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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-12
(45)【発行日】2025-02-20
(54)【発明の名称】空調衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20250213BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20250213BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20250213BHJP
   A41D 27/10 20060101ALI20250213BHJP
   A41D 27/28 20060101ALI20250213BHJP
【FI】
A41D13/005 103
A41D13/002 105
A41D1/00 E
A41D27/10 B
A41D27/28 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021106628
(22)【出願日】2021-06-28
(65)【公開番号】P2023004741
(43)【公開日】2023-01-17
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小澤 加奈
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤史
(72)【発明者】
【氏名】外処 一記
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125549(JP,A)
【文献】特開2018-009264(JP,A)
【文献】特開2000-220020(JP,A)
【文献】特開2009-161878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/00
A41D 13/00-13/12;20/00
A41D 27/10
A41D 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風発生装置を身頃の下部に配置されている一つ又は複数の空気取入れ口に脱着可能に取り付ける空調衣服において、
袖の一部又は全部が取り外し可能な可動袖部となっており、
前記可動袖部は、脱着機構を介して、身頃又は身頃に固定されている固定袖部と脱着可能に接合されており、
前記脱着機構は、前記身頃又は前記固定袖部に設けられている第1連結部と、前記可動袖部に設けられている第2連結部で構成されており、
前記身頃又は前記固定袖部において、前記可動袖部と接合する側の開口部には周囲方向に伸縮性を有する空気漏れ抑制機構が配置され
前記空気漏れ抑制機構は、前記身頃又は前記固定袖部の裏側に取り付けられていることを特徴とする空調衣服。
【請求項2】
前記第1連結部及び前記第2連結部は、ファスナー、面ファスナー又はスナップボタンで構成されている請求項1に記載の空調衣服。
【請求項3】
前記空気漏れ抑制機構は、前記脱着機構に比べて、袖口に遠い側に配置されている請求項1又は2に記載の空調衣服。
【請求項4】
前記空気漏れ抑制機構は、前記身頃又は固定袖部の裏側に取り付けている筒状の伸縮性材料で構成されている請求項1~3のいずれかに記載の空調衣服。
【請求項5】
前記空気漏れ抑制機構は、前記身頃又は前記固定袖部の裏側に取り付けられている筒状の本体部、前記本体部の端部に設けられている紐通し部、前記紐通し部に挿通されている紐で構成されており、前記紐の絞り程度によって前記本体部の開口径を調整する請求項1~3のいずれかに記載の空調衣服。
【請求項6】
前記紐は、前身頃胸部の表側に開口している胸ポケットから取り出すことができ、ストッパーにより前記紐を絞った状態に保持する請求項5に記載の空調衣服。
【請求項7】
前記身頃又は前記固定袖部の可動袖部と接合する側の開口部の下部にはスリットが設けられている請求項1~6のいずれかに記載の空調衣服。
【請求項8】
