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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】飛行体制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/56 20250101AFI20250213BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20250213BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
G08G5/56
B64C27/08
B64C39/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021100944
(22)【出願日】2021-06-17
(65)【公開番号】P2023000236
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】今本 健二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴廣
(72)【発明者】
【氏名】板東 幹雄
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057312(JP,A)
【文献】特開2009-184675(JP,A)
【文献】特開2019-172166(JP,A)
【文献】特開2020-087145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G05D 1/00 - 1/12
B64B 1/00 - 1/70
B64C 1/00 - 99/00
B64D 1/00 - 47/08
B64F 1/00 - 5/60
B64G 1/00 - 99/00
B64U 10/00 - 80/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体制御装置と地上監視装置とを備える飛行体制御システムにおいて、
前記飛行体制御装置は、
飛行体の周辺環境および前記飛行体の動作状態のうちの少なくとも一方を監視する状態監視部と、
前記飛行体の飛行を制御する飛行制御部と、
前記飛行体の閉塞空間を設定する閉塞空間設定部と、
前記地上監視装置との通信部と、を備え、
前記地上監視装置は、
複数の前記飛行体の飛行位置を監視する飛行位置監視部と、
複数の前記飛行体の前記閉塞空間を管理する閉塞空間管理部と、
複数の前記飛行体制御装置との通信部と、を備え、
前記閉塞空間設定部は、前記状態監視部による監視結果のうち、前記飛行体の飛行速度および機体重量により推定される慣性の影響に基づき前記飛行体に対する前記閉塞空間を制御することを特徴とする飛行体制御システム。
【請求項2】
飛行体制御装置と地上監視装置とを備える飛行体制御システムにおいて、
前記飛行体制御装置は、
飛行体の周辺環境および前記飛行体の動作状態のうちの少なくとも一方を監視する状態監視部と、
前記飛行体の飛行を制御する飛行制御部と、
前記飛行体の閉塞空間を設定する閉塞空間設定部と、
前記地上監視装置との通信部と、を備え
前記地上監視装置は、
複数の前記飛行体の飛行位置を監視する飛行位置監視部と、
複数の前記飛行体の前記閉塞空間を管理する閉塞空間管理部と
複数の前記飛行体制御装置との通信部と、を備え、
前記閉塞空間設定部は、前記状態監視部による監視結果に基づいて、前記飛行体の機器故障有無およびバッテリ残量のうちの少なくとも一方を含む機器動作状態より推定される前記飛行体の飛行性能に基づき前記閉塞空間を制御することを特徴とする飛行体制御システム。
【請求項3】
飛行体制御装置と地上監視装置とを備える飛行体制御システムにおいて、
前記飛行体制御装置は、
飛行体の周辺環境および前記飛行体の動作状態のうちの少なくとも一方を監視する状態監視部と、
前記飛行体の飛行を制御する飛行制御部と、
前記飛行体の閉塞空間を設定する閉塞空間設定部と、
前記地上監視装置との通信部と、を備え
前記地上監視装置は、
複数の前記飛行体の飛行位置を監視する飛行位置監視部と、
複数の前記飛行体の前記閉塞空間を管理する閉塞空間管理部と
複数の前記飛行体制御装置との通信部と、を備え、
前記閉塞空間設定部は、
前記状態監視部による監視結果に基づいて、前記飛行体に対する前記閉塞空間を制御し、
前記飛行体の離発着場周辺の各空間座標地点において前記飛行体が存在する確率を算出し、
前記飛行体について予測される事故による影響の度合いに基づき閉塞空間設定閾値を設定し、
前記確率が前記閉塞空間設定閾値以上となる範囲を前記閉塞空間として設定することを特徴とする飛行体制御システム。
【請求項4】
飛行体制御装置と地上監視装置とを備える飛行体制御システムにおいて、
前記飛行体制御装置は、
飛行体の周辺環境および前記飛行体の動作状態のうちの少なくとも一方を監視する状態監視部と、
前記飛行体の飛行を制御する飛行制御部と、
前記飛行体の閉塞空間を設定する閉塞空間設定部と、
前記地上監視装置との通信部と、を備え
前記地上監視装置は、
複数の前記飛行体の飛行位置を監視する飛行位置監視部と、
複数の前記飛行体の前記閉塞空間を管理する閉塞空間管理部と
複数の前記飛行体制御装置との通信部と、を備え、
前記閉塞空間設定部は、
前記状態監視部による監視結果に基づいて、前記飛行体に対する前記閉塞空間を制御し、
前記状態監視部により監視できる監視範囲を設定し、
