0066】
図1及び
図2を参照すると、第3の放射素子(5)は、後部から突出した上部(50)が設けられたPCBであり、第1の放射素子(3)と干渉しない。なぜなら、第1の放射素子(3)は、メインボードの右側縁部(22)により近く、第3の放射素子(5)は、メインPCBの左側方側(23)により近いからである。
【0067】
同様に、第4の放射素子(6)は、後部から突出した上部(60)が設けられたPCBであり、第2の放射素子(4)と干渉しない。なぜなら、第2の放射素子(4)は、メインボードの左側縁部(23)により近く、第4の放射素子(6)は、メインボードの右側方側(23)により近いからである。
【0068】
4つの放射素子(3、4、5、6)は接触せず、かつ交差しないことに留意しなければならない。
【0069】
第4の放射素子(6)は、メインボード(2)の前部に延びない。実際、方形、円形、または矩形形状の集積回路(7)を、メインボード(2)の前部に配置することができ、限定された高さ空間を占有し、第5のパッチアンテナを実装する。
【0070】
例示目的として、
-第1の放射素子(3)は、携帯電話通信(LTEまたは5G)のための第1のアンテナを実装する。
-第2の放射素子(4)は、携帯電話通信(LTEまたは5G)のための第2のアンテナを実装する。
-第3の放射素子(5)は、AM/FMアンテナを実装する。
-第4の放射素子(6)は、DABアンテナを実装する。
-集積回路(7)は、GNSS/GPSアンテナを実装する。
【0071】
第1及び第2の放射素子(3、4)によって実装された電話通信アンテナは、第4世代(4G)携帯電話によって使用されるLTE(Long Term Evolution)規格、または第5世代(5G)またはその後の携帯電話のための別の規格を使用することができる。
【0072】
第3の放射素子(5)によって実装されたAM/FMアンテナは、振幅/周波数変調を有するラジオアンテナである。
【0073】
第4の放射素子(6)によって実装されたDABアンテナは、DAB(Digital Audio Broadcasting)規格を使用するラジオアンテナであり、より良好な品質でラジオ番組を音声伝達するのを可能にする、デジタルオーディオ放送規格である。
【0074】
集積回路(7)によって実装されたGNSS/GPSアンテナは、全地球的航法衛星システム(GNSS/GPS)からの信号を受信するためのアンテナであり、周回人工衛星及び疑似衛星のネットワークを使用した、ジオ測位及び全地球ナビゲーションシステムである。
【0075】
図5を参照すると、第3及び第4の放射素子(3、4)は、PCB上のトラックを用いて得られた単一の螺旋コイル(55、66)によって生成された、それぞれのインダクタンスを包含したPCBである。
【0076】
図6を参照すると、第1の放射素子(3)は、2つのモノポールアンテナのブランチを包含する。一方のモノポールアンテナは、他方のモノポールアンテナよりも長く、部分的に折り畳まれている。これらのモノポールアンテナは、携帯電話通信に割り当てられた2つの帯域グループの動作を網羅するのに適した周波数挙動を実現するために必要である。より長いモノポールアンテナは、低周波数帯域を網羅し、より短いモノポールアンテナは、高周波帯域を網羅する。
【0077】
第2の放射素子(4)は、モノポールアンテナと、PCB上のトラックを用いて得られた単一の螺旋コイル(45)で生成されるインダクタンスと、を包含するPCBから構成される。
【0078】
図7~
図9を参照すると、第1及び第2の放射素子(3、4)は、適切に形状付けられたシートメタルで作られた導体トラックから構成される。導体プレートは前から見たときにC形状であり、折り込まれた縁部(35)を有する。
【0079】
いずれの場合も、各放射素子の導体プレートは、実質的に平坦な形状を有し、ベース(1)に対してほとんど垂直方向に延びる。
【0080】
詳細には、第1の放射素子(3)は、ベースの垂直軸(Z)に対して、概ね10~40°の角度だけ後ろに傾斜した、中心軸(3a)を有する。
【0081】
本発明のアンテナモジュール(100)は、細長く狭いベース(1)を想定しており、幅(W)に対する長さ(L)の比率は3よりも大きい。さらに、ベースの幅(W)は全体的に60mm未満であることを考慮しなければならない。これは、放射素子(3、4、5,6)の近接をもたらし、これら放射素子が非対称に配設されない場合に干渉を発生させる。
【0082】
さらに、カバー(200)は、テーパーが付けられた前部(202)を有することを考慮しなければならない。そのため、特定の高さを有する放射素子(3、4、5、6)がカバーに干渉するのを避けるために、放射素子(3、4、5、6)を後部に配設しなければならない。その代わりに、パッチアンテナを実装する集積回路(7)を、前に配設することができる。