前身頃胸部の裏側には、前記可動袖部を収納可能なポケットが設けられている請求項1~7のいずれかに記載の空調衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服内に外気を流通させることができる空調衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高温下で作業する場合に、衣服内に外気を流通させて身体を冷却するように設計された空調衣服を着用することが行われている。例えば、特許文献1には、使用者の胴を覆う胴体部と、使用者の腕の一部を覆う半袖部を有する空調衣服が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3222749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調衣服において、袖を有するタイプ及び袖を有しないタイプのいずれについても需要がある。しかし、袖が無いタイプは、作業において腕部が暴露されるため、作業における外部影響を受け、身体を保護する事ができない恐れがある。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、袖の一部又は全部を脱着可能な可動袖部とし、袖により作業中の安全性を保つことができ、可動袖部を付けた場合及び可動袖部を外した場合のいずれにおいても、身体に対して優れた冷却性能を有する空調衣服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、風発生装置を身頃の下部に配置されている一つ又は複数の空気取入れ口に脱着可能に取り付ける空調衣服において、袖の一部又は全部が取り外し可能な可動袖部となっており、前記可動袖部は、脱着機構を介して、身頃又は身頃に固定されている固定袖部と脱着可能に接合されており、前記脱着機構は、前記身頃又は前記固定袖部に設けられている第1連結部と、前記可動袖部に設けられている第2連結部で構成されており、前記身頃又は前記固定袖部において、前記可動袖部と接合する側の開口部には周囲方向に伸縮性を有する空気漏れ抑制機構が配置されていることを特徴とする空調衣服に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、袖の一部又は全部を脱着可能な可動袖部とし、安全性が求められる作業の場合は袖により安全性を保つことができ、可動袖部を付けた場合及び可動袖部を外した場合のいずれにおいても、身体に対して優れた冷却性能を有する空調衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一例の空調衣服(長袖)の概略正面図である。
図2】同空調衣服の概略背面図である。
図3】同空調衣服を裏返し、且つ可動袖部、外した状態の概略正面図である。
図4】同空調衣服を裏返し、且つ可動袖部を外した状態の概略背面図である。
図5】同空調衣服を裏返し、且つ可動袖部を外した状態の部分的概略正面図である。
図6】同空調衣服を裏返し、且つ可動袖部を外した状態の部分的概略正面図である。
図7】同空調衣服の部分的概略側面図である。
図8】同空調衣服の部分的概略側面図である。
図9】同空調衣服における身頃と可動袖部の接合部分の一例の概略断面図である。
図10】同空調衣服における身頃と可動袖部の接合部分の一例の概略断面図である。
図11】同空調衣服における身頃と可動袖部の接合部分の一例の概略断面図である。
図12】同空調衣服における胸部ポケットの配置箇所の概略断面図である。
図13】本発明の一例の空調衣服の胸部ポケットの配置部分の概略正面図である。
図14】同概略断面図である。
図15】本発明の一例の空調衣服の部分的概略正面図である。
図16】本発明の他の一例の空調衣服(長袖)を裏返した状態の部分的概略正面図である。
図17】本発明の他の一例の空調衣服(長袖)を裏返した状態の部分的概略正面図である。
図18】可動袖部の折り畳み手順の1例に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、上述した問題を解決するために鋭意検討した。その結果、袖の一部又は全部を取り外し可能な可動袖部とし、該可動袖部を、脱着機構を介して、身頃又は身頃に固定されている固定袖部と脱着可能に接合するとともに、身頃又は固定袖部における可動袖部と接合する側の開口部に、周囲方向に伸縮性を有する空気漏れ抑制機構を配置することで、袖により作業中の安全性を保ちながら、可動袖部を付けた場合及び可動袖部を外した場合のいずれにおいても、身体に対する冷却性能を良好にし得ることを見出した。