前記飛行制御部は、前記監視範囲外に前記閉塞空間が設定される場合、前記監視範囲外へ前記飛行体が移動しないように飛行指示する、もしくは、前記監視範囲が前記閉塞空間を含むように前記飛行体を制御することを特徴とする飛行体制御システム。
【請求項5】
請求項1、2、3、4のうちのいずれか一項に記載の飛行体制御システムにおいて、
前記地上監視装置は、複数の前記飛行体の前記閉塞空間が互いに干渉した場合、または干渉が推定された場合に、前記干渉が解消されるように前記飛行体に対して飛行指示することを特徴とする飛行体制御システム。
【請求項6】
請求項3または4に記載の飛行体制御システムにおいて、
前記閉塞空間設定部は、前記状態監視部による前記監視結果のうち、前記飛行体の位置推定精度に基づき、前記閉塞空間を制御することを特徴とする飛行体制御システム。
【請求項7】
請求項3または4に記載の飛行体制御システムにおいて、
前記閉塞空間設定部は、前記状態監視部による前記監視結果のうち、前記飛行体の周囲環境からの外乱による飛行への影響度合いおよび周囲環境からの外乱に対する前記飛行体の飛行性能のうちの少なくとも一方に基づき前記閉塞空間を制御することを特徴とする飛行体制御システム。
【請求項8】
請求項3または4に記載の飛行体制御システムにおいて、
前記閉塞空間設定部は、前記飛行体の飛行時に発生する気流が他の前記飛行体に対して与える影響に基づき前記閉塞空間を制御することを特徴とする飛行体制御システム。
【請求項9】
請求項に記載の飛行体制御システムにおいて、
前記閉塞空間設定部は、前記飛行体の位置精度、周囲環境からの外乱による飛行への影響度合い、慣性の影響、前記飛行体の機器動作状態、前記飛行体の飛行時に発生する気流が他の前記飛行体に対して与える影響のうち、少なくとも2つ以上を組み合わせた結果に基づき前記閉塞空間を制御することを特徴とする飛行体制御システム。
【請求項10】
請求項に記載の飛行体制御システムにおいて、
前記閉塞空間設定部は、前記状態監視部による前記監視結果に基づいて前記飛行体に対する前記閉塞空間のサイズ及び形状のうちの少なくとも一方を設定することを特徴とする飛行体制御システム。
【請求項11】
請求項1、2、3、4のうちのいずれか一項に記載の飛行体制御システムの飛行体制御装置において、
前記閉塞空間設定部は、前記状態監視部による監視結果に基づいて前記飛行体に対する前記閉塞空間を制御することを特徴とする飛行体制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の飛行体制御装置において、
前記閉塞空間設定部は、前記状態監視部による監視結果に基づいて前記飛行体に対する前記閉塞空間のサイズ及び形状のうちの少なくとも一方を設定することを特徴とする飛行体制御装置。
【請求項13】
請求項1、2、3、4のうちのいずれか一項に記載の飛行体制御システムの地上監視装置において、
前記閉塞空間は、前記飛行制御により制御されることを特徴とする地上監視装置。
【請求項14】
請求項13に記載の地上監視装置において、
前記閉塞空間は、前記飛行制御により前記飛行体に対する前記閉塞空間のサイズ及び形状のうちの少なくとも一方が設定されることを特徴とする地上監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体制御システムに関し、特に、垂直離発着が可能な飛行体の飛行体制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市内や都市間の次世代移動手段として、空を飛ぶことが可能な小型電動航空機等による飛行体の開発が行われている。このとき、複数の飛行体が行きかうために、衝突を防止するための制御が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1では、互いに交差しない飛行経路を設定し、前後の飛行物体が近接しないように制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-6798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に、垂直離発着が可能な飛行体では、個々の離発着場の位置が近くに存在する場合が多く存在する。このため、飛行体の離発着時には、飛行体同士が近接して衝突の危険性が高く、高度な制御が求められる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、互いに交差しない飛行経路をそれぞれ設定すると、特定の空間に設定できる飛行経路は限られた経路のみになる。特に、離発着場の位置が近接している垂直離発着が可能な飛行体は、相互に干渉しない飛行経路の設定が困難なケースが存在する。もしくは、相互に干渉しない飛行経路を設定できたとしても、その数は限られたものとなり、求められる運用を実行できない可能性が生じる。
【0007】
また、特許文献1には、複数の飛行体が同経路を飛行する場合、安全性を維持するために必要と考えられる飛行体間の飛行間隔については記載されていない。
【0008】
本発明の目的は、記課題に鑑みて、垂直離発着が可能な飛行体の制御をより適切に行い、飛行体の状態や環境に応じて安全かつ高密度な離発着が可能な飛行体制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0010】