具体的には、作業中には、脱着機構を介して、可動袖部を身頃又は固定袖部に接合することで安全性を確保することができる。
通常、可動袖部を外した場合、風発生装置にて取り込んだ空気が身頃又は固定袖部の可動袖部と接合する側の開口部から外へ流れてしまい、発汗が多く、太い血管が配置されている熱交換に効果的な部位である頸部、胸部、上背部等への流れが減少し、身体に対する冷却性能が減少するが、本願発明では、身頃又は固定袖部における可動袖部と接合する側の開口部に、周囲方向に伸縮性を有する空気漏れ抑制機構を配置することで、風発生装置が取り込んだ空気が接合部分の開口部から漏れることを防ぎ、頸部、胸部、上背部等への流れを確保することで、身体に対する優れた冷却性能を発揮することができる。
【0010】
以下、図面と併せて、本発明の1以上の実施形態に係る空調衣服を説明する。しかし、本発明は、これらの図面に示されるものに限定されない。
【0011】
図1は本発明の一例の空調衣服(長袖)の概略正面図である。図2は同空調衣服の概略背面図である。図3は同空調衣服を裏返し、且つ可動袖部を外した状態の概略正面図である。図4は同空調衣服を裏返し、且つ可動袖部を外した状態の概略背面図である。図5及び図6は同空調衣服を裏返し、且つ可動袖部を外した状態の部分的概略正面図である。図7及び図8は同空調衣服の部分的概略側面図である。図9~11は同空調衣服における身頃と可動袖部の接合部分の概略断面図である。図12は、同空調衣服における胸部ポケットの配置箇所の概略断面図である。
【0012】
空調衣服1において、腕を覆う袖2は肩先で身頃4と接合しており、袖2は全部取り外し可能な可動袖部3となっている。可動袖部3と身頃4の接合部分には、脱着機構5が設けられており、可動袖部3は、身頃4に、脱着機構5を介して脱着可能に接合する。
【0013】
該実施形態において、脱着機構5は、身頃4の裏側(人体側)に配置されている。この場合、図5及び図7に示すように、身頃4の開口部の下部、且つ、前身頃41及び後身頃42の合併部の上部にはスリット7が設けられていてもよい。スリット7を開けると、図8に示すように、脱着機構5が見え、スリット7を開くことで可動袖部3の脱着操作がしやすくなる。
【0014】
脱着機構は、身頃の裏側(人体側)に配置されてもよく、表側(人体側の反対側)に配置されてもよいが、美観の観点から、身頃の裏側(人体側)に配置されることが好ましい。また、脱着機構は、通常、可動袖部と身頃又は固定袖部の接合部分の開口部の近辺、例えば、開口末端から0.1~10.0cm離れた領域に配置されていることが望ましい。
【0015】
脱着機構5は、身頃4に設けられている第1連結部51と、可動袖部3に設けられている第2連結部52で構成されている。第1連結部51は、例えば、縫製にて身頃4に取り付けることができる。第2連結部52は、例えば、縫製にて可動袖部3に取り付けることができる。
【0016】
第1連結部及び第2連結部は、互いに脱着可能に接合し得るものであればよく、特に限定されず、例えば、ファスナー(線ファスナーとも称される)、面ファスナー、及びスナップボタン等で構成することができ、衣服内の空気の圧力を高める観点から、ファスナー、面ファスナー等で構成することが好ましく、洗濯耐久性に優れることから、ファスナーで構成することがより好ましい。ファスナーとしては、例えば、金属ファスナー、樹脂ファスナー、ビスロン(登録商標)ファスナー等が挙げられる。面ファスナーとしては、ポリエステル製ベルクロ(登録商標)等が挙げられる。スナップボタンとしては、例えば、金属スナップボタン、樹脂スナップボタン等が挙げられる。
【0017】
図9は脱着機構5、すなわち第1連結部51及び第2連結部52がファスナーで構成されている場合を示し、図10は、脱着機構5、すなわち第1連結部51及び第2連結部52が面ファスナーで構成されている場合を示し、図11は、脱着機構5、すなわち第1連結部51及び第2連結部52がスナップボタンで構成されている場合を示す。
【0018】
身頃4において、可動袖部3と接合する側の開口部には、空気漏れ抑制機構6が配置されている。空気漏れ抑制機構6は、周囲方向に伸縮性を有しており、身頃4の可動袖部3と接合する側の開口部の開口径を調整することができる。具体的には、空気漏れ抑制機構6は、身頃4の開口部の開口径を着用する人体に密着するように縮めることができる。また、必要に応じて、空気漏れ抑制機構取付位置の身頃4の周囲方向と同寸まで伸ばすことができる。空気漏れ抑制機構を縮める際、具体的には人体に密着するように縮めた際、脱着機構は縮まらない事が好ましい。これにより、外観が良く、腕の動きを阻害しにくくなる。