飛行体制御装置と地上監視装置とを備える飛行体制御システムにおいて、前記飛行体制御装置は、飛行体の周辺環境および前記飛行体の動作状態のうちの少なくとも一方を監視する状態監視部と、前記飛行体の飛行を制御する飛行制御部と、 前記飛行体の閉塞空間を設定する閉塞空間設定部と、前記地上監視装置との通信部と、を備え、前記地上監視装置は、複数の前記飛行体の飛行位置を監視する飛行位置監視部と、複数の前記飛行体の前記閉塞空間を管理する閉塞空間管理部と、複数の前記飛行体制御装置との通信部と、を備え、前記閉塞空間設定部は、前記状態監視部による監視結果のうち、前記飛行体の飛行速度および機体重量により推定される慣性の影響に基づき前記飛行体に対する前記閉塞空間を制御する。
【0011】
また、前記飛行体制御システムの飛行体制御装置において、前記閉塞空間設定部は、前記状態監視部による監視結果に基づいて前記飛行体に対する前記閉塞空間を制御する。
【0012】
また、前記飛行体制御システムの地上監視装置において、前記閉塞空間は、前記飛行制御により制御される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、垂直離発着が可能な飛行体の制御をより適切に行い、飛行体の状態や環境に応じて安全かつ高密度な離発着が可能な飛行体制御システムを提供することができる。
【0014】
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の移動体制御システムの一実施形態を示すブロック図である。
図2A】本発明の移動体制御システムにおいて閉塞空間を割り当てる場合の概念図である。
図2B】本発明の移動体制御システムにおいて閉塞空間を割り当てる場合の概念図である。
図3A】本発明の移動体制御システムにおいて、高い位置精度に基づき閉塞空間を割り当てる場合の例を示す図である。
図3B】本発明の移動体制御システムにおいて、低い位置精度に基づき閉塞空間を割り当てる場合の例を示す図である。
図4】本発明の移動体制御システムにおいて、風の影響に基づき閉塞空間を割り当てる場合の例を示す図である。
図5】本発明の移動体制御システムにおいて、移動時における慣性の影響に基づき閉塞空間を割り当てる場合の例を示す図である。
図6】本発明の移動体制御システムにおいて、一部機器故障の影響に基づき閉塞空間を割り当てる場合の例を示す図である。
図7A】本発明の移動体制御システムにおいて、自機のダウンウォッシュの影響に基づき閉塞空間を割り当てる場合の例であり、静止時を示す図である。
図7B】本発明の移動体制御システムにおいて、自機のダウンウォッシュの影響に基づき閉塞空間を割り当てる場合の例であり、機体傾斜時を示す図である。
図8A】本発明の移動体制御システムにおいて、閉塞空間と監視範囲の関係を表した概念図である。
図8B】本発明の移動体制御システムにおいて、閉塞空間と監視範囲の関係を表した概念図である。
図9】本発明の移動体制御システムの制御の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例
【0017】
図1は、本発明の飛行体制御システム30の一実施例を示すブロック図である。
【0018】
図1において、飛行体制御システム30は、地上監視装置10と飛行体制御装置20を備えており、これらは、互いに無線等による通信が可能である。地上監視装置10は、飛行位置監視部11と、閉塞空間管理部12と、通信部13とを備えている。飛行体制御装置20は、飛行制御部21と、状態監視部22と、閉塞空間設定部23と、通信部24とを備えている。
【0019】
通信部13と通信部24とは、情報の交互通信を行う。
【0020】
飛行体制御システム30で制御する飛行体1(図2に示す)は、垂直離発着が可能な垂直離着陸機(VTOL)が想定される。この飛行体1は、人を乗せて移動する飛行体1にも適用でき安全性が求められる。また、無人で移動する飛行体1に適用してもよい。
【0021】
飛行体1は、例えば、モータやエンジン等の駆動装置により推進することができる。また、飛行体1の離発着の際は、自動で制御されることが可能な機能を備えている。
【0022】
離発着場3(図2に示す)は、1つの飛行体1が離発着する地上側の場所である。垂直離着陸機の場合、滑走路を利用する航空機に比べて、離発着に場所をとらないため、ある程度の範囲内に複数の離発着場3を設けることが可能である。これにより、多様な運用を可能とする。
【0023】
例えば、ビルの屋上や、空きスペース等、様々な場所に設けることが想定できる。当該飛行体制御システム30では、複数の離発着場3に対して制御可能であり、例えば、3か所以上、5か所以上等と、制御できる離発着場3の数を増やすことが可能である。
【0024】
地上監視装置10は、各飛行体1の離発着を監視・制御する地上側に設置される装置である。例えば、サーバ等で構成することができる。1つの地上監視装置10が全ての飛行体1を監視してもよいし、所定の範囲内を飛行する飛行体1のみを監視してもよい。ここでの所定の範囲は、例えば、対象となる離発着場3に対して各飛行体1の離発着を監視・制御するために必要な監視制御必要範囲4(図2Bに示す)等である。
【0025】
地上監視装置10は、複数設けてもよい。この場合、1つの地上監視装置10が故障した場合に、他の地上監視装置10が補助をする構成としてもよい。さらに、1台の地上監視装置10で監視可能な台数を越えた飛行体1が監視・制御エリアに侵入してきた場合に、他の地上監視装置10がその範囲の監視・制御の補助をしてもよい。
【0026】
地上監視装置10は安全性・稼働率確保のため、冗長構成(二重化)としてもよい。すなわち、監視・制御するために必要なサーバ等の同じ装置を地上監視装置10内に2つに設ける、又は、同じ装置を他の地上監視装置10に設ける等してバックアップの体制を整える。
【0027】
飛行位置監視部11は、各飛行体1の飛行位置を監視する。監視する飛行体1の範囲は、監視範囲内を飛行又は監視範囲内に存在する移動体でもよいし、離着陸を予定している飛行体1に限定してもよい。飛行体1の位置を特定する方法は、地上に設置したセンサを用いて飛行体1の位置を検知してもよいし、各飛行体1から位置情報を受け取ってもよい。
【0028】
地上に設置するセンサの例としては、カメラ、IR(赤外線)カメラ、レーザーレーダ、ライダー(LIDAR)等のセンサがあげられる。これらにより、3次元的に空間を把握しながら飛行体1の位置を把握する。また、飛行体1から位置情報を受け取る場合は通信部13を介して行われる。
【0029】
閉塞空間管理部12は、飛行体1が安全に飛行する際に必要となる飛行空間を「閉塞空間」として規定する。閉塞空間管理部12は、各飛行体1より受信した閉塞空間情報、および各飛行体1の飛行位置に基づき、各飛行体1が必要とする閉塞空間を割り当てる。
【0030】
ここで、ある飛行体1へ割り当てた閉塞空間が、他の飛行体1へ割り当てた閉塞空間と干渉する場合、いずれか、もしくは両方の飛行体1に対して当該干渉が解消されるように飛行変更を指示する。
【0031】
図2Aは、閉塞空間2の概念図であり、図2Bは、閉塞空間2同士の干渉が発生した状況の概念図である。
【0032】
図2A及び図2Bにおいて、閉塞空間2の干渉が解消されるように飛行変更を指示する際、実際に干渉が発生した後に指示しても良いし、干渉の発生が予想される時点で指示しても良い。事前に干渉を予想する手段として、各飛行体1の離発着計画情報、周辺の天候情報等を適用しても良い。
【0033】
例えば、離発着計画情報として、複数の飛行体1が同時間帯に同一離発着場3への着陸を計画している場合、閉塞空間管理部12は飛行体1間の干渉が発生すると予想できることから、各飛行体1の着陸時間帯をずらす、もしくは異なる離発着場3を使用するように指示する、といった飛行変更を指示する事が考えられる。
【0034】
ここで、「閉塞空間の規定」について説明する。
【0035】
閉塞空間2は、飛行体1が安全に飛行するために必要とする飛行範囲である。閉塞空間2は、飛行体1の機器状態や外部環境の影響に基づき、想定される飛行体1の飛行範囲や、他の飛行体1に対する影響範囲に基づき規定される。想定される飛行体1の飛行範囲に基づき規定されることから、該閉塞空間2内に他の飛行体1が侵入しない限り、飛行体1同士の衝突を防止することが可能となる。
【0036】
また、上述の通り、閉塞空間2の大きさは危機状態や外部環境に応じて随時変更する。例えば、風が強い場合は、飛行体1の位置がずれる可能性が大きいため閉塞空間2の大きさを大きくとるなど、気象条件に応じて変更することができる。閉塞空間2の算出方法の詳細は、飛行体1の閉塞空間設定部23の説明にて説明する。
【0037】
通信部13は、飛行体制御装置20の通信部24と無線等により通信を行う。これにより、地上監視装置10と飛行体制御装置20との間の通信を行うことができる。
【0038】
飛行体制御装置20は、各飛行体1の飛行を制御する装置である。飛行体制御装置20は、各飛行体1に搭載することを基本とする。一方で、例えば地上に設置して遠隔操作する構成としてもよいし、1つの飛行体1に設置した飛行体制御装置20が周辺に存在する他の飛行体1を制御してもよい。
【0039】
飛行体制御装置20は安全性・稼働率確保のため、冗長構成(二重化)としてもよい。すなわち、監視・制御するためのコンピュータ等の装置を飛行体制御装置20内に2つに設ける、又は、同じ装置を他の飛行体制御装置20に設ける等してバックアップの体制を整える構成としてもよい。
【0040】
飛行制御部21は、飛行体1の飛行を制御する。閉塞空間管理部12から飛行変更を指示された場合、その指示に基づき、飛行体1の飛行速度、方向、姿勢、タイミングを管理し、飛行制御に要するモータ等の駆動装置を駆動させる。
【0041】
状態監視部22は、センサ等を用い、飛行体1の機体の動作状態、および機体周辺の状況を監視する。飛行体1の機体の動作状態としては、例えば機体の飛行位置、飛行速度、方向、姿勢、タイミング、搭載機器の動作状態を含む。また、搭載機器の動作状態としては、例えばモータ出力、ロータ回転速度、バッテリ容量、機器故障有無を含む。
【0042】
機体周辺の状況としては、例えば機体周辺の風向きや強さ、地形や周辺構造物、他の飛行体1や障害物の大きさや属性、自機との距離、位置等を含む。状態監視部22は、現時点における状態情報を監視することを基本とするが、過去の状態情報や、飛行経路上における今後の状態情報を推定してもよい。今後の状態情報を推定する事で、例えば今後の飛行経路上において干渉発生が予想される場合、回避するように飛行経路を事前に変更することが可能となる。
【0043】
状態監視部22は、飛行経路上に、障害物を検知した場合、進行停止や回避経路を飛行制御部21へ指示してもよい。障害物は、例えば、ビルや鳥等があげられる。これらの障害物は、飛行位置監視部11とは別に検知することで、より確実な障害物の検知を可能とする。
【0044】
ここでのセンサは、例えば、カメラ、IRカメラ、ミリ波レーダ、超音波センサ等のセンサがあげられる。センサは各飛行体1に搭載することを基本とするが、例えば地上に設置した場合は、地上で監視した結果を飛行体1へ送信する構成としてもよいし、1つの飛行体1に設置したセンサが監視した結果を周辺の他の飛行体1へ送信してもよい。
【0045】