【0019】
空気漏れ抑制機構は、身頃の裏側(人体側)に配置されてもよく、表側(人体側の反対側)に配置されてもよいが、空気漏れ効果及び美観の観点から、身頃の裏側(人体側)に配置されることが好ましい。
【0020】
空気漏れ抑制機構は、脱着機構(第1連結部)に比べて、袖口に近い側に配置されてもよく、袖口に遠い側に配置されてもよいが、胸部、頸部、及び上背部の冷却性を高める観点から、脱着機構に比べて、袖口に遠い側(すなわち身頃中心に近い側)に配置されてもいることが好ましい。空気漏れ抑制機構の少なくともその一部が、鎖骨から上腕骨の覆う領域に配置されていることがより好ましい。空気漏れ抑制機構が、肩峰点から上腕骨を覆う領域に配置されている場合、肘関節の動きを阻害せず、かつ空気漏れを防ぐことができる。
【0021】
空気漏れ抑制機構6は、身頃4の裏側に取り付けられている本体部61、本体部61の非固定端部(身頃に取り付けられていない端部)に設けられている紐通し部62、紐通し部62に挿通されている紐63で構成されており、紐63にて紐通し部62の開口径を調整することができる。本体部61は、腕が中を通るように筒状になっていることが好ましい。本体部61は、例えば、縫製等にて身頃4に取り付けることができる。可動袖部を取り外した際、紐63を絞ることで、紐通し部62の開口径を人体に密着するまでに縮めることで、身頃4の開口部の開口径も人体に密着するまでに縮まり、身頃4の開口部から空気が漏れることを抑制することができる。紐63を絞った際、紐通し部62の開口径は脱着機構5の周囲径よりも小さい。また、可動袖部を身頃に接合した際、紐63を緩めることで紐通し部62の開口径を最大限、例えば本体部61の取付位置の身頃4の周囲方向と同寸まで伸ばすことができる。なお、可動袖部を身頃に接合した際、必要に応じて、紐63を緩めなくてもよい。
【0022】
本体部61は、周囲方向に伸縮性を有する伸縮性生地で構成してもよく、非伸縮性生地で構成してもよい。本体部61が伸縮性生地で構成されている場合は、紐通し部及び紐を設けず、伸縮性生地の伸縮性を調整することで、本体部61のみで空気漏れ抑制機構として機能させてもよい。着用感が良好であり、必要に応じて開口径を調整しやすい観点から、本体部61を非伸縮性生地及び/伸縮性生地で構成し、紐通し部62及び紐63を設けることが好ましい。紐63としては、伸縮性の観点から、ゴム紐を好適に用いることができる。本体部61において、伸縮性生地とは、JIS L 1096 8.14.1 A法に基づいて、荷重17.6N、引張速度200mm/minの条件下で測定した身幅方向(周囲方向)の伸長率が10%であることが好適である。
【0023】
空気漏れ抑制機構を本体部のみで構成する場合、例えば、長手方向に伸縮性を有する伸縮性生地を、長手方向が前記脱着部の周囲方向と一致するように、固定袖部又は身頃の可動袖部と接合する側の開口部に取り付けることで設けることができる。
【0024】
図9図11において、空気漏れ抑制機構6は、いずれも、身頃4の裏側に取り付けられている本体部61、本体部61の非固定端部に設けられている紐通し部62、紐通し部62に挿通されている紐63で構成されている。本体部61は、紐通し部62が脱着機構5(具体的には第1連結部51)に比べて、身頃4の開口末端から遠い側かつ衣服の内部に位置するように、身頃4の裏側に縫製にて取り付けられている。空気漏れ抑制機構6、具体的には本体部61は、特に限定されないが、例えば、脱着機構5(具体的には第1連結部51)から0.1cm以上30.0cm以下離れた位置かつ身頃中心に近い側において、縫製にて身頃4の裏側に取り付けることが望ましい。なお、本体部は、紐通し部が身頃又は固定袖部の可動袖部と接合する側の開口部から出るように、身頃の裏側に縫製にて取り付けられてもよい。この場合も、紐を絞ることで、人体に密着するよう紐通し部の開口径を縮めることができる。この場合、開口部から出た本体部は、袖として機能してもよい。
【0025】
図6に示すように、紐63を絞ると、紐通し部62の開口径が小さくなる。一方、図5に示すように、紐63を緩めることで、紐通し部62の開口径を本体部61の取付位置の身頃4の周囲方向と同寸まで伸ばすことができる。
【0026】
図3図5、及び図6に示しているように、紐通し部62の二つの紐通し穴64は、本体部61の前身頃側で胸部に近い位置に配置される。紐通し穴64から出した紐63の絞り具合を調整することで、紐通し部62の開口径を調整することができる。また、紐63は、ストッパーを使用し、縮めている状態を維持してもよい。
【0027】
空調衣服1は、更に、前身頃41の胸部に配置され、表側(人体の反対側)に開口し、袋部が裏側(人体側)に縫製されている胸部ポケット8を有してもよい。胸部ポケット8は、紐通し穴64に近い側に、紐63が通る二つの衣服側紐通し穴81を有することができる。衣服側紐通し穴81は、胸部ポケット8の人体側に配置されている。二つの衣服側紐通し穴の距離は、特に限定されないが、例えば、0.5cm以上10cm以下であってもよい。胸部ポケット8の袋の内部には、衣服側紐通し穴81を覆う穴カバーポケット82を設けてもよい。
【0028】
図13は、本発明の一例の空調衣服の胸部ポケットの配置部分の概略正面図である。図14は、同概略断面図である。空調衣服1は、胸部ポケット8の代わりに、図13に示すように、前身頃41の胸部に配置され、表側(人体の反対側)に開口し、袋部が(人体の反対側)縫製されている胸部ポケット18を有してもよい。この場合、図14に示すように、胸部ポケット18が縫製されている前身頃41は、紐63が通る二つの衣服側紐通し穴181を有することができる。衣服側紐通し穴181は、胸部ポケットが縫製されている前身頃41の胸部ポケット袋に覆われている範囲内に配置されている。二つの衣服側紐通し穴の距離は、特に限定されないが、例えば、0.5cm以上10cm以下であってもよい。
【0029】
紐通し穴64及び衣服側紐通し穴81(或いは衣服側紐通し穴181)を通り、胸部ポケット8の袋内に位置する紐63にはストッパー65を取り付けることが好ましい。身頃4と可動袖部3の接合部分における身頃の開口部、具体的には紐通し部62をしぼる際に、紐63の一部を胸部ポケット8から取り出し、着用した状態で紐63をしぼることができる。空気漏れ抑制機構6(紐通し部62)を縮めるときは、ストッパー65を通る紐63を引張り、必要な長さになった時にストッパー65をとめることで、空気漏れ抑制機構6(紐通し部62)が縮んだ状態、例えば人体に密着する状態を維持することができる。
【0030】
図15は、本発明の一例の空調衣服の部分的概略正面図である。胸部ポケット8の袋の内部には、図15に示すように、紐端部を通す紐止めループ9を設けることができる。これにより、気漏れ抑制機構6(紐通し部62)を縮める際に、引っ張った紐63の端部が胸部ポケット8の外側に飛び出ることを防ぐことができる。紐止めループ9は、胸部ポケット8の袋から外に出ない長さ、且つ幅10cm以下で、胸部ポケット8の開口部から胸部ポケット8の袋底までの間の胸部ポケット8の袋内に設けることができる。図示はないが、表側(人体の反対側)に開口し、袋部が(人体の反対側)縫製されている胸部ポケット18を有する場合も同様に、紐止めループは、胸部ポケットの袋から外に出ない長さ、且つ幅10cm以下で、胸部ポケットの開口部から胸部ポケットの袋底までの間の胸部ポケットの袋内に設けることができる。
【0031】
空調衣服1は、更に、前身頃41の胸部の裏側に配置されている可動袖部収納ポケット10を有することが望ましい。可動袖部収納ポケット10に、取り外した可動袖部3を収納することで、人体と衣服の間に空間が大きくなり、ファン等の風発生装置で取り込んだ空気が通り胸部や頸部へ流れやすくなる。可動袖部収納ポケット10は、可動袖部3を収納した状態で、胸部と接する位置に設けることができる。また、可動袖部収納ポケット10は、可動袖部3を収納した状態で、厚みが0.5cm以上であることが望ましい。ここで、厚みは、水平面の台上に衣服を広げ、可動袖収納ポケットに可動袖部を収納し、無荷重下で、可動袖収納ポケットの最大の凸の箇所の高さを計測したものである。
【0032】
左右の可動袖部収納ポケット10は互いに離れていることが望ましい。左右の可動袖部収納ポケット10は、互いに接することなく、それぞれ、左右の大胸筋に接することが好ましい。可動袖部収納ポケット10は、胸部ポケット8より人体側に配置され、胸部ポケット8と部分的に重なっていてもよい。可動袖部収納ポケット10は、特に限定されないが、例えば、幅1cm以上20cm以下、マチ0.5cm以上10cm以下が良く、幅、マチのサイズに合わせて、長さを任意に規定することができる。