障害物の情報は、地上監視装置10へ送られ、地上監視装置10ではその情報に基づき、各飛行体1に対して飛行経路を変更または修正するよう指示してもよい。飛行経路を変更する場合は、到着する離発着場を変更するなどルート自体を変更することが含まれる。飛行経路の修正は、飛行経路の一部の形状について障害物を避けるように修正することが含まれる。
【0046】
閉塞空間設定部23は、状態監視部22による状態監視結果に基づき、自身の閉塞空間2の形状やサイズを設定する。つまり、閉塞空間設定部23は、状態監視部22による状態監視結果に基づき、閉塞空間2を制御する。そして、閉塞空間設定部23は、通信部24を介して地上監視装置10へ当該閉塞空間2の使用を通知する。
【0047】
飛行体1同士の閉塞空間2の干渉有無は、閉塞空間設定部23からの通知に基づき地上監視装置10が確認する。閉塞空間設定部23は、地上監視装置10より閉塞空間2内において干渉が発生していない旨の通知を受信したら、飛行制御部21へ当該閉塞空間2内の飛行を指示する。
【0048】
地上監視装置10へ閉塞空間2の使用を通知する際は、当該飛行体1の状態情報、飛行経路、飛行タイミング、使用する離発着場3の位置の情報を送信する。これらの情報に加え、飛行優先度、機体性能、気象条件等の情報を送信してもよい。
【0049】
ここで、閉塞空間2の形状を設定する例について説明する。閉塞空間設定部23が閉塞空間2を設定する場合、飛行体1の飛行位置を推定する必要がある。飛行位置を推定する際、位置推定方法や周辺環境の影響によって誤差が生じるため、この誤差を加味した飛行体1の位置推定精度に基づき、閉塞空間設定部23は、閉塞空間2を設定(制御)することが望ましい。位置推定精度は、状態監視部22による飛行体1の飛行位置の監視結果に含まれる。
【0050】
飛行位置を推定する方法として、例えば飛行体1に搭載したGNSS受信機の信号情報を用いたり、LIDARを用いて周辺構造物の特徴点(レーザー反射点群)を検出するSLAMと呼ばれる技術を適用したり、カメラ画像より周辺構造物を認識することで位置を推定したり、基地局から送信したUWB信号(Ultra Wideband)の伝搬時間より距離を推定するといった方法が考えられる。本発明では飛行体1の飛行位置が推定できればよく、その方法は問わない。
【0051】
飛行位置を推定する方法は様々存在するが、それぞれの方法により位置精度が異なり、また使用する機器性能、周辺環境によっても変動する。例えば、GNSSを使用する場合、衛星からの信号を適切に受信できる環境であれば数m程度の誤差となり、ディファレンシャル測位やRTK測位が可能な環境であれば数cmオーダの誤差に抑えられる。
【0052】
しかし、遮蔽物やマルチパスの発生有無、および衛星位置の影響により、飛行体1の位置精度は変動する。そこで、閉塞空間設定部23は、状態監視部22による状態監視結果に基づき、機体位置およびその信頼区間を算出し、その信頼区間の範囲を閉塞空間2として設定する方法が挙げられる。
【0053】
位置精度に基づき閉塞空間2を設定した場合の概念図を図3A及び図3Bに示す。図3Aは、高い位置精度時における閉塞空間2AHを示し、図3Bは、低い位置精度時における閉塞空間2ALを示す。閉塞空間2ALは、閉塞空間2AHより大に設定される。示これにより、飛行体1の位置推定精度が低い場合は閉塞空間2を大きめの閉塞空間2ALに設定することで安全性を維持することができる。
【0054】
一方、位置推定精度が高い場合は閉塞空間2を小さめの閉塞空間2AHに設定することで複数の飛行体1を近接して効率的に飛行することができる。
【0055】
また、閉塞空間2を設定する場合、風雨などの周囲環境からの外乱による飛行への影響度合いを考慮した上で、飛行体1が備える飛行性能から推定される飛行範囲を閉塞空間2とすることが望ましい。
【0056】
図4は、周囲環境からの外乱による影響度合いに基づき閉塞空間2を設定した場合の概念図である。飛行体1の周囲環境からの外乱による飛行への影響度合いは、飛行体1もしくは地上監視装置10に風速センサを設置して計測しても良いし、外乱の影響による飛行体1の位置や姿勢、モータ出力やロータ回転速度の変動量等の飛行体1の飛行性能から推定しても良いし、周辺地域の天気予報情報から推定しても良い。風雨の向きや強さは急変する可能性もあるため、一定の変動幅を加味することが望ましい。閉塞空間設定部23は、状態監視部22による監視結果のうち、飛行体1の周囲環境からの外乱による飛行への影響度合いおよび周囲環境からの外乱に対する飛行体1の飛行性能のうちの少なくとも一方に基づき閉塞空間2を制御することができる。
【0057】
飛行体1が備える飛行性能は、モータやロータの動作性能、機体重量、飛行制御プログラム性能等から推定する事が考えられる。想定される外乱が発生した際に、飛行体1が体勢を立て直すまでに想定される最大の移動範囲を閉塞空間として設定することが考えられる。
【0058】
また、移動している場合は慣性の影響により、急にその場に停止したりすることや、全く別の方向へ進む可能性が低いことから、移動速度および機体重量も加味して閉塞空間2を設定することが望ましい。
【0059】
図5は、移動に伴う慣性の影響に基づき閉塞空間2Cを設定した場合の概念図を示す図である。飛行体1の移動に伴う慣性の影響に基づき閉塞空間2Cを設定することにより、大きな外乱が発生している環境、もしくは外乱の影響を受けやすい機体を使用している場合、もしくは高速移動時は、閉塞空間2Cを大きめに設定(制御)することで安全性を維持することができる。
【0060】