【0033】
空調衣服において、袖の長さは特に限定されず、半袖、7分袖、長袖等が挙げられる。可動袖部は、袖の全部であってもよく、袖の一部であってもよい。また、袖は肩先で身頃と接合してもよく、袖が肩先で身頃と接合せず、腕を覆う部分に接合部を有してもよい。
【0034】
空調衣服1において、前身頃41は、左右に分かれており、左右の前身頃は結合部材11によって開閉可能に連結されていてもよい。結合部材11としては、衣服内の空気の圧力を高める観点から、例えば、ファスナーや面ファスナー等を用いることが好ましい。空調衣服1は、更に、襟12及び裾部13を有する。裾部13は、空気の漏れを防止する観点から、ゴム紐等の伸縮性素材で構成されてもよい。
【0035】
空調衣服1は、前身頃41の腹部に配置され、表側(人体の反対側)に開口し、袋部が裏側(人体側)に縫製されている腹部ポケット14を有してもよい。また、腹部ポケット14の開口部は、結合部材15によって開閉可能に連結されていてもよい。結合部材15としては、例えば、ファスナーや面ファスナー等を用いることができる。
【0036】
空調衣服1において、後身頃の下部の側部に左右対称に配置された一対の空気取入れ口22と、それぞれの空気取入れ口22と着脱可能に連結され、外部から衣服内に空気を取り込む風発生装置23とを備える。また、風発生装置23に電力を供給する電源装置24と、風発生装置23と電源装置24を接続するための電力供給ケーブル26を備える。該実施形態の空調衣服1は、美観及び衣服内の空気の流れを良好にする観点から、一対の空気取入れ口22を有するが、空気取入れ口は1つであってもよく、三つ以上であってもよい。空気取入れ口22の周縁部には、樹脂製の固定リングが設けられ、固定リングを介して、ファン等の風発生装置23が空気取入れ口22に固定される。固定リングは、シリコン樹脂(シリコーン)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の樹脂で構成することができる。
【0037】
空気取入れ口は、前身頃の下部に配置されていてもよいが、背中上部を冷却しやすい観点から、後身頃の下部に配置することが好ましい。
【0038】
風発生装置23は、外部から空気を衣服内に取り込んで、身体(或いは下着)と衣服の間の空間に空気の流れを強制的に生じさせるものである。風発生装置23としては、特に限定されず、例えば、ファンを用いることができる。前記ファンとしては、特に限定されず、例えば、従来の空調衣服に用いられるものと同じものを用いることができる。
【0039】
電源装置24は、特に限定されないが、携帯できる電源であればよく、特に限定されない。例えば、充電式電池や乾電池などを用いることができ、繰り返し使用可能である観点から、充電式電池を用いることが好ましい。充電式電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池などを用いることができる。空調衣服1を着用する際には、電源装置24は後身頃の裏側の下部の中央部分に設けられた後身頃収納ポケット27に収納されてもよい。電源装置24は、必要に応じて、前身頃の腹部の裏側に設けれている腹部収納ポケット28に収納されてもよい。
【0040】
図16は、本発明の他の一例の空調衣服(長袖)を裏返した状態の部分的概略正面図である。該実施形態の空調衣服101において、袖102は肩先で身頃4と接合し、袖102の一部が取り外し可能な可動袖部103となっている。袖102は、身頃4に固定されている固定袖部116と可動袖部103からなり、可動袖部103は、脱着機構5を介して、固定袖部116と脱着可能に接合する。空気漏れ抑制機構106は、固定袖部116の可動袖部103と接合する側の開口部に設けることができる。
【0041】
脱着機構5は、固定袖部116に第1連結部51と、可動袖部103に設けられている第2連結部52で構成されている。第1連結部51は、例えば、縫製にて固定袖部116に取り付けることができる。第2連結部52は、例えば、縫製にて可動袖部103に取り付けることができる。
【0042】