一方、外乱が安定している環境、もしくは外乱に対して安定した飛行制御が可能な機体を使用している場合、もしくは低速移動時は、閉塞空間2Cを小さめに設定(制御)することで複数の飛行体1を近接して効率的に飛行することができる。すなわち、環境変動や機体性能に応じて最適な空間割り当てが可能となる。
【0061】
図6は、飛行体1の機器故障時において閉塞空間2Dを設定した場合の概念図である。
【0062】
図6において、飛行体1が備える飛行性能を推定する際には、飛行体1の機器の故障有無やバッテリ残量等の機器動作状態についても考慮することが望ましい。例えば、故障によりロータが一基動作しないことが確認された場合には、飛行性能が低下すると想定されるため、正常時よりも広めに閉塞空間2Dを設定することが考えられる。閉塞空間設定部23は、飛行体1の機器故障有無およびバッテリ残量のうちの少なくとも一方を含む機器動作状態より推定される飛行体1の飛行性能に基づき閉塞空間2Dを設定(制御)する。
【0063】
また、バッテリ残量低下が確認された場合には、バッテリ残量切れによる墜落の可能性を想定し、当該飛行体1の下方向をすべて閉塞空間2Dと設定しても良い。
【0064】
図7A及び図7Bは、ダウンウォッシュの影響に基づき閉塞空間2Eを設定した場合の概念図である。
【0065】
図7Aにおいて、多数の飛行体1が互いに近接した離発着場3を利用する環境においては、各飛行体1が飛行時に発生する気流の乱れ(ダウンウォッシュ)によって飛行が不安定化することが想定される。そのため、閉塞空間2を設定する場合、飛行時に他の飛行体1へ与える影響を考慮した閉塞空間2Eとすることが望ましい。
【0066】
例えば、気流の発生方向は機体姿勢、ロータの位置や角度、回転速度等によって変化することから、閉塞空間2Eの形状は飛行体1に備えられた推進装置の向きに応じて定めることが考えられる。具体的には、地上監視装置10による飛行体1の位置情報、飛行体1から送信されたロータ回転速度、機体角度などの情報と合わせてロータが発生する気流を予測し、気流の影響範囲を推定し、この影響範囲の情報に基づいて閉塞空間2Eの形状を変更する方法が考えられる。
【0067】
閉塞空間設定部23は、飛行体1の飛行時に発生する気流が他の飛行体1に対して与える影響に基づき閉塞空間2を設定(制御)する。
【0068】
図7Aに示すように、飛行体1がある地点で停止している場合は、主に飛行体1の真下方向へ気流を発生していると考えられることから、下方向に対して閉塞空間2Eを広くとると考えられるし、移動している場合は反対方向へ気流を発生していると考えられることから、図7Bに示すように、斜め下方向に対して閉塞空間2Eを広くとると考えられる。
【0069】
これにより、飛行体1が互いに近接している場合でも気流の影響を考慮した上で最適な空間割り当てが可能となり、多数の飛行体1による離着陸の高効率化が期待できる。
【0070】
上記閉塞空間2の設定方法のうち、閉塞空間2AH、2AL、2B、2C、2D、2Eのうちの2つ以上を組み合わせても良い。つまり、閉塞区間設定部23は、飛行体1の位置精度、周囲環境からの外乱による飛行への影響度合い、慣性の影響、飛行体1の機器動作状態、飛行体1の飛行時に発生する気流が他の飛行体1に対して与える影響のうち、少なくとも2つ以上を組み合わせた結果に基づき閉塞空間2を設定(制御)することができる。
【0071】
飛行体1の移動範囲を推定し、閉塞空間2を設定する手法として、例えば離発着場3周辺の3次元空間座標を確率変数とし、各座標地点における飛行体1の存在確率を確率分布として扱う方法が考えられる。
【0072】
複数の手法を組み合わせる場合は、例えば条件付確率分布を適用すればよい。まず、飛行体1の位置推定精度に基づき、各座標位置において飛行体1が存在する確率を算出する。
【0073】
次に、各座標位置に飛行体1が存在した場合において、外乱の影響によって移動する可能性のある範囲を条件付確率として算出する。外乱の影響を算出する際、機体性能や環境変動、機器故障等を加味しても良い。各座標地点において飛行体1が存在する確率を導出したのち、ある閾値以上の確率で移動体が存在する範囲を閉塞空間2として設定する。その他の手法を組み合わせる場合も、同様の計算手順により算出する。複数の方法を組み合わせることにより、より安全かつ効率的な離発着を行うための空間割り当てが期待できる。
【0074】
各座標地点において飛行体1が存在する確率がある閾値以上となる範囲を閉塞空間2として設定する場合において、該閾値は固定値を設定しても良いし、飛行体1による事故が発生した際に想定される影響の度合いに基づき設定しても良い。事故発生時に想定される影響の度合いは、飛行体1の運搬物(人、貨物等)、機体価格、機体重量、周辺環境(人口密集地、無人地帯等)等により評価することが考えられる。例えば貨物を搬送する小型の飛行体1が無人地帯を飛行するような、事故の影響が小さいと考えられる状況においては、高めの閾値を設けることで小さめの閉塞空間2が設定されるため、複数の飛行体1による高密度な飛行が可能となる。
【0075】
一方、人を搬送するような大型の飛行体1や、人口密集地を飛行する状況においては、低めの閾値を設けることで大きめの閉塞空間2が設定されるため、安全性を確保することが可能となる。
閉塞空間設定部23は、飛行体1の離発着場3の周辺の各空間座標地点において飛行体1体が存在する確率を算出し、飛行体1について予測される事故による影響の度合いに基づき閉塞空間設定閾値を設定し、確率が閉塞空間設定閾値以上となる範囲を閉塞空間2として設定する。
【0076】
以上により、過大もしくは過小な閉塞空間2の設定を回避し、安全性と効率性を両立した空間割り当てが期待できる。
【0077】
図8A及び図8Bは、監視範囲外に閉塞空間2を設定する場合の概念図である。
【0078】
また、閉塞空間2の形状は、飛行体1の状態監視部22もしくは地上監視装置10が備えるセンサにより監視できる範囲内(以下、監視範囲5と呼ぶ)に包含されることが望ましい。監視範囲5内に閉塞空間2が含まれることで、該飛行体1以外の物体が閉塞空間2内に存在しない事を確認でき、飛行体1の安全性を維持することができる。
【0079】
監視範囲5は、使用するセンサの検知率、検知範囲より設定する。監視範囲5を設定する際は、夜間や逆光、風雨などの外乱による影響も考慮することが望ましい。例えば雨天時においては、晴天時と比較すると監視範囲5が狭くなると推定される。複数のセンサを使用する場合は、それらを組み合わせた範囲を監視範囲5として設定する。
【0080】
ただし、周辺環境や機体性能によっては、図8Bに示すように、監視範囲5外に閉塞空間2が設定されるケースが想定される。
【0081】
その場合、監視範囲5外へ飛行体1が移動しないように飛行制御を変更したり、監視範囲5を調整したりしても良い。飛行制御を変更する方法として、例えば飛行速度を落としたり、機体の方向や姿勢を変更したりすることが考えられる。
【0082】
また、監視範囲5を調整する方法として、例えば監視範囲5が閉塞空間2を包含するように、飛行体1もしくは地上監視装置10に設置したセンサの向きを変更することや、センサパラメータ(カメラの露光時間や焦点距離、LiDARの視野角等)を変更することが考えられる。また、監視範囲5が閉塞空間2を包含していない場合、閉塞空間設定部23もしくは地上監視装置10は、飛行制御部21に対して飛行経路を変更するように指示しても良い。
【0083】
閉塞空間設定部23は、状態監視部22により監視できる監視範囲を設定し、飛行制御部21は、監視範囲5外に閉塞空間2が設定される場合、監視範囲5外へ飛行体1が移動しないように飛行指示する、もしくは監視範囲5が閉塞空間2を含むように飛行体1を制御する。
【0084】
ここで、飛行優先度の例について説明する。まずは、単に飛行体1からの閉塞空間情報を受信した順番に優先度を決める方法があげられる。次に、費用を払うなどして優先度を高くする権利を持っている飛行体1の優先度を高くする方法があげられる。次に、緊急車両に相当する飛行体1(例えば、警察車両、救急車、消防車等に相当する移動体)については、優先度を高くする方法があげられる。
【0085】
また、全体として、効率のよい飛行体1の飛行進路順に基づき飛行優先度を決める方法があげられる。
【0086】
さらに、飛行体1の残りの燃料やバッテリ残量を考慮して、これら残量が少ない飛行体1は優先度を高くする方向があげられる。これらの優先度は組み合わせて、地上監視装置10が最終的に規定することが可能である。
【0087】
飛行体制御装置20の通信部24は、地上監視装置10の通信部13と無線等により互いに通信を行う。
【0088】
図9は、本発明の飛行体制御システム30の制御の例を示すフローチャートである。以下の制御手順は、離発着場3近辺を飛行する際は定期的に実行されることが望ましい。
【0089】
図9において、まず、飛行体制御装置20は、飛行体1の機体の動作状態、および機体周辺の状況を監視する(ステップS101)。機体の動作状態としては、例えば機体の飛行位置、飛行速度、方向、姿勢、タイミング、搭載機器の動作状態を含む。
【0090】
また、搭載機器の動作状態としては、例えばモータ出力、ロータ回転速度、バッテリ容量、機器故障有無を含む。機体周辺の状況としては、例えば機体周辺の風向きや強さ、地形や周辺構造物、他の飛行体1や障害物の大きさや属性、自機との距離、位置等を含む。
【0091】
現時点における状態情報を監視することを基本とするが、過去の状態情報や、飛行経路上における今後の状態情報を推定してもよい。これは、上述した状態監視部22で行う。
【0092】
次に、飛行体制御装置20は、監視した状態情報に基づき、飛行経路上の障害物の有無を確認する(ステップS102)。ステップ102において、飛行経路上に、障害物を検知した場合、ステップS103に進む。ステップS103におい、進行停止や回避経路を飛行制御部21へ指示し、ステップS101に戻る。障害物を回避するまで、ステップS101にて監視を継続する。これは、上述した状態監視部22で行う。
【0093】
次に、飛行体制御装置20は、監視した状態情報に基づき、自身の閉塞空間2の形状を設定する(ステップS104)。これは、上述した閉塞空間設定部23で行う。
【0094】
次に、飛行体制御装置20は、地上監視装置10へ当該閉塞空間2の使用を通知する(ステップS105)。地上監視装置10へ閉塞空間2の使用を通知する際は、当該飛行体1の状態情報、飛行経路、飛行タイミング、使用する離発着場3の位置の情報を送信する。これらの情報に加え、飛行優先度、機体性能、気象条件等の情報を送信してもよい。これは、上述した通信部24および通信部13の間で行う。
【0095】
次に、地上監視装置10は、各飛行体1の飛行位置を監視する(ステップS106)。監視する飛行体1の範囲は、監視範囲5内を飛行又は監視範囲5内に存在する移動体でもよいし、離着陸を予定している飛行体1に限定してもよい。位置を特定する方法は、地上に設置したセンサを用いて飛行体1の位置を検知してもよいし、各飛行体1から位置情報を受け取ってもよい。これらにより、3次元的に空間を把握しながら飛行体1の位置を把握する。これは、上述した飛行位置監視部11で行う。
【0096】