空気漏れ抑制機構106は、いずれも、固定袖部116の裏側に取り付けられている本体部61、本体部61の非固定端部に設けられている紐通し部62、紐通し部62に挿通されている紐63で構成されている。本体部61は、紐通し部62が脱着機構5(具体的には第1連結部51)に比べて、固定袖部116の開口末端から遠い側かつ衣服の内部に位置するように、固定袖部116の裏側に縫製にて取り付けられている。空気漏れ抑制機構106、具体的には本体部16は、特に限定されないが、例えば、脱着機構5(具体的には第1連結部51)から0.1cm以上30.0cm以下離れた位置かつ身頃中心に近い側において、縫製にて固定袖部116の裏側に取り付けることが望ましい。
【0043】
空気漏れ抑制機構106において、紐63を絞ると、紐通し部62の開口径が小さくなり、固定袖部116の開口部の開口径を着用する人体に密着するまでに縮めることができる。紐63を緩めることで、紐通し部62の開口径を本体部61の取付位置の固定袖部116の周囲方向と同寸まで伸ばすことができる。
【0044】
空調衣服101において、袖が固定袖部及び可動袖部からなること、脱着機構の第1連結部を固定袖部に設けること、及び空気漏れ抑制機構を固定袖部に設けること以外は、上述した空調衣服1と同様の構成にすることができ、重複する説明は省略する。
【0045】
図17は、本発明の他の一例の空調衣服(長袖)を裏返した状態の部分的概略正面図である。該実施形態の空調衣服201において、袖が肩先で身頃と接合せず、すなわち身頃4と袖202は一体化(すなわち、一体縫製)され、袖202の一部が取り外し可能な可動袖部203となっている。袖202は、身頃4に一体化されている固定袖部216と可動袖部203からなり、可動袖部203は、脱着機構5を介して、固定袖部216と脱着可能に接合する。空気漏れ抑制機構206は、固定袖部216の可動袖部203と接合する側の開口部に設けることができる。
【0046】
脱着機構5は、固定袖部216に第1連結部51と、可動袖部203に設けられている第2連結部52で構成されている。第1連結部51は、例えば、縫製にて固定袖部216に取り付けることができる。第2連結部52は、例えば、縫製にて可動袖部203に取り付けることができる。
【0047】
空気漏れ抑制機構206は、いずれも、固定袖部216の裏側に取り付けられている本体部61、本体部61の非固定端部に設けられている紐通し部62、紐通し部62に挿通されている紐63で構成されている。本体部61は、紐通し部62が脱着機構5(具体的には第1連結部51)に比べて、固定袖部216の開口末端から遠い側かつ衣服の内部に位置するように、固定袖部216の裏側に縫製にて取り付けられている。空気漏れ抑制機構206、具体的には本体部61は、特に限定されないが、例えば、脱着機構5(具体的には第1連結部51)から0.1cm以上30.0cm以下離れた位置かつ身頃中心に近い側において、縫製にて固定袖部216の裏側に取り付けることが望ましい。
【0048】
空気漏れ抑制機構206において、紐63を絞ると、紐通し部62の開口径が小さくなり、固定袖部216の開口部の開口径を着用する人体に密着するまでに縮めることができる。紐63を緩めることで、紐通し部62の開口径を本体部61の取付位置の固定袖部216の周囲方向と同寸まで伸ばすことができる。
【0049】
空調衣服201において、袖(具体的には固定袖部)が身頃と一体化されていること、袖が固定袖部及び可動袖部からなること、脱着機構の第1連結部を固定袖部に設けること、及び空気漏れ抑制機構を固定袖部に設けること以外は、上述した空調衣服1と同様の構成にすることができ、重複する説明は省略する。
【0050】
空調衣服に用いる生地としては、特に限定されず、織物や編物などを用いることができる。生地の断面方向の通風抑制の観点から、織物の方が好ましい。上記織物としては、特に限定されず、一重織り組織でもよく、二重織り組織でもよい。例えば、平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織などが挙げられる。前記生地を構成する繊維としては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、アセテート繊維、コットン繊維、レーヨン繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ナイロン繊維などを用いることができる。前記生地は、特に限定されないが、例えば、目付けが20~300g/m2の範囲が好ましく、50~250g/m2の範囲であることがより好ましい。目付が上記の範囲であれば、耐久性も良く、軽くて動きやすい利点がある。
【実施例