次に、地上監視装置10は、各飛行体1より受信した閉塞空間2の情報、および各飛行体の飛行位置に基づき閉塞空間2を割り当て、各飛行体1に対して閉塞空間2の干渉有無を確認する(ステップS107)。
【0097】
ここで、ある飛行体1へ割り当てた閉塞空間2が、他の飛行体1へ割り当てた閉塞空間2と干渉する場合、いずれか、もしくは両方の飛行体1に対して当該干渉が解消されるように飛行変更を指示する。干渉が解消されるように飛行変更を指示する際、実際に干渉が発生した後に指示しても良いし、干渉の発生が予想される時点で指示しても良い。この処理は、上述した閉塞空間管理部12で行う。
【0098】
次に、地上監視装置10は、飛行体制御装置20へ当該閉塞空間2の干渉有無を通知する(ステップS108)。飛行体制御装置20へ閉塞空間2の干渉有無を通知する際は、推奨される飛行経路、飛行タイミング、使用する離発着場3の位置の情報を送信しても良い。これは、上述した通信部13および通信部24の間で行う。
【0099】
次に、飛行体制御装置20は、地上監視装置10より閉塞空間2内における干渉有無を確認する(ステップS109)。干渉が発生していない旨の通知を受信したら、飛行制御部21へ当該閉塞空間2内の飛行継続を指示する(ステップS110)。干渉が発生している旨の通知を受信したら、進行停止や回避経路を飛行制御部21へ指示する(S111)。これは、閉塞空間設定部23で行う。
【0100】
なお、異常発生により地上監視装置10と飛行体制御装置20との通信が途絶した場合、飛行体制御装置20は閉塞空間2の干渉有無が確認できない状況となる。その場合、飛行体1自身のセンサ等を利用して周囲の安全を確認しつつ、自律飛行しても良い。その場合、地上監視装置10および近接する他の飛行体1に対し、自機が自律飛行している旨を通知することが望ましい。
【0101】
(効果)
以上のように、機体性能や機器動作状態、および周辺環境に応じて、各飛行体1が安全に飛行するための必要最低限の大きさの閉塞空間2を設定することで、近接した離発着場3への安全かつ高密度な離発着を可能とする。また、地上監視装置10と飛行体制御装置20の連携した処理により、複数の飛行体1に対する効率的かつ確実な監視と制御を可能とする。このとき、地上監視装置10は、離発着を行う飛行体の必要な範囲を監視して、適切な制御が可能となる。また、優先度を決定することにより、効率的な離発着を可能にするとともに、状況に応じた運用や計画的な運航も可能となる。
【0102】
つまり、本発明は、垂直離発着が可能な飛行体の制御をより適切に行い、飛行体の状態や環境に応じて安全かつ高密度な離発着が可能な飛行体制御システムを提供することができる。
【0103】
以上のように、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、上述した以外の様々な変形例も含まれる。例えば、上記した実施形態に設けられた全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0104】
また、ある実施形態の構成の一部を削除したり、他の構成に置き換えたりすることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0105】
例えば、上記実施形態では、飛行体1に状態監視部22および閉塞空間設定部23を設けた構成について説明したが、これらの機能は地上監視装置10が備えても良い。具体的には、地上監視装置10が備えた状態監視部22(センサなどを利用)により飛行体1の飛行位置や速度、周辺障害物等を監視し、その情報に基づき閉塞空間2を設定し、飛行体制御装置20に対して飛行制御指示を送信する構成としても良い。
【0106】
また、飛行体制御装置20は、状態監視部22による監視情報と、地上監視装置10による監視情報とを組み合わせて閉塞空間2を設定しても良い。複数の監視情報を組み合わせることにより、より高精度な位置認識や障害物検知が期待できる。
【0107】
さらに、地上監視装置10の飛行体位置監視部11及び閉塞空間管理部12を飛行体制御装置20に備えさせて、飛行体制御装置20に機能を集約させてもよい。つまり、飛行体制御装置20は、飛行体位置監視部11、閉塞空間管理部12、飛行制御部21、状態監視部22、閉塞空間設定部23及び通信部24を備える構成であってもよい。
【0108】
また、飛行制御部21、状態監視部22及び閉塞空間設定部23を地上監視装置10に備えさせて、地上監視装置10に機能を集約させてもよい。つまり、地上監視部10は、飛行体位置監視部11、閉塞空間管理部12、通信部13、飛行制御部21、状態監視部22、閉塞空間設定部23及び通信部24を備える構成であってもよい。
【0109】
また、状態監視部22は、飛行体1の移動体の周辺環境および飛行体1の動作状態のうちの少なくとも一方を監視する構成であってもよい。
【0110】
また、閉塞空間設定部23は、状態監視部22による監視結果に基づいて飛行体1に対する閉塞空間1のサイズ及び形状のうちの少なくとも一方を設定する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1・・・移動体、2、2AH、2AL、2B、2C、2D、2E・・・閉塞空間、3・・・離着陸場、4・・・監視制御必要範囲、5・・・監視範囲、10・・・地上監視装置、11・・・飛行位置監視部、12・・・閉塞空間管理部、13、24・・・通信部、20・・・飛行体制御装置、21・・・飛行制御部、22・・・状態監視部、23・・・閉塞空間設定部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9