【0051】
以下実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
前身頃、後身頃、襟及び袖には生地(平織り、ポリエステル繊維77質量%、綿23質量%、目付け156g/m2)を用い、空気取入れ口は直径が10cmの円形とし、空気取入れ口の固定リングはシリコン樹脂で形成し、風発生手段として直径が10cmのファン(サンエス社製、品名「ファンセット薄型RD9710A」、羽の直径80mm、羽の枚数5枚、供給電力7V、2A)を用い、電源装置としてリチウムイオン電池(サンエス社製、品名「リチウムイオンバッテリーRD9870AJ」)を用い、電力供給ケーブルとしてケーブル(サンエス社製、品名「ファンセット薄型RD9710A」)を用い、脱着機構(第1連結部及び第2連結部)には、ファスナー(YKK社製の3CFOM91X6-7386014J(右袖)、3CFOLM91X6-7785972J(左袖))を用い、空気漏れ抑制機構の本体部には織物(平織り、ポリエステル繊維77質量%、綿23質量%、目付け156g/m2)を用い、紐にはゴム紐(YKK社製のYE25H)を用い、図1~9に示すようなブルゾン型(長袖)の空調衣服1(JASPO規格Lサイズ)を作製した。袖は、全部を可動袖部とした。脱着機構及び空気漏れ抑制機構の本体部は、縫製にて衣服本体に取り付けている。
【0053】
(実施例2)
前身頃内側に、織物(平織り、ポリエステル繊維77質量%、綿23質量%、目付け156g/m2)で構成した可動袖部収納ポケット(長さ23cm、幅7.5cm、マチ4.0cm)を設けた以外は、実施例1と同様にして、袖の全部を可動袖部としたブルゾン型(長袖)の空調衣服1(JASPO規格Lサイズ)を作製した。図18に示すように可動袖部を袖口と脱着機構第2連結部が重なるように4回折り重ねた後、可動袖部収納ポケットに該折り重ねた可動袖部を収納した際の厚みは3.8cmであった。ここで、厚みは、水平面の台上に衣服を広げ、可動袖収納ポケットに可動袖部を収納し、無荷重下で、可動袖収納ポケットの最大の凸の箇所の高さを計測したものである。
【0054】
(比較例1)
空気漏れ抑制機構を設けていない以外は、実施例1と同様にして、袖の全部を可動袖部としたブルゾン型(長袖)の空調衣服1(JASPO規格Lサイズ)を作製した。
【0055】
実施例1~2及び比較例1の空調衣服を、風速計(日本カノマックス株式会社製「ANEMOMASTER MODEL6004」を取り付けた人体型マネキン(七彩社製、品名「日本人の平均的人体寸法ダミー」)に着用させて、ファンを作動させた後、風速計で風速を測定した。風速計は、センサーが胸骨柄上端からの距離が13cmの箇所(胸部)及び顎部に位置するように配置した。その結果を下記表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1の結果から分かるように、実施例1及び2では、空気漏れ抑制機構を設け、可動袖部を取り外した際、空気漏れ抑制機構を絞ることで、可動袖部を取りつけている場合とほぼ同等の水準で、胸部及び頚部に空気を移送することができ、身体に対する冷却性能が良好である。また、可動袖部を収納ポケットに収納した実施例2の場合、可動袖部収納ポケットを有しない実施例1に比べて、胸部及び頚部により効果的に空気を移送することができる。
一方、空気漏れ抑制機構を設けていない比較例1の場合、可動袖部を取り外した際、胸部及び頚部に空気を効果的に移送することができず、身体に対する冷却性能を発揮することが困難である。
【符号の説明】
【0058】
1、101、201 空調衣服
2、102、202 袖
3、103、203 可動袖部
4 身頃
5 脱着機構
6、106、206 空気漏れ抑制機構
7 スリット
8 胸部ポケット
9 紐止めループ
10 可動袖部収納ポケット
11、15 結合部材
12 襟
13 裾部
14 腹部ポケット
22 空気取入れ口
23 風発生装置
24 電源装置
26 電力供給ケーブル
27 後身頃収納ポケット
28 腹部収納ポケット
41 前身頃
42 後身頃
51 第1連結部
52 第2連結部
61 本体部
62 紐通し部
63 紐
64 紐通し穴
65 ストッパー
81、181 衣服側紐通し穴
82 穴カバーポケット
116、216 固定袖部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18